(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
参照面を有する透過光学部材を含み、前記参照面を介して試料に光を照射し、前記参照面からの第1の反射光、前記試料の表面からの第2の反射光、及び前記試料の裏面からの第3の反射光を受光するプローブと、
前記第1の反射光と前記第2の反射光により生じる第1の反射干渉光、及び前記第2の反射光と前記第3の反射光により生じる第2の反射干渉光を含む測定反射光のスペクトルを測定する分光器と、
前記第1の反射干渉光を用いて、前記参照面から前記試料の表面までの第1の距離を算出し、前記第2の反射干渉光を用いて、前記試料の厚みを算出する演算部と、を含み、
前記透過光学部材の光学厚みが、前記分光器の測定波長範囲の上限値と波長分解能とによって規定される可干渉光学厚みの上限値よりも大きい、
光学測定装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施形態]
本開示における第1の実施形態について、図面を用いて以下に説明する。
【0010】
図1は、本実施形態の光学測定装置101の概略構成を示す模式図である。
図1に示すように、本実施形態の光学測定装置101は、参照面1Aを有する透過光学部材1を含むプローブ10を備える。プローブ10は、参照面1Aを介して試料151に光を照射する。また、プローブ10は、参照面1Aからの第1の反射光、試料151の表面からの第2の反射光、及び試料151の裏面からの第3の反射光を受光する。
【0011】
プローブ10が受光した第1の反射光、及び第2の反射光により、第1の反射干渉光が生じる。また、プローブ10が受光した第2の反射光、及び第3の反射光により、第2の反射干渉光が生じる。第1の反射干渉光、及び第2の反射干渉光は、演算部6に伝達される。
【0012】
演算部6は、第1の反射干渉光を用いて、参照面1Aから試料151までの第1の距離d1を算出する。また、演算部6は、第2の反射干渉光を用いて、試料151の厚みtxを算出する。
【0013】
このような構成により、試料151における一方の表面に対して光を照射する光学測定装置において、プローブ10の参照面1Aと試料151との間の第1の距離d1と、試料151の厚みtxと、を測定することができる。
【0014】
また、試料151における表面側からの光照射のみで足りるため、試料151の裏面側に他のプローブを配置する必要がない。そのため、プローブ10の光軸の位置と、裏面側のプローブの光軸の位置を調整する必要がない。さらに、裏面側にプローブを配置する必要がないため、試料151を空間的に浮かせるように設置する必要もなく、試料151の裏面側におけるプローブを配置するスペースも不要となる。
【0015】
以下、任意の構成も含めた、本実施形態における光学測定装置101の具体的な構成について説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係る光学測定装置101は、上述した構成の他に、光源2、光学系3、分光器4、ステージ7などを備える。
【0017】
光学系3は、光ファイバ31、33、34、及びファイバジャンクション35を含む。光源2によって出力された光は、光ファイバ34を介してファイバジャンクション35へ伝送され、光ファイバ31を介してプローブ10へ伝送される。
【0018】
光ファイバ31の端面を透過した入射光は、プローブ10内のコリメートレンズ11によって平行光に変換され、集光レンズ12により集光される。プローブ10は、集光レンズ12により集光した光を、参照面1Aを介して試料151に光を照射する。本実施形態において、プローブ10から照射される光は、試料151を透過する波長を有している。そのため、プローブ10から照射された光は、試料の151の表面のみならず、試料151の裏面にまで到達する。本実施形態においては、光源2が近赤外域のインコヒーレント光を発生させるASE(Amplified Spontaneous Emission)光源であり、プローブ10から照射される光が、近赤外域のインコヒーレント光である構成としている。
【0019】
