特許第6402236号(P6402236)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6402236フットボール用シューズのアッパーおよびそれを用いたフットボール用シューズ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6402236
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】フットボール用シューズのアッパーおよびそれを用いたフットボール用シューズ
(51)【国際特許分類】
   A43B 5/02 20060101AFI20181001BHJP
   A43B 23/02 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   A43B5/02
   A43B23/02 102
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-238295(P2017-238295)
(22)【出願日】2017年12月13日
【審査請求日】2018年4月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 雄一
(72)【発明者】
【氏名】家田 敢
【審査官】 片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2006/048413(US,A1)
【文献】 特開2013−154251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 5/02
A43B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッパー本体を備えるフットボール用シューズのアッパーであって、
前記アッパー本体は、前記シューズの外側に配置されたアウターと、該アウターの内側に積層配置されたインナーとを有し、
前記アッパー本体には、前記アウターと前記インナーとの間に積層配置され、着用者の足の少なくとも内甲側のMP関節に対応する位置をまたいで着用者の前足部の前側から前記MP関節よりも後方に向かって線状に延びる第1クッション材が設けられており、
前記第1クッション材は、
前記アッパーにおいて前記MP関節に対応する位置よりも前側に位置する前側領域に形成された前側クッション部と、
前記前側クッション部と連続しかつ前記アッパーにおいて前記MP関節に対応する位置よりも後側に位置する後側領域に形成された後側クッション部とを有し、
前記後側クッション部は、前記第1クッション材の長さ方向に直交する線幅が前記前側クッション部の該線幅よりも大きくなるように構成されかつ厚みが前記前側クッション部の厚みよりも大きくなるように構成されている、フットボール用シューズのアッパー。
【請求項2】
請求項1に記載のフットボール用シューズのアッパーにおいて、
前記第1クッション材は、前記線幅が、内甲側における前足部の前側から後端部に向かうにつれて徐々に大きくなるように構成されている、フットボール用シューズのアッパー。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフットボール用シューズのアッパーにおいて、
前記第1クッション材は、前記前側クッション部の前端の前記線幅が前記後側クッション部の後端の前記線幅の半分以下になるように構成されている、フットボール用シューズのアッパー。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載のフットボール用シューズのアッパーにおいて、
前記第1クッション材は複数設けられており、
前記複数の第1クッション材は、その長さ方向に交差する方向に互いに間隔をあけて配置されている、フットボール用シューズのアッパー。
【請求項5】
請求項に記載のフットボール用シューズのアッパーにおいて、
前記アウターと前記インナーとの間に積層配置され、前記複数の第1クッション材と交差するように線状に延びる第2クッション材をさらに有し、
前記第2クッション材は、前記各第1クッション材と一体形成されている、フットボール用シューズのアッパー。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載のフットボール用シューズのアッパーにおいて、
外甲側において前記アウターと前記インナーとの間に積層配置され、線状に延びる複数の第3クッション材をさらに有し、
前記各第3クッション材は、前記第1クッション材とは異なる位置に配置されている、フットボール用シューズのアッパー。
【請求項7】
請求項に記載のフットボール用シューズのアッパーにおいて、
