(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した第1の従来技術では、前記モータの回転軸の突出端が下方に位置して配置される、換言すれば、前記モータが倒立姿勢で配置されるため、前記コインホッパー装置の高さを低くすることができる。しかしながら、前記モータの回転軸に固定される前記第一のギア手段と、前記ディスク手段を回転させる前記第二のギア手段とが、前記ギア列手段によって連結されるため、前記モータの回転速度と前記ディスク手段の回転速度の比率が大きい場合、前記ギア列手段を構成するギアの直径が大きくなり、その結果、前記コインホッパー装置の幅や奥行きが大きくなってしまう。前記コインホッパー装置の幅や奥行きを考慮して、前記ギア列手段を構成するギアの直径を小さくすると、所望の減速比を得るには歯幅を小さくする必要があり、その場合には歯欠けが発生し易くなってしまうため、前記ギアの信頼性や寿命が低下する。他方、歯幅を維持しつつギアの直径を小さくすると、減速比が小さくなり、所望の減速比を得ることができない。ギアの段数を増やせば減速比を大きくできるが、その場合にはギア列手段が大型になり且つコストも増加する。ギアの直径を小さくして、前記ギアの信頼性や寿命の低下を防止しつつ所望の減速比を得るために、前記ギアを金属製とすることも考えられるが、そうするとコストが増加するため、俄かには採用できない。このように、第1の従来技術を用いて前記コインホッパー装置を小型化するには限界がある、という問題がある。
【0007】
上述した第2の従来技術では、前記遊星歯車装置のキャリア板を前記回転ディスクの回転軸に嵌入しているため、前記電気モータの出力軸と前記回転ディスクの回転軸が同軸で固定されている。このため、その高さ以上に前記円筒体放出装置の高さを低くすることができない、という問題がある。
【0008】
本発明は上述した問題点を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、上述した第1及び第2の従来技術と比べて同等以上の小形化を達成しながら、低コストで高信頼性と長寿命化を同時に実現することができるコインホッパーを提供することにある。
【0009】
ここに明記しない本発明の他の目的は、以下の説明および添付図面から明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 本発明のコインホッパーは、
本体部と、
前記本体部に装着された、コインを貯留するホッパーヘッドと、
前記本体部に回転可能に設けられた、前記ホッパーヘッド内に貯留されているコインを一時的に保持して所定のコイン出口へ移送する回転ディスクと、
前記本体部に設けられた電気モータと、
前記本体部に設けられた、前記電気モータの出力軸の回転によって前記回転ディスクを駆動する回転ディスク駆動機構とを備え、
前記回転ディスク駆動機構は、前記電気モータの出力軸の回転を第1減速比で減速して出力する遊星歯車機構と、前記遊星歯車機構の出力を第2減速比で減速して前記回転ディスクに伝達する第1歯車列とを含んでおり、
前記電気モータの出力軸と前記回転ディスクの回転軸心は、同軸とならないように配置されており、
前記電気モータの出力軸と前記遊星歯車機構の回転軸心と前記第1歯車列の各歯車の回転軸心は、互いにほぼ平行となるように配置されていることを特徴とするものである。
【0011】
本発明のコインホッパーでは、上述したように、前記電気モータの出力軸の回転によって前記回転ディスクを駆動するために、前記回転ディスク駆動機構を設けており、しかも、前記回転ディスク駆動機構には、前記電気モータの出力軸の回転を第1減速比で減速して出力する前記遊星歯車機構と、前記遊星歯車機構の出力を第2減速比で減速して前記回転ディスクに伝達する前記第1歯車列とを含めている。前記遊星歯車機構は、一般に、大きな減速比が得られると共に、使用している歯車群の磨耗や歯欠けが抑制されるという利点を有しているから、前記遊星歯車機構の前記第1減速比だけで所望の減速比の大半(大部分)が得られるように、前記第1減速比の値と前記第2減速比の値を設定することが可能である。このため、上述した第1の従来技術で使用されている歯車に比べて、前記第1歯車列を構成する歯車群の最大直径を小さくすることができる。同様に、前記遊星歯車機構の直径も、上述した第1の従来技術で使用されている歯車よりも小さくすることができる。したがって、上述した第1の従来技術に比べて、前記第1歯車列の各歯車の回転軸心に直交する方向(例えば水平方向)の前記回転ディスク駆動機構のサイズを小さくすることができる。
【0012】
