特許第6402238号(P6402238)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 花王株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6402238
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】グリセリン酸エステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 317/32 20060101AFI20181001BHJP
   C07D 317/72 20060101ALI20181001BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20181001BHJP
【FI】
   C07D317/32CSP
   C07D317/72
   !C07B61/00 300
【請求項の数】16
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-250263(P2017-250263)
(22)【出願日】2017年12月26日
(65)【公開番号】特開2018-104430(P2018-104430A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2018年4月16日
(31)【優先権主張番号】特願2016-253836(P2016-253836)
(32)【優先日】2016年12月27日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100118131
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 渉
(72)【発明者】
【氏名】青木 崇
【審査官】 三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−219406(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/097840(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/041845(WO,A1)
【文献】 ABRAMOVICH Adi, et al.,Organocatalytic oxidative dimerization of alcohols to esters,Synlett,2012年,Vol.23(15),p.2261-2265
【文献】 MERBOUH Nabyl, et al.,Oxoammonium Salts. 9. Oxidative Dimerization of Polyfunctional Primary Alcohols to Esters. An Intere,Journal of Organic Chemistry,2004年,Vol.69(15),p.5116-5119
【文献】 HON Yung-Son, et al.,Tishchenko reactions of aldehydes promoted by diisobutylaluminum hydride and its application to the,Tetrahedron,2007年,Vol.63(46),p.11325-11340
【文献】 ERMOLENKO Ludmila, et al.,An expedient one-step preparation of (S)-2,3-O-isopropylideneglyceraldehyde,Synlett,2001年,Vol.10,p.1565-1566
【文献】 HON Yung-Son, et al.,Tishchenko reactions and Oppenauer oxidation reactions of aldehydes promoted by diisobutylaluminum h,Tetrahedron Letters,2004年,Vol.45(16),p.3313-3315
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 317/32
C07D 317/72
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(II)で表される化合物を酸化的エステル化する工程を有する、下記式(I)で表される化合物の製造方法。
【化1】

(式(II)中、R及びRはそれぞれ独立して一価の炭化水素基を表すか、又は、R及びRは互いに結合して環構造を形成する。ただし、R及びRが同時にメチル基である場合を除く。)
【化2】

(式(I)中、R及びRはそれぞれ独立して一価の炭化水素基を表すか、又は、R及びRは互いに結合して環構造を形成する二価の炭化水素基を表す。ただし、R及びRが同時にメチル基である場合を除く。)
【請求項2】
前記酸化的エステル化する工程において、有機ニトロキシルラジカル、そのN−ヒドロキシ体及びそれらのオキソアンモニウムカチオンを含む塩から選ばれる化合物と、酸化剤と、塩基とを用いる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記有機ニトロキシルラジカルが、下記式(VIII)で表される化合物、下記式(IX)で表される化合物、又は下記式(X)で表される化合物である、請求項に記載の製造方法。
【化3】

(式(VIII)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基、スルホニルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、カルボキシ基、シアノ基、イソシアナト基、イソチオシアナト基、又はオキソ基を表す。式(IX)中、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。式(X)中、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。)
【請求項4】
前記酸化剤が塩素を含有する化合物からなる酸化剤である、請求項又はに記載の製造方法。
【請求項5】
前記塩基がピリジン骨格を有する複素環式芳香族アミンである、請求項のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
酸化的エステル化する工程の後に式(I)で表される化合物を分離する工程を有する、請求項1〜のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記式(I)で表される化合物を分離する工程における分離が、蒸留による分離である、請求項に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜いずれかに記載の製造方法で、前記式(I)で表される化合物を製造する工程、及び、該工程で製造した前記式(I)で表される化合物を、加水分解又は加アルコール分解する工程を有する、グリセリン酸、グリセリン酸塩、又は脱保護されたグリセリン酸エステルの製造方法。
【請求項9】
下記式(I)で表される化合物。
【化4】

(式(I)中、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1以上8以下の一価の炭化水素基を表すか、又は、R及びRは互いに結合して環構造を形成する炭素数2以上7以下の二価の炭化水素基を表す。ただし、R及びRが同時にメチル基である場合を除く。)
【請求項10】
前記Rが炭素数1以上8以下のアルキル基、かつRが炭素数2以上8以下のアルキル基である、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
前記Rが炭素数1又は2のアルキル基、かつRが炭素数2以上8以下のアルキル基である、請求項9又は10に記載の化合物。
【請求項12】
前記Rが炭素数1又は2のアルキル基、かつRが炭素数2以上4以下のアルキル基である、請求項9〜11のいずれかに記載の化合物。
【請求項13】
前記Rがメチル基であり、Rがエチル基である、請求項9〜12のいずれかに記載の化合物。
【請求項14】
前記R及びRが互いに結合して環構造を形成する炭素数3以上6以下の二価の炭化水素基である、請求項9に記載の化合物。
【請求項15】
前記R及びRが互いに結合してシクロペンタン環又はシクロヘキサン環を形成する、請求項9又は14に記載の化合物。
【請求項16】
下記式(II)で表される化合物及び下記式(V)で表される化合物の混合物を酸化的エステル化する工程を有する、下記式(I)で表される化合物の製造方法。
【化5】

(式(II)及び式(V)中、R及びRはそれぞれ独立して一価の炭化水素基を表すか、又は、R及びRは互いに結合して環構造を形成する。ただし、R及びRが同時にメチル基である場合を除く。)
【化6】

(式(I)中、R及びRはそれぞれ独立して一価の炭化水素基を表すか、又は、R及びRは互いに結合して環構造を形成する二価の炭化水素基を表す。ただし、R及びRが同時にメチル基である場合を除く。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なグリセリン酸エステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2位及び3位の水酸基が環状アセタール基として保護されたグリセリン酸骨格を有する化合物は、例えば、各種医薬品、化粧品、洗浄剤、ポリマーなどの原料として用途があるグリセリン酸及びそのエステルなどの合成中間体として有用である。
2位及び3位の水酸基が環状アセタール基として保護されたグリセリン酸骨格を有する化合物の例として、例えば非特許文献1〜4には、グリセロールとアセトンから製造可能な4−ヒドロキシメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン又はその酸化体である4−ホルミル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソランの二量化反応による、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルエステルの製造例が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】シンレット(Synlett)、第10巻、1565−1566頁、2001年
【非特許文献2】ザ・ジャーナル・オブ・オルガニック・ケミストリー(The Journal of Organic Chemistry)、第69巻、5116−5119頁、2004年
【非特許文献3】テトラへドロン(Tetrahedron)、第63巻、11325−11340頁、2007年
【非特許文献4】シンレット(Synlett)、第23巻、2261−2265頁、2012年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1〜4に記載されている2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルエステルの製造法は、以下の通りである。
【0005】
【化1】
【0006】
しかし、非特許文献1〜4に記載の2位及び3位の水酸基が環状アセタール基として保護されたグリセリン酸骨格を有する化合物は、前記のアセトン由来の化合物のみである。
また、非特許文献1〜4は新規な二量化反応手法の開発又は副生成物として得られた二量体化合物について記載された文献であり、2位及び3位の水酸基が環状アセタール基として保護されたグリセリン酸骨格を有する化合物の製造又はその後の誘導体展開の工業化を実現するための基質選択や反応条件に関する記述がない。
有機溶媒を用いる各種反応においては、触媒や副原料由来の無機塩などの副生成物を効率的に除去する目的で、有機層を水洗する工程が一般的に行われる。一方、目的化合物の水溶性が高いと、水洗工程で収率が低下し、経済的に不利になる、或いは水相から目的化合物を回収するための作業負荷が大きくなる。
本発明は、反応後の水洗工程における回収率が高く、製造時の作業付加が少ない、合成中間体としての応用が期待される新規なグリセリン酸エステル及びその製造方法を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記<1>及び<2>に関する。
<1> 下記式(II)で表される化合物を酸化的エステル化する工程を有する、下記式(I)で表される化合物の製造方法。
【0008】
【化2】

(式(II)中、R及びRはそれぞれ独立して一価の炭化水素基を表すか、又は、R及びRは互いに結合して環構造を形成する二価の炭化水素基を表す。ただし、R及びRが同時にメチル基である場合を除く。)
【0009】
【化3】

(式(I)中、R及びRはそれぞれ独立して一価の炭化水素基を表すか、又は、R及びRは互いに結合して環構造を形成する二価の炭化水素基を表す。ただし、R及びRが同時にメチル基である場合を除く。)
【0010】
<2> 下記式(I)で表される化合物。
【0011】
【化4】

