特許第6402242号(P6402242)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6402242-光コネクタおよび光コネクタユニット 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6402242
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】光コネクタおよび光コネクタユニット
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/40 20060101AFI20181001BHJP
   G02B 6/38 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   G02B6/40
   G02B6/38
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-510816(P2017-510816)
(86)(22)【出願日】2015年4月6日
(86)【国際出願番号】JP2015060782
(87)【国際公開番号】WO2016162931
(87)【国際公開日】20161013
【審査請求日】2017年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】591236172
【氏名又は名称】株式会社ハタ研削
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 俊樹
【審査官】 山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−061916(JP,A)
【文献】 実開昭64−003807(JP,U)
【文献】 特開2004−325581(JP,A)
【文献】 特開2003−255171(JP,A)
【文献】 特開2004−085834(JP,A)
【文献】 米国特許第5862281(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/24,6/36−6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ心線と、
前記光ファイバ心線を結合先光ファイバ心線に位置決めするためのガイド穴を備えたパイプと、
前記光ファイバ心線および前記パイプを保持するフェルールと、
を有しており、
前記フェルールは、前記光ファイバ心線の先端部が露出し、前記ガイド穴の一端が開口しているフェルール前端面を備えており、
前記フェルールは、
積層された第1基板および第2基板と、
前記第1、第2基板の間に形成された第1溝および第2溝と、
を備えており、
前記フェルール前端面は第1、第2基板の前端面によって形成され、当該フェルール前端面には前記第1、第2溝の前端が開口しており、
前記光ファイバ心線は、前記第1溝に保持されており、
前記パイプは、前記第2溝に保持されており、
前記第1基板は、
前記第2基板との間に前記第1溝および前記第2溝を形成している前側基板表面と、
前記第2基板から前記フェルール前端面とは反対側の後方に突出している後側基板表面と、
を備えており、
前記光ファイバ心線は、前記第1溝から、前記後側基板表面に沿って引き出されて、接着剤層によって覆われている心線部分を備えており、
前記パイプにおける前記フェルール前端面とは反対側のパイプ後端は、前記接着剤層から突出した位置にあるか、または、前記パイプ後端は封鎖端であり、前記接着剤層内に位置している
光コネクタ。
【請求項2】
前記パイプに保持され、前記フェルール前端面から突出しているガイドピンを有している請求項1に記載の光コネクタ。
【請求項3】
前記フェルールは、ガラス基板から構成されており、
前記パイプは、樹脂製、金属製またはセラミック製のパイプである請求項1または2に記載の光コネクタ。
【請求項4】
第1光ファイバ心線を保持する第1フェルールを備えた第1光コネクタと、
第2光ファイバ心線を保持する第2フェルールを備えた第2光コネクタと、
を有しており、
前記第1光コネクタは請求項1に記載の光コネクタであり、
前記第2光コネクタは請求項2に記載の光コネクタであり、
前記第1光コネクタの前記ガイド穴に、前記第2光コネクタの前記ガイドピンを差し込むことにより、前記第1光ファイバ心線と第2光ファイバ心線が位置決めされる
光コネクタユニット。
【請求項5】