また、前記電気モータの出力軸と前記回転ディスクの回転軸心が、同軸とならないように配置されており、しかも、前記電気モータの出力軸と前記遊星歯車機構の回転軸心と前記第1歯車列の各歯車の回転軸心が、互いにほぼ平行となるように配置されている。このため、例えば、前記電気モータと前記回転ディスクを互いに隣接して配置し、前記電気モータの出力軸を前記回転ディスク駆動機構の側に向けて、前記遊星歯車機構を介して前記第1歯車列の一つの歯車(例えば入力側の歯車)の回転軸心と同軸とし、さらに、前記回転ディスクの回転軸心と前記第1歯車列の他の歯車(例えば出力側の歯車)の回転軸心とを同軸となるように配置することにより、上述した第2の従来技術に比べて、前記第1歯車列の各歯車の回転軸心に平行な方向(例えば垂直方向)のサイズも小さくすることが可能である。
【0013】
よって、本発明のコインホッパーでは、上述した第1及び第2の従来技術と比べて同等以上の小形化を達成することができる。
【0014】
さらに、前記遊星歯車機構は、それに使用している歯車群の磨耗や歯欠けが抑制されるために、高価な金属製の歯車群を使用しなくても高信頼性かつ長寿命という利点が得られる。また、前記第1歯車列を構成する歯車群の最大直径を小さくすることができるので、前記第1歯車列についても歯車群の磨耗や歯欠けが抑制され、したがって、高価な金属製の歯車群を使用しなくても高信頼性と長寿命が得られる。よって、前記遊星歯車機構と前記第1歯車列の双方を合成樹脂製の歯車群で構成してそれらのコストを抑制しながら、前記回転ディスク駆動機構(ひいてはコインホッパー自体)の高信頼性と長寿命化を同時に実現することが可能である。
【0015】
本発明のコインホッパーでは、以上述べた理由により、上述した第1及び第2の従来技術と比べて同等以上の小形化を達成しながら、低コストで高信頼性と長寿命化を同時に実現することができる。
【0016】
(2) 本発明のコインホッパーの好ましい例では、前記電気モータの出力軸が、前記遊星歯車機構の太陽歯車に結合され、
前記遊星歯車機構のキャリア板が、前記第1歯車列の駆動歯車と一体的に回転するように構成される。
【0017】
(3) 本発明のコインホッパーの他の好ましい例では、前記回転ディスクが、前記第1歯車列の従動歯車と一体的に回転するように構成される。
【0018】
(4) 本発明のコインホッパーのさらに他の好ましい例では、前記第1歯車列の駆動歯車が、前記遊星歯車機構のキャリア板と一体的に回転するように構成されると共に、前記第1歯車列の従動歯車が、前記回転ディスクと一体的に回転するように構成され、
前記駆動歯車の回転が直接または中間歯車を介して前記従動歯車に伝達される。
【0019】
(5) 本発明のコインホッパーのさらに他の好ましい例では、前記第1歯車列の駆動歯車が、前記遊星歯車機構のキャリア板と一体的に回転するように構成されると共に、前記第1歯車列の従動歯車が、前記回転ディスクと一体的に回転するように構成され、
前記駆動歯車の回転が、互いに同軸として結合された第1中間歯車と第2中間歯車を介して前記従動歯車に伝達されるように構成され、
前記第1中間歯車が前記駆動歯車と噛合し、前記第2中間歯車が前記従動歯車と噛合することで、前記駆動歯車の回転が前記従動歯車に伝達される。
【0020】
(6) 本発明のコインホッパーのさらに他の好ましい例では、前記電気モータの出力軸が下方を向くように、前記電気モータが前記本体に固定され、
前記遊星歯車機構の太陽歯車が、前記出力軸の近傍に配置され、
前記出力軸が、前記太陽歯車に直結される。
【0021】
(7) 本発明のコインホッパーのさらに他の好ましい例では、前記電気モータの出力軸が、前記遊星歯車機構の太陽歯車に結合され、
前記遊星歯車機構のキャリア板が、前記遊星歯車機構の前記出力軸から遠い側に配置される。
【0022】
(8) 本発明のコインホッパーのさらに他の好ましい例では、前記電気モータの出力軸が、前記遊星歯車機構の太陽歯車に結合され、
前記遊星歯車機構のキャリア板が、前記遊星歯車機構の前記出力軸から遠い側に配置され、
前記キャリア板に前記第1歯車列の駆動歯車が固定される。
【0023】
(9) 本発明のコインホッパーのさらに他の好ましい例では、前記電気モータの出力軸が、前記遊星歯車機構の太陽歯車に結合され、
前記遊星歯車機構のキャリア板が、前記遊星歯車機構の前記出力軸から遠い側に配置され、
前記キャリア板に前記第1歯車列の駆動歯車が固定され、
前記第1歯車列の従動歯車が、前記回転ディスクと一体的に回転するように構成され、
前記駆動歯車の回転が、直接または中間歯車を介して前記従動歯車に伝達される。
【0024】
(10) 本発明のコインホッパーのさらに他の好ましい例では、前記第1歯車列が、
前記遊星歯車機構のキャリア板と一体的に回転する駆動歯車と、
前記回転ディスクと一体的に回転する従動歯車と、
前記駆動歯車の回転を前記従動歯車に伝達するための、互いに同軸として結合された第1中間歯車及び第2中間歯車とを有しており、
