(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両の主駆動輪を駆動するエンジンと、前記車両の補助駆動輪を駆動するモータと、前記エンジンの動力を得て発電する発電機と、前記モータへ界磁電流を供給するための電流駆動ドライバを有する4WDコントローラと、前記車両の発進に前記モータの最大トルクによる前記補助駆動輪の駆動が必要であるか否かを判定する発進時補助駆動判定部と、前記4WDコントローラから前記モータへ供給する界磁電流を制御するモータ界磁電流制御部と、前記モータへ前記界磁電流を供給するとともに前記発電機が発電した電力を充電するバッテリと、を備え、
前記モータ界磁電流制御部は、前記発進時補助駆動判定部が前記最大トルクによる前記補助駆動輪の駆動が必要であり、且つ前記エンジンの回転数が前記界磁電流を増加させても前記バッテリの電圧低下が生じないエンジン回転数閾値よりも大きいと判定すると、前記車両の発進時に、前記モータが前記最大トルクを出力可能な値に前記界磁電流を制御することを特徴とする車両用駆動制御装置。
前記モータ界磁電流制御部は、前記路面勾配検出部が検出した勾配が登り勾配であり、且つ予め設定した第二登り勾配閾値以上前記第一登り勾配閾値未満の範囲内であると、前記車両の発進時に、前記路面勾配検出部が検出した勾配の傾斜度合いに応じた値に前記界磁電流を制御することを特徴とする請求項2に記載した車両用駆動制御装置。
前記車両の横滑りを抑制する制御の禁止が車両の運転者により選択されているか否かを判定する横滑り抑制制御禁止判定部と、前記運転者によるアクセル操作子の操作量を検出するアクセル操作子操作量検出部と、を備え、
前記発進時補助駆動判定部は、前記横滑り抑制制御禁止判定部が前記運転者により前記横滑りを抑制する制御の禁止が選択されていると判定し、且つ前記アクセル操作子操作量検出部が検出した操作量が予め設定した補助駆動力発生閾値以上であると、前記最大トルクによる前記補助駆動輪の駆動が必要であると判定することを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載した車両用駆動制御装置。
車両の発進に前記車両の補助駆動輪を駆動するモータの最大トルクによる前記補助駆動輪の駆動が必要であり、且つ前記車両の主駆動輪を駆動するエンジンの回転数が前記モータへ供給する界磁電流を増加させても前記モータへ前記界磁電流を供給するとともに前記エンジンの動力を得て発電する発電機が発電した電力を充電するバッテリの電圧低下が生じないエンジン回転数閾値よりも大きいと判定すると、
前記車両の発進時に、前記モータへ界磁電流を供給するための電流駆動ドライバを有する4WDコントローラからモータへ供給する界磁電流を、前記モータが前記最大トルクを出力可能な値に制御することを特徴とする車両用駆動制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態(以下、本実施形態と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
【0009】
(構成)
図1は、本実施形態の車両用駆動制御装置(以降の説明では、「駆動制御装置1」と記載する場合がある)を備える車両Cの概略構成を示すブロック図である。
図1中に示すように、駆動制御装置1を備える車両Cは、エンジン2と、バッテリ4と、電動モータ6(モータ)と、アクセル操作量センサ8と、エンジンコントローラ10を備える。これに加え、駆動制御装置1を備える車両Cは、ジェネレータ12(発電機)と、4WDコントローラ14と、車輪速センサ16と、路面勾配センサ18と、VDC選択スイッチ20を備える。
【0010】
エンジン2は、発生させた駆動力を、トルクコンバータを有する自動変速機22及びディファレンシャルギヤ24aを順に介して、左前輪WFL及び右前輪WFRに伝達する。これに加え、エンジン2は、発生させた駆動力を、Vベルト26を介して、ジェネレータ12に伝達する。
また、エンジン2には、エンジン2の回転数(エンジン回転数Ne)を4WDコントローラ14でモニタするための、エンジン回転センサ(図示せず)を取り付ける。
【0011】
Vベルト26は、例えば、一本のベルトで複数の補機類を駆動するサーペンタイン式のVリブドベルトであり、エンジン2の動力を、ジェネレータ12に加え、さらに、オルタネータ28(発電機)にも伝達する。なお、サーペンタインとは、「曲がりくねった」という意味であり、Vベルト26は、必要な巻き付け角度を確保しながら、ジグザグに、複数のプーリ間に架け渡されている。また、Vベルト26のベルト張り調整は、例えば、アジャストボルト方式やオートテンショナ方式とする。
オルタネータ28は、エンジン2からVベルト26を介して伝達された動力によって、発電を行う。
【0012】
バッテリ4は、オルタネータ28が発電した電力を充電し、車両に搭載された各種電装機器に、充電した電力を供給する。
電動モータ6は、例えば、界磁巻線式のモータを用いて形成する。
また、電動モータ6は、発生させる駆動力を、減速機30、電磁クラッチ32及びディファレンシャルギヤ24bを順に介して、左後輪WRL及び右後輪WRRに伝達する。
また、電動モータ6には、電動モータ6の回転数(モータ回転数Nm)を4WDコントローラ14でモニタするための、モータ回転センサ(図示せず)を取り付ける。さらに、電動モータ6には、電動モータ6の温度(モータ温度)を4WDコントローラ14でモニタするための、サーミスタ(図示せず)を取り付ける。
【0013】
電磁クラッチ32は、4WDコントローラ14から入力を受けたクラッチ制御指令に応じて、励磁電流の通電を制御する。これにより、電動モータ6から左後輪WRL及び右後輪WRRへの動力伝達を制御する。