前記第3クッション材と前記アウターとの間および前記第3クッション材と前記インナーとの間のうち少なくとも一方には、前記アッパーを補強する補強部材が積層配置されている、フットボール用シューズのアッパー。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載のアッパーを備える、フットボール用シューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フットボール用シューズのアッパーおよびそれを用いたフットボール用シューズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から例えば特許文献1のようなシューズのアッパーが知られている。この特許文献1のアッパーは、内側層と外側層との間にポリマー材料からなる中間層を備えている。そして、この中間層は、一定の線幅を有する複数の線状部によって構成されたメッシュ構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0048413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、サッカーなどのフットボールでは、競技中におけるプレイヤー(シューズの着用者)の動作が多様であることから、トラップやキックなど、場面に応じて足の各部位を適宜使い分けるのが一般的である。すなわち、フットボール用のシューズでは、足の各部位に対して様々な動作に対応する異なる特性が求められている。
【0005】
一方、特許文献1のアッパーでは、メッシュ構造を構成する線状部の線幅が一定となるように形成されている。すなわち、このアッパーは、着用者の足の部位にかかわらず一定のクッション性が発揮されるように構成されている。
【0006】
しかしながら、着用者がボールを例えば足の前後方向略中央の部位でトラップするときに、当該部位に対応する位置に配置された線状部が有するクッション性が十分でない場合には、ボールの勢いを線状部により適切に抑えることができないおそれがあった。また、着用者が例えば足の爪先部でボールを蹴ったりタッチしたりするときには、爪先部付近に対応する位置に配置された線状部がボールに当接して、ボールがシューズに触れた際の感覚が着用者の足に伝わり難いことがあった。
【0007】
このように、特許文献1のアッパーでは、上述のように足の各部位に対して様々な動作に対応する異なる特性を十分に発揮することが困難となり、改善の余地があった。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、着用者の足の部位毎に異なる特性を付与することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
具体的には、本発明の第1の形態は、アッパー本体を備えるフットボール用シューズのアッパーに係り、アッパー本体は、シューズの外側に配置されたアウターと、該アウターの内側に積層配置されたインナーとを有している。アッパー本体には、アウターとインナーとの間に積層配置され、着用者の足の少なくとも内甲側のMP関節に対応する位置をまたいで着用者の前足部の前側から前記MP関節よりも後方に向かって線状に延びる第1クッション材が設けられている。第1クッション材は、アッパーにおいてMP関節に対応する位置よりも前側に位置する前側領域に形成された前側クッション部と、前側クッション部と連続しかつアッパーにおいてMP関節に対応する位置よりも後側に位置する後側領域に形成された後側クッション部とを有している。そして、後側クッション部は、第1クッション材の長さ方向に直交する線幅が前側クッション部の線幅よりも大きくなるように構成されかつ厚みが前側クッション部の厚みよりも大きくなるように構成されていることを特徴とする。
【0010】
この第1の形態では、第1クッション材により、MP関節に対応する位置を含めた着用者の足の内甲側に対してクッション性を付与することが可能となる。そして、第1クッション材は、後側クッション部の線幅が前側クッション部の線幅よりも大きくなるように構成されている。すなわち、アッパーの後側領域では、後側クッション部により前側領域と比較してクッション性が高められている。このため、例えば着用者がボールを足の内甲側においてMP関節に対応する位置よりも後側の部位でトラップしたときに、ボールの勢いを後側クッション部により適切に抑えることが可能となる。つまり、ボールを、足の内甲側におけるMP関節の後側部分でトラップしやすくなる。これに対し、アッパーの前側領域では、前側クッション部により後側領域と比較してクッション性が低くなる反面、アウターおよびインナーのみで構成されたアッパー本体の占有率が相対的に高くなっている。このため、ボールがシューズの前側領域に触れた際の感覚が着用者の足に伝わり易くなる。すなわち、前側領域では、アッパー本体および前側クッション部により素足に近い感覚を着用者に付与することが可能となる。さらに、前側クッション部および後側クッション部における厚みの差により、後側領域のクッション性が前側領域に比べて高くなっている。したがって、第1の形態では、着用者の足の部位毎に異なる特性を付与することができる。
【0011】
第2の形態は、第1の形態において、第1クッション材は、線幅が、内甲側における前足部の前側から後端部に向かうにつれて徐々に大きくなるように構成されていることを特徴とする。
【0012】
