(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6402327
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】噴霧腐食試験機
(51)【国際特許分類】
G01N 17/00 20060101AFI20181001BHJP
【FI】
G01N17/00
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-33561(P2017-33561)
(22)【出願日】2017年2月24日
(65)【公開番号】特開2018-138893(P2018-138893A)
(43)【公開日】2018年9月6日
【審査請求日】2018年3月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000107583
【氏名又は名称】スガ試験機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】特許業務法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須賀 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】名取 悦二
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 和哉
【審査官】
山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−231997(JP,A)
【文献】
特開2013−127389(JP,A)
【文献】
特開平05−071777(JP,A)
【文献】
特開平05−208129(JP,A)
【文献】
特開2005−118760(JP,A)
【文献】
特開平05−285366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00 − 17/04
B01J 7/00 − 7/02
F24F 6/00 − 6/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験槽と、
前記試験槽内に設けられ、腐食液が供給される第1のノズルと、飽和空気が供給される第2のノズルとを含み、前記腐食液を噴霧する噴霧部と、
前記第2のノズルに前記飽和空気を供給する空気飽和器と、
鉛直方向において前記空気飽和器よりも高い位置に配置された水タンクと、
前記空気飽和器と前記水タンクとを繋ぐ空気配管と、
前記空気飽和器と前記水タンクとを繋ぐ水配管と
を備えた噴霧腐食試験機。
【請求項2】
前記空気配管に設けられた空気バルブと、
前記水配管に設けられた給水バルブと
をさらに備えた
請求項1記載の噴霧腐食試験機。
【請求項3】
前記空気飽和器内における第1の水面高さを検知する第1の水位計と、
前記第1の水面高さが第1の下限以下であるとき前記空気バルブおよび前記給水バルブを開状態とし、前記第1の水面高さが第1の上限に達するまで前記空気バルブおよび前記給水バルブの開状態を維持する制御部をさらに備えた
請求項2記載の噴霧腐食試験機。
【請求項4】
外部に露出した一端と、前記水タンクと接続され、または前記空気配管のうちの前記空気バルブと前記水タンクとの間の部分と接続された他端とを有する排気管と、
前記排気管に設けられた排気バルブと、
外部から水が供給される一端と、前記水タンクと接続され、または前記水配管のうちの前記給水バルブと前記水タンクとの間の部分と接続された他端とを有する補給配管と、
前記補給配管に設けられた補給バルブと、
前記水タンク内における第2の水面高さを検知する第2の水位計と
をさらに備え、
前記制御部は、
前記第2の水面高さが第2の下限以下であるとき、前記空気バルブおよび前記給水バルブを閉状態とすると共に前記補給バルブおよび前記排気バルブを開状態とし、前記第2の水面高さが第2の上限に達するまで前記空気バルブおよび前記給水バルブの閉状態ならびに前記補給バルブおよび前記排気バルブの開状態を維持する
請求項3記載の噴霧腐食試験機。
【請求項5】
前記空気飽和器内における第1の水面高さよりも前記水タンク内における第2の水面高さが高い
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の噴霧腐食試験機。
【請求項6】
圧縮空気供給部と、
前記圧縮空気供給部と前記空気飽和器とを繋ぐ圧縮空気配管と
をさらに備えた
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の噴霧腐食試験機。
【請求項7】
前記空気配管に設けられた絞り弁をさらに備えた
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の噴霧腐食試験機。
【請求項8】
試験槽と、
前記試験槽内に設けられ、腐食液が供給される第1のノズルと、飽和空気が供給される第2のノズルとを含み、前記腐食液を噴霧する噴霧部と、
前記第2のノズルに前記飽和空気を供給する空気飽和器と、
水タンクと、
前記空気飽和器と前記水タンクとを繋ぐ水配管と、
前記水タンク内の第1の圧力を、前記空気飽和器内の第2の圧力よりも高くするように調節する第1の圧力調節器と
を備えた噴霧腐食試験機。
【請求項9】
圧縮空気供給部と、
前記圧縮空気供給部と前記空気飽和器とを繋ぐ第1の圧縮空気配管と、
前記第1の圧縮空気配管に設けられ、前記空気飽和器内の前記第2の圧力を調節する第2の圧力調節器と