アクセル操作量センサ8は、例えば、ペダルストロークセンサを用いて形成した、運転者によるアクセルペダル34(アクセル操作子)の踏み込み操作量を検出するセンサである。なお、アクセルペダル34は、車両Cの運転者が駆動力要求に応じて踏込むペダルである。
【0014】
また、アクセル操作量センサ8は、運転者によるアクセルペダル34の踏み込み操作量に基づき、アクセルペダル34の開度(アクセル開度Acc)を算出する。そして、算出したアクセル開度Accを含む情報信号(以降の説明では、「アクセル開度信号」と記載する場合がある)を、エンジンコントローラ10及び4WDコントローラ14へ出力する。
なお、アクセル操作量センサ8の構成は、ペダルストロークセンサを用いて形成した構成に限定するものではない。
【0015】
エンジンコントローラ10は、マイクロコンピュータで構成する。なお、マイクロコンピュータは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備えた構成である。
また、エンジンコントローラ10は、アクセル操作量センサ8が検出したアクセル開度Accに応じて、スロットルバルブ36に連結されたスロットルモータ38の回転角を調整する。これにより、エンジンコントローラ10は、エンジン2の出力を制御する。
【0016】
ジェネレータ12は、エンジン2からVベルト26を介して伝達された動力によって、発電を行う。また、ジェネレータ12が発電した電力は、パワーケーブル40を介して電動モータ6に供給する。
また、パワーケーブル40の途中には、ジャンクションボックス44を設ける。
ジャンクションボックス44は、メインリレーと、電流センサ及び電圧検出回路を内蔵する。
【0017】
メインリレーは、4WDコントローラ14からのリレー制御指令に応じて電動モータ6に対する電力供給のON/OFFを行う。
電流センサ及び電圧検出回路は、通電電流Ia、ジェネレータ電圧Vg及びモータ誘起電圧Vmを、4WDコントローラ14でモニタするための構成である。
4WDコントローラ14は、エンジンコントローラ10と同様、マイクロコンピュータで構成する。
また、4WDコントローラ14は、電動モータ6の界磁電流Imを調整する。これにより、4WDコントローラ14は、バッテリ4から電動モータ6へ供給する界磁電流Imを制御して、電動モータ6の出力を制御する。
【0018】
また、4WDコントローラ14は、ジェネレータ12が内蔵するICレギュレータを介して界磁電流Igを調整することにより、ジェネレータ12の出力電圧Vgを制御する。
ここで、ICレギュレータの回路電源には、車両Cが備える14Vバッテリ(図示せず)を用いてもよい。この場合、ジェネレータ12の出力電圧Vgがバッテリ電圧Vb未満のときに、14Vバッテリのバッテリ電圧Vbを用い、出力電圧Vgが14Vバッテリのバッテリ電圧Vb以上のときに、出力電圧Vgを用いるようにしてもよい。また、常時、14Vバッテリのバッテリ電圧Vbを用いるようにしてもよい。
なお、4WDコントローラ14の具体的な構成の説明は、後述する。
車輪速センサ16は、車輪Wの回転速度を検出し、検出した回転速度を含む情報信号(以降の説明では、「車輪速信号」と記載する場合がある)を、4WDコントローラ14へ出力する。
【0019】
なお、
図1中では、右前輪WFRの回転速度を検出する車輪速センサ16を、車輪速センサ16FRと示し、左前輪WFLの回転速度を検出する車輪速センサ16を、車輪速センサ16FLと示す。同様に、
図1中では、右後輪WRRの回転速度を検出する車輪速センサ16を、車輪速センサ16RRと示し、左後輪WRLの回転速度を検出する車輪速センサ16を、車輪速センサ16RLと示す。
また、以降の説明では、右前輪WFRの回転速度を右前輪速Vw
FRと示し、左前輪WFLの回転速度を左前輪速Vw
FLと示す場合がある。同様に、右後輪WRRの回転速度を右後輪速Vw
RRと示し、左後輪WRLの回転速度を左後輪速Vw
RLと示す場合がある。また、以降の説明において、各車輪W及び各車輪速センサ16を、上記のように示す場合がある。
【0020】
路面勾配センサ18は、例えば、Gセンサを用いて形成し、車両Cが走行する走行路面の勾配を検出する。そして、検出した勾配を含む情報信号(以降の説明では、「路面勾配信号」と記載する場合がある)を、4WDコントローラ14へ出力する。
VDC選択スイッチ20は、VDC制御の「ON」または「OFF」を、運転者の操作により切り替えるスイッチである。また、VDC選択スイッチ20は、VDC制御が「ON」または「OFF」である状態を含む情報信号(以降の説明では、「VDC制御状態信号」と記載する場合がある)を、4WDコントローラ14へ出力する。なお、VDCとは、「Vehicle Dynamics Control」の略称であり、車輪Wに発生させる制動力や駆動力により、車両Cの横滑りを抑制する制御である。
以上により、駆動制御装置1を備える車両Cは、左前輪WFL及び右前輪WFRを、エンジン2(内燃機関)で駆動する主駆動輪とし、左後輪WRL及び右後輪WRRを、電動モータ6(電動機)で駆動可能な補助駆動輪とする車両である。すなわち、駆動制御装置1を備える車両Cは、所謂、スタンバイ型の四輪駆動車両である。
【0021】
(4WDコントローラ14の具体的な構成)
次に、
図1を参照しつつ、
図2から
図8を用いて、4WDコントローラ14の具体的な構成について説明する。
図2は、4WDコントローラ14の具体的な構成を示すブロック図である。
図2中に示すように、4WDコントローラ14は、目標モータトルク演算部14Aと、モータ必要電力演算部14Bと、発電制御部14Cと、発進時補助駆動判定部14Dと、モータ制御部14Eを備える。
なお、メインリレー及び電磁クラッチ32の制御については、その詳細な説明を省略するが、4WDコントローラ14は、電動モータ6を駆動制御する際、メインリレーへのリレー制御指令を出力して、電動モータ6への電力供給をON状態に制御する。これに加え、電磁クラッチ32へのクラッチ制御指令を出力して、電磁クラッチ32を締結状態に制御する。