この第2の形態では、第1クッション材のクッション性がアッパーの内甲側において前側領域から後側領域に向かって連続的に高められている。つまり、第2の形態では、第1クッション材のクッション性が前後方向において極端に変化しないようになっている。その結果、足の部位毎に急激な変化が生じないようになることから、足の部位毎に異なる特性を適切に付与することができる。
【0013】
第3の形態は、第1または第2の形態において、第1クッション材は、前側クッション部の前端の線幅が後側クッション部の後端の線幅の半分以下になるように構成されていることを特徴とする。
【0014】
この第3の形態では、第1クッション材のクッション性を、違和感が生じない程度に、アッパーの内甲側において前側領域から後側領域に向かって連続的に高めることができる。
【0015】
第4の形態は、第1〜第の形態のいずれか1つにおいて、第1クッション材は複数設けられており、複数の第1クッション材は、その長さ方向に交差する方向に互いに間隔をあけて配置されていることを特徴とする。
【0016】
この第の形態では、第1クッション材が有する特性を維持しつつ、アッパー本体の広範囲に亘ってクッション性を適切に高めることができる。
【0017】
の形態は、第の形態において、アウターとインナーとの間に積層配置され、複数の第1クッション材と交差するように線状に延びる第2クッション材をさらに有し、第2クッション材は、各第1クッション材と一体形成されていることを特徴とする。
【0018】
この第の形態では、複数の第1クッション材および第2クッション材が一体形成されていることから、特に第1クッション材について、位置ずれを未然に防止し、あるいは型崩れが生じないようにすることができる。
【0019】
の形態は、第1〜の形態のいずれか1つにおいて、外甲側においてアウターとインナーとの間に積層配置され、線状に延びる複数の第3クッション材をさらに有し、各第3クッション材は、第1クッション材とは異なる位置に配置されていることを特徴とする。
【0020】
この第の形態では、複数の第3クッション材により第1クッション材が設けられていない部分に、クッション材を設けることができる。このため、アッパーの外甲側にもクッション性を付与することができる。
【0021】
の形態は、第の形態において、第3クッション材とアウターとの間および第3クッション材とインナーとの間のうち少なくとも一方には、アッパーを補強する補強部材が積層配置されていることを特徴とする。
【0022】
この第の形態では、補強部材によりアッパーの外甲側を補強することが可能となる。特に、補強部材によりアッパーによる足のホールド感が高められる結果、例えば左右方向の切り返し動作で外甲側に向かう体重移動により生じる足の負荷を低減することができる。
【0023】
の形態は、第1〜の形態いずれか1つのフットボール用シューズのアッパーを備えるフットボール用シューズである。
【0024】
この第の形態では、フットボールシューズにおいて、着用者の足の部位毎に異なる特性を付与することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明によると、着用者の足の部位毎に異なる特性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係るシューズを示す斜視図である。
図2図2は、シューズを上方から見て示す平面図である。
図3図3は、第1クッション材を足の骨格構造と併せて上方から見て概略的に示すシューズの平面図である。
図4図4は、シューズを内甲側から見て示す側面図である。
図5図5は、第1クッション材を足の骨格構造と併せて内甲側から見て概略的に示すシューズの側面図である。
図6図6は、シューズを外甲側から見て示す側面図である。
図7図7は、アッパーの展開図である。
図8図8は、図7におけるVIII-VIII線断面図である。
図9図9は、図7におけるIX-IX線断面図である。
図10図10は、図7におけるX-X線断面図である。
図11図11は、本発明の第2実施形態に係るシューズを示す図2相当図である。
図12図12は、本発明の第2実施形態に係るシューズを示す図7相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の各実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0028】
(第1実施形態)
図1図4は、第1実施形態に係るフットボール用シューズSの全体を示す。このシューズSは、サッカー、ラグビー、アメリカンフットボール等の各種のフットボールに用いられるシューズとして適用される。
【0029】
ここで、シューズSは、左足用シューズのみを例示している。右足用シューズは、左足用シューズと左右対称になるように構成されている。このため、以下の説明では、左足用シューズのみについて説明し、右足用シューズの説明は省略する。また、以下の説明において、上方(上側)および下方(下側)とはシューズSの上下方向の位置関係を表し、前方(前側)および後方(後側)とはシューズSの前後方向の位置関係を表し、内甲側および外甲側とはシューズSの足幅方向の位置関係を表すものとする。
【0030】
図1図4に示すように、シューズSは、着用者の足裏面を支持するソール1と、着用者の足を覆うアッパー2とを備えている。
