【課題を解決するための手段】
【0009】
以下に説明する電磁波シールド部材は、金属材料によって形成され、電子回路基板上に実装された電子部品を前記電子回路基板との間に封入することで、前記電子部品から放射される電磁波、及び前記電子部品に到来する電磁波を遮断するシールド部と、比誘電率が6以上の誘電材料によって形成され、前記電子部品が有する導体部分と前記シールド部との間に介在することで、前記導体部分と前記シールド部とを電気的に絶縁する誘電部とを有し、前記電子部品の周囲では、前記シールド部、前記誘電部、及び前記電子回路基板が、当該順序で積層された構造とされ、当該積層箇所においては、前記シールド部と前記電子回路基板の有するグランド層とが容量結合する。
【0010】
この電磁波シールド部材において、シールド部を形成する金属材料としては、例えば、アルミニウムや銅などの金属、これらの金属を含む合金などを利用することができる。これらの金属材料は、金属の薄板や金属箔のような金属単体のものであってもよいし、樹脂フィルム(例えばPETフィルム)などの基材上に金属層が形成されたものなどでもよい。
【0011】
誘電部を形成する誘電材料としては、比誘電率が6以上のものが用いられる。ただし、容量結合を促す観点からは、比誘電率はより高い方がよく、例えば、比誘電率が8以上であるとより好ましい。このような誘電材料としては、例えば、シリコーンやアクリルゴムなどを母材として、その母材中にアルミナ、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、水酸化マグネシウム、五酸化タンタルなどのセラミックス材料からなる微粒子状のフィラーを充填したものを利用することができる。これらのフィラーの配合比は、比誘電率を考慮して適宜調整されていればよいが、一例を挙げれば、例えば、シリコーンに水酸化アルミニウムを配合する場合であれば、100重量部のシリコーンに対して180〜250重量部程度の水酸化アルミニウムを配合するとよい。
【0012】
以上のように構成された電磁波シールド部材によれば、誘電部は比誘電率が6以上とされ、シールド部、誘電部、及び電子回路基板は当該順序で積層され、この積層箇所においては、シールド部と電子回路基板の有するグランド層とが容量結合する。そのため、シールド部に高周波の電圧変動などが生じるような状況下でも、シールド部と容量結合しているグランド層へノイズを逃がすことができる。
【0013】
したがって、例えば、電子部品や配線のレイアウトの都合上、電子部品の周囲においてシールド部をグランドに接続することが困難な場合でも、シールド部や、シールド部に近接配置されたヒートシンクが電磁波の放射源となってしまうのを防止ないし抑制できる。また、シールド部をグランドに接続できる場合でも、シールド部とグランドとの接続箇所を少なくすることができるので、より多箇所での接続が必要なものよりも、容易に電磁波対策を施すことができる。
【0014】
以上のような電磁波シールド部材は、更に以下に挙げるような構成を備えていることが好ましい。
まず、上記電磁波シールド部材は、比誘電率が5以下の誘電材料によって形成され、前記シールド部を挟んで前記電子回路基板側とは反対側となる箇所に配設されるヒートシンクと前記シールド部との間に介装されて、前記シールド部から前記ヒートシンクへと熱を伝導する熱伝導部を備えると好ましい。
【0015】
この電磁波シールド部材において、熱伝導部を形成する誘電材料としては、比誘電率が5以下のものが用いられる。ただし、容量結合を阻む観点からは、比誘電率はより低い方がよく、例えば、比誘電率が4以下であるとより好ましい。このような誘電材料としては、例えば、上述の誘電部と同様な誘電材料に対し、更に中空フィラー、酸化ケイ素やその化合物、ポリアリルエーテル・ポリオレフィンなどの有機材料を配合することで、比誘電率を5以下まで低下させたものを利用することができる。なお、熱伝導部は、シールド部からヒートシンクへ熱を伝導する部分なので、熱伝導率は高いほど好ましい。ただし、どの程度の熱伝導率を確保すべきかは、電子部品における発熱量やヒートシンクにおける放熱量なども勘案して適宜調整されていればよく、目安としては、例えば、1W/m・K以上の熱伝導率を有するものであればよい。
【0016】
このように構成された電磁波シールド部材によれば、電子部品からシールド部へ伝わる熱を、熱伝導部を介してヒートシンクへと逃がすことができる。したがって、例えば、電子部品の発熱量が大きい場合等、シールド部のみでは十分な放熱ができない場合には、このような熱伝導部を備えると好適である。
【0017】
また、熱伝導部は、比誘電率が5以下の誘電材料によって形成されているので、熱伝導部を挟んでヒートシンクがシールド部に近接配置された場合でも、シールド部とヒートシンクが容量結合するのを防止ないし抑制する。そのため、シールド部からヒートシンク側へノイズを逃がしてしまうことなく、シールド部からグランド層側へは適切にノイズを逃がすことができ、ヒートシンクがノイズとなる電磁波の放射源になるのを防止ないし抑制することができる。