【0022】
(目標モータトルク演算部14Aの構成)
以下、
図1及び
図2を参照しつつ、
図3を用いて、目標モータトルク演算部14Aの構成について説明する。
図3は、目標モータトルク演算部14Aのブロック図である。
目標モータトルク演算部14Aは、スリップ速度算出部46と、第一モータトルク算出部48と、車速算出部50と、第二モータトルク算出部52と、目標モータトルク算出部54を備える。
スリップ速度算出部46は、左前輪WFL及び右前輪WFRのスリップ速度ΔVFを算出する。
ここで、スリップ速度ΔVFは、例えば、以下の式(1)に示すように、左前輪WFL及び右前輪WFRの平均車輪速から、左後輪WRL及び右後輪WRRの平均車輪速を減じて算出する。
ΔVF=(Vw
FL+Vw
FR)/2−(Vw
RL+Vw
RR)/2 … (1)
【0023】
第一モータトルク算出部48は、図中の制御マップを用い、スリップ速度ΔVFに応じて、第一モータトルクTm1を算出する。ここで、第一モータトルクTm1の算出に用いる制御マップは、横軸をスリップ速度ΔVF、縦軸を第一モータトルクTm1としたマップである。また、第一モータトルクTm1の算出に用いる制御マップは、スリップ速度ΔVFが増加すると、この増加に応じて第一モータトルクTm1が増加するように設定する。
車速算出部50は、各車輪速Vw
FL〜Vw
RRのセレクトローした値と、車両の総駆動力Fに応じて、車速Vを算出する。ここで、総駆動力Fは、トルクコンバータ滑り比から推定される前輪WFの駆動力と、目標モータトルクTm
*から推定される後輪WRの駆動力との和によって求める。
【0024】
第二モータトルク算出部52は、図中の制御マップを用い、車速Vとアクセル開度Accに応じて、第二モータトルクTm2を算出する。ここで、第二モータトルクTm2の算出に用いる制御マップは、横軸をアクセル開度Accとし、縦軸を第二モータトルクTm2としたマップである。また、第二モータトルクTm2の算出に用いる制御マップは、アクセル開度Accが増加すると、この増加に応じて第二モータトルクTm2が増加するとともに、車速Vが高いほど第二モータトルクTm2が小さくなるように設定する。
目標モータトルク算出部54は、第一モータトルクTm1と第二モータトルクTm2とのセレクトハイした値を、右後輪速Vw
RR、左後輪速Vw
RL及び車速Vに基づいて、後輪WRの加速スリップを抑制する値まで制限する。これにより、最終的な目標モータトルクTm
*を算出する。なお、後輪WRの加速スリップを抑制する値まで制限する処理としては、例えば、公知のトラクションコントロールを用いる。
【0025】
(モータ必要電力演算部14Bの構成)
以下、
図1から
図3を参照して、モータ必要電力演算部14Bの構成について説明する。
モータ必要電力演算部14Bは、電動モータ6に必要とされるモータ必要電力Pm
*を、以下の式(2)を用いて算出する。すなわち、電動モータ6に必要とされるモータ必要電力Pm
*を、目標モータトルクTm
*とモータ回転数Nmに応じて算出する。
Pm
*=Tm
*×Nm … (2)
【0026】
(発電制御部14Cの構成)
以下、
図1から
図3を参照しつつ、
図4及び
図5を用いて、発電制御部14Cの構成について説明する。
図4は、発電制御部14Cのブロック図である。
図4中に示すように、発電制御部14Cは、初期目標電力算出部56と、制限値算出部58と、最終目標電力算出部60と、制御処理部62を備える。
初期目標電力算出部56は、ジェネレータ12が出力すべき目標電力Pg
*を、以下の式(3)を用い、モータ必要電力Pm
*とモータ効率ηmに応じて算出する。
Pg
*=Pm
*/ηm … (3)
【0027】
制限値算出部58は、出力電力に対する制限値PL1及び制限値PL2を算出する。
ここで、制限値PL1は、Vベルト26のベルトスリップを抑制可能な上限値であり、以下の式(4)で示すように、Vベルト26が伝達可能なトルク上限値TL、ジェネレータ回転数Ng、ジェネレータ効率ηgに応じて算出する。
PL1=TL×Ng×ηg … (4)
【0028】
また、制限値PL2は、エンジン2の過負荷に起因するエンジン停止(エンスト)や運転性劣化を抑制可能な上限値であり、エンジン回転数Neに応じて算出してもよいし、所定値としてもよい。
最終目標電力算出部60は、目標電力Pg
*と制限値PL1及び制限値PL2とのセレクトローした値を、最終的な目標電力Pg
*として算出する。
制御処理部62は、ジェネレータ12で目標電力Pg
*が出力されるように、ジェネレータ12の界磁電流Igを制御する。なお、制御処理部62の具体的な構成は、後述する。
【0029】
図5は、制御処理部62のブロック図である。
図5中に示すように、制御処理部62は、出力電力算出部62aと、目標界磁電流算出部62bと、界磁電流制御部62cを備える。
出力電力算出部62aは、ジェネレータ電圧Vgと通電電流Iaを乗算して、実際の出力電力Pg(=Vg×Ia)を算出する。
【0030】
目標界磁電流算出部62bは、実際の出力電力Pgと目標電力Pg
*との偏差ΔPgが0となるような、目標界磁電流Ig
*を算出する。
界磁電流制御部62cは、実際の界磁電流Igと目標界磁電流Ig
*との偏差ΔIgが0となるように、ロータコイル12aに流れる界磁電流Igを、ICレギュレータを介して制御する。なお、実際の界磁電流Igは、電流センサによって検出する。
以上により、制御処理部62は、目標電力Pg
*と実際の出力電力Pgとが一致するように、フィードバック制御によって界磁電流Igを制御する。
【0031】
(発進時補助駆動判定部14Dの構成)
以下、
図1から
図5を参照しつつ、
図6及び
図7を用いて、発進時補助駆動判定部14Dの構成について説明する。
図6は、発進時補助駆動判定部14Dのブロック図である。
