(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内蔵の電池から電力の供給を受け、センサにより得られるアナログ信号のA/D変換をA/D変換器により繰り返し実行し、A/D変換結果であるデジタル信号値を繰り返し無線送信するセンサ付無線タグにおいて、
前記電池の電源電圧の変動により発生する前記アナログ信号の誤差を補正する補正値を、前記A/D変換器により得られ、前記電池の電源電圧の変動に依存する固定電圧のA/D変換値に対応付けて格納する補正テーブルを記憶する記憶手段と、
前記A/D変換器に前記アナログ信号のA/D変換を行わせるのに先立って、前記固定電圧のA/D変換を行わせ、その結果得られるA/D変換値に基づいて補正値を前記補正テーブルから読み出し、当該補正値により前記アナログ信号のA/D変換結果であるデジタル信号値を補正する制御手段と
を具備することを特徴とするセンサ付無線タグ。
内蔵の電池から電力の供給を受け、センサにより得られるアナログ信号のA/D変換をA/D変換器により繰り返し実行し、A/D変換結果であるデジタル信号値を繰り返し無線送信するセンサ付無線タグを用いてデータ収集を行うデータ収集方法において、
前記センサ付無線タグの電池の電源電圧の変動により発生する前記アナログ信号の誤差を補正する補正値を求め、前記A/D変換器により得られ、前記電池の電源電圧の変動に依存する固定電圧のA/D変換値に対応付けて前記補正値を格納する補正テーブルを前記センサ付無線タグの記憶手段に書き込み、
前記センサ付無線タグの制御手段が、前記A/D変換器に前記アナログ信号のA/D変換を行わせるのに先立って、前記固定電圧のA/D変換を行わせ、その結果得られるA/D変換値に基づいて補正値を前記補正テーブルから読み出し、当該補正値により前記アナログ信号のA/D変換結果であるデジタル信号値を補正することを特徴とするデータ収集方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、この発明の実施形態について説明する。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、この発明の第1実施形態であるセンサ付無線タグの構成を示す回路図である。
図1において、電池1の正負の電極間にはコンデンサ2が接続されている。このコンデンサ2は、急激な電源雑音を吸収するに足る必要最低限の容量を有しており、センサ付無線タグ内に収容可能な小型のコンデンサである。本実施形態では、電池1の出力電圧がタグ内の各回路に直接供給される構成となっている。
【0012】
基準電圧発生回路3は、電池1から供給される電源電圧に基づき、A/D変換器9に与える基準電圧Ref+およびRef−等の各種の基準電圧を発生する回路である。オペアンプにより構成されたボルテージフォロア4は、この基準電圧発生回路3が発生する基準電圧V1=Ref+をゲイン1で増幅し、センサ5に対する電源電圧として出力する。センサ5は例えば歪ゲージである。
【0013】
アンプ6は、基準電圧発生回路3からボルテージフォロア4に供給される基準電圧V1=Ref+を増幅し、固定電圧V2として出力するアンプである。
図1に示す例では、アンプ6は、オペアンプ60と、抵抗61および62とにより構成されている。ここで、オペアンプ60の反転入力端子には基準電圧発生回路3が発生する基準電圧V1=Ref+が与えられる。また、抵抗61は、オペアンプ60の非反転入力端子と接地との間に介挿され、抵抗62は、オペアンプ60の出力端子と非反転入力端子との間に介挿されている。抵抗61および62の抵抗値をR61およびR62とした場合、アンプ6は、基準電圧発生回路3が発生する基準電圧V1を(R61+R62)/R61のゲインで増幅し、固定電圧V2として出力する。アンプ6は、固定電圧を発生する固定電圧源として機能する。
【0014】