(式(I)中、R及びRはそれぞれ独立して一価の炭化水素基を表すか、又は、R及びRは互いに結合して環構造を形成する二価の炭化水素基を表す。ただし、R及びRが同時にメチル基である場合を除く。)
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、反応後の水洗工程における回収率が高く、製造時の作業付加が少ない、合成中間体としての応用が期待される新規なグリセリン酸エステル及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[式(I)で表される化合物]
本発明の下記式(I)で表される化合物は、新規なグリセリン酸エステル(以下、「本発明のグリセリン酸エステル」、又は「本発明のエステルダイマー」ともいう。)である。
本発明のグリセリン酸エステルから、グリセリン酸及びそのエステル体を製造することができる。また、本発明のグリセリン酸エステルは、反応後の水洗工程における回収率が高く、製造時の作業付加が少ないという優れた効果も有する。
【0014】
【化5】

(式(I)中、R及びRはそれぞれ独立して一価の炭化水素基を表すか、又は、R及びRは互いに結合して環構造を形成する二価の炭化水素基を表す。ただし、R及びRが同時にメチル基である場合を除く。)
【0015】
式(I)中、R及びRはそれぞれ独立して一価の炭化水素基を表すか、又は、R及びRは互いに結合して環構造を形成する二価の炭化水素基を表す。
及びRの好ましい一態様としては、原料の入手性と反応性、ジオキソランや本発明のエステルダイマーの安定性、本発明のエステルダイマーのアセタール分解で副生するケトン回収容易性の観点から、好ましくはRが炭素数1以上8以下の一価の炭化水素基かつRが炭素数2以上8以下の一価の炭化水素基、より好ましくはRが炭素数1以上8以下のアルキル基かつRが炭素数2以上8以下のアルキル基、更に好ましくはRが炭素数1又は2のアルキル基かつRが炭素数2以上6以下のアルキル基、更に好ましくはRが炭素数1又は2のアルキル基かつRが炭素数2以上4以下のアルキル基、より更に好ましくはRがメチル基かつRがエチル基である。
及びRの他の好ましい一態様としては、R及びRは互いに結合して環構造を形成する二価の炭化水素基であり、前記の観点から、好ましくは炭素数2以上7以下の二価の炭化水素基、より好ましくは炭素数3以上6以下の二価の炭化水素基、更に好ましくは炭素数4以上5以下の二価の炭化水素基、より更に好ましくは炭素数5の二価の炭化水素基である。すなわち、R及びRを含む環構造が、好ましくは3〜8員環、より好ましくは4〜7員環、更に好ましくは5〜6員環、より更に好ましくは6員環である。R及びRを含む環構造は、シクロアルカン構造であることが好ましく、炭素数5又は6の環構造(シクロペンタン環又はシクロへキサン環)であることがより好ましく、シクロへキサン環であることが更に好ましい。
【0016】
なお、式(I)中、R及びRが互いに結合して環構造を形成した場合、式(I)は、式(I’)となる。
【0017】
【化6】

(式(I’)中、Rは環構造を形成する二価の炭化水素基を表す。)
【0018】
式(I’)中、Rを含む環構造は、好ましくは3〜8員環、より好ましくは4〜7員環、更に好ましくは5〜6員環、より更に好ましくは6員環である。Rを含む環構造は、シクロアルカン構造であることが好ましく、上述したように、シクロペンタン環又はシクロへキサン環を形成していることがより好ましく、シクロへキサン環を形成していることが更に好ましい。
すなわち、Rは、好ましくはエチレン基(−(CH−)、トリメチレン基(−(CH−)、テトラメチレン基(−(CH−)、ペンタメチレン基(−(CH−)、ヘキサメチレン基(−(CH−)又はヘプタメチレン基(−(CH−)、より好ましくはトリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基又はヘキサメチレン基、更に好ましくはテトラメチレン基又はペンタメチレン基、より更に好ましくはペンタメチレン基である。
【0019】
式(I)で表される化合物には、不斉炭素が2つ以上存在するため、不斉炭素数がnの場合、最多で2(2のn乗)種の立体異性体混合物となる。本発明において、式(I)で表される化合物は立体異性体混合物であってもよく、特に限定されない。
【0020】
<式(I)で表される化合物の製造方法>
本発明のエステルダイマーの製造方法は特に限定されないが、下記式(II)で表される化合物(以下、「ジオキソラン」ともいう。)を酸化的エステル化反応して製造することが好ましい。
【0021】
【化7】

(式(II)中、R及びRはそれぞれ独立して一価の炭化水素基を表すか、又は、R及びRは互いに結合して環構造を形成する二価の炭化水素基を表す。ただし、R及びRが同時にメチル基である場合を除く。)
【0022】
本発明において、ジオキソランとして、上記式(II)で表される化合物を単品で使用してもよく、式(II)で表される化合物と後述する式(V)で表される化合物(以下、「ジオキサン」ともいう。)との混合物を使用してもよい。なお、式(II)で表される化合物と式(V)で表される化合物の混合物は、混合物として市販されている製品を使用してもよいし、後述するように、式(II)で表される化合物と式(V)で表される化合物の混合物を製造して使用してもよく、特に限定されないが、安価に製造する観点から、ジオキソランとジオキサンの混合物を製造(合成)して、使用することが好ましい。
【0023】
〔ジオキソランの製造方法〕
本発明で使用するジオキソラン(式(II)で表される化合物)の製造方法は特に限定されず、一般的に広く知られている方法である、グリセロールと下記式(III)で表される化合物(以下、「ケトン」ともいう。)酸触媒存在下でアセタール化する方法(方法1)、又はグリセロールと下記式(IV)で表される化合物を酸触媒存在下でアセタール交換する方法(方法2)によって製造することが、原料の入手性、収率、及び反応操作の容易性の観点から好ましい。
すなわち、本発明のグリセリン酸エステルの製造方法は、下記工程1及び工程2を含むことが好ましい。
工程1:グリセロールと下記式(III)で表される化合物を酸触媒存在下でアセタール化する工程(工程1−1)、又はグリセロールと下記式(IV)で表される化合物を酸触媒存在下でアセタール交換する工程(工程1−2)
工程2:下記式(II)で表される化合物及び下記式(V)で表される化合物の混合物を酸化的エステル化する工程
【0024】
【化8】