前記駆動歯車と前記第1中間歯車が、第1平面内にあって互いに噛合し、
前記従動歯車と前記第2中間歯車が、前記第1平面と平行な第2平面内にあって互いに噛合する。
【発明の効果】
【0025】
本発明のコインホッパーでは、上述した第1及び第2の従来技術と比べて同等以上の小形化を達成しながら、低コストで高信頼性と長寿命化を同時に実現することができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0028】
本発明の一実施形態に係るコインホッパー100を
図1〜
図10に示す。このコインホッパー100は、ホッパーヘッド104内にバラ積み状態で保留された複数のコインCを一つずつ区分けして、その側面に形成されたコイン出口112から払い出す機能を有する。
【0029】
コインホッパー100は、
図1〜
図4に示すように、主として、ボディ102と、ボディ102の上面に着脱可能に装着されたホッパーヘッド104と、ボディ102に取り付けられたベース部材106と、ベース部材106とホッパーヘッド104の間に配置されてボディ102の一部を覆う上カバー108と、ボディ102の下面に取り付けられてその下面全体を覆う下カバー110とを備えている。
【0030】
コインホッパー100は、さらに、ベース部材106上に配置された回転ディスク114と、コイン弾出部116と、電気モータ118と、回転ディスク駆動機構120とを備えているが、これらについての詳細は後述する。
【0031】
本実施形態では、ボディ102とベース部材106が、コインホッパー100の「本体部」を構成している。この「本体部」は、ホッパーヘッド104が装着可能な構成を持ち、且つ、後述する回転ディスク114と電気モータ118と回転ディスク駆動機構120が搭載されるセクション(部分)を意味する。
【0032】
ボディ102は、
図5に示すような全体構成を持っていて、ホッパーヘッド104とベース部材106と回転ディスク114と電気モータ118を支持している。ボディ102は、合成樹脂によって射出成型されたものであり、平面視が矩形の箱形を有している。
【0033】
図5(A)に明瞭に示しているように、ボディ102の表面(上面)側には、ベース部材106を載置するための枠体122と、平面視が半円環状の載置部124が形成されている。枠体122と載置部124とは面一になっている。載置部124の周辺には、ベース部材106を載置した際にほぼ面一となる平面視が半円環状の底壁126が形成されている。底壁126の周縁には、垂直方向に延在する円弧状の側壁128が底壁126と一体的に形成されている。側壁128の外方には、電気モータ118を倒立姿勢(つまりその出力軸226を下方に向けた姿勢)(
図3参照)で支持するための支持凹部130が形成されている。支持凹部130の中心部分には、電気モータ118の出力軸226をボディ102の裏面(下面)側に突出させるための貫通孔132が形成されている。
【0034】
図5(B)に明瞭に示しているように、ボディ102の裏面(下面)側には、円筒部133が形成されており、その内壁には、後述する遊星歯車機構230の一部を構成する内歯車232が形成されている。この内歯車232は、円筒部133の内壁に内向きの複数の歯を有している。円筒部133の内部には、後述する太陽歯車234と遊星歯車236、238、240を収納するための空間部136が形成されている。円筒部133の近傍には、後述する第1中間歯車246と第2中間歯車248(これらは後述する第1歯車列260の一部を構成する)を回転可能に支持するための支軸138が形成されている。支軸138の中央には、軸挿入孔139が形成されている。軸挿入孔139には、後述する下カバー110に形成された挿入軸153が挿入されるようになっている。円筒部133の近傍には、さらに、収納壁140が形成されている。収納壁140の内部には、後述の第1歯車列260を構成する駆動歯車244、第1中間歯車246、第2中間歯車248および従動歯車250が収納される。
【0035】
ホッパーヘッド104は、ボディ102に着脱可能として装着されるようになっており、回転ディスク114の上方において複数のコインCをバラ積み状態で所定量貯留する機能を有する。ホッパーヘッド104は、
図1と
図6に示すように、全体として平面視が矩形の筒状であって、上端から下端まで延在する矩形壁142と、矩形壁142の下端部内側に形成された円形壁144とを有している。円形壁144は、ホッパーヘッド104に貯留されたコインCを回転ディスク114上に落下させる底孔145を形成している。ホッパーヘッド104の中間部内側には、矩形壁142と円形壁144とを滑らかに接続するための傾斜壁146、148、149が形成されている。また、ボディ102の支持凹部130に対応する位置には、電気モータ118を収納するための空間であるモータ収納部150が形成されている。矩形壁142の下端部は、ボディ102の上端部に着脱可能に装着されるようになっている。
