(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
海洋での音響測深技術は古くから行われており、
図1に示すように超音波振動子から超音波パルスを発射し、その音波が対象(海底)から反射してくるエコーをとらえて、水中の音波の伝搬速度(約1500m/s)を用いてその深度を計測するものである。この原理を用いた音響測深装置は50年以上も前から製品化されており、今日でもこの原理を用いて海底の深度測量が行われている。このエコーロケーションと呼ばれる技術はこれまで変わることなく、言い換えれば発展することなく使用され続けてきた。
【0003】
原理は、超音波パルス(例えば1msパルス幅)を発射し、500mの海底だと往復距離1000mを音波の水中速度Vuを1500m/sとすれば、1000/Vu=1000/1500=0.667秒かかって返ってくるので、そのエコーを受信した後、再び超音波パルスを発射し、同時に船が進んだ分異なった場所の海底深度を計測するわけである。このように船の航行に伴って順次海底の深度を計測し、それを記録紙や画像として液晶画面に表示するのが音響測深装置と呼ばれるものである(例えば特許文献1参照)。
【0004】
これまでの音響測深装置は、超音波の水中での音速を考慮し、受信エコーより前に次の送信をしないように発信間隔をコントロールして、測深を行ってきた。
図2に示すように、1つのビームだけを備えた測深装置をシングルビーム測深装置といい、近年登場した扇型に複数のビームが拡がるものをマルチビーム測深装置という(例えば特許文献2参照)。マルチビーム測深装置は一度に広い範囲の深度を比較的高密度で計測できる。
【0005】
深度をD、送信パルスの送信間隔をTとし、(2D/1500)<Tの場合では、
図3Aに示すように、送信パルスと受信エコーの時間差が(2D/1500)に対応したものとなり、この時間差から深度を測定できる。しかしながら、(2D/1500)≧Tの場合では、
図3Bに示すように、次の送信パルスの送出後に受信エコーが到来するので、受信エコーがどちらの送信パルスに対応したものかが分からなくなり、時間差FDに基づいて誤った深度を計測することになる。したがって、従来では(2D/1500)<Tの条件が必要であった。
【0006】
送信周期を短くできないことは、測深の水平方向分解能を小さくできないことになる。
図4を参照して船の進行方向(水平方向)の計測の分解能について説明する。船速V(m/s)で深度D(m)の測深を行う場合の水平方向の分解能ΔH(m)は次式で表される。
ΔH=VT>2DV/1500
【0007】
例えば船が10kt(時速10×1.852km)で航行し、送信の周期が1秒の場合、約5m毎にしか測深データは得られない。深度1,000mの海底を計測するには、送信周期Tを
(1,000×2)/1,500=1.33秒以上にしないと計測できないが、船が10ktで航行すれば1.33秒後には6.7m進んでいるので、計測の分解能ΔHは6.67mということになる。マルチビーム測深装置は一度に広い範囲の深度を計測できるが、船の進行方向の計測の分解能はシングルビームと同様である。
【0008】
従来の音響測深装置では、計測の分解能を高くするためには船の速度を低下させる以外に方法がなかった。したがって、従来の音響測深装置は、測深の分解能を高くする場合に測深に要する時間が長くなる問題があった。
【0009】
本発明の発明者は、かかる問題を解決することができる音響測深装置を提案している。すなわち、疑似雑音系列信号によって送信信号を形成し、超音波のエコーを受信し、エコーを疑似雑音系列信号によって相関処理を行うことによって、送信信号と対応するエコーを判別し、送信信号及びエコーの時間差に基づいて深度生データを取得する。送信信号の周期は、水中の音波の速度をVuとし、深度をDとする場合に、(2D/Vu)以下とできる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において、特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施の形態に限定されないものとする。
本発明の説明は、以下の順序にしたがってなされる。
<1.参考例>
<2.一実施の形態>
<3.変形例>
【0017】
<1.参考例>
