(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車用エンジンにより駆動するタイミングベルトや補機駆動用ベルトなどの無端ベルトを掛け渡すプーリ、例えば無端ベルトの位置等を調節するアイドラプーリ等は、転がり軸受によって支持軸等の静止部材に対して回転自在に支持されている。
この種の転がり軸受は、自動車の走行時に雨水や泥水、あるいは粉塵などが軸受内に侵入し易い環境下で使用されるため、従来から、軸受内への水や粉塵などの侵入を防止し得る密封装置が組み込まれている。
例えば、固定輪(例えば内輪)側に配設したスリンガと、回転輪(例えば外輪)側に配設したシール部材とで構成される密封装置が採用されており、前記シール部材に備えられ、前記固定輪に摺接する第一リップと、前記スリンガに摺接する第二リップとによって密封性を向上させている。
【0003】
この種の転がり軸受の場合、スリンガと摺接する第二リップを設けたことにより密封性は向上するものの、軸受の摺動トルクが増え、軸受が高速回転する場合には軸受トルクが増大してしまうという虞を有していた。よって、この種の転がり軸受にあっては、高密封性とともに、軸受トルクの低減が求められている。
【0004】
高密封性でありながら軸受トルクの増大を防ぎ得る先行技術として、例えば、特許文献1に示す技術が提案されている(
図7参照。)。
特許文献1では、軸受トルクの増大を防ぐため、スリンガ100と摺接するシール部材200の第二リップ201は、その先端を細くしたリップ形状を採用し、外輪回転で使用させる場合に作用する軸受の遠心力影響を考慮して、第二リップ201のリップ先端202のスリンガ100に対する摺接幅を変化させるものとしている。すなわち、このような構成とすることで、例えば、低速回転時には遠心力の影響が小さく摺接幅が大きいが、高速回転時には遠心力の影響が大きく、細くした第二リップ201のリップ先端202のスリンガ100との摺接幅が小さくなるため、高速回転時の摺動トルクを抑えることができるというものである。
【0005】
しかし、特許文献1の先行技術の場合、スリンガ100と接する第二リップ201のリップ先端202の摺接幅が変化することから、第二リップ201がスリンガ100を叩くような現象が発生し、異音の原因となっていたと考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来技術の有するこのような問題点に鑑みなされたものであり、その課題とするところは、軸受トルクを抑制するとともに外部からの異物侵入を防止し、良好なシール性能を安定して発揮し得る高密封性の転がり軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明の第1の発明は、静止部材に固定される固定輪と、
前記固定輪と相対回転可能に配設され、回転部材に固定される回転輪と、
前記固定輪と回転輪の夫々の相対向する周面に設けられた軌道と、
前記相対向する軌道間に転動自在に組み込まれる転動体と、
前記固定輪と回転輪の軸方向端部の開放領域に備えられて軸受内部空間を密封する密封装置とを少なくとも含み、
前記密封装置は、前記固定輪の軸方向端部の開放領域に配設されるスリンガと、前記回転輪の軸方向端部の開放領域に配設されるシール部材とで構成され、
前記スリンガは、円環状に形成され、固定輪の周面に固定される環状筒部と、前記環状筒部から径方向に突出して一体に形成される円板部とで構成され、
前記シール部材は、前記スリンガよりも軸受内部空間寄りに配設され、周縁を前記回転輪に固定し
て径方向に延設された円板状部分と、前記円板状部分において、前記回転輪に固定された前記周縁と径方向で反対に位置し、前記固定輪に摺接する環状の第一リップと、
前記円板状部分の中途位置から傾斜状に突出して前記スリンガに摺接する環状の第二リップとを少なくとも一体に備えており、
前記スリンガの円板部は、先端を前記円板状部分方向に向けて折り曲げた環状のフランジ部を一体に形成し、
前記第二リップは、前記フランジ部方向に向けて傾斜状に延設するとともに、リップ先端を前記円板部に摺接してなる密封領域を形成し、
前記リップ先端の肉厚は、他のリップ部分の肉厚と比して厚く形成し、
前記リップ先端寄りの側面部には窪み部が設けられて
おり、
前記フランジ部は、前記リップ先端の肉厚程度の突出長さとするとともに、
前記シール部材の円板状部分と前記フランジ部方向に延設した第二リップと前記フランジ部先端とにより、前記フランジ部の外方側へと異物を排出可能な異物排出経路を形成していることを特徴とする転がり軸受としたことである。