前記第1光コネクタおよび前記第2光コネクタのそれぞれにおいて、前記フェルールはガラス基板から構成され前記パイプは樹脂製、金属製またはセラミック製のパイプである請求項4に記載の光コネクタユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信などにおいて1本あるいは複数本の光ファイバを光学的に結合する光コネクタおよび光コネクタユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
光コネクタは、被覆が除去された状態で光ファイバの先端から引き出された光ファイバ心線を保持するフェルールを備える。特許文献1に記載のフェルール(光ファイバアレイ)は、表面に光ファイバ整列用のV溝が形成されたガラス製のV溝基板と、V溝基板の表面に重ねられる押さえ基板(カバーガラス)を有する。光ファイバ心線はV溝に収容され、V溝基板と押さえ基板により挟まれた状態でフェルールに保持される。光ファイバ心線の先端面はV溝基盤の前端面および押さえ基板の前端面から構成されるフェルールの前端面に露出する。
【0003】
第1光ファイバと第2光ファイバを光学的に結合する際には、第1光ファイバの第1光ファイバ心線を保持する第1フェルールを有する第1光コネクタと、第2光ファイバの第2光ファイバ心線を保持する第2フェルールを有する第2光コネクタを用いる。第1フェルールの前端面と第2フェルールの前端面を対向させた状態として第1光コネクタと第2光コネクタを締結する。
【0004】
特許文献2に記載の光コネクタユニットは、第1光コネクタが第1フェルールの前端面にガイド穴を備え、第2光コネクタが第2フェルールの前端面に前方に突出するガイドピンを備える。第1光コネクタと第2光コネクタを締結する際には、第2光コネクタのガイドピンが第1光コネクタのガイド穴に挿入され、これにより、第1光ファイバ心線と第2光ファイバ心線の軸合わせが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−141082号公報
【特許文献2】特開平8−184728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガラス基板から構成されるフェルールにガイド穴を設けた場合には、ガイドピンがガイド穴に挿入されたときに、挿入されたガイドピンからフェルールに伝わる力によってフェルールが破損することがある。また、ガラス基板から構成されるフェルールにガイドピンを保持させた場合には、ガイドピンを締結相手となる光コネクタのガイド穴に挿入したときに、保持しているガイドピンからフェルールに伝わる力によってフェルールが破損することがある。
【0007】
本発明の課題は、この点に鑑みて、光ファイバ心線の軸合わせ用のガイドをフェルールに設けた場合でも、フェルールの破損を防止或いは抑制できる光コネクタおよび光コネクタユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の光コネクタは、光ファイバ心線と、前記光ファイバ心線を結合先光ファイバ心線に位置決めするためのガイド穴を備えたパイプと、前記光ファイバ心線および前記パイプを保持するフェルールとを有しており、前記フェルールは、前記光ファイバ心線の先端部が露出し、前記ガイド穴の一端が開口しているフェルール前端面を備えていることを特徴としている。
【0009】
光ファイバ心線の軸合わせのためにガイド穴に、結合先光ファイバの側のガイドピンが挿入された場合に、挿入されたガイドピンからの力は、直接、フェルールには伝わらず、パイプを介して分散されてフェルールに伝わる。従って、フェルールの破損、特にガラス基板からなるフェルールの破損を防止或いは抑制できる。
【0010】
上記構成の雌側の光コネクタと対で使用可能な本発明の雄側の光コネクタは、雌側の光コネクタのパイプにガイドピンを保持させた構成となっている。すなわち、雄側の光コネクタは、光ファイバ心線と、前記光ファイバ心線を結合先光ファイバ心線に位置決めするためのガイドピンと、前記ガイドピンを保持するパイプと、前記光ファイバおよび前記パイプを保持するフェルールとを有しており、前記フェルールは、前記光ファイバ心線の先端部が露出し、前記ガイドピンが突出しているフェルール前端面を備えている。
【0011】
ガイドピンはパイプを介してフェルールに保持されている。ガイドピンに加わる力は、直接にはフェルールに伝わらず、パイプを介して分散されてフェルールに伝わる。従って、フェルールの破損、特に、ガラス基板からなるフェルールの破損を防止或いは抑制できる。
【0012】