図5は、本発明の実施形態を理解するための参考例による音響測深装置の電気的構成を示す。一定周期のパルス信号の送信トリガパルスを発生する送信トリガ発生器1が設けられており、送信トリガパルスがPN系列発生器としてのゴールドコード発生器2及び表示又は記録装置10に供給される。表示及び/又は記録装置10は、液晶等の表示装置及び/又は半導体メモリ等の記録装置と表示又は記録のための演算装置とを含んでいる。
【0018】
ゴールドコード発生器2は、送信トリガパルスと同期してゴールドコードを発生する。ゴールドコード以外のM系列等のPN(Pseudorandom Noise)系列を使用しても良い。ゴールドコードがパルス変調器3に供給され、ゴールドコードが例えばBPSK(Binary Phase Shift Keying)によってデジタル変調される。搬送波の周波数は数kHz〜数百kHzとされる。
【0019】
パルス変調器3の出力信号が送信アンプ4に供給され、送信アンプ4において増幅等の処理がなされる。送信アンプ4の出力信号が送波器5に供給される。送波器5から水中に対して超音波が順次送出される。発射された水中超音波のエコーが受波器6によって順次受波される。送波器5及び受波器6としては一体型の構成を使用してもよい。
【0020】
受波器6からの受波データが受信アンプ7に供給され、増幅等の処理を受けて後、ゴースト除去回路11に供給される。ゴースト除去回路11は、減算器12と送信ゴーストレプリカメモリ13を備えている。減算器12では、受信アンプ7からの受波データから送信ゴーストレプリカメモリ13からの送信ゴーストレプリカが減算される。ゴースト除去回路11については、後で詳細に説明する。
【0021】
ゴースト除去回路11の出力が相関器8に供給される。相関器8の出力が検波回路9に供給される。相関器8によって送信パルスに対応する受信エコーが取り出される。検波回路9は表示のための演算(例えばA/D変換)を行う。検波回路9の出力が表示及び/又は記録装置8に供給され、送信パルスに対してエコーが受信されるまでの時間がそれぞれ表示及び/又は記録される。
【0022】
図6は、相関検出の処理を示している。受信エコー信号が4064ステップのシフトレジスタSRに直列に入力される。なお、シフトレジスタSRに対して前後の複数の受信エコー信号を加算するなどしてSN比を向上させることが好ましい。加算処理によってノイズが低減でき、低い送信出力とすることが可能になり、装置の小型化や省電力設計が可能になる。シフトレジスタSRを動作させるシフトクロックが(20×8=1,600kHz=1.6MHz)とされている。この周波数は一例であって搬送波周波数(20kHz)の2倍以上の周波数のシフトクロックを使用できる。受信エコー信号がシフトレジスタSRに供給されることによって搬送波信号の8倍の周波数でもってサンプリングされる。
【0023】
シフトレジスタSRに対して並列に演算回路EXA1〜EXA127が設けられている。演算回路EXA1〜EXA127のそれぞれは、排他的論理和回路と加算回路(4064回路)とから構成されている。演算回路EXA1〜EXA127のそれぞれの排他的論理和回路に対して共通にシフトレジスタSRの4064ビットが供給される。
【0024】
一方、演算回路EXA1〜EXA127のそれぞれの排他的論理和回路に対してゴールドコードのコードG1のレプリカ(レプリカは4064ビット)、コードG2のレプリカ、・・・、コードG127のレプリカがそれぞれ供給される。排他的論理和回路は、2つの入力のビットが同じ値であれば、出力が“0”となり、2つの入力のビットが異なる値であれば、出力が“1”となる。各排他的論理和回路の4064ビットの出力が加算される。加算は、“1”の個数がNであれば、Nの値の振幅の信号を出力するものである。否定論理をとることによって、2つの入力が一致するほど大きな値の出力が得られる。演算回路EXA1〜EXA127の加算出力は
図7に示すものとなる。大きな振幅の出力が送信パルスのゴールドコードと一致する受信エコー信号を示している。
【0025】
図8は、表示及び/又は記録装置10において表示を行う場合を説明するものである。表示及び/又は記録装置10に対しては送信トリガパルスが供給されており、送信トリガパルスのタイミングが画面の上側の発信線(0m)として表示される。送信トリガパルスに対する検波回路9からの検波信号を例えば色を付けて表示する。送信トリガパルスは数Hzから数十Hzの速い繰り返し信号であるので、相関器8からの送信トリガパルスのそれぞれに対応した検波信号を順次並べるように表示することによって、従来の音響測深装置と比較して数倍から数十倍の速さで測深画像が現れることになる。