【0036】
ベース部材106は、
図3、
図4及び
図7に示すように、ボディ102に装着した時にボディ102の底壁126と面一に配置される底壁152を有しており、底壁126と協働してコインCの一面を支持するベース113(
図8参照)として機能する。また、ベース部材106は、ボディ102に装着した時にボディ102の側壁128と連続するように形成された円弧状の側壁154を有しており、側壁128と協働して回転ディスク114の回転に伴って移動するコインCの周面を案内するガイド壁115(
図8参照)として機能する。ベース部材106は、ボディ102の上面のコイン出口112の側に着脱可能に装着されるようになっている。
【0037】
上カバー108は、
図2に明瞭に示すように、ベース部材106と共にコイン出口112を画定する機能を有する。上カバー108は、ベース部材106に着脱可能に装着されるようになっている。
【0038】
下カバー110は、
図3と
図4に示すように、ボディ102をその下面側から覆う機能を有する。下カバー110の上面には、ボディ102の支軸138に形成された軸挿入孔139に挿入可能な挿入軸153が形成されている。また、駆動歯車244、第1中間歯車246、第2中間歯車248および従動歯車250からなる第1歯車列260を収納するための収納壁155が形成されている。収納壁155は、ボディ102の裏面側に形成された収納壁140と同一の平面形状を有しており、ボディ102の下面に装着する際に収納壁155と収納壁140とが嵌合するようになっている。さらに、下カバー110には、駆動歯車244の支軸245を支持する軸受け252が係合される軸保持孔156と、回転軸162の下端を支持する軸受け254が係合される軸保持孔157が形成されている。
【0039】
回転ディスク114は、
図2、
図4および
図8に示すように、ホッパーヘッド104にバラ積み状態で貯留された複数のコインCを一つずつ区分けして、ベース部材106の表面(上面)側に形成されたコイン弾出部116(
図8参照)に移送する機能を有する。回転ディスク114は、薄板円盤状であって、ホッパーヘッド104の底孔145内において、ベース113の上面に近接してそれに平行に配置されている。回転ディスク114は、電気モータ118の出力軸226に駆動連結された回転軸162に固定されている。回転軸162は、下カバー110の軸保持孔157に係合された軸受け254によって支持されている。回転ディスク114は、電気モータ118の回転によって、
図8において反時計周りに回転される。この反時計周りの回転を正回転という。また、コインジャムが生じて電気モータ118が正回転モードであるにも拘わらず回転ディスク114が回転しない場合、または、コインCが払い出されない場合には、電気モータ118の回転が停止された後、
図8において時計周りに回転される。この時計周りへの回転を逆回転という。この正回転の後、逆回転され、再び正回転されるというプロセスは、所定回数繰り返される。
【0040】
回転ディスク114は、回転軸162から偏心した位置に五つの円形の通孔164が、回転ディスク114の円形の外周に沿って等間隔で形成されている。
図8に示すように、各通孔164の上面側には、下向き錐形の導入部166aが形成されている。回転ディスク114の中央部には、回転軸162を支持しながらコインCを攪拌するために、円錐形の中央凸部166が形成されている(
図2参照)。回転ディスク114は、ガイド壁115の内側において、ガイド壁115との間の間隙がコインCの厚みよりも狭くなるように配置されている。回転ディスク114の裏面側において、通孔164を区画するリブ168の下面には、コインCを押し出すための第1押動体170と第2押動体172が、各通孔164に相対して下向きに突出形成されている。第1押動体170と第2押動体172の第1押動面174と第2押動面176は、回転ディスク114の中心部から伸びるインボリュート曲線上に位置している。
【0041】
回転ディスク114が正回転した場合、その上に載っているコインCは、回転ディスク114の上面にある通孔164、中央凸部166等によって攪拌され、姿勢が変化させられて各通孔164に一つずつ落下する。各通孔164に落下したコインCの下面はベース113に、コインCの周面はガイド壁115によってそれぞれ案内されながら、回転ディスク114の回転に伴って、第1押動面174および第2押動面176によってコインCが押動されて回転ディスク114と共に連れ回りされる。このとき、コインCの周面はガイド壁115に案内されるが、ガイド壁115に対する接触圧は、そのほとんどが遠心力に基づくものであるので、大きな接触圧とはならない。連れ回り過程において、ベース113から上方に突出して形成された第1規制ピン182および第2規制ピン184によって連れ回りを阻止されたコインCは、回転ディスク114の外周方向へ案内され、最終的には、第2押動面176によって出口開口192へ押し込まれる。
