【文献】
中村直樹ほか,現場課題を解決するオプトソニック熱量計の開発と検証結果,計装,2014年11月 1日,Vol. 57, No. 11,pp. 21-24
【文献】
岩村大介,雑ガス成分の影響を除去する熱量計,計測技術,2014年 7月,Vol. 42, No. 8,pp. 44-46
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記誤差熱量測定機構は、熱量測定対象ガスである副生ガスに含まれる一酸化炭素ガスの濃度を測定するCO濃度測定手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の熱量測定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、特許文献1に記載の熱量測定方法においては、パラフィン系炭化水素ガス以外の各雑ガスについて、屈折率計誤差に対する密度計誤差の比(補正係数)がガス種に拘わらず特定の範囲内の値(ほぼ一定値)となることを利用しており、雑ガスによる屈折率換算熱量および密度換算熱量に生じた測定誤差を補償している。
しかしながら、製鉄プロセスにおいて発生するコークス炉ガス(COG)、高炉ガス(BFG)、転炉ガス(LDG)といった副生ガスの熱量を、特許文献1に記載の方法により測定したところ、測定誤差が生ずることが明らかになった。
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、製鉄プロセスにおいて発生する副生ガスの熱量を高い信頼性で測定することのできる熱量測定装置および熱量測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の熱量測定装置は、製鉄プロセスで発生する副生ガスの熱量を測定するための熱量測定装置であって、
熱量測定対象ガスである副生ガスの屈折率に基づいて屈折率換算熱量Q
O 〔MJ/Nm
3 〕を算出する屈折率換算熱量算出機構と、
当該副生ガスの音速に基づいて音速換算熱量Q
S 〔MJ/Nm
3 〕を算出する音速換算熱量算出機構と、
当該副生ガスに含まれる一酸化炭素ガスの濃度X
CO 〔vol%(体積百分率)〕に基づいて、下記式(1)によって、熱量換算係数ζとして−0.08〜−0.03の範囲内において選択される値を用いて、誤差熱量Q
CO 〔MJ/Nm
3 〕を算出する誤差熱量測定機構と、
前記屈折率換算熱量Q
O と、前記音速換算熱量Q
S と、前記誤差熱量Q
CO とに基づいて、下記式(2)によって、補正係数αとして1.1〜4.2の範囲内において選択される値を用いて、当該副生ガスの熱量Q〔MJ/Nm
3 〕を算出する熱量算出機構と
を備えていることを特徴とする。
【0008】
【数1】
【0009】
本発明の熱量測定装置においては、前記誤差熱量測定機構は、熱量測定対象ガスである副生ガスに含まれる一酸化炭素ガスの濃度を測定するCO濃度測定手段を備えた構成とされていることが好ましい。
このような構成のものにおいては、前記CO濃度測定手段が赤外線式センサを備えたものであることが好ましい。
【0010】
本発明の熱量測定方法は、製鉄プロセスで発生する副生ガスの熱量を測定するための熱量測定方法であって、
熱量測定対象ガスである副生ガスの屈折率および音速を測定し、当該屈折率の値から屈折率換算熱量Q
O 〔MJ/Nm
3 〕を算出すると共に、当該音速の値から音速換算熱量Q
S 〔MJ/Nm
3 〕を算出し、
当該副生ガスに含まれる一酸化炭素ガスの濃度X
CO 〔vol%(体積百分率)〕に基づいて、上記式(1)によって、熱量換算係数ζとして−0.08〜−0.03の範囲内において選択される値を用いて、誤差熱量Q
CO 〔MJ/Nm
3 〕を算出し、
得られた屈折率換算熱量Q
O 、音速換算熱量Q
