(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリマー製造プロセスで製造される前記ポリマーが10〜100phrの可塑剤を含んでいるエチレン−プロピレン−ジエンゴムである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロセス。
工程(ii)の後に、揮発性不純物と前記不活性ガスとを含んでいる前記蒸気生成物を冷却して凝縮させ、前記不活性ガスから分離された凝縮された不純物を形成する工程;および前記凝縮された不純物を集めてリサイクルする工程をさらに含む、請求項1または6に記載のプロセス。
工程(b)後の前記プロセスに供給する前に、固定床吸着、化学捕捉剤、蒸留、液液抽出、ろ過、重力沈降および遠心分離の少なくとも1種によって前記可塑剤を精製する工程をさらに含む、請求項1、6および7のいずれか1項に記載のプロセス。
【発明を実施するための形態】
【0019】
提供されるのは、可塑剤を精製するプロセスおよび可塑化されたポリマーを製造するプロセスである。1つの実施形態では、本発明は以下の工程を含む可塑化されたポリマーを製造するプロセスを包含する:(a)リアクター、そのリアクターに接続されたセパレーター(たとえば、高圧セパレーター)、および可塑剤(好ましくは、オフラインで製造されたもの)を含んでいる容器を準備する工程;(b)リアクター中で、任意的に溶媒が存在する状態で、オレフィンモノマーと触媒とを接触させて、ポリマー−モノマー混合物を含んでいるポリマーリアクター流出物を形成する工程;(c)リアクターからのポリマーリアクター流出物をセパレーターを通させて、ポリマーに富む相およびポリマーに乏しい相を形成する工程;(d)ポリマーに富む相からポリマーに乏しい相を分離する工程;(e)ガスストリッピング、固定床吸着、化学捕捉剤、蒸留、液液抽出、ろ過、重力沈降および遠心分離の少なくとも1種によって可塑剤を精製して、精製された可塑剤を製造する工程;(f)精製された可塑剤を工程(b)後のプロセスに供給して、可塑化されたポリマーブレンド流れを形成する工程;および(g)可塑化されたポリマーブレンド流れから可塑化されたポリマーを得る工程。任意的に、溶媒がリアクターおよび/またはポリマーリアクター流出物の中に存在してもよい。
【0020】
好ましくは、可塑剤は、工程(e)に記載された精製の前に、大気圧よりも高い圧力で、概して環境温度に近い温度で提供される。任意的に、可塑剤は、輸送を容易にする温度まで(たとえば、プロセス装置の種類に応じて可塑剤の融点より高くまたは粘度限界より低く)加熱されることができる。
【0021】
可塑剤は、プロセスの中の任意の点で連続的にあるいは非連続的に精製されることができる。好ましくは、可塑剤は工程(a)〜(d)の間でまたは工程(b)〜(d)の間で精製される。1つの実施形態では、可塑剤はポリマーが製造されるのと同時に連続的に精製され、工程(b)の後のポリマープロセスに供給される。好ましくは、可塑剤は工程(d)の後のプロセスに(たとえば、ポリマーに富む相に)供給される。1つの実施形態では、第2の相(たとえば、遊離水)が可塑剤から除去される。好ましい実施形態では、可塑剤は連続的に精製され、かつポリマー製造プロセスに連続的に供給される。典型的な連続ポリマー製造プロセス、たとえば可塑剤とポリマーとのインラインブレンドプロセスの詳細は、参照によってその全体が本明細書に取り込まれた米国特許第7,910,637号に記載されている。
【0022】
セパレーターは、ポリマーに乏しい相を除去することによってリアクターからのポリマー流出物を濃縮する。1つの実施形態では、セパレーターは高圧セパレーターである。1つの実施形態では、本発明のプロセスとしては、揮発性物質をフラッシュ除去する高圧セパレーターおよびそれに引き続く低圧セパレーターが挙げられる。
ガスストリッピング
【0023】
好ましい実施形態では、可塑剤はガスストリッピングによって精製される。そのような実施形態では、そのプロセスは以下の工程を含む:(i)約40℃〜約300℃の温度まで可塑剤を加熱して、可塑剤中に存在する揮発性不純物の蒸気圧を増加させ、かつ任意的に可塑剤の粘度を低減する工程;(ii)接触装置を使用して可塑剤と不活性ガスと接触させ、可塑剤、および揮発性不純物と不活性ガスとを含んでいる蒸気生成物を形成する工程;および(iii)セパレーター装置を使用して蒸気生成物から精製された可塑剤を分離する工程。
【0024】
好ましくは、接触装置は、スパージャー、焼結ディスク、蒸気分配器、インラインミキサーおよびストリッピング塔の少なくとも1種である。好ましくは、セパレーター装置は、重力沈降器、飛沫同伴防止装置および遠心分離装置の少なくとも1種である。
【0025】
1つの実施形態では、蒸気生成物はガス吸収装置に導かれ、そこで揮発性不純物が不活性ガスから分離され、不活性ガスは大気にベントされる。別の実施形態では、蒸気生成物は、大気への直接ベント口に、または排出物調節装置、たとえば、フレアスタック、吸収塔床もしくはオイルトラップに導かれる。不活性ガスが飽和炭化水素である場合の好ましい実施形態では、揮発性不純物および飽和炭化水素を含んでいる蒸気生成物は、燃料ガス系統またはフレア系統に放出される。
【0026】
1つの実施形態では、蒸気生成物はパージ設備または回収設備に導かれ、これらの設備は不活性ガスから不純物を凝縮するために冷却器を含んでいてもよい。好ましい実施形態では、ガスストリッピングプロセスは、工程(ii)の後に、揮発性不純物と不活性ガスとを含んでいる蒸気生成物を冷却して凝縮させ、不活性ガスから分離された凝縮された不純物を形成する工程;および凝縮された不純物を集めてリサイクルする工程をさらに含む。
【0027】
精製の間、可塑剤は容器、たとえば中間貯蔵容器に貯蔵されてもよく、この容器は不活性ガス(任意的に加熱されたもの)を連続的に供給され、好ましくは、低圧力(たとえば、18psia(約1.24バール)、1絶対気圧)で操作されて、揮発性不純物の除去が最大になるようにされてもよい。この容器は、任意的に以下のものを備えていてもよい:不活性ガスと可塑剤との接触を改善しかつ多段分離を生み出すためのトレー、パッキングまたは他の内部手段;可塑剤の液体レベルより下に不活性ガスを分配し、好ましくは同じような大きさの気泡を生成するための不活性ガス分配器;可塑剤を分配し、液体−蒸気の接触およびその後の分離を改善するための可塑剤分配器;および液体小滴のベント流れ中へのキャリーオーバーを最小にするための縮れワイヤーメッシュスクリーンのような装置。
【0028】
一般的に、好ましい不活性ガス(たとえば、ストリッピング剤)は、乾燥しており、高純度で、低コストで、容易に入手可能なものである。不活性ガスの例としては、窒素、第18族元素(たとえば、アルゴン)、飽和炭化水素(たとえば、メタン、エタンおよびヘキサン)および工程(ii)で可塑剤と接触させられるときにガスとして存在する他の非反応性化合物、の少なくとも1種が挙げられる。さらに他の実施形態では、ストリッピング剤は1種以上の軽質オレフィン(たとえば、エチレン、プロピレンおよび/またはブテン等)を含んでいてもよい。
【0029】
可塑剤は、その粘度を低減し、揮発性不純物の蒸気圧を増加し、および/または下流で形成されるポリマー−可塑剤ブレンドのその後の処理を容易にする温度で加熱されてもよい。好ましい実施形態では、工程(i)の温度は、可塑剤の泡立ち点および分解点の少なくとも1種より低い温度である。好ましくは、工程(i)の温度は約150℃〜約250℃である。可塑剤はまた、可塑化されたポリマーのその後の処理(たとえば、より良好な混合、向上された脱揮発分操作)を改善するために不純物除去に必要な温度を超えて加熱されてもよい。
【0030】
精製された可塑剤が工程(b)後に供給されるポリマー(たとえば、ポリマーリアクター流出物またはポリマーに富む相)が、高い温度にある実施形態では、精製された可塑剤を同じまたは同じような温度でポリマーに供給することが有利であることがある。
【0031】
ある実施形態では、精製された可塑剤が工程(b)後に供給されるポリマーの温度よりも高い温度で、その精製された可塑剤を供給することが好ましいことがある。たとえば、ポリマー製造プロセスが可塑化されたポリマーから溶媒を除去する直接脱揮発分装置(たとえば、真空脱揮発分装置、薄膜蒸発器、降下ストランド蒸発器、フラッシュ蒸発器)を含んでいる場合には、高温度の可塑剤を使用することによってプロセスに加えられた熱は、脱揮発分の速度および有効性を著しく増加させることができる。ポリマーに可塑剤を添加すると製品の脱揮発分および仕上げ工程がポリマー製造のボトルネックになる傾向があるので、このような増加は顕著な利点をもたらすことがある。
【0032】
1つの実施形態では、可塑剤は、工程(ii)で不活性ガスと約0.1絶対気圧〜4絶対気圧、より好ましくは約0.1絶対気圧〜約1.5絶対気圧の圧力で接触させられる。
【0033】
不活性ガスの質量流量と可塑剤の質量流量との比は一般に、所望の精製度および工程(ii)のプロセス条件に依存する。1つの実施形態では、不活性ガスの質量流量は、可塑剤の質量流量の約0.1%〜約20%、好ましくは約0.25%〜約5.0%である。
【0034】
1つの特別の実施形態では、ガスストリッピングプロセスを使用する可塑化されたポリマーを製造するプロセスは、以下の工程を含む:大気圧を超える圧力で、概しておよそ環境温度で、または任意的に輸送を容易にする温度に(たとえば、可塑剤の融点超にまたは粘度限界未満に)加熱して、可塑剤を連続的に供給する工程;可塑剤を、その粘度を低減し、揮発性不純物の蒸気圧を増加させ、および/またはポリマー−可塑剤ブレンドのその後の処理を容易にする温度に加熱する工程;不活性ガス(任意的に加熱されたもの)を連続的に供給されたおよび好ましくは低圧にある容器中に、加熱された可塑剤の中間貯蔵をして、揮発性不純物のストリッピングを最大限にする工程;蒸気生成物(たとえば、ベント流れ)をその容器から適当なパージまたは回収設備まで連続的に導く工程;および精製された可塑剤を連続ポリマー製造プロセス、たとえば米国特許第7,910,637号に記載されたものに連続的に供給する工程。
【0035】
1つの実施形態では、不活性ガス(たとえば、窒素)を含んでいるベント流れは、再循環される冷却水を冷却媒体として使用する熱交換器を通されて、冷却されたベント流れを形成してもよい。凝縮された不純物は集められてパージされることができる。好ましくは、凝縮された不純物はリサイクルされまたは売却されることができる(たとえば、燃料価格で、敏感でないプロセスにおける溶媒として、または高価値の成分を抽出するために)。窒素が不活性ガスとして使用される場合には、適切な程度に低濃度の不純物を含んでいる冷却された窒素は、大気に放出されることができる。軽質炭化水素(たとえば、メタン)が不活性ガスとして使用される別の実施形態では、不活性ガスを含んでいるベント流れは、エネルギー回収用の燃料ガス系統またはフレア系統に直接放出されてもよい。
【0036】
1つの実施形態では、冷却されたベント流れは、その流れ中の不純物と相溶性を有する低揮発性液体中に吹き込まれてもよい。不純物は液体中に吸収され、残りのガスが、大気、燃料ガス系統またはフレア系統に放出される。別の実施形態では、冷却されたベント流れは、その流れから不純物を優先的に捕捉する吸着剤固体(たとえば、活性アルミナ、モレキュラーシーブ、活性炭)を含有する固定床を通される。
【0037】
1つの実施形態では、不活性ガスを含んでいるベント流れは、ガス吸収装置を通されて、大気、燃料ガス系統またはフレア系統に放出されてもよい。吸収装置内の液体は、不純物の溶媒であってもよく、または不純物と反応する溶解された化合物(たとえば、酸または塩基)を含んでいてもよい。精製された蒸気はその後、大気、燃料ガス系統またはフレア系統に放出される。別の実施形態では、膜装置が、ストリッピング用の蒸気から不純物を分離するために使用される。
【0038】
ガスストリッピングに加えて、ポリマー製造プロセスは、工程(b)後のプロセスに供給する前に、固定床吸着、化学捕捉剤、蒸留、液液抽出、ろ過、重力沈降および遠心分離の少なくとも1種によって可塑剤を精製する工程をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、様々な不純物を除去する精製方法、たとえば固形汚染物質を除去するためのろ過、遊離の水相を除去するための重力沈降および/または揮発性不純物を除去するためのガスストリッピングを組み合わせることが有利である。
固定床による吸着
【0039】
1つの実施形態では、可塑剤は固定床吸着によって精製される。この分離技術は典型的には、可塑剤から固体の表面へ不純物を選択的に移動することを含む。不純物に対する単位面積当たりの吸着剤固体の容量は、低い傾向がある。したがって、大きい内部表面積を有する高度に多孔性の固体が一般に好まれる。吸着剤は典型的には、可塑剤との相容性および主要な不純物に対する選択性および容量について評価される。これは、不純物の濃度、その極性および化学的性質ならびに操作温度によって影響を受ける。吸着剤固体の化学構造は、その極性、親水性および電荷に影響する。吸着剤固体はまた、その典型的な細孔サイズおよび細孔構造の均一性によっても特性付けられる。特にゼオライトモレキュラーシーブは一般に、均一の細孔サイズおよび極性分子に対する高い親和性を有しており、したがって典型的には低い汚染物質濃度においてさえも高い容量を示す。精製は、不純物分子の有効直径よりも大きいが、可塑剤分子のそれよりも小さい細孔サイズを選択することによって向上させることができる。たとえば、3Aモレキュラーシーブは、炭化水素流れから水を除去するのに特に有用である。13Xモレキュラーシーブは、より大きい分子、たとえば多くの含酸素化合物を除去するのに有用である。