前記フェルールは、積層された第1基板および第2基板と、前記第1、第2基板の間に形成された第1溝および第2溝とを備えており、前記フェルール前端面は第1、第2基板の前端面によって形成され、当該フェルール前端面には前記第1、第2溝の前端が開口しており、前記光ファイバ心線は前記第1溝に保持されており、前記パイプは前記第2溝に保持されている。
【0013】
第1溝および第2溝は、第1、第2基板の一方あるいは双方の表面に、同時加工により製作できる。従って、光ファイバ心線と同様な精度で、フェルールにガイド穴を設けることができる。また、ガイド穴にガイドピンを保持した場合には、ガイドピンも精度良くフェルールに取り付けることができる。これらのガイド穴とガイドピンの組み合わせによって、結合する2本の光ファイバ心線の軸合わせを正確に行うことができる。
【0014】
本発明では、前記第1基板が、前記第2基板との間に前記第1溝および前記第2溝を形成している前側基板表面と、前記第2基板から前記フェルール前端面とは反対側の後方に突出している後側基板表面とを備えている。前記光ファイバ心線において、前記第1溝から、前記後側基板表面に沿って引き出した心線部分接着剤層によって覆われている
【0015】
この場合、光ファイバ心線に接着剤を塗布する際に、接着剤がパイプの後端からその中心穴であるガイド穴に侵入すると、毛細管現象によってガイド穴内に接着剤が充填され、ガイド穴がふさがってしまう。本発明では、前記パイプにおける前記フェルール前端面とは反対側のパイプ後端を、前記接着剤層から突出した位置にしてある。これにより、ガイド穴内への接着剤の侵入を回避できる。なお、接着剤の侵入のおそれがない場合等においては、基板長さよりも短いパイプを用いることができるパイプの後端が封鎖されている場合においては、後端接着剤層内に位置させる
【0016】
前記フェルールは一般的に脆性破壊しやすいガラス基板から構成されるので、前記パイプは樹脂製、金属製またはセラミック製のパイプとすればよい。
【0017】
次に、本発明の光コネクタユニットは、第1光ファイバ心線を保持する第1フェルールを備えた第1光コネクタと、第2光ファイバ心線を保持する第2フェルールを備えた第2光コネクタとを有しており、前記第1光コネクタはガイドピンを保持していないパイプを備えた上記構成の雌側の光コネクタであり、前記第2光コネクタはガイドピンを保持したパイプを備えた上記構成の雄側の光コネクタであり、前記第1光コネクタの前記ガイド穴に、前記第2光コネクタの前記ガイドピンを差し込むことにより、前記第1光ファイバ心線と第2光ファイバ心線が位置決めされることを特徴としている。
【0018】
本発明によれば、第1光コネクタと第2光コネクタを結合する際に、第1光コネクタの側のガイド穴に第2光コネクタの側のガイドピンを差し込むことで、第1光コネクタの第1光ファイバ心線と第2光コネクタの第2光ファイバ心線の軸合わせを行うことができる。ガイド穴はパイプによって規定され、ガイドピンはパイプに保持されている。第1、第2光コネクタのいずれの側においても、ガイド穴にガイドピンを差し込む際に、フェルールに過剰な力が作用することがない。よって、双方の光コネクタの結合作業において、フェルールに破損が生じることが防止或いは抑制される。
【0019】
また、第1フェルールと第2フェルールとは、ガイドピンの有無のみが相違し、これ以外は同一構造である。よって、第1光コネクタと第2光コネクタとの間で、これらの構成部品を共用でき、光コネクタユニットの製造コストを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明を適用した光コネクタユニットの側面図である。
図2】第1光コネクタおよび第2光コネクタの斜視図である。
図3】ガイドピンおよびパイプを保持するフェルールの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した光コネクタユニットの実施の形態を説明する。
【0022】
(光コネクタユニット)
図1は本実施の形態に係る光コネクタユニットの側面図であり、(a)は光コネクタユニットを構成する第1光コネクタと第2光コネクタが締結された状態を示し、(b)は第1光コネクタと第2光コネクタの締結が解除された状態を示す。図1(b)では第1光コネクタのナットを断面で示す。図2(a)は第1光コネクタを示す斜視図であり、図2(b)は第2光コネクタを示す斜視図である。
【0023】