S および誤差熱量Q
CO に基づいて、上記式(2)によって、補正係数αとして1.1〜4.2の範囲内において選択される値を用いて、当該副生ガスの熱量Q〔MJ/Nm
3 〕を求めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱量測定方法によれば、熱量測定対象ガスである副生ガスに含まれる雑ガスに起因して生ずる、屈折率換算熱量および音速換算熱量の測定誤差が補償されるので、副生ガスの熱量を高い信頼性で測定することができる。本発明において、「雑ガス」とは、水素ガスと、メタンガス(パラフィン系炭化水素ガス)以外のガス成分をいい、例えば、二酸化炭素ガス、一酸化炭素ガス、窒素ガスおよび酸素ガスなどが含まれる。
このような熱量測定方法が実行される本発明の熱量測定装置によれば、副生ガスの熱量を高い信頼性で測定することができる。しかも、実際の状況に即した副生ガスの熱量を連続的に取得することができるので、ガス組成の変動、例えば転炉ガスに含まれる一酸化炭素濃度の変動などが生じた場合であっても、ガス組成の変動に伴う熱量の変動を速やかに検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の熱量測定装置の一例における構成の概略を示すブロック図である。
この熱量測定装置は、製鉄プロセスにおいて発生するコークス炉ガス、高炉ガスおよび転炉ガスといった副生ガスを熱量測定対象ガスとし、当該熱量測定対象ガスの熱量を測定する熱量測定機構20と、熱量測定対象ガスの熱量などの情報を表示する表示機構40とが、共通の外装容器10内に配設されて構成されている。ここに、本発明においては、後述する補正係数および熱量換算係数を適宜設定することによって、総発熱量(Gross)および真発熱量(Net)のいずれであっても測定することができ、以下、特に限定する場合を除いて、単に「熱量」ということとする。
【0014】
熱量測定機構20は、例えば、熱量測定対象ガスの屈折率の値から求められる屈折率換算熱量Q
O を得るための屈折率換算熱量測定機構21と、当該熱量測定対象ガスの音速の値から求められる音速換算熱量Q
S を得るための音速換算熱量測定機構25と、当該熱量測定対象ガスに含まれる一酸化炭素ガス濃度X
CO 〔vol%(体積百分率)〕に基づいて一酸化炭素ガスに起因する誤差熱量Q
CO を測定する誤差熱量測定機構30と、当該熱量測定対象ガスの熱量Qの値を算出する熱量計算機構35とを備えている。
【0015】
屈折率換算熱量測定機構21は、熱量測定対象ガスの屈折率を測定する屈折率測定手段22と、屈折率測定手段22によって測定された屈折率の値に基づいて屈折率換算熱量Q
O を求める機能を有する屈折率−熱量換算処理手段23とを備えている。
【0016】
屈折率−熱量換算処理手段23は、熱量測定対象ガスにおいて不燃性ガス成分を含まない燃焼性ガス成分(パラフィン系炭化水素ガス)のみからなる特定ガスについて、例えばグラフ化することなどによって予め取得された屈折率と熱量との相関関係を利用し、熱量測定対象ガスについて得られた屈折率の値が特定ガスの屈折率であると仮定して、得られた屈折率の値を当該相関関係に対照することにより屈折率換算熱量Q
O を算出する。
【0017】
音速換算熱量測定機構25は、熱量測定対象ガス中における音波の伝播速度(熱量測定対象ガスの音速)を測定する音速測定手段26と、音速測定手段26によって測定された音速の値に基づいて音速換算熱量Q
S の値を求める機能を有する音速−熱量換算処理手段27とを備えている。
【0018】
音速−熱量換算処理手段27は、熱量測定対象ガスにおいて不燃性ガス成分(例えばN