【0026】
図9は、パルス変調の一例を説明するものである。例えば200kHzの搬送波の4周期
(4波)毎にゴールドコードのビットの“0”及び“1”と対応して位相を0及びπに切り替える。搬送波の周波数は一例であり、他の周波数であってもよく、BPSK以外のQPSK等の変調方式を使用してもよい。さらに、位相変調に限らず、振幅変調を使用してもよい。
【0027】
相関器8においてデジタル信号処理で相関検出がなされる。1ビットが4周期で構成されており、各周期が8サンプルでデジタル化される。したがって、ゴールドコードのコードが127ビットの場合、一つの受信エコー信号は、(127×4×8=4064ビット)となる。
【0028】
上述した改良された音響測深装置では、送信信号及び受信エコー信号(海底エコー)を識別することができる。
図10に示すように、送信信号Aと送信信号Bとが異なるゴールドコードとされている。送信信号Aと対応する受信エコー信号が送信信号Bの後に受信されてその受信エコー信号が送信Aに対応するものであることを識別できる。したがって、従来のような送信周期Tに関する制限((2D/1500)<T)をなくすことができる。
【0029】
改良された音響測深装置では水平方向の分解能が次式に示すものとなる。
ΔH=VT
【0030】
例えば船が10kt(時速10×1.852km)で航行し、送信の周期が0.01秒の場合、ΔH=0.05mとなり、測深深度とは無関係に水平方向の分解能(計測間隔)を決めることができる。深度にかかわらず、送信周期Tと船速Vのみから水平方向の分解能ΔHが決められる。このように、送信周期Tを短いものとでき、深度とは関係なく測深が可能となり、高い水平の計測分解能を得ることができる。
【0031】
なお、送信信号の識別は周波数などによっても行うことができるが、周波数弁別方式では使用する周波数範囲を広くすると、水中の伝搬損失が周波数によって異なるので、探知距離に周波数差が出るなど好ましくない。改良された音響測深装置では1つの周波数によって送信信号を識別するので、かかる問題が生じない。すなわち、送信信号を識別できるので、送信周期は従来のように海底のエコーが返ってきてから次の送信信号を発射するという制約がなくなり、短い送信周期で測深が可能なり、水平方向の分解能を飛躍的に向上させることができる。
【0032】
次に、本発明の参考例のゴースト除去回路11について説明する。
図11Aは、音響測深装置の送信信号と受信信号の生波形である。この
図11Aの例では、送信間隔は10msec で送信回数は1秒に100回の送信信号と受信信号が現れている。生波形を
図6に示す相関器を通過させることによって、
図11Bに示すような相関処理後の波形が得られる。
【0033】
相関処理後の波形には、本来の海底エコー以外に送信のゴースト(送信ゴーストと適宜称する)や受信のゴースト(受信ゴーストと適宜称する)が現れ、ターゲットとする海底エコーに基づく測定を妨害する場合がある。そこで、本発明は、この妨害になる送信ゴースト及び受信ゴーストが除去するものである。
【0034】
図12Aは、
図11Aと同様の波形である。
図12Bは、
図12Aの波形から送信ゴースト信号を除去した後の波形である。送信ゴースト信号を除去した後は受信信号しか残らないので、その波形を相関処理すると、
図12Cに示すような波形になり、若干は送信波形のゴーストが残ると予想されるものの、ゴーストの影響が少ない受信信号が得られる。
【0035】
図5の全体構成のブロック図においても示しているが、ゴースト除去回路11及び相関器8を
図13に示す。
図13に示すように、受信アンプ7の出力信号からあらかじめ記憶しておいた送信信号ゴーストレプリカ波形を減速ポイント回路12において減算することによってゴースト除去ができる。減算回路12からのゴースト除去後の信号を相関器8によって相関処理すればゴーストが除去された信号を得ることができる。
【0036】
図14Aが送信信号(TXGC1,TXGC2,TXGC3,・・・)及び受信信号(RXGC1,RXGC2,RXGC3,・・・)の生波形を示す。
図14Bが送信信号のゴーストレプリカを示す。減算回路12の出力信号である。相関器8の相関処理後の波形の二つの例