をさらに備えた
請求項8記載の噴霧腐食試験機。
【請求項10】
前記圧縮空気供給部と前記水タンクとを繋ぐ第2の圧縮空気配管をさらに備え、
前記第1の圧力調節器は、前記第2の圧縮空気配管に設けられている
請求項9記載の噴霧腐食試験機。
【請求項11】
前記第2の圧縮空気配管のうちの、前記第1の圧力調節器と前記水タンクとの間の部分に設けられた空気バルブと、
前記水配管に設けられた給水バルブと
をさらに備えた請求項10記載の噴霧腐食試験機。
【請求項12】
前記空気飽和器内における第1の水面高さを検知する第1の水位計と、
前記第1の水面高さが第1の下限以下であるとき前記空気バルブおよび前記給水バルブを開状態とし、前記第1の水面高さが第1の上限に達するまで前記空気バルブおよび前記給水バルブの開状態を維持する制御部をさらに備えた
請求項11記載の噴霧腐食試験機。
【請求項13】
外部に露出した一端と、前記水タンクと接続され、または前記第2の圧縮空気配管のうちの前記空気バルブと前記水タンクとの間の部分と接続された他端とを有する排気管と、
前記排気管に設けられた排気バルブと、
外部から水が供給される一端と、前記水タンクと接続され、または前記水配管のうちの前記給水バルブと前記水タンクとの間の部分と接続された他端とを有する補給配管と、
前記補給配管に設けられた補給バルブと、
前記水タンク内における第2の水面高さを検知する第2の水位計と、
制御部と
をさらに備え、
前記制御部は、
前記第2の水面高さが第2の下限以下であるとき、前記空気バルブおよび前記給水バルブを閉状態とすると共に前記補給バルブおよび前記排気バルブを開状態とし、前記第2の水面高さが第2の上限に達するまで前記空気バルブおよび前記給水バルブの閉状態ならびに前記補給バルブおよび前記排気バルブの開状態を維持する
請求項11記載の噴霧腐食試験機。
【請求項14】
外部に露出した一端と、前記水タンクと接続され、または前記第2の圧縮空気配管のうちの前記空気バルブと前記水タンクとの間の部分と接続された他端とを有する排気管と、
前記排気管に設けられた排気バルブと、
外部から水が供給される一端と、前記水タンクと接続され、または前記水配管のうちの前記給水バルブと前記水タンクとの間の部分と接続された他端とを有する補給配管と、
前記補給配管に設けられた補給バルブと、
前記水タンク内における第2の水面高さを検知する第2の水位計と
をさらに備え、
前記制御部は、
前記第2の水面高さが第2の下限以下であるとき、前記空気バルブおよび前記給水バルブを閉状態とすると共に前記補給バルブおよび前記排気バルブを開状態とし、前記第2の水面高さが第2の上限に達するまで前記空気バルブおよび前記給水バルブの閉状態ならびに前記補給バルブおよび前記排気バルブの開状態を維持する
請求項12記載の噴霧腐食試験機。
【請求項15】
前記空気飽和器内の水を加熱する第1のヒータと、
前記水タンク内の水を加熱する第2のヒータと、
前記空気飽和器内の水の温度と前記水タンク内の水の温度とが等しくなるように、前記第1のヒータおよび前記第2のヒータの制御を行う制御部と
をさらに備えた
請求項1または請求項8に記載の噴霧腐食試験機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種材料の耐腐食性を調べる噴霧腐食試験を行う噴霧腐食試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、噴霧腐食試験機は、試験槽内に空気ノズルと液ノズルとを有する噴霧器を備えており、空気ノズルから噴出される飽和圧縮空気のベンチュリ効果により吸い上げられた液ノズル内の腐食液(塩水などの腐食性の溶液)が、微細な粒子として試験槽内に載置された試験片に対して一様に噴霧されるように構成されている。
【0003】
また、より自然環境に近似し促進性の高い試験として、上記の噴霧腐食試験と乾燥試験、湿潤試験、浸漬試験および低温試験といった他の試験とを組み合わせて1サイクルとし、このサイクルを繰り返して試験片を暴露する複合サイクル試験がある。この複合サイクル試験を行うことのできる複合サイクル試験機も噴霧腐食試験機の一つとして既に用いられている。
【0004】
噴霧腐食試験機では、腐食液を噴霧する際に空気飽和器で生成された飽和圧縮空気が連続的に空気ノズルに送られる。空気飽和器は、その内部に水を保持すると共にその水中に設置された発泡管を有している。その発泡管には、圧縮空気供給部で生成されたのち圧力調節器で圧力が調節された圧縮空気が導入され、空気飽和器内の水に発泡するようになっている。試験槽内温度および試験槽内に噴霧される腐食液の温度が例えば35℃となるように、空気飽和器の内部の水は所定の温度に制御される(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5913197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の噴霧腐食試験機では、噴霧腐食試験中においては、空気飽和器内の水が圧縮空気を飽和させ飽和圧縮空気を生成する。その飽和圧縮空気は空気ノズルに送られるので、空気飽和器内の水が除々に減少していくこととなる。そのため、長時間連続して噴霧腐食試験を実施する際には、試験の途中であっても空気飽和器内に水を供給する必要がある。従来の噴霧腐食試験機では、例えば一時的に空気飽和器内部の圧力を大気圧と同等となるまで下げたのち、空気飽和器への給水を実施していた。したがって、給水時は噴霧器からの腐食液の噴霧を停止していた。
【0007】