(式(III)及び式(IV)中、R及びRは、式(I)におけるR及びRとそれぞれ同義であり、式(IV)中、Rはそれぞれ独立に、一価の炭化水素基を表す。)
【0025】
式(IV)中のRはそれぞれ独立に、一価の炭化水素基であり、原料の入手性の観点から、好ましくは炭素数1以上8以下の炭化水素基、アセタール交換反応で副生するアルコールを反応系外へ留去して反応を促進する観点から、より好ましくは炭素数1以上3以下の一価の炭化水素基、更に好ましくは炭素数1以上3以下の一価のアルキル基、より更に好ましくはメチル基である。
【0026】
通常、前記のアセタール化又はアセタール交換法で得られるジオキソランは、下記の反応式で示されるように、下記式(V)で表される化合物(ジオキサン)との混合物として得られる。
特に、上記式(III)で表される化合物及び式(IV)で表される化合物から得られるジオキソランは、95%以上の異性体化比率が得られる。
【0027】
【化9】
【0028】
上記方法1(工程1−1)又は方法2(工程1−2)で得られたジオキソラン(式(II)で表される化合物)とジオキサン(式(V)で表される化合物)の混合物は、そのまま又は精製した後に次工程の原料として用いることができるが、次工程での収率の観点から混合物を精製し未反応原料などを除去することが好ましく、精製の容易性の観点から蒸留精製することがより好ましい。
なお、精製により、ジオキソランとジオキサンとを分離することは困難であることから、ジオキソランとジオキサンの混合物の状態で、次工程の原料とすることが好ましい。
【0029】
〔酸化的エステル化〕
本発明のグリセリン酸エステルは、上記ジオキソラン(式(II)で表される化合物)を酸化的エステル化することによって得られる。
酸化的エステル化とは、広義には一級アルコールとアルコールからエステルを得る酸化反応の1種で、より一般的には同一の一級アルコール2分子からエステルダイマー1分子を得る反応であり、酸化的二量化などの別称もある。本発明において酸化的エステル化するとは、ジオキソラン(式(II)で表される化合物)から本発明のエステルダイマー(式(I)で表される化合物)を得る反応を行うこと意味する。
酸化的エステル化の方法としては、例えば均一系又は不均一系金属触媒を用いる方法、非特許文献2に記載の4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチル−1−オキソピペリジニウムテトラフルオロボラートとピリジンを用いる方法、非特許文献4に記載の触媒量の2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(以下、「TEMPO」ともいう。)、酸化剤及びピリジンを用いる方法などがある。
なお、前記ジオキソラン(式(II)で表される化合物)とジオキサン(式(V)で表される化合物)との混合物を酸化的エステル化すると、代表的には以下のような反応が生じる。
【0030】
【化10】
(式中、R及びRは、上述したとおりである。)
【0031】
上述の通り、本発明に用いるジオキソランは通常ジオキサンとの混合物であるが、酸化的エステル化工程において、反応条件によってはジオキソランからホルミルジオキソラン(式(VII)で表される化合物)が副生することがある。ホルミルジオキソランの副生量に制限はないが、本発明のエステルダイマーを高収率で得る観点から、ジオキソランから生成するホルミルジオキソランの収率は、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下、より更に好ましくは実質的に0%、より更に好ましくは0%である。ホルミルジオキソランの副生量を低下させるためには、後述する好ましい製造方法に従えばよい。
【0032】
同様に、ジオキソランとジオキサンの混合物を酸化的エステル化する工程において、反応条件に応じてジオキサンが反応しない、ジオキサンから上記式(VI)で表される化合物(以下、「ジオキサノン」ともいう。)が生成する、或いはジオキサノン以外の化合物が生成する、或いはこれら化合物の混合物が得られることがあるが、本発明のエステルダイマーの精製工程に悪影響を及ぼさない限りは、これら化合物の生成量や生成比に制限はない。
【0033】
本発明においては、式(I)で表される化合物が得られる限り、どのような酸化的エステル化方法も用いることができるが、高い反応活性を得る観点から、非特許文献2のような有機ニトロキシルラジカルのオキソアンモニウムカチオンを含む塩と、塩基とを用いる酸化的エステル化法、並びに非特許文献4のような有機ニトロキシルラジカル、そのN−ヒドロキシ体及びそれらのオキソアンモニウムカチオンを含む塩から選ばれる化合物と、酸化剤と、塩基とを用いる酸化的エステル化法(以下、「ニトロキシルラジカル法」ともいう。)から選ばれる酸化的エステル化法が好ましく、本発明のエステルダイマーの収率が高く、ホルミルジオキソランの収率が低い観点から、ニトロキシルラジカル法が好ましく、その中でも、有機ニトロキシルラジカル及び/又はそのN−ヒドロキシ体と、酸化剤と、塩基とを用いる酸化的エステル化法がより好ましい。
【0034】
(ニトロキシルラジカル法)
〔ニトロキシルラジカル種〕
本反応においては、ニトロキシルラジカル種として、酸化剤と組み合わせることでジオキソランに対する酸化的エステル化活性があるいずれの有機ニトロキシルラジカル、そのN−ヒドロキシ体及びそれらのオキソアンモニウムカチオンを含む塩から選ばれる化合物を用いることができる。
すなわち、ニトロキシルラジカル種として、有機ニトロキシルラジカル、そのN−ヒドロキシ体、及びそれらのオキソアンモニウムカチオンを含む塩から選ばれる少なくとも1つの化合物を使用することが好ましい。
高い酸化的エステル化活性が得られる観点から、有機ニトロキシルラジカルが、下記式(VIII)で表される化合物、下記式(IX)で表される化合物又は下記式(X)で表される化合物であることが好ましい。すなわち、ニトロキシルラジカル種は、下記式(VIII)で表される化合物、下記式(IX)で表される化合物又は下記式(X)で表される化合物、それらのN−ヒドロキシ体、及びそれらのオキソアンモニウムカチオンを含む塩から選ばれる化合物であることが好ましい。
【0035】
【化11】