【0040】
活性アルミナは、多くの用途における吸着剤として有用である。この吸着剤は、ゼオライトモレキュラーシーブよりも均一度の低い細孔サイズを有し、極性分子に対するそれよりも低い選択性を示す。特殊変性された活性アルミナ、たとえばUOP AZ-300は、弱塩基のように作用し、化学吸着による軽質酸性ガス、たとえばCO
2、H
2SおよびCOSの除去が高められている。再生可能でない金属酸化物または金属硫化物吸着剤は、不純物、たとえばAsH
3、PH
3、COS、HgおよびO
2の濃度を低い10億分の1(ppb)レベルにまで下げるのに有効であり得る。
【0041】
吸着剤固体は一般に、固定床に充填される。床の大きさは典型的には、操作条件および許容される破過時間での不純物に対する固形吸着剤の容量によって決定され、許容される破過時間は吸着剤床を再生するのに必要な時間によって多くの場合決定される。破過時間は、多くの要因、たとえば床の操作条件、床の経年および履歴(前の再生の際の条件)および様々な不純物の濃度に依存する。固定床の入口で吸着剤固体に物理的に結合された不純物は、吸着剤固体に、より高い親和性を有する不純物によって置き換えられる傾向がある。たとえば、モレキュラーシーブ床では、液体流れ中の水分は、極性のより低い含酸素炭化水素を置き換え、床の出口により近いところでそれらを再吸着させる傾向がある。その結果、含酸素炭化水素は、水の前に床を破過する傾向がある。
【0042】
圧力損失は、精製のための好ましい吸着法を選択する際の別の考慮すべき事項であることがある。層流にある固定床の場合、圧力損失は液体の粘度に正比例する。比較的高い粘度を有する可塑剤(たとえば、Chevron社のParamount 6001油:15℃で500cP)は典型的には、1cP未満の粘度を有する低分子量の炭化水素液体ほどには固定床吸着に好適ではない。いくつかの場合には、粘度は、可塑剤を加熱することによって許容されるレベルに下げられることができるが、これは吸着剤固体の容量を下げ、有効性が低減することがある。
【0043】
精製のための好ましい吸着を選択する際の別の考慮すべき事項は、可塑剤が再生の前に床から取り除かれることができる容易さである。低揮発度を有する比較的粘稠な液体は、床を低粘度溶媒で洗い流さないと取り除くのが難しいことがあり、床の洗い流しは時間および煩雑さを付加し、望ましくない廃棄物を生み出すことがあるからである。
化学捕捉剤
【0044】
1つの実施形態では、可塑剤は化学捕捉剤の使用によって精製される。捕捉剤は、多くの重合プロセス中の供給原料および希釈剤流れに導入されて、反応性不純物を除去する。たとえば、様々なアルミニウムアルキルが酸素、水分および他の求核分子を捕捉するために使用されてもよい。酸素捕捉剤の別の例はヒドラジンである。捕捉剤または捕捉剤ブレンドは典型的には、存在する可能性がある不純物に対してモル過剰で添加される。化学的捕捉作用の有効性は通常、可塑剤中の不純物の相対揮発度によってあまり影響を受けないので、様々な揮発性を有する多種多様な反応性不純物が存在する場合、または主要な不純物が可塑剤との比較で低い相対揮発度(<1.2)を有する場合に、化学的捕捉は有利になり得る。捕捉剤の有効性は、混合装置、たとえばスタティックミキサー、混合ティーまたは動力ミキサーによって可塑剤中に概して均一な濃度を達成することによって増加されてもよい。可塑剤または捕捉剤を予熱することも、捕捉反応速度をより好ましいものにし、したがってより有効であることがある。可塑剤精製のために捕捉剤を使用することは、不純物のレベルが低い(要求される捕捉剤添加量が低い)場合に特に有利になり得る。さらに、捕捉剤添加設備用の投資コストは、特に捕捉剤が他のプラント流れを処理するために既に使用されている場合に、他の精製手法に比べて低いことがあり得る。
【0045】
捕捉剤の反応特性、および捕捉剤と不純物との反応が発熱性である傾向があることを考慮すると、設備の設計(たとえば、捕捉剤の貯蔵および供給設備)は、得られる潜在的な熱出力を考慮に入れることが好ましい。遊離の水が可塑剤から除去されまたは可塑剤中に導入されないように対策が取られることも好ましい。有利の水は、抑制されない反応を引き起こすことがあるからである。他の考慮すべき事項としては捕捉反応の副生成物が挙げられ、副生成物には固形物および/または金属化合物が含まれ、さらに可塑化されたポリマーへのこれらの影響が考えられる。
蒸留
【0046】
1つの実施形態では、可塑剤は蒸留によって精製される。一般に、1.2を超える相対揮発度が蒸留による精製のためには望ましい。蒸留では、液体および蒸気は概して向流様式で一連の蒸気−液体接触装置(たとえば、トレー、パッキング)の中を通って流れる。蒸気は蒸留塔を上へ移動するので、蒸気は典型的にはより揮発性の成分に富むようになる。液体は蒸留塔を下へ移動するので、液体は典型的にはより低度に揮発性の成分に富むようになる。理論段数は、所望の分離度に基いて算定されることができ、その接触装置の効率(気液平衡への接近度)に基いて実際のトレー数または充填床の高さに一般に相関する。
【0047】
蒸留装置は、垂直容器(たとえば、塔)から構成されてもよく、この垂直容器は、気液接触装置、リボイラーおよびコンデンサーを含み、リボイラーは容器の底部から液体を部分的にまたは完全に蒸発させその蒸気の一部を塔底に再び戻し、コンデンサーは容器の頂部から蒸気を部分的にまたは完全に凝縮させ液体還流の一部を塔頂に再び戻す。可塑剤は、好ましくは不純物の除去を最大にする位置で塔に供給される。精製された可塑剤は、塔頂製品、塔底製品または側流製品として取り出されることができる。不純物も同様に、塔頂生成物、塔底生成物または側流生成物として取り出されることができる。好ましくは、分離される成分の抜き出し位置、還流量、再沸騰される蒸気流量および操作圧力の選択は、低い全体の(設備および操作の両方の)コストで所望の可塑剤純度を達成するように調節される。熱に敏感な可塑剤の場合、真空蒸留が好まれることがある。
【0048】
好ましい実施形態では、蒸留方法は、リボイラーのないストリッピング塔の使用を含む。そのような実施形態では、高温度のストリッピング蒸気が塔底に供給され、可塑剤が(任意的に加熱されて)塔頂に供給されてもよい。様々なストリッピング剤が考慮されることができ、不活性ガス、たとえば「ガスストリッピング」において記載されたようなものが含まれる。任意的にコンデンサーおよび還流を有して いてもよいそのような方法は、分離するのが困難な不純物を比較的低いストリッピング蒸気流量で除去するのに有効であることがある。ある実施形態では、真空下の操作が、過度の塔操作温度を避けながら、より低い揮発度のストリッピング剤の使用が可能になるので、好まれることがある。
液液抽出
【0049】
ある実施形態では、可塑剤は液液抽出によって精製される。不純物と可塑剤との相対揮発度がガスストリッピングが好ましいために十分なほど高くない場合に(たとえば、<4)、不純物と可塑剤との相対揮発度が蒸留が好ましいために十分なほど相違しない場合に(たとえば、1.0〜1.2)、または可塑剤が極めて熱に敏感である場合に、この方法は好ましいことがある。この実施形態では、抽出溶媒は、可塑剤とは好ましくは非混合性であるが、除去されるべき不純物とは相溶性である。抽出溶媒への不純物の移動は好ましくは、不純物と反応しまたは会合する化合物(たとえば、酸、塩基、錯化剤)を導入することによって向上される。抽出方法は典型的には、液液接触塔(たとえば、パッキングまたは棚段を含んでいるもの)、抽出溶媒精製塔(たとえば、蒸留、吸着またはガスストリッピングを使用するもの)および可塑剤用の精製塔(たとえば、蒸留、吸着またはガスストリッピングを使用するもの)の少なくとも1種を、特に、抽出溶媒がポリマー製造プロセスにおいて望ましくない不純物である場合に、含んでいる。
ろ過、重力沈降、延伸分離
【0050】
ある実施形態では、好ましくは可塑剤から固形分および/または第2の液体相を取り除きために、可塑剤はろ過、重力沈降および/または遠心分離によって精製される。可塑剤が望ましくない固形分、たとえばポリマーゲル、粒子状汚染物質、包装材料または第2の液体相(たとえば、遊離の水)を含んでいる場合に、このような方法は好ましいことがある。
【0051】
一般に、フィルターは、その名目孔サイズより大きい固形微粒子を捕捉する一方で、液体は通過することができる多孔性のエレメントを含んでいる。分離要件に合わせられることができる多くの孔サイズのものが利用可能である。たとえば、ストレーナーまたはスクリーンは1cm
2より大きい目開きを備えて、下流の機器を閉塞しまたは損傷することがある大きい汚染物質を捕集することができる。0.01cm
2より小さい孔サイズを備えたフィルターエレメントは、可塑化されたポリマーから目に見える粒子を取り除くために使用されることができる。固定床吸着と同様に、ろ過装置を通るときの圧力損失は典型的には、可塑剤粘度の増加につれて増加する。したがって、可塑剤を予熱して粘度を下げることは好ましいことがある。典型的には、可塑剤は、閉塞したときのろ過装置の圧力損失よりも高い圧力でフィルターに供給される。したがって、圧力を上昇させる装置、たとえばポンプ、押出機または加圧されたガスブランケットが望ましいことがある。ある実施形態では、フィルターエレメントを洗浄しまたは取り替えている間、使用可能な予備のフィルターを備えることによって、連続ろ過が達成されてもよい。フィルターエレメントの寿命は、捕捉された粒子の重力沈降(たとえば、Y型ストレーナー中への沈降)、周期的な逆洗または連続スクレーパーのような微粒子除去装置を使用することによって伸ばすことができる。
【0052】
重力沈降および遠心分離方法は、可塑剤と望ましくない粒子または第2の液体相との間の密度差を使用して可塑剤を精製する。可塑剤との密度差が大きい、粒子サイズが大きい、および/または可塑剤粘度が低い場合にこのような方法は好ましいことがある。いくつかの実施形態では、精製の前に可塑剤を加熱してその粘度を下げることが好ましいことがある。重力沈降装置は基本的には、沈降が行われるための滞留時間を提供する容器である。容器は、任意的に特殊な内部構造物、たとえば水平板またはパッキングを装備されて、第2の液体相の合体を向上させてもよい。いくつかの実施形態では、分配管が設けられて、乱流を低減し、かつ供給原料を容器の一方の端から入れ、生成物を反対側の端から取り出して、分離のために使える滞留時間を増加させてもよい。ある実施形態では、密度差が比較的低い、可塑剤粘度が比較的高い、および/または第2の液体相が界面活性化剤によって小液滴として安定化されている場合には、遠心分離装置、たとえばサイクロンまたは遠心分離機が好ましい。
精製された可塑剤
【0053】
好ましい実施形態では、精製された可塑剤は、精製(たとえば、本発明のプロセスの工程(e)での精製)の前の可塑剤を基準とした濃度(wppm、100万分の1重量部)によって、不純物除去特性および/または本明細書に列挙された実施形態の少なくとも1つを満たす。「不純物除去特性」とは、精製された可塑剤が、参照成分の以下に記載された割合を精製前の可塑剤から除去されている、すなわち精製前の可塑剤よりも少なくされていることを意味する。そのような特性としては、(1)酸素の少なくとも90%、好ましくは少なくとも97%;(2)水の少なくとも90%、好ましくは少なくとも97%;(3)1×10
5〜5×10
5の相対揮発度(α
ip)を有する不純物の少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%;(4)5×10
5〜1×10
6のα
ipを有する不純物の少なくとも65%、好ましくは少なくとも85%;(5)1×10
6〜5×10
6のα
ipを有する不純物の少なくとも75%、好ましくは少なくとも90%;および(6)5×10
6超のα
ipを有する不純物の少なくとも90%、好ましくは少なくとも97%、が除去されることが挙げられることができる。好ましくは、精製された可塑剤は、(1)〜(6)に列挙された全ての不純物除去特性および好ましい実施形態を満たす。
【0054】
相対揮発度はPerry’s Chemical Engineering Handbook、第8版、13−7および13−8頁(これは参照によって本明細書に取り込まれる。)に記載されている。相対揮発度α
ijは、蒸留によって混合物中の2つの成分iおよびjを分離する相対的な容易さを表す。高い値は、より容易な分離を表す。相対揮発度は典型的には、特定の温度および圧力(本明細書では200℃および1気圧)で評価される。本明細書で使用される相対揮発度α
ijは次式で表され、
【化1】
この式で、y
iおよびx
iはそれぞれ気相および液相中の不純物のモル分率であり、y
jおよびx
jはそれぞれ気相および液相中の可塑剤のモル分率であり、また気相および液相は互いに平衡状態にある。α
ijの値は、気液平衡にある可塑剤−不純物混合物の蒸気成分および液体成分の実験室での測定によって、または熱力学モデルを使用するプロセスシミュレーションによって得られることができる。本明細書で使用される相対揮発度α
ipは不純物iと可塑剤pとの相対揮発度である(したがって、相対揮発度α
ipを決定するには上記の相対揮発度の式中のjがpで置き換えられる。)。可塑剤の標準沸点が200℃未満である場合には、より低い参照温度またはより高い参照圧力が使用されてもよい。
【0055】
好ましい実施形態では、精製された可塑剤は、精製(たとえば、本発明のプロセスの工程(e)での精製)の前の可塑剤を基準とした濃度(wppm、100万分の1重量部)によって、以下の不純物除去特性の少なくとも1つを満たす:(7)酸素の少なくとも99%;(8)水の少なくとも98%;(9)1×10