2 など)を含まない燃焼性ガス成分(パラフィン系炭化水素ガス)のみからなる特定ガスについて、例えばグラフ化することなどによって予め取得された音速と熱量との相関関係を利用し、熱量測定対象ガスについて得られた音速の値が特定ガスの音速である仮定して、得られた音速の値を当該相関関係に対照することにより音速換算熱量Q
S を算出する。
【0019】
誤差熱量測定機構30は、例えば、熱量測定対象ガスに含まれる一酸化炭素ガスの濃度を測定するCO濃度測定手段31と、一酸化炭素ガスの濃度に起因する誤差熱量Q
CO を算出するCO濃度−熱量換算処理手段32とを備えている。
【0020】
CO濃度測定手段31としては、特に限定されるものではないが、例えば、赤外線が検知対象ガスである一酸化炭素ガスによって吸収されることによる赤外線光量の減衰の程度に応じて一酸化炭素ガスのガス濃度を検出する赤外線式センサを備えたものにより構成することが好ましい。CO濃度測定手段31として、いわゆる非分散型赤外線吸収法を利用したものが用いられることにより、熱量測定対象ガスに含まれる他の雑ガスの影響を可及的に小さくすることができ、一酸化炭素ガスの濃度を高い精度で検出することができる。
【0021】
CO濃度−熱量換算処理手段32は、検出された一酸化炭素ガスの濃度X
CO 〔vol%(体積百分率)〕の値に基づいて、上記式(1)によって、熱量換算係数ζとして−0.08〜−0.03の範囲内において選択される値を用いる条件にて、一酸化炭素ガスに起因する誤差熱量Q
CO を算出する。
【0022】
上記式(1)は、次のようにして得られたものである。すなわち、先ず、各々、例えばメタンガスを主成分とし、一酸化炭素ガスの濃度が互いに異なる複数種の試験用ガスについて、上記式(2)において誤差熱量Q
CO の項を「0」とし、補正係数αを例えば2.30とする条件にて、各試験用ガスの真発熱量Qaを算出する。また、当該試験用ガスの各々について、JIS K 2301:2011に準拠して熱量Qbを測定する。そして、JIS K 2301:2011に準拠して得られた熱量Qbを例えば真値として、上記条件で算出された熱量Qaの真値に対する誤差〔MJ/Nm
3 ,Net〕を縦軸、一酸化炭素ガスの濃度〔vol%(体積百分率)〕を横軸にとって結果をプロット(バツ印のプロットで示す。)する。一例を
図2に示す。
図2に示されるように、一酸化炭素ガスに起因する誤差熱量は、一酸化炭素ガスの濃度が高くなるに従って比例関係的に大きくなる傾向にあることが理解される。従って、各試験用ガスについての結果を直線近似することにより、上記式(1)で表される近似直線が取得される。すなわち、近似直線の傾きが熱量換算係数ζとして設定される。ここに、メタンガスの濃度を変更したガスや、例えば水素ガスなどの他の雑ガスが含まれるガスについても、近似直線における傾きの大きさ(熱量換算係数ζの値)は異なるものの、誤差熱量と一酸化炭素ガスの濃度は比例関係にあることが明らかになった。そして、熱量換算係数ζが−0.08〜−0.03の範囲内において選択される値であることにより、一酸化炭素ガスによる誤差熱量を熱量測定対象ガスの種類に拘わらず高い精度で算出することができる。
なお、
図2においては、一酸化炭素ガスに代えて窒素ガスまたは二酸化炭素ガスを混入させた試験用ガスについて、上記と同様の方法により取得されたデータをプロットしてあるが、窒素ガス(丸印のプロット)および二酸化炭素ガス(三角印のプロット)については、濃度に拘わらず、誤差熱量の影響は実質的に一定の大きさであって、誤差熱量自体も、実質的に問題のない程度の大きさであることが理解される。従って、音速換算熱量および屈折率換算熱量に影響を及ぼす誤差熱量としては、一酸化炭素ガスによる誤差熱量を考慮すれば、熱量測定対象ガスの熱量を高い精度で測定することができることとなる。
【0023】
熱量換算係数ζの一例を示すと、熱量測定対象ガスの総発熱量を測定する場合には、熱量換算係数ζは、例えば−0.0475に設定することができる。また、熱量測定対象ガスの真発熱量を測定する場合には、熱量換算係数ζは、例えば−0.0629に設定することができる。
