【実施例】
【0018】
実施例1:原料100%炊飯での老化の評価
本発明における老化抑制方法が、原料のみでの炊飯において冷蔵保存後の品質に与える影響を確認するため、以下の試験を行った。
【0019】
4種類の原料を用いて、各原料のみで炊飯し、炊飯後の経時変化を、レオメーターにて測定した。4種類の原料とは、切断もち性大麦、切断うるち性大麦、未切断もち性大麦、うるち性米とした。原料はすべて150gずつ使用した。うるち性米は1.4倍加水、その他原料は2倍加水とし、浸漬時間は全て30分で炊飯を行った。炊飯はサンヨーIHジャー(炊飯専用家庭用圧力がまECJ-LG10)、普通白米モードで炊飯した。炊飯後、水分を逃さないようタッパーに入れ、室温まで冷ましたものを<0H>とした。<0H>を冷蔵庫内にて保存し、保存時間が6時間<6H>、12時間<12H>、24時間<24H>、48時間<48H>のサンプルを測定に供試した。老化の評価は、代替指標としてFUDOHレオメーター(レオテックRT−3010D)で測定した硬さ(単位:g)を用いて評価を行った。測定方法はカップ法すなわち原料2.5gを測定用の器にのせて、測定する方法を採用した。プランジャーは丸型の1.5cmを用い、ステージの移動速度30cm/minで測定を行った。
【0020】
結果を
図1に示した。切断うるち性大麦、未切断もち性大麦、うるち性米が経時変化により徐々に硬化していくのに対し、切断もち性大麦は48時間経過しても、硬さがわずかしか変化しない結果となった。
【0021】
実施例2:うるち性米に混合して炊飯した際の老化の評価
本発明における老化抑制方法が、うるち性米に混合をした際の炊飯において、冷蔵保存後の品質に与える影響を確認するため、以下の試験を行った。
【0022】
4種類の原料を用いて、各原料をうるち性米に混合して炊飯したときの、硬さの経時変化を、レオメーターにて測定した。4種類の原料とは、切断もち性大麦、圧扁した切断もち性大麦、切断うるち性大麦、未切断もち性大麦とした。炊飯方法は全て、150gのうるち性米に原料をそれぞれ60g加え(28.6重量%)、330ml加水した。この4試験区に加えてコントロールとしてうるち性米を測定した。浸漬時間は全て30分で炊飯を行った。以降の条件は実施例1の試験方法と同様に行った。
【0023】
結果を
図2に示した。炊飯直後の硬さである<0H>を除く全ての時間帯において、切断もち性大麦と圧扁した切断もち性大麦が、他3試験区の硬さよりも小さい結果となった。したがって、うるち性米に配合した米飯でも切断もち性大麦の混合による老化抑制効果が認められた。
【0024】
実施例3:うるち性米に切断もち性大麦を混合して炊飯した際の、混合割合による老化の評価
本発明における老化抑制方法における、切断したもち性大麦をうるち性米に混ぜた際の、老化抑制に効果を得ることの出来る閾値を確認する為、以下の試験を行った。
【0025】
うるち性米への切断もち性大麦の混合割合を5段階に変え炊飯をしたときの、<24H>での硬さを、レオメーターにて測定した。5段階の混合割合とは、0%(うるち性米のみ)、10%、20%、28.6%、40%とした。炊飯条件は以下の表1の通りで行った。
【表1】
浸漬時間は全て30分で炊飯を行った。以降の条件は実施例1の試験方法と同様に行った。
【0026】
結果を
図3に示した。
図3の通り、20%以上の配合において、うるち性米よりも切断もち性大麦を配合した米飯の方が柔らかいことが示された。
【0027】
実施例4:うるち性米に混合して炊飯した米飯の官能評価
本発明における老化抑制方法が、うるち性米に大麦を混合した際の炊飯において、冷蔵保存後の官能に与える影響を確認するため、以下の試験を行った。
【0028】