アンプ7はセンサ5が出力するアナログ信号V3を増幅し、センサ値信号V4として出力する。アンプ7は、オペアンプ70と、抵抗71および72とにより構成されている。ここで、オペアンプ70の反転入力端子にはセンサ5が出力するアナログ信号V3が与えられる。また、抵抗71は、オペアンプ70の非反転入力端子と接地との間に介挿され、抵抗72は、オペアンプ70の出力端子と非反転入力端子との間に介挿されている。抵抗71および72の抵抗値をR71およびR72とした場合、アンプ7は、センサ5が出力するアナログ信号V3を(R71+R72)/R71のゲインで増幅し、センサ値信号V4として出力する。
【0015】
本実施形態では、抵抗61、71、62、72の各抵抗値間にR61=R71、R62=R72の関係がある。従って、アンプ7は、アンプ6と同じゲインを有している。そして、本実施形態では、アンプ6および7のゲインを1より小さいゲインとしている。
【0016】
本実施形態において、アンプ6および7のゲインを1よりも小さくしているのは、電池1からの電源電圧の変動に伴う基準電圧Ref+、Ref−の変動に起因したA/D変換の誤差を取り除くためである。ボルテージフォロア4およびアンプ6については、電池1からの電源電圧の変動によるアンプ出力変化の条件をできるだけ同じにするため、2つのオペアンプが同一パッケージにモールドされ、2つのオペアンプの電源端子が共通になっている2素子入りのオペアンプを使用するのが好ましい。アンプ7についても、可能であれば、ボルテージフォロア4、アンプ6と同一パッケージのモールドされたオペアンプを使用し、3つのオペアンプの電源端子を共通化することで電池電圧変動によるアンプの出力変化の条件を同じにする。
【0017】
マルチプレクサ8は、アンプ6が出力する固定電圧V2またはアンプ7が出力するセンサ値信号V4のうち一方を選択してA/D変換器9へ出力する回路である。A/D変換器9は、マルチプレクサ8によって選択されたアナログ信号をデジタル信号に変換する回路である。RF送信IC20は、A/D変換器9から出力されるデジタル信号によってキャリアを変調し、無線信号として送信する無線通信回路である。
【0018】
MCU(Micro Controller Unit)10は、センサ付無線タグ内の各回路を制御する制御手段である。このMCU10は、各種のプログラムと補正テーブルとを記憶したROMと、ワークエリアとしてのRAMを内蔵している。ここで、補正テーブルは、センサ値信号V4のA/D変換結果であるデジタル信号値を補正するための補正値を格納したテーブルであり、センサ付無線タグの出荷時にROMに書き込まれる。この補正テーブルを記憶するROMは、例えばEEPROM等の書き換え可能な不揮発性メモリであることが好ましい。
【0019】
MCU10は、ROM内のプログラムに従い、A/D変換器9にA/D変換を実行させ、RF送信IC20にA/D変換結果であるデジタル信号を送信させる制御を繰り返す。その際、MCU10は、ROM内の補正テーブルを利用し、センサ値信号V4のA/D変換結果であるデジタル信号値を補正する。
【0020】
図2は補正テーブルの作成時におけるセンサ付無線タグの動作を示すタイムチャートである。このタイムチャートには、センサ値信号V4のA/D変換結果であるデジタル信号値DV4と、固定電圧V2のA/D変換結果であるデジタル信号値DV2と、電池1の出力電圧VBの時間的変化が例示されている。また、このタイムチャートにおいて、IC_ONはMCU10がデジタル信号の送信を行わせるためにRF送信IC20の電源をONにするタイミング、IC_OFFはMCU10がデジタル信号の送信を終えたRF送信IC20の電源をOFFにするタイミングを示している。
【0021】