(波形1及び波形2)を
図14Dに示す。
【0037】
ゴースト除去処理は、相関処理の前に限らず、相関処理の後でも行うことができる。
図15に示すように、送信信号ゴーストレプリカメモリ14に相関処理後の送信信号ゴーストレプリカを記憶しておく。相関器8からの相関処理後の信号から対応している送信信号ゴーストレプリカを減算回路15
1,15
2,・・・15
127によって減算することによってゴースト除去処
理を行うことができる。
【0038】
送信信号ゴーストレプリカの生成方法について
図16を参照して説明する。
図16Aに示す送信信号を相関器に入力し、
図16Bに示す127種類の相関出力信号(G1replica,G2replica,・・・G127replica)がゴーストレプリカ信号となる。これらのゴーストレプリ
カ信号が送信信号ゴーストレプリカメモリ14に記憶される。
【0039】
図17は送信信号ゴーストを除去する処理を示す波形図である。
図17Aは、音響測深装置の送信信号と受信信号の生波形である。
図17Bは、この生波形を相関器8に出力し、相関器8から得られる出力例えばG1信号出力である。
図17Cが送信信号ゴーストレプリカメモリ14に記憶されている対応する送信信号ゴーストレプリカG1レプリカである。
【0040】
G1信号出力から送信信号ゴーストレプリカG1レプリカを減算回路15
1によって減算処
理することによって、
図17Dに示すように、ゴースト除去後の受信信号が得られる。他の相関器8の出力に関しても同様に、ゴーストを除去することができる。
図17Dには、G1信号出力に関するゴースト除去後の信号とG2信号出力に関するゴースト除去後の信号を示す。
【0041】
図15に示す上述したゴースト除去回路は、前述の相関処理前にゴースト処理を行うゴースト除去回路(
図13)と比較してメモリ規模及び回路規模が大きくなる。さらに、ある。また、相関処理前と処理後のゴースト除去処理を併せて行えばゴースト除去効果をより大きくすることができる。
【0042】
図18は、ゴースト除去の処理を行っていない場合の音響測深装置の表示画像の一例である。画面の横軸が時間を示し、その縦軸が水深を示す。画面の横側に表示を生じさせるゴーストを含む受信信号を示す。この受信信号には、順に下記の信号が含まれており、それぞれが画面中の表示を生じさせる。例えば送信回数が50回/秒である。
【0043】
送信信号TXGC1:海面(水深0m)
真の受信信号RXGC1:真の海底エコーの表示E(水深約70m付近で波をうっている波形)
送信信号TXGC2〜TXGC6のゴースト:それぞれと対応する送信ゴーストG2〜G6(15m毎に直線状に現れている)
受信信号RXGC124〜RXGC127のゴースト:それぞれと対応する受信ゴーストGE124〜GE127(海底のエコーのゴースト)
【0044】
ここで、ゴーストを除去できるとすると、
図19Aに示すゴースト除去前の表示画像と
図19Bに示すゴースト除去後の表示画像を比較するとわかるように、すこぶる見やすい画像を得ることができる。
図19は、実際の海で実験によって得た画像(
図19A)に対してゴースト除去を施したときの画像(
図19B)である。
【0045】
図20を参照して送信ゴーストレプリカの生成方法の一例について説明する。
図5と対応する構成部分には同一の参照符号を付すことにする。水を入れた無響水槽21内に送波用振動子5及び受波用振動子6を収納する。無響水槽21を使用するのは、不要な受信信号を生じさせないためである。そして、通常の音響測深を行い、送信信号に対応する受信信号を送信ゴーストレプリカとして送信ゴーストレプリカメモリに保存する。無響水槽21の代わりに受信エコーが現れないような深い海で送受信を行い、同様に送信ゴーストレプリカを得るようにしてもよい。
【0046】
ゴーストは受信信号に対しても現れるので、受信信号のゴースト除去も必要である。
図21は、受信信号のゴースト除去の方法の一例を示す。
図21Aは、送信信号と受信信号の生波形である。
図21Bは、送信ゴースト除去後の受信信号を相関器8で処理した時の一つの信号出力を示す。
図21Bの波形の中で鋭いピークを持つ信号のみを抽出すると、
図21Cに示すようになる。同様に、相関器8の他の信号出力及びその中で抽出された波形を
図21D及び
図21Eにそれぞれ示す。
【0047】
図21Bから