【0042】
第1規制ピン182と第2規制ピン184の近傍には、第1規制ピン182と第2規制ピン184に対して反時計回りに(
図8では左側に)シフトした位置に、ベース113から突出し且つ第1規制ピン182と第2規制ピン184から遠い側に下りの傾斜面をそれぞれ有する第1乗上ピン186と第2乗上ピン188が配置されている。回転ディスク114が逆回転すると、第1押動体170と第2押動体172の後面(図示せず)によってコインCが押動されて、回転ディスク114と共に
図8の時計周りに連れ回りされる。この場合、第1乗上ピン186と第2乗上ピン188の傾斜面により、コインCが第1乗上ピン186と第2乗上ピン188の上に乗り上がり、第1規制ピン182と第2規制ピン184の上を通過することができる。第1規制ピン182、第2規制ピン184、第1乗上ピン186および第2乗上ピン188は、いずれも、一端を固定された板バネ(図示せず)に係止されているので、それら板バネの弾性変形により、第1規制ピン182、第2規制ピン184、第1乗上ピン186および第2乗上ピン188は、ベース113の下方に向けて移動可能である。このため、コインCの第1乗上ピン186と第2乗上ピン188への乗り上げが促進され、容易に第1規制ピン182と第2規制ピン184の上を通過することができる。
【0043】
コイン弾出部116は、
図8に示すように、回転ディスク114によって一つずつ区分けされて送り出されるコインCを、コインホッパー100の外部に向けて一つずつ弾き出す機能を有する。本実施形態では、コイン弾出部116は、固定ガイド202と移動ローラ204とを含んでいる。固定ガイド202と移動ローラ204との間には間隙が形成されており、この間隙が出口開口192となっている。固定ガイド202は、ガイド壁115に隣接して配置されたガイド板206の、移動ローラ204側に突出した部分から形成されている。ガイド板206はベース部材106に固定されている。他方、移動ローラ204は、回動レバー210の先端に固定された支軸212に回動自在に支持されている。回動レバー210は、ベース部材106に固定された支軸208に回動可能に支持されており、図示しないスプリングによって
図8の時計方向に回動力を付与されている。
【0044】
移動ローラ204が待機位置にある場合、移動ローラ204と固定ガイド202との間隔は使用されるコインCの直径よりも小さい間隔で保持される。第2規制ピン184で案内されたコインCが、回転ディスク114の第2押動面176によって固定ガイド202と移動ローラ204との間の間隙に押し込まれた場合、回動レバー210は
図8において反時計周りに回動され、コインCの中心を通る直線が固定ガイド202と移動ローラ204との接点を通過した直後に、前記スプリングの弾発力が印加されている移動ローラ204によって、コインホッパー100の外部に向けて弾き出される。
【0045】
ガイド板206の固定ガイド202より外側の部分には、コイン弾出部116により弾き出されたコインCを所定の方向へ案内するための直線状のガイド縁214が、固定ガイド202に引き続いて形成されている。ベース部材106のコイン出口112の近傍には、ガイド壁216が形成されている。ガイド縁214とガイド壁216は、互いに対向しており、ベース113の上方において出口通路218を画定している。コイン弾出部116によって弾き出されたコインCは、ガイド板206のガイド縁214に沿って出口通路218の内部を移動し、ベース部材106の一側面に形成されたコイン出口112を通って外部に払い出される。
【0046】
電気モータ118は、後述する回転ディスク駆動機構120を介して回転ディスク114を回転させるための駆動源である。電気モータ118は、出力軸226を垂直下方に向けた倒立姿勢でボディ102の支持凹部130に挿入されており、その状態でボディ102の上面に固定されている。電気モータ118の本体は、ホッパーヘッド104の装着時に、そのモータ収納部150の内部に収納されるようになっている。本実施形態では、電気モータ118は正転および逆転が可能な直流モータとされている。
図2〜
図4に示すように、電気モータ118は、その一端(ここでは上端)に、電力を供給するための一対の入力端子222、224を備えており、他端(ここでは下端)に、機械的駆動力(回転力)を出力する出力軸226を突出させている。
