特許第6402326号(P6402326)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6402326フィーダスリーブ、フィーダスリーブ用の成形要素及びフィーダスリーブを用いて金属を鋳造する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6402326
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】フィーダスリーブ、フィーダスリーブ用の成形要素及びフィーダスリーブを用いて金属を鋳造する方法
(51)【国際特許分類】
   B22C 9/08 20060101AFI20181001BHJP
   B22C 9/06 20060101ALI20181001BHJP
   B22D 27/04 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   B22C9/08 H
   B22C9/08 B
   B22C9/06 A
   B22D27/04 Z
【請求項の数】15
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2016-516132(P2016-516132)
(86)(22)【出願日】2014年5月27日
(65)【公表番号】特表2016-522753(P2016-522753A)
(43)【公表日】2016年8月4日
(86)【国際出願番号】EP2014060980
(87)【国際公開番号】WO2014191423
(87)【国際公開日】20141204
【審査請求日】2016年12月27日
(31)【優先権主張番号】102013209775.1
(32)【優先日】2013年5月27日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518273699
【氏名又は名称】ヘメックス ファウンドリー ソリューションズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162824
【弁理士】
【氏名又は名称】石崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】ベックマン ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ビーメル ミカエル
【審査官】 川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0211192(US,A1)
【文献】 特表2010−510071(JP,A)
【文献】 特開昭54−160517(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01184104(EP,A1)
【文献】 特表2008−531287(JP,A)
【文献】 特表2004−532737(JP,A)
【文献】 特開2009−006401(JP,A)
【文献】 特表2007−509760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 9/08
B22D 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造用金型で金属を鋳造するために用いられるフィーダインサート(2,2′,2″,2′″,2IV)であって、第1の成形要素(8,8′,8″,8′″,8IV)及び第2の成形要素(10)を有し、前記第1及び前記第2の成形要素は、
(i)互いに対して入れ子式に動くことができ、
(ii)液体金属を受け入れるフィーダキャビティ(30)を画定し、且つ
(iii)心出し軸線(28)に沿って位置決め可能な心出しピン(20,22′)によって位置決めされるように設計され、
前記第1の成形要素(8,8′,8″,8′″,8IV)は、前記液体金属用の通路開口部(18)を有する、前記フィーダインサートにおいて、
前記鋳造用金型は、垂直に分離可能であり、前記フィーダキャビティ(30)は、心出し軸線(28)の水平配置の場合、フィーダキャビティ(30)の主容積フラクションを前記心出し軸線の上方に位置決めできるよう設計されている、フィーダインサート。
【請求項2】
前記心出しピン(20,20′)の位置決めのため、前記第2の成形要素(10)上には、円錐形をなして延びる壁部分(70)及び/又はピン先端部(24)のための円筒形又は非円筒形の凹部(26)が設けられている、請求項1記載のフィーダインサート。
【請求項3】
前記フィーダキャビティ(30)を換気するための換気開口部(38)が前記第1の成形要素(8,8′,8″,8′″,8IV)に更に設けられ、前記換気開口部は、前記心出し軸線(28)の水平配置の場合、使用中に前記心出し軸線の上方に位置決めされる、請求項1又は2記載のフィーダインサート。
【請求項4】
前記換気開口部(38)は、換気ダクト(40)の形態をしており、前記換気ダクト(40)は、好ましくは、部分的に又はその全長にわたって、前記心出し軸線(28)に平行に延びている、請求項3記載のフィーダインサート。
【請求項5】
(i)前記第2の成形要素(10)は、発熱性フィーダ材料で作られ又は少なくとも部分的に発熱性フィーダ材料から成り、及び/又は、前記第1の成形要素(8,8′,8″,8′″,8IV)は、発熱性フィーダ材料で作られ又は少なくとも部分的に発熱性フィーダ材料から成り、或いは
(ii)前記第2の成形要素(10)は、断熱性フィーダ材料で作られ又は少なくとも部分的に断熱性フィーダ材料から成り、及び/又は、前記第1の成形要素(8,8′,8″,8′″,8IV)は、断熱性フィーダ材料で作られ又は少なくとも部分的に断熱性フィーダ材料から成り、或いは
(iii)前記第2の成形要素(10)は、発熱性フィーダ材料で作られ又は少なくとも部分的に発熱性フィーダ材料から成り、及び/又は、前記第1の成形要素(8,8′,8″,8′″,8IV)は、発熱性フィーダ材料から成っておらず、断熱性フィーダ材料で作られ又は少なくとも部分的に断熱性フィーダ材料から成り、若しくは、金属、プラスチック、厚紙、これらの混合物及びこれらの複合材料から成る群から選択された材料で作られ又は該材料から成り、或いは
(iv)前記第2の成形要素(10)は、断熱性フィーダ材料で作られ又は少なくとも部分的に断熱性フィーダ材料から成り、及び/又は前記第1の成形要素(8,8′,8″,8′″,8IV)は、発熱性フィーダ材料で作られ又は少なくとも部分的に発熱性フィーダ材料から成り、若しくは、金属、プラスチック、厚紙、これらの混合物及びこれらの複合材料で作られ又は該材料から成る、請求項1〜4のうちいずれか一に記載のフィーダインサート。
【請求項6】
前記第1の成形要素(8,8′,8″,8′″,8IV)は、一体となっており、若しくは2つの組み立てられた部分要素(48,49)で構成され、該部分要素は、互いに位置的に安定し又は互いに対して入れ子式に動くことができ、第1の部分要素(48)は、前記フィーダインサート(2,2′,2″,2′″)のフットプリント表面を有し、第2の部分要素(49)は、前記第2の成形要素(10)に連結可能に設計されている、請求項1〜5のうちいずれか一に記載のフィーダインサート。
【請求項7】
前記第1の成形要素(8,8′,8″,8′″,8IV)及び/又は前記第2の成形要素(10)上には、保持要素(16,16′)が配置され、該保持要素により、前記第1の成形要素(8,8′,8″,8′″,8IV)及び前記第2の成形要素(10)は、初期位置に保持され、前記保持要素(16,16′)は、相互に内外の入れ子式運動中、切り離され又は変形するよう設計されている、請求項1〜6のうちいずれか一に記載のフィーダインサート。
【請求項8】
前記第1の成形要素(8,8′,8″,8′″,8IV)は、前記第2の成形要素(10)の内面部分に隣接して位置し又は当接する外面部分を有し、この外面部分は、前記成形要素(8,8′,8″,8′″,8IV,10)の相互に内外の入れ子式運動中、前記第2の成形要素に対する前記第1の成形要素の側方傾動を阻止し又は妨害する、請求項1〜7のうちいずれか一に記載のフィーダインサート。
【請求項9】
前記第1の成形要素(8,8′,8″,8′″,8IV)は、金型プレート(6)に対する前記フィーダインサート(2,2′,2″,2′″,2IV)の所定の向きを達成すると共に/或いは維持するための手段として、
‐好ましくは長円形、非円形、平べったくした円形、平べったくした長円形、三角形、五角形又は多角形から成る群から選択された非円形断面を備えた通路開口部(18)
及び/又は、
‐第2の心出しピン(34,42,42′)を受け入れ、好ましくは前記心出し軸線(28)に平行に延びる1つ又は2つ以上の追加の凹部(26)
及び/又は、
‐前記金型プレート(6)の方へ向いた側部上に設けられた1つ又は2つ以上のスペーサ(44,44′)
を有する、請求項1〜8のうちいずれか一に記載のフィーダインサート。
【請求項10】
前記第2の成形要素(10)は、前記通路開口部(18)と反対側に位置したその端部のところの内側に、前記フィーダキャビティ(30)をチャンバの状態に分割する1つ又は2つ以上の一体に形成されたリブ(58′)又は壁部分を有する、請求項1〜9のうちいずれか一に記載のフィーダインサート。
【請求項11】
請求項1〜10のうちいずれか一に記載のフィーダインサート(2,2′,2″,2′″,2IVに適用され、このフィーダインサートの中の第1又は第2の成形要素として用いられる成形要素。
【請求項12】
請求項1〜10のうちいずれか一に記載のフィーダインサート(2,2′,2″,2′″,2IV)を製作するためのキットであって、請求項1〜10のうちいずれか一に記載の第1の成形要素(8,8′,8″,8′″,8IV)及び第2の成形要素(10)を含む、キット。
【請求項13】
キットであって、
‐請求項12記載のキットと、
‐前記フィーダインサート(2,2′,2″,2′″,2IV)によって確実なロック方式で受け入れられる心出しピン(20,20′)とを含む、キット。
【請求項14】
請求項1〜10のうちいずれか一に記載のフィーダインサート(2,2′,2″,2′″,2IV)の第1の成形要素(8,8′,8″,8′″,8IV)又は第2の成形要素(10)としての成形要素の使用。
【請求項15】
回動可能な金型プレートを備えた設備で金属を鋳造する方法であって、以下のステップ、即ち、