図1(a)に示すように、光コネクタユニット1は、第1光ファイバ2が接続された第1光コネクタ3と、第2光ファイバ4が接続された第2光コネクタ5を備える。第1光コネクタ3と第2光コネクタ5は同軸に締結される。第1光コネクタ3と第2光コネクタ5が締結されると第1光ファイバ2と第2光ファイバ4が光学的に結合される。例えば、第1光ファイバ2は、2本の16芯の光ファイバケーブルからなる32芯の光ファイバ群からなり、第2光ファイバ4も2本の16芯の光ファイバケーブルからなる32芯の光ファイバ群である。
【0024】
第1光コネクタ3について説明する場合に、軸線L方向を前後方向Xとし、第1光ファイバ2が引き出されている側を後方X2、その反対方向を前方X1とする。第2光コネクタ5について説明する場合には、軸線L方向を前後方向Yとし、第2光ファイバ4が引き出されている側を後方Y2、その反対方向を前方Y1とする。また、説明の便宜上、図の上下を各光コネクタ3、5の上下方向とし、軸線L方向および上下方向と直交する方向を各光コネクタ3、5の左右方向とする。
【0025】
(第1光コネクタ)
図1および図2(a)に示すように、第1光コネクタ3は、円筒状の第1ハウジング11と、第1ハウジング11の前端部分に同軸に取り付けられたナット12と、第1ハウジング11の外周側に固定されたリング13を有している。第1ハウジング11の前側開口部には、一対の前側スペーサ22、23が取り付けられ、第1ハウジング11の後側開口部には、一対の後側スペーサ14、15が取り付けられている。本例では、第1ハウジング11、ナット12、リング13、前側スペーサ22、23および後側スペーサ14、15は金属製の部品であるが、これらを樹脂製、セラミック製等の素材から形成することも可能である。
【0026】
図1(b)に示すように、第1ハウジング11の前側開口縁には、外周側に広がる鍔部16が設けられている。鍔部16はナット12の前方X1への移動限界を規定し、ナット12の抜け止めとして機能する。リング13は第1ハウジング11の外周面の前端側の部位に固定され、ナット12の後方X2への移動限界を規定する。ナット12は、前後方向Xにスライド可能かつ軸線L回りに回転可能な状態で第1ハウジング11の外周面に取り付けられている。第1ハウジング11の後側開口部に取り付けた後側スペーサ14、15の間には引出口17が形成されている。引出口17から、後方に第1光ファイバ2が引き出されている。
【0027】
第1ハウジング11は第1フェルール20を保持する。第1フェルール20は、被覆が除去された状態で光ファイバ2の先端から引き出された第1光ファイバ心線21を保持する。第1フェルール20は、第1ハウジング11内において、その前側開口部に取り付けた一対の前側スペーサ22、23の間に保持されている。前側スペーサ22、23の前端面22a、23aおよび、第1フェルール20の前端面(フェルール前端面)20aは、軸線Lに直交する同一平面上に位置する。
【0028】
第1フェルール20の前端面20aには、第1光ファイバ心線21の先端面(先端部)21aが露出している。また、第1フェルール20の前端面20aには、左右方向で第1光ファイバ心線21の両側に、それぞれフェルール側ガイド穴25が設けられている。上側に位置する前側スペーサ22の前端面22aにはスペーサ側ガイド穴26が2つ設けられている。2つのスペーサ側ガイド穴26は左右方向に離れた位置に配置されている。
【0029】
第1フェルール20の前端面20aには反射防止膜27が形成されている。反射防止膜27は樹脂からなり、弾性を有する。反射防止膜は、第1フェルール20の前端面20aにおいて、少なくとも光ファイバ心線21が露出している領域を被う。
【0030】
(第2光コネクタ)
図1および図2(b)に示すように、第2光コネクタ5は、円筒状の第2ハウジング31を備えている。第2ハウジング31の前側開口部の内部には一対の前側スペーサ42、43が取り付けられ、その後側開口部の内部には一対の後側スペーサ32、33が取り付けられている。第2ハウジング31の前端から後方Y2に向かう一定長さの外周面部分には、ナット12の雌ネジ12aと螺合可能な雄ネジ34が形成されている。後側スペーサ32、33の間には、第2ハウジング31の内部から外側に第2光ファイバ4を引き出す引出口35が形成されている。
【0031】
第2ハウジング31の前側開口部には、上下の前側スペーサ42、43の間に、第2フェルール40が保持されている。第2フェルール40は被覆が除去された状態で光ファイバ4の先端から引き出された第2光ファイバ心線41を保持する。上側に位置する前側スペーサ42の前端面42a、第2フェルール40の前端面20a、下側に位置する前側スペーサ43の前端面43aは軸線Lに直交する同一平面上に位置する。
【0032】