【0018】
また、上記電磁波シールド部材は、熱放射率が0.8以上の熱放射材料によって形成され、前記シールド部を挟んで前記電子回路基板側とは反対側となる箇所に配設されて、前記シールド部から伝導される熱を赤外線として放射する熱放射部を備えていても好ましい。
【0019】
この電磁波シールド部材において、熱放射部を形成する熱放射材料としては、熱放射率が0.8以上のものが用いられる。熱放射を促す観点からは、熱放射率はより高い方が好ましい。このような熱放射材料としては、例えば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂などに、炭化ケイ素、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどのフィラーを充填した材料を利用することができる。
【0020】
このように構成された電磁波シールド部材によれば、電子部品からシールド部へ伝わる熱を、更に熱放射部へと伝えて熱放射部から放射することができる。したがって、例えば、電子部品の発熱量が大きい場合等、シールド部のみでは十分な放熱ができない場合には、このような熱放射部を備えると好適である。
【0021】
また、上記電磁波シールド部材の前記積層箇所において、前記誘電部は、変形を伴って前記シールド部及び前記電子回路基板に密接すると好ましい。
このように構成された電磁波シールド部材によれば、誘電部が変形を伴ってシールド部及び電子回路基板に密接するので、誘電部が変形しない場合に比べ、誘電部とシールド部との間、及び誘電部と電子回路基板との間には空隙が生じにくくなる。したがって、そのような空隙が生じる場合に比べ、電子回路基板が有するグランド層とシールド部を容易に容量結合させることができる。
【0022】
また、上記電磁波シールド部材は、前記電子部品が収容される収容部と、前記収容部の周囲において前記積層箇所を形成する積層部とを有すると好ましい。
このように構成された電磁波シールド部材によれば、上述のような収容部及び積層部を有するので、電子回路基板上に取り付けるだけで、電子部品を収容部に収容することができ、積層部においてシールド部とグランド層を容量結合させることができる。
【0023】
また、上記電磁波シールド部材において、前記シールド部は、前記誘電部側では凹部をなすとともに、当該凹部の裏側では凸部をなす形状にあらかじめ成形されており、前記誘電部は、前記凹部及び前記凹部の開口周縁を覆う位置に配設され、前記電磁波シールド部材が前記電子回路基板へ取り付けられる際には、前記誘電部が前記電子部品に押し当てられると、前記誘電部が変形して前記凹部の内側へと入り込むことで、前記収容部が形成されると好ましい。
【0024】
このように構成された電磁波シールド部材によれば、シールド部についてはシールド部単体で成形でき、誘電部については電磁波シールド部材が電子回路基板へ取り付けられる際に収容部をなす形状に変形する。したがって、シールド部及び誘電部の双方をあらかじめ収容部をなす形状に成形しておかなくても済むので、加工コストを低減することができる。
【0025】
次に、以下に説明する電磁波シールド構造は、グランド層を有する電子回路基板と、前記電子回路基板上に実装された電子部品と、前記電子回路基板上に取り付けられた電磁波シールド部材とを備えており、前記電磁波シールド部材は、金属材料によって形成され、電子回路基板上に実装された電子部品を前記電子回路基板との間に封入することで、前記電子部品から放射される電磁波、及び前記電子部品に到来する電磁波を遮断するシールド部と、比誘電率が6以上の誘電材料によって形成され、前記電子部品が有する導体部分と前記シールド部との間に介在することで、前記導体部分と前記シールド部とを電気的に絶縁する誘電部とを有し、前記電子部品の周囲では、前記シールド部、前記誘電部、及び前記電子回路基板が、当該順序で積層された構造とされ、当該積層箇所においては、前記シールド部と前記電子回路基板の有するグランド層とが容量結合する。
【0026】
以上のように構成された電磁波シールド構造によれば、上述の電磁波シールド部材と同等な構成を備えているので、シールド部、誘電部、及び電子回路基板の積層箇所において、シールド部と電子回路基板の有するグランド層とが容量結合する。したがって、シールド部と容量結合しているグランド層へノイズを逃がすことができ、シールド部や、シールド部に近接配置されたヒートシンクが電磁波の放射源となってしまうのを防止ないし抑制できる。また、シールド部をグランドに接続できる場合でも、シールド部とグランドとの接続箇所を少なくすることができるので、より多箇所での接続が必要なものよりも、容易に電磁波対策を施すことができる。なお、以上のような電磁波シールド構造においても、上述の電磁波シールド部材が備えると好ましい旨を説明した構成を備えていてもよいことはもちろんである。