請求項1〜10のうちいずれか一に記載のフィーダインサート(2,2′,2″,2′″,2IV)を、心出しピン(20,20′)を備えた金型パターン(4)上に配置するステップを含み、前記金型パターンは、回動可能な金型プレート(6)上に配置され又は心出しピン(20,20′)を備えた回動可能な金型プレート(6,6′)上に直接配置され、
前記フィーダインサート(2,2′,2″,2′″,2IV)を載せた状態で前記金型プレート(6,6′)を回動させて、前記フィーダインサート(2,2′,2″,2′″,2IV)の前記心出し軸線(28)を水平の向きにし、そして、前記フィーダキャビティ(30)の主容積フラクションを前記心出し軸線(28)の上方に位置決めするステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直に分離可能な鋳造用金型で金属を鋳造するために用いられるフィーダインサートに関し、このフィーダインサートは、液体金属を受け入れるフィーダキャビティを画定する第1の成形要素及び第2の成形要素を有し、第1の成形要素は、液体金属のための通路開口部を有し、この第1の成形要素は、金型パターン又は回動可能な金型プレートに取り付け可能に設計されている。
【背景技術】
【0002】
フィーダとも呼ばれるフィーダインサートは、主として、鋳造用金型で金属を鋳造する製造プロセスで用いられる。フィーダインサートは、通常、キャビティを形成し、このキャビティ内において、フィーダインサートは、鋳造用金型を製造するために用いられる金型材料によって包囲される。液体金属を受け入れる鋳造用金型内に設けられた鋳造チャンバは、フィーダキャビティに通じる通路を有し、鋳造用金型内に注ぎ込まれた液体金属の量のうちの一部が、次に、鋳造プロセス中にこの通路内に入る。液体金属は、かくして、凝固プロセス(これは、鋳造金属の収縮と関連している)中に鋳造用金型中に流れて戻ることができるようフィーダに入ることが意図されており、その目的は、この場合、固相温度に達するまで鋳物の縮みを補償することにある。
【0003】
フィーダ内に入っている金属が逆流して出るようにするためには、フィーダインサート内の金属が液体状態のままであり、他方、鋳造用金型の内部に位置する金属が鋳物を形成するよう既に凝固しつつあり又は既に部分的に凝固しているようにすることが行われていなければならない。この目的のため、フィーダインサートの少なくとも一部は、通常、断熱性及び/又は発熱性材料で構成され、この場合、液体金属がフィーダインサートに入ると、生じている温度により発熱性材料が点火される。この時点以降、次に発熱反応がフィーダインサートの材料内で自動的に起こり、その結果、発熱反応の熱エネルギーが或る特定の期間にわたってフィーダ内に位置する金属に供給され、フィーダキャビティ及び鋳造用金型の鋳造キャビティへの移行領域内の金属は、液体状態に保たれる。
【0004】
鋳造部門においても生産性に関する要求のかなりの高まりにより、金型の製造を自動化し、かくして鋳物のための鋳造用金型を多くの単位量で製造することができるようにする手段が模索された。この目的のため、例えば、自動化垂直生砂鋳造設備(例えば、デーアイエスアー・インダストリーズ・アー/エス(DISA Industries A/S)製のDisamatic 鋳造機械)が開発され、この設備では、例えば、第1のパターン半部がもっぱら直線的に調節可能なプレスピストンに取り付けられる。関連の第2のパターン半部が通常、回動可能な金型プレートに取り付けられ、この回動可能な金型プレートは、金型プレートに例えばフィーダが装着される水平の向きと垂直の向きとの間で前後に動かされる。回動可能な金型プレートは、その垂直作業位置では、通常、好ましくは第1のパターン半部に平行に同様に変位可能である。比較的薄肉の鋳物を製造することができる手段としての垂直に分離可能な鋳造用金型の場合、例えば、断熱状態の重量のある鋳造部分の再供給を保証するという問題が生じる。かかる断熱領域の再供給を保証するため、フィーダインサートが用いられ、かかるフィーダインサートのフィーダ長手方向軸線は、回動可能な金型プレートにほぼ垂直に差し向けられ、その結果、このようにして配置されたフィーダインサートのフィーダ長手方向軸線が鋳造プロセス中、ほぼ水平に延びるようになっている。この種のフィーダインサートは、金型パターン又は回動可能な金型プレートと接触状態におかれる場合があり且つ液体金属のための通路開口部を備えた成形要素を有する。
【0005】
特許文献である独国実用新案第202011103718(U1)号明細書は、垂直に分離可能な鋳造用金型で金属を鋳造するために用いられるフィーダインサートを開示しており、かかるフィーダインサートは、液体金属を受け入れるフィーダキャビティを画定する第1の成形要素及び第2の成形要素を有している。第1の成形要素は、金型パターン又は回動可能な金型プレートに取り付けられる取り付け領域を有する。取り付け領域は、液体金属のための通路開口部を備え、通路開口部の中心軸線は、第1の成形要素の中央領域に対してオフセットした状態で配置される。通路開口部が偏心状態で配置されているので、液体金属は、鋳造プロセス中、フィーダの下方領域に入り、そしてフィーダインサートの使用中、フィーダインサート内でフィーダ長手方向軸線に対してほぼ垂直に上昇する。このようにして、縮みプロセス中における金属の再供給の向上を達成することが意図されている。鋳造用金型を形成する金型材料の押し固め中にフィーダインサートに作用する力を良好に吸収するために、独国実用新案第202011103718(U1)号明細書で知られているフィーダインサートは、その第1の成形要素上に、金型材料の押し固め中に非可逆的に変形する圧縮性の取り付け領域を有する。変形の程度に応じて、取り付け領域を金型プレートに圧接する力は、金型材料の押し固め後に比較的小さい場合があり、その結果、ある幾つかの環境の元では、金型材料が取り付け領域と金型パターンとの間の領域中に入り込む場合がある。さらに、取り付け領域の圧縮及び第1の成形要素と回動可能な金型プレートの金型パターンとの間における距離の関連の減少中、過度に大きな押し固め力がフィーダインサートに作用し、それにより通常、発熱性材料で構成されている第2の成形要素の破損又は割れが生じる恐れがある。
【0006】
同一出願人名義の独国特許出願公開第3423220(A1)号明細書及び独国実用新案第8418911(U1)号明細書は、水平に分離可能な鋳造用金型で金属を鋳造するために用いられるフィーダインサートを開示しており、このフィーダインサートは、第1の成形要素及び第2の成形要素を有する。第1の成形要素は、金型パターンに側方取り付け可能なフィーダベースを形成し、この場合、第1の成形要素は、上側金型半部と下側金型半部との間の分割平面の下で下側金型半部の金型材料中に受け入れられる。この場合、第1の成形要素は、断熱性及び/又は発熱性フィーダ材料で構成されたケーシングを有する。第2の成形要素は、鋳造用金型の上側金型半部内に配置され、上側金型半部と下側金型半部を結合して鋳造用金型を形成したとき、第2の成形要素は、第1の成形要素と接触関係をなすに至り、それによりフィーダベースが形成される。第2の成形要素が第1の成形要素の頂部上に取り付けられた状態で、フィーダキャビティが形成され、このフィーダキャビティの主容積フラクションが第1の成形要素の水平に延びる通路開口部の上方に配置される。金型材料の押し固めは、基本的には、それぞれ頂部及び底部ボックス内での個々の金型半部の製作中に別々に起こる。
【0007】
独国実用新案第8702296(U1)号明細書は、同様に、水平に分離可能な鋳造用金型で金属を鋳造するために用いられるフィーダインサートを開示している。フィーダインサートはこの場合も又、フィーダ下側部分として形成される第1の成形要素及びフィーダ上側部分として形成される第2の成形要素を有する。第1の成形要素と第2の成形要素の分離部は、特に、上側金型半部と下側金型半部との間の分割平面の付近に設けられる。鋳物への通路開口部は、この場合、少なくとも第2の上側成形要素の一領域を貫通して形成される。第2の成形要素では、特に使用中水平に延びる通路開口部の上方に、鋳物凝固中に液体金属を供給するメルトリザーバが設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国実用新案第202011103718(U1)号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第3423220(A1)号明細書
【特許文献3】独国実用新案第8418911(U1)号明細書
【特許文献4】独国実用新案第8702296(U1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の課題を出発点と解して、本発明が解決しようとする課題は、垂直に分離可能な鋳造用金型での鋳造用金型の製造中、高い押し固め圧力に耐え、しかも、使用中、取り付け領域と金型パターンとの間における金型材料の入り込みの恐れを減少させるフィーダインサートを提供するという課題である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、本明細書の導入部である技術分野の項に記載した形式のフィーダインサートであって、第1の成形要素と第2の成形要素が互いに対して入れ子式に動くことができ且つ心出し軸線(centring axis)に沿って位置決め可能な心出しピン(centring pin)によって位置決めされるよう設計され、第1の成形要素及び第2の成形要素により画定されるフィーダキャビティが、心出し軸線の水平配置の場合にフィーダキャビティの主容積フラクションを心出し軸線の上方に位置決めすることができるよう設計されていることを特徴とするフィーダインサートによって本発明の課題を解決する。
【0011】