5〜5×10
5のα
ipを有する不純物の少なくとも65%;(10)5×10
5〜1×10
6のα
ipを有する不純物の少なくとも85%;(11)1×10
6〜5×10
6のα
ipを有する不純物の少なくとも90%;および(12)5×10
6超のα
ipを有する不純物の少なくとも98%、が除去されること。好ましくは、精製された可塑剤は不純物除去特性(7)〜(12)の全てを満たす。精製前後の可塑剤中の不純物濃度は、精製前および精製後の両方の可塑剤中の濃度を測定するのに同じ測定法および条件が使用される限り、当該技術分野で知られた任意の適当な手段(たとえば、ガスクロマトグラフィー、NMR等)によって測定されることができる。1つの測定法が別のものと矛盾する(たとえば、GC測定値がNMRと矛盾する)場合には、ヘッドスペースガスクロマトグラフィー(「ヘッドスペースGC」)を使用して得られた濃度測定値が優先される。
可塑化されたポリマーを製造するプラント
【0056】
本発明はまた、可塑化されたポリマー(たとえば、エチレン−プロピレンゴム)を製造するプラントを包含し、これはいくつかの実施形態では、以下のものを含む:(a)炭化水素溶媒中にオレフィンモノマーを含んでいる供給原料;(b)リアクターであって、そこにオレフィンモノマーおよび触媒が供給され、反応してポリマーリアクター流出物が形成されるリアクター;(c)ポリマーリアクター流出物から炭化水素溶媒と未反応オレフィンモノマーとを分離するリアクター下流の分離手段であって、ポリマーリアクター流出物をポリマーに富む相とポリマーに乏しい相とに分離するセパレーター(たとえば、高圧セパレーター)を含む分離手段;(d)ポリマーに乏しい相をリアクターにリサイクルするリサイクル手段;および(e)リアクターの下流に可塑剤を供給する可塑剤供給手段。いくつかの実施形態では、可塑剤供給手段は、(i)圧力源、(ii)ヒーター、(iii)容器であって、その中で不活性ガスが可塑剤に添加される容器、(iv)可塑剤と不活性ガスとを接触させる接触装置、(v)精製された可塑剤から蒸気生成物を分離するセパレーター装置、および(vi)精製された可塑剤をリアクターの下流に供給する供給手段を含む。
【0057】
本発明に使用するのに適した典型的なポリマー製造プロセスおよびプラントの詳細は、米国特許第6,881,800号に見出されることができ、その内容はその全体が参照によって本明細書に取り込まれる。この参照特許は、連続溶液重合のためのプロセスおよびプラントを提供し、これらは圧力源、当該圧力源の下流の重合リアクター、当該重合リアクターの下流の圧力降下装置および当該圧力降下装置の下流のセパレーターを含んでおり、当該圧力源は、当該プロセスプラントの操作の間、当該反応混合物に圧力を供給して、当該リアクターと当該セパレーターとの間に追加の圧力源がなくても当該リアクター中で単相の液状反応混合物を、および当該セパレーター中で2相の液液反応混合物を製造するのに十分なものである。1つの実施形態では、この参照特許は、圧力下の炭化水素溶媒中のオレフィン性不飽和モノマー供給原料の連続溶液重合のためのプラントを記載しており、このプラントは、供給原料用およびシングルサイト触媒成分用の入口を備え、ポリマー含有重合反応混合物(すなわち、ポリマー−モノマー混合物)を形成する連続撹拌槽リアクター配置;およびその下流にこの混合物から溶媒と未反応モノマーとを連続的に分離する分離手段を有しており、この分離手段は、この重合混合物をリアクター配置にリサイクルして戻すための希薄相と濃縮相とに分離する少なくとも最初の液相セパレーター、重合の間に添加されたまたは生成された水素を除去するためにストリッピング配置にまで希薄相を液相で通すために設けられた導管を含んでおり、このストリッピング配置は、ストリッピングガスと希薄相とを向流流れ配置で接触させて希薄相リサイクルから除去するために気相中の水素を濃縮する手段を含んでいる。1つの実施形態では、精製された可塑剤は、ポリマー−モノマー混合物の下流に添加されて、本発明による可塑化されたポリマーブレンド流れを形成することができる。
【0058】
他の実施形態では、この参照特許は、圧力下の炭化水素溶媒中のオレフィン性不飽和モノマー供給原料の連続溶液重合プロセスを記載しており、このプラントは、シングルサイト触媒が供給されて重合反応混合物(すなわち、ポリマー−モノマー混合物)を含んでいるポリマーが任意的に溶媒の存在下に形成されてもよい連続撹拌槽リアクター配置、およびこのリアクター配置の下流にその混合物から溶媒と未反応モノマーとを連続的に分離する分離手段を含んでおり、この分離手段は重合混合物を濃縮相(すなわち、ポリマーに富む相)とポリマーに乏しい相とに分離するための少なくとも最初の液相セパレーターを含んでいる。高容量で低粘度のポンプが、供給原料の圧力を少なくとも75バールに上げるために配置されており、またその混合物をリアクター配置から加熱配置を通って液相セパレーターの上流の圧力降下手段まで通させるための加熱配置が、リアクターと圧力降下手段との間に追加のポンプ加圧手段が備えられてまたは備えられずに、設けられている。特定の手段が、リアクター配置の下流および液相セパレーターの上流に触媒キラーを導入して、加熱された重合混合物のセパレーター中でのさらなる重合が分離を起こすのを防ぐために、希薄相を冷却するためにおよび/またはリサイクルされた流れをポンプの入口側に運ぶために設けられてもよい。1つの実施形態では、精製された可塑剤がポリマー−モノマー混合物の下流に添加されて、本発明による可塑化されたポリマーブレンド流れが形成されることができる。
【0059】
本発明に使用するのに適した典型的なポリマー製造プロセスおよびプラントはまた、米国特許第7,163,989号に見出されることができ、その内容はその全体が参照によって本明細書に取り込まれる。この参照特許は連続溶液重合プロセスおよびプラントを提供し、このプロセスおよびプラントは以下の工程を含んでいる:(A)1種以上のオレフィン性不飽和モノマーを含んでいる供給原料および炭化水素溶媒を形成する工程;(B)供給原料の圧力を少なくとも75バールに上げる工程;(C)供給原料を反応ゾーン中に通し、供給原料とシングルサイト触媒とを接触させて、重合混合物(すなわち、ポリマー−モノマー混合物)を形成する工程;(D)触媒キラーを重合混合物に添加する工程;(E)工程(D)の後で重合混合物を加熱し、その後で重合混合物の圧力を下げる工程であって、当該圧力低下の後、重合混合物が最初の重合圧力にかかわらず下限臨界溶液相境界を通過する工程;(F)重合混合物を希薄相と濃縮相とに分離する工程;(G)希薄相の少なくとも1部を工程(A)にリサイクルする工程;(H)希薄相を冷却する工程;および(I)希薄相を乾燥する工程。1つの実施形態では、精製された可塑剤は、この参照特許に記載されたプロセスの工程(C)の後のポリマー−モノマー混合物に添加されて、本発明による可塑化されたポリマーブレンド流れが形成されることができる。
インラインブレンド
【0060】
好ましい実施形態では、精製された可塑剤は、固形ポリマーブレンド成分の回収およびペレット化の前にポリマーと可塑剤とのインラインブレンドによってポリマー製造プロセスに加えられる。
【0061】
本明細書で使用される「ブレンド」またはポリマーと可塑剤との「ブレンド」とは一般に、これらの2種の成分の組み合わせを言い、得られる組み合わせのどのような特定の手段または特性によっても限定されない。たとえば、EPDMポリマーおよび鉱油のような可塑剤では、得られるブレンドは油展ポリマーであってもよい。いくつかの実施形態では、ポリマーおよび可塑剤は、これらの成分間でほとんどまたは全く化学反応を起こさないで、混和する成分の均質なブレンドを形成してもよい。
【0062】
インラインブレンドの典型的な詳細は、米国特許第7,910,637号に開示されており、その内容はその全体が参照によって本明細書に取り込まれる。たとえば、この参照特許は、以下の工程を含む可塑化されたポリマーのインラインブレンドプロセスを記載する;(A)1基のリアクターまたは2基以上の直列に構成されたリアクターを含む単一のリアクター列、リアクター列の下流に流体連結された高圧セパレーター、および1基以上の貯蔵タンクを準備する工程であって、リアクター列が1種以上のポリマーを製造し、1基以上の貯蔵タンクが1種以上のオフラインで製造された可塑剤を貯蔵する工程;(B)リアクター列のリアクター中で、2個以上の炭素原子を有するオレフィンモノマー、1種以上の触媒系、任意的な1種以上のコモノマー、任意的な1種以上の捕捉剤、および任意的な1種以上の希釈剤または溶媒を接触させる工程であって、リアクター列が重合系の固体−流体相転移温度超の温度および重合系の雲り点圧力より10MPa下以上〜1500MPa未満の圧力にある工程;(C)リアクター列中で、均質な流体相ポリマー−モノマー混合物を含むポリマーリアクター流出物を形成する工程;(D)均質な流体相ポリマー−モノマー混合物を含むポリマーリアクター流出物をリアクター列から高圧セパレーターを通して通過させる工程;(E)高圧セパレーター内の温度および圧力を固体−流体相転移点超であるが雲り点圧力および温度未満に維持して、ポリマーに富む相およびポリマーに乏しい相を含んでいる流体−流体2相系を形成する工程; (F)高圧セパレーター中のポリマーに富む相からポリマーに乏しい相を分離して、濃縮されたポリマー相および分離されたポリマーに乏しい相を形成する工程;および(G)1基以上の貯蔵タンクからの1種以上のオフラインで製造された可塑剤を(C)工程後のプロセスに供給して、可塑化されたポリマーブレンド流れを形成する工程。
【0063】
本発明のある実施形態では、オフラインまたはオンラインで製造された可塑剤は、ガスストリッピング、固定床吸着、化学捕捉剤、蒸留、液液抽出、ろ過、重力沈降および遠心分離の少なくとも1種によって精製されることができる。精製された可塑剤は、その後(C)工程後の上記のプロセスに供給されて、本発明による可塑化されたポリマーブレンド流れが形成されることができる。
【0064】
精製された可塑剤は、液体の、溶融されたまたは溶解された状態でポリマー含有流出物流れに供給されて、可塑化されたポリマーブレンドが製造されることができる。ポリマー含有流れと可塑剤含有流れとを組み合わせるブレンド点は、単一のリアクター列の下流のどこであってもよい。有利であることには、精製された可塑剤は、低分子量成分、たとえばモノマーおよび任意的な重合系の不活性溶媒/希釈剤の少なくとも一部をまだ含有しているポリマー含有流れとブレンドされて、低減された粘度のおかげでブレンドプロセスが促進される。この開示されたインラインブレンドプロセスの当該有利な混合点は、リアクター(または直列配置の複数のリアクター)の下流であって製品仕上げ部門の押出機または脱揮発分押出機の上流に、とりわけリアクターの下流および製品仕上げ部門の当該押出機または脱揮発分押出機の直前に配置された低圧セパレーターの上流にまたはその中に存在してもよい。開示された本発明のプロセスのこの様相は、精製された可塑剤とポリマーとを、インラインで、すなわちポリマーがその本質的に高純度で固体の形態で回収される前にブレンドする。
【0065】
1つの様相では、単一のリアクター列からのポリマー流出物流れ(すなわち、ポリマーリアクター流出物)と精製された可塑剤とは、リアクター列の下流および相セパレーターの上流でまたはその中で一緒にされてもよく、この相セパレーターはインラインブレンド成分のブレンドおよびポリマーブレンド成分と可塑剤ブレンド成分とからのモノマーおよび不活性な希釈剤または溶媒の分離を同時に提供する。相セパレーターは、ポリマーおよび精製された可塑剤の温度および圧力を個々に(すなわち、混合点の前で)または一緒に(すなわち、混合点の後で)調節することによって、当該混合された流れを固体−流体相転移点より上に維持しながら、ポリマー流出物および精製された可塑剤をこの混合物の曇り点より下に導いてもよい。
【0066】
ある実施形態では、ポリマーおよび精製された可塑剤は相セパレーターの上流で一緒にされてもよく、その際に任意的にこの混合された流れが当該セパレーターに入る前に1基以上のスタティックミキサーを通されて混合が向上されてもよい。セパレーター容器内の圧力は、雲り点圧力未満に維持されて、ポリマー−可塑剤に富む流体相およびモノマーに富む流体相を含む2つの流体相が形成されてもよい。セパレーター内の温度は、固体−流体相転移温度超に維持されて、十分に混合された流体ポリマー−可塑剤に富むブレンド相の形成および連続層の底部へのその沈降を可能とし、かつより低密度のモノマー−溶媒に富む(ポリマーに乏しい)相の形成および連続層の頂部へのその上昇を可能としてもよい。モノマーに富む相は、ポリマー−可塑剤に富むブレンド相から分離されてもよく、また分離されたモノマーに富む/ポリマーに乏しい相は直接にまたはさらなる処理の後に重合列にリサイクルされてもよい。任意的に、低圧セパレーターの上流のまたは低圧セパレーター中の第1のポリマー−可塑剤に富むブレンド相の圧力が下げられて、より濃縮されたポリマー−可塑剤に富む流体相およびもう一つのモノマーに富む/ポリマーに乏しい相へのもう一つの流体−流体分離が達成されてもよい。ここの温度は、任意的に第1のポリオレフィン−可塑剤に富むブレンド流れをさらに加熱することによって、固体−流体相転移温度超に維持されてもよい。
【0067】
ある実施形態では、触媒キラー、ポリマー変性剤および/または添加物が、これらの高密度の流体状態(たとえば、液体、超臨界流体、溶融されたまたは溶解された状態)で、ポリマー−および/または可塑剤−含有留出物流れに添加されてもよい。これは、第1の圧力降下弁の下流の任意の所望の点で、本開示プロセスのリアクター群のリアクター列の個々のまたは一緒にされた留出物流れの任意のもの中に行われることができる。インラインブレンドプロセスのセパレーター部門からのポリマー−可塑剤に富む相は、次に下流の仕上げ段階に運ばれて、さらなるモノマーストリッピング、乾燥および/またはペレット化がされて、本発明のインラインブレンドプロセスの可塑化されたポリマーブレンド製品が形成される。
