特許第6402309号(P6402309)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6402309乾燥粉体の生成方法及び装置並びに噴霧装置組立体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6402309
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】乾燥粉体の生成方法及び装置並びに噴霧装置組立体
(51)【国際特許分類】
   B01D 1/18 20060101AFI20181001BHJP
【FI】
   B01D1/18
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-136352(P2014-136352)
(22)【出願日】2014年7月1日
(65)【公開番号】特開2016-13514(P2016-13514A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2017年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166557
【氏名又は名称】アイメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092761
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 邦廣
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 章裕
(72)【発明者】
【氏名】豊田 成紀
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−196701(JP,A)
【文献】 特開平09−239201(JP,A)
【文献】 特開昭63−267401(JP,A)
【文献】 特開平05−168802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 1/18
B01J 2/00
B01J 19/00
B05B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル又はオリフィスから気体を吐出させ、前記ノズル又はオリフィスの下流に負圧域又は減圧域を生成し、前記負圧域又は減圧域に液化ガスと粉体の懸濁液を供給することにより前記懸濁液の液滴を多数生成し、前記液滴を加熱して前記液滴中の前記液化ガスを気化させ、前記粉体を常温付近まで加熱し、前記液滴の気化に伴う前記液滴の体積膨張により前記粉体の凝集を防止する、乾燥粉体の生成方法であって、前記液化ガスは液体窒素であり、前記液滴の体積は700乃至800倍に変化することを特徴とする、乾燥粉体の生成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記ノズル又はオリフィスから吐出される前記気体の流速は50乃至60m/sであることを特徴とする、前記方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、前記ノズル又はオリフィスから吐出される前記気体は加温された窒素ガスであることを特徴とする、前記方法。
【請求項4】
ノズル又はオリフィスから気体を吐出させ、前記ノズル又はオリフィスの下流に負圧域又は減圧域を生成する、噴霧ノズル又はベンチュリ−ノズルと、
前記噴霧ノズル又はベンチュリ−ノズルの下流に形成され、前記負圧域又は減圧域を囲繞する、乾燥室と、
液化ガスと粉体の懸濁液を収容する、原料ホッパーと、
前記原料ホッパーと前記負圧域又は減圧域の間に延在し、前記懸濁液を前記乾燥室内の前記負圧域又は減圧域に供給する、投入ノズルと、
前記粉体を捕捉するフィルターを備え、前記フィルターを介して前記乾燥室内の気体を吸引する、集塵機と、