本発明は、かくして、垂直形鋳造設備、例えばデーアイエスアー・インダストリーズ・アー/エス製のDisamatic鋳造機械を用いて製造される垂直に分離可能な鋳造用金型で金属を鋳造するために用いられるのに適したフィーダインサートに関する。フィーダインサートは、液体金属を受け入れるフィーダキャビティを画定する少なくとも1つの第1の成形要素及び少なくとも1つの第2の成形要素を有する。第1の成形要素は、液体金属のための通路開口部を有し、この通路開口部は、通常、金型パターン又は回動可能な金型プレートへの取り付けに役立つ。金属を鋳造用金型中に注ぎ込んでいるとき、液体金属は、通路開口部を経てフィーダインサート中に入り、次に、液体金属は、縮みプロセス中、フィーダキャビティから逆流して通路開口部を通って鋳造用金型中に流入する(鋳物が完全に凝固するまで)。代表的には通路開口部の中心軸線と一致するフィーダインサートの心出し軸線は、特にフィーダインサートが垂直形鋳造設備で用いられる場合(即ち、心出し軸線が水平の向きを取ったとき)、第1の成形要素の中央領域に対して下方にオフセットするように配置される。かくして、鋳造用金型とフィーダキャビティとの間の金属導通連結部は、フィーダインサートの下方領域内に配置され、その結果、フィーダキャビティの主容積フラクションが心出し軸線の上方に(かくして、代表的には、それと同時に通路開口部の中心軸線の上場に)位置決めされるようになる。本発明のフィーダインサートの第1の成形要素及び第2の成形要素は、部分的に互いに対して入れ子式に動くことができるよう設計されており、その結果、成形要素のうちの一方、好ましくは第2の成形要素が、フィーダインサートを最終的には事実上完全に包囲し又は封入する金型材料の押し固め中、主として第2の成形要素に作用する圧力に屈従することができるようになっている。互いに対する入れ子式変位中、相対運動が第1の成形要素と第2の成形要素との間に生じ、この場合、第2の成形要素は、好ましくは、心出し軸線の方向には一般的には変形可能ではない第1の成形要素上に部分的に押され、第1の成形要素は、その取り付け領域及びこれに形成された通路開口部により、金型パターン又は回動可能な金型プレートに当接し又はこれによって支持される。
【0012】
本発明は、第1及び第2の成形要素が少なくとも一部にわたって互いに対して入れ子式に動くことができる入れ子式フィーダインサートを用いると、成形要素相互間の摩擦により、適度に高い圧力を第1の成形要素の取り付け領域と(例えば)金型パターンとの間に発生させることができ、その結果、金型パターンに対する第1の成形要素の確実な当接を金型材料の押し固め中に保証することができるという認識に立脚している。第1の成形要素に対する第2の成形要素の可動性により、更に、第1の成形要素上に圧縮性の取り付け領域を備えたフィーダインサートとは対照的に、第2の成形要素は、過度の押し固め圧力がフィーダインサートに作用した場合に金型パターンの方向に容易に撓むことができるようになる。同様に、結果的に比較的高い圧力がフィーダインサートの小さい側部に作用するようにする金型パターンに向かって動く第1の成形要素に起因して例えば先行技術において見受けられる第1の成形要素と例えば金型パターンとの間の金型材料の強力な押し固めは、かくして、有利には回避される。第1の成形要素が金型パターンに対して固定されていることにより、押し固めプロセス中におけるフィーダインサートの破壊の恐れがかなり減少する。かくして、第1及び第2の成形要素の肉厚は、これらがフィーダキャビティ内の金属を液体状態に保つために所要の断熱又は熱的出力を保証することができるよう選択される。さらに、フィーダインサートの使用中、心出し軸線の上方に位置決めされる液体金属を受け入れるその容積フラクションを備えたフィーダキャビティの好ましい構成により、凝固及び製造されるべき鋳物の関連の縮みの際、フィーダキャビティ内には、鋳造用金型の方向に流れることができる適量の液体金属が存在するようになる。
【0013】
本発明の別の観点は、本発明のフィーダインサート(上述した又は後述する)の第1又は第2の成形要素として用いられる成形要素に関する。本発明のフィーダインサートの第1又は第2の成形要素として用いられる本発明に従って設計された成形要素により、確実な封止が第1の成形要素と例えば金型パターン又は回動可能な金型プレートとの間に保証されるのは、金型材料の押し固め中の場合であり、フィーダインサートは、高い押し固め圧力に容易に耐え、かくして高レベルの鋳物品質を保証することができる。それと同時に、心出し軸線の上方に形成される容積フラクションにより、液体状態に保たれるべき金属のための比較的大きなリザーバが形成される。
【0014】
別の実施形態では、本発明の成形要素の入れ子式設計の代替手段として又はこれに加えて、第1及び第2の成形要素により画定されるフィーダキャビティを換気する少なくとも1つの換気開口部が第1の成形要素上に配置される(本発明のフィーダ要素の一構成要素として)。換気開口部は、心出し軸線の水平配置の場合、心出し軸線の上方に第1の成形要素に配置され又は位置決めされるべきであり、それにより、鋳造プロセスを高い速度で実施することができ、この場合、フィーダの内部の空気の堆積に起因してフィーダに不適切に液体金属が充填される恐れがない。
【0015】
本発明の別の観点は、本発明のフィーダインサートを製造するためのキット(上述した又は後述する)に関し、このキットは、第1の成形要素及び第2の成形要素を含む。かくして、この種のキットは、本発明のフィーダインサートを形成するよう組み立て可能な第1の成形要素と第2の成形要素を含む。この場合、所与の第1の成形要素を異なる設計の第2の成形要素と組み合わせることができ、所与の第2の成形要素を異なる設計の第1の成形要素と組み合わせることができる。
【0016】
本発明のフィーダインサートでは、心出しピンを位置決めするために、第2の成形要素上に、円錐形をなして延びる壁部分及び/又はピン先端部のための円筒形又は非円筒形凹部が設けられる。第2の成形要素上に形成される壁部分及び心出しピンのピン先端部のための凹部(好ましくは円筒形の凹部)によって、心出しピンへの単純化された取り付け又は金型パターンへのフィーダインサートの取り付けが達成される。好ましくは、少なくとも1つの円錐形をなして延びる壁部分及び凹部は、第2の成形要素の内側コーナー部上に形成される。円筒形凹部が好ましくは心出し軸線に対して同心状に配置され、それにより、好ましくは垂直に分離可能な鋳造用金型と関連して用いられる金型パターン又は回動可能な金型プレートに対する心出しピンに取り付けられているフィーダインサートの正確な向きが保証される。凹部は、好ましくは、押し込み嵌め関係において、凹部中に挿入可能な心出しピン先端部の外側輪郭に一致し、対応の心出しピンは、好ましくは、本発明のキットに含まれる。
【0017】
フィーダキャビティを換気する換気開口部を第1の成形要素に更に設けることが好ましく、この換気開口部は、心出し軸線の水平配置の場合、心出し軸線の上方に位置決め可能である。換気開口部によって、有利には、フィーダインサートの作動中、液体金属が鋳造用金型内に注ぎ込まれてフィーダインサート中に入り又は進むと、液体金属がフィーダキャビティ内で上昇するのを阻止することができるエアクッションがフィーダキャビティ、特に心出し軸線の上方に位置決め可能な容積フラクション内に生じることがないようになる。かくして、フィーダキャビティは、凝固中の鋳物の縮み中、鋳造用金型中に逆流することができる適量の液体金属を収容する。換気開口部は、好ましくは、フィーダインサートの第1の成形要素に設けられ、金型パターン又は回動可能な金型プレートに対する第1の成形要素の位置は、金型材料の押し固め中、変化することがない。換気開口部は、例えば、壁部分に配置され又は形成され、この換気開口部は、使用中(即ち、鋳造中)フィーダキャビティを上向きの方向に画定し、換気開口部は、この場合好ましくは、フィーダインサートの心出し軸線に対して0°〜90°の角度をなして延びる中心軸線を有する。この場合、フィーダインサートの第1の成形要素の換気開口部の上述の形成は、第1の成形要素と第2の成形要素の互いに対する入れ子式可動性とは独立して考慮すべきでもある本発明の独立した観点である。かくして、本発明の別の独立した観点は、垂直に分離可能な鋳造用金型で金属を鋳造するために用いられるフィーダインサートに関し、このフィーダインサートは、液体金属を受け入れるフィーダキャビティを画定し且つ中心軸線に沿って位置決め可能な心出しピンによって位置決めされるよう設計された第1の成形要素及び第2の成形要素を有し、第1の成形要素は、液体金属のための通路開口部を有し(この通路開口部の中心軸線は、好ましくは、心出し軸線と一致する)、第1の成形要素は、フィーダキャビティを換気する換気開口部を更に有し、心出し軸線の水平配置の場合、換気開口部は、好ましくは、心出し軸線の上方に位置決めされるのが良く、フィーダキャビティは、好ましくは、心出し軸線の水平配置の場合、フィーダキャビティの主容積フラクションを心出し軸線の上方に位置決めすることができるよう設計される。本発明のこの独立した観点をそれぞれ本発明の他の観点と組み合わせることができ、対応の明細書部分に記載されている観点は、これに対応して好ましい組み合わせに関して当てはまる。代替的に又は追加的に、換気開口部は、フィーダインサートの第2の成形要素に設けられる。
【0018】
換気開口部は、換気ダクトの形態をしていることが好ましく、この場合、換気ダクトは、好ましくは、部分的に又はその全長にわたり、心出し軸線に平行に延びる。フィーダインサートが垂直形鋳造設備で用いられているときに少なくとも部分的に水平に延びる換気ダクトによって、鋳造プレート上に配置された構造的部分又は取り付け部分への追加の結合が容易に可能である。この種の構造的部分又は取り付け部分を回動可能な金型プレート上に配置し、又、かかる構造的部分又は取り付け部分が金型プレートの一部分に沿って延びる金型部分を形成することが好ましく、その結果、好ましくは、鋳造作業中、回動可能な金型プレートに好ましくは垂直に延びる換気ダクトが設けられる。したがって、取り付け部分によって、製造されるべき鋳造用金型内で好ましくは垂直に延びる換気ダクトのための金型部分が形成され、それと同時に、金型プレートへの機械的結合が作られ、それにより、本発明のフィーダインサートは、金型パターン及び金型プレートに対して定位置に更に固定される。さらに、ダクトとしての換気開口部の構成により、鋳造プロセス中、フィーダインサート内に位置する空気の迅速な逃げ出しが保証される。
【0019】
第2の成形要素が発熱性フィーダ材料で作られ又は少なくとも部分的に発熱性フィーダ材料から成ると共に/或いは第1の成形要素が発熱性フィーダ材料で作られ又は少なくとも部分的に発熱性フィーダ材料から成ることを特徴とする本発明のフィーダインサートが好ましい。発熱性フィーダ材料の使用により、高レベルの効率及び特に鋳造プロセス中における良好な封止供給が達成される。と言うのは、発熱性フィーダ材料によって、フィーダインサート内に位置する金属を比較的長い期間にわたって液体状態に保つことができるからである。例えば第1の成形要素の外側上をこれに沿って動く第2の成形要素の領域も又、発熱性フィーダ材料に代えて断熱性フィーダ材料で作られるのが良く、この断熱性フィーダ材料は、有利には、フィーダインサートからの熱の放出を減少させる。しかしながら、結合剤を用いて結合された鋳物砂、特に石英砂をフィーダ材料として用いることがただ単に可能である。しかしながら、成形要素の少なくとも幾つかの部分を形成するために発熱性材料を用いることが好ましい場合が多い。フィーダインサートの或る特定の領域は、互いに異なる特性(発熱性又は断熱性)を備えた互いに異なる材料で作ることができる。変形例として、成形要素は、各々、発熱性及び断熱性成分を含む均一の材料混合物で作られても良い。
