特許第6402297号(P6402297)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6402297
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】針穴への糸通し具
(51)【国際特許分類】
   D05B 87/00 20060101AFI20181001BHJP
【FI】
   D05B87/00
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-94729(P2018-94729)
(22)【出願日】2018年5月16日
(62)【分割の表示】特願2016-51705(P2016-51705)の分割
【原出願日】2016年3月15日
(65)【公開番号】特開2018-122163(P2018-122163A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2018年5月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】712004369
【氏名又は名称】井上 佳子
(72)【発明者】
【氏名】井上 佳子
【審査官】 姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−119389(JP,U)
【文献】 特開昭61−037288(JP,A)
【文献】 特開平10−235063(JP,A)
【文献】 実開平4−080484(JP,U)
【文献】 独国特許発明第00574606(DE,C2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 87/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持部と、把持部の先端に突設された糸通し部とからなる針穴への糸通し具において、前記把持部に、針穴に糸通し部を挿入した状態の針を係止する針係止機構を備えており、前記針係止機構を備えた把持部が、クリップ形状のものであることを特徴とする針穴への糸通し具。
【請求項2】
前記針係止機構が、前記糸通し部を挿入した状態で、針穴側の針の端部を挟持することによって、針は係止される、請求項1に記載の針穴への糸通し具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裁縫用糸や、刺繍用糸等の糸を針穴に容易に通すための糸通し具に関し、特に該糸通し具を針穴に挿入した状態で確実に保持して保管できる針穴への糸通し具に関する。
【背景技術】
【0002】
裁縫や刺繍をする際に使用する針の針穴は小さく、この針穴に裁縫用糸や刺繍用糸を通すのは非常に困難であり、高齢者や目の不自由な人にとっては、時間をかけても糸を通せない場合もある。
そこで、従来より、この針穴への糸通し作業を容易にする図4(a)に示すような糸通し具が使用されている。この糸通し具10は、金属等の薄板等からなる把持部20の端部に、弾性のある細い金属線材で略菱形に形成された糸導入部30が突設して固着されている。
そして、針穴に糸を通す際には、前記略菱形の糸導入部30を針60の針穴に挿入し、針を把持部20の端部まで移動させ(図4(b))、糸導入部30の略菱形内に糸70を通し(図4(c))、その後、針60から糸導入部30を引き抜く(図4(d))。これにより針穴への糸通し作業が完了する。
上記糸通し具10は、糸導入部30が細い金属線材から構成されているので、針穴にしっかり挿入でき、糸70を直接針穴に通すより格段に糸通し作業を容易にしている(特許文献1)。
【0003】
また、上記糸通し具を改良して糸通し作業を容易にせしめることを目的として、細い金属線材からなる糸導入部を使用せず、プレートの一部に突出部を形成し、該突出部に糸通し孔を形成し、その糸通し孔に切欠部を設けた糸通し器具がある。
このタイプの糸通し器具は、前記プレートの一部に形成された突出部を針の針穴に貫通させ、その後突出部の糸通し孔に設けられた切欠部から糸を挿通させた後、針から突出部を引き抜くことで、針穴への糸通し作業が行われる(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭8−8391号公報
【特許文献2】実開昭51−143550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来より使用されている糸通し具や糸通し器具は、糸を直接針穴に通すよりは格段に糸通し作業を容易にしているが、どちらも針穴に糸導入部やプレートの突出部を挿入させる必要がある。しかし、針穴は極めて小さく、高齢者や目が不自由で細かい作業が苦手な人にとっては、針穴の位置を確認しながら、糸通し具の糸導入部やプレートの突出部の角度を調整しつつ挿入させる作業自体が非常に困難という問題がある。そのため、身近にいる人に針穴への糸通しを依頼せざるを得ず、気軽に裁縫や刺繍等をすることができない。