プローブ10から照射される光は、プローブ10内における参照面1Aにおいて反射される。この参照面1Aにおいて反射された光を第1の反射光とする。また、プローブ10から照射された光は、試料151の表面、及び裏面において反射される。試料151の表面において反射された光を第2の反射光、試料151の裏面において反射された光を第3の反射光とする。
【0020】
プローブ10は、参照面1Aからの第1の反射光、試料151の表面からの第2の反射光、及び試料151の裏面からの第3の反射光を受光する。
【0021】
本実施形態においては、プローブ10が、集光レンズ12を有しており、試料151の表面付近に焦点が位置するように調整されている。そのため、測定スポット径を小さくすることができ、試料151の微細な表面形状の分布を反映した測定が可能となる。また、照射光が集光されるため、投光量に対する受光量の減少を抑制することができる。受光量の減少を抑制することができるため、短い露光時間での測定が可能となる。更に、プローブ10の光軸が、試料151の表面に対して垂直でない場合や、試料151の表面の平坦度が低いような場合でも、受光量の減少を抑制することが可能となる。
【0022】
なお、透過光学部材1の厚みttは、第1の距離d1よりも大きいことが望ましい。透過光学部材1の厚みttを、第1の距離d1よりも大きくすることにより、透過光学部材1における参照面1Aと反対側の面1Bにおいて、プローブ10から照射される光のフォーカス度合いを下げることができる。その結果として、反対側の面1Bからの反射光の強度を弱くすることができ、当該反対側の面1Bからの反射光と、第1の反射光、第2の反射光、及び第3の反射光との干渉の発生を抑制することができる。
【0023】
また、透過光学部材1の厚みttに透過光学部材1の屈折率を乗じた光学厚みは、後述する分光器4の可干渉光学厚み範囲の上限より大きいことが望ましい。なお、分光器4の可干渉光学厚み範囲の上限は、以下の式により表すことができる。
【0025】
(数1)において、d
maxが可干渉光学厚み範囲の上限値である。λ
maxは分光器4の測定波長範囲の上限値である。k
minはλ
maxに対応する波数であり、k
min=1/λ
maxの関係にある。k
1は、干渉波形においてk
minと同位相で、且つk
minに隣接する波数である。λ
1は、k
1に対応する波長であり、k
1=1/λ
1の関係にある。Δλは、波長分解能であり、以下の式により表すことができる。
【0027】
(数2)においてSpは、後述する検出部44におけるリニアイメージセンサの素子数である。λ
maxは分光器4の測定波長範囲の上限値であり、λ
minは分光器4の測定波長範囲の下限値である。
図11は、分光器4を用いて、光学厚みが可干渉光学厚みの上限値d
maxである試料を測定したときの、干渉波形の周期とリニアイメージセンサの素子間隔(サンプリング点の間隔)との関係を表した模式図である。
図11を参照して、上記(数1)は、反射率スペクトルにおける干渉波形の1周期が、検出部44におけるリニアイメージセンサの隣接する2素子分に相当するデータとなるように算出している。従ってd
maxは、周波数解析におけるナイキストのサンプリング定理を満たすぎりぎりの光学厚みと解釈できる。
【0028】
なお、反対側の面1BにAnti-Reflectionコートを施す、あるいは、反対側の面1Bをプローブ10の光軸に対して斜めに交差するよう配置することが望ましい。そのような構成を採用することにより、反対側の面1Bからの反射光と、第1の反射光、第2の反射光、及び第3の反射光との干渉の発生を抑制することができる。
【0029】
なお、プローブ10に装着される光ファイバ31の端面は、斜め球面のAPC(Angled Physical Contact)研磨がなされていることが望ましい。光ファイバ31の端面は、斜め球面のAPC研磨しておくことにより、光ファイバ31の端面での反射光と、第1の反射光、第2の反射光、及び第3の反射光との干渉の発生を抑制することができる。
【0030】
