【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、本明細書の導入部である技術分野の項に記載した形式のフィーダインサートであって、第1の成形要素と第2の成形要素が互いに対して入れ子式に動くことができ且つ心出し軸線(centring axis)に沿って位置決め可能な心出しピン(centring pin)によって位置決めされるよう設計され、第1の成形要素及び第2の成形要素により画定されるフィーダキャビティが、心出し軸線の水平配置の場合にフィーダキャビティの主容積フラクションを心出し軸線の上方に位置決めすることができるよう設計されていることを特徴とするフィーダインサートによって本発明の課題を解決する。
【0011】
本発明は、かくして、垂直形鋳造設備、例えばデーアイエスアー・インダストリーズ・アー/エス製のDisamatic鋳造機械を用いて製造される垂直に分離可能な鋳造用金型で金属を鋳造するために用いられるのに適したフィーダインサートに関する。フィーダインサートは、液体金属を受け入れるフィーダキャビティを画定する少なくとも1つの第1の成形要素及び少なくとも1つの第2の成形要素を有する。第1の成形要素は、液体金属のための通路開口部を有し、この通路開口部は、通常、金型パターン又は回動可能な金型プレートへの取り付けに役立つ。金属を鋳造用金型中に注ぎ込んでいるとき、液体金属は、通路開口部を経てフィーダインサート中に入り、次に、液体金属は、縮みプロセス中、フィーダキャビティから逆流して通路開口部を通って鋳造用金型中に流入する(鋳物が完全に凝固するまで)。代表的には通路開口部の中心軸線と一致するフィーダインサートの心出し軸線は、特にフィーダインサートが垂直形鋳造設備で用いられる場合(即ち、心出し軸線が水平の向きを取ったとき)、第1の成形要素の中央領域に対して下方にオフセットするように配置される。かくして、鋳造用金型とフィーダキャビティとの間の金属導通連結部は、フィーダインサートの下方領域内に配置され、その結果、フィーダキャビティの主容積フラクションが心出し軸線の上方に(かくして、代表的には、それと同時に通路開口部の中心軸線の上場に)位置決めされるようになる。本発明のフィーダインサートの第1の成形要素及び第2の成形要素は、部分的に互いに対して入れ子式に動くことができるよう設計されており、その結果、成形要素のうちの一方、好ましくは第2の成形要素が、フィーダインサートを最終的には事実上完全に包囲し又は封入する金型材料の押し固め中、主として第2の成形要素に作用する圧力に屈従することができるようになっている。互いに対する入れ子式変位中、相対運動が第1の成形要素と第2の成形要素との間に生じ、この場合、第2の成形要素は、好ましくは、心出し軸線の方向には一般的には変形可能ではない第1の成形要素上に部分的に押され、第1の成形要素は、その取り付け領域及びこれに形成された通路開口部により、金型パターン又は回動可能な金型プレートに当接し又はこれによって支持される。
【0012】
本発明は、第1及び第2の成形要素が少なくとも一部にわたって互いに対して入れ子式に動くことができる入れ子式フィーダインサートを用いると、成形要素相互間の摩擦により、適度に高い圧力を第1の成形要素の取り付け領域と(例えば)金型パターンとの間に発生させることができ、その結果、金型パターンに対する第1の成形要素の確実な当接を金型材料の押し固め中に保証することができるという認識に立脚している。第1の成形要素に対する第2の成形要素の可動性により、更に、第1の成形要素上に圧縮性の取り付け領域を備えたフィーダインサートとは対照的に、第2の成形要素は、過度の押し固め圧力がフィーダインサートに作用した場合に金型パターンの方向に容易に撓むことができるようになる。同様に、結果的に比較的高い圧力がフィーダインサートの小さい側部に作用するようにする金型パターンに向かって動く第1の成形要素に起因して例えば先行技術において見受けられる第1の成形要素と例えば金型パターンとの間の金型材料の強力な押し固めは、かくして、有利には回避される。第1の成形要素が金型パターンに対して固定されていることにより、押し固めプロセス中におけるフィーダインサートの破壊の恐れがかなり減少する。かくして、第1及び第2の成形要素の肉厚は、これらがフィーダキャビティ内の金属を液体状態に保つために所要の断熱又は熱的出力を保証することができるよう選択される。さらに、フィーダインサートの使用中、心出し軸線の上方に位置決めされる液体金属を受け入れるその容積フラクションを備えたフィーダキャビティの好ましい構成により、凝固及び製造されるべき鋳物の関連の縮みの際、フィーダキャビティ内には、鋳造用金型の方向に流れることができる適量の液体金属が存在するようになる。