【0047】
次に、
図3〜
図5と
図9、
図10を参照しながら、回転ディスク駆動機構120について説明する。
【0048】
回転ディスク駆動機構120は、電気モータ118の出力軸226の回転(駆動力)を減速してから回転ディスク114の回転軸162に伝達することにより、所定の回転速度で回転ディスク114を回転させる機能を有する。本実施形態では、回転ディスク駆動機構120は、遊星歯車機構230と第1歯車列260を備えて構成されている。
【0049】
遊星歯車機構230は、電気モータ118の出力軸226の回転を所定の第1減速比で減速してから、所定の回転速度でキャリア板242を回転させる機能を有する。遊星歯車機構230は、ここでは、内歯車232、太陽歯車234、三つの遊星歯車236、238、240およびキャリア板242を有している。電気モータ118の出力軸226の回転は、太陽歯車234に入力され、遊星歯車機構230の内部で減速された後に、キャリア板242から出力されるようになっている。
【0050】
第1歯車列260は、遊星歯車機構230の出力であるキャリア板242の回転を所定の第2減速比で減速してから、所定の回転速度で回転ディスク114(の回転軸162)を回転させる機能を有する。第1歯車列260は、ここでは、駆動歯車244、第1中間歯車246、第2中間歯車248および従動歯車250を有している。遊星歯車機構230の出力であるキャリア板242の回転は、入力側の駆動歯車244(入力歯車)に入力され、第1歯車列260の内部で減速された後に、出力側の従動歯車250(出力歯車)から出力されるようになっている。こうして出力される従動歯車250の回転により、回転ディスク114が回転駆動されるのである。
【0051】
ここで、上述した遊星歯車機構230と第1歯車列260の構成を、添付図面を参照しながら、より詳細に説明すると、次のようになる。
【0052】
遊星歯車機構230の内歯車232は、所定数の内歯を有しており、ボディ102の裏面側においてボディ102と一体的に形成されている(
図4、
図5を参照)。内歯車232の内側の空間部136には、太陽歯車234と、3つの遊星歯車236、238、240と、キャリア板242が配置されている。太陽歯車234と遊星歯車236、238、240とキャリア板242は、いずれも合成樹脂製である。内歯車232の回転軸心と太陽歯車234の回転軸心は、いずれも、電気モータ118の出力軸226と同軸上にあり、出力軸226の下方にある。遊星歯車機構230の回転軸心は、内歯車232の回転軸心と太陽歯車234の回転軸心と同心である。電気モータ118の出力軸226は、太陽歯車234の回転軸心にある軸孔に挿入・固定されている。薄板円盤状のキャリア板242も、電気モータ118の出力軸226と同軸上にあり、したがって、遊星歯車機構230の回転軸心と内歯車232の回転軸心と太陽歯車234の回転軸心と同心である。
【0053】
三つの遊星歯車236、238、240は、内歯車232と太陽歯車234との間の空間に
図3に示すようなレイアウトで配置されており、外側では内歯車232に噛合し、それと同時に、内側では太陽歯車234に噛合している。遊星歯車236、238、240は、それぞれ、キャリア板242に設けられた3本の支軸237、239、241に回転可能に支持されており、太陽歯車234の回転に伴って支軸237、239、241の周りに自転すると同時に、太陽歯車234の回転軸心の周りに公転する。なお、3本の支軸237、239、241は、キャリア板242(遊星歯車機構236)の回転軸心の周りに等間隔で配置されており、したがって、三つの遊星歯車236、238、240もキャリア板242(遊星歯車機構236)の回転軸心の周りに等間隔で配置されている。
【0054】
遊星歯車機構230は、上述した構成を持つので、遊星歯車機構230と同軸に配置された電気モータ118の出力軸226の回転を所定の第1減速比で減速してから、所定の回転速度で出力軸226と同軸のキャリア板242を回転させることができる。遊星歯車機構230は、一般に、大きな減速比が得られると共に、使用している歯車群の磨耗や歯欠けが抑制されるという利点を有しているから、遊星歯車機構230の第1減速比だけで所望の減速比の大半(大部分)が得られるように、第1減速比の値を大きく設定することが可能である。
【0055】
第1歯車列260を構成する駆動歯車244、第1中間歯車246、第2中間歯車248および従動歯車250は、いずれも合成樹脂製である。
【0056】
駆動歯車244は、遊星歯車機構230のキャリア板242の裏面(下面)側において、キャリア板242と同軸に配置されている。本実施形態では、駆動歯車244はキャリア板242と一体的に形成されており、また、駆動歯車244の支軸245も駆動歯車244と一体的に形成されている。駆動歯車244の支軸245の下端は、軸受け252を介して、下カバー110に形成された軸保持孔156(