プローブ10により受光された第1の反射光と第2の反射光により、第1の反射干渉光が生じる。また、第2の反射光と第3の反射光により、第2の反射干渉光が生じる。この第1の反射干渉光、及び第2の反射干渉光を含む測定反射光は、光ファイバ31、ファイバジャンクション35、光ファイバ33を介して分光器4へ伝送される。
【0031】
分光器4は、測定反射光の反射率スペクトルを測定し、その測定結果を演算部6へ出力する。分光器4は、シャッター41、カットフィルタ42、回折格子43、及び検出部44を含む。
【0032】
シャッター41は、検出部44をリセットするときなど、検出部44に入射する光を遮断するために設けられている。シャッター41は、例えば、電磁力によって駆動する機械式のシャッターである。
【0033】
カットフィルタ42は、分光器4に入射する測定反射光に含まれる、測定範囲外の波長成分を遮断するための光学フィルタである。
図10に示すように、カットフィルタ42は、スリットを通過して入射した測定反射光の内、分光器4の測定波長範囲の下限付近に生じる迷光を遮断する。本実施形態においては、カットフィルタ42が、例えば波長約1000nm以下の波長を遮断する。その結果、回折格子43の1次光のみを透過し高次光を遮断することができ、分光器4において、高次回折光が重なることに起因する測定不具合の発生を抑制することができる。カットフィルタ42を透過した測定反射光は、例えばコリメートミラーに反射され、回折格子43へ入射する。
【0034】
回折格子43は、第1の反射干渉光、及び第2の反射干渉光を含む測定反射光を分光した上で、各分光波を検出部44へ導く。具体的には、回折格子43は、反射型の回折格子であり、所定の波長間隔毎の回折波が対応する各方向に反射するように構成される。このような構成を有する回折格子43に測定反射光が入射すると、含まれる各波長成分は対応する方向に反射されて、検出部44の所定の検出領域に入射する。回折格子43は、例えば、ブレーズドホログラフィック平面グレーティングからなる。なお、
図10に示すように、回折格子43と検出部44との間にフォーカスミラーが介在し、回折格子43に反射された測定反射光が、更にフォーカスミラーに反射され、検出部44に入射する構成としてもよい。
【0035】
検出部44には、例えば、近赤外帯域に感度をもつ複数の素子が直線状に配置されたリニアイメージセンサを用いる。検出部44は、回折格子43で分光された測定反射光に含まれる各波長成分の光強度に応じた電気信号を演算部6に出力する。
【0036】
演算部6は、検出部44から電気信号を受信すると、電気信号が示す波長ごとの強度を、波長ごとの反射率に変換し、反射率スペクトル、又は透過率スペクトルを生成する。
【0037】
また、演算部6は、例えば、分光器4に光が入らないようにした状態において検出部44から受けた電気信号が示す波長ごとの強度を、ダークスペクトルデータとして保持している。
【0038】
さらに、演算部6は、例えば、アルミ板等の参照物がステージ7に設置されている状態において、検出部44から受けた電気信号の示す波長ごとの強度に対して、ダークスペクトルデータに含まれる波長ごとの強度をそれぞれ差し引いた波長ごとの強度を、参照スペクトルデータとして保持している。
【0039】
演算部6は、試料151がステージ7に設置された状態において、検出部44から受けた電気信号が示す波長ごとの強度に対して、ダークスペクトルデータに含まれる波長ごとの強度をそれぞれ差し引いた後、参照スペクトルデータに含まれる波長ごとの強度でそれぞれ除することにより、波長ごとの反射率スペクトルデータ、又は透過率スペクトルデータを生成する。
【0040】
本実施形態においては、演算部6が、
図3に示すような反射率スペクトルを取得する例について説明する。
図3に示す反射率スペクトルにおいて、横軸は波長を示し、縦軸は反射率を示す。上述したとおり、測定反射光には、第1の反射光と第2の反射光により生じる第1の反射干渉光と、第2の反射光と第3の反射光により生じる第2の反射干渉光とが含まれている。そのため、当該反射率スペクトル又は透過率スペクトルには、第1の反射干渉光と、第2の反射干渉光に関する情報が含まれている。
【0041】