あるいは、給水する水に対し、空気飽和器内の圧力よりも高い圧力をポンプ等により加え、給水圧を高めた状態で空気飽和器に給水を実施していた。
【0008】
しかしながら、一時的に空気飽和器内部の圧力を大気圧と同等になるまで下げたのち空気飽和器への給水を実施する方法では、噴霧圧力が大気圧と同等となり、腐食液の噴霧が一時的に停止されるので、噴霧腐食試験の再現性および精度への影響が及ぶ可能性が懸念される。また、給水圧を空気飽和器内の圧力よりも高くして空気飽和器への給水を実施する方法では、別途、加圧ポンプなどの機器を設置する必要があること、噴霧腐食試験機の設置環境に応じて給水圧の調整が必要となること、補給する水の温度を調節する必要があること、などの問題があるうえ、給水時には空気ノズルに送られる飽和圧縮空気にも高い圧力が加わってしまう恐れもある。
【0009】
したがって、運転中の給水が可能であり、適切な腐食液の噴霧量を安定して得ることのできる噴霧腐食試験機を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施態様に係る第1の噴霧腐食試験機は、試験槽と、この試験槽内に設けられ、腐食液が供給される第1のノズルと飽和空気が供給される第2のノズルとを含み腐食液を噴霧する噴霧部と、第2のノズルに飽和空気を供給する空気飽和器と、鉛直方向において空気飽和器よりも高い位置に配置された水タンクと、空気飽和器と水タンクとを繋ぐ空気配管と、空気飽和器と水タンクとを繋ぐ水配管とを備えたものである。
【0011】
本発明の一実施態様に係る第1の噴霧腐食試験機では、空気飽和器と空気配管および水配管により繋がれた水タンクが、鉛直方向において空気飽和器よりも高い位置に配置されている。このように配置することで、高低差により水タンクから空気飽和器内に給水される。このため、給水のために加圧手段を別途設けることなく、噴霧試験中であっても噴霧圧力をほとんど変化させずに空気飽和器に給水することが可能である。したがって、空気飽和器への給水中であっても噴霧腐食試験を中断することなく一定の圧力を保ったまま空気ノズルに飽和圧縮空気を供給することができる。また、空気飽和器の圧力の設定を変更しても、水タンクにおける圧力調整は不要である。このため、試験条件の設定を簡便に行うことができ、試験条件の設定ミス等の人為的なミスを減らすことができる。
【0012】
本発明の一実施態様に係る第1の噴霧腐食試験機では、空気配管に設けられた空気バルブと、水配管に設けられた給水バルブとをさらに備えるとよい。空気バルブの開閉状態および給水バルブの開閉状態を各々変化させることによって水タンクから空気飽和器内への給水を制御することが可能となるからである。さらに、空気飽和器内における第1の水面高さを検知する第1の水位計と、その第1の水面高さが第1の下限以下であるとき空気バルブおよび給水バルブを開状態とし、第1の水面高さが第1の上限に達するまで空気バルブおよび給水バルブの開状態を維持する制御部を備えるとよい。空気飽和器内の水位の自動制御が可能となるからである。
【0013】
本発明の一実施態様に係る第1の噴霧腐食試験機では、排気管と、排気バルブと、補給配管と、補給バルブと、第2の水位計とをさらに備えるとよい。排気管は、外部に露出した一端と、水タンクと接続され、または空気配管のうちの空気バルブと水タンクとの間の部分と接続された他端とを有する。排気バルブは、排気管に設けられている。補給配管は、外部から水が供給される一端と、水タンクと接続され、または水配管のうちの給水バルブと水タンクとの間の部分と接続された他端とを有する。補給バルブは、補給配管に設けられている。第2の水位計は、水タンク内における第2の水面高さを検知する。ここで制御部は、第2の水面高さが第2の下限以下であるとき、空気バルブおよび給水バルブを閉状態とすると共に補給バルブおよび排気バルブを開状態とし、第2の水面高さが第2の上限に達するまで空気バルブおよび給水バルブの閉状態ならびに補給バルブおよび排気バルブの開状態を維持するものであるとよい。
【0014】
本発明の一実施態様に係る第1の噴霧腐食試験機では、空気飽和器内における第1の水面高さよりも水タンク内における第2の水面高さが高いとよい。
【0015】
本発明の一実施態様に係る第1の噴霧腐食試験機では、圧縮空気供給部と、この圧縮空気供給部と空気飽和器とを繋ぐ圧縮空気配管とをさらに備えるとよい。
【0016】
本発明の一実施態様に係る第1の噴霧腐食試験機では、空気配管に設けられた絞り弁をさらに備えるとよい。
【0017】
本発明の一実施態様に係る第2の噴霧腐食試験機は、試験槽と、その試験槽内に設けられ、腐食液が供給される第1のノズルと飽和空気が供給される第2のノズルとを含み腐食液を噴霧する噴霧部と、第2のノズルに飽和空気を供給する空気飽和器と、水タンクと、空気飽和器と水タンクとを繋ぐ水配管と、水タンク内の第1の圧力を、空気飽和器内の第2の圧力よりも高くするように調節する第1の圧力調節器を備えたものである。
【0018】
本発明の一実施態様に係る第2の噴霧腐食試験機では、水配管により空気飽和器と繋がれた水タンク内の第1の圧力を、第1の圧力調節器により、空気飽和器内の第2の圧力よりも高くするように調節するようになっている。このように水タンク内の第1の圧力が空気飽和器内の第2の圧力よりも高いことによって、水タンクから空気飽和器内に給水される。このため、給水のために加圧手段を別途設けることなく、噴霧試験中であっても噴霧圧力をほとんど変化させずに空気飽和器に給水することが可能である。したがって、空気飽和器への給水中であっても噴霧腐食試験を中断することなく一定の圧力を保ったまま空気ノズルに飽和圧縮空気を供給することができる。