前記集塵機に吸引された前記気体の一部を外部に排出する、排気バルブと、
前記集塵機に吸引された前記気体の一部を前記噴霧ノズル又はベンチュリ−ノズルに還流させる、第一の還流通路と、
前記第一の還流通路を流れる前記気体を加圧し、前記噴霧ノズル又はベンチュリ−ノズルに供給する、噴霧ブロワと、
前記噴霧ブロワが前記噴霧ノズル又はベンチュリ−ノズルに供給する前記気体を加熱する、昇温ヒータと、
を有する、乾燥粉体の生成装置において、
前記乾燥室の下部に粉体回収室を画成し、前記集塵機に吸引された前記気体の一部を前記粉体回収室よりも上方位置で前記乾燥室に還流させる第二の還流通路を設け、前記第二の還流通路に、前記第二の還流通路を流れる前記気体を加圧し、前記乾燥室に供給する還流ファンと、前記第二の還流通路から前記乾燥室に供給される前記気体を加熱する、昇温ヒータを設けたことを特徴とする、乾燥粉体の生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガス中に懸濁した粉体を凝集しないように乾燥させて乾燥粉体を生成する、乾燥粉体の生成方法及び装置に関するものである。本発明は、また、この乾燥粉体の生成方法及び装置に使用される噴霧装置組立体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2003−1129号公報は、液化不活性ガス内に被粉砕物を分散させた懸濁液を媒体撹拌ミルで粉砕し、その後、液化不活性ガスを気化させて乾燥粉末を得ることを特徴とする、微粉末の製造方法を開示する。このように液化ガス中に懸濁させた粉体を乾燥粉として回収するには、特別な乾燥工程を適用することなく、懸濁液を大気中に静置し、あるいは、懸濁液を物理的に撹拌する等により、液化ガスを蒸発させていた。しかしながら、一般に、液化ガスの沸点は極低温であるため、液化ガスが蒸発するときに粉体が低温になる。この結果、粉体に大気中の水分が結露して、粉体の凝集を生じる。
【0003】
特表2000―515901号公報の請求項7には、まず結合剤および架橋剤および場合により他の常用の助剤および添加剤を液化ガスまたは超臨界ガス、有利には超臨界二酸化炭素に溶解または懸濁させ、引き続き噴霧することにより粉体粒子を製造することにより粉末塗料が得られる請求項1から6までのいずれか1項記載の粉末塗料が記載されている。また、同公報の請求項11には、請求項7記載の粉末塗料の製造方法において、まず結合剤および架橋剤および場合により他の常用の助剤および添加剤を液化ガスまたは超臨界ガス、有利には超臨界二酸化炭素に溶解または懸濁させ、引き続き噴霧することにより粉体粒子を製造することを特徴とする粉末塗料の製造方法が記載されている。これらの請求項に記載されているように、これらの発明は結合剤、架橋剤、助剤、添加剤等の複数の成分(粒子)を凝集させた複合粒子を製造することを目的としている。粉末塗料が機能するためには、これらの複数の成分(粒子)が凝集体として存在することが必要であるから、これらの発明によって製造される粉体粒子は凝集粒子である。
【0004】
なお、凝集粒子を製造するための方法としてスプレードライ法が存在する。スプレードライ法の出発物質は溶液又は懸濁液であり、これらの溶液又は懸濁液を噴霧することにより多数の液滴を生成し、各液滴に閉じ込められた成分(粒子)を凝集させ、凝集体として造粒する。この意味で、スプレードライ法を実施するための装置は造粒機ということができる。ここで造粒される凝集体の寸法は液滴寸法に依存する。
【0005】