センサ付無線タグにおいては、RF送信IC20が送信動作を行うときに最も大きな消費電流が発生する。このため、電池1の出力電圧VBは、IC_ONのタイミングにおいて大きく低下し、IC_OFFのタイミングにおいて大きく上昇する。このように電源電圧が変動すると、電源電圧の変動のタイミングにおいて、A/D変換器9のA/D変換結果に誤差が発生する。そして、この誤差は固定電圧V2のA/D変換結果であるデジタル信号値DV2およびセンサ値信号V4のA/D変換結果であるデジタル信号DV4の各々に及ぶ。従って、デジタル信号値DV4に誤差が発生する場合、デジタル信号値DV2にも同様に誤差が発生する。
【0022】
本実施形態では、センサ5に入力される物理量を一定値に保持した状態において、RF送信IC20が送信動作を行わせることにより電池1の出力電圧VBを変動させ、その際に固定電圧V2のA/D変換結果であるデジタル信号値DV2の理想値からの変動幅と、センサ値信号V4のA/D変換結果であるデジタル信号値DV4に発生する誤差とを測定する。そして、デジタル信号値DV2の理想値からの変動幅に対応付けてデジタル信号値DV4の誤差を補正するための補正値を格納した補正テーブルを作成し、MCU10のROMに書き込むのである。ここで、デジタル信号値DV2の理想値からの変動は、電池1の電源電圧VBが理想値から変動することに起因しているので、デジタル信号値DV2の理想値からの変動幅と、理想値から変動した電池1の電源電圧VBとの間には1対1の対応関係がある。従って、補正テーブルは、電池1の電源電圧VBに対応付けてデジタル信号値DV4の誤差を補正するための補正値を格納したテーブルであるということもできる。
【0023】
図3は本実施形態によるセンサ付無線タグの稼働時にMCU10が補正テーブルを利用して行うA/D変換の制御の態様を示すタイムチャートである。本実施形態において、MCU10は、A/D変換器9にセンサ値信号V4のA/D変換を周期的に繰り返し行わせる際、センサ値信号V4のA/D変換に先立って固定電圧V2のA/D変換を行わせる。この固定電圧V2のA/D変換とセンサ値信号V4のA/D変換は互いに接近したタイミングにおいて行われる。
図3において、垂直方向を向いた複数本の破線矢印の各々は、固定電圧V2のA/D変換とセンサ値信号V4のA/D変換が行われるタイミングを示している。
【0024】
図示は省略したが、MCU10は、センサ付無線タグの動作開始後、RF送信IC20の動作を開始させる前に、A/D変換器9に固定電圧V2のA/D変換を行わせ、そのA/D変換結果であるデジタル信号値DV2を補正初期値として求める。この補正初期値は、電池1の継続的な使用による電源電圧の低下等、RF送信IC20の動作等による電池1の消費電流の変動以外の要因により変動する。そこで、MCU10は、以後、A/D変換器9に固定電圧V2のA/D変換を行わせる際、補正初期値を固定電圧V2のA/D変換結果の理想値として扱う。
【0025】
補正初期値の設定後、MCU10は、A/D変換器9に固定電圧V2のA/D変換を行わせたとき、そのA/D変換結果であるデジタル信号値DV2の補正初期値からの変動幅を求め、ROM内の補正テーブルからこの変動幅に対応付けられた補正値を読み出す。そして、MCU10は、A/D変換器9にセンサ値信号V4のA/D変換を行わせたとき、そのA/D変換結果であるデジタル信号値DV4を補正テーブルから読み出した補正値により補正するのである。
図3に示す例では、IC_OFFのタイミングにおいて、デジタル信号値DV2が補正初期値から正方向に変動し、これに応じて補正テーブルから読み出された負の補正値によりデジタル信号値DV4を減少させる補正が行われている。また、
図3に示す例では、IC_ONのタイミングにおいて、デジタル信号値DV2が補正初期値から負方向に変動し、これに応じて補正テーブルから読み出された正の補正値によりデジタル信号値DV4を増加させる補正が行われている。デジタル信号値DV2が補正初期値から変動していないタイミングでは、補正値として0が読み出されるため、補正によりデジタル信号値DV4は変化しない。
【0026】