【0009】
本発明によれば、第二リップは、スリンガと摺接するリップ先端部分の肉厚を、他のリップ部分の肉厚と比して厚く形成し、かつ前記リップ先端寄りの側面部には窪み部が設けられている構成を採用したため、リップ先端は、前記窪み部によって高速回転時の遠心力影響を受け易い。従って、回転時に作用する遠心力により、第二リップは、スリンガとの摺接面から離れる方向に変形するため、摺接面における接触力を減少させることができる。これにより、高速回転時のシール摺動によるトルク増加が抑制される。また、リップ先端の摺接幅が変化する形態ではないため、異音の発生もなく、良好なシール性能を安定して発揮し得る。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、
前記フランジ部と前記リップ先端との間には、ラビリンス隙間による密封領域を形成していることを特徴とする転がり軸受としたことである。
【0011】
本発明によれば、スリンガの円板部に環状の凹部を設けることにより、第二リップのリップ先端とのクリアランスを縮小させて外部からの異物侵入を抑止する。
【0012】
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明において、
前記スリンガの円板部は、第二リップの先端が対向する領域に、軸方向に窪む環状の凹部が形成されることによりラジアル方向で段付き形状に形成されていることを特徴とする転がり軸受としたことである。
【0013】
本発明によれば、スリンガの円板部の先端に第二リップの上方を覆うように折り曲げた環状のフランジ部を一体に形成することにより、第二リップとのクリアランスを縮小させて外部からの異物侵入を抑止する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明転がり軸受の一実施形態について、添付図面を参照して説明する。
図1及び
図2は第一実施形態、
図3は第二実施形態、
図4は第三実施形態、
図5は第四実施形態、
図6は第五実施形態を示す。
なお、本実施形態は、本発明の一実施形態であって、何等これらに限定解釈されるものではなく本発明の範囲内で設計変更可能である。
「第一実施形態」
【0016】
図1は、自動車のアイドラプーリに本発明転がり軸受の一実施形態を組み込んで構成した概略断面図である。
【0017】
転がり軸受は、外周面の周方向に連続した複列の内輪軌道(内輪軌道溝)3を設けた環状の固定輪(内輪)2と、前記固定輪2と相対回転可能に同軸で配され、内周面の周方向に連続した複列の外輪軌道(外輪軌道溝)10を設けた環状の回転輪(外輪)9と、前記内輪軌道3と前記外輪軌道10との間にて、それぞれ転動可能に組み込まれる複数の転動体14と、前記転動体14を転動自在に保持した状態で前記内輪2と外輪9の間に備えられる保持器15と、前記内輪2と前記外輪9の間の軸方向(図中矢印L1で示すアキシャル方向)端部の開放領域に備えられ、軸受内部空間16を密封する密封装置17とを少なくとも含んで構成されている複列の深溝玉軸受である(
図1参照。)。
【0018】
すなわち、本実施形態では、前記内輪2は、静止部材である支持軸(図示省略)を内周面に嵌合して固定されており、一方、前記外輪9は、回転部材1であるプーリの内面に外周面を嵌合して固定されている、外輪回転で使用されるプーリ用軸受を想定している。
【0019】
密封装置17は、前記内輪2の軸方向端部4の開放領域8に配設されるスリンガ18と、前記外輪9の軸方向端部11の開放領域12に配設されるシール部材25とで構成されている(
図1及び
図2参照。)。
【0020】
スリンガ18は、金属板により全体を円環状に形成している。
前記スリンガ18は、内輪2の軸方向端部4に形成された環状小径部5の周面に嵌合固定される環状筒部19と、前記環状筒部19より大径で、かつ前記環状筒部19から径方向(図中矢印L2で示すラジアル方向)に突出して一体に形成される円板部20とで構成され、前記内輪2の軸方向端部4の開放領域8に配設されている。
【0021】
環状筒部19は、前記内輪2の環状小径部5の外周面にしまり嵌めで嵌合固定可能な内径を有する円筒状に形成している(
図1及び
図2参照。)。
【0022】
円板部20は、外輪9の軸方向端部11の内径よりも小径で、前記外輪9の内径との間に所定の空隙21を形成する程度の外径に形成している。
【0023】