特表平8−503163号公報の請求項15には、また、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法を実施するための装置において、1)粉末貯蔵容器または粉末懸濁用の絶縁された貯蔵容器、2)噴霧ノズル、3)貯蔵容器を噴霧ノズルと結合する、場合により熱絶縁された導管、および4)液体ガス滴の蒸発に必要な熱量を供給するための装置を有する、粉末塗装を形成する装置が記載されている。同公報の請求項1乃至14に記載されている発明は粉末塗装を形成する方法であるから、請求項15の4)液体ガス滴の蒸発に必要な熱量を供給するための装置によって供給された熱量は、粉末塗料の複数の成分(粒子)を各液滴内で凝集させるために使用されると解される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003―1129号公報
【特許文献2】特表2000―515901号公報
【特許文献3】特表平8―503163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、液化ガス中に懸濁した粉体を凝集しないように乾燥させて乾燥粉体を生成する、乾燥粉体の生成方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の乾燥粉体の生成方法は、ノズル又はオリフィスから気体を吐出させ、前記ノズル又はオリフィスの下流に負圧域又は減圧域を生成し、前記負圧域又は減圧域に液化ガスと粉体の懸濁液を供給することにより前記懸濁液の液滴を多数生成し、前記液滴を加熱して前記液滴中の前記液化ガスを気化させ、前記粉体を常温付近まで加熱し、前記液滴の気化に伴う前記液滴の体積膨張により前記粉体の凝集を防止する、乾燥粉体の生成方法であって、前記液化ガスは液体窒素であり、前記液滴の体積は700乃至800倍に変化することを特徴とする。
【0011】
本発明の乾燥粉体の生成方法は、また、前記ノズル又はオリフィスから吐出される前記気体の流速が50乃至60m/sであることを特徴とする。
【0012】
本発明の乾燥粉体の生成方法は、また、前記ノズル又はオリフィスから吐出される前記気体は加温された窒素ガスであることを特徴とする。
【0013】
本発明の乾燥粉体の生成装置は、ノズル又はオリフィスから気体を吐出させ、前記ノズル又はオリフィスの下流に負圧域又は減圧域を生成する、噴霧ノズル又はベンチュリ−ノズルと、前記噴霧ノズル又はベンチュリ−ノズルの下流に形成され、前記負圧域又は減圧域を囲繞する、乾燥室と、液化ガスと粉体の懸濁液を収容する、原料ホッパーと、前記原料ホッパーと前記負圧域又は減圧域の間に延在し、前記懸濁液を前記乾燥室内の前記負圧域又は減圧域に供給する、投入ノズルと、前記粉体を捕捉するフィルターを備え、前記フィルターを介して前記乾燥室内の気体を吸引する、集塵機と、前記集塵機に吸引された前記気体の一部を外部に排出する、排気バルブと、前記集塵機に吸引された前記気体の一部を前記噴霧ノズル又はベンチュリ−ノズルに還流させる、第一の還流通路と、前記第一の還流通路を流れる前記気体を加圧し、前記噴霧ノズル又はベンチュリ−ノズルに供給する、噴霧ブロワと、前記噴霧ブロワが前記噴霧ノズル又はベンチュリ−ノズルに供給する前記気体を加熱する、昇温ヒータとを有する、乾燥粉体の生成装置において、前記乾燥室の下部に粉体回収室を画成し、前記集塵機に吸引された前記気体の一部を前記粉体回収室よりも上方位置で前記乾燥室に還流させる第二の還流通路を設け、前記第二の還流通路に、前記第二の還流通路を流れる前記気体を加圧し、前記乾燥室に供給する還流ファンと、前記第二の還流通路から前記乾燥室に供給される前記気体を加熱する、昇温ヒータを設けたことを特徴とする。
【0017】
本発明の噴霧装置組立体は、上面及び側面が閉鎖され、下面が開放した、中空容器と、前記中空容器の前記上面の外部に気体の流入口を有し、前記中空容器の内部空間に前記気体の吐出口を有するように、前記中空容器に取付けられた、噴霧ノズル又はベンチュリ−ノズルと、前記中空容器の外部から前記中空容器の前記側面に固定され、液化ガスと粉体の懸濁液を収容する、原料ホッパーと、前記原料ホッパーに収容された前記懸濁液を前記噴霧ノズル又はベンチュリ−ノズルの前記吐出口の下部に供給するように、前記中空容器に取付けられた、投入ノズルとを有する。
【0018】