【0024】
熱量計算機構35は、屈折率換算熱量測定機構21によって得られた屈折率換算熱量Q
O の値と、音速換算熱量測定機構25によって得られた音速換算熱量Q
S の値と、誤差熱量測定機構30によって得られた一酸化炭素ガスによる誤差熱量Q
CO の値とに基づいて、上記式(2)によって、補正係数αとして1.1〜4.2の範囲内において選択される値を用いる条件にて、熱量測定対象ガスの熱量Qの値を算出する。
【0025】
補正係数αは、熱量測定対象ガスに雑ガスが含有されていることに起因して生ずる、音速換算熱量Q
S の測定誤差の、屈折率換算熱量Q
O の測定誤差に対する比の値であって、熱量測定対象ガスの組成に対応して選択される。
【0026】
上記式(2)において、補正係数αとしては、1.1〜4.2の範囲内において選択される値が用いられるが、特に2.20〜2.60の範囲内において選択される値が用いられることが好ましい。
補正係数αの値が過小である場合には、屈折率換算熱量Q
O および音速換算熱量Q
S に生じた測定誤差を十分に補正することができず、最終的に得られる熱量測定対象ガスの熱量Qの値に、雑ガスが含有されていることに起因する測定誤差が生じてしまう。一方、補正係数αの値が過大である場合には、屈折率換算熱量Q
O および音速換算熱量Q
S に生じた測定誤差が適切に補正されず、最終的に得られる熱量測定対象ガスの熱量Qの値に測定誤差が生じてしまう。
【0027】
以上において、
図1における11は、熱量測定対象ガスを音速測定手段26、屈折率測定手段22およびCO濃度測定手段31の各々に供給するための熱量測定対象ガス導入部、12は、屈折率測定手段22において検知原理上必要とされる参照ガスを導入するための参照ガス導入部、13はガス排出部である。また、
図1における二点鎖線は、ガス配管を示す。
【0028】
上記の熱量測定装置においては、コークス炉ガス、高炉ガスまたは転炉ガスといった副生ガスの一部が熱量測定対象ガスとして熱量測定対象ガス導入部11から音速換算熱量測定機構25の音速測定手段26および屈折率換算熱量測定機構21の屈折率測定手段22の各々に順次に供給される。また、例えば空気などの参照ガスが参照ガス導入部12から屈折率換算熱量測定機構21の屈折率測定手段22に供給される。これにより、音速換算熱量測定機構25においては、副生ガスの音速が音速測定手段26によって測定され、その結果に基づいて音速換算熱量Q
S の値が音速−熱量換算処理手段27によって求められる。また、屈折率換算熱量測定機構21においては、副生ガスの屈折率が屈折率測定手段22によって測定され、その結果に基づいて屈折率換算熱量Q
O が屈折率−熱量換算処理手段23によって求められる。
一方、熱量測定対象ガス導入部11から導入された副生ガスの他の全部が、誤差熱量測定機構30のCO濃度測定手段31に供給される。これにより、誤差熱量測定機構30において、副生ガスに含まれる一酸化炭素ガスの濃度X
CO 〔vol%(体積百分率)〕がCO濃度測定手段31によって測定される。得られた一酸化炭素ガスの濃度X
CO 〔vol%(体積百分率)〕の値に基づいて、上記式(1)によって、熱量換算係数ζとして特定の範囲内において選択された値を用いる条件で、一酸化炭素ガスの濃度に起因する誤差熱量Q
CO がCO濃度−熱量換算処理手段32によって求められる。
【0029】
以上のようにして得られた、屈折率換算熱量Q
O の値と、音速換算熱量Q
S の値と、誤差熱量Q
CO の値とに基づいて、上記式(2)によって、補正係数αとして特定の範囲内において選択された値を用いる条件で、副生ガスの熱量Qが熱量計算機構35によって算出され、その結果が表示機構40に表示される。