図6中に示すように、発進時補助駆動判定部14Dは、路面勾配判定部64と、横滑り抑制制御禁止判定部66と、アクセル操作子操作量判定部68と、モータ供給電力指令出力部70を備える。
路面勾配判定部64は、路面勾配センサ18から入力を受けた路面勾配信号が含む走行路面の勾配が、登り勾配(走行路面が上り坂)であるか否かを判定する。さらに、路面勾配判定部64は、路面勾配信号が含む走行路面の勾配と、予め設定した第一登り勾配閾値及び第二登り勾配閾値を比較する。
【0032】
そして、比較結果を含む情報信号(以降の説明では、「勾配比較結果信号」と記載する場合がある)を、モータ供給電力指令出力部70へ出力する。なお、第一登り勾配閾値及び第二登り勾配閾値は、路面勾配判定部64に記憶させておく。
ここで、第一登り勾配閾値は、停車中の車両Cが発進する際に、電動モータ6の最大トルクにより補助駆動輪を駆動させるための判定に用いる値であり、走行路面の登り勾配が、主駆動輪の駆動のみでは車両Cを発進させることが困難である状態を反映する。また、第一登り勾配閾値は、例えば、車両Cの重量や、主駆動輪を駆動させるためにエンジン2が出力可能なトルク等に応じて設定する。なお、本実施形態では、一例として、第一登り勾配閾値を、走行路面の登り勾配に換算して15[%]と設定する場合について説明する。
【0033】
また、第二登り勾配閾値は、補助駆動輪の駆動を必要とせずに停車中の車両Cを発進させるための判定に用いる値であり、走行路面の登り勾配が、主駆動輪の駆動のみで車両Cを発進させることが可能な状態を反映する。また、第二登り勾配閾値は、第一登り勾配閾値よりも小さい傾斜度合いの登り勾配を反映する値であり、第一登り勾配閾値と同様、例えば、車両Cの重量や、主駆動輪を駆動させるためにエンジン2が出力可能なトルク等に応じて設定する。また、第二登り勾配閾値は、4WDコントローラ14から電動モータ6への供給電力に応じた界磁電流Imのうち、バッテリ4の電圧低下が発生しない界磁電流Imに対応する。なお、本実施形態では、一例として、第二登り勾配閾値を、走行路面の登り勾配に換算して10[%]と設定する場合について説明する。
横滑り抑制制御禁止判定部66は、VDC選択スイッチ20から入力を受けたVDC制御状態信号が含むVDC制御の状態を判定する。そして、判定結果を含む情報信号(以降の説明では、「VDC制御状態判定結果信号」と記載する場合がある)を、モータ供給電力指令出力部70へ出力する。
【0034】
アクセル操作子操作量判定部68は、アクセル操作量センサ8から入力を受けたアクセル開度信号が含むアクセル開度Accと、予め設定した補助駆動力発生閾値を比較する。そして、比較結果を含む情報信号(以降の説明では、「アクセル開度比較結果信号」と記載する場合がある)を、モータ供給電力指令出力部70へ出力する。なお、補助駆動力発生閾値は、アクセル操作子操作量判定部68に記憶させておく。
ここで、補助駆動力発生閾値は、停車中の車両Cが発進する際に、電動モータ6の最大トルクにより補助駆動輪を駆動させるための判定に用いる値であり、走行路面の路面μが、主駆動輪の駆動のみでは車両Cを発進させることが困難な値である状態を反映する。また、補助駆動力発生閾値は、例えば、車両Cの重量や、主駆動輪を駆動させるためにエンジン2が出力可能なトルク等に応じて設定する。
【0035】
モータ供給電力指令出力部70は、上述した勾配比較結果信号、VDC制御状態判定結果信号、アクセル開度比較結果信号が含む内容(比較結果、判定結果)に応じて、4WDコントローラ14から電動モータ6への供給電力を算出する。そして、その算出した供給電力を含む指令値(以降の説明では、「供給電力指令値」と記載する場合がある)を、モータ制御部14Eへ出力する。
具体的には、以下に示す比較結果や判定結果(A)〜(D)に応じて、4WDコントローラ14から電動モータ6への供給電力を算出する。
【0036】
(A).勾配比較結果信号が、路面勾配信号が含む走行路面の勾配が、第一登り勾配閾値以上であるとの比較結果を含む場合。この場合、車両Cの発進時において、電動モータ6の最大トルクにより補助駆動輪を駆動させるように、4WDコントローラ14から電動モータ6への供給電力を算出する。
(B).勾配比較結果信号が、路面勾配信号が含む走行路面の勾配が、第二登り勾配閾値以上第一登り勾配閾値未満の範囲内であるとの比較結果を含む場合。この場合、車両Cの発進時において、走行路面の勾配の傾斜度合いに応じた値となるように、4WDコントローラ14から電動モータ6への供給電力を算出する。
ここで、走行路面の勾配の傾斜度合いに応じた値となるように供給電力を算出する際には、路面勾配信号が含む走行路面の勾配を、予め記憶しているマップであり、
図7中に示す路面勾配‐電流指令値マップに入力する。これにより、第二登り勾配閾値B2以上第一登り勾配閾値B1未満の範囲内において、走行路面の勾配の傾斜度合いに応じた供給電力を算出する。
【0037】
なお、
図7は、路面勾配‐電流指令値マップを示す図である。また、
図7中では、横軸に、路面勾配信号が含む走行路面の勾配(図中では「路面勾配[%]」と記載する)を示す。さらに、
図7中では、縦軸に、4WDコントローラ14から電動モータ6への供給電力に応じた界磁電流Im、すなわち、電動モータ6へ供給する界磁電流Imに応じた指令値(図中では「モータ界磁電流」と記載する)を示す。
【0038】
(C).勾配比較結果信号が、路面勾配信号が含む走行路面の勾配が、第二登り勾配閾値未満であるとの比較結果を含む場合。この場合、車両Cの発進時において、4WDコントローラ14から電動モータ6への供給電力に応じた界磁電流Imが、バッテリ4の電圧低下が発生しない界磁電流Imとなるように、4WDコントローラ14から電動モータ6への供給電力を算出する。
【0039】