【0013】
本発明の別の観点は、本発明のフィーダインサート(上述した又は後述する)の第1又は第2の成形要素として用いられる成形要素に関する。本発明のフィーダインサートの第1又は第2の成形要素として用いられる本発明に従って設計された成形要素により、確実な封止が第1の成形要素と例えば金型パターン又は回動可能な金型プレートとの間に保証されるのは、金型材料の押し固め中の場合であり、フィーダインサートは、高い押し固め圧力に容易に耐え、かくして高レベルの鋳物品質を保証することができる。それと同時に、心出し軸線の上方に形成される容積フラクションにより、液体状態に保たれるべき金属のための比較的大きなリザーバが形成される。
【0014】
別の実施形態では、本発明の成形要素の入れ子式設計の代替手段として又はこれに加えて、第1及び第2の成形要素により画定されるフィーダキャビティを換気する少なくとも1つの換気開口部が第1の成形要素上に配置される(本発明のフィーダ要素の一構成要素として)。換気開口部は、心出し軸線の水平配置の場合、心出し軸線の上方に第1の成形要素に配置され又は位置決めされるべきであり、それにより、鋳造プロセスを高い速度で実施することができ、この場合、フィーダの内部の空気の堆積に起因してフィーダに不適切に液体金属が充填される恐れがない。
【0015】
本発明の別の観点は、本発明のフィーダインサートを製造するためのキット(上述した又は後述する)に関し、このキットは、第1の成形要素及び第2の成形要素を含む。かくして、この種のキットは、本発明のフィーダインサートを形成するよう組み立て可能な第1の成形要素と第2の成形要素を含む。この場合、所与の第1の成形要素を異なる設計の第2の成形要素と組み合わせることができ、所与の第2の成形要素を異なる設計の第1の成形要素と組み合わせることができる。
【0016】
本発明のフィーダインサートでは、心出しピンを位置決めするために、第2の成形要素上に、円錐形をなして延びる壁部分及び/又はピン先端部のための円筒形又は非円筒形凹部が設けられる。第2の成形要素上に形成される壁部分及び心出しピンのピン先端部のための凹部(好ましくは円筒形の凹部)によって、心出しピンへの単純化された取り付け又は金型パターンへのフィーダインサートの取り付けが達成される。好ましくは、少なくとも1つの円錐形をなして延びる壁部分及び凹部は、第2の成形要素の内側コーナー部上に形成される。円筒形凹部が好ましくは心出し軸線に対して同心状に配置され、それにより、好ましくは垂直に分離可能な鋳造用金型と関連して用いられる金型パターン又は回動可能な金型プレートに対する心出しピンに取り付けられているフィーダインサートの正確な向きが保証される。凹部は、好ましくは、押し込み嵌め関係において、凹部中に挿入可能な心出しピン先端部の外側輪郭に一致し、対応の心出しピンは、好ましくは、本発明のキットに含まれる。
【0017】
フィーダキャビティを換気する換気開口部を第1の成形要素に更に設けることが好ましく、この換気開口部は、心出し軸線の水平配置の場合、心出し軸線の上方に位置決め可能である。換気開口部によって、有利には、フィーダインサートの作動中、液体金属が鋳造用金型内に注ぎ込まれてフィーダインサート中に入り又は進むと、液体金属がフィーダキャビティ内で上昇するのを阻止することができるエアクッションがフィーダキャビティ、特に心出し軸線の上方に位置決め可能な容積フラクション内に生じることがないようになる。かくして、フィーダキャビティは、凝固中の鋳物の縮み中、鋳造用金型中に逆流することができる適量の液体金属を収容する。