可塑剤
【0068】
本発明に使用するのに適した可塑剤は、オフラインでまたはオンラインで製造されてもよい。好ましくは、可塑剤はオフラインで製造される。本発明に従って本明細書で使用されるように、可塑剤は最終ポリマー製品中に大部分が残るように意図され、他方、溶媒は典型的にそこから除去されるという意味で、ポリマー製造プロセス中の溶媒とは区別されることが意図されている。好ましくは、製造されたポリマーは少なくとも5phrの可塑剤、より好ましくは少なくとも10phr、または20phr、または50phrの可塑剤を含んでいる。
【0069】
可塑剤は、J.K.Sears、J.R.Darby著、「可塑剤の技術」、米国、ニューヨーク州、Wiley社、1982年刊によって「可塑剤は、プラスチックに取り込まれてその加工性およびその柔軟性または膨張性(伸長性)を増加させる材料である。可塑剤の添加はプラスチックの溶融粘度、二次転移温度または弾性率を低下させることができる。」と述べているように定義される。本明細書で参照される「プラスチック」はより広く、ポリマー一般(たとえば、ポリオレフィン、ゴム)に適用されることができる。
【0070】
Sears−Darbyのモノグラフはまた、「有機可塑剤は通常、適度に高い分子量の液体または時には低い融点の固体である。」と規定する。したがって、可塑剤は典型的には、30kg/モル以下、または20kg/モル以下、または10kg/モル以下、または5kg/モル以下のMwを有する。ポリマー、たとえばポリオレフィンとブレンドするのに適した可塑剤の例としては、オレフィンのオリゴマー、パラフィン油およびワックス、鉱油、合成潤滑油、バイオ由来油、潤滑油基油、低分子量エラストマーまたはプラストマー等およびこれらの混合物が挙げられる。本発明に使用するのに適した典型的な可塑剤の詳細は、米国特許第7,910,637号に見出されることができ、その内容はその全体が参照によって本明細書に取り込まれる。
【0071】
可塑剤は一般に、ポリマー製造プロセス中のポリマーよりも、低いガラス転移温度および/または低い弾性率および/または低い結晶化度および/または低いMwを有する。好適な可塑剤としては、たとえばC
5〜C
20アルファオレフィンのオリゴマー、ポリマーおよびコポリマー;およびこれらの混合物(ポリ(アルファオレフィン)またはPAOともよばれる。);エチレンとプロピレンとのオリゴマーおよびコポリマー;エチレンとC
4〜C
20オレフィンとのオリゴマーおよびコポリマー;プロピレンとC
4〜C
20オレフィンとのオリゴマーおよびコポリマー;パラフィン油およびワックス、鉱油、合成潤滑油、合成および鉱物の潤滑油基油、エラストマーおよびプラストマーが挙げられてもよい。
【0072】
ポリオレフィン可塑剤は30kg/モル以下のMwを有するオレフィンポリマーであり、DSCでの2回目の溶融によって21〜230℃の温度の間で測定された任意の融解熱(Hf)を有していてもよい。ポリオレフィン可塑剤の例としては、C
2〜C
20アルファオレフィンのオリゴマー、ポリマーおよびコポリマー;エチレンとC
3〜C
20オレフィンとのオリゴマーおよびコポリマー;プロピレンとC
4〜C
20オレフィンとのオリゴマーおよびコポリマー、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0073】
ポリアルファオレフィン(PAO)は、高級アルファオレフィン(すなわち、4個以上の炭素を有するアルファオレフィン)の触媒重合によって製造されたポリオレフィン可塑剤である。好ましくは、高級アルファオレフィンは5〜20個の炭素原子を有する直鎖状アルファオレフィンである。PAOは、立体規則性、たとえばアイソタクチシティーまたはシンジオタクチシティーの任意の程度によって特性付けられてもよく、および/またはアタクチックであってもよく、
13C−NMRによって測定された50%超のメソダイアドまたは50%超のラセミダイアドを有していてもよい。
【0074】
ポリマーとインラインブレンドするのに好ましい可塑剤は一般に、セパレーター中でポリマーと共溶解されることができ、−20℃以下のガラス転移温度(Tg)および下記の特性の少なくとも1つを有する:10kg/モル以下のMwまたは20MPa以下の曲げ弾性率。インラインブレンドをもたらす非限定的な典型的な可塑剤としては、パラフィン油およびワックス(たとえば、イソパラフィンまたはn−パラフィン)、鉱油、植物または他のバイオ由来油、および他の合成または天然油、たとえば「合成潤滑油、鉱油およびバイオ系潤滑油:化学および技術」、L.S.Rudnick著、CRC Press社、2006年刊に記載されたものが挙げられる。特に、好ましい可塑剤としては、イソパラフィン、プロセス油、いわゆるガス・トゥー・リキッドプロセスに由来する高純度炭化水素流体およびグループIII潤滑油基油が挙げられる。
【0075】
インラインブレンドするのに好適な可塑剤は、1種以上のC
6〜C
200パラフィンを含んでいてもよく、またはそれから本質的に成っていてもよい。1つの実施形態では、パラフィン可塑剤はC
6〜C
100パラフィンまたはC
8〜C
100パラフィンを含んでいてもよい。さらに別の実施形態では、パラフィン可塑剤はC
20〜C
1500パラフィン、またはC
20〜C
500パラフィン、またはC
30〜C
400パラフィン、またはC
40〜C
250パラフィンを含んでいてもよい。
【0076】
別の実施形態では、パラフィン可塑剤は1種以上の直鎖状パラフィン、すなわちノルマルパラフィン(n−パラフィン)を含んでいてもよく、またはそれから本質的に成っていてもよい。有利なパラフィン可塑剤は、少なくとも50重量%、または少なくとも60重量%、または少なくとも70重量%、または少なくとも80重量%、または少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%、または本質的に100重量%のC
5〜C
25n−パラフィン、またはC
5〜C
20n−パラフィン、またはC
5〜C
15n−パラフィンを含んでいる。有利なn−パラフィンはまた、0.1重量%未満、または0.01重量%未満の芳香族を含んでいてもよい。別の実施形態では、パラフィン可塑剤は1種以上の分枝状パラフィン(イソパラフィン)を含んでいてもよく、またはそれから本質的に成っていてもよい。有利なパラフィン可塑剤は、少なくとも50重量%、または少なくとも60重量%、または少なくとも70重量%、または少なくとも80重量%、または少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%、または本質的に100重量%のC
6〜C
150イソパラフィンを含んでいる。パラフィン可塑剤はまた、C
6〜C
100イソパラフィン、またはC
6〜C
25イソパラフィンまたはC
8〜C
20イソパラフィンを含んでいてもよい。有利なイソパラフィンは、0.70〜0.83g/mLの密度;および/または−40℃未満または−50℃未満の流動点;および/または0.5〜20cStの25℃での粘度;および/または100〜300g/モルの重量平均分子量(Mw)を有していてもよい。イソパラフィンは、1個超の炭素数の置換基(たとえば、エチル、プロピル、ブチル等)を有する分枝を最小限の構成として、(イソパラフィンの全重量基準で)50重量%超のモノメチル種、たとえば2−メチル、3−メチル、4−メチル、5−メチル等を含んでいてもよい。1つの実施形態では、イソパラフィンは、存在するイソパラフィンの全重量基準で、70重量%超のモノメチル種を含んでいる。有利には、イソパラフィンは100℃〜350℃、または110℃〜320℃、好ましくは200℃〜320℃の沸点を有する。異なる等級のイソパラフィンを調製する際に、パラフィン混合物は狭い沸点範囲を有するカット留分、たとえば約35℃の沸点範囲を有するカット留分へと分留されてもよい。
【0077】
好ましい実施形態では、可塑剤は鉱油である。鉱油の用語は、精製(たとえば、蒸留、溶媒処理、ハイドロプロセシングおよび/または脱蝋)に付された石油原油に由来する任意の流体を包含する。これはまた、広範囲にわたって精製されたおよび/または加工処理を通して変性された、石油に基いた油も包含する。合成潤滑油は鉱油から除外される。合成潤滑油は触媒および/または熱を使用して、モノマー単位を組み合わせることによって製造されたものである。ポリマー加工技術の分野では、鉱油はしばしば、プロセス油、エキステンダー油、ホワイトオイル、テクニカルオイルまたは食品グレード油と呼ばれる。このような流体は典型的には120未満の粘度指数を有し、ほとんどの場合110未満の粘度指数を有し、多くの場合100以下の粘度指数を有する。
【0078】
米国石油協会(API)は、鉱油をグループI、IIまたはIIIの基油に、飽和化合物含有量、イオウ含有量および粘度指数(VI)(それぞれ、ASTM D2007、ASTM D2622およびASTM D2270に従って測定されたもの)に従って分類する。鉱油がAPIグループ分類によって特定されない場合でさえも、本発明の目的のためには、粘度指数に基いて2つのクラスの鉱油を定義することが可能である。すなわち、120未満のVIを有するグループI/II鉱油および120以上のVIを有するグループIII鉱油。好ましい実施形態では、可塑剤はグループIまたはグループIIのパラフィン油である。
【0079】
プロセス油として使用されるいくつかの市販の鉱油の特性が、以下の表に示される。このような流体は典型的には、110未満の粘度指数を有し、多くは100以下の粘度指数を有する。有利には、鉱油可塑剤は80cSt以上の40℃での動粘度および−15℃の流動点を有する。
【表1】
【0080】
ある実施形態では、鉱油は120(好ましくは90〜119)未満の粘度指数;80cSt以上(好ましくは90cSt以上、または100cSt以上、または120cSt以上、または150cSt以上、または200cSt以上、または250cSt以上、または300cSt以上)の40℃での動粘度;および15℃以下(好ましくは18℃以下、または20℃以下、または25℃以下、または30℃以下、または35℃以下)の流動点を有する。
【0081】
他の実施形態では、鉱油は1種以上のグループIまたはIIの潤滑油基油を含んでいる。グループI基油は、芳香族の溶媒抽出、溶媒脱蝋およびハイドロファイニング法を使用して精製されていてもよい鉱油であり、これは0.03重量%超のイオウレベル、60〜80%の飽和化合物レベルおよび約90のVIを有していてもよい。グループII基油は、従来法の芳香族の溶媒抽出、溶媒脱蝋およびよりシビアなハイドロファイニング法を用いて穏やかに水素化分解されて、イオウレベルが0.03重量%以下に低減され、それとともに飽和化合物レベルが95〜98%超になるようにオレフィンおよび芳香族化合物の一部から二重結合が除去されている鉱油であり、これは約80〜120のVIを有する。
触媒
【0082】
用語「触媒系」とは、触媒前駆体/活性化剤の一対を意味する。「触媒系」が活性化前のそのような対を記載するために使用される場合には、それは活性化されていない触媒(プレ触媒)を活性化剤および任意的な共活性化剤と合わせて意味する。「触媒系」が活性化後のそのような対を記載するために使用される場合には、それは活性化された触媒および活性化剤または他の電荷平衡分子部分を意味する。遷移金属化合物はプレ触媒中にあるときは中性であり、または活性化された触媒系中にあるときは対イオンを有する荷電種であることができる。用語「触媒系」はまた、1種超の触媒前駆体および/または1種超の活性化剤および任意的な共活性化剤を含んでいることができる。同様に、用語「触媒系」はまた、1種超の活性化された触媒、および1種以上の活性化剤または他の電荷平衡分子部分および任意的な共活性化剤を含んでいることができる。
【0083】
触媒前駆体はまたしばしば、プレ触媒、触媒、触媒化合物、遷移(またはランタニドもしくはアクチニド)金属化合物または遷移(またはランタニドもしくはアクチニド)金属錯体と呼ばれる。これらの語は互換的に使用される。活性化剤および共触媒(または共触媒)も互換的に使用される。捕捉剤は典型的には、不純物を捕捉することによって重合を促進するために添加される化合物である。いくつかの捕捉剤は、活性化剤としても働き、共活性化剤と呼ばれることもある。捕捉剤でない共活性化剤はまた、活性な触媒を形成するために活性化剤とともに使用されてもよい。いくつかの実施形態では、共活性化剤は遷移金属化合物と予め混合されて、アルキル化された遷移金属化合物を形成することができる。
【0084】
活性化剤または共触媒は、プレ触媒を活性化して活性化された触媒を形成することができる化合物または化合物の混合物である。活性化剤は、中性の化合物(中性の活性化剤とも呼ばれる。)、たとえばトリスパーフルオロフェニルホウ素またはトリスパーフルオロフェニルアルミニウム、またはイオン性化合物(個別的なイオン性活性化剤とも呼ばれる。)、たとえばジメチルアニリニウムテトラキスパーフルオロフェニルボレートまたはトリフェニルカルボニウムテトラキスパーフルオロナフチルボレートであることができる。これらのタイプの活性化剤はまた一般に、活性化剤とプレ触媒との反応はカチオン性金属錯体およびアニオン性の非配位性または弱配位性アニオン(NCA)を形成するという当業者の一般的な考え方によって非配位性アニオン活性化剤(NCA活性化剤)と呼ばれる。定義によって個別的と特性付けられる化合物であるこれらのタイプの活性化剤から、混合物であるアルモキサン共触媒は除外される。用語NCAの使用は、NCA活性化剤におけるような活性化剤のタイプを記載する形容詞として使用され、またはNCA活性化剤に由来する非配位性または弱配位性アニオンを記載する名詞として使用される。