(D).VDC制御状態判定結果信号が、VDC制御の状態が「OFF」であるとの判定結果を含み、さらに、アクセル開度比較結果信号が、アクセル開度Accが補助駆動力発生閾値以上であるとの比較結果を含む場合。この場合、車両Cの発進時において、電動モータ6の最大トルクにより補助駆動輪を駆動させるように、4WDコントローラ14から電動モータ6への供給電力を算出する。
【0040】
以上により、発進時補助駆動判定部14Dは、路面勾配センサ18が検出した走行路面の勾配が登り勾配であり、且つ第一登り勾配閾値B1以上であると、電動モータ6の最大トルクによる補助駆動輪の駆動が必要であると判定する。
また、発進時補助駆動判定部14Dは、電動モータ6の最大トルクによる補助駆動輪の駆動が必要であると判定する。この判定は、横滑り抑制制御禁止判定部66がVDC制御の禁止が選択されていると判定し、且つアクセル操作量センサ8が検出したアクセル開度Accが補助駆動力発生閾値以上であると行う。
【0041】
また、モータ供給電力指令出力部70は、車両Cの発進時に、電動モータ6が最大トルクを出力可能な値に、4WDコントローラ14からの電動モータ6への供給電力を制御する。この制御は、発進時補助駆動判定部14Dが電動モータ6の最大トルクによる補助駆動輪の駆動が必要であると判定すると行う。
また、モータ供給電力指令出力部70は、車両Cの発進時に、路面勾配センサ18が検出した走行路面の勾配の傾斜度合いに応じた値に、4WDコントローラ14からの電動モータ6への供給電力を制御する。この制御は、路面勾配センサ18が検出した走行路面の勾配が登り勾配であり、且つ第二登り勾配閾値B2以上第一登り勾配閾値B1未満の範囲内であると行う。
【0042】
(モータ制御部14Eの構成)
以下、
図1から
図7を参照しつつ、
図8を用いて、モータ制御部14Eの構成について説明する。
図8は、モータ制御部14Eのブロック図である。
図8中に示すように、モータ制御部14Eでは、目標モータトルクTm*とモータ回転数Nmとに応じて公知のベクトル制御を行う。
また、モータ制御部14Eは、電動モータ6へ界磁電流を供給するための電流駆動ドライバ15を有する。
電流駆動ドライバ15は、発進時補助駆動判定部14Dから入力を受けた供給電力指令値に応じて、4WDコントローラ14から電動モータ6へ供給する界磁電流Imを調整する。これにより、モータ制御部14Eは、4WDコントローラ14から電動モータ6へ供給する界磁電流Imを制御して、4WDコントローラ14からの電動モータ6への供給電力を制御する。
【0043】
(動作)
次に、
図1から
図8を参照しつつ、
図9及び
図10を用いて、本実施形態の駆動制御装置1を用いて行なう動作の一例を説明する。
図9は、本実施形態の駆動制御装置1を用いて行なう動作のフローチャートである。
図9中に示すように、駆動制御装置1が処理を開始(START)すると、まず、ステップS100において、路面勾配判定部64により、走行路面の勾配が登り勾配であるか否かを判定する処理(図中に示す「登り勾配」)を行なう。
ステップS100において、走行路面の勾配が登り勾配である(図中に示す「Yes」)と判定した場合、駆動制御装置1が行なう処理は、ステップS102へ移行する。
【0044】
一方、ステップS100において、走行路面の勾配が登り勾配ではない(図中に示す「No」)と判定した場合、駆動制御装置1が行なう処理は、ステップS110へ移行する。
ステップS102では、路面勾配判定部64により、登り勾配である走行路面の勾配が、第一登り勾配閾値B1以上であるか否かを判定する処理(図中に示す「第一登り勾配閾値B1以上」)を行なう。
【0045】
ステップS102において、登り勾配である走行路面の勾配が、第一登り勾配閾値B1以上である(図中に示す「Yes」)と判定した場合、駆動制御装置1が行なう処理は、ステップS104へ移行する。
一方、ステップS102において、登り勾配である走行路面の勾配が、第一登り勾配閾値B1未満である(図中に示す「No」)と判定した場合、駆動制御装置1が行なう処理は、ステップS106へ移行する。
【0046】
ステップS104では、モータ制御部14Eにより、電動モータ6の最大トルクにより補助駆動輪を駆動させるように算出した供給電力指令値に応じて、電動モータ6の界磁電流Imを調整する処理(図中に示す「最大トルクを発生させる界磁電流」)を行なう。ステップS104において、最大トルクにより補助駆動輪を駆動させるように、電動モータ6の界磁電流Imを調整する処理を行うと、駆動制御装置1が行なう処理は、ステップS116へ移行する。
ステップS106では、路面勾配判定部64により、登り勾配である走行路面の勾配が、第二登り勾配閾値B2以上であるか否かを判定する処理(図中に示す「第二登り勾配閾値B2以上」)を行なう。
【0047】
ステップS106において、登り勾配である走行路面の勾配が、第二登り勾配閾値B2以上である(図中に示す「Yes」)と判定した場合、駆動制御装置1が行なう処理は、ステップS108へ移行する。
一方、ステップS106において、登り勾配である走行路面の勾配が、第二登り勾配閾値B2未満である(図中に示す「No」)と判定した場合、駆動制御装置1が行なう処理は、ステップS114へ移行する。
【0048】
ステップS108では、モータ制御部14Eにより、走行路面の勾配の傾斜度合いに応じて算出した供給電力指令値に応じて、電動モータ6の界磁電流Imを調整する処理(図中に示す「傾斜度合いに応じた界磁電流」)を行なう。ステップS108において、走行路面の勾配の傾斜度合いに応じて、電動モータ6の界磁電流Imを調整する処理を行うと、駆動制御装置1が行なう処理は、ステップS116へ移行する。
ステップS110では、路面勾配判定部64により、VDC制御の状態が「OFF」であるとともに、アクセル開度Accが補助駆動力発生閾値以上であるか否かを判定する処理(図中に示す「VDC制御OFF及び補助駆動力発生閾値以上」)を行なう。
【0049】