図21Eに示すように、相関処理後の受信信号は、真のエコーとゴーストエコーには明らかな差がある。それは、真のエコーは鋭いピークをもつ波形となるが、ゴーストエコーは鋭いピークを持たない波形となる。したがって、受信信号のゴースト除去は、相関処理後に鋭いピークを持つ波形だけを残して他の信号は消し去る方法でゴースト除去が行える。
【0048】
<2.一実施の形態>
次に本発明の一実施の形態について説明する。一実施の形態は、送信周期を変更して送信ゴーストと受信信号が重ならないようにする方法である。すなわち、送信ゴーストと受信エコーが重ならないように送信周期を調整する方法である。
【0049】
図22を参照して一実施の形態について概略的に説明する。
図22Aは、送信回数が50回/秒の場合の表示画像を示す。送信ゴーストが所定の水深の間隔で直線状に現れている。この場合では、海底エコーと送信ゴーストが重なって一部海底エコーが認識しにくい箇所がある。
図22Bは、破線の位置で送信回数を40回/秒に変更した場合の表示画像である。送信の間隔が長くなるので、送信ゴーストの現れる水深の間隔がより大きくなり、海底エコーと送信ゴーストが重なって一部海底エコーが認識しにくい箇所がなくなる。
【0050】
最初、送信回数50回/秒で海底エコーを送信ゴーストの間に捉えていたとする。海底が徐々に深くなって送信ゴーストと海底エコーが重なりそうになると送信回数を50回/秒から40回/秒にすることによって海底エコーと送信ゴーストは重なることなく送信ゴーストの間に海底エコーを捉えることができる。送信周期を変更するアルゴリズムについて以下説明する。
【0051】
相関後の受信信号が送信ゴーストと重ならない条件について
図23を参照して説明する。
図23Aは、順次送信される送信信号(TXGC1,TXGC2,TXGC3,・・・)及び受信信号(TXGC1,TXGC2,TXGC3,・・・)を示し、
図23Bは、これらの送信信号の相関後の信号を示す。相関後の鋭いピークを持つ波形が送信信号に対応する受信信号である。下記のようにパラメータを表記する。
【0052】
送信周期 Tint=M(1/sec)
送信間隔 Tdur=1/M(sec)
ターゲットまでの距離 Dist(m)
水中音速 c(m/sec)
送信パルス幅 Pwidth
【0053】
受信信号が送信パルスと重ならないための条件は、n回目の送信信号とn+1回目の送信信号の間に受信信号がくるように送信周期を可変することである。数式で表すと次の式となる。
【0054】
nTdur+2Pwidth<2Dist/c<(n+1)Tdur−Pwidth
【0055】
図24Aは送信回数が例えば50回/秒のゴールドコード送信信号を示し、
図24Bが相関後の出力信号を示す。
図24A及び
図24Bは、送信信号TXGC1に対応する受信信号RXGC1が送信信号TXGC4のゴーストと非常に接近している状態(重なり合う直前の状態)を示す。この結果、海底のエコーの表示が送信ゴーストの表示と非常に接近しているため、海底のエコーの表示が見にくくなる。
【0056】
そこで、ユーザの操作又は自動的に送信回数を40回/秒に変更する。
図24Cは変更後のゴールドコード送信信号を示し、
図24Dが相関後の出力信号を示す。このようにすると、受信信号RXGC1のタイミングを3番目の送信信号と4番目の送信信号の間とすることができ、海底のエコーの表示が見やすくなる。
【0057】
具体的に下記の条件で海底深度が100mのときの送信ゴーストと相関後の受信信号との関係を計算した。この場合のパラメータを次のように設定する。
図25が具体的な値を示している。
【0058】
送信周期 Tint=M(1/sec)=50回
送信間隔 Tdur=1/M(sec)=20msec
ターゲットまでの距離 Dist(m)=100m
水中音速 c(m/sec)
送信パルス幅 Pwidth=2.54ms
送信周波数 freq=200kHz
【0059】
受信信号が送信パルスと重ならないための条件は、次の式で表される。送信1からターゲットまでの時間2Dist/cは、133.3msなので、上記条件では6回目の送信と7回目の送信の間にターゲットからの受信信号が入ることになる。
【0060】
nTdur+2Pwidth<2Dist/c<(n+1)Tdur−Pwidth
=6×20+2×2.54<2×100/1500<7×20−2.54
=125.08<133.3<137.46
【0061】