本実施形態によれば、このような補正動作が行われるため、電池1がタグ内の各回路に直結された構成においても、センサ5によって得られるアナログ信号を精度よくデジタル信号に変換し、その結果の無線送信を行うことができる。
【0027】
次にこのようなA/D変換の制御を実現するための具体的なプログラム例を説明する。
図4〜
図6は本実施形態におけるMCU10が実行する各種のルーチンの処理内容を示すフローチャートである。本実施形態において、MCU10は、初期設定指令が与えられることにより
図4に示すメインルーチンの実行を開始する。ここで、初期設定指令は、例えばセンサ付無線タグに設けられた電源スイッチ(図示略)がONになったとき、あるいはセンサ付無線タグに対して外部から何等かの起動指令が与えられた場合に発生される指令である。
【0028】
MCU10は、メインルーチンの実行を開始すると、まず、イニシャル処理を実行する(SA1)。このイニシャル処理では、内蔵のRAM内に設定された制御用のフラグ、カウンタ、レジスタ類の初期設定を行う。次に内蔵のROMに記憶されている補正テーブルを内蔵のRAMに読み出す(SA39)。次にA/D変換の制御の初期化を要求するA/D_ini_Flagに“1”を書き込む(SA2)。次にマルチプレクサ8にアンプ6が出力する固定電圧V2を選択させ、A/D変換器9にこの固定電圧V2のA/D変換を開始させる(SA3)。そして、A/D_ini_Flagが“0”になったか否かを判断し(SA4)、判断結果が「YES」になるまで同判断を繰り返す。
【0029】
A/D変換器9は、MCU10から指示されたA/D変換を完了すると、A/D変換完了割り込み信号をMCU10に対して出力する。これによりMCU10は、
図5に示すA/D変換完了割り込みルーチンを実行する。まず、MCU10は、A/D変換器9からA/D変換結果であるデジタル信号値を取得する(SA24)。次にA/D_ini_Flagが“0”か否か判断する(SA25)。この場合、メインルーチンのSA2においてA/D_ini_Flagが“1”に設定された後であるので、判断結果は「NO」となり、A/D変換器9から取得したデジタル信号値(この場合、固定電圧V2のA/D変換結果)を補正初期値として内蔵のRAMに書き込む(SA33)。次にMCU10は、A/D変換の制御の初期設定が終了したことを示す“0”をA/D_ini_Flagに書き込み(SA34)、A/D変換完了割り込みルーチンを終了する。
【0030】
A/D変換完了割り込みルーチンが終了すると、MCU10は、メインルーチンの処理に復帰する。この場合、A/D変換完了割り込みルーチンのSA34においてA/D_ini_Flagが“0”に設定された後であるので、メインルーチンのSA40に進み、補正値オフセット調整を行う。この補正値オフセット調整では、SA33で取得した補正初期値に基づいてオフセットを算出し、このオフセットを補正テーブルに格納された補正値に加算することにより補正値の調整を行う。これは、電池1の消耗等、消費電流の変動以外の要因により恒常的に固定電圧V2が理想値からずれている状況では、センサ値信号V4にもこの固定電圧V2の理想値からの恒常的なずれに起因した誤差が発生する可能性があり、この誤差を補正するためのオフセットを補正値に加算する必要があるからである。次にタイマ割り込み信号の発生間隔であるタイマ周期の設定を行うとともに、MCU10のタイマ割り込みを許可する(SA5)。次にA/D変換結果の送信を要求するRF_TX_Flagが“1”になったか否かを判断し(SA6)、判断結果が「YES」になるまで同判断を繰り返す。
【0031】
メインルーチンのSA5が実行されると、以後、設定されたタイマ周期の計時が完了する都度、タイマ割り込み信号が発生し、これによりMCU10は
図6に示すタイマ割り込みルーチンを実行する。
【0032】