本実施形態において円板部20は、軸方向に窪む環状の凹部20dが形成されることによりラジアル方向(図中矢印L2で示す方向)で段付き形状に形成されている(
図2参照。)。
本実施形態において、前記環状の凹部20dは、後述する第二リップ46と軸方向で対向する面部20aの背面側の面部20bに形成されている。
すなわち、背面側の面部20bは、環状筒部19から連続して一体に形成される第一の環状面部20cと、該第一の環状面部20cから軸受内部方向(図中矢印L3で示す方向)に向けて窪ませた環状の凹部20dを含んで構成されている。なお、本実施形態では、第一の環状面部20cから段差部20eを介して環状の凹部20dを形成しているが、さらにラジアル方向(図中矢印L2で示す方向)で、後述するフランジ部22寄りに第二の段差部(図示しない)を形成して環状の凹部としてもよい。
【0024】
本実施形態によれば、スリンガ18の円板部20に環状の凹部20dを設けることにより、第二リップ46のリップ先端47とのクリアランスを縮小させて外部からの異物侵入を抑止することが可能である。
【0025】
さらに、前記円板部20は、前記円板部20の先端をシール部材方向(図中矢印L3で示す軸受内部方向)に折り曲げて環状のフランジ部22を一体に形成している。
【0026】
フランジ部22は、環状筒部19と略平行で、かつ前記環状筒部19よりも短尺筒状に突出形成されており、本実施形態では、軸方向(図中矢印L1で示すアキシャル方向)で、後述するシール部材25の第二リップ46のリップ先端47部分を越えて覆う程度の突出長さで形成されている(
図2参照。)。
【0027】
本実施形態では、スリンガ18のフランジ部22が、軸方向(図中矢印L1で示すアキシャル方向)で、シール部材25における第二リップ46のリップ先端47の上方を覆う程度の突出長さで形成した実施の一形態を示す。すなわち、前記フランジ部22の曲げ量(軸方向長さ)を、前記リップ先端47の肉厚程度としている。
本実施形態によれば、高速回転時に仮に第二リップ46のリップ先端47がスリンガ18から離れて非接触状態(図中二点鎖線で示す状態)になったとしても、スリンガ18のフランジ部22が、軸方向(図中矢印L1で示すアキシャル方向)で、シール部材25における第二リップ46のリップ先端47の上方を覆う程度の突出長さで形成されていることで、引っ掛かりのない異物排出経路59を確保することができる。
すなわち、第二リップ46の基端60の径方向で外側の領域と円板状部分35との境界に形成されている折曲げ領域61に異物が堆積していても、その堆積している異物は、フランジ部22の端縁に引っ掛かることなく遠心力で外部に排出することができる。図中の矢印D1は異物排出方向を示す。
【0028】
シール部材25は、金属板により全体円環状に形成された芯金26と、前記芯金26の略全域を覆って一体成形されるエラストマーなどの弾性材からなる被覆部32とで構成されている。
【0029】
芯金26は、外径方向に向かうに従って大径状に形成された内径部27と、前記内径部27から外径方向に向けて一体に形成された円板部28と、前記円板部28の外径端から軸方向で軸受内部方向L3に向けて一体に折曲げ形成された円環部30と、前記円環部30の軸受内部方向L3の端部から径方向(図中矢印L2で示すラジアル方向)に向けて一体に折り曲げ形成された第二円板部31で構成されている。
本実施形態において、芯金26の内径部27は、内輪2の内周面よりも大径に形成されている(
図2参照。)
【0030】
被覆部32は、前記芯金26の内径部27から第二円板部31の外径部までを覆うようにして一体形成されており、前記スリンガ18よりも軸受内部空間16寄りにて、外周縁(外径)33を、前記外輪9の軸方向端部11の内周面の大径部に形成した環状の係止溝13に係止するとともに、前記外周縁(外径)33と径方向(図中矢印L2で示すラジアル方向)で反対の内周縁(内径)34に位置し、前記内輪2に摺接する環状の第一リップ(主リップ)39を一体成形している。
【0031】
そして、前記芯金26の円板部28を被覆している被覆部32の円板状部分35の外面から軸方向(図中矢印L1で示すアキシャル方向)に傾斜状に突出して前記スリンガ18に摺接する環状の第二リップ(副リップ)46を一体成形している(
図2参照)。
なお、本実施形態では、前記芯金26の円板部28の軸受内部空間16側の面部29のみが被覆部32によって覆われていない実施の一形態を示すが、これに限定されるものではなく、芯金26の全領域を覆う形態であっても、他の箇所を被覆しない形態であっても本発明の範囲内である。