換気開口部は、好ましくは、フィーダインサートの第1の成形要素に設けられ、金型パターン又は回動可能な金型プレートに対する第1の成形要素の位置は、金型材料の押し固め中、変化することがない。換気開口部は、例えば、壁部分に配置され又は形成され、この換気開口部は、使用中(即ち、鋳造中)フィーダキャビティを上向きの方向に画定し、換気開口部は、この場合好ましくは、フィーダインサートの心出し軸線に対して0°〜90°の角度をなして延びる中心軸線を有する。この場合、フィーダインサートの第1の成形要素の換気開口部の上述の形成は、第1の成形要素と第2の成形要素の互いに対する入れ子式可動性とは独立して考慮すべきでもある本発明の独立した観点である。かくして、本発明の別の独立した観点は、垂直に分離可能な鋳造用金型で金属を鋳造するために用いられるフィーダインサートに関し、このフィーダインサートは、液体金属を受け入れるフィーダキャビティを画定し且つ中心軸線に沿って位置決め可能な心出しピンによって位置決めされるよう設計された第1の成形要素及び第2の成形要素を有し、第1の成形要素は、液体金属のための通路開口部を有し(この通路開口部の中心軸線は、好ましくは、心出し軸線と一致する)、第1の成形要素は、フィーダキャビティを換気する換気開口部を更に有し、心出し軸線の水平配置の場合、換気開口部は、好ましくは、心出し軸線の上方に位置決めされるのが良く、フィーダキャビティは、好ましくは、心出し軸線の水平配置の場合、フィーダキャビティの主容積フラクションを心出し軸線の上方に位置決めすることができるよう設計される。本発明のこの独立した観点をそれぞれ本発明の他の観点と組み合わせることができ、対応の明細書部分に記載されている観点は、これに対応して好ましい組み合わせに関して当てはまる。代替的に又は追加的に、換気開口部は、フィーダインサートの第2の成形要素に設けられる。
【0018】
換気開口部は、換気ダクトの形態をしていることが好ましく、この場合、換気ダクトは、好ましくは、部分的に又はその全長にわたり、心出し軸線に平行に延びる。フィーダインサートが垂直形鋳造設備で用いられているときに少なくとも部分的に水平に延びる換気ダクトによって、鋳造プレート上に配置された構造的部分又は取り付け部分への追加の結合が容易に可能である。この種の構造的部分又は取り付け部分を回動可能な金型プレート上に配置し、又、かかる構造的部分又は取り付け部分が金型プレートの一部分に沿って延びる金型部分を形成することが好ましく、その結果、好ましくは、鋳造作業中、回動可能な金型プレートに好ましくは垂直に延びる換気ダクトが設けられる。したがって、取り付け部分によって、製造されるべき鋳造用金型内で好ましくは垂直に延びる換気ダクトのための金型部分が形成され、それと同時に、金型プレートへの機械的結合が作られ、それにより、本発明のフィーダインサートは、金型パターン及び金型プレートに対して定位置に更に固定される。さらに、ダクトとしての換気開口部の構成により、鋳造プロセス中、フィーダインサート内に位置する空気の迅速な逃げ出しが保証される。
【0019】
第2の成形要素が発熱性フィーダ材料で作られ又は少なくとも部分的に発熱性フィーダ材料から成ると共に/或いは第1の成形要素が発熱性フィーダ材料で作られ又は少なくとも部分的に発熱性フィーダ材料から成ることを特徴とする本発明のフィーダインサートが好ましい。発熱性フィーダ材料の使用により、高レベルの効率及び特に鋳造プロセス中における良好な封止供給が達成される。と言うのは、発熱性フィーダ材料によって、フィーダインサート内に位置する金属を比較的長い期間にわたって液体状態に保つことができるからである。例えば第1の成形要素の外側上をこれに沿って動く第2の成形要素の領域も又、発熱性フィーダ材料に代えて断熱性フィーダ材料で作られるのが良く、この断熱性フィーダ材料は、有利には、フィーダインサートからの熱の放出を減少させる。しかしながら、結合剤を用いて結合された鋳物砂、特に石英砂をフィーダ材料として用いることがただ単に可能である。しかしながら、成形要素の少なくとも幾つかの部分を形成するために発熱性材料を用いることが好ましい場合が多い。フィーダインサートの或る特定の領域は、互いに異なる特性(発熱性又は断熱性)を備えた互いに異なる材料で作ることができる。変形例として、成形要素は、各々、発熱性及び断熱性成分を含む均一の材料混合物で作られても良い。