【0031】
ソール1は、例えば軟質弾性部材からなる。具体的に、ソール1は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等の熱可塑性樹脂やその発泡体、ポリウレタン(PU)等の熱硬化性樹脂やその発泡体により構成されている。ソール1の下面には、複数のスタッド11,11,…が設けられている。
【0032】
(アッパー)
図1図6に示すように、アッパー2は、ソール1の上方に設けられている。アッパー2は、着用者の前足部Fの爪先側から後足部Hの踵側まで覆うアッパー本体21を備えている。アッパー本体21は、着用者の足の形状に適合しかつ足を適切に保護するように構成されている。
【0033】
図3に示すように、アッパー2は、前側領域22および後側領域23を含んでいる。具体的に、前側領域22は、着用者の足のMP関節(図3に示した符号MP)に対応する位置よりも前側に位置する領域である。一方、後側領域23は、MP関節に対応する位置よりも後側に位置する領域である。
【0034】
アッパー2の後部上面には、履き口部5が開口している。この履き口部5は、着用者の足の足首周囲に沿うように前後方向を長径とする略楕円形状に形成されている。一方、アッパー2の前部には足挿入用開口部6が設けられている。この足挿入用開口部6は、履き口部5の前端部に連続しかつ履き口部5の前端部から前方向に延びるように開口している。この足挿入用開口部6は、着用者の足の甲部に位置するように形成されている。また、足挿入用開口部6の前端部は、着用者の足の前足部Fにおける前後方向略中央に対応する位置まで延びている。
【0035】
(アッパー本体)
図8図10に示すように、アッパー本体21は、シューズSの外側(シューズSの外部から見て表面側)に配置されたアウター25と、アウター25の内側に積層配置されたインナー26とを有している。アウター25は、例えば合成皮革からなる。インナー26は、例えばポリエステル糸の織物からなる。アウター25およびインナー26は、接着層41により互いに貼り合わされている。
【0036】
なお、アッパー本体21は、後述する第1〜第3クッション材31〜33を設けた部分が他の部分と比較して厚くなりかつ外側に向かって湾曲状に膨らむようになっている(図8図10参照)。
【0037】
(第1クッション材)
図1図7に示すように、アッパー本体21の内甲側には、複数の第1クッション材31,31,…(図示例では3つ)が設けられている。各第1クッション材31は、例えばウレタンフォームからなり、アウター25とインナー26との間に接着層41を介して積層配置されている。なお、各第1クッション材31は、厚みが積層前の状態において一定となるように形成されている。
【0038】
図3および図5に示すように、各第1クッション材31の前端部は、アッパー2の前側領域22に配置されている。具体的に、各第1クッション材31の前端部は、前側領域22においてアッパー2の足幅方向中央部の外甲側寄りに位置している。また、各第1クッション材31の前端部は、前足部Fの爪先部よりも前側に対応する位置に配置されている。
【0039】
各第1クッション材31は、前側領域22から後側領域23に亘って緩やかな曲線状となるように延びている。具体的に、各第1クッション材31は、前側領域22における前足部Fの爪先部に対応する位置からMP関節に対応する位置をまたいで後側領域23に向かって延びている。
【0040】
ここで、第1クッション材31,31,…は、各第1クッション材31の長さ方向に直交する方向(以下「直交方向」という)に互いに間隔をあけて配置されている。そして、前端部が最も前側に位置する第1クッション材31は、後端部が例えば前足部Fにおける足の第1中足骨MT1に対応する位置に位置するように配置されている。その他の第1クッション材31,31は、後端部が後足部Hに対応する位置に位置するように配置されている。
【0041】
各第1クッション材31は、前側領域22に形成された前側クッション部31aと、後側領域23に形成された後側クッション部31bとを有している。前側クッション部31aと後側クッション部31bとは互いに連続している。
【0042】
図4および図5に示すように、各第1クッション材31は、直交方向の線幅が前端部から後端部に向かうにつれて徐々に大きくなるように構成されている。具体的に、図8および図9に示すように、前側クッション部31aの前端部は、その線幅W1が後側クッション部31bにおける後端部の線幅W2の半分以下となるように構成されている。すなわち、後側クッション部31bは、その線幅が前側クッション部31aの線幅よりも大きくなるように構成されている。
【0043】
第1クッション材31は、その厚みが前端部から後端部に向かうにつれて徐々に大きくなるように構成されている。第1クッション材31において、前側クッション部31aの前端部は、その厚みT1が後側クッション部31bの後端の厚みT2の半分以下となるように構成されている。すなわち、後側クッション部31bは、その厚みが前側クッション部31aの厚みよりも大きくなるように構成されている。
【0044】
(第2クッション材)