また、あらかじめ糸を通してもらった針を複数まとめて保管しておくことで、好きな時に裁縫等をすることもできるが、この場合はあらかじめ針に糸が通されているために、任意の糸を随時選択して使用することができない。
一方、従来より使用されている糸通し具は、針穴に糸を通すことを目的として構成されているため、針が糸通し具から抜け落ちやすく、針穴に糸通し具を挿入したまま保管することはできない。
本発明は、上記従来から使用されている糸通し具の問題を解決し、高齢者や目の不自由な人が気軽に裁縫や刺繍等ができるようにした針穴への糸通し具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を下記の手段により解決した。
(1)把持部と、把持部の先端に突設された糸通し部とからなる針穴への糸通し具において、前記把持部に、針穴に糸通し部を挿入した状態の針を係止する針係止機構を備えてなることを特徴とする針穴への糸通し具。
(2)前記針係止機構を備えた把持部が、クリップ形状のものであることを特徴とする前記(1)に記載の針穴への糸通し具。
(3)前記針係止機構を備えた把持部が、弾性をする素材からなる把持部の先端に形成されたスリットを有することを特徴とする前記(1)に記載の針穴への糸通し具。
(4)前記針係止機構が、前記糸通し部を挿入した状態で、針穴側の針の端部を挟持することによって、針は係止される、前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の針穴への糸通し具。
【発明の効果】
【0007】
本発明の針穴への糸通し具によって下記の効果が発揮される。
〈1〉本発明の針穴への糸通し具は、把持部と、把持部の先端に突設された糸通し部とからなり、前記把持部に、針穴に糸通し部を挿入した状態の針を係止する針係止機構を備えているので、針穴に糸通し部が挿入された状態の針を糸通し具に保持することができ、使用の際に、前記糸通し部に任意の糸を通した後、針穴から糸通し具を引き抜くだけで、針穴への糸通し作業ができるので、あらかじめ身近な人に針穴に糸通し具の糸通し部を挿入しておいてもらい、その針を保持した糸通し具を保管しておくことで、高齢者や目の不自由な細かい作業が苦手な人でも、好きな時に気軽に裁縫や刺繍をすることができる。
また、把持部が針係止機構を備えているので、針穴から糸通し部が抜け落ちることがなく、確実に針を保持することができ安全に保管することができる。
〈2〉本発明の針穴への糸通し具の針係止機構を備えた把持部が、クリップ形状のものであるので、針穴に糸通し部を挿入して、クリップ形状の把持部を閉じるだけの簡単な作業で、糸通し部が挿入された状態の針を保持することができる。
また糸通し部に糸を挿入して針を使用する際には、クリップ形状の把持部を開いて針係止機構から取り外すことによって、針穴に糸が挿通された針が簡便に取り出せ、裁縫や刺繍を楽しむことができる。
〈3〉本発明の針穴への糸通し具の針係止機構を備えた把持部が、弾性を有する素材からなる把持部の先端に形成されたスリットを有するので、針穴に糸通し部を挿入して、針をスリットに挟装するだけで、糸通し部が挿入された状態の針を保持することができる。
また糸通し部に糸を挿入して針を使用する際には、弾性を有する素材からなる把持部の先端に設けたスリットから針を取り出すことだけによって針穴に糸が挿通されるので、裁縫や刺繍を気軽に楽しむことができる。
〈4〉 前記針係止機構が、前記糸通し部を挿入した状態で、針穴側の針の端部を挟持することによって、針は係止されるので、本発明の糸通し具で保持された状態の針を、針刺しなどに刺して保管するような状態でも、針の端部が糸通し具で覆われているため、端部で怪我をすることがなく、安全である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の針穴への糸通し具の一実施例の説明図
図2】本発明の針穴への糸通し具の一実施例の使用説明図
図3】本発明の針穴への糸通し具の他の実施例の説明図
図4】従来の糸通し具の説明図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の針穴への糸通し具を実施するための形態を、実施例の図に基づいて説明する。
[実施例1]
【実施例】
【0010】
図1は本発明の針穴への糸通し具の一実施例の説明図、図2図1に示した本発明の針穴への糸通し具の実施例の使用説明図である。
図において、1は糸通し具、2は把持部、3は糸通し部、3aは糸通し口、4は針係止機構、5a、5bはクリップ形状部材、6は針、6aは針穴、7は糸である。
【0011】