なお、副生ガスおよび参照ガスは、ガス排出部13を介して装置外部に排出される。
【0030】
而して、副生ガスの熱量を屈折率換算熱量Q
O と音速換算熱量Q
S とに基づいて測定する場合においては、上述したように、屈折率測定手段22の測定誤差に対する音速測定手段26の測定誤差の比で示される補正係数αの値を選択するだけでは、雑ガスによる屈折率換算熱量Q
O および音速換算熱量Q
S に生じる測定誤差を補償することができない。この理由について、本発明者らは、副生ガスに含まれる雑ガスとしての一酸化炭素ガスによる影響に着目し、窒素ガスおよび二酸化炭素ガスなどの他の雑ガスについては、これらのガス濃度が変化しても誤差熱量の大きさが実質的に一定であるのに対して、一酸化炭素ガスによる誤差熱量は、一酸化炭素ガスの濃度との関係において比例的に変化することを見出した。そして、一酸化炭素ガスの濃度X
CO 〔vol%(体積百分率)〕に応じた補正を行うことにより、副生ガスの熱量を高い精度で測定できることを見出した。
【0031】
従って、上記の熱量測定方法によれば、副生ガスに含まれる一酸化炭素ガスの濃度X
CO 〔vol%(体積百分率)〕を測定し、得られた結果に基づいて、上記式(1)によって、熱量換算係数ζとして特定の範囲内において選択された値を用いる条件で、一酸化炭素ガスの濃度X
CO 〔vol%(体積百分率)〕に起因する誤差熱量Q
CO を算出することができる。その結果、熱量測定対象ガスである副生ガスに含まれる一酸化炭素ガスおよびその他の雑ガスに起因して生ずる、屈折率換算熱量Q
O および音速換算熱量Q
S の測定誤差が補償されるので、副生ガスの熱量Qを高い信頼性で測定することができる。
そして、このような熱量測定方法が実行される本発明の熱量測定装置によれば、副生ガスの熱量Qを高い信頼性で測定することができる。しかも、実際の状況に即した副生ガスの熱量Qを連続的に取得することができるので、ガス組成の変動、例えば転炉ガスに含まれる一酸化炭素ガスの濃度変動などが生じた場合であっても、ガス組成の変動に伴う熱量Qの変動を速やかに検出することができる。
【0032】
また、上記の熱量測定装置においては、熱量測定機構20を構成する屈折率換算熱量測定機構21、音速換算熱量測定機構25および誤差熱量測定機構30といった、互いに検知原理の異なる複数種類の測定手段(センサ)が共通の外装容器10内に配設されてなるものであることから、測定システムの構築および操作が簡便となる。しかも、測定に際しては、相当の時間を要することがなく、しかも、屈折率換算熱量Q
O および音速換算熱量Q
S および誤差熱量Q
CO の算出処理にタイムラグが生じることがないため、副生ガスの熱量Qをリアルタイムに測定することができる。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、誤差熱量測定機構におけるCO濃度測定手段は、いわゆる非分散型赤外線吸収法を利用したものに限定されず、一酸化炭素ガスの濃度を検出可能な他のガスセンサを備えたものであってもよい。また、熱量測定装置自体がCO濃度測定手段を備えている必要はなく、熱量測定対象ガスに含まれる一酸化炭素ガスの濃度を適宜のCO濃度測定装置によって測定し、これにより得られる濃度データが入力される構成とされていてもよい。
【0034】
以下、本発明の実験例について説明する。
【0035】
〔実験例1〕
試験用ガスとして、下記表1に示す組成を有するコークス炉ガス(COG)、高炉ガス(BFG)および転炉ガス(LDG)を用意した。
これらの3種類の試験用ガスの各々について、屈折率センサを備えたガス屈折率計、音速センサを備えたガス密度計、赤外線式センサを具えたガス濃度計を用いて屈折率、音速(密度)および一酸化炭素ガスの濃度を測定した。