【0020】
或る特定の目的のため、第1の成形要素が断熱性フィーダ材料で作られ又は少なくとも部分的に断熱性フィーダ材料から成ると共に/或いは第2の成形要素が断熱性フィーダ材料で作られ又は少なくとも部分的に断熱性フィーダ材料から成ることを特徴とする本発明のフィーダインサートが有利である。フィーダインサートの変形実施形態では、第2の成形要素が発熱性フィーダ材料で作られ又は少なくとも部分的に発熱性フィーダ材料から成ると共に/或いは第1の成形要素が発熱性フィーダ材料から成ることはなく、この第1の成形要素が好ましくは、断熱性フィーダ材料で作られ又は少なくとも部分的に断熱性フィーダ材料から成り、或いは金属、プラスチック、厚紙(cardboards)、これらの混合物及びこれらの複合材料から成る群から選択された材料で作られ、又はこの材料から成ることが好ましい。本発明のフィーダインサートの別の実施形態では、第2の成形要素は、断熱性フィーダ材料で作られ又は少なくとも部分的に断熱性フィーダ材料から成ると共に/或いは第1の成形要素が発熱性フィーダ材料で作られ又は少なくとも部分的に発熱性フィーダ材料から成り、或いは金属、プラスチック、厚紙、これらの混合物及びこれらの複合材料から成る群から選択された材料で作られ、又はこの材料から成る。
【0021】
市販のフィーダ材料に代えて、本発明のフィーダインサートの第1の成形要素は、好ましくは、金属、プラスチック、厚紙、これらの混合物及びこれらの複合材料から成る群から選択された他の材料で構成されても良い。
【0022】
本発明のフィーダインサートの別の変形実施形態では、第2の成形要素は、発熱性又は断熱性フィーダ材料で作られ又は少なくとも部分的に発熱性又は断熱性フィーダ材料から成ると共に/或いは第1の成形要素は、金属、プラスチック、厚紙、これらの混合物及びこれらの複合材料から成る群から選択された材料で作られ、又はこの材料から成る。第1の成形要素の材料として、かくして、オプションとして発熱性又は断熱性材料及び金属、プラスチック又は厚紙、又は混合物又は金属、プラスチック及び/又は厚紙で構成された複合材料を用いることが可能である。
【0023】
第2の成形要素を形成するために発熱性且つ断熱性フィーダ材料を用いることが好ましい。第1及び第2の成形要素に関する材料選択は、実際には、個別的に且つそれぞれ実行されるべき仕事に検討が加えられた状態で実施される。第1の成形要素に関する材料の選択は、本発明のフィーダインサートの特定の意図した使用がなんら協調を必要としない場合、第2の成形要素の材料の選択とは独立して実施できる。
【0024】
本発明のフィーダインサートの変形実施形態では、第1の成形部分は、好ましくは、ブレーカーコアを形成する。ブレーカーコアの使用は、特に、第1の成形部分又は構成材料が金属又は金属を含む第1の成形要素の部分要素の形成と関連して有利である。
【0025】
フィーダインサートの好ましい実施形態では、第1の成形要素は、一体となっており又は2つの組み立てられた部分要素で構成され、これら部分要素は、互いに位置的に安定し又は互いに対して入れ子式に動くことができ、第1の部分要素は、フィーダインサートのフットプリント表面を有し、第2の部分要素は、第2の成形要素に連結可能に設計されている。一体形態の成形要素の場合、金型パターン又は金型プレート及び第2の成形要素に対応した連結部分に取り付けられる取り付け領域は、単一の構造的部分から作られる。第1の成形要素の2部品形態の場合、連結領域は、1つの部分要素で作られ、フィーダインサートの取り付け領域は、好ましくは、金属スリーブ(別の部分要素としての)で作られる。欧州特許出願公開第2097193(A)号明細書に記載されているように、第1の部分要素は、出荷状態では、様々な程度で第2の部分要素中に押し込まれる管状要素であるのが、第1の実施形態の場合であり、この欧州特許出願公開を参照により引用し、その記載内容を本明細書の一部とする。幾つかの場合では、管状の第1の部分要素を出荷状態では第2の部分要素中に最大の程度までは押し込まず、その結果、第1の部分要素が後の時点で、例えば金型パターン又は回動可能な金型プレートへの対応のフィーダインサートの配置後であってフィーダインサートを最終的に事実上完全に包囲する金型材料の押し固めの際に、第2の部分要素中に更に押し込められるようにすることが有利である。変形実施形態では、管状の第1の部分要素と第1の成形要素の第2の部分要素との位置的に固定された連結部が提供される。この場合、2つの部分要素の運動は、可能ではなく又はもたらされない。本発明のこの有利な実施形態をそれぞれ本発明の独立した観点と組み合わせることができる。対応の明細書部分に記載されている観点は、これに対応してそれぞれ好ましい組み合わせに関して当てはまる。
【0026】
第1の成形要素は、金型パターン又は回動可能な金型プレートの方へ向き且つ好ましくは回動可能な金型プレートに対して平行に又は斜めに延びる表面を有する。好ましくは斜めに延びる表面と金型パターン又は金型プレートとの間の距離は、好ましくは、取り付け領域又はフィーダインサートの心出し軸線から進むにつれて少なくとも部分的に増大する。
【0027】
第1の成形要素及び/又は第2の成形要素上に、保持要素が配置されると好ましく、かかる保持要素によって、第1の成形要素及び第2の成形要素は、初期位置に保持され、この場合、保持要素は、入れ子式変位の際に(第1の成形要素と第2の成形要素を互いに対して入れ子式に動かしているときに)切り離され又は変形するよう設計されている。保持要素によって、第1の成形要素と第2の成形要素は、これらが金型パターン又は金型プレートに取り付けられているとき又は金型パターン又は金型プレート上に配置された心出しピンに押し付けられているときに互いに対して既定の配置状態に保持される。欧州特許出願公開第1184104(A)号明細書に開示されているように、保持要素は、好ましくは、それぞれの成形要素の一体形構成部品であり、この場合、保持要素は、これらそれぞれの成形要素の製作中に追加のステップなしでそれぞれの成形要素上に一体に形成される。例えば、内側輪郭又は外側輪郭から垂直に突き出た突出部、包囲状態で立設したリング又はピンである保持要素は、通常、各々、それぞれが関連の成形要素の残部に対して小さな連結表面しか備えていない。
【0028】
第1の成形要素は、好ましくは、第2の成形要素の内面部分に隣接して位置し又は当接し且つ成形要素の相互に内外の入れ子式運動中、第2の成形要素に対する第1の成形要素の側方傾動を阻止し又は妨害する外面部分を有する。第1の成形要素の外側表面部分又は外側輪郭上に且つ/或いは第2の成形要素の内側表面部分又は内側輪郭上に、好ましくは、案内表面が形成され、これら案内表面により、2つの成形要素は、有利には、互いに対して案内されると共に互いに対して直接摺動しあう。案内表面は、好ましくは、第1の成形部分と第2の成形部分の一様な相対運動を保証するよう設計され、その結果、好ましくは、金型材料の押し固め及び第2の成形要素の少なくとも一部分上においてこれに沿う第2の成形要素の結果として生じる運動中、第2の成形要素のつかえが阻止されるようになっている。この目的のため、第1及び第2の成形要素は、好ましくは、適度に広い案内表面又は適度な程度まで互いにオーバーラップした案内表面を有する。例えば互いに対して動くことができるよう保持されている成形要素の外側輪郭及び内側輪郭の表面領域上への案内表面の形成により、それぞれのコンポーネント上における案内表面の構造的に簡単な構成が実現される。案内表面が第2の成形要素の内側輪郭の表面領域上に形成された場合、第2の成形要素は、フィーダインサートの第1の成形要素上に押し嵌めされ、それにより、次に、第1の成形要素の一部分が第2の成形要素内に受け入れられる。2つの成形要素の相互の運動の程度は、この場合、特に垂直鋳造設備での押し固め中に金型材料に作用する押し固め圧力で決まる。内側輪郭と外側輪郭が互いに相互に直接摺動しあうことなく、第1の成形要素及び/又は第2の成形要素は、内側輪郭から外方に突き出又は外側輪郭から内方に突き出た案内リブを備えるのが良く、その結果、摺動案内が実現される。
【0029】
第1の成形要素は、金型プレートに対するフィーダインサートの所定の向きを達成すると共に/或いは維持するための手段として、好ましくは長円形、非円形、平べったくした円形、平べったくした長円形、三角形、五角形又は多角形から成る群から選択された非円形断面を備えた通路開口部及び/又は第2の心出しピンを受け入れる1つ又は2つ以上の追加の凹部又は開口部を有し、1つ又は2つ以上の凹部又は開口部は、好ましくは、心出し軸線に平行に延び且つ/或いは金型プレートの方へ向いた側部上に設けられた1つ又は2つ以上のスペーサを有することを特徴とする本発明のフィーダインサートが好ましい。例えば非対称又は非円形断面を有する通路開口部により、金型パターン又は回動可能な金型プレートに対するフィーダインサートの回転を阻止するための有利に働く手段を形成することが可能である。好ましくは非円筒形の形態をした通路開口部は、好ましくは、周囲全体にわたって、金型パターン又は金型プレート上に配置され且つフィーダインサートが取り付けられ又は押し付けられる心出しピンの外面に対応している。それと同時に、第1の成形要素は、好ましくは、一方の側が平べったくされた通路開口部を有し、その結果、フィーダインサートは、好ましくは、金型パターン又は金型プレートに取り付けられたときにたった1つの取り付け位置又は向きを取ることができる(キーロック原理)。これは、フィーダインサートが製造されるべき垂直に分離可能な鋳造用金型内で偶発的に不正確な向きを取るのを阻止し、事実、フィーダキャビティの主容積フラクションが好ましくは、フィーダインサートの使用中、心出し軸線(この場合、水平に延びる心出し軸線)の上方に位置決めされるようになる。本発明のこの有利な実施形態をそれぞれ本発明の独立した観点と組み合わせることができ、対応の明細書部分に記載されている観点は、これに対応してそれぞれ好ましい組み合わせに関して当てはまる。
【0030】