この例ではターゲットからの受信信号が、125.08msと137.46msの間に存在する場合には、送信ゴーストと受信信号が重ならないことがわかる。
【0062】
上述した説明では、送信回数を減少させて送信ゴーストと受信信号が重ならないようにしている。しかしながら、逆に送信回数を増加させて送信ゴーストと受信信号が重ならないようにしてもよい。または、送信回数を増減可能としてもよい。
図26に示す例は、送信回数を増やして海底エコーと送信ゴーストが重ならないようにした例である。この例では
図26Aに示すように、海底が段々浅くなってきて海底エコーと送信ゴーストが重なってきている。
図26Bに示すように、海底エコーと送信ゴーストが重なってきそうになる寸前で送信回数を増やして送信間隔を狭めることによって送信ゴーストと海底エコーが重なることを回避している。
【0063】
図27は、一実施の形態の構成を示すブロック図である。
図5に示す音響測深装置に対して、送信周期変更計算回路16を追加した構成である。
図27では、上述した参考例によるゴースト除去回路11を設けている例であるが、必ずしもゴースト除去回路11を設ける必要はない。送信周期変更計算回路16は、送信トリガパルス発生器1に対して接続され、送信周期を可変するための回路である。送信周期変更計算回路16には、信号検波回路9の出力が供給されている。
【0064】
送信周期変更計算回路16の動作を
図28のフローチャートを参照して説明する。最初は、送信回数のデフォルトの値例えば50回/秒に設定する(ステップST1)。
ステップST2(判定A)において、送信ゴーストの間に海底エコーが存在しているかどうかを判定する。すなわち、上述した数式で示す受信信号が送信パルスと重ならないための条件が満たされているかどうかが判定される。判定結果が肯定ならば、そのまま50回/秒を継続する。
ステップST2(判定A)の判定結果が否定の場合、処理がステップST3(判定B)に移る。
【0065】
ステップST3(判定B)では、
図26に示したように、測定対象の水深が段々浅くなってきているかどうかが調べられる。判定結果が肯定の場合には、処理がステップST4に移る。ステップST4において、送信回数が増加され、受信信号がゴーストと重ならないようにする。ステップST3の判定結果が否定の場合には、処理がステップST5(判定C)に移る。
【0066】
ステップST5(判定C)では、
図22に示したように、測定対象の水深が段々深くなってきているかどうかが調べられる。判定結果が肯定の場合には、処理がステップST6に移る。ステップST6において、送信回数が減少され、受信信号がゴーストと重ならないようにする。ステップST5の判定結果が否定の場合には、処理がステップST1に移る。
【0067】
上述した処理は、一例であって、送信回数の増減を行うための判定を上述した記述と逆にしても良い。この場合は、一瞬海底エコーと送信ゴーストは交差するが、その後は送信ゴーストの間に海底エコーがくるからである。
【0068】
<3.変形例>
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、上述の各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、上述の実施の形態において挙げた構成、方法、工程、形状、材料及び数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料及び数値などを用いてもよい。例えば本発明はマルチビーム音響測深装置、開口合成ソナーに対して
も適用することができる。
【解決手段】移動体に設置され、水中の測定対象を探知する音響測深装置において、疑似雑音系列発生回路及び送信タイミングの疑似雑音系列信号によって搬送波信号を変調して送信信号を形成する変調回路を有する送信信号形成部と、送信信号を超音波として水中に送出する送信部と、真のエコーと、送信信号のゴーストと、受信信号のゴーストを含む受信信号を受信する受信部と、受信信号を疑似雑音系列信号によって相関処理を行うことによって、送信信号及び真のエコーの時間差に基づいて測定対象までの距離を測定する相関器と、送信信号の送信間隔を変更し、真のエコーが送信ゴーストとタイミングが重なり合わないようにする送信周期変更回路とを備え、送信信号の周期は、水中の音波の速度Vu、測定対象までの距離をDの場合に、(2D/Vu)以下とする。