本発明の針穴への糸通し具1は、図1(a)に示すように、把持部2と、把持部2の先端に突設された糸通し部3からなり、前記把持部2に針係止機構4が備えられている。
図1に示す一実施例においては、把持部2はクリップ形状をなし、クリップ形状部材5a、5bにより針係止機構4が構成され、クリップ形状部材5a、5bで針6を挟持して係止し、そのまま保持・保管できる構成となっている。
すなわち、本発明の糸通し具1は、まず図1(b)に示すごとく、把持部2のクリップ形状部材5a、5bを押圧して開口し、その状態で針6の針穴6aに、糸通し部3を挿入する(図1(c))。そして、針6を針係止機構4の位置まで移動させ(図1(d))、クリップ形状部材5a、5bの押圧を解除してクリップを閉じ、針6を挟持して係止する(図1(e))。この時、針係止機構4は、針6の2つの端部のうち、針穴6a側の端部を覆うように挟持される。
本発明の糸通し具1は、上記図1(e)の糸通し部3が針穴6aに挿入された状態の針6を安全かつ確実に保持し、そのまま保管することを目的としている。
【0012】
そして、保管されている糸通し部3が針穴6aに挿入された状態の針6を使用する場合には、図2(a)〜(d)に示すごとく、針6を挟持して保管された糸通し具1(図2(a))の、糸通し部3の糸通し口3aに糸7を挿入し(図2(b))、把持部2であるクリップ形状部材5a、5bを押圧して開口して針6の針係止機構4での係止を解除し(図2(c))、針6から糸通し部3を引き抜き(図2(d))、針穴6aへの糸通し作業を完了する。
【0013】
なお、上記把持部2は、金属や樹脂など、クリップ形状に構成して把持部2の針係止機構4で針6を挟持できる程度の強度がある素材で構成され、糸通し作業がしやすい形状であればよく、特にその素材や形状が限定されるものではない。
また、本実施例において糸通し部3は、細い金属線材で略菱形に形成されているが、針穴6aに貫通させることができる形状、素材であればよく、たとえば、把持部2の一部を突出させて突出糸通し部を形成し、その突出糸通し部に糸通し口を形成したものや、さらにその糸通し口に切欠部を設けたものなど、あらゆる形状・構造の糸通し部についても、本発明を実施することができる。
[実施例2]
【0014】
本発明の針穴への糸通し具1は、把持部2と、把持部2の先端に突設された糸通し部3からなり、針6の針穴6aに糸通し部3が挿入された状態の針6を糸通し具1に保持することができるよう把持部2に針係止機構4を備えて、その目的を達成するものであればよく、把持部2や糸通し部3、針係止機構4の形状、構造及び素材は適宜任意に選択することができる。
【0015】
たとえば、図3に示した本発明の針穴への糸通し具の他の実施例においては、糸通し具1’は把持部2’と、把持部2’の先端に突設された糸通し部3とからなり、前記把持部2’に針係止機構4’を備えて構成されている。
そして、前記把持部2’は、糸通し作業に支障のない程度の大きさを備えた弾性体で構成され、該把持部2’の先端部に針係止機構4’となるスリット8が形成されてなり(図3(a))、針係止機構4’となるスリット8の内壁面に固着された糸通し部3を針穴6aに挿入し(図3(b))、そのまま針6をスリット8内まで挿入する(図3(c))。
把持部2’は、弾性を有する素材から構成されているため、挿入された針6は把持部2’の弾性により挟持されスリット8内に保持される(図3(d))。この時、針係止機構4’は、針6の2つの端部のうち、針穴6a側の端部を覆うように挟持される。
この実施例における把持部2’は、スリット8内に挿入された針6を係止できる程度の弾性があればよく、たとえば、シリコンゴム、ウレタンゴム等のゴム、ポリウレタン、軟質プラスチック等の樹脂、あるいは軟質プラスチックと硬質プラスチックとの複合樹脂など、安全かつ確実に針を保持し、そのまま保管できる素材を採用することが望ましい。
【0016】
なお、本発明の針穴への糸通し具1における針係止機構4は、上記実施例のようなクリップによる挟持やスリットへの挟装によるものでなくとも、針6が勝手に抜け出ることなくしっかり保持できる形状や素材であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0017】
把持部に備えられた針を係止する針係止機構に、針穴に糸通し部が挿入された状態の針を係止し、その状態で針の保管が可能であり、あらかじめ針係止機構に針を係止して保管しておくことで、高齢者や目の不自由な糸通し作業の困難な人が、好きな時に容易に任意の糸を通し裁縫等の作業を可能とする用途に適用できる。
【符号の説明】
【0018】
1、1’ 糸通し具
2、2’ 把持部
3 糸通し部
3a 糸通し口
4、4’ 針係止機構
5a、5b クリップ形状部材
6 針
6a 針穴
7 糸
8 スリット
10 糸通し具
20 把持部
30 糸導入部
60 針
70 糸
図1
図2
図3
図4