ステップS110において、VDC制御の状態が「OFF」であるとともに、アクセル開度Accが補助駆動力発生閾値以上である(図中に示す「Yes」)と判定した場合、駆動制御装置1が行なう処理は、ステップS112へ移行する。
一方、ステップS110において、以下の条件(X)及び(Y)のうち少なくとも一方が成立する(図中に示す「No」)と判定した場合、駆動制御装置1が行なう処理は、ステップS114へ移行する。
条件(X).VDC制御の状態が「OFF」ではない条件
条件(Y).アクセル開度Accが補助駆動力発生閾値未満である条件
【0050】
ステップS112では、モータ制御部14Eにより、電動モータ6の最大トルクにより補助駆動輪を駆動させるように算出した供給電力指令値に応じて、電動モータ6の界磁電流Imを調整する処理(図中に示す「最大トルクを発生させる界磁電流」)を行なう。ステップS104において、最大トルクにより補助駆動輪を駆動させるように、電動モータ6の界磁電流Imを調整する処理を行うと、駆動制御装置1が行なう処理は、ステップS116へ移行する。
ステップS114では、モータ制御部14Eにより、バッテリ4の電圧低下が発生しない界磁電流となるように算出した供給電力指令値に応じて、電動モータ6の界磁電流Imを調整する処理(図中に示す「電圧低下を発生させない界磁電流」)を行なう。ステップS114において、バッテリ4の電圧低下が発生しないように、電動モータ6の界磁電流Imを調整する処理を行うと、駆動制御装置1が行なう処理は、ステップS116へ移行する。
【0051】
ステップS116では、モータ制御部14Eにより、モータ回転数Nmが、予め設定したモータ用閾値MCを超えているか否かを判定する処理(図中に示す「Nm>MC」)を行なう。
ここで、モータ用閾値MCは、モータ回転数Nmのうち、モータトルクが最大値を維持する領域の中で、最も大きなモータ回転数Nmに相当する値である。
【0052】
ステップS116において、モータ回転数Nmがモータ用閾値MCを超えている(図中に示す「Yes」)と判定した場合、駆動制御装置1が行なう処理は、ステップS118へ移行する。
一方、ステップS116において、モータ回転数Nmがモータ用閾値MC以下である(図中に示す「No」)と判定した場合、駆動制御装置1が行なう処理は、ステップS120へ移行する。
【0053】
ステップS118では、モータ回転数Nmに応じて電動モータ6の界磁電流Imを算出し、この算出した界磁電流Imを、電動モータ6の界磁巻線へと供給する処理を行う。これにより、ステップS118では、モータ回転数Nmが大きいほど、界磁電流Imを小さくする処理(図中に示す「モータ回転数に応じた界磁電流」)を行う。なお、ステップS118で行う具体的な処理については、後述する。
ステップS118において、モータ回転数Nmが大きいほど界磁電流Imを小さくする処理を行うと、駆動制御装置1が行なう処理は、ステップS100の処理へ復帰(RETURN)する。
【0054】
ステップS120では、モータ制御部14Eにより、エンジン回転数Neが、予め設定したエンジン用閾値EA未満であるか否かを判定する処理(図中に示す「Ne<EA」)を行なう。
ここで、エンジン用閾値EAは、電動モータ6の界磁電流Imを増加させてもバッテリ4の電圧低下が生じないほど、オルタネータ28で充分な電力を発電できるようなエンジン回転数Neに相当する値である。
【0055】
ステップS120において、エンジン回転数Neがエンジン用閾値EA未満である(図中に示す「Yes」)と判定した場合、駆動制御装置1が行なう処理は、ステップS118へ移行する。
一方、ステップS120において、エンジン回転数Neがエンジン用閾値EA以上である(図中に示す「No」)と判定した場合、駆動制御装置1が行なう処理は、ステップS122へ移行する。
【0056】
ステップS122では、エンジン回転数Neに応じて電動モータ6の界磁電流Imを算出し、この算出した界磁電流Imを電動モータ6の界磁巻線へと供給する処理を行う。これにより、ステップS122では、界磁電流Imを条件付で増加させることで、車両Cの加速性能を向上可能な界磁電流Imを調整する処理(図中に示す「加速性能を向上可能な界磁電流」)を行う。なお、ステップS122で行う具体的な処理については、後述する。
ステップS122において、車両Cの加速性能を向上可能な界磁電流Imを調整する処理を行うと、駆動制御装置1が行なう処理は、ステップS100の処理へ復帰(RETURN)する。
【0057】
(ステップS118で行う処理、ステップS122で行う処理)
以下、
図1から
図9を参照しつつ、
図10を用いて、ステップS118及びステップS122で行う具体的な処理について説明する。
図10(a)は、モータ回転数Nmと界磁電流Imとの関係を示す図であり、
図10(b)は、モータ回転数NmとモータトルクTmとの関係を示す図である。
【0058】
図10中に示すように、電動モータ6は、モータ回転数Nmが低いほど、モータトルクTmが大きくなり、モータ回転数Nmが0からモータ用閾値MCの間の領域であるモータ最大トルク領域にあるときには、モータトルクTmが最大値Tm
MAXを維持する。
ここで、モータ回転数Nmと界磁電流Imとの関係は、モータ回転数NmとモータトルクTmとの関係に対応する。すなわち、モータ回転数Nmが低いほど、界磁電流Imを大きくし、モータ回転数Nmが0からモータ用閾値MCの間の領域であるモータ最大トルク領域にある状態では、界磁電流Imが、第二登り勾配閾値B2に応じた値(
図7参照)を維持する。
【0059】
以上により、ステップS118では、モータ回転数Nmがモータ最大トルク領域を超えているため、モータ回転数Nmが大きいほど、界磁電流Imを小さくする処理を行う。
一方、エンジン回転数Neがエンジン用閾値EAを超える場合、界磁電流Imが、第二登り勾配閾値B2に応じた値(