本発明の噴霧装置組立体は、また、前記噴霧ノズル又はベンチュリ−ノズルは、前記気体の流入口から前記気体の流出口に向かって縮径するテーパー状の通路を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の乾燥粉体の生成方法によれば、液化ガス中に懸濁状態で存在する粒子を、その形態を可能な限り維持したまま気相に取り出すことができる。換言すると、粒子が存在する液相だけを変化(気化)させることを意図している。すなわち、液化ガスと粒子の懸濁液を微細な液滴状に噴霧することによって、瞬時に液化ガスを気化させ、このときの急激な体積膨張のエネルギーを利用して、粒子の凝集を防止し、これらの粒子を可能な限り液相中に存在した形態のまま回収することができる。ここで、体積膨張の例として、液化ガスが液体窒素の場合には、約650倍の体積変化を示す。また、液体窒素の体積膨張に要する時間単位は、ミリ秒で計測されるのが適当である。本発明の乾燥粉体の生成方法は、液相中に溶解した物質から新たな粉末を形成することや、二次粒子(凝集体)を生成することを意図していない。本発明の乾燥粉末の生成方法は、乾燥凝集を防止して、個々の粒子を液相中における形態に出来るだけ近い形態で回収することを意図している。
【0020】
したがって、本発明の乾燥粉体の生成方法によれば、液化ガス中に懸濁した粉体を懸濁液(スラリー)の状態で噴霧することにより、懸濁液の微小な液滴を多数生成し、これらの液滴を加熱して液滴中の液化ガスを瞬時のうちに気化させることができる。これにより、乾燥時間を短縮することができる。また、粉体を常温付近まで加熱し、液滴の気化に伴う液滴の体積膨張により、粉体の凝集を防止することができるから、凝集した粉体を粉砕する更なる工程を経ることなく、乾燥した粉体を直ちに得ることができる。ここに常温とは摂氏5乃至35度をいうが、空気中の水分が粉体に結露することを防止すれば凝集体の生成を防ぐことができるのであるから、凝集体の生成を防止するには、この常温の温度範囲に限らず、粉体を本発明方法を実施する場所における室温程度に加熱しておけば良いことがわかる。
【0021】
また、本発明の乾燥粉体の生成装置によれば、外部から閉じられた密封空間で粉体の乾燥を行うことができるから、乾燥粉体の汚染を防止することができる。また、液化ガスとして液体窒素を使用すると、窒素雰囲気内で粉体の乾燥を行うことができるから、粉体の酸化を防止することができる。更に、本発明の乾燥粉体の生成装置は、噴霧ブロワが噴霧ノズルに供給する気体を加熱する昇温ヒータを有するから、液化ガスを気化させる温度を任意に設定することができる。
【0022】
また、本発明の乾燥粉体の生成装置は、乾燥室から吸引された気体の一部を粉体回収室よりも上方位置で乾燥室に還流させる第二の還流通路を設け、この還流通路に、第二の還流通路を流れる気体を加圧して乾燥室に供給する還流ファンを設ければ、第二の還流通路から乾燥室に流入した気体が噴霧された液滴を乾燥室の室温で下方から加温するから、多数の液滴をより均一に加熱することができる。そして、第二の還流通路に昇温ヒータを設置すれば、噴霧された液滴を任意の温度で下方から加熱することができる。
【0023】
また、本発明の噴霧装置組立体は、ハウジングを構成する中空容器と、噴霧ノズル又はベンチュリ−ノズルと、原料ホッパーと、投入ノズルとを一体化し、モジュール化したから、種々の処理能力を有する乾燥粉体の生成装置に容易に取り付けることができる。
【0024】
本発明の乾燥粉体の生成方法及び装置並びに噴霧装置組立体の具体的な形態は、図面を参照して説明する以下の実施例の記述から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明の乾燥粉体の生成方法を説明するための模式図である。