第2フェルール40の前端面(フェルール前端面)40aには第2光ファイバ心線41の先端面(先端部)41aが露出している。また、第2フェルール40は、その前端面40aから前方に突出するフェルール側ガイドピン44を2本備える。より詳細には、第2フェルール40の前端面22aには左右方向で第2光ファイバ心線41の両側にそれぞれフェルール側ガイド穴45が設けられており、各フェルール側ガイドピン44は、その後側部分が各フェルール側ガイド穴45に挿入され、接着固定されている。上側の前側スペーサ42の前端面42aには、前方Y1に突出するスペーサ側ガイドピン46が2本設けられている。2本のスペーサ側ガイドピン46は左右方向に離れた位置にある。図1(b)に示すように、スペーサ側ガイドピン46の第2フェルール40の前端面40aからの突出量は、フェルール側ガイドピン44の第2フェルール40の前端面40aからの突出量よりも大きい。
【0033】
第2ハウジング31の雄ネジ34は、第1光コネクタ3のナット12とともに第1光コネクタ3と第2光コネクタ5を固定する固定機構38(図1参照)を構成する。固定機構38によって、第1光コネクタ3の第1ハウジング11と第2光コネクタ5の第2ハウジング31とが、軸線Lの方向に沿って相互に押し付けられた状態で締結される。これにより、第1ハウジング11および第2ハウジング31の前端面に露出している第1フェルール20と第2フェルール40の前端面同士が、相互に押し付けられた状態で結合される。
【0034】
(第1、第2光コネクタの締結操作)
第1光コネクタ3と第2光コネクタ5を締結する操作を具体的に説明する。まず、第1光ファイバ心線21の先端面21aが露出する第1フェルール20の前端面20aと第2光ファイバ心線41の先端面41aが露出する第2フェルール40の前端面40aとを対向させる。
【0035】
第2光コネクタ5のスペーサ側ガイドピン46を第1光コネクタ3のスペーサ側ガイド穴26に位置決めして、軸線Lに沿った方向に挿入する。これにより、第2光コネクタ5のフェルール側ガイドピン44が第1光コネクタ3のフェルール側ガイド穴45に挿入される。2組のガイドピンとガイド穴によって、第1光コネクタ3の各第1光ファイバ心線21と第2光コネクタ5の各第2光ファイバ心線41の軸合わせが正確に行われる。
【0036】
次に、第1光コネクタ3のナット12を第2光コネクタ5の雄ネジ34に捩じ込むと、第1光コネクタ3の第1フェルール20の前端面20aと第2光コネクタ5の第2フェルール40の前端面40aが反射防止膜27を介して当接する。ナット12を締め付けると、第1光コネクタ3の第1ハウジング11と第2光コネクタ5の第2ハウジング31は、互いに軸線Lの方向に押し付けられる。この結果、第1フェルール20と第2フェルール40の前端面が位置決めされた状態で相互に押し付けられる。すなわち、これらの前端面に形成されている反射防止膜27が弾性変形して押し付けられる。この結果、第1フェルール20と第2フェルール40は、気密状態で当接し、第1光ファイバ2と第2光ファイバ4が光学的に結合される。
【0037】
(フェルール)
図3を参照して第1フェルール20及び第2フェルール40を説明する。図3(a)は第2フェルール40を前方の斜め上方から見た場合の斜視図であり、図3(b)は図3(a)のA−A線における第2フェルール40の断面図であり、図3(c)は第2フェルール40を前方から見た正面図である。第1フェルール20と第2フェルール40は基本構成が同一であるので、基本構成を第2フェルール40について説明する。
【0038】
図3に示すように、第2フェルール40は、積層された第1基板50および第2基板53を有している。第2フェルール40には、第2光ファイバ4、一対のパイプ55、および、一対のフェルール側ガイドピン44が保持されている。
【0039】
第1基板50はガラス製である。第1基板50は、表面50aに複数の第1V溝51および一対の第2V溝52が形成された前側基板部分(前側基板表面)50cと、その後方Y2に連続する前側基板部分50cとが備わっている。複数の第1V溝51は複数本の第2光ファイバ心線41を整列させて保持するためのものである。複数の第1V溝51は左右方向に一定間隔に形成され、前後方向に平行に延びている。各第1V溝51は第1基板50の前端面50bから後方Y2に延びており、第1基板50の前端面50bには各第1V溝51の前端が開口している。各第2光ファイバ心線41は、コアおよびクラッドから構成され、その断面は円形である。各第2光ファイバ心線41は、第1V溝51に収容されて接着固定されている。
【0040】