図1および図2に示すように、アッパー本体21には、複数の第2クッション材32,32(図示例では2つ)が設けられている。第2クッション材32,32は、第1クッション材31と同じ材料からなり、第1クッション材31,31,…と一体形成されている。具体的に、第1クッション材31,31,…および第2クッション材32,32は、例えば平板状のクッション材を打ち抜き加工することにより得られる。
【0045】
各第2クッション材32は、各第1クッション材31と同様に、アウター25とインナー26との間に圧縮された状態で接着層41を介して積層配置されている。なお、各第2クッション材32は、線幅が略一定となるように形成されている。また、各第2クッション材32は、厚みが積層前の状態において一定となるように形成されている。
【0046】
各第2クッション材32は、各第1クッション材31と交差するように線状に延びている。具体的に、一方の第2クッション材32は、アッパー2の足幅方向中央に配置されていて、第1クッション材31,31の前端部同士を互いに接続している。また、他方の第2クッション材32は、アッパー2の内甲側に配置されていて、第1クッション材31,31の中間部同士を接続している。
【0047】
(第3クッション材)
図2および図6に示すように、アッパー2には、複数の第3クッション材33,33,…が設けられている。第3クッション材33,33,…は、第1クッション材31と同じ材料からなり、各々が互いに一体形成されている。具体的に、第3クッション材33,33,…は、例えば平板状のクッション材を打ち抜き加工することにより得られる。
【0048】
第3クッション材33,33,…は、アッパー2の外甲側における後側領域23に配置されている。また、第3クッション材33,33,…は、アウター25とインナー26との間に圧縮された状態で接着層41を介して積層配置されている。なお、各第3クッション材33は、厚みが積層前の状態において一定となるように形成されている。
【0049】
図10に示すように、各第3クッション材33には、アッパー2を補強するための補強部材33aが設けられている。補強部材33aは、例えば不織布からなる。補強部材33aは、各第3クッション材33とインナー26との間に積層配置されていて、インナー26に対向する各第3クッション材33の面の全域に貼り付けられている。
【0050】
(アッパーの製造方法)
次に、アッパー2の製造方法を説明する。
【0051】
まず、上下に重ね合わせた2枚のホットメルトシートをアウター25とインナー26との間に配置する。また、第1クッション材31,31,…および第2クッション材32,32を、所定の位置においてホットメルトシート同士の間に配置する。これと同様に、第3クッション材33,33,…を、補強部材33aがインナー26側に位置するように所定の位置においてホットメルトシート同士の間に配置する。
【0052】
この後、これらの部材に対して加熱しながら上下方向に圧縮する処理を施す。この処理を行った後、ホットメルトシートを配置した部分が接着層41となり、各部材が積層配置された状態となる。以上により、アッパー2が完成する。
【0053】
なお、上述のように、第1および第2クッション材31,32は一体形成されている。このため、アッパーの製造時に、各クッション材31,32の位置決めが容易となる。また各クッション材31,32の変形が抑制される。
【0054】
[第1実施形態の作用効果]
以上のように、アッパー本体21には、少なくとも内甲側のMP関節に対応する位置をまたいで着用者の前足部Fの前側からMP関節よりも後方に向かって線状に延びる第1クッション材31,31,…が設けられている。この第1クッション材31,31,…により、MP関節に対応する位置を含めた着用者の足の内甲側に対してクッション性を付与することが可能となる。そして、各第1クッション材31は、後側クッション部31bの線幅が前側クッション部31aの線幅よりも大きくなるように構成されている。すなわち、アッパー2の後側領域23では、後側クッション部31bにより前側領域22と比較してクッション性が高められている。このため、例えば着用者がボールを足のMP関節に対応する位置よりも後側の部位でトラップしたときに、ボールの勢いを後側クッション部31bにより適切に抑えることが可能となる。つまり、ボールを、足の内甲側におけるMP関節の後側部分でトラップしやすくなる。これに対し、アッパー2の前側領域22では、前側クッション部31aにより後側領域23と比較してクッション性が低くなる反面、アウター25およびインナー26のみで構成されたアッパー本体21の占有率が相対的に高くなっている。このため、ボールがシューズSの前側領域22に触れた際の感覚が着用者の足に伝わり易くなる。すなわち、前側領域22では、アッパー本体21および前側クッション部31aにより素足に近い感覚を着用者に付与することが可能となる。したがって、本発明の実施形態に係るシューズSのアッパー2では、着用者の足の部位毎に異なる特性を付与することができる。
【0055】