まず、MCU10は、A/D_Counterを1だけインクリメントする(SA18)。次にMCU10はA/D_Counterの内容が設定されたA/D変換周期に到達したか否かを判断し(SA19)、この判断結果が「NO」である場合はタイマ割り込みルーチンを終了する。
【0033】
A/D_Counterの内容がA/D変換周期よりも小さい間、MCU10は、タイマ割り込み信号が発生する都度、以上のような処理を繰り返す。
【0034】
そして、タイマ割り込みルーチンの実行時、A/D_Counterの内容がA/D変換周期に到達して、SA19の判断結果が「YES」になると、MCU10は、A/D変換結果の補正に用いる補正値の算出が未了であることを示すA/D補正Flagに“1”を書き込む(SA20)。次いでセンサ値信号のA/D変換が未了であることを示すA/D_Flagに“1”を書き込む(SA21)。次にマルチプレクサ8にアンプ6が出力する固定電圧V2を選択させ、A/D変換器9にA/D変換の開始を指示する(SA22)。次にA/D_Counterを0に初期化し(SA23)、タイマ割り込みルーチンを終了する。
【0035】
A/D変換器9は、MCU10から指示されたA/D変換を完了すると、A/D変換完了割り込み信号をMCU10に対して出力する。これによりMCU10は、A/D変換完了割り込みルーチンを実行する。
【0036】
この場合もMCU10は、A/D変換器9からA/D変換結果であるデジタル信号値(この場合、固定電圧のA/D変換結果)を取得する(SA24)。次に、A/D_ini_Flagが“0”になっているか否か判断する(SA25)。この場合、A/D変換完了割り込みルーチンのSA34においてA/D_ini_Flagが“0”に設定された後であるので、判断結果は「YES」となる。そこで、A/D補正Flagが“0”か否かを判断する(SA26)。この場合、タイマ割り込みルーチンのSA20においてA/D補正Flagが“1”に設定された後であるので、判断結果は「NO」となる。そこで、SA24においてA/D変換器9から取得したデジタル信号値(この場合、固定電圧V2のA/D変換結果であるデジタル信号値DV2)とSA33において取得した補正初期値との差分である固定電圧V2のデジタル信号値DV2の変動幅を算出し、この変動幅に対応する補正値を内蔵のRAMに記憶された補正テーブルから読み出す(SA35)。次に、この補正値を内蔵のRAMに格納する(SA36)。次に、補正値の読み出しが終わったため、A/D補正Flagを“0”とする(SA37)。
【0037】
次にマルチプレクサ8にアンプ7が出力するセンサ値信号V4を選択させ、A/D変換器9にA/D変換の開始を指示し(SA38)、A/D変換完了割り込みルーチンを終了する。
【0038】
その後、A/D変換器9がMCU10から指示されたセンサ値信号のA/D変換を完了し、MCU10がA/D変換完了割り込みルーチンを実行すると、MCU10は、センサ値信号V4のA/D変換結果であるデジタル信号値DV4をA/D変換器9から取得する(SA24)。次に、A/D_ini_Flagが“0”であることからSA25を介してSA26に進み、A/D補正Flagが“0”になっていることからSA26の判断結果が「YES」となる。
【0039】
そこで、MCU10は、SA24においてA/D変換器9から取得したセンサ値信号V4のデジタル信号値DV4にRAM内の補正値(すなわち、直前に実行したA/D変換完了割り込みルーチンのSA36において格納した補正値)を加算することにより、センサ値信号のデジタル信号値DV4を補正し、補正後のデジタル信号値DV4をRAMに格納する(SA27)。
【0040】
次に、センサ値信号V4のA/D変換が終わっているため、A/D_Flagを“0”とする(SA28)。次にセンサ値信号のA/D変換回数を示すA/D_Countを1だけインクリメントする(SA29)。
【0041】
次にA/D_Countの内容が所定のA/D変換回数に達したか否かを判断し(SA30)、この判断結果が「NO」の場合はA/D変換完了割り込みルーチンを終了する。