【0020】
或る特定の目的のため、第1の成形要素が断熱性フィーダ材料で作られ又は少なくとも部分的に断熱性フィーダ材料から成ると共に/或いは第2の成形要素が断熱性フィーダ材料で作られ又は少なくとも部分的に断熱性フィーダ材料から成ることを特徴とする本発明のフィーダインサートが有利である。フィーダインサートの変形実施形態では、第2の成形要素が発熱性フィーダ材料で作られ又は少なくとも部分的に発熱性フィーダ材料から成ると共に/或いは第1の成形要素が発熱性フィーダ材料から成ることはなく、この第1の成形要素が好ましくは、断熱性フィーダ材料で作られ又は少なくとも部分的に断熱性フィーダ材料から成り、或いは金属、プラスチック、厚紙(cardboards)、これらの混合物及びこれらの複合材料から成る群から選択された材料で作られ、又はこの材料から成ることが好ましい。本発明のフィーダインサートの別の実施形態では、第2の成形要素は、断熱性フィーダ材料で作られ又は少なくとも部分的に断熱性フィーダ材料から成ると共に/或いは第1の成形要素が発熱性フィーダ材料で作られ又は少なくとも部分的に発熱性フィーダ材料から成り、或いは金属、プラスチック、厚紙、これらの混合物及びこれらの複合材料から成る群から選択された材料で作られ、又はこの材料から成る。
【0021】
市販のフィーダ材料に代えて、本発明のフィーダインサートの第1の成形要素は、好ましくは、金属、プラスチック、厚紙、これらの混合物及びこれらの複合材料から成る群から選択された他の材料で構成されても良い。
【0022】
本発明のフィーダインサートの別の変形実施形態では、第2の成形要素は、発熱性又は断熱性フィーダ材料で作られ又は少なくとも部分的に発熱性又は断熱性フィーダ材料から成ると共に/或いは第1の成形要素は、金属、プラスチック、厚紙、これらの混合物及びこれらの複合材料から成る群から選択された材料で作られ、又はこの材料から成る。第1の成形要素の材料として、かくして、オプションとして発熱性又は断熱性材料及び金属、プラスチック又は厚紙、又は混合物又は金属、プラスチック及び/又は厚紙で構成された複合材料を用いることが可能である。
【0023】
第2の成形要素を形成するために発熱性且つ断熱性フィーダ材料を用いることが好ましい。第1及び第2の成形要素に関する材料選択は、実際には、個別的に且つそれぞれ実行されるべき仕事に検討が加えられた状態で実施される。第1の成形要素に関する材料の選択は、本発明のフィーダインサートの特定の意図した使用がなんら協調を必要としない場合、第2の成形要素の材料の選択とは独立して実施できる。
【0024】
本発明のフィーダインサートの変形実施形態では、第1の成形部分は、好ましくは、ブレーカーコアを形成する。ブレーカーコアの使用は、特に、第1の成形部分又は構成材料が金属又は金属を含む第1の成形要素の部分要素の形成と関連して有利である。
【0025】
フィーダインサートの好ましい実施形態では、第1の成形要素は、一体となっており又は2つの組み立てられた部分要素で構成され、これら部分要素は、互いに位置的に安定し又は互いに対して入れ子式に動くことができ、第1の部分要素は、フィーダインサートのフットプリント表面を有し、第2の部分要素は、第2の成形要素に連結可能に設計されている。一体形態の成形要素の場合、金型パターン又は金型プレート及び第2の成形要素に対応した連結部分に取り付けられる取り付け領域は、単一の構造的部分から作られる。第1の成形要素の2部品形態の場合、連結領域は、1つの部分要素で作られ、フィーダインサートの取り付け領域は、好ましくは、金属スリーブ(別の部分要素としての)で作られる。欧州特許出願公開第2097193(A)号明細書に記載されているように、第1の部分要素は、出荷状態では、様々な程度で第2の部分要素中に押し込まれる管状要素であるのが、第1の実施形態の場合であり、この欧州特許出願公開を参照により引用し、その記載内容を本明細書の一部とする。