得られた屈折率の値、音速の値および一酸化炭素ガスの濃度値に基づいて、上記式(1)および式(2)によって、補正係数αを2.27、熱量換算係数ζを−0.0475として各々の試験用ガスの総発熱量の値を算出した。そして、JIS K 2301:2011に準拠して得られた熱量の値を真値としたとき、測定された熱量の値(測定熱量値)と真値との関係を調べた。コークス炉ガス(COG)、高炉ガス(BFG)および転炉ガス(LDG)の結果を、
図3においてそれぞれ塗りつぶした三角印のプロット(▲)、塗りつぶした丸印のプロット(●)および塗りつぶした四角印のプロット(■)で示す。ここに、
図3における横軸は真値としての熱量であり、縦軸は測定熱量である。また、破線で示す直線は、測定された熱量の値と真値との誤差が0である理想曲線である。
【0037】
〔実験例2〕
試験用ガスとして、上記コークス炉ガス(COG)と上記高炉ガス(BFG)の混合ガス(Mガス)であって、コークス炉ガス(COG)と高炉ガス(BFG)の混合比を適宜変更した複数種のガスを用いたことの他は、実験例1と同様の方法により、各試験用ガスの総発熱量を測定した。そして、JIS K 2301:2011に準拠して得られた熱量の値を真値としたとき、測定熱量値と真値との関係を調べた。結果を
図3において白抜きの四角印のプロット(□)で示す。
【0038】
〔実験例3〕
試験用ガスとして、上記コークス炉ガス(COG)と上記転炉ガス(LDG)の混合ガス(Mガス)であって、コークス炉ガス(COG)と転炉ガス(LDG)の混合比を適宜変更した複数種のガスを用いたことの他は、実験例1と同様の方法により、各試験用ガスの総発熱量を測定した。そして、JIS K 2301:2011に準拠して得られた熱量の値を真値としたとき、測定熱量値と真値との関係を調べた。結果を
図3において白抜きの三角印のプロット(△)で示す。
【0039】
〔実験例4〕
試験用ガスとして、上記高炉ガス(BFG)と上記転炉ガス(LDG)の混合ガス(Mガス)であって、高炉ガス(BFG)と転炉ガス(LDG)の混合比を適宜変更した複数種のガスを用いたことの他は、実験例1と同様の方法により、各試験用ガスの総発熱量を測定した。そして、JIS K 2301:2011に準拠して得られた熱量の値を真値としたとき、測定熱量値と真値との関係を調べた。結果を
図3において白抜きの丸印のプロット(○)で示す。
【0040】
〔実験例5〕
試験用ガスとして、上記コークス炉ガス(COG)と、上記高炉ガス(BFG)と、上記転炉ガス(LDG)との混合ガス(Mガス)であって、コークス炉ガス(COG)、高炉ガス(BFG)および転炉ガス(LDG)の混合比を適宜変更した複数種のガスを用いたことの他は、実験例1と同様の方法により、各試験用ガスの総発熱量を測定した。そして、JIS K 2301:2011に準拠して得られた熱量の値を真値としたとき、測定熱量値と真値との関係を調べた。結果を
図3においてバツ印のプロット(×)で示す。
【0041】
〔比較実験例1〜5〕
実験例1〜実験例5において用いた複数の試験用ガスの各々について、試験用ガスに含まれる一酸化炭素ガスの濃度による補正を行わなかったこと(上記式(1)においてQco=0)の他は、実験例1と同様の方法により、各試験用ガスの総発熱量を測定した。そして、JIS K 2301:2011に準拠して得られた熱量の値を真値としたとき、測定熱量値と真値との関係を調べた。結果を
図4に示す。
【0042】
以上の結果から明らかなように、実験例1〜実験例5においては、試験用ガスに含まれる一酸化炭素ガスの濃度に応じた補正がなされることにより、試験用ガスの熱量(総発熱量)を高い精度で測定することができることが確認された。これに対して、比較実験例1〜比較実験例5では、一酸化炭素ガスの影響によって、実用上無視することのできない程度の測定誤差が生ずることが確認された。