本発明のフィーダインサートは、好ましくは、金型プレートに対するフィーダインサートの所定の向きを達成すると共に/或いは維持する手段として、第2の心出しピンを受け入れる1つ又は2つ以上の追加の凹部又は開口部を有し、この場合、1つ若しくは2つ以上の凹部又は開口部は、好ましくは、心出し軸線に平行に延びる。第1の成形要素に少なくとも1つ又は2つ以上の追加の凹部又は開口部を形成することによって、少なくとも1つの第2の心出しピンのための受け口が作られ、それにより、心出し軸線及び金型パターン又は回動可能な金型プレートに対するフィーダインサートの位置的な安定性又は向きが有利には改善される。特に、第1の成形要素に設けられている追加の凹部又は開口部は、金型パターン又は回動可能な金型プレートの方へ向き、かかる追加の凹部又は開口部は、例えば、円錐形の形状を有する。かかる追加の凹部又は開口部は、好ましくは、心出し軸線に平行に延びる。第1の成形要素の外側部からフィーダキャビティ中に凹部又は開口部が延びることが好ましい。かくして、心出しピンへのフィーダインサートの有利な単一の取り付けが達成され、このピンは、同様に本発明に係るキットの一部であり、このキットは、本発明のフィーダインサート及び押し込み嵌めによりフィーダインサートを受け入れる心出しピンを含む。好ましくは、金型材料の押し固め後であり且つ開口部からの心出しピンの次の取り出し後、好ましくは心出し軸線に平行に延びる追加の凹部又は開口部は、それと同時に、フィーダキャビティからの換気を実現するのに役立つ。この目的のため、少なくとも1本の別の心出しピンを受け入れる追加の凹部又は開口部は、好ましくは、垂直形鋳造設備で用いられるフィーダインサートの場合又はフィーダインサートの心出し軸線の水平向きの場合、心出し軸線の上方に、好ましくは第1の成形要素上の考えられる最も高い位置に形成されるべきである。
【0031】
本発明のフィーダインサートの好ましい改造例では、金型パターン又は金型プレートの方へ向いた第1の成形要素の側には1つ又は2つ以上のスペーサが設けられ、スペーサは、例えば円筒形スタッド又はペグとして構成されている。スペーサは、金型材料の押し固め中、金型パターン又は金型プレートに取り付けられるべき第1の成形要素に対する金型プレート又は金型パターンの固定された位置決めを実現するという役目を有する。第1の成形要素が定位置に固定されると、第2の成形要素も同様に、その結果として特に例えば第1及び第2の成形要素の対応の案内表面が好ましくは互いに接触状態にあるので、定位置に固定される。金型プレートの方へ向いた第1の成形要素の側に設けられている1つ又は2つ以上のスペーサに代えて又はこれに加えて、第1の成形要素は、内側部に当接面を有するのが良く、この当接面は、好ましくは心出し軸線に平行に第1の成形要素の高さの例えば少なくとも1/2にわたって延び且つ金型プレート又は金型パターン上に配置されるのが良い心出しピンの支持面と接触関係をなして配置されるよう設計されると共に提供される。内側部の当接面は、好ましくは、ソフィット(soffit)表面の表面領域と整列関係をなし又は面一をなすよう形成される。かくして、第1の成形要素は、代替的に又は追加的に、内側部のその当接表面が心出しピン(通常、金型パターン又は金型プレートから垂直に突き出ている)に当接した状態で支持される。金型プレートに対するフィーダインサートの既定の向きを達成すると共に/或いは維持する上述の手段の全ては、各々、本発明のフィーダインサートに個々に又は互いに組み合わせ状態で設けられるのが良い。したがって、本発明のフィーダインサートは、上述の手段のうちの1つ、2つ又はそれどころか全てを有するのが良い。本発明のこの有利な実施形態をそれぞれ本発明の独立した観点と組み合わせることができ、対応の明細書部分に記載されている観点は、これに対応してそれぞれ好ましい組み合わせに関して当てはまる。
【0032】
第2の成形要素が通路開口部と反対側に位置したその端部(ピン先端部を受けるその端部)のところの内側に、フィーダキャビティをチャンバに分割する1つ又は2つ以上の一体に形成されたリブ又は壁部分を有する。内側部から突き出ると共に例えばいわゆるウィリアムズストリップ(Williams strip)又はウィリアムズウェッジ(Williams wedge)として構成されるリブ又は壁部分によって、フィーダインサートの心出し軸線の上方の領域における液体金属の表面上の鋳物表皮の時期尚早な形成が抑制され、それによりフィーダインサートの作用効果、特に液体金属を液体状態でフィーダインサート内に位置したままにするという作用効果が高められる。いずれの場合においても、フィーダキャビティ中に突き出る少なくとも1つのリブが第1の成形要素及び第2の成形要素に設けられることが好ましい。心出し軸線の水平配置の場合、これらリブは、第1及び第2の成形要素の心出し軸線の上方に配置されている内側壁部分上に配置された状態で好ましくは心出し軸線に平行に、好ましくはこれを通って延びる平面内において延びる。「ウィリアムズストリップ」又は「ウィリアムズウェッジ」という表示でも知られているリブは、金型材料の対応の圧縮又は押し固め及びフィーダインサートの2つの成形要素の関連の押し合いの場合に互いの頂部上に又は互いに上下に好ましくは一致して位置するようになる。1つ又は2つ以上のリブは、フィーダインサートのフィーダキャビティ中に挿入可能な別個に形成されたインレイ部分であるか或いは第1及び第2の成形要素の内側輪郭上に一体に形成された部分として形成されるかのいずれかであるのが良い。一体に形成されたリブが本発明の成形要素の鋳造中に作られ、このリブは、例えば、角柱形状を有し、リブは、本発明のフィーダインサートの表面上に配置され、このリブは、使用中(即ち、鋳造作業中)フィーダキャビティの上方端部のところに配置されるようになっている。
【0033】
本発明のキットは、好ましくは、第1の成形要素及び第2の成形要素だけでなく、フィーダインサートによって押し込み嵌め関係をなして受け入れられる心出しピンを含む。フィーダインサート(第1及び第2の成形要素で作られる)は、好ましくは、心出しピンに押し嵌めされるのが良く又は心出しピンに取り付けられるのが良い。フィーダインサートを受け入れ又は保持する心出しピンは、特に第1の成形要素の通路開口部のソフィット表面に合致する形状を備えた心出しピン足部を有する。心出しピン足部の断面は、通路開口部に対応して、好ましくは円筒形ではないように形成されるが、好ましくは長円形、非円形、平べったくした円形、平べったくした長円形、三角形、五角形又は多角形から成る群から選択される。このように、心出しピンとフィーダインサートの相互回転を阻止する手段が実現され、更に、心出しピン及び成形要素は、好ましくは、フィーダインサート及び心出しピンが互いに対して1つの位置しか取ることができないように設計され、この場合、第1の成形要素及び第1の成形要素に対応した第2の成形要素は、心出しピン上に押し嵌めされるのが良い(キーロック原理)。したがって、金型パターン又は金型プレート上におけるフィーダインサートの好ましい向きが保証され、不正確な取り扱いが阻止されるので有利である。形状の面で通路開口部に一致した心出しピン足部に加えて、心出しピンは、形状がピン先端部を受け入れる目的で第2の成形要素に設けられている凹部の内側輪郭に対応した心出し先端部を有する。
【0034】
本発明の別の観点は、回動可能な金型プレートを備えた設備で金属を鋳造する方法に関し、この方法は、以下のステップ、即ち、本発明のフィーダインサート(上述し又は後述する)を、心出しピンを備えた金型パターンに取り付けるステップを含み、金型パターンは、回動可能な金型プレート上又は心出しピンを備えた回動可能な金型プレート上に直接配置され、フィーダインサートが取り付けられた金型プレートを回動させてフィーダインサートの心出し軸線が水平の向きになり、次にフィーダキャビティの主容積フラクションが心出し軸線の上方に位置決めされるようにするステップを含む。この種の回動可能な金型プレートは、好ましくは、垂直に分離可能な鋳造用金型での鋳物の製造に用いられる。本発明は、とりわけ、この種のプロセスにおいて、心出し軸線を水平に差し向け、次に、液体金属が主として心出し軸線の上方に位置したフィーダキャビティの容積フラクション内で上昇することができるという認識に基づいている。鋳造作業中、通路開口部よりも高い位置にあるフィーダインサートのこの容積フラクションは、かくして、製造されるべき鋳物の凝固中、供給リザーバを形成し、液体状態に保たれている金属は、この供給リザーバから鋳造用金型中に流れることができる。好ましくは第1の成形要素に設けられている換気開口部により、鋳造用金型及びフィーダインサートの最適換気が鋳造プロセス中に保証され、その結果、鋳造用金型中への液体金属の注ぎ込みを比較的短時間で実施できるようになる。フィーダインサート内の供給容積部に悪作用を及ぼす不都合な空気の取り込みを換気開口部によってなくすことができるので有利である。鋳造作業中の換気を保証するため、例えば、回動可能な金型プレート上には、スペーサが設けられ、このスペーサは、第1の成形要素の少なくとも1つの換気開口部を通って垂直に突き出た心出しピン及びスペーサに結合された構造的部分又は取り付け部分を備えている。構造的部分又は取り付け部分は、好ましくは、同様に、垂直の向きに延びると共に(心出し軸線の水平配置の場合)、フィーダインサートからの空気の排出のための換気ダクトが後の鋳造作業中に位置決めされる金型プレート上の場所に配置される。
【0035】
上述の方法は、鋳造プロセスの一部を備えていることを特徴とし、この鋳造プロセスの一部は、好ましくは、別のステップとして、本発明のフィーダインサートを用意するステップ、金型材料を鋳造機械中に注ぎ込んでフィーダインサートの外壁を金型材料に接触させるステップ、金型材料を押し固めるステップを含み、第2の成形要素は、第1の成形要素に対して変位され、第1の成形要素の少なくとも一部に対する第2の成形要素の運動中、金型プレート又は金型パターンに対する第1の成形要素の位置は固定される。本発明のフィーダインサートは、好ましくは、手で又は機械によって金型パターン及び/又は金型プレートに取り付けられる。
【0036】
本発明を別の本発明の特徴を示す多数の例示の実施形態に基づき且つ添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1a】本発明のフィーダインサートの第1の例示の実施形態の断面図である。
図1b】本発明のフィーダインサートの第1の例示の実施形態の断面図である。
図2a】金型パターン上に配置された本発明のフィーダインサートの第2の例示の実施形態の図である。
図2b】金型パターン上に配置された本発明のフィーダインサートの第2の例示の実施形態の図である。
図3a】本発明のフィーダインサートの別の例示の実施形態の縦断面図である。
図3b】本発明のフィーダインサートの別の例示の実施形態の縦断面図である。
図3c】本発明のフィーダインサートの別の例示の実施形態の縦断面図である。