図7参照)よりも大きな値であり、第一登り勾配閾値B1に応じた値(
図7参照)を維持する。
以上により、ステップS122では、エンジン回転数Neがエンジン用閾値EA未満であるため、界磁電流Imの上限値を条件付で増加(B2→B1)させて、車両Cの加速性能を向上可能な界磁電流Imを調整する処理を行う。
【0060】
(作用)
次に、
図1から
図10を参照しつつ、
図11及び
図12を用いて、本実施形態の作用について説明する。
図11及び
図12は、本実施形態の駆動制御装置1を備える車両Cの動作を示すタイムチャートである。具体的には、
図11は、上記のステップS106において、登り勾配である走行路面の勾配が、第二登り勾配閾値B2未満であると判定した場合の、車両Cの動作を示すタイムチャートである。また、
図12は、上記のステップS102において、登り勾配である走行路面の勾配が、第一登り勾配閾値B1以上であると判定した場合の、車両Cの動作を示すタイムチャートである。
【0061】
ここで、
図11及び
図12に示すタイムチャートでは、停車中の車両Cを発進させると、まず、エンジン2により駆動する主駆動輪が回転し、電動モータ6により駆動する補助駆動輪が回転していない状態を示す。すなわち、
図11及び
図12に示すタイムチャートでは、停車中の車両Cを発進させると、主駆動輪(左前輪WFL及び右前輪WFR)の回転速度(前輪速)が増加し、補助駆動輪(左後輪WRL及び右後輪WRR)の回転速度(後輪速)が「0」である状態となる。したがって、
図11及び
図12に示すタイムチャートでは、停車中の車両Cを発進させた時点で、主駆動輪が空転する状態を示す。
【0062】
まず、
図1から
図10を参照しつつ、
図11を用いて、登り勾配である走行路面の勾配が、第二登り勾配閾値B2未満であると判定した場合の、車両Cの動作及び作用について説明する。
登り勾配である走行路面の勾配が、第二登り勾配閾値B2未満であると判定した場合には、車両Cを発進させた時点t1において、界磁電流Imの上限値を、第二登り勾配閾値B2に応じた値に設定する。これにより、時点t1以降は、電動モータ6へ供給する界磁電流Imが、第二登り勾配閾値B2に応じた値へ向けて増加する。なお、車両Cを発進させた時点t1とは、例えば、アクセル開度Accが「0」を超えた時点である。
【0063】
そして、アクセル開度Accの増加とともに上昇したエンジン回転数Neが、エンジン用閾値EAに達した時点t2において、界磁電流Imの上限値を、第一登り勾配閾値B1に応じた値に設定する。これにより、時点t2において、界磁電流Imの上限値を、電動モータ6の最大トルクにより補助駆動輪を駆動させるように算出した供給電力指令値に応じた値に設定する。したがって、時点t2以降は、電動モータ6へ供給する界磁電流Imが、第一登り勾配閾値B1に応じた値へ向けて増加する。
時点t2以降に増加した、電動モータ6へ供給する界磁電流Imが第一登り勾配閾値B1に応じた値に達すると、この時点t3から、最大トルクを発生させるような界磁電流Imの供給を受けた電動モータ6により、補助駆動輪の駆動を開始する。
【0064】
そして、補助駆動輪が駆動した時点t4から、補助駆動輪の回転速度(後輪速)が「0」を超えて増加し、補助駆動輪が発生する駆動力により、主駆動輪の駆動を補助して、主駆動輪の空転を抑制する。これにより、主駆動輪が空転する発進時において、電動モータ6の最大トルクにより補助駆動輪を駆動させて、発進時における走行性能の低下を抑制する。
【0065】
次に、
図1から
図11を参照しつつ、
図12を用いて、登り勾配である走行路面の勾配が、第一登り勾配閾値B1以上であると判定した場合の、車両Cの動作及び作用について説明する。
登り勾配である走行路面の勾配が、第一登り勾配閾値B1以上であると判定した場合、車両Cを発進させた時点t5において、エンジン回転数Neがエンジン用閾値EAに達していなくとも、界磁電流Imの上限値を、第一登り勾配閾値B1に応じた値に設定する。これにより、時点t5において、界磁電流Imの上限値を、電動モータ6の最大トルクにより補助駆動輪を駆動させるように算出した供給電力指令値に応じた値に設定する。したがって、時点t5では、車両Cを発進させるとともに、電動モータ6へ供給する界磁電流Imが、第一登り勾配閾値B1に応じた値へ向けて増加する。
【0066】
時点t5以降に増加した、電動モータ6へ供給する界磁電流Imが第一登り勾配閾値B1に応じた値に達すると、この時点t6から、最大トルクを発生させるような界磁電流Imの供給を受けた電動モータ6により、補助駆動輪の駆動を開始する。
そして、補助駆動輪が駆動した時点t7から、補助駆動輪の回転速度(後輪速)が「0」を超えて増加し、補助駆動輪が発生する駆動力により、主駆動輪の駆動を補助して、主駆動輪の空転を抑制する。これにより、主駆動輪が空転する発進時において、電動モータ6の最大トルクにより補助駆動輪を駆動させて、発進時における走行性能の低下を抑制する。
【0067】
ここで、上記の時点t5から時点t7までに経過する時間は、上記の時点t1から時点t4までに経過する時間よりも短い。すなわち、主駆動輪が空転する発進時に、走行路面の勾配が第一登り勾配閾値B1以上であると判定した場合、走行路面の勾配が第二登り勾配閾値B2未満であると判定した場合よりも、車両Cの発進操作を行ってから補助駆動輪が駆動するまでに経過する時間が短い。
【0068】
なお、上記のステップS110において、VDC制御の状態が「OFF」であるとともに、アクセル開度Accが補助駆動力発生閾値以上であると判定した場合の車両Cの動作は、
図12中に示すものと同様のタイムチャートで示される。
また、上記のステップS110において、上記の条件(X)及び(Y)のうち少なくとも一方が成立すると判定した場合の車両Cの動作は、
図11中に示すものと同様のタイムチャートで示される。
【0069】