【0085】
本明細書に記載されたプロセスは、本明細書に開示されたモノマーを重合することができる任意の触媒系を、その触媒系が本明細書に開示された重合条件の下で十分に活性であるならば使用することができる。したがって、3〜10族の遷移金属化合物またはランタニド金属化合物またはアクチニド金属化合物は、好適な触媒を形成することができる。好適なオレフィン重合触媒は、アルケニル不飽和化合物に配位するまたは他様に会合することができなければならない。典型的であるが限定的でない触媒としては、チーグラー−ナッタ触媒化合物、メタロセン触媒化合物、後期遷移金属触媒化合物および他の非メタロセン触媒化合物、に基いた触媒系が挙げられる。いくつかの実施形態では、触媒化合物はメタロセン触媒化合物であり、また可塑化されたポリマーは、好ましくはエチレン−プロピレン−ジエンゴムであり、好ましくは鉱油とブレンドされたものである。
【0086】
本明細書に開示されたチーグラー−ナッタ触媒は、E.P.Moore,Jr.著、「プロピレンハンドブック」、米国、ニューヨーク州、Hanser社、1996年刊の中で第1、第2、第3、第4および第5世代触媒と呼ばれるものである。同じ参照文献中でメタロセン触媒は、第6世代触媒と記載されている。1つの典型的な非メタロセン触媒化合物は、非メタロセン金属を中心に有するヘテロアリール配位子触媒化合物(ここで金属は、元素の周期表の第4、5、6族、ランタン系列またはアクチニド系列から選ばれる。)を含んでいる。非メタロセン金属を中心に有するヘテロアリール配位子触媒化合物は、PCT特許出願公開番号WO 02/38628、WO 03/040095(21〜51頁)、WO 03/040201(31〜65頁)、WO 03/040233(23〜52頁)、WO 03/040442(21〜54頁)、WO 2006/38628および米国特許出願第11/714,546号に詳細に記載されており、これらのそれぞれは参照によって本明細書に取り込まれる。
【0087】
ポリマー製造プロセスに適した触媒は一般に、周期表の第3〜10族の遷移金属またはランタニドもしくはアクチニド金属、および重合の間、遷移金属に結合され続ける少なくとも1種の補助配位子を含んでいてもよい。触媒は好ましくは、つくられるべきポリマーのタイプおよびそれに付随するプロセスウィンドウに適していると当該技術分野で知られている広範囲の入手可能な触媒の中から、ポリマーがプレ触媒(たとえば、メタロセンプレ触媒)1グラム当たり少なくともポリマー40,000g、好ましくはプレ触媒1グラム当たり少なくともポリマー60,000g、またはポリマー100,000g超さえの活性にあるプロセス条件の下で製造されるように選ばれなければならない。
【0088】
好ましくは、触媒はカチオン状態で使用され、共触媒または活性化剤によって安定化される。とりわけ好まれるのは、第4族メタロセン(すなわち、チタン、ハフニウムまたはジルコニウムのメタロセン)であり、これは典型的には重合の間d
0の一価カチオン状態で存在し、かつ1個または2個の補助配位子を抱えている。配位重合のためのそのような触媒の重要な特徴は、プレ触媒が引き抜き能力のある配位子およびエチレン(または他のオレフィン)が中に挿入されることができる別の配位子を含んでいるということである。
【0089】
代表的なメタロセンタイプの化合物は以下の化学式を有する。
【化2】
ここで、Mは第3、4、5もしくは6族の遷移金属原子またはランタニド金属原子またはアクチニド金属原子、好ましくはチタン、ジルコニウムまたはハフニウムから選ばれた第4族遷移金属原子であり;L
A、補助配位子は置換または非置換の、単環または多環の、Mにπ結合されたアレーニルであり;L
Bは、L
Aについて定義された補助配位子の部類のメンバーであるかまたはJ、ヘテロ原子を介してMに結合されたヘテロ原子補助配位子であり;L
AおよびL
B配位子は架橋基Tを介して一緒に共有結合で架橋されてもよく、Tは第14、15もしくは16族元素またはホウ素を含んでおり、ここでTが存在する場合はjは1であり、Tが存在しない場合はjは0であり(jは0または1に等しい。);L
Ciは任意的な、Mへの配位結合を有する中性の非酸化性配位子であり(iは0、1、2または3に等しい。);および、DおよびEは独立に、単価アニオン性の不安定な配位子であり、それぞれがMとのσ結合を有し、任意的に、互いにまたはL
A、L
BもしくはL
Cと架橋している。
【0090】
本明細書で使用される用語「単環アレーニル配位子」とは、芳香族5員単環ヒドロカルビル環構造(シクロペンタジエニル環とも呼ばれる。)を含んでいる、置換または非置換の単価アニオン性のC
5〜C
100ヒドロカルビル配位子を意味するために本明細書では使用される。
【0091】
本明細書で使用される用語「多環アレーニル配位子」とは、芳香族5員ヒドロカルビル環(シクロペンタジエニル環とも呼ばれる。)を含んでおり、1個または2個の部分的に不飽和の、または芳香族ヒドロカルビルもしくはヘテロ原子で置換されたヒドロカルビルの環構造に融合されており、この芳香族ヒドロカルビルもしくはヘテロ原子で置換されたヒドロカルビルの環構造がさらに追加の飽和の、部分的に不飽和のもしくは芳香族のヒドロカルビルまたはヘテロ原子で置換されたヒドロカルビルの環に融合されていてもよい、置換または非置換の単価アニオン性のC
5〜C
103ヒドロカルビル配位子を意味するために本明細書で使用される。
【0092】
シクロペンタジエニル配位子、インデニル配位子、フルオレニル配位子、テトラヒドロインデニル配位子、シクロペンタ[b]チエニル配位子およびシクロペンタ[b]ピリジル配位子は、全てアレーニル配位子の例である。
【0093】
L
Aの非限定的な例としては、置換または非置換のシクロペンタジエニル配位子、インデニル配位子、フルオレニル配位子、ジベンゾ[b、H]フルオレニル配位子、ベンゾ[b]フルオレニル配位子、アズレニル配位子、ペンタレニル配位子、シクロペンタ[b]ナフチル配位子、シクロペンタ[a]ナフチル配位子、シクロペンタ[b]チエニル配位子、シクロペンタ[c]チエニル配位子、シクロペンタ[b]ピロリル配位子、シクロペンタ[c]ピロリル配位子、シクロペンタ[b]フリル配位子、シクロペンタ[c]フリル配位子、シクロペンタ[b]ホスホリル配位子、シクロペンタ[c]ホスホリル配位子、シクロペンタ[b]ピリジル配位子、シクロペンタ[c]ピリジル配位子、シクロペンタ[c]ホスフィニル配位子、シクロペンタ[b]ホスフィニル配位子、シクロペンタ[g]キノリル配位子、シクロペンタ[g]イソキノリル配位子、インデノ[1,2−c]ピリジル配位子等が挙げられ、これらの水素化された誘導体、たとえばテトラヒドロインデニル配位子も挙げられる。
【0094】
L
Bの非限定的な例としては、L
Aのために上記されたものが挙げられる。追加として、L
BはJとして定義され、Jは式J’−R”
k−l−jによって表わされ、J’はMに結合されている。J’は配位数3を有する元素の周期表の第15族のヘテロ原子、または配位数2を有する元素の周期表の第16族のヘテロ原子であり、好ましくは窒素であり;R”はC
1〜C
100の、置換または非置換のヒドロカルビル基から選ばれ;kはヘテロ原子J’の配位数であり、「k−l−j」はJ’に結合されたR”置換基の数を示す。Jの非限定的な例としては、プロピルアミド、ブチルアミド、ペンチルアミド、ヘキシルアミド、ヘプチルアミド、オクチルアミド、ノニルアミド、デシルアミド、ウンデシルアミド、ドデシルアミド、フェニルアミド、トリルアミド、キシリルアミド、ベンジルアミド、ビフェニルアミド、オキソ、スルファンジイル、ヘキシルホスフィド等、の全ての異性体(環状物を含む。)が挙げられる。
【0095】
存在する場合、Tは、ホウ素または第14、15もしくは16族元素を含んでいる架橋基である。好適な架橋基の例としては、R’
2C、R’
2Si、R’
2Ge、R’
2CCR’
2、R’
2CCR’
2CR’
2、R’
2CCR’
2CR’
2CR’
2、R’C=CR’、R’
2CSiR’
2、R’
2SiSiR’
2、R’
2CSiR’
2CR’
2、R’2SiCR’2SiR’2、R’2CGeR’2、R’2GeGeR’2、R’2CGeR’2CR’2、R’2GeCR’2GeR’2、R’2SiGeR’2、R’B−R’
2C−BR’、R’
2C−BR’−CR’
2、R’
2C−O−CR’
2、R’
2C−S−CR’
2、R’
2C−Se−CR’
2、R’
2C−NR’−CR’
2およびR’
2C−PR’−CR’
2が挙げられ、ここでR’は水素またはC
1〜C
20含有ヒドロカルビルまたはC
1〜C
20含有置換ヒドロカルビルであり、任意的に、2個以上の隣接したR’は一緒になって、置換または非置換の、飽和、部分的に不飽和または芳香族の、環状または多環状の置換基を形成してもよい。
【0096】
架橋基Tの非限定的な例としては、CH
2、CH
2CH
2、CMe
2、SiMe
2、SiEt
2、SiPh
2、SiMePh、Si(CH2)
3、Si(CH
2)
4、Si(CH
2)
5、Si(Ph−p−SiEt
3)
2等が挙げられる。
【0097】
DおよびEの非限定的な例としては、独立に、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、メチル、エチル、ベンジル、ジメチルアミド、メトキシ等が挙げられる。
【0098】
より好まれるのは、第4族遷移金属、好ましくはジルコニウムまたはハフニウムのビスシクロペンタジエニル誘導体であるメタロセンである。国際特許出願公開WO99/41294を参照せよ。これらは、有利であることには、単一の炭素およびケイ素原子によって結合されたフルオレニル配位子およびシクロペンタジエニル配位子を含んでいる誘導体であってもよい。WO99/45040およびWO99/45041を参照せよ。最も好ましくは、Cp環は非置換であり、および/または架橋はアルキル置換基、好適にはアルキルシリル置換基を含んでいて、そのメタロセンのアルカン溶解性の助けとなる。WO00/24792およびWO00/24793を参照せよ。他の可能なメタロセンとしては、WO01/58912にあるものが挙げられる。他の好適なメタロセンは、ビスフルオレニル誘導体または非架橋のインデニル誘導体であってもよく、この誘導体はその融合環上の1箇所以上の位置が、分子量を増加させる効果がありしたがってより高い温度での重合を間接的に可能にする分子部分で置換されていてもよく、たとえば欧州特許出願第693506号および第780395号に記載されたものである。
【0099】
触媒として使用可能な代表的な非メタロセン遷移金属化合物としてはまた、テトラベンジルジルコニウム、テトラビス(トリメチルシリルメチル)ジルコニウム、オキソトリス(トリメチルシリルメチル)バナジウム、テトラベンジルハフニウム、テトラベンジルチタン、ビス(ヘキサメチルジシラジド)ジメチルチタン、トリス(トリメチルシリルメチル)ニオブジクロリドおよびトリス(トリメチルシリルメチル)タンタルジクロリドが挙げられる。
【0100】
触媒として使用可能なさらなる非メタロセン遷移金属化合物は、米国特許第7,973,116号、第8,394,902号、第8,674,040号および第8,710,163号;米国特許出願公開第2014-0221587号、第2014-0256893号;米国特許出願第61/815065号、第14/258121号に記載されており、これらの内容は参照によって本明細書に取り込まれる。また、有用な触媒は、米国特許出願公開第2014-0039138号、第2014-0039139号、第2014-0039140号、第2014-0039137号、第2014-0128557号、第2014-0275454号、および米国特許出願第61/915924号に記載されており、これらの内容は参照によって本明細書に取り込まれる。
【0101】
プレ触媒は共触媒とともに使用されることができ、共触媒は蒸気圧浸透圧測定によって測定された4〜30の平均オリゴマー重合度を有するアルモキサン、好ましくはメチルアルモキサンであってもよい。アルモキサンは、直鎖状アルカンに溶解するように変性されてもよく、またはスラリー中で使用されてもよいが、一般にはトルエン溶液からのものが使用される。そのような溶液は未反応のトリアルキルアルミニウムを含んでいてもよく、その場合にアルモキサン濃度は一般に1リットル当たりのAlモル数として示され、この濃度はオリゴマーを形成するために反応していない全てのトリアルキルアルミニウムも含んでいる。アルモキサンは、共触媒として使用される場合、遷移金属を基準として一般にモル過剰で、50以上のモル比、好ましくは100以上、および好ましくは1000以下、好ましくは500以下のモル比で使用される。
【0102】
メタロセンはまた、非配位性または弱配位性アニオンである共触媒とともに使用されてもよい。本明細書で使用される用語「非配位性アニオン(NCA)」とは、弱配位性アニオンを包含する。その配位は、どのような場合にも重合が進行することによって裏付けられるように不飽和モノマー成分の挿入が可能であるのに十分なほど弱くなければならない。非配位性アニオンは、当該技術分野で知られているどのような様式で供給されメタロセンと反応させられてもよい。
【0103】
NCA活性化剤(時には共活性化剤との組み合わせで使用される。)が、本発明の実施の際に使用されてもよい。好ましくは、個別のイオン性活性化剤、たとえば[Me