(式(VIII)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基、スルホニルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、カルボキシ基、シアノ基、イソシアナト基、イソチオシアナト基、又はオキソ基を表す。式(IX)中、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。式(X)中、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。)
【0036】
式(VIII)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、水酸基(−OH)、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基、スルホニルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、カルボキシ基(−C(=O)−OH)、シアノ基(−C≡N)、イソシアナト基(−N=C=O)、イソチオシアナト基(−N=C=S)、又はオキソ(=O)基を表す。式(VIII)中、Rは、入手性及び高収率で本発明のエステルダイマーを得る観点から、好ましくはアルコキシ基、アシルオキシ基、又はアシルアミノ基である。
【0037】
前記ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、入手又は調製が容易で低分子量である観点から、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子が好ましい。
前記アルコキシ基は、−ORで表され、Rは一価の炭化水素基を表し、入手又は調製が容易で低分子量である観点から、好ましくは炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、又は炭素数6〜20のアリール基、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、又は炭素数6〜14のアリール基、更に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、炭素数2〜4のアルキニル基、又は炭素数6〜10のアリール基、より更に好ましくはメチル基である。前記Rは、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0038】
前記アシルオキシ基は、−O(C=O)−R10で表され、R10は、入手又は調製が容易で低分子量である観点から、好ましくは水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、又は炭素数6〜20のアリール基、より好ましくは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、又は炭素数6〜14のアリール基、更に好ましくは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基、より更に好ましくはメチル基、エチル基、又はフェニル基、より更に好ましくはフェニル基である。
前記アシルアミノ基は、−NH(C=O)−R11で表され、R11は、入手又は調製が容易で低分子量である観点から、好ましくは水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基、より好ましくは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、又は炭素数6〜14のアリール基、更に好ましくは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基、より更に好ましくはメチル基、エチル基、又はフェニル基、より更に好ましくはメチル基である。
前記スルホニルオキシ基は、−O(O=S=O)−R12で表され、R12は、入手又は調製が容易で低分子量である観点から、好ましくは炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基、より好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、又は炭素数6〜14のアリール基、更に好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基、より更に好ましくはメチル基、エチル基、又はパラトリル基、より更に好ましくはメチル基又はパラトリル基である。
【0039】
ニトロキシルラジカル種としては、具体的には、TEMPO、4−ヒドロキシTEMPO、4−アミノ−TEMPO、4−メトキシ−TEMPO(以下、「4−OMe−TEMPO」ともいう。)、4−エトキシ−TEMPO、4−フェノキシ−TEMPO、4−アセトキシ−TEMPO、4−ベンゾイルオキシ−TEMPO(以下、「4−OBz−TEMPO」ともいう。)、4−メタクリレート−TEMPO、4−アセトアミド−TEMPO(以下、「4−NHAc−TEMPO」ともいう。)、4−メチルスルホニルオキシ−TEMPO(以下、「4−OMs−TEMPO」ともいう。)、4−パラトルエンスルホニルオキシ−TEMPO、4−オキソ−TEMPO、2−アザアダマンタン−N−ヒドロキシル(以下、「AZADOL」(日産化学工業株式会社製、商標)ともいう。)、2−アザアダマンタン−N−オキシル(以下、「AZADO」ともいう。)、1−メチル−2−アザアダマンタン−N−オキシル(以下、「1−Me−AZADO」ともいう。)、9−アザノルアダマンタン−N−オキシル(以下、「nor−AZADO」ともいう。)、1,5−ジメチル−9−アザノルアダマンタン−N−オキシル(以下、「DMM−AZADO」ともいう。)などが例示される。
入手性及び高収率で本発明のエステルダイマーを得る観点から、ニトロキシルラジカル種としては、4−メトキシ−TEMPO、4−ベンゾイルオキシ−TEMPO、4−アセトアミド−TEMPO、4−メチルスルホニルオキシ−TEMPO、及びAZADOLから選ばれる化合物が好ましく、4−ベンゾイルオキシ−TEMPO、4−アセトアミド−TEMPO、4−メチルスルホニルオキシ−TEMPO、及びAZADOLから選ばれる化合物がより好ましい。
好ましい化合物を以下に例示するが、本発明において、ニトロキシルラジカル種は、これらの化合物に限定されるものではない。
【0040】
【化12】
【0041】
有機ニトロキシルラジカル、そのN−ヒドロキシ体及びそれらのオキソアンモニウムカチオンを含む塩から選ばれる化合物の使用量は、十分な酸化的エステル化活性を確保する観点から、ジオキソラン又はジオキソランとジオキサンの混合物に対して、好ましくはモル比が0.0001以上、より好ましくはモル比が0.0002以上、更に好ましくはモル比が0.0005以上である。また、経済性の観点から、好ましくはモル比が0.1以下、より好ましくはモル比が0.05以下、更に好ましくはモル比が0.02以下である。
【0042】
〔酸化剤〕
本反応においては、反応性の観点から好ましくは上述したニトロキシルラジカル種と共に、酸化剤を使用する。該酸化剤としては、有機ニトロキシルラジカル又はそのN−ヒドロキシ体をオキソアンモニウムカチオンに酸化できるいずれの酸化剤も用いることができるが、ジオキサノンやエステルダイマーの水和や加水分解による収率低下を抑制する観点から、有機溶媒中で用いることができるハロゲンを含有する化合物からなる酸化剤(以下、「含ハロゲン酸化剤」ともいう。)が好ましい。含ハロゲン酸化剤としては、次亜塩素酸ナトリウム五水和物、メタクロロ過安息香酸、トリクロロイソシアヌル酸(以下、「TCCA」ともいう。)、次亜塩素酸ターシャリーブチル(以下、「BuOCl」ともいう。)、N−クロロスクシンイミド等の塩素を含有する化合物からなる酸化剤(以下、「含塩素酸化剤」ともいう。)、N−ブロモスクシンイミド等の臭素を含有する化合物からなる酸化剤(以下、「含臭素酸化剤」ともいう。)、(ジクロロヨード)ベンゼン等の複数のハロゲン元素を有する含ハロゲン酸化剤、が例示される。含ハロゲン酸化剤は、本発明のエステルダイマーを高収率で得る観点、酸化剤の安定性、安全性及び取り扱い容易性の観点から、含塩素酸化剤が好ましく、TCCA及びBuOClから選ばれる酸化剤がより好ましく、入手性の観点から、TCCAが更に好ましい。
なお、本発明の酸化剤としては、式(VIII)で表される化合物、式(IX)で表される化合物又は式(X)で表される化合物が一電子酸化されたオキソアンモニウムカチオンを始めとする、有機ニトロキシルラジカル又はそのN−ヒドロキシ体のオキソアンモニウムカチオンを除く。
ジオキソラン又はジオキソランとジオキサンの混合物の高い反応転化率とホルミルジオキソランの生成量抑制を両立する観点から、ジオキソラン又はジオキソランとジオキサンの混合物に対する酸化活性種のモル比は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.1以上である。また、経済性及び廃棄物量低減の観点から、前記モル比は、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下である。
なお、酸化活性種とは、含塩素酸化剤の場合には塩素原子を意味し、TCCAの場合には、分子1モル中に3モルの酸化活性種が存在する。
【0043】
〔塩基〕
本反応においては、酸化剤の消費によって副生する酸を中和するなどの目的で塩基を使用する。塩基はジオキソラン若しくはジオキソランとジオキサンの混合物、触媒又は酸化剤と直接副反応を起こし、目的の酸化反応を阻害しない限りはいずれの塩基も用いることができるが、弱塩基性で副反応が抑制される観点から、ピリジン骨格を有する複素環式芳香族アミンが好ましい。前記ピリジン骨格を有する複素環式芳香族アミンは、その使用量を抑制するために、無機塩基と併用してもよいが、本発明のエステルダイマーを高収率で得る観点から、ピリジン骨格を有する複素環式芳香族アミンを単独で使用することがより好ましい。
ピリジン骨格を有する複素環式芳香族アミンとしては、ピリジン、アルキル置換ピリジン、多環式のキノリン類、ピリジン二量体であるビピリジル類等が例示される。具体的には、ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2−エチルピリジン、3−エチルピリジン、4−エチルピリジン、2,6−ルチジン、3,5−ルチジン、2,3,5−コリジン、2,4,6−コリジン、5−エチル−2−メチルピリジン、3,5−ジエチルピリジン、2,2’−ビピリジル、2,4’−ビピリジル、4,4’−ビピリジル、キノリン等が挙げられる。
ピリジン骨格を有する複素環式芳香族アミンの中でも、ジオキサノンや本発明のエステルダイマーとの沸点差が大きく蒸留による分離が容易なピリジン骨格を有する複素環式芳香族アミンを選択して用いることが好ましく、入手性の観点から、ピリジン及び5−エチル−2−メチルピリジンから選ばれるアミンが好ましく、反応終了後にアミン塩からアミンを再生した際の回収容易性の観点から、非水溶性のピリジン骨格を有する複素環式芳香族アミンが好ましく、収率の観点から、ピリジン、3,5−ルチジン、2,6−ルチジン、3−エチルピリジン、4−エチルピリジン及び5−エチル−2−メチルピリジンから選ばれるアミンが好ましく、ピリジン、3,5−ルチジン、3−エチルピリジン、4−エチルピリジン及び5−エチル−2−メチルピリジンから選ばれるアミンがより好ましい。
【0044】
酸化剤由来の酸を完全に中和し、ジオキソラン及び本発明のエステルダイマーのアセタール基の分解を抑制する観点から、ジオキソラン又はジオキソランとジオキサンの混合物に対する塩基のモル比は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.1以上、更に好ましくは1.2以上、より更に好ましくは1.3以上である。また、経済性及び余剰塩基の回収容易性の観点から、前記モル比は、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.0以下、更に好ましくは1.7以下である。
【0045】
〔溶媒〕
本反応においては、無溶媒又は溶媒使用条件のいずれでも実施可能だが、使用する酸化剤や反応時に副生する酸化剤由来の還元物や塩が固体の場合にそれらを溶解させる観点、及び反応液の粘度を下げ撹拌を容易にする観点から、溶媒使用条件が好ましい。ジオキソラン又はジオキソランとジオキサンの混合物、酸化剤及び塩基に対して不活性な限りはいずれの溶媒も用いることができるが、例えば、酸化剤としてTCCAを用いる場合は、TCCAの溶解性及び入手性の観点から、好ましくはアセトン、2−ブタノン、シクロペンタノン、アセトニトリル及びジクロロメタンから選ばれる溶媒、より好ましくはアセトン、2−ブタノン、アセトニトリル及びジクロロメタンから選ばれる溶媒が、更に好ましくはアセトン及び2−ブタノンから選ばれる溶媒である。また、本発明のエステルダイマーの生産性の観点から、アセトニトリルが更に好ましい。
【0046】
溶媒は、1種単独で使用してもよく、以上を併用してもよい。
溶媒の使用量は特に限定されないが、操作性の観点及び本発明のエステルダイマーを高収率で得る観点から、反応系全体に対する溶媒の使用量が、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、より更に好ましくは50質量、より更に好ましくは60質量%以上であり、生産性の観点から、反応系全体に対する溶媒の使用量が、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。
【0047】
〔反応手順〕
本反応において、各原料の仕込み順などに制限はないが、酸化的エステル化反応が発熱的な反応であるため、反応液の温度制御の容易性及び安全性の観点から、酸化剤以外の原料の混合物又は混合溶液に酸化剤又は酸化剤溶液を滴下する方法が好ましい。
酸化剤又は酸化剤溶液滴下中の反応液の温度は、設備負荷及び反応液の粘度上昇抑制の観点から、好ましくは−15℃以上、より好ましくは−10℃以上である。また、高温下での分解などの副反応を抑制し、本発明のエステルダイマーを高収率で得る観点から、好ましくは25℃以下、より好ましくは10℃以下である。酸化剤又は酸化剤溶液滴下終了後は、ジオキソラン全量が反応する、又は残存量の低下が停止するまで反応を継続するが、反応液の温度は、ジオキソランの反応促進の観点から、好ましくは−10℃以上、より好ましくは−5℃以上であり、副反応抑制の観点から、好ましくは50℃以下、より好ましくは30℃以下である。
【0048】
反応終了時には、副反応抑制及び安全性の観点から、残留酸化剤を完全に消費する反応停止剤を添加することが好ましい。反応停止剤は、本発明のエステルダイマーなどの反応生成物と反応しにくく、かつ酸化剤と反応する限りはいずれの化合物も用いることができるが、入手性及び本発明のエステルダイマーの精製を容易にする観点から、アルコールが好ましい。前記アルコールは、好ましくは一級又は二級のアルコールであり、本発明のエステルダイマーとのエステル交換を抑制する観点から、より好ましくは二級アルコールである。また、炭素数1以上12以下のアルコールが好ましい。
反応停止剤の添加量は、特に限定されない。
【0049】
〔式(I)で表される化合物の分離〕
本発明において、ジオキソラン又は、好ましくはジオキソランとジオキサンの混合物を酸化的エステル化する工程の後に、本発明のエステルダイマー(式(I)で表される化合物)を分離する工程を有することが好ましい。
本発明のエステルダイマーを分離する工程において、効率性の観点から、塩や酸化剤の還元物などの固形物は濾過又は油水抽出で分離し、ジオキサノン、ホルミルジオキソラン及び残留塩基は蒸留又はカラムクロマトグラフィーで分離することが好ましい。塩や酸化剤の還元物などの水溶性副生物に関しては、除去の効率性の観点から、水洗により水溶性副生物を除去する水洗工程を行うことが好ましい。水溶性副生物の除去に関し、水洗工程と濾過工程とを併用してもよく、また、水洗工程のみを行ってもよい。
ジオキサノンと本発明のエステルダイマーとの分離においては、大きな沸点差を利用して容易に分離可能な観点から、蒸留による分離がより好ましい。蒸留による分離は、単蒸留条件でも精留条件でも実施可能であるが、高純度な本発明のエステルダイマーを高い蒸留収率で得る観点から、精留条件で行うことが好ましい。精留条件としては、本発明のエステルダイマーの高純度化の観点から、精留塔の理論段数が好ましくは2段以上、より好ましくは5段以上であり、還流比が好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上である。また、本発明のエステルダイマー精製の生産性の観点から、精留塔の理論段数が好ましくは20段以下、より好ましくは10段以下であり、還流比が好ましくは20以下、より好ましくは10以下である。
【0050】
本発明の新規なグリセリン酸エステル(本発明のエステルダイマー)は、2位及び3位の水酸基が環状アセタール基として保護されたグリセリン酸エステルであり、各種医薬品、化粧品、洗浄剤、ポリマーなどの原料として使用されるグリセリン酸、グリセリン酸塩及び脱保護されたグリセリン酸エステルなどの合成中間体として有用である。
【0051】
[グリセリン酸、グリセリン酸塩又は脱保護されたグリセリン酸エステルの製造方法]
上記のように得られた本発明のエステルダイマーのアセタール基及びエステル基の加水分解又は加アルコール分解によって、グリセリン酸、グリセリン酸塩又は脱保護されたグリセリン酸エステルを製造することができる。加水分解又は加アルコール分解の方法は特に限定されないが、酸触媒存在下で過剰量の水又はアルコールを用いて分解する方法が最も簡便で好ましい。
加アルコール分解に用いるアルコールとしては、反応性(特にアセタール基の分解)の観点から、好ましくは一級アルコールであり、脱保護されたグリセリン酸エステルの沸点が低く蒸留精製しやすい観点から、より好ましくは炭素数1以上3以下の一級アルコールである。
また、脱保護されたグリセリン酸エステルの極性を十分に下げて、脱保護されたグリセリン酸エステルとグリセリンを油水抽出法で分離精製しやすくする観点から、より好ましくは炭素数4以上8以下の直鎖又は分岐鎖一級アルコールである。
【0052】
得られたグリセリン酸、グリセリン酸塩又は脱保護されたグリセリン酸エステルは、好ましくは蒸留やカラムクロマトグラフィーなどによって、副生成物(グリセリン、アルデヒド又はそのアセタール)と分離する。
【0053】
本発明は、更に、以下の[1]〜[36]を開示する。
【0054】
[1] 下記式(II)で表される化合物を酸化的エステル化する工程を有する、下記式(I)で表される化合物の製造方法。
【0055】
【化13】