【0019】
本発明の一実施態様に係る第2の噴霧腐食試験機では、圧縮空気供給部と、その圧縮空気供給部と空気飽和器とを繋ぐ第1の圧縮空気配管と、その第1の圧縮空気配管に設けられ、空気飽和器内の第2の圧力を調節する第2の圧力調節器とをさらに備えるようにするとよい。さらにその場合、圧縮空気供給部と水タンクとを繋ぐ第2の圧縮空気配管を備え、第1の圧力調節器が、第2の圧縮空気配管に設けられているとよい。全体構成が簡素化されるからである。さらにその場合、第2の圧縮空気配管のうちの、第1の圧力調節器と水タンクとの間の部分に設けられた空気バルブと、水配管に設けられた給水バルブと、空気飽和器内における第1の水面高さを検知する第1の水位計と、第1の水面高さが第1の下限以下であるとき空気バルブおよび給水バルブを開状態とし、第1の水面高さが第1の上限に達するまで空気バルブおよび給水バルブの開状態を維持する制御部を備えるとよい。空気飽和器内の水位の自動制御が可能となるからである。
【0020】
本発明の一実施態様に係る第2の噴霧腐食試験機では、排気管と、排気バルブと、補給配管と、補給バルブと、第2の水位計とをさらに備えているとよい。排気管は、外部に露出した一端と、水タンクと接続され、または第2の圧縮空気配管のうちの空気バルブと水タンクとの間の部分と接続された他端とを有する。排気バルブは、排気管に設けられている。補給配管は、外部から水が供給される一端と、水タンクと接続され、または水配管のうちの給水バルブと水タンクとの間の部分と接続された他端とを有する。補給バルブは、補給配管に設けられている。第2の水位計は、水タンク内における第2の水面高さを検知する。ここで制御部は、第2の水面高さが第2の下限値以下であるとき、空気バルブおよび給水バルブを閉状態とすると共に補給バルブおよび排気バルブを開状態とし、第2の水面高さが第2の上限値に達するまで空気バルブおよび給水バルブの閉状態ならびに補給バルブおよび排気バルブの開状態を維持するものであるとよい。
【0021】
本発明の一実施態様に係る第1および第2の噴霧腐食試験機では、空気飽和器内の水を加熱する第1のヒータと水タンク内の水を加熱する第2のヒータとをさらに備えるとよい。ここで制御部は、空気飽和器内の水の温度と水タンク内の水の温度とが等しくなるようにするものであるとよい。給水温度を空気飽和器内の水温と同じにすることで、給水時の空気飽和器の内の水温低下を防止することが可能となるからである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一実施の形態に係る噴霧腐食試験機によれば、給水のための加圧手段を別途設けずに、空気飽和器内の圧力にほとんど影響を及ぼすことなく、水タンクから空気飽和器へ水を供給することができる。これにより、空気飽和器への給水中であっても噴霧腐食試験を中断することなく一定の圧力を保ったまま空気ノズルに飽和圧縮空気を供給することができる。したがって、運転中の給水を可能としつつ、適切な噴霧量を安定して得ることができ、高精度の噴霧腐食試験の実施が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る噴霧腐食試験機の構成例を表す概略図である。
【
図2】
図1に示した噴霧腐食試験機の要部の構成例を表す概略図である。
【
図3】本発明の第2の実施の形態に係る噴霧腐食試験機の構成例を表す概略図である。
【
図4】
図3に示した噴霧腐食試験機の要部の構成例を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、その説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(噴霧腐食試験機の例)
2.第2の実施の形態(他の噴霧腐食試験機の例)
【0025】
<1.第1の実施の形態>
[噴霧腐食試験機1の構成]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る噴霧腐食試験機1の概略構成例を模式的に表したものである。また、
図2は、
図1に示した噴霧腐食試験機1の飽和空気供給部4および給水部7の構成例を拡大して表したものである。
【0026】
図1に示したように、この噴霧腐食試験機1は、試験槽2、噴霧部3、飽和空気供給部4、腐食液供給部5、給水部7、制御部8および湿度発生機9を備える。
【0027】
噴霧腐食試験機1は、試験槽2の内部に載置した試験片Sに対し塩水などの腐食液を噴霧し、その耐食性を評価するという噴霧腐食試験を行うものである。ここで、腐食液としては、例えば塩化ナトリウムを含む中性塩水溶液のほか、塩化ナトリウム溶液に酢酸を加えた酢酸酸性塩水溶液、または、塩化ナトリウム、塩化第二銅および酢酸を含むキャス液などを用いる(例えば腐食液として塩水を用いる場合には、JIS Z 2371:2015「塩水噴霧試験方法」を参照)。
【0028】
試験槽2は、その内部に試験片Sおよび噴霧部3を収容する容器であり、噴霧部3によって噴霧される腐食液を試験片Sの上に自由落下させる空間を有する。その天井部分は、噴霧されて天井部分に付着した腐食液が試験片Sに落下しないようにするため、切妻屋根形状となっている。
【0029】