演算部6は、生成した反射率スペクトル(又は透過率スペクトル)を用いて、第1の距離d1、及び試料151の厚みtxを算出する。本実施形態においては、分光器4から取得した反射率スペクトル(又は透過率スペクトル)の横軸を波数に変換し、縦軸を波数変換反射率(又は波数変換透過率)に変換し、波数変換反射率スペクトル(又は波数変換透過率スペクトル)を取得する。その後、波数変換反射率スペクトル(又は波数変換透過率スペクトル)の波数についてフーリエ変換することにより、
図4に示すような各周波数成分のパワースペクトルを取得する。なお、試料151の厚みtxを算出する際には、試料151の屈折率波長依存性を考慮した膜厚演算を行うことも可能である。すなわち、反射率スペクトルの横軸を波長から波数へ変換する際に、試料の波長毎の屈折率値と波長値から波数を算出するとともに、縦軸を反射率Rから波数変換反射率R’=R/(1-R)へ、または透過率Tから波数変換透過率T’=1/Tへ変換する。この変換により得られる、波数変換反射率スペクトル(又は波数変換透過率スペクトル)を、波数についてフーリエ変換を施すことにより、試料151の屈折率波長依存性を考慮した、より高精度な厚みtxの算出が可能となる。屈折率波長依存性を考慮した高精度な膜厚算出方法としては、例えば、特開2009−92454号公報に記載の方法を用いることができる。
【0042】
上述した通り、検出部44により測定された反射率スペクトル又は透過率スペクトルには、上述した第1の反射干渉光と、第2の反射干渉光に関する情報が含まれている。そのため、
図4に示すパワースペクトルにおいては、第1の反射干渉光に基づく第1のピークp1と、第2の反射干渉光に基づく第2のピークp2とが現れる。第1のピークp1が、プローブ10の参照面1Aと試料151との間の第1の距離d1に関する情報を示し、第2のピークp2が、試料151の厚みtxに関する情報を示す。この
図4に示すパワースペクトルにおいて、横軸は光学膜厚を示す。そのため、空気中の距離を示す第1の距離d1については、この
図4に示される第1のピークp1における光学膜厚の値そのものが、第1の距離d1を示す。一方、試料151の厚みtxについては、
図4に示される第2のピークp2における光学膜厚の値を、試料151の屈折率で除算した値が、厚みtxを示す。
【0043】
上述したような構成により、試料151における一方の表面に対して光を照射する光学測定装置101において、プローブ10の参照面1Aと試料151との間の第1の距離d1と、試料151の厚みtxと、を測定することができる。
【0044】
なお、
図2Aに示す試料151が配置されたステージ7と、プローブ10と、の内の少なくとも一方を、プローブ10の光軸に交差する第1の方向(例えばステージ7のX軸方向)に移動させるとともに、プローブ10が、試料に光を照射することにより、第1の方向における複数の位置において、第2の反射光、及び前記第3の反射光を受光する構成としてもよい。そして、演算部6が、第1の方向における複数の位置において、上述した第1の距離d1と、試料151の厚みtxと、を算出する構成としてもよい。
【0045】
このような構成とすることにより、所望の線分上における試料151の表裏面形状に関する情報を取得することができる。即ち、第1の方向における複数の位置において、プローブ10の参照面1Aと試料151の表面との距離である第1の距離d1を取得することにより、所望の線分上における、試料151の表面形状に関する情報を取得することができる。更に、同一線分上における、試料151の厚みtxを取得することにより、第1の距離d1と厚みtxから、試料151の裏面形状に関する情報を取得することができる。その結果、所望の線分上における試料151の表裏面に形成された、傷や圧痕の位置を取得することができる。
【0046】
更に、
図2Aに示すステージ7と、プローブ10と、の内の少なくとも一方を、第1の方向に移動させるのみならず、プローブ10の光軸方向に交差し、且つ第1の方向に交差する第2の方向(例えばステージ7のY軸方向)に移動させるとともに、プローブ10が、試料151に光を照射することにより、第1の方向、及び第2の方向における複数の位置において、第2の反射光、及び前記第3の反射光を受光する構成としてもよい。そして、演算部6が、第2の方向における複数の位置において、第1の距離d1と、試料151の厚みtxと、を算出する構成としてもよい。