【0042】
以後、タイマ割り込みルーチンが起動され、SA19の判断結果が「YES」になる都度(すなわち、A/D変換周期が経過する都度)、固定電圧のA/D変換(SA22)、補正値の読み出しおよびRAMへの格納(SA35、SA36)、センサ値信号V4のA/D変換(SA38)、センサ値信号のデジタル信号値の補正および補正後のデジタル信号値のRAMへの格納(SA27)が行われるとともに、A/D_Countがインクリメントされる(SA29)、という動作が繰り返される。
【0043】
そして、A/D変換完了割り込みルーチンの実行時、A/D_Countの内容が所定のA/D変換回数に達すると、SA30の判断結果が「YES」となる。そこで、MCU10は、デジタル信号値の送信を要求するRF_TX_Flagを“1”とする(SA31)。次にA/D_Countを0に初期化する(SA32)。そして、A/D変換完了割り込みルーチンを終了する。
【0044】
A/D変換完了割り込みルーチンが終了すると、MCU10はメインルーチンの処理、具体的にはSA6に復帰する。この場合、RF_TX_Flagが“1”であるのでSA6の判断結果が「YES」になる。そこで、MCU10は、RF_TX_Flagを“0”とする(SA7)。次にMCU10はRAM内の補正後のセンサ値信号のデジタル信号値を含む無線送信フレームを作成する(SA8)。次にMCU10は、A/D_Flagが“0”か否かを判断し(SA9)、判断結果が「NO」である間は同判断を繰り返す。そして、A/D_Flagが“0”であり、SA9の判断結果が「YES」である場合はSA10に進み、RF送信IC20の電源をONにする。
【0045】
ここで、A/D_Flagは、タイマ割り込みルーチンのSA21において“1”とされ、A/D変換完了割り込みルーチンのSA28において“0”とされる。従って、固定電圧のA/D変換が開始され(SA22)、センサ値信号のA/D変換およびA/D変換結果の補正が行われ、補正後のデジタル信号値がRAMに格納される(SA27)までの間、A/D_Flagは“1”を維持する。従って、このA/D_Flagが“1”である期間内にメインルーチンのSA6が「YES」となった場合には、センサ値信号のA/D変換およびA/D変換結果の補正が終了し、補正後のデジタル信号値がRAMに格納されてA/D_Flagが“0”となるまでの間、RF送信IC20の電源ON(SA10)は延期されることとなる。
【0046】
RF送信IC20の電源投入(SA10)を行うと、MCU10は、無線送信フレームの内容を何回かに分けてRF送信IC20の送信レジスタに書き込む制御を行う。具体的には、まず、送信レジスタへの書き込み回数が規定値に達したか否かを判断する(SA11)。この判断結果が「NO」である場合、RF送信IC20の送信レジスタが書き込み可能な状態であるか否かを判断し(SA15)、判断結果が「NO」である間は同判断を繰り返す。SA15の判断結果が「YES」になると、無線送信フレームの内容を一定量だけ送信レジスタに書き込む(SA16)。次に送信レジスタへの書き込み回数を1だけインクリメントし(SA17)、SA11に戻る。以下、同様にSA11、SA15、SA16、SA17を繰り返す。
【0047】
そして、送信レジスタへの書き込み回数が規定値となってSA11の判断結果が「YES」になると、送信レジスタへの書き込み回数を0に初期化する(SA12)。次にA/D_Flagが“0”か否かを判断し(SA13)、判断結果が「NO」である間は同判断を繰り返す。そして、A/D_Flagが“0”であり、SA13の判断結果が「YES」である場合はSA14に進み、RF送信IC20の電源をOFFにする。
【0048】