2PhNH][B(C
6F
5)
4]、[Ph
3C][B(C
6F
5)
4]、[Me
2PhNH][B(C
6H
3−3,5−(CF
3)
2)
4]、[Ph
3C][B((C
6H
3−3,5−(CF
3)
2)
4)、[NH
4][B(C
6H
5)
4]、[Me
2PhNH][B(C
10F
7)
4]、[Ph
3C][B(C
10F
7)
4]、または中性の活性化剤、たとえばB(C
6F
5)
3、B(C
10F
7)
3もしくはB(C
6H
5)
3]が使用されることができる(ここで、C
6F
5はパーフルオロフェニルであり、C
10F
7はパーフルオロナフチルであり、C
6H
3−3,5−(CF
3)
2は3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルである。)。好ましい共活性化剤は、使用されるならば、アルモキサン、たとえばメチルアルモキサン、変性アルモキサン、たとえば変性メチルアルモキサンならびにアルミニウムアルキル、たとえばトリイソブチルアルミニウムおよびトリメチルアルミニウムである。
【0104】
1つ以上の部類のNCA活性化剤を使用することは本発明の範囲内であり、それは中性でもイオン性でもよく、たとえばトリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニルボレート)、トリスパーフルオロフェニルホウ素メタロイド前駆体またはトリスパーフルオロナフチルホウ素メタロイド前駆体、ポリハロゲン化ヘテロボランアニオン(WO 98/43983)、ホウ酸(米国特許第5,942,459号)である。
【0105】
活性化されたイオン性触媒は、遷移金属化合物(プレ触媒)と中性の活性化剤、たとえばB(C
6F
6)
3とを反応させ、中性の活性化剤が遷移金属化合物の加水分解性配位子(X)と反応すると、アニオン、たとえば([B(C
6F
5)
3(X)]
−)が形成され、このアニオンが反応によって生成されたカチオン性遷移金属種を安定させることによって調製されることができる。
【0106】
中性のNCA活性化剤の例としては、3置換の、ホウ素、テルル、アルミニウム、ガリウムおよびインジウムまたはこれらの混合物が挙げられる。3個の置換基はそれぞれ独立に、アルキル、アルケニル、ハロゲン、置換アルキル、アリール、ハロゲン化アリール、アルコキシおよびハライドから選ばれる。好ましくは、3個の基は独立に、ハロゲン、単環状または多環状の(ハロ置換体を含む。)、アリール、アルキルおよびアルケニル化合物ならびにこれらの混合物から選ばれ;好ましくは、1〜20個の炭素原子を有するアルケニル基、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、1〜20個の炭素原子を有するアルコキシ基、および3〜20個の炭素原子を有するアリール基(置換されたアリール基を含む。)である。より好ましくは、3個の基は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル、フェニル、ナフチルまたはこれらの混合物である。さらにより好ましくは、3個の基は、ハロゲン化、好ましくはフッ素化、アリール基である。最も好ましくは、中性のNCA活性化剤は、トリスパーフルオロフェニルホウ素またはトリスパーフルオロナフチルホウ素である。
【0107】
イオン性NCA活性化剤化合物は、活性のプロトン、またはそのイオン化する化合物の残りのイオンと会合するが、それに配位しないもしくはわずかに緩く配位する、なんらかの他のカチオンを含んでいてもよい。そのような化合物および同類のものは、欧州特許出願公開第0570982A号、第0520732A号、第0495375A号、欧州特許第0500944B1号、欧州特許出願公開第0277003A号および第0277004A号、および米国特許第5,153,157号、第5,198,401号、第5,066,741号、第5,206,197号、第5,241,025号、第5,384,299号、第5,502,124号および1994年8月3日に出願された米国特許出願第08/285,380号に記載されており、これらのすべては参照によって本明細書に完全に取り込まれる。この場合に、イオン性活性化剤は遷移金属化合物(プレ触媒)と反応して、カチオン性遷移金属種、アニオンおよび(1種または複数の)副生成物を形成する。副生成物は、使用されたイオン性NCA活性化剤と会合したカチオンによって定義される。
【0108】
NCA活性化剤として有用である化合物は、カチオンおよび互換性を有する非配位性アニオンを含むことができ、該カチオンは好ましくはプロトンを供与するができるブレンステッド酸であり、このアニオンは相対的に大きく(嵩高く)、これら2つの化合物が組み合わせられたときに形成される活性な触媒種を安定化させることができ、かつ当該アニオンはオレフィン性、ジオレフィン性およびアセチレン性の不飽和基質または他の中性のルイス塩基、たとえばエーテル、ニトリル等によって置き換えられるのに十分なほど変り易いものである。互換性を有する非配位性アニオンの2つの種類が、1988年に公開された欧州特許出願第277,003号および欧州特許出願第277,004号に開示されており、これらは1)中央の電荷保有金属またはメタロイドの核に共有結合で配位しかつ遮蔽する複数の親油性基を含むアニオン性配位錯体、および2)複数のホウ素原子、たとえばカルボラン、メタラカルボランおよびボランを含むアニオンである。
【0109】
好ましい実施形態では、イオン性NCA活性化剤は、カチオンおよびアニオン成分を含んでおり、以下の式によって表される。
【化3】
この式で、L
**は中性のルイス塩基であり、Hは水素であり、(L
**−H)
+はブレンステッド酸であり、A
d−は電荷d−を有する非配位性アニオンであり、dは1〜3の整数である。
【0110】
カチオン成分(L
**−H)
d+としては、アルキル化後のプレ触媒から分子部分、たとえばアルキルまたはアリールにプロトンを付加しまたはこの分子部分を引き抜くことができる、ブレンステッド酸、たとえばプロトンもしくはプロトン付加されたルイス塩基または還元性ルイス酸が挙げられる。
【0111】
活性化するカチオン(L
**−H)
d+は、アルキル化遷移金属触媒前駆体にプロトンを供与して遷移金属カチオンをもたらすことができるブレンステッド酸であってもよく、たとえばアンモニウム、オキソニウム、ホスホニウム、シリリウムおよびこれらの混合物、好ましくはメチルアミン、アニリン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルアニリン、ジフェニルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、メチルジフェニルアミン、ピリジン、p−ブロモN,N−ジメチルアニリン、p−ニトロ−N,N−ジメチルアニリン、のアンモニウム;トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィンおよびジフェニルホスフィンからのホスホニウム;エーテル、たとえばジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランおよびジオキサンからのオキソニウム;チオエーテル、たとえばジエチルチオエーテルおよびテトラヒドロチオフェンからのスルホニウム;およびこれらの混合物である。活性化するカチオン(L
**−H)
d+はまた、分子部分、たとえば銀、トロピリウム、カルベニウム、フェロセニウムおよび混合物、好ましくはカルボニウムおよびフェロセニウム、最も好ましくはトリフェニルカルボニウムであってもよい。
【0112】
アニオン成分A
d−は式[M
k+Q
n]
d−を有するものを含み、ここでkは1〜3の整数であり、nは2〜6の整数であり、n−k=dであり、Mは元素の周期表の第13族から選ばれた元素、好ましくはホウ素またはアルミニウムであり、Qは独立に、ヒドリド、架橋または非架橋のジアルキルアミド、ハライド、アルコキシド、アリールオキシド、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビルまたはハロ置換ヒドロカルビル基であり、当該Qは20個までの炭素原子を有し、ただし1つ以下の出現でQはハライドである。好ましくは、各Qは1〜20個の炭素原子を有するフッ素化ヒドロカルビル基であり、より好ましくは各Qはフッ素化アリール基であり、最も好ましくは各Qはペンタフルオリルアリール基である。好適なA
d−としてはまた、米国特許第5,447,895号に開示されたジボロン化合物も挙げられ、これは参照によって本明細書に完全に取り込まれる。
【0113】
非配位性アニオンによって活性化されたメタロセンカチオンを使用する配位重合用触媒の記載が、欧州特許出願第277,003号、第277,004号、および国際出願公開第WO92/00333号、および米国特許第5,198,401号および第5,278,119号にあり、これらのそれぞれはその全体が参照によって本明細書に取り込まれることができる。これらの参照文献は好ましい調製方法を教示しており、その方法では、プレ触媒、たとえばメタロセンが、アルキル/ヒドリド基が遷移金属から引き抜かれて非配位性アニオンによって両者をカチオン性および電荷平衡にするように、アニオン性前駆体によってプロトン付与されることができる。活性のプロトンを含んでいないが、活性のメタロセンカチオンおよび非配位性アニオンの両方を生成することができるイオン化するイオン性化合物の使用も知られているといえる。たとえば、欧州特許出願第426 637号、第573 403号および米国特許第5,387,568号を見よ。これらのそれぞれはその全体が参照によって本明細書に取り込まれることができる。メタロセン化合物をイオン化することができるブレンステッド酸以外の反応性カチオンとしては、フェロセニウムトリフェニルカルボニウムカチオンおよびトリエチルシリリニウムカチオンが挙げられる。好ましくは、個別のイオン性活性化剤、たとえば[Me
2PhNH][B(C
6F
5)
4]、[Ph
3C][B(C
6F
5)
4]、[Me
2PhNH][B(C
6H
3−3,5−(CF
3)
2)
4]、[Ph
3C][B((C
6H
3−3,5−(CF
3)
2)
4)、[NH
4][B(C
6H
5)
4]、[Me
2PhNH][B(C
10F
7)
4]、[Ph
3C][B(C
10F
7)
4]、[Me
2PhNH][B(C
12F
9)
4]、[Ph
3C][B(C
12F
9)
4]、または中性の活性化剤、たとえばB(C
6F
5)
3、B(C
10F
7)
3もしくはB(C
6H
5)
3]が使用されることができる(ここで、C
6F
5はパーフルオロフェニルであり、C
10F
7はパーフルオロナフチルであり、C
6H
3−3,5−(CF
3)
2は3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルであり、C
12F
9はパーフルオロビフェニルである。)。
ポリマー製造プロセスでのポリマー
【0114】
ポリマーとは、1個以上の繰り返し単位、すなわちモノマーから合成された連鎖状の分子を言い、ホモポリマーおよびコポリマーを包含することが意図され、同じ連鎖中に2種以上の異なるモノマーを有する任意のポリマー、たとえばランダムコポリマー、統計的コポリマー、インターポリマーおよびブロックコポリマーを包含する。
【0115】
ポリマーがオレフィンを含んでいるとして言及されるときは、ポリマー中に存在するオレフィンは重合された形態のオレフィンである。ポリオレフィンとは、1種以上のオレフィンを少なくとも50モル%含んでいるポリマーである。好ましくは、ポリオレフィンは、1種以上のオレフィン、好ましくは2〜20個、好ましくは2〜16個、または2〜10個、または2〜8個、または2〜6個の炭素原子を有する1−オレフィンを少なくとも60モル%、または少なくとも70モル%、または少なくとも80モル%、または少なくとも90モル%、または少なくとも95モル%、または100モル%含んでいる。
【0116】
可塑化のためのポリマー製造プロセスで製造されるポリマーは、任意の種類の鎖構造、たとえばブロック、直鎖状、放射状、星状、分枝状、超分枝状、樹木状またはこれらの組み合わせを有していてもよい。典型的なポリマーとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(vLDPE)、アイソタクチックポリプロピレン(iPP)、シンジオタクティックポリプロピレン(sPP)、エチレン−プロピレンランダムコポリマーであって典型的には10重量%未満のエチレンを含んでいるもの(RCP)、エチレン−プロピレン−プラストマーであって典型的には65〜85重量%のエチレンを含んでいるもの、エチレン−プロピレン−エラストマーであって典型的には10〜20重量%のエチレンを含んでいるもの、エチレンおよびプロピレンのインパクトコポリマー(ICP)、エチレン−プロピレンゴム(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPD)、エチレン−プロピレン−ブテン−1(EPB)ターポリマー、オレフィンブロックコポリマー、ポリ(1−ブテン)、スチレンブロックコポリマーおよびこれらのブレンドが挙げられる。
【0117】