図3参照)に保持されている。こうすることにより、支軸245の周りに、キャリア板242と駆動歯車244を一体的に回転させることができる。
【0057】
第1中間歯車246は、駆動歯車244と同一の水平平面内で駆動歯車244に隣接して配置されており、駆動歯車244と噛合している。第1中間歯車246の直径は駆動歯車244のそれより大きい。第1中間歯車246の直上には、第2中間歯車248が固定されている。
【0058】
第2中間歯車248は、第1中間歯車246と同軸に配置されていると共に、第1中間歯車246と一体的に形成されている。第1中間歯車246と第2中間歯車248は、共通の軸孔を有しており、その軸孔にはボディ102に形成された支軸138が挿入されている。こうすることにより、第1中間歯車246と第2中間歯車248を支軸138によって回転可能に支持して、第1中間歯車246と第2中間歯車248を一体的に回転させることができる。第2中間歯車246の直径は第1中間歯車246のそれより小さい。
【0059】
第2中間歯車248は、遊星歯車機構230の遊星歯車236、238、240と同一の水平平面内にある。第2中間歯車248はまた、遊星歯車機構230の太陽歯車234と内歯車232とも同一の水平平面内にある。
【0060】
従動歯車250は、第2中間歯車248と同一の水平平面内で第2中間歯車248に隣接して配置されており、第2中間歯車248と噛合している。従動歯車250の直径は第2中間歯車248のそれより大きい。従動歯車250の軸孔には、回転ディスク114の回転軸162が挿入・固定されている。回転軸162の下端は、軸受け254を介して、下カバー110に形成された軸保持孔157に回転可能に保持されている。こうすることにより、回転ディスク114と従動歯車250を、回転軸162と共に一体的に回転させることができる。
【0061】
このような構成を持つ第1歯車列260の第2減速比は、小さい値(1に近い値)に設定することが可能である。これは、遊星歯車機構230の第1減速比だけで所望の減速比の大半(大部分)が得られるように、第1減速比の値を大きく設定することが可能だからである。
【0062】
上記構成及び機能を持つ回転ディスク駆動機構120(遊星歯車機構230と第1歯車列260)によれば、電気モータ118の出力軸226が所定の回転速度で回転すると、出力軸226の回転駆動力は遊星歯車機構230により第1減速比で減速されてキャリア板242から出力される。そして、キャリア板242から出力された、減速済みの回転駆動力は、第1歯車列260により第2減速比でさらに減速されてから、回転ディスク114に伝達される。回転ディスク114は、こうして、電気モータ118の出力軸226を二段階で大きく減速した回転速度で回転せしめられることになる。
【0063】
以上説明したように、本実施形態に係るコインホッパー100は、本体部すなわちボディ102及びベース部材106に装着されたホッパーヘッド104と、前記本体部に回転可能に設けられた、ホッパーヘッド104内に貯留されているコインCを一時的に保持して所定のコイン出口112へ移送する回転ディスク114と、前記本体部に設けられた電気モータ118と、前記本体部に設けられた、電気モータ118の出力軸226の回転によって回転ディスク114を駆動する回転ディスク駆動機構120とを備えている。そして、回転ディスク駆動機構120は、電気モータ118の出力軸226の回転を第1減速比で減速して出力する遊星歯車機構230と、遊星歯車機構230の出力を第2減速比で減速して回転ディスク114に伝達する第1歯車列260とを含んでいる。さらに、電気モータ118の出力軸226と回転ディスク114の回転軸心は、出力軸226に直交する方向に(水平方向に)互いにずれた位置に隣接して配置されており、互いに同軸になっていない。しかも、電気モータ118の出力軸226と遊星歯車機構230の回転軸心と第1歯車列260の各歯車の回転軸心は、いずれも、電気モータ118の出力軸226と平行に(垂直方向に)延在している、つまり、互いに平行となるように配置されている。
【0064】