従って、A/D_Flagが“1”である期間内にメインルーチンのSA11が「YES」となった場合には、センサ値信号のA/D変換およびA/D変換結果の補正が終了し、補正後のデジタル信号値がRAMに格納されてA/D_Flagが“0”となるまでの間、RF送信IC20の電源OFF(SA14)は延期されることとなる。
【0049】
RF送信IC20の電源をOFFにすると(SA14)、MCU10の処理は、SA6に戻り、再び送信対象である補正後のセンサ値信号のデジタル信号がRAMに格納され、RF_TX_Flagが“1”になるまで待機する。そして、RF_TX_Flagが“1”になると、以上説明したSA8〜SA17の処理が繰り返される。
【0050】
以上のように、本実施形態によれば、センサ値信号のA/D変換に先立って固定電圧のA/D変換が行われ、この固定電圧のA/D変換結果の補正初期値からの変動幅に対応した補正値が補正テーブルから読み出され、この補正値によりセンサ値信号のA/D変換結果であるデジタル信号値DV4が補正される。従って、センサ付無線タグ内の各回路に電池が直結された構成において、センサ値信号のA/D変換の精度を改善することができる。
【0051】
この効果について具体例を挙げて説明する。本実施形態において、固定電圧V2のA/D変換終了後、マルチプレクサ8を切り換え、センサ値信号V4のA/D変換を開始するまでの所要時間は数μSである。電池1に並列接続されたコンデンサ2の容量を数10μFとした場合、電池1の内部抵抗を1Ω以下とすれば、電池1の内部抵抗とコンデンサ2の容量とにより定まる時定数の3倍の値を上記所要時間以下とすることができる。そして、RF送信IC20の最大消費電流を20mAとすると、電池1の内部抵抗が1Ωである場合にRF送信IC20の消費電流によって発生する電源電圧の低下は20mVになる。この値は一般的なシリーズレギュレータの出力安定度と同等の値である。このように本実施形態では、固定電圧V2のA/D変換完了後からセンサ値信号のA/D変換を開始するまでの数μSの間に電源電圧が急激に変化することがないので、レギュレータを使用した場合と同等のA/D変換精度を期待することができる。
【0052】
<第2実施形態>
図7はこの発明の第2実施形態であるセンサ付無線タグの構成を示す回路図である。このセンサ付無線タグでは、上記第1実施形態におけるアンプ6がアンプ6Aに置き換えられている。
【0053】
アンプ6Aは、基準電圧V1をゲイン1で増幅するボルテージフォロアを構成するオペアンプ60と、ボルテージフォロアの出力電圧を分圧し、固定電圧V2として出力する分圧抵抗63および64とにより構成されている。
他の構成は上記第1実施形態と同様である。
本実施形態においても上記第1実施形態と同様な効果が得られる。
【0054】
<他の実施形態>
以上、この発明の第1および第2実施形態について説明したが、この発明には他にも実施形態が考えられる。例えば次の通りである。
【0055】
(1)上記各実施形態において、固定電圧V2のA/D変換を行って算出した補正値が大きな値になった場合、その時点において大きな電源電圧変動が発生していると考えられる。そこで、補正値が極端に大きくなった場合には、その後のセンサ値信号V4のA/D変換を行わず、直前に得られた補正後のデジタル信号値DV4をデータ収集装置に無線送信するようにしてもよい。
【0056】
(2)上記各実施形態では、アンプ7から出力されるアナログ信号のA/D変換結果に対して補正を行ったが、センサから出力されるアナログ信号を直接A/D変換し、そのA/D変換結果に対して補正を行ってもよい。
【0057】
(3)上記各実施形態では、アンプ6を設け、センサ値信号V4のA/D変換に先立って、アンプ6が出力する固定電圧V2のA/D変換を行い、そのA/D変換結果に基づいてデジタル信号値DV4を補正した。しかし、アンプ6を設けず、電池1の電源電圧VBを固定電圧とし、センサ値信号V4のA/D変換に先立って、この固定電圧VBのA/D変換を行い、そのA/D変換結果に基づいてデジタル信号値DV4を補正してもよい。