(式(I)中、R及びRはそれぞれ独立して一価の炭化水素基を表すか、又は、R及びRは互いに結合して環構造を形成する二価の炭化水素基を表す。ただし、R及びRが同時にメチル基である場合を除く。)
【0056】
【化14】

(式(II)中、R及びRはそれぞれ独立して一価の炭化水素基を表すか、又は、R及びRは互いに結合して環構造を形成する二価の炭化水素基を表す。ただし、R及びRが同時にメチル基である場合を除く。)
【0057】
[2] 下記式(II)で表される化合物及び下記式(V)で表される化合物の混合物を酸化的エステル化する工程を有する、[1]に記載の製造方法。
【0058】
【化15】

(式(II)及び式(V)中、R及びRはそれぞれ独立して一価の炭化水素基を表すか、又は、R及びRは互いに結合して環構造を形成する二価の炭化水素基を表す。ただし、R及びRが同時にメチル基である場合を除く。)
【0059】
[3] 式(II)で表される化合物と式(V)で表される化合物の混合物が、グリセロールと下記式(III)で表される化合物、又はその多量体を酸触媒存在下でアセタール化する方法(方法1)、又はグリセロールと下記式(IV)で表される化合物を酸触媒存在下でアセタール交換する方法(方法2)によって製造される、[2]に記載の製造方法。
【0060】
【化16】

(式中、R及びRはそれぞれ独立して一価の炭化水素基を表すか、又は、R及びRは互いに結合して環構造を形成する二価の炭化水素基を表す。ただし、R及びRが同時にメチル基である場合を除く。また、Rはそれぞれ独立に、一価の炭化水素基、好ましくは炭素数1以上8以下の炭化水素基、より好ましくは炭素数1以上3以下の一価の炭化水素基、更に好ましくは炭素数1以上3以下の一価のアルキル基、より更に好ましくはメチル基を表す。)
【0061】
[4] 下記工程1及び工程2を含む、[2]又は[3]に記載の製造方法。
工程1:グリセロールと下記式(III)で表される化合物を酸触媒存在下でアセタール化する工程(工程1−1)、又はグリセロールと下記式(IV)で表される化合物を酸触媒存在下でアセタール交換する工程(工程1−2)
工程2:下記式(II)で表される化合物及び下記式(V)で表される化合物の混合物を酸化的エステル化する工程
【0062】
【化17】

(式中、R及びRはそれぞれ独立して一価の炭化水素基を表すか、又は、R及びRは互いに結合して環構造を形成する二価の炭化水素基を表す。ただし、R及びRが同時にメチル基である場合を除く。また、Rはそれぞれ独立に、一価の炭化水素基、好ましくは炭素数1以上8以下の炭化水素基、より好ましくは炭素数1以上3以下の一価の炭化水素基、更に好ましくは炭素数1以上3以下の一価のアルキル基、より更に好ましくはメチル基を表す。)
【0063】
[5] 前記式(II)で表される化合物から生成する前記式ホルミルジオキソランの収率が、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下、より更に好ましくは実質的に0%、より更に好ましくは0%である、[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6] 前記酸化的エステル化する工程において、好ましくは有機ニトロキシルラジカルのオキソアンモニウムカチオンを含む塩と、塩基とを用いる酸化的エステル化法、並びに有機ニトロキシルラジカル、そのN−ヒドロキシ体及びそれらのオキソアンモニウムカチオンを含む塩から選ばれる化合物と、酸化剤と、塩基とを用いる酸化的エステル化法(以下、「ニトロキシルラジカル法」ともいう。)から選ばれる酸化的エステル化法を用いる、[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7] 前記有機ニトロキシルラジカルが、下記式(VIII)で表される化合物、下記式(IX)で表される化合物、又は下記式(X)で表される化合物である、[6]に記載の製造方法。
【0064】
【化18】