幾つかの場合では、管状の第1の部分要素を出荷状態では第2の部分要素中に最大の程度までは押し込まず、その結果、第1の部分要素が後の時点で、例えば金型パターン又は回動可能な金型プレートへの対応のフィーダインサートの配置後であってフィーダインサートを最終的に事実上完全に包囲する金型材料の押し固めの際に、第2の部分要素中に更に押し込められるようにすることが有利である。変形実施形態では、管状の第1の部分要素と第1の成形要素の第2の部分要素との位置的に固定された連結部が提供される。この場合、2つの部分要素の運動は、可能ではなく又はもたらされない。本発明のこの有利な実施形態をそれぞれ本発明の独立した観点と組み合わせることができる。対応の明細書部分に記載されている観点は、これに対応してそれぞれ好ましい組み合わせに関して当てはまる。
【0026】
第1の成形要素は、金型パターン又は回動可能な金型プレートの方へ向き且つ好ましくは回動可能な金型プレートに対して平行に又は斜めに延びる表面を有する。好ましくは斜めに延びる表面と金型パターン又は金型プレートとの間の距離は、好ましくは、取り付け領域又はフィーダインサートの心出し軸線から進むにつれて少なくとも部分的に増大する。
【0027】
第1の成形要素及び/又は第2の成形要素上に、保持要素が配置されると好ましく、かかる保持要素によって、第1の成形要素及び第2の成形要素は、初期位置に保持され、この場合、保持要素は、入れ子式変位の際に(第1の成形要素と第2の成形要素を互いに対して入れ子式に動かしているときに)切り離され又は変形するよう設計されている。保持要素によって、第1の成形要素と第2の成形要素は、これらが金型パターン又は金型プレートに取り付けられているとき又は金型パターン又は金型プレート上に配置された心出しピンに押し付けられているときに互いに対して既定の配置状態に保持される。欧州特許出願公開第1184104(A)号明細書に開示されているように、保持要素は、好ましくは、それぞれの成形要素の一体形構成部品であり、この場合、保持要素は、これらそれぞれの成形要素の製作中に追加のステップなしでそれぞれの成形要素上に一体に形成される。例えば、内側輪郭又は外側輪郭から垂直に突き出た突出部、包囲状態で立設したリング又はピンである保持要素は、通常、各々、それぞれが関連の成形要素の残部に対して小さな連結表面しか備えていない。
【0028】
第1の成形要素は、好ましくは、第2の成形要素の内面部分に隣接して位置し又は当接し且つ成形要素の相互に内外の入れ子式運動中、第2の成形要素に対する第1の成形要素の側方傾動を阻止し又は妨害する外面部分を有する。第1の成形要素の外側表面部分又は外側輪郭上に且つ/或いは第2の成形要素の内側表面部分又は内側輪郭上に、好ましくは、案内表面が形成され、これら案内表面により、2つの成形要素は、有利には、互いに対して案内されると共に互いに対して直接摺動しあう。案内表面は、好ましくは、第1の成形部分と第2の成形部分の一様な相対運動を保証するよう設計され、その結果、好ましくは、金型材料の押し固め及び第2の成形要素の少なくとも一部分上においてこれに沿う第2の成形要素の結果として生じる運動中、第2の成形要素のつかえが阻止されるようになっている。この目的のため、第1及び第2の成形要素は、好ましくは、適度に広い案内表面又は適度な程度まで互いにオーバーラップした案内表面を有する。例えば互いに対して動くことができるよう保持されている成形要素の外側輪郭及び内側輪郭の表面領域上への案内表面の形成により、それぞれのコンポーネント上における案内表面の構造的に簡単な構成が実現される。案内表面が第2の成形要素の内側輪郭の表面領域上に形成された場合、第2の成形要素は、フィーダインサートの第1の成形要素上に押し嵌めされ、それにより、次に、第1の成形要素の一部分が第2の成形要素内に受け入れられる。2つの成形要素の相互の運動の程度は、この場合、特に垂直鋳造設備での押し固め中に金型材料に作用する押し固め圧力で決まる。内側輪郭と外側輪郭が互いに相互に直接摺動しあうことなく、第1の成形要素及び/又は第2の成形要素は、内側輪郭から外方に突き出又は外側輪郭から内方に突き出た案内リブを備えるのが良く、その結果、摺動案内が実現される。