図2図2(A)は、本発明の乾燥粉体の生成方法によって液体ガスの液滴中の液化ガスが急激に気化し、この液滴中の粒子が凝集することなく乾燥粒子として存在する状態を表す模式図であり、図2(B)は、一般的なスプレードライ法によって生成された液滴から、この液滴中の溶媒を気化させたとき、この液滴中の粒子や有効成分が凝集体として造粒された状態を表す模式図である。
図3図3は、本発明の乾燥粉体の生成装置の一実施例の構成図である。
図4図4は、本発明の乾燥粉体の生成装置のより具体的な構成を示す図である。
図5図5は、本発明の乾燥粉体の生成装置の一実施例の正面図である。
図6図6は、本発明の噴霧装置組立体の一実施例の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の乾燥粉体の生成方法及び装置並びに噴霧装置組立体を立型の装置を例にとって説明する。
【実施例】
【0027】
図1及び図2(A)に示すように、本発明の乾燥粉体の生成方法は、噴霧装置組立体1の噴霧ノズル又はベンチュリ−ノズル2のノズル又はオリフィス3から気体Gを吐出させ、ベンチュリー効果によってノズル又はオリフィス3の下流に負圧域又は減圧域4を生成する。そして、この負圧域又は減圧域4に原料ホッパー5から、投入ノズル6を介して、液化ガスLGと粉体Pの懸濁液Sを供給することにより、懸濁液Sの液滴S1を多数生成する。次いで、これらの液滴S1は気体Gによって加熱され、液滴S1中の液化ガスLGを気化させる。液滴S1の気化に伴って液滴S1は急激に体積膨張し、この体積膨張のエネルギーを利用して粉体Pの凝集を防止する。粉体Pは、また、気体Gによって常温付近まで加熱される。これにより、粉体Pの周囲の気体中の水分が粉体Pに結露することが防止される。図1中、参照番号7は、噴霧装置組立体1のハウジングを構成する中空容器を示し、参照番号8は、中空容器7の支持板である。支持板8には開口9が形成されている。また、図1中、参照番号10は、原料ホッパー5から投入ノズル6を介して負圧域又は減圧域4に供給された液化ガスLGと粉体Pの懸濁液Sが、多数の微細な液滴S1となり、これらの液滴S1が加熱されて急激に体積膨張し、下方へ向かって移動するときの流れの外形線を示す。
【0028】
図1及び図2(A)に示すように、液化ガスLGと粒子Pの懸濁液Sを微細な液滴S1の形態に噴霧することによって、瞬時に液化ガスLGを気化させ、このときの急激な体積膨張のエネルギーを利用して、粒子Pの凝集を防止する。液化ガスが液体窒素の場合には、例えば、ミリ秒間に約650倍の体積変化を示す。液滴S1の体積は約700乃至800倍に変化する場合がある。また、ノズル又はオリフィス3から吐出される気体Gの流速は、例えば、約50乃至60m/sである。
【0029】
なお、図2(B)は、一般的なスプレードライ法によって生成された液滴Dから、この液滴D中の溶媒Eを気化させたとき、この液滴D中の粒子P1や有効成分P2が凝集体Cとして造粒された状態を表す模式図である。
【0030】
図3は、本発明の乾燥粉体の生成装置11の概略構成を示す。乾燥粉体の生成装置11は、ノズル又はオリフィス3から気体Gを吐出させ、ノズル又はオリフィス3の下流に負圧域又は減圧域4を生成する、噴霧ノズル又はベンチュリ−ノズル2と、噴霧ノズル又はベンチュリ−ノズル2の下流に形成され、負圧域又は減圧域4を囲繞する、乾燥室12と、液化ガスLGと粉体Pの懸濁液Sを収容する、原料ホッパー5と、原料ホッパー5と負圧域又は減圧域4の間に延在し、懸濁液Sを乾燥室12内の負圧域又は減圧域4に供給する、投入ノズル6と、粉体Pを捕捉するフィルター13を備え、フィルター13を介して乾燥室12内の気体Gを吸引する、集塵機14と、集塵機14に吸引された気体Gの一部を外部に排出する、排気バルブ15と、集塵機14に吸引された気体Gの一部を噴霧ノズル又はベンチュリ―ノズル2に還流させる、第一の還流通路16と、第一の還流通路16を流れる気体Gを加圧し、噴霧ノズル又はベンチュリ−ノズル2に供給する、噴霧ブロワ17と、噴霧ブロワ17が噴霧ノズル又はベンチュリ―ノズル2に供給する気体Gを加熱する、昇温ヒータ18を有する。