【0032】
第一リップ39は、被覆部32の円板状部分35の端部から薄肉部36を介して前記スリンガ18の環状筒部19方向に向けて一体に形成された厚肉部37において、その軸方向(図中矢印L1で示すアキシャル方向)で軸受内部空間16方向に向けて突出する先端鋭利状(厚さ方向で先端側に向かうほど幅狭状)に形成されており、前記内輪2の軸方向端部4にて、前記内輪2の大径部6と小径部(環状小径部)5とを段差状に連絡する径方向壁部7に線で摺接(線接触)している。
すなわち、この第一リップ39と径方向壁部7との摺接による密封領域(第四密封領域)73により、軸受内部空間16に異物が侵入しないように作用している。
【0033】
なお、本実施形態では、前記厚肉部37の軸方向において、第一リップ39とは反対の軸方向(図中矢印L1で示すアキシャル方向)に向けて薄肉フランジ状に突出する非接触の環状の補助リップ42を一体に形成している(
図2(a)参照。)。ちなみに、この非接触の補助リップ42は、スリンガ18の環状筒部19の外周面との間でラビリンス隙間43を形成しているため、密封領域(第三密封領域)72をさらに増やしている。
【0034】
さらに本実施形態では、内周縁(内径)34側において、第二リップ46とは反対の軸方向(図中矢印L1で示すアキシャル方向)に環状に突出した第二補助リップ44が一体に突出して形成されている(
図2(a)参照。)。この第二補助リップ44は、内輪2の大径部6の端縁に対して非接触で位置してラビリンス隙間45を形成している。このラビリンス隙間45によってさらなる密封領域(第五密封領域)74を構成している。
【0035】
第二リップ46は、リップ先端47に向かうに従って拡開(内径側46aの拡開径をR1、外径側46bの拡開径をR2としたときの径寸法がR1<R2とされている。)されるように、内周縁34近くの被覆部32の外周面から傾斜状に突出して一体成形されている。
そして、前記スリンガ18と摺接するリップ先端47の肉厚W2を、他のリップ部分(リップ基端60部分からリップ先端47に至るまでの間の部分)の肉厚W1と比して厚く形成し、かつ前記リップ先端47の厚さ方向の一端部は厚さ方向(図中矢印L1で示すアキシャル方向)に突出した突出部48を環状に形成している。
【0036】
突出部48は、厚さ方向で先端側に向かうほど幅狭状に形成されて前記スリンガ18と線で摺接(線接触)する摺接部49を構成している。この突出部48とスリンガ18との摺接部49の密封領域(第二密封領域)71により、前記補助リップ42とスリンガ18との間のラビリンス隙間43による密封領域(第三密封領域)72に異物が侵入しないように作用している。
【0037】
そして、前記リップ先端47寄りの側面部、例えば本実施形態では、ラジアル方向内側面部46cの前記突出部48の基端部48a部位に窪み部80が設けられている。
前記窪み部80は、第二リップ46の前記ラジアル方向内側面部46cの周方向で、断面視で略半円状の連続した環状に設けられている。
【0038】
本実施形態によれば、窪み部80がリップ周方向に連続しているため、リップ先端47は、前記窪み部80によって高速回転時の遠心力の影響を極めて受け易い形態となっている。
なお、窪み部80の深さにあっては特に限定解釈されず本発明の範囲内で設計変更可能である。
【0039】
前記第二リップ46におけるリップ先端47の前記突出部48と厚さ方向で反対側に位置する他端部50は、段差状に形成されて前記スリンガ18のフランジ部22における内周面23との間でラビリンス隙間52を形成している(
図2(a)参照。)。
すなわち、第二リップ46のリップ先端47の外径面の端部には、段差状に径方向に向けて突出する環状段部51が一体に形成されている。
このラビリンス隙間52による密封領域(第一密封領域)70により、前記突出部48とスリンガ18との摺接部49の密封領域(第二密封領域)71に異物が侵入しないように作用している。なお、本実施形態では、前記環状段部51の断面視形状が台形状に形成され、先端面はフラット状(平坦状)とされている。
【0040】
前記突出部48は、厚さ方向で先端側に向かうほど幅狭状に形成されてスリンガ18と線で摺接する摺接部49を構成したため、非回転時から極小の接触幅で接触し、使用回転領域においても、スリンガ18との摺接幅変化を抑制し、一定幅の安定した摺接を実現させている。
【0041】