図4】第1の成形要素の取り付け領域が減少した状態の本発明のフィーダインサートの図である。
図5】金型パターンの相互に互いに間隔を置いて位置した領域上に配置された図2の多数のフィーダインサートの縦断面図である。
図6a】第1の成形要素の例示の実施形態の正面断面図である。
図6b】第1の成形要素の例示の実施形態の側面断面図である。
図7a図1a及び図1bに示されている第1の成形要素の正面断面図である。
図7b図1a及び図1bに示されている第1の成形要素の側面断面図である。
図8a図3a及び図3bに示されている第1の成形要素の正面断面図である。
図8b図3a及び図3bに示されている第1の成形要素の側面断面図である。
図9a】第1の成形要素の別の例示の実施形態の側面断面図である。
図9b】第1の成形要素の別の例示の実施形態の側面断面図である。
図10a】本発明の第2の成形要素の断面図である。
図10b】本発明の第2の成形要素の側面図である。
図11a】本発明のフィーダ要素に対応した心出しピンの正面図である。
図11b】本発明のフィーダ要素に対応した心出しピンの平面図である。
図12a】本発明の心出しピンの別の例示の実施形態の正面図である。
図12b】本発明の心出しピンの別の例示の実施形態の側面図である。
図12c】本発明の心出しピンの別の例示の実施形態の平面図である。
図13a】鋳造用金型の製造を回動可能な金型プレート上への本発明のフィーダインサートの取り付けから鋳造用金型を形成するよう製作された金型半部の組み立てまでのプロセスを概略的に示す断面図である。
図13b】鋳造用金型の製造を回動可能な金型プレート上への本発明のフィーダインサートの取り付けから鋳造用金型を形成するよう製作された金型半部の組み立てまでのプロセスを概略的に示す断面図である。
図14】鋳造用金型の製造を回動可能な金型プレート上への本発明のフィーダインサートの取り付けから鋳造用金型を形成するよう製作された金型半部の組み立てまでのプロセスを概略的に示す断面図である。
図15】鋳造用金型の製造を回動可能な金型プレート上への本発明のフィーダインサートの取り付けから鋳造用金型を形成するよう製作された金型半部の組み立てまでのプロセスを概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1aは、金型パターン4の一部分上の初期配置状態で本発明のフィーダインサート2を示しており、製造されるべき鋳物のための金型パターン4のこの一部分は、水平の向きに配置された金型プレート6に取り付けられ又はこの金型プレート上に配置されている。フィーダインサート2は、第1の成形要素8及び第2の成形要素10を有し、これら成形要素は、互いに入れ子式に動くことができるよう設計されている。第1の成形要素8と第2の成形要素の互いに対する確実な運動を保証するため、成形要素8,10は、互いに直接的に接触することができる案内面12,14を有する。第1の成形要素8の案内面12は、第1の成形要素の外側輪郭によって形成され、第2の成形要素10の案内面14は、第2の成形要素の内側輪郭によって形成されている。第1及び第2の成形要素8,10が当初、これらの初期配置状態に位置したままであるようにするために、保持要素16,16′が第1の成形要素上に配置され、これら保持要素は、これら成形要素が時期尚早に互いに内外に又は外内に摺動するのを阻止する。フィーダインサート2は、心出しピン20の助けにより金型パターン4の一部分上に位置決めされる。心出しピン20は、金型パターン4上に固定的に配置されている。第1の成形要素8は、金型パターン4に取り付け可能な取り付け領域17を有し、この取り付け領域は、押し込み嵌め関係において心出しピン20の心出しピン足部22に対応した通路開口部18を有する。心出しピン20は、心出しピン先端部24を更に有し、第2の成形要素10の凹部26を心出しピン先端部24と押し込み嵌め関係をなすことができるようにし、その結果、第2の成形要素は、押し嵌め後に定位置に保持されるようになっている。通路開口部18及び凹部26は、互いに対して同軸に延びる中心軸線を有し、フィーダインサート2は、心出しピン20により定められる心出し軸線28に沿って位置決めされるよう設計されている。
【0039】
図1bでは、回動可能な金型プレート6は、垂直な配置状態に動かされており、その結果、心出し軸線28は、水平の向きになっている。フィーダキャビティ30がフィーダインサートの第1及び第2の成形要素8,10によって形成され、心出し軸線の水平配置の場合(図1bに示されている)、フィーダキャビティ30の主容積フラクションが心出し軸線28の上方に配置されている。かくして、それと同時に、フィーダキャビティ30の主容積フラクションは、通路開口部18の上方に配置され、その結果、鋳造プロセス中、特に凝固プロセス中、依然として液体状態にある金属の供給がフィーダインサートから鋳造用金型まで確実に保証されるようになっている。フィーダインサート周りの金型材料の押し固め中、金型パターン4又は金型プレート6に対するフィーダインサート2の位置的に固定された向きを維持するため、第1の成形要素8は、心出しピン20(図11)の中央部分70の支持面62上に支持された当接面60(図6)を更に有している。
【0040】
図2a及び図2bは、第1の成形要素8′及び第2の成形要素10を備えた第2の例示の実施形態としてのフィーダインサート2′を示しており、第1の成形要素及び第2の成形要素は同様に、心出しピン20の助けにより金型パターン4の一部分上に配置されている。金型パターン4に対し又は金型プレート6に対するフィーダインサート2′の位置決めを向上させるため、第1の成形要素8′は、金型プレート6の方へ向くと共にその通路開口部18から間隔を置いて位置したその側部上に、追加の心出し凹部32を有し、この心出し凹部32は、第2の心出しピン34の先端部と接触関係をなして配置されるのが良い。心出し軸線28周りのフィーダインサートの回転を阻止するための手段がこのようにして形成される。心出し凹部32は、金型プレートの方向に突き出たスタッド又はペグ36上に形成され又は配置されている。図2bは、フィーダインサート2′を示しており、このフィーダインサート2′は、垂直に延びる金型プレート6上のその配置状態に置いて水平に延びる心出し軸線を備えている。これ又スペーサの機能を果たす少なくとも1つの第2の心出しピン34を使用すると、更に、ここでは詳細には図示されていない押し固めプロセス中、第1の成形要素8′は今や少なくとも2つの支承箇所により金型プレート6の方向に支持されるという利点が得られる。かくして、フィーダインサートの位置的に安定した向きは、有利には、押し固めプロセス中であっても保証される。
【0041】
図3aは、本発明の別の例示の実施形態としてのフィーダインサートを示しているフィーダインサート2″は、互いに対し入れ子式に動くことができる第1の成形要素8″及び第2の成形要素10を有している。2つの成形要素8″,10は、液体金属を受け入れるフィーダキャビティ30を形成し又は画定し、これら2つの成形要素は、心出し軸線28を定める心出しピン20上に位置決めされるよう設計されている。図3aに示されている初期配置状態では、更に、上述した2つの例示の実施形態では、第1の成形要素8″及び第2の成形要素10は、保持要素16,16′によって固定されている。第1の成形要素8″は、その取り付け領域17により金型パターン4に取り付けられており、この第1の成形要素は、通路開口部18から間隔を置いて配置された第2の開口部を有し、この第2の開口部は、フィーダキャビティ30からの換気のための換気開口部38であり、この換気開口部は、第1の成形要素8″の外側部から内側部まで延びていて、ダクト40が形成されている。図3aで理解できるように、ダクト40は、心出しピン42のための心出し受け口として役立ち、心出しピン42は、第1の成形要素8″を金型プレートに対して定位置に保持するスペーサ44の一部でもある。一端が直接金型プレート6上に位置した状態で配置されると共にその他端部が第1の成形要素8″のスタッド又はペグ36′と接触状態にあるスペーサ44上に、フィーダインサート2″の回転を阻止すると共にその位置を固定する手段が形成されている。したがって、フィーダインサート2″は、図3bに示されているように垂直の向きへの金型プレート6の回動中、金型パターン4の一部分に対し又は金型プレート6に対して固定される。図3bでは、フィーダインサート2″は、金型プレート6に対して依然としてその初期配置状態にあり、フィーダキャビティ30は、心出し軸線の水平配置の場合、フィーダキャビティの主容積フラクションが心出し軸線の上方に配置されるよう既に差し向けられている。かくして、心出し軸線28の上方に位置する領域は、鋳物が凝固しているときに通路開口部の方向に流れることができる液体金属の適度に大きなリザーバを形成する。取り付け部分46が金型プレートに平行に延びると共に垂直方向に延びるようスペーサ44に設けられている。取り付け部分46は、スペーサ44と一緒になって、フィーダインサート2″を包囲した金型材料内において、金型プレートの取り出し後且つ垂直に分離された鋳造用金型の組み立て後、換気機能を実行するキャビティを形成する手段としての空間を画定している。ダクト40中に突き出た心出しピン42を取り外した後、第1の成形要素8″内で心出し軸線28に平行に延びるダクト40は、製造されるべき換気ダクトの関連の別の部分を形成する。
【0042】
図3cは、金型材料の押し固め後における本発明のフィーダインサート2″を示しており、第2の成形要素10は、案内面14により第1の成形要素8″の案内面12の一部分に沿って入れ子式に動かされている。依然として図3bに示されている保持要素16,16′は、図3cではもはや第1の成形要素上には配置されていない。むしろ、図3bに依然として示されている保持要素16,16′は、これに作用する圧力が所定値を超えたときに、第1の成形要素8″と第2の成形要素10の相対運動が可能であるように保持要素が切り離され又は変形するよう設計されている。押し固め力(矢印45)が心出し軸線28に平行に且つ金型プレートの方向に作用することにより、第1の成形要素8″上でこれに沿う第2の成形要素10の入れ子式運動が生じ、それと同時に、フィーダキャビティ30の容積が減少する。第1の成形要素8″は、スペーサ44によって、金型パターン4又は金型プレート6の一部分に対する位置的に安定した方式で固定されているので、第2の成形要素10は、金型プレート6の方向において作用する押し固め圧力にいつでも容易に屈従することができ、保持要素は、切り離され又は変形する。かくして、フィーダインサート2″並びに第1及び第2の成形要素が好ましくは発熱性フィーダ材料で作られ又は少なくとも部分的に発熱性フィーダ材料から成る上述の例示の実施形態の破壊の恐れが減少するので有利である。