なお、本例の第1光ファイバ2は32芯であるので、32本の第1V溝51が形成されている。図3においては、微小寸法のV溝51を分かり易く表示するために、実際よりも少ない本数の溝を拡大して描いてある。
【0041】
一対の第2V溝52は、第1基板50の表面において複数の第1V溝51を挟み、その両側に形成されている。第2V溝52はパイプ55を保持するためのものである。各第2V溝52は各第1V溝51と平行に延びている。各第2V溝52は第1基板50の前端面50bから後方Y2に延び、第1基板50の前端面50bには、各第2V溝52の前端が開口している。第2V溝52は第1V溝51よりも大幅に大きな溝であるが、図3においては、第1V溝51を分かり易く表示するために大きく描いてある。
【0042】
各パイプ55は樹脂製、金属製またはセラミック製であり、その中心穴は、ガイドピンをガタ付きなく差込可能なフェルール側ガイド穴45として機能する。また、各パイプ55は円筒状のパイプであり、第1基板50の前後方向Yの長さ寸法に対応する長さ寸法を備える。各パイプ55は各第2V溝52に収容され、接着固定されている。
【0043】
第2基板53は前側基板部分50cの表面に重ねられて、各第2光ファイバ心線41およびパイプ55を第1基板50との間に挟持している。第2基板53は、第1基板50との間に充填された接着剤により第1基板50に固定されている。
【0044】
第2基板53が第1基板50に接着固定された状態では、第2基板53の前端面53aと第1基板50の前端面50bが同一平面上に位置し、これらの前端面53a、50bによって第2フェルール40の前端面40aが構成される。また、第2基板53が第1基板50に固定された状態では、第2光ファイバ心線41の前側心線部分41bは第2基板53と前側基板部分50cとの間に挟まれ、その後側心線部分41cは、後側基板部分(後側基板表面)50dに沿って後方Y2に引き出される。同様に、パイプ55の前側パイプ部分55aは第2基板53と前側基板部分50cとの間に挟まれ、その後側パイプ部分55bは、後側基板部分50dに沿って後方Y2に延びている。
【0045】
第2基板53が第1基板50に固定された状態では、各第2光ファイバ心線41の前側心線部分41bは、第1V溝51を規定している左右一対の傾斜面と、第2基板53の下面に内接し、これらの面によって配列位置が規定された状態となる。第2光ファイバ心線41の先端面41aは第2フェルール40の前端面40aと同一平面上に位置して第2フェルール40の前端面40aに露出する。
【0046】
各パイプ55の前側パイプ部分55aは、第2V溝52を規定している左右一対の傾斜面と、第2基板53の下面に内接し、これらの面によって収容位置が規定された状態となる。パイプ55の前端55cは第2フェルール40の前端面40aと同一平面上に位置して第2フェルール40の前端面40aに露出する。すなわち、第2フェルール40の前端面40aにはパイプ55の中心穴が開口する。従って、第2フェルール40には、パイプ55の中心穴によって、その前端面40aに一対のフェルール側ガイド穴45が形成される。
【0047】
各第2光ファイバ心線41の後側心線部分41cおよびパイプ55の後側パイプ部分55bは、図3(a)および図3(b)に示すように、第2基板53の後端から後方Y2に向かって一定幅の部分が接着剤層57により覆われて、後側基板部分50dに固定される。
【0048】
光ファイバ心線41に接着剤を塗布して接着剤層57を形成する際に、接着剤がパイプ55の後端からその中心穴であるフェルール側ガイド穴45に侵入すると、毛細管現象によってフェルール側ガイド穴45内に接着剤が充填され、フェルール側ガイド穴45がふさがってしまう。本例では、図3(a)に示すように、各パイプ55の後端55dが接着剤層57よりも後方Y2に突出した位置にある。従って、接着剤層57を形成する際に、接着剤がパイプ55の後端55dに付着することを防止できる。よって、フェルール側ガイド穴45穴内への接着剤の侵入を回避できる。
【0049】
各フェルール側ガイドピン44は、その後端部分が各フェルール側ガイド穴45に挿入されて第2フェルール40に保持される。各フェルール側ガイドピン44は各パイプ55の中心穴の内径寸法に対応する外径寸法を備えている。従って、パイプ55に挿入された各フェルール側ガイドピン44はパイプ55の中心穴に嵌合する。
【0050】
次に、第1光コネクタ3の第1フェルール20は、フェルール側ガイドピン44を備えていない点で第2フェルール40と相違する。また、第1フェルール20は、その前端面20aに反射防止膜27が積層されている点で第2フェルール40と相違する。その他の構成は、第1フェルール20と第2フェルール40は同一である。