(式(VIII)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基、スルホニルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、カルボキシ基、シアノ基、イソシアナト基、イソチオシアナト基、又はオキソ基を表し、好ましくはアルコキシ基、アシルオキシ基、又はアシルアミノ基を表す。式(IX)中、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。式(X)中、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。)
【0065】
[8] 前記有機ニトロキシルラジカル、そのN−ヒドロキシ体、及びそれらのオキソアンモニウムカチオンを含む塩から選ばれる1種以上の化合物が、好ましくはTEMPO、4−ヒドロキシTEMPO、4−アミノ−TEMPO、4−メトキシ−TEMPO(以下、「4−OMe−TEMPO」ともいう。)、4−エトキシ−TEMPO、4−フェノキシ−TEMPO、4−アセトキシ−TEMPO、4−ベンゾイルオキシ−TEMPO(以下、「4−OBz−TEMPO」ともいう。)、4−メタクリレート−TEMPO、4−アセトアミド−TEMPO(以下、「4−NHAc−TEMPO」ともいう。)、4−メチルスルホニルオキシ−TEMPO(以下、「4−OMs−TEMPO」ともいう。)、4−パラトルエンスルホニルオキシ−TEMPO、4−オキソ−TEMPO、2−アザアダマンタン−N−ヒドロキシル(以下、「AZADOL」ともいう。)、2−アザアダマンタン−N−オキシル(以下、「AZADO」ともいう。)、1−メチル−2−アザアダマンタン−N−オキシル(以下、「1−Me−AZADO」ともいう。)、9−アザノルアダマンタン−N−オキシル(以下、「nor−AZADO」ともいう。)、1,5−ジメチル−9−アザノルアダマンタン−N−オキシル(以下、「DMM−AZADO」ともいう。)、より好ましくは4−メトキシ−TEMPO、4−ベンゾイルオキシ−TEMPO、4−アセトアミド−TEMPO、4−メチルスルホニルオキシ−TEMPO、及びAZADOLから選ばれる化合物、更に好ましくは4−ベンゾイルオキシ−TEMPO、4−アセトアミド−TEMPO、4−メチルスルホニルオキシ−TEMPO、及びAZADOLから選ばれる化合物である、[6]又は[7]に記載の製造方法。
[9] 前記有機ニトロキシルラジカル、そのN−ヒドロキシ体及びそれらのオキソアンモニウムカチオンを含む塩から選ばれる化合物の使用量が、前記式(II)で表される化合物又は前記式(II)で表される化合物と前記式(V)で表される化合物の混合物に対して、好ましくはモル比が0.0001以上、より好ましくはモル比が0.0002以上、更に好ましくはモル比が0.0005以上であり、好ましくはモル比が0.1以下、より好ましくはモル比が0.05以下、更に好ましくはモル比が0.02以下である、[6]〜[8]のいずれかに記載の製造方法。
【0066】
[10] 前記酸化剤が、好ましくはハロゲンを含有する化合物からなる酸化剤(含ハロゲン酸化剤)、より好ましくは塩素を含有する化合物からなる酸化剤(含塩素酸化剤)、更に好ましくはトリクロロイソシアヌル酸及び次亜塩素酸ターシャリーブチルから選ばれる酸化剤、より更に好ましくはトリクロロイソシアヌル酸である、[6]〜[9]のいずれかに記載の製造方法。
[11] 前記式(II)で表される化合物又は前記式(II)で表される化合物と前記式(V)で表される化合物の混合物に対して、酸化剤の酸化活性種のモル比が、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.1以上であり、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下である、[6]〜[10]のいずれかに記載の製造方法。
【0067】
[12] 前記塩基がピリジン骨格を有する複素環式芳香族アミンである、[6]〜[11]のいずれかに記載の製造方法。
[13] 前記ピリジン骨格を有する複素環式芳香族アミンが、好ましくはピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2−エチルピリジン、3−エチルピリジン、4−エチルピリジン、2,6−ルチジン、3,5−ルチジン、2,3,5−コリジン、2,4,6−コリジン、5−エチル−2−メチルピリジン、3,5−ジエチルピリジン、2,2’−ビピリジル、2,4’−ビピリジル、4,4’−ビピリジル、及びキノリンから選択される少なくとも1つ、より好ましくは、ピリジン、3,5−ルチジン、2,6−ルチジン、3−エチルピリジン、4−エチルピリジン及び5−エチル−2−メチルピリジンから選ばれる少なくとも1つ、更に好ましくはピリジン、3,5−ルチジン、3−エチルピリジン、4−エチルピリジン及び5−エチル−2−メチルピリジンから選ばれる少なくとも1つである、[12]に記載の製造方法。
[14] 前記式(II)で表される化合物又は前記式(II)で表される化合物と前記式(V)で表される化合物の混合物に対して、前記塩基のモル比が、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.1以上、更に好ましくは1.2以上、より更に好ましくは1.3以上であり、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.0以下、更に好ましくは1.7以下である、[6]〜[13]のいずれかに記載の製造方法。
【0068】
[15] 前記酸化的エステル化する工程において好ましくは溶媒を使用し、その溶媒が、好ましくはアセトン、2−ブタノン、シクロペンタノン、アセトニトリル及びジクロロメタンから選ばれる溶媒、より好ましくはアセトン、2−ブタノン、アセトニトリル及びジクロロメタンから選ばれる溶媒、更に好ましくはアセトン及び2−ブタノンから選ばれる溶媒である、[1]〜[14]のいずれかに記載の製造方法。
[16] 反応系全体における前記溶媒の使用量が、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、より更に好ましくは50質量%以上、より更に好ましくは60質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である、[15]に記載の製造方法。
【0069】
[17] 前記酸化的エステル化する工程において、好ましくは酸化剤以外の原料の混合物又は混合溶液に、酸化剤又は酸化剤溶液を滴下する、[6]〜[16]のいずれかに記載の製造方法。
[18] 前記酸化剤又は酸化剤溶液滴下中の反応液の温度が、好ましくは−15℃以上、より好ましくは−10℃以上であり、好ましくは25℃以下、より好ましくは10℃以下である、[17]に記載の製造方法。
[19] 前記酸化剤又は酸化剤溶液滴下終了後、ジオキソラン全量が反応する、又は残存量の低下が停止するまで反応を継続する、[17]又は[18]に記載の製造方法。
[20] 前記反応液の温度が、好ましくは−10℃以上、より好ましくは−5℃以上であり、好ましくは50℃以下、より好ましくは30℃以下である、[19]に記載の製造方法。
【0070】
[21] 好ましくはアルコールを反応停止剤として用いる、[1]〜[20]のいずれかに記載の製造方法。
[22] 前記反応停止剤が、好ましくは一級又は二級のアルコールであり、より好ましくは二級アルコールである、[21]に記載の製造方法。
[23] 前記反応停止剤が、好ましくは炭素数1以上12以下のアルコールである、[21]又は[22]に記載の製造方法。
【0071】
[24] 前記式(II)で表される化合物又は、好ましくは前記式(II)で表される化合物と前記式(V)で表される化合物の混合物を酸化的エステル化する工程の後に前記式(I)で表される化合物を分離する工程を有する、[1]〜[23]のいずれかに記載の製造方法。
[25] 前記式(I)で表される化合物を分離する工程における分離が、蒸留による分離である、[24]に記載の製造方法。
[26] 前記蒸留による分離を、好ましくは精留条件で行う、[25]に記載の製造方法。
[27] 前記精留条件は、精留塔の理論段数が好ましくは2段以上、より好ましくは5段以上であり、還流比が好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上であり、精留塔の理論段数が好ましくは20段以下、より好ましくは10段以下であり、還流比が好ましくは20以下、より好ましくは10以下である、[26]に記載の製造方法。
[28] [24]〜[27]のいずれかにおいて分離した前記式(I)で表される化合物を加水分解又は加アルコール分解する、グリセリン酸、グリセリン酸塩又は脱保護されたグリセリン酸エステルの製造方法。
[29] [1]〜[27]のいずれかに記載の製造方法で、前記式(I)で表される化合物を製造する工程、及び、該工程で製造した前記式(I)で表される化合物を加水分解又は加アルコール分解する工程を有する、グリセリン酸、グリセリン酸塩又は脱保護されたグリセリン酸エステルの製造方法。
[30] 前記加アルコール分解に用いるアルコールが、好ましくは一級アルコールであり、より好ましくは炭素数1以上3以下の一級アルコールである、[28]又は[29]に記載の製造方法。
[31] 前記加アルコール分解に用いるアルコールが、より好ましくは炭素数4以上8以下の直鎖又は分岐鎖一級アルコールである、[28]又は[29]に記載の製造方法。
[32] 式(I)及び式(II)中、前記R及びRが、好ましくはRが炭素数1以上8以下の一価の炭化水素基かつRが炭素数2以上8以下の一価の炭化水素基、より好ましくはRが炭素数1以上8以下のアルキル基かつRが炭素数2以上8以下のアルキル基、更に好ましくはRが炭素数1又は2のアルキル基かつRが炭素数2以上6以下のアルキル基、更に好ましくはRが炭素数1又は2のアルキル基かつRが炭素数2以上4以下のアルキル基、より更に好ましくはRがメチル基かつRがエチル基である、[1]〜[31]のいずれかに記載の製造方法。
[33] 式(I)及び式(II)中、R及びRは互いに結合して環構造を形成する二価の炭化水素基を表し、好ましくは炭素数2以上7以下の二価の炭化水素基、より好ましくは炭素数3以上6以下の二価の炭化水素基、更に好ましくは炭素数4以上5以下の二価の炭化水素基、より更に好ましくは炭素数5の二価の炭化水素基である、[1]〜[31]のいずれかに記載の製造方法。
[34] 下記式(I)で表される化合物。
【0072】
【化19】