【0029】
第1の成形要素は、金型プレートに対するフィーダインサートの所定の向きを達成すると共に/或いは維持するための手段として、好ましくは長円形、非円形、平べったくした円形、平べったくした長円形、三角形、五角形又は多角形から成る群から選択された非円形断面を備えた通路開口部及び/又は第2の心出しピンを受け入れる1つ又は2つ以上の追加の凹部又は開口部を有し、1つ又は2つ以上の凹部又は開口部は、好ましくは、心出し軸線に平行に延び且つ/或いは金型プレートの方へ向いた側部上に設けられた1つ又は2つ以上のスペーサを有することを特徴とする本発明のフィーダインサートが好ましい。例えば非対称又は非円形断面を有する通路開口部により、金型パターン又は回動可能な金型プレートに対するフィーダインサートの回転を阻止するための有利に働く手段を形成することが可能である。好ましくは非円筒形の形態をした通路開口部は、好ましくは、周囲全体にわたって、金型パターン又は金型プレート上に配置され且つフィーダインサートが取り付けられ又は押し付けられる心出しピンの外面に対応している。それと同時に、第1の成形要素は、好ましくは、一方の側が平べったくされた通路開口部を有し、その結果、フィーダインサートは、好ましくは、金型パターン又は金型プレートに取り付けられたときにたった1つの取り付け位置又は向きを取ることができる(キーロック原理)。これは、フィーダインサートが製造されるべき垂直に分離可能な鋳造用金型内で偶発的に不正確な向きを取るのを阻止し、事実、フィーダキャビティの主容積フラクションが好ましくは、フィーダインサートの使用中、心出し軸線(この場合、水平に延びる心出し軸線)の上方に位置決めされるようになる。本発明のこの有利な実施形態をそれぞれ本発明の独立した観点と組み合わせることができ、対応の明細書部分に記載されている観点は、これに対応してそれぞれ好ましい組み合わせに関して当てはまる。
【0030】
本発明のフィーダインサートは、好ましくは、金型プレートに対するフィーダインサートの所定の向きを達成すると共に/或いは維持する手段として、第2の心出しピンを受け入れる1つ又は2つ以上の追加の凹部又は開口部を有し、この場合、1つ若しくは2つ以上の凹部又は開口部は、好ましくは、心出し軸線に平行に延びる。第1の成形要素に少なくとも1つ又は2つ以上の追加の凹部又は開口部を形成することによって、少なくとも1つの第2の心出しピンのための受け口が作られ、それにより、心出し軸線及び金型パターン又は回動可能な金型プレートに対するフィーダインサートの位置的な安定性又は向きが有利には改善される。特に、第1の成形要素に設けられている追加の凹部又は開口部は、金型パターン又は回動可能な金型プレートの方へ向き、かかる追加の凹部又は開口部は、例えば、円錐形の形状を有する。かかる追加の凹部又は開口部は、好ましくは、心出し軸線に平行に延びる。第1の成形要素の外側部からフィーダキャビティ中に凹部又は開口部が延びることが好ましい。かくして、心出しピンへのフィーダインサートの有利な単一の取り付けが達成され、このピンは、同様に本発明に係るキットの一部であり、このキットは、本発明のフィーダインサート及び押し込み嵌めによりフィーダインサートを受け入れる心出しピンを含む。好ましくは、金型材料の押し固め後であり且つ開口部からの心出しピンの次の取り出し後、好ましくは心出し軸線に平行に延びる追加の凹部又は開口部は、それと同時に、フィーダキャビティからの換気を実現するのに役立つ。この目的のため、少なくとも1本の別の心出しピンを受け入れる追加の凹部又は開口部は、好ましくは、垂直形鋳造設備で用いられるフィーダインサートの場合又はフィーダインサートの心出し軸線の水平向きの場合、心出し軸線の上方に、好ましくは第1の成形要素上の考えられる最も高い位置に形成されるべきである。
【0031】