なお、従来技術(例えば特許文献1等)において、スリンガは、円板部が、固定輪(内輪)の端面と平行に形成されていたため、スリンガの組立影響でスリンガのアキシャル方向への傾きを発生させる虞を有していた。このような不具合は、シール摺接の不安定につながり、第二リップ先端の異常磨耗を発生させる懸念がある。
本実施形態によれば、スリンガ18の円板部20を軸方向でシール部材25方向に向けて傾斜状に形成するとともに、円板部20の先端を、軸方向で前記シール部材25の摺接部上方を覆うように折り曲げて環状のフランジ部22を一体に形成したため、スリンガ18の形状変形を抑制してスリンガの倒れ精度を確保することができる。
「第二実施形態」
【0042】
図3は、本発明の第二実施形態で、窪み部80を、第二リップ46のラジアル方向外側面部46dに設けた一実施形態を示す。
その他の構成及び作用効果は第一実施形態と同じである。
「第三実施形態」
【0043】
図4は、本発明の第三実施形態で、窪み部80は、第二リップ46のラジアル方向内側面部46cに設けた実施の一形態ではあるが、本実施形態の窪み部80は、突出部48の基端部48a部位にて、前記ラジアル方向内側面部46cの周方向で、断面視で略半円状に断続して多数独立して設けられている。
その他の構成及び作用効果は第一実施形態と同じである。
「第四実施形態」
【0044】
図5は、本発明の第四実施形態で、スリンガ18の変形例の一実施形態を示す。
本実施形態においてスリンガ18の円板部20に形成される環状の凹部20dは、軸方向で前記第二リップ46と対向する面部20aに形成されている。すなわち、本実施形態では、環状の凹部20dが円板部20における前記第二リップ46と対向する面部20aにおいて、軸方向で軸受外方に向けて凹設されている。この場合、環状筒部19から連続して一体に形成される第一の環状面部20cが、前記第一実施形態〜第三実施形態にて示すスリンガ18と比してシール部材25寄りに形成されている(環状筒部19が短く形成されているとも言い得る。)。
その他の構成及び作用効果は第一実施形態と同じである。
「第五実施形態」
【0045】
図6は、本発明の第五実施形態で、前記第四実施形態と略同一構成であるが、本実施形態ではフランジ部22を備えていない一実施形態を示す。また、本実施形態では、凹部20dが段差部20fと段差部20gとの間で形成されている形態としている。
その他の構成及び作用効果は第一実施形態及び第四実施形態と同じである。
「他の実施形態」
【0046】
前記各実施形態において、次のように構成することも本発明の範囲内であり適宜設計変更可能である。
【0047】
スリンガ18の円板部20は、内径側20hから外径側20iに行くに従って、軸方向でシール部材方向(図中矢印L3で示す軸受内部方向)に向けて傾斜するように形成してもよい。このように形成することにより、スリンガ18の形状変形を抑制してスリンガ18の倒れ精度を確保することができる。
【0048】
環状の凹部を、円板部20の径方向(図中矢印L2で示すラジアル方向)において複数形成して複数の段付き形状に形成することも可能で本発明の範囲内である。このように形成することにより、剛性が高くなりアキシャル方向へのスリンガの形状変形を抑制してスリンガの倒れ精度を確保することができる。
【0049】
シール部材25は、軸方向(図中矢印L1で示すアキシャル方向)において、前記スリンガ18のフランジ部22の外周面24上を覆うように突出する環状の庇部(図示しない)が形成されているものとすることも可能である。庇部は、被覆部32における円板状部分35の外径側端部から軸方向(図中矢印L1で示すアキシャル方向)に向けて所定厚みで環状に突出させて一体成形し、スリンガ18のフランジ部22の外周面24との間でラビリンス隙間を形成することができる。
すなわち、このようにラビリンス隙間が形成されるため、前記ラビリンス隙間によりさらに密封領域が増える。従って、リップ先端47の他端部50とスリンガ18のフランジ部内周面23との間に形成された密封領域70(52)以前にて、外部からの異物の侵入を防ぐことができるため密封性能が向上する。
【0050】
環状段部51が、前記スリンガ18のフランジ部22の内周面23に摺接しているものであってもよい。
また、環状段部51の先端摺接面の形状は、断面視でR状でも断面視台形状で先端の摺接面形状をフラット状(平坦状)とすることも可能である。これにより、環状段部51の先端とフランジ部22の内周面23との間で接触の密封領域が形成されるため、密封性能が向上する。