また、各第1クッション材31は、直交方向の線幅が、前足部Fの前側から後端部に向かうにつれて徐々に大きくなっている。このため、各第1クッション材31のクッション性がアッパー2の内甲側において前側領域22から後側領域23に向かって連続的に高められている。つまり、各第1クッション材31のクッション性が前後方向において極端に変化しないようになっている。その結果、足の部位毎に急激な変化が生じないようになることから、足の部位毎に異なる特性を適切に付与することができる。
【0056】
特に、各前側クッション部31aの前端の線幅W1が各後側クッション部31bの後端の線幅W2の半分以下になっている。このため、第1クッション材31のクッション性を、違和感が生じない程度に、アッパー2の内甲側において前側領域22から後側領域23に向かって連続的に高めることができる。
【0057】
さらに、2つの第1クッション材31,31が、第1中足骨MT1の後側に位置する中足部Mまで設けられている。また、第1クッション材31,31は、線幅が後側へ向かうにつれて徐々に大きくなるように構成されている。このため、後側クッション部31b,31bにより、後側領域23においてクッション性を発揮可能な箇所が中足部Mまで拡がっている。すなわち、ボールをトラップ可能な領域が中足部Mまで拡がっている。このため、例えば意に反してボールが足の中足部M付近に当たってしまったときでも、第1クッション材31,31の後側クッション部31b,31bにより中足部Mの位置でボールを足元にトラップすることができる。
【0058】
また、各後側クッション部31bは、厚みが各前側クッション部31aの厚みよりも大きくなるように構成されている。このため、各前側クッション部31aおよび各後側クッション部31bにおける厚みの差により、後側領域23のクッション性が前側領域22に比べて高くなっている。これにより、足の部位毎に異なる特性をより一層付与しやすくすることができる。
【0059】
また、各第1クッション材31は、直交方向に互いに間隔をあけて配置されている。このため、各第1クッション材31が有する特性を維持しつつ、アッパー本体21の広範囲に亘ってクッション性を適切に高めることができる。
【0060】
また、第1クッション材31,31,…および第2クッション材32,32が一体形成されている。このため、特に各第1クッション材31について、位置ずれを未然に防止し、あるいは型崩れが生じないようにすることができる。
【0061】
また、各第3クッション材33が設けられている。このため、アッパー2の外甲側の後側領域23にもクッション性を付与することができる。
【0062】
さらに、各第3クッション材33は、補強部材33aを備えている。このため、アッパー2の外甲側を補強することが可能となる。特に、補強部材33aによりアッパー2による足のホールド感が高められる結果、例えば左右方向の切り返し動作で外甲側に向かう体重移動により生じる足の負荷を低減することができる。
【0063】
[第1実施形態の変形例]
上記第1実施形態では、第2クッション材32,32および第3クッション材33,33,…を設けた形態を示したが、この形態に限られない。すなわち、上記第1実施形態の変形例として、第2および第3クッション材32,33を設けずに、第1クッション材31,31,…のみを設けた形態としてもよい。かかる形態であっても、上記第1実施形態と同様に、着用者の足の部位毎に異なる特性を付与することができる。
【0064】
また、上記第1実施形態の更なる変形例として、第1クッション材31,31,…と同様の構成を有するクッション材(図示せず)を、アッパー2の外甲側に別途設けた形態としてもよい。
【0065】
[第2実施形態]
図11および図12は、本発明の第2実施形態に係るシューズSを示す。この実施形態に係るシューズSでは、主に第4クッション材34,34,…が追加されている点が上記第1実施形態に係るシューズSと異なっている。なお、この実施形態に係るシューズSの他の構成は、第1実施形態に係るシューズSの構成と同様である。このため、以下の説明では、図1図10と同じ部分について同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0066】
(第4クッション材)
図11および図12に示すように、アッパー本体21には、複数の第4クッション材34,34,…(図示例では6つ)が設けられている。第4クッション材34,34,…は、第1クッション材31,31,…および第2クッション材32,32,…と同じ材料からなる。第4クッション材34,34,…は、第1クッション材31,31,…および第2クッション材32,32,…と一体形成されている。具体的に、第1クッション材31,31,…、第2クッション材32,32および第4クッション材34,34,…は、例えば平板状のクッション材を打ち抜き加工することにより得られる。
【0067】
各第4クッション材34は、他のクッション材31,32,33と同様に、アウター25とインナー26との間に圧縮された状態で接着層41を介して積層配置されている。なお、各第4クッション材34は、線幅および厚みが前端部から後端部に向かうにつれて徐々に大きくなるように構成されている。また、各第4クッション材34は、厚みが積層前の状態において一定となるように形成されている。
【0068】
第4クッション材34,34,…のうち、内甲側に配置された2つの第4クッション材34,34は、第1クッション材31,31,…と略平行に延びている。