エラストマーの場合には、製造されることができるポリマーとしては、高いMwおよび0.3重量%超のジエン含有量、好ましくは2.0重量%超のジエン含有量の、エチレン、アルファオレフィンおよびジエンを含んでいるターポリマーであって、EODE(エチレン−アルファオレフィン−ジエンエラストマー)とも呼ばれるものが挙げられる。これらのポリマーは大部分が無定形であり、低いまたは零の融解熱を有していてもよい。本明細書で使用される用語「EODE」は、エチレン、アルファオレフィンおよび1種以上の非共役ジエンモノマーで構成されたエラストマーポリマーを包含する。非共役ジエンモノマーは、6〜15個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖または環状の炭化水素ジエンであることができる。好適な非共役ジエンの例は、直鎖非環状のジエン、たとえば1,4−ヘキサジエンおよび1,6−オクタジエン;分枝鎖非環状のジエン、たとえば5−メチル−1,4−ヘキサジエン;3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン;3,7−ジメチル−1,7−オクタジエンおよびジヒドロミリセンとジヒドロオシネンとの混合異性体;単環脂環式ジエン、たとえば1,4−シクロヘキサジエン;および1,5−シクロドデカジエン;および多環脂環式融合および架橋環状ジエン、たとえばテトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン;5−エチリデン−ビシクロ(2,2,1)ヘプタ−2−エンアルケニル、アルキリデン、シクロアルキリデンノルボルネン、たとえば5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB);5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−(4−シクロペンテニル)−2−ノルボルネン、5−シクロヘキシリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネンおよびノルボルナジエンである。
【0118】
好ましい実施形態では、ポリマー製造プロセスで製造されるポリマーはエチレン−プロピレンゴムである。好ましくは、ポリマーはエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)である。好ましい実施形態では、可塑化されたポリマーは10〜100phrの可塑剤を含んでいるエチレン−プロピレン−ジエンゴムである。本明細書で使用される「phr」とは、無垢のポリマー100部当たりに配合された可塑剤の部数を言う。1つの好ましい実施形態では、エチレン−プロピレン−ジエンゴムは、可塑剤を約15〜約100phr(約13〜約50重量%)含んでおり、好ましくは可塑剤はグループIまたはグループIIのパラフィン油(たとえば、Sunpar 150、Chevron社のParamount 6001)である。
【0119】
EPDMを調製するために典型的に使用されるジエンのうち、特に好ましいジエンは、1,4−ヘキサジエン(HD)、5−エチリデン−2−ノルボルネン(エチリデンノルボルネン、ENB)、5−ビニリデン−2−ノルボルネン(VNB)、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB)またはジシクロペンタジエン(DCPD)である。とりわけ好ましいジエンは、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)または1,4−ヘキサジエン(HD)である。好ましいEODエラストマーは、20〜90重量%のエチレン、より好ましくは30〜85重量%のエチレン、最も好ましくは35〜80重量%のエチレンを含んでいてもよい。エチレンおよびジエンとともにエラストマーの調製に使用するのに適したアルファオレフィンは、好ましくはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンおよび1−ドデセンである。アルファオレフィンは概して、EODEポリマー中に10〜80重量%で、より好ましくは20〜65重量%で取り入れられる。非共役ジエンは概して、EODEポリマー中に0.5〜20〜35重量%で、より好ましくは1〜15重量%で、最も好ましくは2〜12重量%で取り入れられる。所望であれば、1種超のジエンが同時に、たとえばHDおよびENBが、上で指定された限度内の合計ジエン取り入れ量で取り入れられてもよい。
用途
【0120】
本明細書に開示されたプロセスによって製造された可塑化されたポリマーブレンドは典型的には、任意の公知の熱可塑性用途またはエラストマー用途に使用される。非限定的な例としては、成形された部品、フィルム、テープ、シート、管、ホース、敷布、ワイヤーおよびケーブルコーティング、接着剤、靴底、バンパー、ガスケット、ベローズ、フィルム、繊維、弾性繊維、不織布、スパンボンド、シーラント、手術衣および医療機器への使用が挙げられる。本明細書に開示されたプロセスによって製造された可塑化されたポリマーブレンドは、靱性、柔軟性および低温における耐衝撃性が要求される用途に特に有利である。非限定的な典型的な用途には、電化製品(たとえば、冷蔵庫、冷凍庫)に使用されるポリオレフィンベースの部品とともに低温環境で使用される部品がある。
実施例
【0121】
これまでの検討のより良い理解を促すために、以下の非限定的な実施例が提示される。これらの実施例は特定の実施形態に関するものであることがあるけれども、これらの実施例はどのような特定の点においても本発明を限定するものと見なされてはならない。
【0122】
プロセスシミュレーションが熱力学モデルを使用して実施されて、パラフィン系伸展油中の空気および水の潜在的な濃度が推定された。このプロセスシミュレーションは、状態の三次方程式の熱力学モデルを使用する、Invensys社のSimSci PRO/IIのPROVISION、バージョン9.1ソフトウェアパッケージを用いて実施された。C
36アルカンである直鎖状ヘキサトリアコンタン(分子量507)が、Paramount6001(ASTM D2502:「粘度測定値から石油の分子量(相対分子質量)を評価する標準試験方法」に基いた分子量582)のような伸展油を代表するものとして使用された。20℃および1絶対気圧において予測される平衡濃度は以下のとおりである。
【表2】
【0123】
取り扱い上の慣行(たとえば、ホース、トラックまたは鉄道車両中に残された水;無蓋コンテナーの降雨への曝露)の結果として油が遊離の水層を含んでいる場合には、実際の含水量は平衡濃度より高くなり得ることに注意しなければならない。実験室での分析(GC−MS)に基いて、Paramount6001のランダムサンプルはまた、トルエンの沸点(111℃の標準沸点)よりも低い沸点を有する含酸素化合物を約10wppm(100万重量分の1)含有していることが分かった。これらは、プロセスシミュレーションでは1−ブタノール(118℃の標準沸点)で代表された。
図2は、以下で実証されるガスストリッピングのシミュレーションプロセスを示す。いくつかのプロセスシミュレーションが精製方法を選び出すために実施された。これらが以下で説明される。
【実施例1】
【0124】
環境温度および大気圧に近い圧力で、油と窒素とを接触させる実施例
シミュレーションが、直鎖状ヘキサトリアコンタンがパラフィン系石油を代表するものとして使用されて実施された。このシミュレーションでは、この油は20℃および1気圧で空気および水で飽和されており、かつ (揮発性の求核性不純物、たとえば含酸素化合物を代表するものとして) ブタノール20wppmを含んでいると仮定された。遊離の水は存在しないと仮定された。1段フラッシュが、油および窒素を(窒素流量が油質量流量の1%に設定された)供給原料として、また蒸気および液体流れを生成物としてシミュレートされた。フラッシュ条件は20℃および18psia(約1.24バール)(124kPa絶対圧)であった。大気圧より高い圧力が、ベントされた蒸気を任意的な処理設備に送るための推進力を提供するために仮定された。
【0125】
予測された平衡濃度は以下のとおりである。
【表3】
【0126】
このシミュレーションによれば、これらの条件下において窒素で油をスパージングすると、酸素および水の平衡濃度は顕著に低減したが、ブタノールについてはほとんど効果がなかった。高い圧力の故に窒素の濃度は増加した。ガスベント流れは油を実質的に含んでいなかった。
【実施例2】
【0127】
高められた温度および高められた圧力で、油と窒素とを接触させる実施例
別のシミュレーションが、パラフィン油を代表する直鎖状ヘキサトリアコンタンを使用し、かつ油が20℃および1気圧で空気および水で飽和され、20wppmのブタノールを含んでいると仮定して実施された。1段フラッシュが、油および窒素を(窒素流量が油質量流量の1%に設定された)供給原料として、また蒸気および液体流れを生成物としてシミュレートされた。フラッシュ条件は200℃および500psig(約34.47バール)(3447kPaゲージ圧)であった。大気圧より高い圧力が、ベントされた蒸気を任意的な処理設備に送るための推進力を提供するために仮定された。高められた温度は、揮発性不純物の蒸気圧を増加させ、かつ下流で形成されるポリマー−可塑剤ブレンドのその後の処理を容易にすることを意図したものである。高められた圧力は、圧力を増加する追加の装置(たとえば、ポンプ)がなくてもポリマー製造プロセスに油が導かれることを可能にすることを意図したものである。
【0128】
予測された平衡濃度は以下のとおりである。
【表4】
【0129】
このシミュレーションによれば、より高い温度および圧力の組み合わせは、油からの不純物の除去率が実施例1におけるよりも少ない結果となった。
【実施例3】
【0130】
高められた温度および大気圧に近い圧力で、油と窒素とを接触させる実施例
別のシミュレーションが、パラフィン油を代表する直鎖状ヘキサトリアコンタンを使用し、かつ油が20℃および1気圧で空気および水で飽和され、20wppmのブタノールを含んでいると仮定して実施された。1段フラッシュが、油を(不活性ガスの添加なしの)供給原料として、また蒸気および液体流れを生成物としてシミュレートされた。フラッシュ条件は200℃および18psia(約1.24バール)(124kPa絶対圧)であった。高められた温度は、揮発性不純物の蒸気圧を増加させ、かつ下流で形成されるポリマー−可塑剤ブレンドのその後の処理を容易にすることを意図したものである。低い圧力は、ベントされた蒸気を任意的な処理設備に送るためのいくらかの推進力を提供しながら、不純物の除去率を最大にすることを意図したものである。
【0131】
予測された平衡濃度は以下のとおりである。
【表5】
【0132】
このシミュレーションによれば、ストリッピングガスを加えないで油を高められた温度に加熱しても、実質的に不純物の除去はされなかった。
【実施例4】
【0133】
実施例A
高められた温度および大気圧に近い圧力で、油と窒素とを接触させる実施例
別のシミュレーションが、パラフィン油を代表する直鎖状ヘキサトリアコンタンを使用し、かつ油が20℃および1気圧で空気および水で飽和され、20wppmのブタノールを含んでいると仮定して実施された。1段フラッシュが、油および窒素を(窒素流量が油質量流量の1%に設定された)供給原料として、また蒸気および液体流れを生成物としてシミュレートされた。フラッシュ条件は200℃および18psia(約1.24バール)(124kPa絶対圧)であった。高められた温度は、揮発性不純物の蒸気圧を増加させ、かつ下流で形成されるポリマー−可塑剤ブレンドのその後の処理を容易にすることを意図したものである。低い圧力は、ベントされた蒸気を任意的な処理設備に送るためのいくらかの推進力を提供しながら、不純物の除去率を最大にすることを意図したものである。
【0134】
予測された平衡濃度は以下のとおりである。
【表6】
【0135】
このシミュレーションによれば、高められた温度、大気圧に近い圧力およびストリッピングガスの使用の組み合わせは、実施例1〜3におけるよりも大きい水およびブタノール濃度の低減をもたらす。
【実施例5】
【0136】
実施例B
高められた温度および大気圧で、油と窒素とを接触させる実施例
別のシミュレーションが、パラフィン油を代表する直鎖状ヘキサトリアコンタンを使用し、かつ油が20℃および1気圧で空気および水で飽和され、20wppmのブタノールを含んでいると仮定して実施された。1段フラッシュが、油および窒素を(窒素流量が油質量流量の1%に設定された)供給原料として、また蒸気および液体流れを生成物としてシミュレートされた。フラッシュ条件は200℃および18psia(約1.24バール)(124kPa絶対圧)であった。高められた温度は、揮発性不純物の蒸気圧を増加させ、かつ下流で形成されるポリマー−可塑剤ブレンドのその後の処理を容易にすることを意図したものである。低い圧力は、ベントされた蒸気を任意的な処理設備に送るためのいくらかの推進力を提供しながら、不純物の除去率を最大にすることを意図したものである。圧力は、不純物除去率への影響を明らかにするために実施例1よりも低くされた。
【0137】
予測された平衡濃度は以下のとおりである。
【表7】
【0138】
このシミュレーションによれば、実施例1よりも低い圧力を使用する実施例Bは、比較して、より大きい不純物除去率をもたらす。高められた温度、大気圧に近い圧力およびストリッピングガスの使用の組み合わせは、実施例1〜3におけるよりも大きい水およびブタノール濃度の低減をもたらす。したがって、より低い圧力でフラッシュ工程を操作することは有益であることがある。平衡状態では、ベントガス流れへの油の損失は非常に低い(たとえば、1%未満)と予測される。
【実施例6】
【0139】
実施例C
高められた温度および大気圧で、油と、より大きい流量の窒素とを接触させる実施例