【0047】
このような構成とすることにより、所望の面上における試料151の表裏面形状に関する情報を取得することができる。即ち、第1の方向、及び第2の方向における複数の位置において、プローブ10の参照面1Aと試料151の表面との距離である第1の距離d1を取得することにより、所望の面上における、試料151の表面形状に関する情報を取得することができる。更に、同一面上における、試料151の厚みtxを取得することにより、第1の距離d1と厚みtxから、試料151の裏面形状に関する情報を取得することができる。その結果、所望の面上における試料151の表裏面に形成された、傷や圧痕の位置を取得することができる。
【0048】
なお、所望の面上における試料151の表裏面形状に関する情報を取得する例として、ステージ7のX軸方向、Y軸方向に、ステージ7と、プローブ10と、の内の少なくとも一方を移動させる構成を例に挙げたが、本開示はこれに限定されない。例えば、
図2Bに示すように、試料151が配置されたプローブ10を、ステージ7の中心点から半径方向R(第1の方向)に移動させると同時に、ステージ7を円周方向θ(第2の方向)に移動させる構成としてもよい。
【0049】
なお、
図5に示すように、試料151に反りがあるような場合、試料151とステージ7との間に空間が生じることがある。以下、試料151とステージ7との間における第3の距離d3を算出する方法について説明する。
図6は、本実施形態の光学測定方法における第3の距離を算出する方法を示すフローチャート図である。
【0050】
まず、第1のステップS001として、試料151がステージ7に設置されていない状態において、プローブ10から、参照面1Aを介してステージ7に光を照射する。プローブ10は、ステージ7の表面からの第4の反射光を受光する。また、プローブ10は、参照面1Aからの第1の反射光を受光する。
【0051】
そして、第2のステップS002として、演算部6が、第1の反射光、及び第4の反射光により生じる第3の反射干渉光を用いて、参照面1Aからステージ7までの第2の距離d2を算出する。以下、第2の距離d2の算出方法について説明する。
【0052】
検出部44は、回折格子43で分光された第3の反射干渉光を含む測定反射光に含まれる各波長成分の光強度に応じた電気信号を演算部6に出力する。
【0053】
演算部6は、検出部44から電気信号を受信すると、電気信号が示す波長ごとの強度を、波長ごとの反射率に変換し、反射率スペクトル、又は透過率スペクトルを生成する。
【0054】
本実施形態においては、演算部6が、
図7に示すような反射率スペクトルを生成する例について説明する。上述したとおり、測定反射光には、第1の反射光と第4の反射光により生じる第3の反射干渉光が含まれている。そのため、当該反射率スペクトル又は透過率スペクトルには、第3の反射干渉光に関する情報が含まれている。
【0055】
演算部6は、生成した反射率スペクトル(又は透過率スペクトル)を用いて、参照面1Aからステージ7までの第2の距離d2を算出する。本実施形態においては、分光器4から取得した反射率スペクトル(又は透過率スペクトル)の横軸を波数に変換し、横軸を波数変換反射率(又は波数変換透過率)に変換し、波数変換反射率スペクトル(又は波数変換透過率スペクトル)を取得する。その後、波数変換反射率スペクトル(又は波数変換透過率スペクトル)の波数についてフーリエ変換することにより、
図8に示すような各周波数成分のパワースペクトルを取得する。なお、試料151の厚みtxを算出する際には、試料151の屈折率波長依存性を考慮した膜厚演算を行うことも可能である。すなわち、反射率スペクトルの横軸を波長から波数へ変換する際に、試料151の波長毎の屈折率値と波長値から波数を算出するとともに、縦軸を反射率Rから波数変換反射率R’=R/(1-R)へ、または透過率Tから波数変換透過率T’=1/Tへ変換する。この変換により得られる、波数変換反射率スペクトル(又は波数変換透過率スペクトル)を、波数についてフーリエ変換を施すことにより、試料151の屈折率波長依存性を考慮した、より高精度な厚みtxの算出が可能となる。屈折率波長依存性を考慮した高精度な膜厚算出方法の詳細としては、例えば、特開2009−92454号公報に記載の方法を用いることができる。