【0051】
すなわち、第1フェルール20は、表面に複数の第1V溝51および一対の第2V溝52が形成された第1基板50と、第1基板50の前側基板部分50cの表面に重ねられた第2基板53を備える。第1フェルール20には、第1光ファイバ2(第1光ファイバ心線21)と、一対のパイプ55が保持されている。第1フェルール20の第1基板50と第2フェルール40の第1基板50は同一の部材である。第1フェルール20の第2基板53と第2フェルール40の第2基板53は同一の部材である。また、第1フェルール20が保持するパイプ55と第2フェルール40が保持するパイプ55は同一の部材である。
【0052】
第2基板53が第1基板50に固定された状態では、第2基板53の前端面53aと第1基板50の前端面50bが同一平面上に位置し、これらの前端面53a、50bによって第1フェルール20の前端面20aが構成される。第1光ファイバ心線21の先端面21aは第1フェルール20の前端面20aと同一平面上に位置して第1フェルール20の前端面20aに露出する。第1フェルール20の前端面20aには、パイプ55の中心穴が開口することにより、一対のフェルール側ガイド穴25が形成される。
【0053】
第1フェルール20では、前端面20aにフェルール側ガイド穴25が開口する。パイプ55の中心穴によって規定されるフェルール側ガイド穴25は、第2光ファイバ4のガイドピン44を受け入れることにより、光ファイバ心線21を第2光ファイバ4の光ファイバ心線41に位置決めする。
【0054】
なお、第2基板53の表面(下面)に第1V溝51および第2V溝52を形成して、第1光ファイバ心線21、41およびパイプ55を保持してもよい。また、第1基板50および第2基板53の双方の表面に第1V溝51および第2V溝52形成し、積層したときに第1基板50の第1V溝51と第2基板53の第1V溝51により形成される穴に第1光ファイバ心線21、41を保持し、第1基板50の第2V溝52と第2基板53の第2V溝52により形成される穴にパイプ55を保持してもよい。
【0055】
また、反射防止膜27は第2フェルール40の前端面40aに設けてもよく、第1フェルール20の前端面20aおよび第2フェルール40の前端面40aの双方に設けてもよい。また、反射防止膜27の替わりに、弾性を有する透明な樹脂膜を設けてもよい。
【0056】
(実施の形態の作用効果)
第1光コネクタ3の第1フェルール20の前端面20aに形成されたフェルール側ガイド穴25に第2光コネクタ5の第2フェルール40の前端面40aから突出するフェルール側ガイドピン44を挿入して、第1光コネクタ3の第1光ファイバ心線21と第2光コネクタ5の第2光ファイバ心線41の軸合わせを行うことができる。第1光コネクタ3と第2光コネクタ5を締結する際にフェルール側ガイドピン44にかかる力は、パイプ55を介して分散されて各フェルール20、40に伝わる。従って、ガラス基板からなる各フェルール20、40が破損することを防止或いは抑制できる。
【0057】
パイプ55は、各光ファイバ心線21、41と同様に、ガラス製の基板(第1基板50)の表面に形成したV溝を利用して各フェルール20、40に固定される。第1V溝51および第2V溝52は、第1基板50の表面に同時加工により製作できる。パイプ55を、光ファイバ心線21、41と同様な精度で、第1基板50に保持できる。よって、フェルール側ガイド穴25を光ファイバ心線21、41と同様な精度で設けることができる。フェルール側ガイド穴45を光ファイバ心線21、41と同様な精度で設けることができるので、フェルール側ガイド穴45に挿入されたフェルール側ガイドピン44を高い精度で規定の方向に突出させることができる。
【0058】
第1フェルール20と第2フェルール40は、ガイドピン44の有無のみが相違し、これ以外は同一構造である。よって、第1光コネクタ3と第2光コネクタ5との間で、これらの構成部品を共用でき、光コネクタユニット1の製造コストを抑制できる。
【0059】
第1光コネクタ3と第2光コネクタ5を締結したときに、第1フェルール20と第2フェルール40が軸線Lの方向に相互に押し付けられ、第1フェルール20と第2フェルール40の間に介在する反射防止膜27が軸線Lの方向に押しつぶされた状態になる。これにより、第1フェルール20と第2フェルール40が、反射防止膜27を介して、気密状態に当接する。第1光コネクタ3の第1ハウジング11と第2光コネクタ5の第2ハウジング31により気密状態を形成する必要がない。
図1
図2
図3