噴霧部3は、試験槽2の内部に立設する噴霧塔31と、その噴霧塔31の内部に設けられたミストマイザー35とを有する。噴霧塔31は、鉛直方向に延在する円筒31Aと、その上方に配置された方向体31Bとを有する。円筒31Aの下部には空気流通孔(図示せず)がいくつか設けられていてもよい。円筒31Aの内部空間には、その側面からミストマイザー35が挿入されている。ミストマイザー35は、先端をとがらせた直管状の液ノズル33と、先端をとがらせた直管を直角に曲げたL字状の空気ノズル32とを有し、同一平面内で液ノズル33の先端部および空気ノズル32の先端部が近接するようにブロック34でそれらを一体に構成したものである。
【0030】
飽和空気供給部4は、例えば圧縮空気供給部41、圧力調節器42、空気飽和器43、発泡管44、ヒータ45、飽和空気供給管46、圧縮空気配管49を有する。
【0031】
圧縮空気供給部41は圧縮空気を生成し、圧縮空気配管49を介して空気飽和器43へその圧縮空気を送るものである。圧力調節器42は、圧縮空気供給部41で生成されて圧縮空気配管49に導入された圧縮空気の圧力を調節する。空気飽和器43は、圧縮空気供給部41で生成され、圧力調節器42により圧力が調節された圧縮空気を飽和空気(飽和状態の圧縮空気)にするためのものであり、その内部に所定量の水(脱イオン水や蒸留水などの、不純物を取り除いたもの)を収容している。発泡管44は、空気飽和器43の内部の水の中に配置され、一端が圧縮空気配管49と接続された金属管であり、その一部に設けられた複数の細孔から空気飽和器43の内部の水の中に圧縮空気を発泡させ、飽和空気とするものである。ヒータ45は、空気飽和器43の内部の水の中に配置されており、水の加熱を行うものである。飽和空気供給管46は、空気飽和器43において生成された飽和空気を噴霧部3の空気ノズル32に送る配管である。飽和空気供給管46の一端は、空気ノズル32の他端と接続されており、飽和空気供給管46の他端は、空気飽和器43の内部に収容された水の水面43S上の空間に位置している。
【0032】
飽和空気供給部4は、さらに、空気飽和器43内に温度センサ45Sおよび圧力センサ(図示せず)を有するものであってもよい。それらの温度センサ45Sおよび圧力センサは、それぞれ、空気飽和器43内の温度および圧力を計測するものである。温度センサ45Sは、例えば熱電対温度計や白金抵抗測温計であり、圧力センサは、例えば歪ゲージ型の圧力計や静電容量型の圧力計である。
【0033】
給水部7は、例えば水タンク76、補給配管73、補給バルブ73V、排気管74、排気バルブ74V、ヒータ75を有する。
【0034】
水タンク76は、空気飽和器43へ補給する水を一時的に貯蔵する容器であり、鉛直方向において空気飽和器43よりも高い位置に配置されている。すなわち、空気飽和器43内における水面43Sの高さよりも水タンク76内における水面7Sの高さのほうが高い位置にある。
【0035】
図2に、噴霧腐食試験機1の飽和空気供給部4および給水部7の構成例を拡大して表す。
図2に示したように、噴霧腐食試験機1には、空気飽和器43と水タンク76とを繋ぐ空気配管71と、空気飽和器43と水タンク76とを繋ぐ給水配管72とがそれぞれ設けられている。空気配管71は、空気飽和器43の水面43S上の空間と接続された端部71T1と、水タンク76の水面7S上の空間と接続された端部71T2とを有している。給水配管72は、例えば水タンク76のうち、水が満たされた最下部近傍と接続された端部72T1と、例えば空気飽和器43の底面と接続された端部72T2とを有している。空気配管71には空気バルブ71Vが設けられ、給水配管72には給水バルブ72Vが設けられている。
【0036】
さらに、空気配管71には、絞り弁6が設けられている。絞り弁6は、水タンク76から空気飽和器43内へ給水するために、空気バルブ71Vおよび給水バルブ72Vを開状態にし、空気飽和器43内の圧力と水タンク76内の圧力を同等にする動作において、噴霧圧力の変化をさらに低減させるものである。
【0037】
さらに、空気飽和器43内には、空気飽和器43内における水面43Sの高さを検知する水位計43Lが設けられている。水位計43Lは、鉛直方向において異なる位置に、センサ43LH、センサ43LLおよびセンサ43L0を有している。センサ43LH、センサ43LLおよびセンサ43L0は、いずれも例えばフロート式水位計であり、例えば制御部8に水面43Sの高さに関する情報を送信する。センサ43LHは、水面43Sの高さが上限に達したか否かを検出し、センサ43LLは、水面43Sの高さが下限に達したか否かを検出する。また、センサ43L0は、空気飽和器43の空焚きを防止するためのセンサである。例えば水面43Sの高さが下限に達したのち、空気飽和器43内に給水がなされずに水面43Sの高さがセンサ43L0の位置まで低下すると、ヒータ45への通電が停止されるようになっている。したがって、センサ43L0は、ヒータ45よりも高い位置に設けられている。
【0038】
この噴霧腐食試験機1では、制御部8は、水面43Sの高さが下限以下であるとき空気バルブ71Vおよび給水バルブ72Vの双方を開状態とし、水面43Sの高さが上限に達するまで空気バルブ71Vおよび給水バルブ72Vの双方の開状態を維持するよう、空気バルブ71Vおよび給水バルブ72Vの制御を行う。
【0039】
給水部7は、さらに、補給配管73と、その補給配管73に設けられた補給バルブ73Vとを備えている。補給配管73は外部の水源から水タンク76へ、空気飽和器43で用いる水を補給するための配管であり、外部から水が供給される一端と、分岐部C1において給水配管72と接続された他端とを有する。なお、補給配管73の他端は、水タンク76と直接接続されていてもよい。
【0040】