【0056】
上述した通り、演算部6により生成された反射率スペクトル又は透過率スペクトルには、第3の反射干渉光に関する情報が含まれている。そのため、この
図8に示すパワースペクトルにおいては、第3の反射干渉光に基づく第3のピークp3が現れる。第3のピークp3が、プローブ10の参照面1Aとステージ7との間の第2の距離d2に関する情報を示す。この
図8に示すパワースペクトルにおいて、横軸は光学膜厚を示す。そのため、空気中の距離を示す第2の距離d2については、この
図8に示される第3のピークp3における光学膜厚の値そのものが、第2の距離d2を示す。
【0057】
そして、第3のステップS003として、試料151がステージ7に設置された状態において、プローブ10から、参照面1Aを介して試料151に光を照射する。プローブ10は、試料151の表面からの第2の反射光を受光し、試料151の裏面から第3の反射光を受光する。また、プローブ10は、参照面1Aからの第1の反射光を受光する。
【0058】
そして、第4のステップS004として、演算部6が、第1の反射光と第2の反射光により生じる第1の反射干渉光を用いて、参照面1Aから試料151の表面までの第1の距離d1を算出し、第2の反射光と第3の反射光により生じる第2の反射干渉光を用いて、試料151の厚みtxを算出する。
【0059】
なお、第3のステップS003及び第4のステップS004を、第1のステップS001及び第2のステップS002よりも先に行ってもよい。
【0060】
また、先に第1のステップS001及び第3のステップS003を行った後、第2のステップS002及び第4のステップS004を、まとめて行ってもよい。
【0061】
最後に、第5のステップS005として、演算部6は、
図5に示した第2の距離d2を加算要素とし、第1の距離d1、及び試料151の厚みtxを減算要素として、試料151とステージ7との間の第3の距離d3を算出する。
【0062】
上述したような光学測定方法により、試料151における一方の表面に対して光を照射する光学測定装置において、試料151とステージ7との間の第3の距離d3を測定することができる。
【0063】
なお、第1のステップS001において、
図2A、
図2Bに示したステージ7と、プローブ10と、の内の少なくとも一方を、第1の方向(例えば、ステージのX軸方向、あるいは半径方向)に移動させるとともに、プローブ10が、ステージ7に光を照射することにより、第1の方向における複数の位置において、第4の反射光を受光する方法としてもよい。
【0064】
そして、第3のステップS003において、
図2Aに、2Bに示したステージ7と、プローブ10と、の内の少なくとも一方を、第1の方向に移動させるとともに、プローブ10が、試料151に光を照射することにより、第4の反射光の受光位置と対応する複数の位置において、第2の反射光、第3の反射光を受光する方法としてもよい。
【0065】
このような方法とすることにより、第5のステップS005において、演算部6が、第1の方向における複数の位置において、試料151の厚みtx、第1の距離d1、第2の距離d2、及び第3の距離d3を算出する。その結果として、所望の線分上における試料151の反りに関する情報を取得することができる。
【0066】
なお、第3のステップS003において、プローブ10が、第4の反射光の受光位置と対応する複数の位置において、第2の反射光、第3の反射光を受光するために、演算部6が、第1のステップS001において、第4の反射光の受光位置を記憶する構成としてもよい。
【0067】
また、第3のステップS003を第1のステップS001よりも先に行ってもよい。その場合は、演算部6が、第3のステップS003において、第2の反射光、第3の反射光の受光位置を記憶する構成としてもよい。
【0068】