【0069】
具体的に、内甲側の第4クッション材34,34のうち、前側に位置する第4クッション材34は、最も前側に位置する第1クッション材31のさらに前方に配置されている。内甲側の前側の第4クッション材34は、前端部および後端部が前側領域22内に位置するように配置されている。
【0070】
内甲側の第4クッション材34,34のうち、後側に位置する第4クッション材34は、前端部が最も後側に位置する第1クッション材31の前端部よりも後方に位置する一方、後端部が最も後側に位置する第1クッション材31のやや前方に位置するように構成されている。内甲側の後側の第4クッション材34は、前端部および後端部が、後側領域23内に位置するように配置されている。
【0071】
第4クッション材34,34,…のうち、外甲側に配置された4つの第4クッション材34,34,…は、アッパー2の足幅方向中央に配置された第2クッション材32から後方へ緩やかな曲線状となるように延びている。
【0072】
具体的に、外甲側の第4クッション材34,34,…のうち、最も前側に位置する第4クッション材34は、前端部が、内甲側の前側の第4クッション材34の前端部と同じ位置に位置するように形成されている。また、その他の外甲側の第4クッション材34,34,…の前端部はそれぞれ、各第1クッション材31の前端部と同じ位置に位置している。
【0073】
(第2クッション材)
第2クッション材32,32は、第1クッション材31,31,…および第4クッション材34,34,…と交差している。具体的に、アッパー2の足幅方向中央に配置された第2クッション材32は、各第1クッション材31、外甲側の各第4クッション材34、および内甲側の前側の第4クッション材34の前端部同士を接続している。内甲側に配置された第2クッション材32は、内甲側において、各第1クッション材31および内甲側の各第4クッション材34の中間部同士を接続している。
【0074】
[第2実施形態の作用効果]
この実施形態では、第4クッション材34,34,…が設けられていることから、シューズSの広い範囲にクッション材をより多く配置することが可能となる。このため、シューズSのクッション性をより一層向上させることができる。
【0075】
[その他の実施形態]
上記各実施形態では、各第1クッション材31における直交方向の線幅が内甲側における前端部から後端部に向かうにつれて徐々に大きくなる形態を示したが、この形態に限定されない。例えば、各第1クッション材31として、前側クッション部31aの線幅を一定の幅を有する第1の幅寸法となるように形成する一方、後側クッション部31bの線幅を第1の幅寸法より太い一定の幅を有する第2の幅寸法となるように形成した形態としてもよい。要は、後側クッション部31bは、直交方向の線幅が前側クッション部31aの線幅よりも大きくなるように構成されていればよい。
【0076】
また、上記各実施形態として、補強部材33aを、各第3クッション材33とインナー26との間に積層配置した形態を示したが、この形態に限定されない。例えば、補強部材33aを、各第3クッション材33とアウター25との間に積層配置してもよい。または、補強部材33aを、各第3クッション材33とインナー26との間および各第3クッション材33とアウター25との間のそれぞれに積層配置してもよい。すなわち、補強部材33aは、第3クッション材33,33,…とアウター25との間および第3クッション材33,33,…とインナー26との間のうち少なくとも一方に積層配置されていればよい。
【0077】
また、上記各実施形態として、第1クッション材31の前端部がアッパー2の足幅方向中央部よりも外甲側寄りに位置する形態を示したが、この形態に限定されない。すなわち、各第1クッション材31の前端部がアッパー2の足幅方向中央部よりも内甲側寄りに位置していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、サッカー、ラグビー、アメリカンフットボール等の各種のフットボール用シューズのアッパーおよびそれを用いたシューズとして産業上の利用が可能である。
【符号の説明】
【0079】
F 前足部
M 中足部
MT1 第1中足骨
S シューズ
2 アッパー
21 アッパー本体
22 前側領域
23 後側領域
25 アウター
26 インナー
31 第1クッション材
31a 前側クッション部
31b 後側クッション部
32 第2クッション材
33 第3クッション材
33a 補強部材
【要約】
【課題】フットボール用シューズのアッパーにおいて、着用者の足の部位毎に異なる特性を付与する。
【解決手段】アウター25とインナー26との間に積層配置され、かつ着用者の足の少なくとも内甲側のMP関節に対応する位置をまたいで着用者の前足部Fの前側からMP関節よりも後方に向かって線状に延びる第1クッション材31,31,…を設ける。第1クッション材31,31,…の後側クッション部31b,31b,…を、直交方向の線幅が前側クッション部31a,31a,…の線幅よりも大きくなるように構成する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12