給水部7は、さらに、排気管74と、その排気管74に設けられた排気バルブ74Vとを備えている。排気管74は、水タンク76内に水を補給する際に水タンク76内の圧力を大気圧に戻すための配管であり、外部に露出した一端と、分岐部C2において空気配管71と接続された他端とを有する。なお、排気管74の他端は、水タンク76と直接接続されていてもよい。
【0041】
さらに、水タンク76内には、水タンク76内における水面7Sの高さを検知する水位計7Lが設けられている。水位計7Lは、鉛直方向において異なる位置に、センサ7LHおよびセンサ7LLを有している。センサ7LHおよびセンサ7LLはいずれも例えばフロート式水位計であり、例えば制御部8に水面7Sの高さに関する情報を送信する。センサ7LHは、水面7Sの高さが上限に達したか否かを検出し、センサ7LLは、水面7Sの高さが下限に達したか否かを検出する。また、水タンク76内の水を加熱するヒータ75を設け、制御部8により、水タンク76内の水の温度が空気飽和器43内の水の温度と等しくなるよう制御するとよい。
【0042】
水タンク76内には、さらに、温度センサ75Sおよび圧力センサ(図示しない)を有するものであってもよい。温度センサ75Sは、水タンク76内の水の温度を計測するものであり、圧力センサは水タンク76内の圧力を計測するものである。温度センサ75Sは、例えば熱電対温度計や白金抵抗測温計であり、圧力センサは、例えば歪ゲージ型の圧力計や静電容量型の圧力計である。
【0043】
この噴霧腐食試験機1では、制御部8は、水面7Sの高さが下限以下であるとき空気バルブ71Vおよび給水バルブ72Vの双方を閉状態とすると共に補給バルブ73Vおよび排気バルブ74Vの双方を開状態とし、水面7Sの高さが上限に達するまで空気バルブ71Vおよび給水バルブ72Vの閉状態ならびに補給バルブ73Vおよび排気バルブ74Vの開状態を維持するよう、空気バルブ71Vおよび給水バルブ72Vの制御ならびに補給バルブ73Vおよび排気バルブ74Vの制御を行う。
【0044】
腐食液供給部5は、上記した腐食液を保持する溶液溜め51と、導管52と、補給用の腐食液を貯蔵する補給タンク53と、導管54とを有する。溶液溜め51は噴霧塔31の直下に配置され、導管52によって液ノズル33と接続されている。これにより、溶液溜め51において保持されている腐食液が液ノズル33を介して噴霧塔31に供給可能となっている。
【0045】
湿度発生機9は、試験槽2の下方に配置されており、蒸気を生成して試験槽2内に供給する。導管91は、例えば外部の水供給源から湿度発生機9へ水を導入する配管である。この湿度発生機9によって試験槽2内の温度を所定の値に制御しつつ、試験槽2内の湿度を高く維持することができる。
【0046】
制御部8は中央演算処理装置(CPU)やメモリを有するコンピュータを利用したものである。制御部8は、メモリに予め記憶させた所定のプログラムに従い、また、腐食液の噴霧時間、試験槽2内の温度および腐食液の温度などの各種データに基づき、CPUが動作することによって噴霧腐食試験の実行制御を行う。
【0047】
[噴霧腐食試験機1の動作]
(噴霧動作)
噴霧腐食試験機1では、試験片Sが所定位置に載置された試験槽2内が、所定の試験温度(一般には35℃)に調整された状態で噴霧塔31から腐食液が噴霧される。試験槽2内に噴霧された霧状の腐食液(噴霧液)は、自然落下によって試験片S上に付着して試験片Sの腐食を促進させる。
【0048】
具体的には、まず、圧縮空気供給部41において圧縮空気が生成され、その圧縮空気が圧縮空気配管49を介して空気飽和器43へ送られる。その際、圧力調節器42により、空気飽和器43へ送られる圧縮空気の圧力が所定値(一般には0.098MPa)に設定される。圧力調節器42を経て空気飽和器43の内部へ導入された圧縮空気は、発泡管44により空気飽和器43の内部の水を通過することで飽和空気となる。ここで、空気飽和器43の内部の水は、ヒータ45により所定の温度(例えば47℃)となるように加熱される。空気飽和器43において生成された飽和空気は、空気飽和器43の上部から飽和空気供給管46を通じて噴霧部3の空気ノズル32に送られ、空気ノズル32の先端部の噴出孔から噴出される。これに伴い、空気ノズル32に近接配置された液ノズル33の内部の腐食液が、空気ノズル32から噴出される飽和空気の流れに起因するベンチュリ効果により吸引される。この結果、腐食液が例えば5μmから30μm程度の微細な粒子として噴霧塔31の上部から試験槽2内にほぼ均一に噴霧される。
【0049】
(水タンク76から空気飽和器43への給水動作)
この噴霧腐食試験機1では、噴霧腐食試験中であっても水タンク76から空気飽和器43への給水を行うことができる。なお、噴霧腐食試験の際には、通常、空気バルブ71V、給水バルブ72V、補給バルブ73Vおよび排気バルブ74Vはいずれも閉状態とされる。具体的には、水位計43Lのセンサ43LLにより水面43Sの高さが下限に達したことが検出されると、その旨の検出信号が制御部8へ送信される。その検出信号を受けた制御部8は、空気バルブ71Vおよび給水バルブ72Vの双方を開状態とする。これにより、給水配管72を通じて、水タンク76内の水が空気飽和器43内へ移動を開始する。空気配管71を通じて水タンク76内の圧力と空気飽和器43内の圧力とが等しくなり、かつ、水面7Sの高さが水面43Sの高さよりも高い位置にあるからである。そののち、制御部8は、水位計43Lのセンサ43LHにより水面43Sの高さが上限に達したことが検出されるまで空気バルブ71Vおよび給水バルブ72Vの双方の開状態を維持する。水位計43Lのセンサ43LHから、水面43Sの高さが上限に達した旨を知らせる検出信号が制御部8へ送信されると、制御部8は空気バルブ71Vおよび給水バルブ72Vの双方を閉状態とする。これにより、給水配管72を通じた空気飽和器43内への水の移動が終了する。