(式(I)中、R及びRはそれぞれ独立して一価の炭化水素基を表すか、又は、R及びRは互いに結合して環構造を形成する二価の炭化水素基を表す。ただし、R及びRが同時にメチル基である場合を除く。)
【0073】
[35] 前記R及びRが、好ましくはRが炭素数1以上8以下の一価の炭化水素基かつRが炭素数2以上8以下の一価の炭化水素基、より好ましくはRが炭素数1以上8以下のアルキル基かつRが炭素数2以上8以下のアルキル基、更に好ましくはRが炭素数1又は2のアルキル基かつRが炭素数2以上6以下のアルキル基、更に好ましくはRが炭素数1又は2のアルキル基かつRが炭素数2以上4以下のアルキル基、より更に好ましくはRがメチル基かつRがエチル基である、[34]に記載の化合物。
[36] 前記R及びRが、互いに結合して環構造を形成する二価の炭化水素基を表し、好ましくは炭素数2以上7以下の二価の炭化水素基、より好ましくは炭素数3以上6以下の二価の炭化水素基、更に好ましくは炭素数4以上5以下の二価の炭化水素基、より更に好ましくは炭素数5の二価の炭化水素基である、[34]に記載の化合物。
【実施例】
【0074】
[化合物の同定]
以下の製造例、実施例又は比較例(以下、「実施例等」ともいう。)で得られた各化合物は、核磁気共鳴装置(NMR、アジレント・テクノロジー株式会社製、型式:Agilent 400−MR DD2)、赤外分光光度計(IR、株式会社堀場製作所製、型式:FT−710)、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS、アジレント・テクノロジー株式会社製、型式:Agilent 5975C)を用いてスペクトル分析により同定した。
[製造又は精製した化合物の純度]
以下の実施例等において、製造又は精製した化合物の純度は、ガスクロマトグラフ(アジレント・テクノロジー株式会社製、型式:Agilent 6850)を用いた分析(GC分析)により求めた。なお、純度に関する「%」は「GC%」を意味し、反応原料や高純度標品の純分量換算時には、この数値を用いた。
【0075】
[単位、転化率及び収率]
以下の実施例等に示した反応原料の転化率及び生成物の収率は、内部標準法定量GC分析によって求めた。定量分析に必要な検量線は、市販標品又は反応混合物から蒸留やシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した高純度標品を用いて作成した。ただし、ホルミルジオキソランの収率は、対応するジオキサノンの検量線を代用して算出した。
【0076】
[GC及びGC−MSの測定条件]
カラム:Ultra ALLOY−1(MS/HT)(フロンティア・ラボ社、商標、内径0.25mm、膜厚0.15μm、長さ30m)
キャリアガス:ヘリウム、1.0mL/min
注入条件:250℃、スプリット比1/50
検出条件:FID方式、220℃
カラム温度条件:40℃で5分保持後、10℃/分で350℃まで昇温
内部標準化合物:n−ドデカン
イオン化モード:EI
イオン源温度:230℃
インターフェース温度:350℃
【0077】
製造例: 原料である2,2−ジアルキル−4−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−ジオキソランの製造
製造例において行った反応は、以下の通りである。
【0078】
【化20】
【0079】
製造例1: 原料である2−エチル−4−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン(R=Me、R=Et)の製造
ディーン・スターク装置を取り付けた1Lフラスコに、グリセロール 184g(純度100%、2.00モル)、2−ブタノン 162g(純度98.0%、2.20モル)、メタンスルホン酸 981mg(純度98.0%、10.0ミリモル)、n−ヘキサン 50gを仕込み、反応で副生する水を反応系外に除去しながら5時間還流させた。冷却後にナトリウムエトキシドの20%エタノール溶液 3.50g(ナトリウムエトキシドとして700mg、10.3ミリモル)で中和した。反応液をGC分析した結果、2−エチル−4−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−ジオキソランのシス及びトランス異性体混合物の反応収率は74%であった。
続いて反応液を、クライゼンヘッドを取り付けた500mLフラスコに移送し、50℃に加熱後に徐々に減圧してn−ヘキサンとエタノールを留去し、更に0.13kPa(絶対圧)の減圧下で単蒸留を行い、留分温度91〜94℃で無色液体として留出する立体異性体混合物220gを得た。純度95.3%、蒸留収率97%であった。
<立体異性体混合物のスペクトルデータ>
・IR(neat、cm−1):3465(br)、2973、2935、2883、1466、1375、1190、1078、1041、876。
・MS(m/z):131、117、57、43。
【0080】
製造例2: 原料である2−イソブチル−4−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン(R=Me、RBu)の製造
4−メチル−2−ペンタノン 221g(純度99.5%、2.20モル)を反応原料として用いて、製造例1と同様の操作を行い、反応収率68%で2−イソブチル−4−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−ジオキソランのシス及びトランス異性体混合物を得た。
更に0.13kPa(絶対圧)の減圧下で単蒸留を行い、留分温度117〜123℃で無色液体として留出する立体異性体混合物246gを得た。純度97.4%、蒸留収率92%であった。
<立体異性体混合物のスペクトルデータ>
・IR(neat、cm−1):3446(br)、2952、2871、1466、1375、1184、1090、1041。
・MS(m/z):159、143、117、99、85、57、43。
【0081】
製造例3: 原料である2−ヒドロキシメチル−1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン(R、R=−(CH−)の製造
シクロヘキサノン 218g(純度99.0%、2.20モル)を反応原料として用いて、製造例1と同様の操作を行い、反応収率80%で2−ヒドロキシメチル−1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカンを得た。
更に0.13kPa(絶対圧)の減圧下で単蒸留を行い、留分温度123〜126℃で留出する無色液体297gを得た。純度97.0%、蒸留収率95%であった。
<スペクトルデータ>
H−NMR(400MHz、CDCl、δppm):1.37−1.42(2H、m)、1.54−1.63(8H、m)、2.30(1H、s)、3.56−3.61(1H、m)、3.70−3.80(2H、m)、4.02−4.05(1H、m)、4.21−4.25(1H、m)。
13C−NMR(100MHz、CDCl、δppm):23.7、24.0、25.1、34.7、36.3、63.1、65.3、75.7、110.0。
・IR(neat、cm−1):3423(br)、2933、2860、1448、1365、1281、1163、1097、1039、926。
・MS(m/z):172(M)、143、129、116、81、73、55、41、31。
【0082】
製造例4: 原料である2−エチル−4−ヒドロキシメチル−2−ペンチル−1,3−ジオキソラン(R=Et、R=Pentyl)の製造
3−オクタノン 288g(純度98.0%、2.20モル)を反応原料として用いて、製造例1と同様の操作を行い、反応収率73%で2−エチル−4−ヒドロキシメチル−2−ペンチル−1,3−ジオキソランのシス及びトランス異性体混合物を得た。
更に0.13kPa(絶対圧)の減圧下で単蒸留を行い、留分温度143〜146℃で無色液体として留出する立体異性体混合物284gを得た。純度97.4%、蒸留収率85%であった。
<立体異性体混合物のスペクトルデータ>
・IR(neat、cm−1):3450(br)、2933、2871、1963、1464、1165、1047、912。
・MS(m/z、GC上の2ピーク共通):202(M)、173、131、99、71、57、43。
【0083】
実施例: 2,2−ジアルキル−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸(2,2−ジアルキル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルエステルの製造
実施例において行った反応は、以下の通りである。
【0084】
【化21】
【0085】
実施例1: 2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸(2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルエステル(R=Me、R=Et)の製造
実施例1−1
100mL滴下ロートを取り付けた300mLフラスコに、製造例1で得られた2−エチル−4−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン 23.0g(純度95.3%、150ミリモル)、2−ヒドロキシ−2−アザアダマンタン 23.4mg(AZADOL、日産化学工業株式会社、商標、純度98.0%、150マイクロモル)、ピリジン 17.9g(純度99.5%、225ミリモル)、アセトニトリル 50gを仕込み、冷却しながら窒素雰囲気下で撹拌した。トリクロロイソシアヌル酸 14.7g(TCCA、純度95.0%、60.0ミリモル)をアセトニトリル 50gに溶かした溶液を滴下ロートに仕込み、フラスコ内の反応液温度が−2℃〜10℃の範囲に収まるように滴下速度を調節しながら2時間かけて滴下した。冷却を停止して反応液温度を20℃付近まで昇温しながら更に3時間撹拌を続け、最後に2−プロパノール 1.81g(純度99.7%、30.0ミリモル)を添加して更に20分撹拌して反応を完結させた。副生した粉末状固体を濾別後に濾液をGC分析した結果、2−エチル−4−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−ジオキソランの転化率は100%、2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸(2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルエステルの収率は74%であった。
濾液からアセトニトリルを留去した後に析出した粉末状固体を除去するため、tert−ブチルメチルエーテル 100gとイオン交換水 50gを加え抽出した。静置分層後に下層水を抜出し、再度イオン交換水 50gを加えて抽出から下層水抜出しまでを繰り返した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウム 20gで乾燥し、濾過後にtert−ブチルメチルエーテルを留去して赤色オイル状粗生成物 19.8gを得た。粗生成物をGC分析した結果、2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸(2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルエステルの収率は72%であり、水洗前後の回収率は92%であった。
続いて粗生成物 17.0gを、クライゼンヘッドを取り付けた50mLフラスコに移送し、0.13kPa(絶対圧)の減圧下で単蒸留を行い、留分温度119〜122℃で薄黄色液体として留出する2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸(2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルエステル 11.6gを得た。純度98.1%、蒸留収率80%であった。GC−MS分析より、このエステルダイマーは少なくとも3組のラセミ体からなる6種の立体異性体混合物であることを確認した。他の2組のラセミ体については、ピークが重なり、検出できなかったものと推定される。
<立体異性体混合物のスペクトルデータ>
・IR(neat、cm−1):2979、2939、2883、1761、1736、1377、1186、1072、874。
・MS(m/z、GC上の3ピーク共通):287、273、259、115、57、43。
【0086】
実施例1−2
20mL滴下ロートを取り付けた50mLフラスコに、製造例1で得られた2−エチル−4−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン 4.60g(純度95.3%、30.0ミリモル)、AZADOL 4.7mg(純度98.0%、30マイクロモル)、3,5−ルチジン 4.92g(純度98.0%、45.0ミリモル)、アセトニトリル 10gを仕込み、冷却しながら窒素雰囲気下で撹拌した。TCCA 2.94g(純度95.0%、12.0ミリモル)をアセトニトリル 10gに溶かした溶液を滴下ロートに仕込み、フラスコ内の反応液温度が−10℃〜10℃の範囲に収まるように滴下速度を調節しながら1時間かけて滴下した。冷却を停止して反応液温度を25℃付近まで昇温しながら更に1時間撹拌を続け、最後に2−プロパノール 0.20g(純度99.7%、3.3ミリモル)を添加して更に10分撹拌して反応を完結させた。副生した粉末状固体を濾別後に濾液をGC分析した結果、2−エチル−4−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−ジオキソランの転化率は100%、2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸(2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルエステルの収率は73%であった。