乾燥粉体の生成装置11は、また、乾燥室12の下部に粉体回収室19が画成されている。乾燥粉体の生成装置11には、更に、集塵機14に吸引された気体Gの一部を粉体回収室19よりも上方位置で乾燥室12に還流させる第二の還流通路20が設けられている。そして、第二の還流通路20には、第二の還流通路20を流れる気体Gを加圧し、乾燥室12に供給する還流ファン21と、第二の還流通路20から乾燥室12に供給される気を加熱する昇温ヒータ22が設けられる。このように、乾燥粉体の生成装置11によれば、外部から閉じられた密封空間で粉体の乾燥を行うことができるから、乾燥粉体の汚染を防止することができる。
【0031】
図4及び5は、立型の乾燥粉体の生成装置11のより具体的な構成を示す図である。図4には、噴霧装置組立体1、噴霧ノズル又はベンチュリ−ノズル2、原料ホッパー5、投入ノズル6、噴霧装置組立体1のハウジングを構成する中空容器7、フィルター13、集塵機14の排気ファン14A、噴霧ブロワ―17、昇温ヒーター18、回収ボックス19が示され、これらの構成要素に付記された矢印によって、気体(窒素ガス)G、懸濁液S、乾燥粉体Pの移動方向が示されている。
【0032】
図5には、図4に示された乾燥粉体の生成装置11の構成要素を組み付けた立型の装置23が示されている。図5には、噴霧装置組立体1、噴霧ノズル又はベンチュリ−ノズル2、原料ホッパー5、投入ノズル6、噴霧装置組立体1のハウジングを構成する中空容器7、乾燥室12と回収室(回収ボックス)19を有するホッパー24、フィルター13、集塵機14、排気ファン14A、排気バルブ15、第一の還流通路16、噴霧ブロワ―17、昇温ヒーター18がコンパクトに組み付けられている。図5中、参照番号10は、原料ホッパー5から投入ノズル6を介して負圧域又は減圧域4に供給された液化ガスLGと粉体Pの懸濁液Sが、多数の微細な液滴S1となり、これらの液滴S1が加熱されて急激に体積膨張し、下方へ向かって移動するときの流れの外形線を示す。
【0033】
図6は、モジュール化された噴霧装置組立体1の一実施例の縦断面図である。噴霧装置組立体1は、上面7A及び側面7を閉鎖し、下面7Cを開放した、中空容器7と、中空容器7の上面7Aの外部に気体Gの流入口2Aを有し、中空容器7の内部空間7Dに気体Gの吐出口2Bを有するように、中空容器7に取付けられた、噴霧ノズル又はベンチュリ−ノズル2と、中空容器7の外部から中空容器7の側面7Bに固定され、液化ガスLGと粉体Pの懸濁液Sを収容する、原料ホッパー5と、原料ホッパー5に収容された懸濁液Sを噴霧ノズル又はベンチュリ−ノズル2の吐出口2Bの下部に供給するように、中空容器7に取付けられた、投入ノズル6を有する。そして、噴霧ノズル又はベンチュリ−ノズル2は、気体Gの流入口2Aから気体Gの流出口2Bに向かって縮径するテーパー状の通路2Cを有する。このように、噴霧装置組立体1は、ハウジングを構成する中空容器7と、噴霧ノズル又はベンチュリ−ノズル2と、原料ホッパー5と、投入ノズル6とを一体化し、モジュール化したから、種々の処理能力を有する乾燥粉体の生成装置に容易に取り付けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によれば、液化ガス中に懸濁状態で存在する粒子を短時間で乾燥粒子として回収することが可能である。そして、この乾燥粒子は凝集を生じない。よって、凝集した粉体を粉砕する更なる粉砕工程が不要になる。
【符号の説明】
【0035】
1 噴霧装置組立体
2 噴霧ノズル又はベンチュリ−ノズル
3 ノズル又はオリフィス
4 負圧域又は減圧域
5 原料ホッパー
6 投入ノズル
7 中空容器
8 支持板
9 開口
10 原料ホッパーから投入ノズルを介して負圧域又は減圧域に供給された液化ガスと粉体の懸濁液が、多数の微細な液滴となり、これらの液滴が加熱されて急激に体積膨張し、下方へ向かって移動するときの流れの外形線
図1
図2
図3
図4
図5
図6