【0050】
(水タンク76への補給動作)
また、噴霧腐食試験機1では、噴霧腐食試験中であっても、外部の水源から水タンク76への水の補給を行うことができる。水タンク76への水の補給は、空気バルブ71Vおよび給水バルブ72Vの双方を閉状態として行う。なお、水位計43Lのセンサ43LLにより水面43Sの高さが下限に達したことが検出され、空気飽和器43への給水が必要となった場合であっても、水タンク76への水の補給が優先されることが望ましい。水タンク76への水の補給は、具体的には以下のようにして行われる。まず、水タンク76内のセンサ7LLにより水面7Sの高さが下限以下であることが検出されると、その旨の検出信号が制御部8へ送信される。その検出信号を受けた制御部8は、空気バルブ71Vおよび給水バルブ72Vの双方を閉状態とすると共に補給バルブ73Vおよび排気バルブ74Vの双方を開状態とする。これにより、補給配管73および給水配管72を通じて、外部の水源からの水が水タンク76内へ移動を開始する。排気バルブ74Vが開放されたことで水タンク76内の圧力が大気圧に戻り、水源からの水の圧力が大気圧よりも高いからである。なお、空気バルブ71Vおよび給水バルブ72Vはいずれも閉状態であるので、空気飽和器43内の圧力に変動は生じないうえ、空気飽和器43内の水が水タンク76へ向けて戻ることもない。そののち、制御部8は、水位計7Lのセンサ7LHにより水面7Sの高さが上限に達したことが検出されるまで、空気バルブ71Vおよび給水バルブ72Vの双方の閉状態ならびに補給バルブ73Vおよび排気バルブ74Vの双方の開状態を維持する。水位計7Lのセンサ7LHから、水面7Sの高さが上限に達した旨を知らせる検出信号が制御部8へ送信されると、制御部8は補給バルブ73Vおよび排気バルブ74Vの双方を閉状態とする。これにより、補給配管73および給水配管72を通じた水タンク76内への水の移動が終了する。
【0051】
[噴霧腐食試験機1の作用・効果]
噴霧腐食試験機1では、制御部8により、空気バルブ71Vおよび給水バルブ72Vの制御ならびに補給バルブ73Vおよび排気バルブ74Vの制御を行い、噴霧腐食試験中であっても、空気飽和器43への給水動作および水タンク76への補給動作を行うことができる。これにより、空気飽和器43への給水中でも噴霧腐食試験を中断することなく一定の圧力を保ったまま空気ノズル32に飽和圧縮空気を供給することができる。空気飽和器43への給水動作の際には、空気配管71を通じて水タンク76内の圧力と空気飽和器43内の圧力とを等しくし、水面7Sの高さと水面43Sの高さとの高低差を利用するようにしたので、飽和圧縮空気の圧力、すなわち噴霧部3における噴霧圧力をほとんど変化させることがない。また、加圧手段を別途設ける必要もない。さらに、圧力調節器42により空気飽和器43内の圧力を変更した場合であっても、水タンク76内の圧力の調整を行う必要もない。さらに、水タンク76への補給動作についても空気飽和器43内の圧力への影響はなく、加圧手段を別途設ける必要もない。さらに、水タンク76内の水を加熱するヒータ75を設け、水タンク76内の水の温度を空気飽和器43内の水の温度と等しくなるよう制御すれば、空気飽和器43への給水時に空気飽和器43内の水の温度低下を防ぐことができる。
【0052】
したがって、噴霧腐食試験機1によれば、簡易な構成でありながら、運転中の給水を可能としつつ、適切な腐食液の噴霧量を安定して得ることができ、長時間に亘る高精度の噴霧腐食試験の実施が可能となる。
【0053】
<2.第2の実施の形態>
[噴霧腐食試験機1Aの構成]
図3は、本発明の第2の実施の形態に係る噴霧腐食試験機1Aの概略構成例を模式的に表したものである。また、
図4は、
図3に示した噴霧腐食試験機1Aの飽和空気供給部4Aおよび給水部7Aの構成例を拡大して表したものである。本実施の形態の噴霧腐食試験機1Aは、飽和空気供給部4および給水部7の代わりに飽和空気供給部4Aおよび給水部7Aを備えるようにしたことを除き、他は噴霧腐食試験機1と実質的に同様の構成を有する。したがって、以下の記載では、主に噴霧腐食試験機1と異なる構成要素に関する説明を行い、噴霧腐食試験機1と実質的に同様の構成要素についてはその説明を適宜省略する。飽和空気供給部4Aおよび給水部7Aは、空気配管71、空気バルブ71V、絞り弁6および圧縮空気配管49などの代わりに、圧縮空気配管47、圧力調節器48および圧縮空気配管49Aなどを備えている。
【0054】
図4に示したように、噴霧腐食試験機1Aの飽和空気供給部4Aおよび給水部7Aでは、分岐部C4において圧縮空気配管49Aから分岐された圧縮空気配管47が水タンク76内の水面7S上の空間に接続されている。圧縮空気配管47には圧力調節器48および空気バルブ47Vが設けられている。空気バルブ47Vは、圧縮空気配管47のうちの、圧力調節器48と水タンク76との間の部分に設けられている。分岐部C4は、圧縮空気供給部41と圧力調節器42との間に位置する。なお、圧縮空気配管47を、圧縮空気供給部41とは別に設けた圧縮空気供給部と接続するようにしてもよい。また、排気管74は、外部に露出した一端と、空気バルブ47Vと水タンク76との間の分岐部C3において圧縮空気配管47と接続された他端とを有する。なお、排気管74の他端は、水タンク76と直接接続されていてもよい。
【0055】