実施例3において炊飯した5試験区の米飯の<48H>品を喫食し、硬さの強弱で評価を実施した。その結果を以下の表2に記す。切断もち性大麦および圧扁切断もち性大麦は未切断もち性大麦、切断うるち性大麦、うるち性米と比較しても硬さが抑えられており、実施例3の結果は官能でも確認することができた。
【表2】
【0029】
実施例5:原料100%レトルト品の老化の評価
本発明における老化抑制方法が、加工方法に因ることなく効果があることと、加工後十分な時間が経っても効果が持続することを確認する為、以下の試験を行った。
【0030】
3種類の原料を用いて、各原料のみでレトルト処理した後、2週間冷蔵保存したものをレオメーターにて測定した。3種類の原料とは、切断もち性大麦、切断うるち性大麦、未切断もち性大麦とした。レトルト処理方法は、各原料を、原料重量の2倍量の水で一晩浸漬した後水を切り、油脂を加えてまんべんなく混ぜて100gずつレトルト殺菌機対応の包材に入れ、窒素置換してシールしたものをレトルト殺菌機にて処理をした。
硬さの測定方法は一粒法すなわち、原料1粒を圧縮率29%まで圧縮して測定する方法を採用した。プランジャーは平型の2.0cmを用い、ステージの移動速度30cm/minで測定を行った。
【0031】
結果を
図4に示した。図のように、本試験においても、切断もち性大麦が、切断うるち性大麦と未切断もち性大麦と比べて柔らかい結果となった。
【0032】
実施例6:原料100%レトルト品の官能評価
本発明における老化抑制方法が、アルファ化加工後十分な時間が経ったときに官能に与える影響を確認するため、以下の試験を行った。
【0033】
実施例5においてレトルト殺菌加工した3試験区において、加工後2週間冷蔵保存したものを喫食し、硬さの強弱で評価を実施した。その結果を以下の表3に記す。切断もち性大麦は他の2試験区と比較して明らかに柔らかく、老化が抑制されていた。一方、切断うるち性大麦は3試験区中最も硬かった。以上の結果から、実施例5の結果は官能でも確認することができた。
【表3】
【0034】
実施例6:胚乳部が十分に露出するまで搗精したもち性大麦を添加した米飯の官能評価
本発明における老化抑制効果が、切断や破砕という方法でなく、搗精によって胚乳部が露出したもち性大麦にも認められるかどうかを確認するため、以下の試験を行った。
【0035】
うるち性米を基準とし、搗精によって胚乳部が露出したもち性大麦をうるち性米に添加した米飯を評価する官能評価を実施した。うるち性米は共に150gずつ使用した。うるち性米は1.4倍加水、もち性大麦は2倍加水とし、浸漬時間は全て30分で炊飯を行った。炊飯はサンヨーIHジャー(炊飯専用家庭用圧力がまECJ-LG10)、普通白米モードで炊飯した。炊飯後、水分を逃さないようタッパーに入れ、室温まで冷ました後48時間冷蔵保存した<48H>サンプルにおいて、官能評価を実施した。官能評価結果を
図5に示した。搗精によって胚乳部が露出したもち性大麦をうるち性米に添加した米飯は、うるち性米のみでの炊飯品に対して、硬さの強弱という項目において顕著に弱いという結果であった。このことから、切断や破砕という方法でなく、搗精によって胚乳部が露出したもち性大麦にも、老化抑制効果があることが判った。
【0036】
図6は、NMG染色を施した3つのサンプル(左からもち性大麦、切断したもち性大麦、胚乳部が十分に露出するまで搗精したもち性大麦)の画像である。NMG染色により、胚乳部は桃色に呈色し、外皮が残存している箇所は緑色に呈色する。画像より、胚乳部が十分に露出するまで搗精したもち性大麦は表面がほぼ完全に桃色に呈色した。切断したもち性大麦に関しては、切断面は胚乳部が露出し、桃色に呈色したが、もち性大麦、切断したもち性大麦は所々緑色に呈色した。