【0087】
実施例2: 2−イソブチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸(2−イソブチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルエステル(R=Me、RBu)の製造
製造例2で得られた2−イソブチル−4−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン 26.8g(純度97.4%、150ミリモル)を反応原料として用いて、実施例1−1と同様の操作を行った。濾液をGC分析した結果、2−イソブチル−4−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−ジオキソランの転化率は100%、2−イソブチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸(2−イソブチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルエステルの収率は75%であった。濃褐色オイル状粗生成物 25.9gのGC分析によって求めた収率も75%であり、濾液の分析時から収率ロスがないことがわかった。
続いて40Pa(絶対圧)の減圧下で粗生成物 20.0gの単蒸留を行い、留分温度116〜124℃で黄色液体として留出する2−イソブチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸(2−イソブチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルエステル 10.6gを得た。純度98.9%、蒸留収率70%であった。GC−MS分析より、このエステルダイマーは8組のラセミ体からなる16種の立体異性体混合物であることがわかった。
<立体異性体混合物のスペクトルデータ>
・IR(neat、cm−1):2933、2871、1763、1736、1468、1377、1182、1099。
・MS(m/z、GC上の8ピーク共通):343、329、287、187、143、115、85、57、43。
【0088】
実施例3: 1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン−2−カルボン酸(1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン−2−イル)メチルエステル(R、R=−(CH−)の製造
実施例3−1
製造例3で得られた2−ヒドロキシメチル−1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン 26.6g(純度97.0%、150ミリモル)を反応原料として用いて、実施例1−1と同様の操作を行った。濾液をGC分析した結果、2−ヒドロキシメチル−1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカンの転化率は100%、1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン−2−カルボン酸(1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン−2−イル)メチルエステルの収率は66%であった。濃オレンジ色オイル状粗生成物 23.5gのGC分析によって求めた収率も66%であり、濾液の分析時から収率ロスがないことがわかった。
続いてクーゲルロール蒸留装置を用いて40Pa(絶対圧)の減圧下で粗生成物 6.50gの蒸留を行い、装置温度225〜240℃でオレンジ色液体として留出する1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン−2−カルボン酸(1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン−2−イル)メチルエステル 2.89gを得た。純度95.6%、蒸留収率60%であった。13C−NMR分析より、このエステルダイマーは2組のラセミ体からなる4種の立体異性体混合物であることがわかった。
<立体異性体混合物のスペクトルデータ>
・IR(neat、cm−1):2933、2862、1761、1738、1448、1367、1161、1097、922。
・MS(m/z):340(M)、311、297、242、199、141、127、55。
【0089】
実施例3−2及び3−3
製造例3で得られた2−ヒドロキシメチル−1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン 5.32g(純度97.0%、30.0ミリモル)を反応原料として用いて、表1に示す反応条件に変更した以外は実施例1−2と同様の操作を行い、1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン−2−カルボン酸(1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン−2−イル)メチルエステルを含む濾液を得た。表1に実施例3−2及び3−3の反応条件と結果を示す。
【0090】
実施例3−4
製造例3で得られた2−ヒドロキシメチル−1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン 888g(純度97.0%、5.00ミリモル)、4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチル−1−オキソピペリジニウムテトラフルオロボラート3.95g(純度95.0%、12.5ミリモル)、あらかじめ真空加熱条件下で乾燥させたモレキュラーシーブ4A 1.0g、及びジクロロメタン10gを、滴下ロートを取り付けた50mLフラスコに仕込み、窒素雰囲気下室温で撹拌した。ピリジン0.914g(純度99.5%、11.5ミリモル)とジクロロメタン5gからなる溶液を滴下ロートに仕込み、20分かけて滴下した。更に室温で3時間撹拌を続けた後、最後にメタノール0.10g(純度99.8%、3.1ミリモル)を添加して更に10分撹拌して反応を完結させた。モレキュラーシーブ4Aと副生した粉末状固体を濾別後に濾液をGC分析した結果、2−ヒドロキシメチル−1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカンの転化率は100%、1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン−2−カルボン酸(1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン−2−イル)メチルエステルの収率は64%であった。
【0091】
実施例4: 2−エチル−2−ペンチル−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸(2−エチル−2−ペンチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルエステル(R=Et、R=Pentyl)の製造
製造例4で得られた2−エチル−4−ヒドロキシメチル−2−ペンチル−1,3−ジオキソラン 31.2g(純度97.4%、150ミリモル)を反応原料として用いて、実施例1−1と同様の操作を行った。濾液をGC分析した結果、2−エチル−4−ヒドロキシメチル−2−ペンチル−1,3−ジオキソランの転化率は100%、2−エチル−2−ペンチル−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸(2−エチル−2−ペンチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルエステルの収率は73%であった。濃褐色オイル状粗生成物 33.0gのGC分析によって求めた収率は70%であり、濾液の分析時から収率3%分をロスしたことがわかった。
続いてクーゲルロール蒸留装置を用いて40Pa(絶対圧)の減圧下で粗生成物 6.05gの蒸留を行い、装置温度180〜210℃でオレンジ色液体として留出する2−エチル−2−ペンチル−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸(2−エチル−2−ペンチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルエステル 2.03gを得た。純度90.6%、蒸留収率48%であった。GC−MS分析より、このエステルダイマーは8組のラセミ体からなる16種の異性体混合物であることがわかった。
<立体異性体混合物のスペクトルデータ>
・IR(neat、cm−1):2931、2875、1763、1736、1466、1190、1165、1105、908。
・MS(m/z、GC上の8ピーク共通):400(M)、371、329、171、129、99、71、57、43。
【0092】
比較例: 2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルエステル(R、R=Me)の製造
2,2−ジメチル−4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン 20.2g(東京化成工業株式会社商品、商品名2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール、純度98.0%、150ミリモル)を反応原料として用いて、実施例1−1と同様の操作を行った。濾液をGC分析した結果、2,2−ジメチル−4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソランの転化率は100%、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルエステルの収率は70%であった。濃オレンジ色オイル状粗生成物 15.1gのGC分析によって求めた収率は59%であり、濾液の分析時から収率11%分をロスしたことがわかった。
続いて0.13kPa(絶対圧)の減圧下で粗生成物 14.1gの単蒸留を行い、留分温度103〜106℃で無色液体として留出する2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルエステル 8.20gを得た。純度98.7%、蒸留収率97%であった。13C−NMR分析より、このエステルダイマーは2組のラセミ体からなる4種の立体異性体混合物であることがわかった。
<立体異性体混合物のスペクトルデータ>
・IR(neat、cm−1):2987、2939、1759、1734、1371、1192、1153、1099、1066、837。
・MS(m/z):259、245、186、130、115、101、73、59、43。
【0093】
以下の表1に実施例1〜4と比較例の反応条件と結果を示す。
【0094】
【表1】
【0095】
実施例5: グリセリン酸エチルの製造
実施例5において行った反応は、以下の通りである。
【0096】
【化22】
【0097】
実施例1−1で得られた2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸(2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルエステル 5.00g(純度98.1%、17.0ミリモル)、メタンスルホン酸 83mg(純度98.0%、0.85ミリモル)、エタノール 39.4g(純度99.5%、850ミリモル)を、100mLフラスコに仕込み、2時間還流した。冷却後にナトリウムエトキシドの20%エタノール溶液 290mg(ナトリウムエトキシドとして58mg、0.85ミリモル)で中和し、エタノールを留去した。続いて、得られたオレンジ色オイル状粗生成物8.75gをクーゲルロール蒸留装置で精製した。0.13kPa(絶対圧)、装置温度150〜155℃の条件下で、無色液体として留出するグリセリン酸エチル 1.53gを得た。純度93.5%、収率63%であった。
<グリセリン酸エチルのスペクトルデータ>
H−NMR(400MHz、CDCl、δppm):1.31(3H、t、J=6.8Hz)、3.82−3.92(2H、m)、4.24−4.30(3H、m)、なお、水酸基のHピークは、ブロードとなり検出できなかった。
13C−NMR(100MHz、CDCl、δppm):14.1、62.0、64.1、71.8、173.0。
・IR(neat、cm−1):3425(br)、2974、2935、1728、1201、1111、1063、1020。
・MS(m/z):134(M)、104、76、61、43、31。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明のエステルダイマー(2位及び3位の水酸基が環状アセタール基として保護されたグリセリン酸エステル)は、製造時の回収率が効率的であり、例えば、各種医薬品、化粧品、洗浄剤、ポリマーなどの原料として使用されるグリセリン酸及び脱保護されたグリセリン酸エステルなどの合成中間体として有用である。