本発明のフィーダインサートの好ましい改造例では、金型パターン又は金型プレートの方へ向いた第1の成形要素の側には1つ又は2つ以上のスペーサが設けられ、スペーサは、例えば円筒形スタッド又はペグとして構成されている。スペーサは、金型材料の押し固め中、金型パターン又は金型プレートに取り付けられるべき第1の成形要素に対する金型プレート又は金型パターンの固定された位置決めを実現するという役目を有する。第1の成形要素が定位置に固定されると、第2の成形要素も同様に、その結果として特に例えば第1及び第2の成形要素の対応の案内表面が好ましくは互いに接触状態にあるので、定位置に固定される。金型プレートの方へ向いた第1の成形要素の側に設けられている1つ又は2つ以上のスペーサに代えて又はこれに加えて、第1の成形要素は、内側部に当接面を有するのが良く、この当接面は、好ましくは心出し軸線に平行に第1の成形要素の高さの例えば少なくとも1/2にわたって延び且つ金型プレート又は金型パターン上に配置されるのが良い心出しピンの支持面と接触関係をなして配置されるよう設計されると共に提供される。内側部の当接面は、好ましくは、ソフィット(soffit)表面の表面領域と整列関係をなし又は面一をなすよう形成される。かくして、第1の成形要素は、代替的に又は追加的に、内側部のその当接表面が心出しピン(通常、金型パターン又は金型プレートから垂直に突き出ている)に当接した状態で支持される。金型プレートに対するフィーダインサートの既定の向きを達成すると共に/或いは維持する上述の手段の全ては、各々、本発明のフィーダインサートに個々に又は互いに組み合わせ状態で設けられるのが良い。したがって、本発明のフィーダインサートは、上述の手段のうちの1つ、2つ又はそれどころか全てを有するのが良い。本発明のこの有利な実施形態をそれぞれ本発明の独立した観点と組み合わせることができ、対応の明細書部分に記載されている観点は、これに対応してそれぞれ好ましい組み合わせに関して当てはまる。
【0032】
第2の成形要素が通路開口部と反対側に位置したその端部(ピン先端部を受けるその端部)のところの内側に、フィーダキャビティをチャンバに分割する1つ又は2つ以上の一体に形成されたリブ又は壁部分を有する。内側部から突き出ると共に例えばいわゆるウィリアムズストリップ(Williams strip)又はウィリアムズウェッジ(Williams wedge)として構成されるリブ又は壁部分によって、フィーダインサートの心出し軸線の上方の領域における液体金属の表面上の鋳物表皮の時期尚早な形成が抑制され、それによりフィーダインサートの作用効果、特に液体金属を液体状態でフィーダインサート内に位置したままにするという作用効果が高められる。いずれの場合においても、フィーダキャビティ中に突き出る少なくとも1つのリブが第1の成形要素及び第2の成形要素に設けられることが好ましい。心出し軸線の水平配置の場合、これらリブは、第1及び第2の成形要素の心出し軸線の上方に配置されている内側壁部分上に配置された状態で好ましくは心出し軸線に平行に、好ましくはこれを通って延びる平面内において延びる。「ウィリアムズストリップ」又は「ウィリアムズウェッジ」という表示でも知られているリブは、金型材料の対応の圧縮又は押し固め及びフィーダインサートの2つの成形要素の関連の押し合いの場合に互いの頂部上に又は互いに上下に好ましくは一致して位置するようになる。1つ又は2つ以上のリブは、フィーダインサートのフィーダキャビティ中に挿入可能な別個に形成されたインレイ部分であるか或いは第1及び第2の成形要素の内側輪郭上に一体に形成された部分として形成されるかのいずれかであるのが良い。一体に形成されたリブが本発明の成形要素の鋳造中に作られ、このリブは、例えば、角柱形状を有し、リブは、本発明のフィーダインサートの表面上に配置され、このリブは、使用中(即ち、鋳造作業中)フィーダキャビティの上方端部のところに配置されるようになっている。
【0033】