圧縮空気供給部41と水タンク76とを繋ぐ圧縮空気配管47に設けられた圧力調節器48は、圧縮空気供給部41で生成されて圧縮空気配管47に導入された圧縮空気の圧力を調節することで、水タンク76内の圧力を調節するものである。ここで、水タンク76内の圧力が本発明の「第1の圧力」に対応する一具体例である。一方、圧縮空気配管49Aに設けられた圧力調節器42は、圧縮空気供給部41で生成されて圧縮空気配管49Aに導入された圧縮空気の圧力を調節することで、空気飽和器43内の圧力を調節するものである。ここで空気飽和器43内の圧力が本発明の「第2の圧力」に対応する一具体例である。噴霧腐食試験機1Aでは、圧力調節器48,42により、水タンク76内の圧力を、空気飽和器43内の圧力よりも高くするように調節するようになっている。例えば空気飽和器43へ送られる圧縮空気の圧力が圧力調節器42により0.098MPaに設定される場合、水タンク76へ送られる圧縮空気の圧力は圧力調節器48により0.15MPa程度に設定されるとよい。
【0056】
[噴霧腐食試験機1Aの動作]
(水タンク76から空気飽和器43への給水動作)
この噴霧腐食試験機1Aにおいても、噴霧腐食試験中であっても水タンク76から空気飽和器43への給水を行うことができる。なお、噴霧腐食試験の際には、通常、空気バルブ47V、給水バルブ72V、補給バルブ73Vおよび排気バルブ74Vはいずれも閉状態とされる。具体的には、水位計43Lのセンサ43LLにより水面43Sの高さが下限に達したことが検出されると、その旨の検出信号が制御部8へ送信される。その検出信号を受けた制御部8は、空気バルブ47Vおよび給水バルブ72Vの双方を開状態とする。これにより、給水配管72を通じて、水タンク76内の水が空気飽和器43内へ移動を開始する。水タンク76内の圧力が空気飽和器43内の圧力よりも高くなるからである。そののち、制御部8は、水位計43Lのセンサ43LHにより水面43Sの高さが上限に達したことが検出されるまで空気バルブ47Vおよび給水バルブ72Vの双方の開状態を維持する。水位計43Lのセンサ43LHから、水面43Sの高さが上限に達した旨を知らせる検出信号が制御部8へ送信されると、制御部8は空気バルブ47Vおよび給水バルブ72Vの双方を閉状態とする。これにより、給水配管72を通じた空気飽和器43内への水の移動が終了する。
【0057】
(水タンク76への補給動作)
水タンク76への補給動作については噴霧腐食試験機1と同様であるので、その説明はここでは省略する。
【0058】
[噴霧腐食試験機1Aの作用・効果]
このような構成の本実施の形態の噴霧腐食試験機1Aにおいても、上記噴霧腐食試験機1と同様の作用効果を得ることができる。具体的には、噴霧腐食試験機1Aでは、制御部8により、空気バルブ47Vおよび給水バルブ72Vの制御ならびに補給バルブ73Vおよび排気バルブ74Vの制御を行い、噴霧腐食試験中であっても、空気飽和器43への給水動作および水タンク76への補給動作を行うことができる。これにより、空気飽和器43への給水中でも噴霧腐食試験を中断することなく一定の圧力を保ったまま空気ノズル32に飽和圧縮空気を供給することができる。空気飽和器43への給水動作の際には、水タンク76内の圧力と空気飽和器43内の圧力との圧力差を利用するようにしたので、飽和圧縮空気の圧力、すなわち噴霧部3における噴霧圧力をほとんど変化させることがない。また、水タンク76内の水に対する加圧を行う圧縮空気を、空気飽和器43へ送る圧縮空気を生成する圧縮空気供給部41により行うようにしたので、加圧手段を別途設ける必要もない。さらに、水タンク76への補給動作についても空気飽和器43内の圧力への影響はなく、加圧手段を別途設ける必要もない。
【0059】
したがって、噴霧腐食試験機1Aにおいても、簡易な構成でありながら、運転中の給水を可能としつつ、適切な腐食液の噴霧量を安定して得ることができ、長時間に亘る高精度の噴霧腐食試験の実施が可能となる。
【0060】
以上、いくつかの実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態において説明した各部材の配置位置や形状、個数等は例示であって、上記実施の形態において説明したものに限定されない。また、上記実施の形態において説明した以外の部材を備えるようにしてもよい。例えば、本発明の噴霧腐食試験機に調温室を付加し、複合サイクル試験を行うようにしてもよい。また、上記実施の形態では、水タンク76を空気飽和器43よりも高い位置に設置するようにしたが、本発明の第2の実施の形態である噴霧腐食試験機1Aにおいては、水タンク76を、空気飽和器43と同じ高さに設置してもよいし、空気飽和器43よりも低い位置に設置するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1,1A…噴霧腐食試験機、2…試験槽、3…噴霧部、31…噴霧塔、32…空気ノズル、33…液ノズル、34…ブロック、35…ミストマイザー、4,4A…飽和空気供給部、41…圧縮空気供給部、42…圧力調節器、43…空気飽和器、43L…水位計、43S…水面、44…発泡管、45…ヒータ、45S…温度センサ、46…飽和空気供給管、47…圧縮空気配管、47V…空気バルブ、48…圧力調節器、49,49A…圧縮空気配管、5…腐食液供給部、51…溶液溜め、52…導管、53…補給タンク、54…導管、6…絞り弁、7,7A…給水部、7L…水位計、7S…水面、71…空気配管、71V…空気バルブ、72…給水配管、72V…給水バルブ、73…補給配管、73V…補給バルブ、74…排気管、74V…排気バルブ、75…ヒータ、75S…温度センサ、76…水タンク、8…制御部、9…湿度発生機。