【0043】
図4は、フィーダインサート2′″を示しており、このフィーダインサートの第1の成形要素8′″は、本発明の仕方で、偏心的に配置された通路開口部18を有し、その結果、心出し軸線28の水平の向きの場合、フィーダキャビティ30の主容積フラクションが心出し軸線の上方に、かくして通路開口部18の上方に配置されるようになっている。それと同時に、第1の成形要素は、2つの部分で形成され、具体的に言えば、第1の成形要素8′″は、金型パターンに対して接触面積が減少した状態で金型パターン4上に取り付け領域50を形成する第1の部分要素48を含む管状部分を備えている。管状部分48は、図4に示されているように、固定され又は図示していない変形実施形態としての第1の成形要素8′″では、第1の成形要素8′″の第2の部分要素49に対して心出し軸線28の方向に動くことができるよう形成されている。この場合、管状部分は、第1の成形要素8′″の第1の部分要素48として、フィーダインサート(2,2′,2″,2′″)のフットプリント表面を形成し、このフットプリント表面は、金型パターンに対してインターフェースをなし、第2の部分要素49は、管状部分を第2の成形要素10に連結するよう設計されている。
【0044】
本発明の変形実施形態としてのフィーダインサートでは、特に、第1の成形要素の第1の部分要素は、好ましくは、ブレーカーコアを形成する。この実施形態は、第1の部分要素の材料が金属で構成され又は金属製コンポーネントを含む場合に有利である。
【0045】
図5は、1つの金型パターン4上における多数のフィーダインサートの使用を示しており、この場合、回動可能な金型プレート6は、その垂直の向きの状態で既に示されている。しかしながら、2つのフィーダインサート2′,2″は、金型材料の押し固め前では依然としてこれらのそれぞれの初期位置にある。第2のフィーダインサートによって、鋳造用金型の少なくとも2つの領域への最適供給を、これらの領域中における凝固中に鋳物材料の縮みを保証する目的で保証することができる。フィーダインサート2′,2″の各々は、その通路開口部18を介して心出しピン20に押し嵌めされ、それと同時に、第1の成形要素8′の一部分は、第2の心出しピン34,42′を介して受け入れられる。金型パターン4の中央領域52上に配置されたフィーダインサート2′を支持する心出しピン34′は、一端部が金型パターン上に支持され、且つその他端部が金型プレートの方向に突き出たスタッド又はペグ36に設けられている心出し凹部32と接触状態にある。心出しピン42′は、第1の成形要素8″を金型プレートに対して定位置に保持し且つダクト40の形態をした換気開口部38中に突き出るスペーサ44′の一部である。取り付け部分46が金型プレートに平行に且つ垂直方向に延びるようスペーサ44′上に設けられている。取り付け部分46は、スペーサ44′と一緒になって、フィーダインサート2″を包囲している金型材料内において、金型プレートの取り出し後及びスペーサの取り出し後且つ垂直に分離された鋳造用金型の金型半部の組み立て後に換気機能を実行するキャビティを形成する手段としての空間を画定している。鋳造プロセス中、2つのフィーダインサートを充填し、かくして、互いに別個独立に、凝固プロセス中、鋳物の互いに間隔を置いた領域への液体金属の供給が可能である。かくして、製造されるべき鋳物の個々の付形が可能である。
【0046】
図1a〜図5に示されている第1の成形要素8,8′,8″,8′″の材料として、好ましくは、発熱性フィーダ材料が用いられるのが良い。変形例として、第1の成形要素8,8′,8″,8′″を形成するため、断熱性フィーダ材料又は金属、プラスチック、厚紙、これらの混合物及びこれらの複合材料から成る群から選択された他の何らかの材料を用いることができる。第2の成形要素10を形成するため、発熱性又は断熱性フィーダ材料が用いられ、或いは、第2の成形要素10は、少なくとも部分的に発熱性又は断熱性フィーダ材料から成る。
【0047】
図6a及び図6bは、第1の成形要素8′″を示しており、この第1の成形要素は、上述した第1の成形要素と同様、液体金属のための通路開口部18を備えた取り付け領域17を有し、通路開口部は、第1の成形要素8′″を図示していない関連の成形要素と共に押し嵌めされる心出しピンのための受け口としての役目を果たす。通路開口部18は、図6に示されているように、一方の側が平べったくされた長円形に対応した断面を有している。通路開口部の別の例示の実施形態は、長円形又は非円形であり、又は、平べったくされた円形、若しくは平べったくされた長円形の形状を有し又は三角形、五角形又は多角形である。通路開口部18に対応する心出しピン、特にその心出しピン足部は、周囲全体にわたって好ましくは通路開口部18の断面に対応した形状を有し、通路開口部の中央軸線に一致する心出し軸線28周りの第1の成形要素の回転を阻止する手段が心出しピンそれ自体によって提供されている。通路開口部は、好ましくは平坦な表面部分54を更に有している。通路開口部18は、入口領域56に隣接して位置し、入口領域56は、液体金属のために幾つかの領域が漏斗状に広がっている。第1の成形要素8′″は、使用中、上側壁57から心出し軸線28の方向に垂直に延びるリブ58を有し、このリブも又、「ウィリアムズストリップ」と呼ばれ、このリブにより、フィーダキャビティ内の液体金属の表面上への表皮の形成が阻止される。第1の成形要素8′″の外側輪郭上には、保持要素16,16′が配置され、これら保持要素により、第1及び第2の成形要素は、当初、互いに対してこれらの初期位置に保持される。第1の成形要素8′″は、図6aの記載では心出し軸線の上方に配置される領域に、2つの円筒形スタッド又はペグ36″を備え、スタッド又はペグ36″は、垂直方向に突き出ており、これらスタッド又はペグにより、第1の成形要素8′″を金型パターン(図示せず)又は金型プレートに対してその定位置に固定できる。この目的のため、金型パターン又は金型プレートの一部分とペグ又はスタッド36″との間に連結部を形成するスペーサ(図示せず)が用いられている。通路開口部18の平坦な表面部分54は、この場合、第1の成形要素8′″の当接面60と整列関係をなして配置され、この当接面は、心出しピン20の中央部分74(図10)の対応の支持面62に当接可能に設計されている。当接面60は、第1の成形要素の使用中、即ち、心出し軸線28の水平向きの場合、成形要素の下側壁64′″を形成する。
【0048】
図1a及び図1bに示されている第1の成形要素は、これらの設計を示すために図7亜及び図7bに詳細図で示されている。第1の成形要素8は、図6に示されている成形要素8′″とほぼ同じ設計のものであるが、壁64が第1の成形要素8の使用中、下側壁である壁という点において異なっており、成形要素8の当接面60と整列関係をなすようには形成されていない。ほぼ半円形のリブ66が壁64から延びており、このリブは、第1の成形要素8のほぼ全長にわたって心出し軸線28の方向に延びている。この場合、半円形リブ66の一部分は、当接面60を形成し、この当接面は、心出しピン20上で支持可能に通路開口部18の平坦な表面部分54と整列関係をなして延びている。図7a及び図7bに示されている例示の実施形態としての第1の成形要素8は、漏斗状に広がっている入口領域56、フィーダキャビティを幾つかのチャンバに分割すると共に上側壁57から心出し軸線28の方向に延びるリブ58、及び外側部から金型プレートの方向に突き出ると共に金型プレート又は金型パターン上の対応の空間と相互作用をなして第1の成形要素を定位置に固定するのに役立つペグ又はスタッド36″を有している。
【0049】
図8a及び図8bは、図3a〜図3cに示されている例示の実施形態としての第1の成形要素8″を詳細図で示しており、この場合、心出しピンの支持面62に対応した当接面に代えて、第1の成形要素は、その外側部上に金型パターン4又は金型プレート6(図3b)の方向に向いた2本のほぼ円筒形のペグ又はスタッド36′を有している。さらに、第1の成形要素8″は、2つの換気開口部38を備え、これら換気開口部38は、心出し軸線28に対して水平に延びるダクト40として形成されると共に図3に示された心出しピン34′を受け入れるよう設けられている。ダクト40は、好ましくは成形要素の内側部から成形要素の外側部に向かって円錐形をなして細まっている断面を有する。換気ダクトの機能を有するダクト40は、心出し軸線28の水平向きの場合、鋳造作業中、第1の成形要素8″上に上側壁の付近に形成される。第1の成形要素の使用中においては下側壁である壁64″は、全体が平板状の形態のものであり、取り付け領域17に形成された通路開口部18の平坦な表面部分54に平行に延びている。
【0050】
本発明の更に別の例示の実施形態としての第1の成形要素8IV図9a及び図9bに示されている。成形要素8IVは、上述の例示の実施形態の2本のペグ又はスタッドに代えて、たった1本のスタッド又はペグ36′″を有している。スタッド又はペグ36′″は、金型パターン4又は回動可能な金型プレート6(図13a)の方向に向いた第1の成形要素8IVの側上に配置されている。スタッド36′″は、長円形の断面を有し、このスタッドは図9bに示されているように、第1の成形要素8IVの2つの側方案内表面12,12′からほぼ等距離を置いて配置されている。さらに、スタッド又はペグ36′″上には、心出し軸線28に平行に延びるダクト40′の形態をした換気開口部38′が設けられている。フィーダキャビティからの換気のためのダクト40は、成形要素8IVの内側部から成形要素の外側部の方向に円錐形をなして細まっている断面を有する。上述の実施形態とは対照的に、第1の成形要素8IVは、フィーダキャビティを幾つかのチャンバに分割するリブを備えていない。金型パターン4又は回動可能な金型プレートの方へ向いた側部上には、取り付け領域17とスタッド又はペグ36′″との間で、勾配を有し又は斜めの形態のものである表面55が形成されている。この場合、金型パターン又は金型プレートと第1の成形要素8IVの斜め表面55との間の距離は、心出し軸線28から進んで換気開口部38′の方向に一様に増大する。第1の成形要素8IVは、上述の第1の成形要素の例示の実施形態と同様、貫流開口部18の下流側で漏斗状に広がる入口領域56を同様に有している。
【0051】
図6a〜図9bに示されている第1の成形要素8″,8′″,8IVを形成するための材料として、好ましくは発熱性フィーダ材料が用いられるのが良い。本発明のフィーダインサートの変形実施形態では、第1の成形要素8″,8′″,8IVを形成するために断熱性フィーダ材料又は金属、プラスチック、厚紙、これらの混合物及びこれらの複合材料から成る群から選択された他の何らかの材料を用いることができる。