このような構成とすることにより、第1のステップS001における受光位置と、第3のステップS003における受光位置を対応させることができる。即ち、第3のステップS003において、第4の反射光の受光位置と対応する複数の位置において、第2の反射光、第3の反射光を受光することが可能となる。
【0069】
図9は、本実施形態における光学測定方法による測定結果を示すグラフである。
【0070】
図9において、実線が第2の距離d2、破線が第1の距離d1、長破線が試料151の厚みtxを示す。これら第2の距離d2、第1の距離d1、及び厚みtxは、第1の方向における複数の位置において、上述したパワースペクトルのピーク値から、演算部6が算出したものである。
【0071】
更に、
図9において、一点鎖線が、ステージ7を基準とした、試料151の表面形状に関する情報を示す。また、二点鎖線が、ステージ7を基準とした、試料151の裏面形状に関する情報を示し、所望の線分上における試料151の反りに関する情報を示す。一点鎖線で示す試料151の表面形状に関する情報は、第2の距離d2から第1の距離d1を減算することにより求めることができる。また、二点鎖線で示す試料151の裏面形状に関する情報は、試料151とステージ7との間の第3の距離d3であり、第2の距離d2から、第1の距離d1、厚みtxを減算することにより求めることができる。
【0072】
このように、第1の方向における複数の位置において、第3の距離d3を算出することにより、所望の線分上における試料151の反りに関する情報を取得することができる。
【0073】
更に、第1のステップS001において、
図2A、
図2Bに示したステージ7と、プローブ10と、の内の少なくとも一方を、第1の方向(例えば、ステージのX軸方向、あるいは半径方向)に移動させるのみならず、プローブ10の光軸方向に交差し、且つ第1の方向に交差する第2の方向(例えば、ステージのY軸方向、あるいは円周方向))に移動させるとともに、プローブ10が、ステージ7に光を照射することにより、第1の方向、及び第2の方向における複数の位置において、第4の反射光を受光する方法としてもよい。
【0074】
そして、第3のステップS003において、
図2A、
図2Bに示したステージ7と、プローブ10と、の内の少なくとも一方を、第1の方向、及び第2の方向に移動させるとともに、プローブ10が、試料151に光を照射することにより、第4の反射光の受光位置と対応する複数の位置において、第2の反射光、第3の反射光を受光する方法としてもよい。
【0075】
このような方法とすることにより、第5のステップS005において、演算部6が、第1の方向における複数の位置において、試料151の厚みtx、第1の距離d1、第2の距離d2、及び第3の距離d3を算出する。その結果として、所望の面上における試料151の反りに関する情報を取得することができる。
【0076】
なお、第3のステップS003において、プローブ10が、第4の反射光の受光位置と対応する複数の位置において、第2の反射光、第3の反射光を受光するために、演算部6が、第1のステップS001において、第4の反射光の受光位置を記憶する構成としてもよい。
【0077】
また、第3のステップS003を第1のステップS001よりも先に行ってもよい。その場合は、演算部6が、第3のステップS003において、第2の反射光、第3の反射光の受光位置を記憶する構成としてもよい。
【0078】
このような構成とすることにより、第1のステップS001における受光位置と、第3のステップS003における受光位置を対応させることができる。即ち、第3のステップS003において、第4の反射光の受光位置と対応する複数の位置において、第2の反射光、第3の反射光を受光することが可能となる。
【解決手段】本開示の厚み測定装置は、参照面を有する透過光学部材を含み、前記参照面を介して試料に光を照射し、前記参照面からの第1の反射光、前記試料の表面からの第2の反射光、及び前記試料の裏面からの第3の反射光を受光するプローブと、前記第1の反射光と前記第2の反射光により生じる第1の反射干渉光を用いて、前記参照面から前記試料の表面までの第1の距離を算出し、前記第2の反射光と前記第3の反射光により生じる第2の反射干渉光を用いて、前記試料の厚みを算出する演算部と、を含む。