以上説明したように、本実施形態の駆動制御装置1では、低μ登坂路上や積雪路等での発進時において、主駆動輪が空転した場合であっても、電動モータ6の最大トルクにより補助駆動輪を駆動させることが可能となる。これにより、低μ登坂路上や積雪路等での発進時において、主駆動輪が空転した場合であっても、主駆動輪の空転が収束するまでに経過する時間を短縮させて、発進時における走行性能の低下を抑制することが可能となる。
【0070】
なお、上述したモータ供給電力指令出力部70及びモータ制御部14Eは、モータ界磁電流制御部に対応する。
また、上述した路面勾配センサ18は、路面勾配検出部に対応する。
また、上述したアクセル操作量センサ8は、アクセル操作子操作量検出部に対応する。
また、上述したように、本実施形態の駆動制御装置1の動作で実施する駆動力制御方法では、車両Cの発進時に、4WDコントローラ14から電動モータ6へ供給する界磁電流Imを、電動モータ6が最大トルクを出力可能な値に制御する。この制御は、車両Cの発進に、電動モータ6の最大トルクによる補助駆動輪の駆動が必要であると判定すると行う。
【0071】
(第一実施形態の効果)
本実施形態の駆動制御装置1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)モータ供給電力指令出力部70及びモータ制御部14Eが、車両Cの発進時に、4WDコントローラ14から電動モータ6へ供給する界磁電流Imを、電動モータ6が最大トルクを出力可能な値に制御する。この制御は、発進時補助駆動判定部14Dが、車両Cの発進に、電動モータ6の最大トルクによる補助駆動輪の駆動が必要であると判定すると行う。
【0072】
このため、主駆動輪が空転する可能性の高い低μ登坂路上や積雪路上での発進時等、電動モータ6の最大トルクが要求される発進時において、電動モータ6の最大トルクにより、補助駆動輪を駆動させることが可能となる。
その結果、駆動源としてエンジン2のみを備えた車両と比較して車重が重い、駆動源としてエンジン2及び電動モータ6を備えた車両Cであっても、主駆動輪が空転する可能性の高い発進時における、走行性能の低下を抑制することが可能となる。また、車両Cの発進に、電動モータ6の最大トルクによる補助駆動輪の駆動が必要ではないと判定すると、電動モータ6への供給電流を抑制することが可能となる。
【0073】
(2)発進時補助駆動判定部14Dが、路面勾配センサ18が検出した走行路面の勾配が登り勾配であり、且つ第一登り勾配閾値B1以上であると、電動モータ6の最大トルクによる補助駆動輪の駆動が必要であると判定する。
このため、路面勾配が大きく、車両Cの発進時に主駆動輪が空転する可能性が高い低μ登坂路上での発進時において、電動モータ6の最大トルクにより、補助駆動輪を駆動させることが可能となる。
その結果、主駆動輪が空転する可能性の高い、路面勾配が大きな路面上での発進時における、走行性能の低下を抑制することが可能となる。また、路面勾配が小さく、電動モータ6の最大トルクによる補助駆動輪の駆動が必要ではないと判定すると、電動モータ6への供給電流を抑制することが可能となる。
【0074】
(3)モータ供給電力指令出力部70が、車両Cの発進時に、路面勾配センサ18が検出した走行路面の勾配の傾斜度合いに応じた値に、4WDコントローラ14から電動モータ6へ供給する界磁電流Imを制御する。この制御は、路面勾配センサ18が検出した走行路面の勾配が登り勾配であり、且つ第二登り勾配閾値B2以上第一登り勾配閾値B1未満の範囲内であると行う。
このため、車両Cの発進時に電動モータ6の最大トルクによる補助駆動輪の駆動が必要無い場合であっても、走行路面の勾配の傾斜度合いに応じて、補助駆動輪を駆動させるために電動モータ6が発生させるトルクを制御することが可能となる。
その結果、走行路面の勾配の傾斜度合いに応じて、補助駆動輪を駆動させるために電動モータ6が発生させるトルクを、適切に制御することが可能となる。また、路面勾配に応じて電動モータ6への供給電流を抑制することが可能となる。
【0075】
(4)発進時補助駆動判定部14Dが、電動モータ6の最大トルクによる補助駆動輪の駆動が必要であると判定する。この判定は、横滑り抑制制御禁止判定部66がVDC制御の禁止が選択されていると判定し、且つアクセル操作量センサ8が検出したアクセル開度Accが補助駆動力発生閾値以上であると行う。
このため、車両Cの運転者がVDC制御の禁止を選択し、さらに、アクセル開度Accが大きい状態において、電動モータ6の最大トルクにより、補助駆動輪を駆動させることが可能となる。なお、車両Cの運転者がVDC制御の禁止を選択し、さらに、アクセル開度Accが大きい状態は、例えば、深雪路等で主駆動輪が空転して車両Cが移動できない状態(スタック)に相当する。
その結果、主駆動輪が空転して車両Cが移動できない状態での発進時における、走行性能の低下を抑制することが可能となる。
【0076】
(5)本実施形態の駆動制御装置1の動作で実施する駆動力制御方法では、車両Cの発進時に、4WDコントローラ14から電動モータ6へ供給する界磁電流Imを、電動モータ6が最大トルクを出力可能な値に制御する。この制御は、車両Cの発進に、電動モータ6の最大トルクによる補助駆動輪の駆動が必要であると判定すると行う。
このため、主駆動輪が空転する可能性の高い低μ登坂路上や積雪路上での発進時等、電動モータ6の最大トルクが要求される発進時において、電動モータ6の最大トルクにより、補助駆動輪を駆動させることが可能となる。
その結果、駆動源としてエンジン2のみを備えた車両と比較して車重が重い、駆動源としてエンジン2及び電動モータ6を備えた車両Cであっても、主駆動輪が空転する可能性の高い発進時における、走行性能の低下を抑制することが可能となる。また、車両Cの発進に、電動モータ6の最大トルクによる補助駆動輪の駆動が必要ではないと判定すると、電動モータ6への供給電流を抑制することが可能となる。