本発明のキットは、好ましくは、第1の成形要素及び第2の成形要素だけでなく、フィーダインサートによって押し込み嵌め関係をなして受け入れられる心出しピンを含む。フィーダインサート(第1及び第2の成形要素で作られる)は、好ましくは、心出しピンに押し嵌めされるのが良く又は心出しピンに取り付けられるのが良い。フィーダインサートを受け入れ又は保持する心出しピンは、特に第1の成形要素の通路開口部のソフィット表面に合致する形状を備えた心出しピン足部を有する。心出しピン足部の断面は、通路開口部に対応して、好ましくは円筒形ではないように形成されるが、好ましくは長円形、非円形、平べったくした円形、平べったくした長円形、三角形、五角形又は多角形から成る群から選択される。このように、心出しピンとフィーダインサートの相互回転を阻止する手段が実現され、更に、心出しピン及び成形要素は、好ましくは、フィーダインサート及び心出しピンが互いに対して1つの位置しか取ることができないように設計され、この場合、第1の成形要素及び第1の成形要素に対応した第2の成形要素は、心出しピン上に押し嵌めされるのが良い(キーロック原理)。したがって、金型パターン又は金型プレート上におけるフィーダインサートの好ましい向きが保証され、不正確な取り扱いが阻止されるので有利である。形状の面で通路開口部に一致した心出しピン足部に加えて、心出しピンは、形状がピン先端部を受け入れる目的で第2の成形要素に設けられている凹部の内側輪郭に対応した心出し先端部を有する。
【0034】
本発明の別の観点は、回動可能な金型プレートを備えた設備で金属を鋳造する方法に関し、この方法は、以下のステップ、即ち、本発明のフィーダインサート(上述し又は後述する)を、心出しピンを備えた金型パターンに取り付けるステップを含み、金型パターンは、回動可能な金型プレート上又は心出しピンを備えた回動可能な金型プレート上に直接配置され、フィーダインサートが取り付けられた金型プレートを回動させてフィーダインサートの心出し軸線が水平の向きになり、次にフィーダキャビティの主容積フラクションが心出し軸線の上方に位置決めされるようにするステップを含む。この種の回動可能な金型プレートは、好ましくは、垂直に分離可能な鋳造用金型での鋳物の製造に用いられる。本発明は、とりわけ、この種のプロセスにおいて、心出し軸線を水平に差し向け、次に、液体金属が主として心出し軸線の上方に位置したフィーダキャビティの容積フラクション内で上昇することができるという認識に基づいている。鋳造作業中、通路開口部よりも高い位置にあるフィーダインサートのこの容積フラクションは、かくして、製造されるべき鋳物の凝固中、供給リザーバを形成し、液体状態に保たれている金属は、この供給リザーバから鋳造用金型中に流れることができる。好ましくは第1の成形要素に設けられている換気開口部により、鋳造用金型及びフィーダインサートの最適換気が鋳造プロセス中に保証され、その結果、鋳造用金型中への液体金属の注ぎ込みを比較的短時間で実施できるようになる。フィーダインサート内の供給容積部に悪作用を及ぼす不都合な空気の取り込みを換気開口部によってなくすことができるので有利である。鋳造作業中の換気を保証するため、例えば、回動可能な金型プレート上には、スペーサが設けられ、このスペーサは、第1の成形要素の少なくとも1つの換気開口部を通って垂直に突き出た心出しピン及びスペーサに結合された構造的部分又は取り付け部分を備えている。構造的部分又は取り付け部分は、好ましくは、同様に、垂直の向きに延びると共に(心出し軸線の水平配置の場合)、フィーダインサートからの空気の排出のための換気ダクトが後の鋳造作業中に位置決めされる金型プレート上の場所に配置される。
【0035】
上述の方法は、鋳造プロセスの一部を備えていることを特徴とし、この鋳造プロセスの一部は、好ましくは、別のステップとして、本発明のフィーダインサートを用意するステップ、金型材料を鋳造機械中に注ぎ込んでフィーダインサートの外壁を金型材料に接触させるステップ、金型材料を押し固めるステップを含み、第2の成形要素は、第1の成形要素に対して変位され、第1の成形要素の少なくとも一部に対する第2の成形要素の運動中、金型プレート又は金型パターンに対する第1の成形要素の位置は固定される。本発明のフィーダインサートは、好ましくは、手で又は機械によって金型パターン及び/又は金型プレートに取り付けられる。
【0036】
本発明を別の本発明の特徴を示す多数の例示の実施形態に基づき且つ添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。