別のシミュレーションが、パラフィン油を代表する直鎖状ヘキサトリアコンタンを使用し、かつ油が20℃および1気圧で空気および水で飽和され、20wppmのブタノールを含んでいると仮定して実施された。1段フラッシュが、油および窒素を(窒素流量が油質量流量の2%に設定された)供給原料として、また蒸気および液体流れを生成物としてシミュレートされた。フラッシュ条件は200℃および1絶対気圧(101kPa絶対圧)であった。高められた温度は、揮発性不純物の蒸気圧を増加させ、かつ下流で形成されるポリマー−可塑剤ブレンドのその後の処理を容易にすることを意図したものである。低い圧力は、不純物の除去率を向上させることを意図したものである。圧力は、不純物除去率への影響を明らかにするために実施例Bにおけるよりも高く設定された。
【0140】
予測された平衡濃度は以下のとおりである。
【表8】
【0141】
このシミュレーションによれば、実施例Bよりも高い窒素添加流量を使用する実施例Cは、比較して、より大きい不純物除去率をもたらす。平衡状態では、ベントガス流れへの油の損失は非常に低い(たとえば、1%未満)と予測される。
【実施例7】
【0142】
実施例D
高められた温度および大気圧で、油とメタンとを接触させる実施例
別のシミュレーションが、パラフィン油を代表する直鎖状ヘキサトリアコンタンを使用し、かつ油が20℃および1気圧で空気および水で飽和され、20wppmのブタノールを含んでいると仮定して実施された。1段フラッシュが、油およびメタンを(メタン流量が油質量流量の1%に設定された)供給原料として、また蒸気および液体流れを生成物としてシミュレートされた。フラッシュ条件は200℃および1絶対気圧(101kPa絶対圧)であった。高められた温度は、揮発性不純物の蒸気圧を増加させ、かつ下流で形成されるポリマー−可塑剤ブレンドのその後の処理を容易にすることを意図したものである。低い圧力は、不純物の除去率を向上させることを意図したものである。この実施例は、不純物除去率への異なるストリッピングガスを使用することの影響を例証する。
【0143】
予測された平衡濃度は以下のとおりである。
【表9】
【0144】
このシミュレーションによれば、窒素の代わりにメタンを使用する実施例Dは、実施例Bと比較したときほどには大きい不純物除去率をもたらさない。質量基準で、窒素は、この実施例におけるメタンよりも効率的なストリッピング剤であるようである。
【実施例8】
【0145】
実施例E
追加のプロセスシミュレーションが熱力学モデルを使用して実施されて、様々な揮発度を有するより広範囲の含酸素化合物の、パラフィン系伸展油中の潜在的な濃度が推定された。直鎖状のヘキサトリアコンタンが伸展油を代表するために使用された。含酸素化合物として、酸素(O
2)、水(H
2O)、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、メチルエチルケトン(MEK)、ターシャリーアミルメチルエーテル(TAME)、1−ヘキサノール(C
6OH)、1−オクタノール(C
8OH)および1−デカノール(C
10OH)が使用された。1段フラッシュが、油および窒素を(窒素流量が油質量流量の3%に設定された)供給原料として、また蒸気および液体流れを生成物としてシミュレートされた。油が20℃および1気圧で空気および水で飽和され、他の複数の含酸素化合物をそれぞれ1.5wppm含んでいると仮定された。フラッシュ条件は200℃および17psia(約1.17バール)(117kPa絶対圧)であった。平衡状態での各含酸素化合物の予測される除去率が
図3に示される。各含酸素化合物の相対揮発度も示されている。相対揮発度の値は、200℃および1気圧におけるヘキサトリアコンタンと各含酸素化合物との混合物のプロセスシミュレーションから得られたものである。相対揮発度が増加するにつれて、窒素ストリッピングによる除去効率も増加する。
【0146】
本明細書に本発明の組成物の様々な様相をこれまでに記載してきたが、本発明のさらなる特定の実施形態として、以下の段落に記載されたものが挙げられる。
【0147】
実施形態A:以下の工程を含む可塑化されたポリマーを製造するプロセス:(a)リアクター、リアクターに接続されたセパレーター(たとえば、高圧セパレーター)、および可塑剤を含有する容器を準備する工程;(b)リアクター中で、任意的に溶媒が存在する状態で、オレフィンモノマーと触媒とを接触させて、ポリマー−モノマー混合物を含んでいるポリマーリアクター流出物を形成する工程;(c)リアクターからのポリマーリアクター流出物をセパレーターを通させて、ポリマーに富む相およびポリマーに乏しい相を形成する工程;(d)ポリマーに富む相からポリマーに乏しい相を分離する工程;(e)ガスストリッピング、固定床吸着、化学捕捉剤、蒸留、液液抽出、ろ過、重力沈降および遠心分離の少なくとも1種によって可塑剤を精製して、精製された可塑剤を製造する工程;(f)精製された可塑剤を工程(b)後のプロセスに供給して、可塑化されたポリマーブレンド流れを形成する工程であって、精製された可塑剤が以下の不純物除去特性の少なくとも1特性を、精製(たとえば、本発明のプロセスの工程(e))前の可塑剤を基準とした濃度(wppm)によって満たす工程であり:(1)酸素の少なくとも90%が除去されること;(2)水の少なくとも90%が除去されること;(3)1×10
5〜5×10
5の相対揮発度(α
ip)を有する不純物の少なくとも40%が除去されること;(4)5×10
5〜1×10
6のα
ipを有する不純物の少なくとも65%が除去されること;(5)1×10
6〜5×10
6のα
ipを有する不純物の少なくとも75%が除去されること;および(6)5×10
6超のα
ipを有する不純物の少なくとも90%が除去されること、ここでα
ipは200℃および1気圧での可塑剤を基準とした不純物の相対揮発度である工程;および(g)前記可塑化されたポリマーブレンド流れから可塑化されたポリマーを得る工程。
【0148】
実施形態B:工程(e)の精製された可塑剤が、工程(d)後のポリマーに富む相に供給される、実施形態Aに記載のプロセス。
【0149】
実施形態C:可塑剤が連続的に精製され、かつ連続的に本発明のプロセスに供給される、実施形態AまたはBに記載のプロセス。
【0150】
実施形態D:精製された可塑剤が、(1)〜(6)の全ての不純物除去特性を満たす、実施形態A〜Cのいずれか1実施形態に記載のプロセス。
【0151】
実施形態E:精製された可塑剤が、以下の不純物除去特性の少なくとも1特性、好ましくは全てを、精製(たとえば、本発明のプロセスの工程(e))前の可塑剤を基準とした濃度(wppm)によって満たす、実施形態A〜Dのいずれか1実施形態に記載のプロセスであり:(7)酸素の少なくとも99%が除去されること;(8)水の少なくとも98%が除去されること;(9)1×10
5〜5×10
5の相対揮発度(α
ip)を有する不純物の少なくとも65%が除去されること;(10)5×10
5〜1×10
6のα
ipを有する不純物の少なくとも85%が除去されること;(11)1×10
6〜5×10
6のα
ipを有する不純物の少なくとも90%が除去されること;および(12)5×10
6超のα
ipを有する不純物の少なくとも98%が除去されること、ここでα
ipは200℃および1気圧での可塑剤を基準とした不純物の相対揮発度である、プロセス。
【0152】
実施形態F:可塑化されたポリマーが少なくとも5phrの精製された可塑剤を含んでいる、実施形態A〜Eのいずれか1実施形態に記載のプロセス。
【0153】
実施形態G:可塑剤が鉱油を含んでいる、または可塑剤が鉱油である、実施形態A〜Fのいずれか1実施形態に記載のプロセス。
【0154】
実施形態H:可塑剤がグループIもしくはIIのパラフィン油もしくはこれらの混合物を含んでいる、または可塑剤がグループIもしくはIIのパラフィン油もしくはこれらの混合物である、実施形態A〜Gのいずれか1実施形態に記載のプロセス。
【0155】
実施形態I:セパレーターが高圧セパレーターであり、該高圧セパレーターの下流に低圧セパレーターをさらに含む、実施形態A〜Hのいずれか1実施形態に記載のプロセス。
【0156】
実施形態J:ポリマー製造プロセスで製造されるポリマーがエチレン−プロピレンゴムであり、好ましくは10〜100phrの可塑剤を含んでいるエチレン−プロピレン−ジエンゴムである、実施形態A〜Iのいずれか1実施形態に記載のプロセス。
【0157】
実施形態K:可塑剤が、以下の工程を含むガスストリッピングによって工程(e)で精製される、実施形態A〜Jのいずれか1実施形態に記載のプロセス:(i)可塑剤を約40℃〜約300℃の温度に加熱して、可塑剤中に存在する揮発性不純物の蒸気圧を増加させる工程;(ii)接触装置を使用して可塑剤と不活性ガスとを接触させて、精製された可塑剤と、揮発性不純物および不活性ガスを含んでいる蒸気生成物とを形成する工程;および(iii)セパレーター装置を使用して蒸気生成物から、精製された可塑剤を分離する工程。
【0158】
実施形態L:接触装置が、スパージャー、焼結ディスク、蒸気分配器、インラインミキサーおよびストリッピング塔の少なくとも1種である、実施形態Kに記載のプロセス。
【0159】
実施形態M:セパレーター装置が、重力沈降器、飛沫同伴防止装置および遠心分離装置の少なくとも1種である、実施形態KまたはLに記載のプロセス。
【0160】
実施形態N:蒸気生成物がガス吸収装置にベントされ、そこで揮発性不純物が不活性ガスから分離され、不活性ガスが大気にベントされる、実施形態K〜Mのいずれか1実施形態に記載のプロセス。
【0161】
実施形態O:不活性ガスが、窒素、第18族元素および飽和炭化水素の少なくとも1種である、実施形態K〜Nのいずれか1実施形態に記載のプロセス。
【0162】
実施形態P:不活性ガスが飽和炭化水素であり、揮発性不純物と飽和炭化水素とを含んでいる蒸気生成物が、燃料ガス系統またはフレア系統にベントされる、実施形態K〜Oのいずれか1実施形態に記載のプロセス。
【0163】
実施形態Q:工程(i)の温度が、可塑剤の泡立ち点および分解点の少なくとも1種より低い温度である、実施形態K〜Oのいずれか1実施形態に記載のプロセス。
【0164】
実施形態R:工程(i)の温度が約150℃〜約250℃である、実施形態K〜Qのいずれか1実施形態に記載のプロセス。
【0165】
実施形態S:可塑剤が、工程(ii)で不活性ガスと約0.1絶対気圧〜4絶対気圧の圧力で接触させられる、実施形態K〜Rのいずれか1実施形態に記載のプロセス。
【0166】
実施形態T:不活性ガスの質量流量が、可塑剤の質量流量の約0.1%〜約20%である、実施形態K〜Sのいずれか1実施形態に記載のプロセス。
【0167】
実施形態U:工程(ii)の後に、揮発性不純物と不活性ガスとを含んでいる蒸気生成物を冷却して凝縮させ、不活性ガスから分離された凝縮された不純物を形成する工程;および凝縮された不純物を集めてリサイクルする工程をさらに含む、実施形態K〜Tのいずれか1実施形態に記載のプロセス。
【0168】
実施形態V:水が工程(i)の前に可塑剤から除去される、実施形態K〜Uのいずれか1実施形態に記載のプロセス。
【0169】
実施形態W:工程(b)後のプロセスに供給する前に、固定床吸着、化学捕捉剤、蒸留、液液抽出、ろ過、重力沈降および遠心分離の少なくとも1種によって可塑剤を精製する工程をさらに含む、実施形態K〜Vのいずれか1実施形態に記載のプロセス。
【0170】
実施形態X:好ましくは、実施形態A〜Wのいずれか1実施形態のプロセスを使用して、可塑化されたポリマーを製造するためのプラントであって、以下のものを含んでいるプラント:(a)炭化水素溶媒中のオレフィンモノマーを含んでいる供給原料;(b)リアクターであって、任意的に溶媒が存在する状態で、その中にオレフィンモノマーおよび触媒が供給され反応して、ポリマーリアクター流出物が形成されるリアクター;(c)ポリマーリアクター流出物から炭化水素溶媒および未反応オレフィンモノマーを分離するためのリアクター下流の分離手段であって、この分離手段がポリマーリアクター流出物をポリマーに富む相およびポリマーに乏しい相へと分離するためのセパレーター(たとえば、高圧セパレーター)を含んでいる分離手段;(d)ポリマーに乏しい相をリアクターに再循環させるためのリサイクル手段;および(e)リアクターの下流に可塑剤を供給するための可塑剤供給手段であって、この可塑剤供給手段が、(i)圧力源、(ii)ヒーター、(iii)容器であって、その中で不活性ガスが可塑剤に添加される容器、(iv)可塑剤を不活性ガスと接触させて、精製された可塑剤および揮発性不純物と不活性ガスとを含んでいる蒸気生成物を形成するための接触装置、(v)精製された可塑剤から蒸気生成物を分離するためのセパレーター装置および(vi)精製された可塑剤をリアクターの下流に供給するための供給手段を含んでいる、可塑剤供給手段。
【0171】
実施形態Y:可塑化されたポリマーがエチレン−プロピレンゴムである、実施形態Xに記載のプラント。
【0172】
本発明がその特定の典型的な実施形態とともに記載されてきたけれども、本開示発明の精神または範囲から逸脱することなく、これまでの記載に照らして、多くの変更、修正および変形が当業者には明らかであることは明白である。したがって、本開示発明は、上記の詳細な記載の全てのそのような変更、修正および変形を包含することが意図されている。
【0173】
全ての特許、試験手順および優先権書類を含む本明細書で引用された他の文書は、そのような開示物が本発明と矛盾しない程度においておよびそのような取り込みが許される全ての管轄に対して、参照によって完全に取り込まれる。
【0174】
数値の下限および数値の上限が本明細書に示されている場合には、任意の下限から任意の上限までの範囲が考慮される。本明細書の発明の詳細な説明および特許請求の範囲内の全ての数値はまた、「約」によって修飾されているものと理解される。