したがって、本実施形態に係るコインホッパー100では、電気モータ118の出力軸226の回転によって回転ディスク113を駆動するために、回転ディスク駆動機構120を設けており、その回転ディスク駆動機構126に、電気モータ118の出力軸226の回転を第1減速比で減速して出力する遊星歯車機構230と、遊星歯車機構230の出力を第2減速比で減速して回転ディスク114に伝達する第1歯車列260を含めていることになる。遊星歯車機構230は、一般に、大きな減速比が得られると共に、使用している歯車群の磨耗や歯欠けが抑制されるという利点を有しているから、遊星歯車機構230の第1減速比だけで所望の減速比の大半(大部分)が得られるように、第1減速比の値と第2減速比の値を設定することが可能である。このため、上述した第1の従来技術で使用されている歯車に比べて、第1歯車列260を構成する歯車群の最大直径を小さくすることができる。同様に、遊星歯車機構230の直径も、上述した第1の従来技術で使用されている歯車よりも小さくすることができる。したがって、上述した第1の従来技術に比べて、第1歯車列260の各歯車の回転軸心に直交する方向(つまり水平方向)の回転ディスク駆動機構120のサイズを小さくすることができる。
【0065】
また、電気モータ118の出力軸226と回転ディスク114の回転軸心が、平行状態を保ちながら同軸とならないように水平方向にシフトして配置されており、しかも、電気モータ118の出力軸226と遊星歯車機構230の回転軸心と第1歯車列260の各歯車の回転軸心が、互いにほぼ平行となるように配置されている。このため、例えば本実施形態のように、電気モータ118と回転ディスク114を互いに隣接して配置し、電気モータ118の出力軸226を回転ディスク駆動機構120の側に向けて、遊星歯車機構236を介して第1歯車列260の一つの歯車(入力側の駆動歯車244)の回転軸心と同軸とし、さらに、回転ディスク114の回転軸心と第1歯車列260の他の歯車(出力側の従動歯車250)の回転軸心とを同軸となるように配置することにより、上述した第2の従来技術に比べて、第1歯車列260の各歯車の回転軸心に平行な方向(つまり垂直方向)のサイズも小さくすることが可能である。
【0066】
よって、このコインホッパー100では、上述した第1及び第2の従来技術と比べて同等以上の小形化を達成することができる。
【0067】
さらに、遊星歯車機構230は、それに使用している歯車群の磨耗や歯欠けが抑制されるために、高価な金属製の歯車群を使用しなくても高信頼性かつ長寿命という利点が得られる。また、第1歯車列260を構成する歯車群の最大直径を小さくすることができるので、第1歯車列260についても歯車群の磨耗や歯欠けが抑制され、したがって、高価な金属製の歯車群を使用しなくても高信頼性と長寿命が得られる。よって、遊星歯車機構230と第1歯車列260の双方を合成樹脂製の歯車群で構成してそれらのコストを抑制しながら、回転ディスク駆動機構120(ひいてはコインホッパー100自体)の高信頼性と長寿命化を同時に実現することが可能である。
【0068】
本実施形態のコインホッパー100では、以上述べた理由により、上述した第1及び第2の従来技術と比べて同等以上の小形化を達成しながら、低コストで高信頼性と長寿命化を同時に実現することができる。
【0069】
(変形例)
上述した実施形態は、本発明を具体化した例を示すものである。したがって、本発明はこの例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を外れることなく種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【0070】
例えば、上述した実施形態では、遊星歯車機構230のキャリア板242および第1歯車列260の駆動歯車244と、第1歯車列260の第1中間歯車246および第2中間歯車248とは、それぞれ一体で形成されているが、別体で形成したキャリア板242および駆動歯車244を互いに固定し、別体で形成した第1中間歯車246および第2中間歯車248を互いに固定するようにしてもよい。しかしながら、コストを抑制する観点から一体で形成することが好ましい。
【0071】
また、遊星歯車機構230と、第1歯車列260の駆動歯車244および従動歯車250のみで所望の減速比が得られ、且つ、遊星歯車機構230と駆動歯車244および従動歯車250の占有面積を所望の大きさで実現できる場合には、上述した実施形態における第1中間歯車246および第2中間歯車248を省略して、駆動歯車244と従動歯車250を直接噛合させてもよい。この場合は、第1歯車列260は駆動歯車244と従動歯車250のみから構成されることになる。
【0072】
さらに、上述した実施形態では、ボディ102とベース部材106は別体で構成しているが、両者を一体で構成することも勿論可能である。
【0073】
さらに、回転ディスク駆動機構120は、遊星歯車機構230と第1歯車列260の組み合わせに限定されるわけではない。遊星歯車機構230と第1歯車列260に加えて、他の歯車列(例えば第2歯車列)を含んでもよい。遊星歯車機構230の構成も、所望の減速比が得られれば、任意に変更可能であり、第1歯車列260の構成も、所望の減速比が得られれば、任意に変更可能であることは言うまでもない。