【0052】
図10a及び図10bは、本発明のフィーダインサートを形成する第2の成形要素10を示しており、第2の成形要素の内側輪郭を形成する内側壁表面68,68′が部分的に、互いに平行に且つ心出し軸線28に平行に延びている。第2の成形要素10は、内側壁領域上に、円錐形をなして延びる壁部分70及び円筒形(又は変形例として、非円筒形)の凹部26を有し、凹部26は、特に、円錐形をなして延びる壁部分70に隣接して位置している。凹部26は、その寸法の面で、特に、凹部に対応した心出しピン先端部24(図10)の外寸と整合性が取られている。第2の成形要素10は、同様に、リブ58′を有し、リブ58′は、成形要素の使用中、成形要素の上側壁71から心出し軸線28の方向に垂直に延びると共に第2の成形要素の内部を幾つかのチャンバに同様に分割する。リブ58′は、同様に、ウィリアムズストリップの機能を有する。図10a及び図10bに示されている第2の成形要素を形成するため、発熱性又は断熱性フィーダ材料が用いられるのが良く、或いは、第2の成形要素10は、少なくとも部分的に発熱性又は断熱性フィーダ材料から成る。
【0053】
図11a及び図11bは、本発明のキットの一部である心出しピン20を示しており、このキットは、本発明に従って設計されたフィーダインサート及びフィーダインサートに対応した心出しピンで構成されている。心出しピン20は、心出しピン足部22及び心出しピン先端部24を有し、心出しピン先端部は、円筒形の形態のものであり且つ一端が半球形の形態のものである。心出しピン足部22は、長円形の基本的形状を有し、心出しピン足部は、中心軸線に垂直に延びるその主軸線に関し、心出しピン先端部の直径に対して1.5から2.5までの範囲の比を呈する直径を有している。心出しピン足部22は、一方の側が更に平べったくされており、この心出しピン足部は、第1の成形要素8〜8′″(図1図8)の平坦な表面部分54に対応した平坦な表面72を有している。心出しピン20に対するそれぞれ用いられているフィーダインサートの好ましい取り付けの向きは、平坦な表面72によって規定されており、心出しピンに対するフィーダインサートの不正確な取り付けが阻止される。心出しピン先端部24と心出しピン足部22は、ほぼ円錐形をなして延びる中央部分74によって結合され、中央部分74は、心出しピン足部22から心出しピン先端部24までの漸次移行部をなしている。心出しピン足部22の付近で一方の側部上に形成された平坦な表面72は、心出しピン20の中央部分34に沿う平坦な表面と一緒になって、支持面62を形成している。支持面62は、少なくとも部分的に第1の成形要素8,8′,8′″の当接面62に直接接し、それにより、心出しピン20に押し嵌めされたフィーダインサート2,2′,2′″が金型材料の押し固め中、定位置に最適状態で固定される。第1の成形要素及び/又は第2の成形要素は各々、フィーダインサートの使用中、垂直に延びる中心軸線に平行に延びている幅を有し、各成形要素は、これに垂直に延びる深さを有し、2つの成形要素の幅は、それぞれ2つの成形要素の深さに対して1.7から2.3までの範囲の比を呈している。
【0054】
図12a〜図12cは、本発明の実施形態としての心出しピン20′を示しており、この心出しピン20′は、変形例として、本発明のキットの一部であり、このキットは、本発明に従って設計されたフィーダインサート及びフィーダインサートに対応した心出しピンで構成されている。心出しピン20′は、心出しピン足部22′、心出しピン先端部24′及び実質的に円錐形をなして延びる中央部分74′を有している。心出しピン20′は、心出しピン足部22の付近の一方の側部上に、平坦な表面72′を有し、この平坦な表面72′は、本発明のこの例示の実施形態では、心出しピン足部22′から中央部分74′の半分以上にわたって延びている。特に心出しピンが立設状態で金型パターン又は回動可能な金型プレートに当たる表面に対して直角に延びる上述の平坦な表面72′は、第1の成形要素8,8′,8′″の当接面60を直接接触させることができる支持面62′を有している。
【0055】
本発明のフィーダインサート2,2′,2″,2′″が水平の向きに位置した(図1a、図2a、図3a、図4)金型パターン4又は金型プレート6に取り付けられ、フィーダインサート2,2′,2″,2′″がその第1の成形要素8,8′,8″,8′″及び第2の成形要素10を介して心出しピン20に押し嵌めされると、第1の成形要素8,8′,8″,8′″が金型パターン4と接触関係をなすようにされ、その結果、第1の成形要素8,8′,8″,8′″の通路開口部18は、金型パターン4の部分によって完全に覆われるようになる。通路開口部18が回動可能な金型プレート6の表面部分によって覆われる変形実施形態は示されていない。次に、金型パターン4及びフィーダインサート2,2′,2″,2′″が載せられている金型プレート6を約90°の角度まで回動させて金型プレート6が垂直な向き(図1b、図2b、図3b、図5)になるようにする。金型パターンに対する回転的に固定された向きが本発明に従って設計された成形要素8,8′,8″,8′″及びこれに対応した心出しピン20によって保証される。次に、垂直の向きでは、金型材料をフィーダインサート2,2′,2″,2′″が載せられている少なくとも金型プレートの側部上に注ぎ込まれ(詳細には示されていない)、その結果、フィーダインサート2,2′,2″,2′″の第1の成形要素8,8′,8″,8′″及び第2の成形要素10が金型材料によって事実上完全に包み込まれるようになる。フィーダインサート2,2′,2″,2′″を包囲している金型材料が押し固められ、押し固め中、主として圧力(図3cの矢印45)が心出し軸線28の方向でフィーダインサート2,2′,2″,2′″に作用する。圧力が十分な値に達すると、第1の成形要素8,8′,8″,8′″上の保持要素16,16′が切り離され又は変形し、その結果、成形要素を互いに対して入れ子式に動かすことができるようになり、第2の成形要素10は、部分的に第1の成形要素8,8′,8″,8′″上に押し嵌めされ、それと同時に、フィーダキャビティ30の容積を減少させる。この運動中、第1の成形要素8,8′,8″,8′″は、金型パターン4又は金型プレート6に対するその位置を変えない。押し固め後、製造された金型半部を金型プレート6、金型プレート4及び心出しピン20から分離し、1つ又は2つ以上のフィーダインサート2,2′,2″,2′″が製造された金型半部内に位置するようになる。フィーダインサート2″がフィーダインサート2″を換気する換気開口部38を有すると共にスペーサ44に連結された取り付け部分46が金型プレート上に設けられた場合、回動可能な金型プレート6の取り外し後、換気ダクトが金型半部内に作られ、この換気ダクトを介して、換気ダクト空気が鋳造プロセス中、フィーダキャビティから逃げ出すことができる。
【0056】
図13a〜図15は、鋳物を製造する方法の変形実施形態を示しており、本発明に従って設計されたフィーダインサート2IVがその通路開口部18を介して且つ第1の成形要素8IVの換気開口部38′を介して、第1の金型プレート6′上に配置されている2本の心出しピン20,42′に押し嵌めされ又は取り付けられる。このプロセスの際、フィーダインサート2IVは、その取り付け領域17及びスタッド又はペグ36′″を介して第1の金型プレート6′に直接接触し、第1の金型プレート6′は、この時点では、水平の向きにある。第1の成形要素8IV及び第2の成形要素10を保持要素16,16′によって互いに対してこれらの初期位置で固定する。次に、第1の金型プレート6′を回動させて垂直の向き(図13b)にし、その結果、フィーダインサート2IVの心出し軸線28が水平の向きになると共に第1の金型プレート6′が第2の金型プレート6″に平行に差し向けられるようにする。この例示の実施形態では,フィーダインサート2IVだけを第1の金型プレート6′に取り付ける。換気ダクトを形成するために設けられている金型パターン4′及び取り付け部分46′を第2の金型プレート6″上に配置する。図14で理解できるように、2つの金型プレート6′,6″を互いに平行に差し向けた後、金型プレート周りにチャンバ76,76′を作り、次に、金型材料78をこれらチャンバ中に注ぎ込む。チャンバ76,76′の充填後、次に、金型材料78をチャンバ内で圧縮し、かくして押し固める。金型材料の押し固め中、第2の成形要素10を第1の成形要素8IV上でこれに沿って入れ子状に動かしてフィーダインサート2IVの全高を初期位置(図13a)における全高に対してかなり減少させる。第1の成形要素8IVの表面55が第1の金型プレート6′に対して斜めに形成されるので(図13b)、第1の金型プレート6′の表面と第1の成形要素8IVとの間の領域にチャンバ76,76′中への金型材料の注ぎ込み中、金型材料を適度に充填し、取り付け領域17周りにおける所望の金型材料押し固めを押し固めプロセス中に達成する。金型材料78の押し固めにより、鋳造用金型のための堅固な金型半部80,80′をチャンバの各々内に作り、第1及び第2の金型プレート6′,6″及びかくしてそれと同時に金型パターン4′及び取り付け部分46′を取り外した後、これら金型半部を組み立てて鋳造用金型82を形成するのが良い(図15を比較参照されたい)。製造された鋳造用金型82は、液体金属を鋳造用金型中に注ぎ込むためのキャビティ84を有し、このキャビティは、製造されるべき鋳物の形状に実質的に一致している。キャビティ84は、第1の金型半部80内のフィーダインサート2IVへの移行部86を有する。本発明のフィーダインサートの第1の成形要素8IVに設けられている換気開口部38′と合致する換気ダクト88を鋳造用金型82内に形成し、この換気ダクトにより、有利には、フィーダインサート2IVに鋳造作業中、液体金属を事実上完全に充填するようにするのが良く、その結果、鋳造用金型82のキャビティ内の金属の縮み中、液体金属の供給を保証することができるようになっている。換気ダクト88(図15)を取り付け部分46′が先に配置された場所に配置する(図13b及び図14を比較参照されたい)。
【0057】
添付の図中、同一のコンポーネントは、同一の参照符号で示されている。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c
図4
図5
図6a
図6b
図7a
図7b
図8a
図8b
図9a
図9b
図10a
図10b
図11a
図11b
図12a
図12b
図12c
図13a
図13b
図14
図15