特許第6402506号(P6402506)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6402506静電荷像現像用トナー、静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成方法、及び、画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6402506
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナー、静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成方法、及び、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20181001BHJP
【FI】
   G03G9/097 372
【請求項の数】7
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2014-129786(P2014-129786)
(22)【出願日】2014年6月25日
(65)【公開番号】特開2016-9097(P2016-9097A)
(43)【公開日】2016年1月18日
【審査請求日】2017年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安野 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】清野 英子
(72)【発明者】
【氏名】大森 宏輝
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 章洋
【審査官】 小川 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−323396(JP,A)
【文献】 特開平02−287363(JP,A)
【文献】 特開2014−153456(JP,A)
【文献】 特開2010−139950(JP,A)
【文献】 特開2008−152099(JP,A)
【文献】 特開2010−224163(JP,A)
【文献】 特開2010−079242(JP,A)
【文献】 特開2006−285240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂を含有するトナー母粒子、及び、外添剤を含有し、
前記外添剤が、ポリテトラフルオロエチレン粒子、及び、金属石鹸粒子を含有し、
前記ポリテトラフルオロエチレン粒子の含有量が、トナーの全重量に対し、0.05〜0.5重量%であり、
前記金属石鹸粒子の全重量が、トナーの全重量に対し、0.05〜0.5重量%であり、
前記金属石鹸粒子が、脂肪酸の亜鉛塩及び脂肪酸のカルシウム塩を含み、
前記金属石鹸粒子の全重量中のカルシウムの含有量が100〜10,000ppmであることを特徴とする
静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
前記脂肪酸の亜鉛塩が、ステアリン酸亜鉛である、請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の静電荷像現像用トナーを含有することを特徴とする
静電荷像現像剤。
【請求項4】
画像形成装置に着脱可能であり、請求項1又は2に記載の静電荷像現像用トナーを収容するトナーカートリッジ。
【請求項5】
画像形成装置に着脱され、請求項3に記載の静電荷像現像剤を収容し、かつ像保持体の表面に形成された静電潜像を前記静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段を備えることを特徴とする
プロセスカートリッジ。
【請求項6】
像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、
静電荷像現像剤により前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像工程と、
前記トナー像を被転写体に転写する転写工程と、
前記被転写体に前記トナー像を定着する定着工程と
前記像保持体上に残留する静電荷像現像剤を除去するクリーニング工程と、を含み、
前記トナーが請求項1又は2に記載の静電荷像現像用トナー、又は、前記現像剤が請求項3に記載の静電荷像現像剤であることを特徴とする画像形成方法。
【請求項7】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電された前記像保持体の表面に静電潜像を形成させる露光手段と、
前記静電潜像を、トナーを含む現像剤によりトナー像として現像する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を被転写体の表面に転写する転写手段と、
前記被転写体の表面に転写された前記トナー像を定着する定着手段と、
前記像保持体上に残留した残留トナーを除去するクリーニング手段と、を有し、
前記トナーが請求項1又は2に記載の静電荷像現像用トナー、又は、前記現像剤が請求項3に記載の静電荷像現像剤であることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナー、静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成方法、及び、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法など、静電荷像を経て画像情報を可視化する方法は、現在さまざまな分野で利用されている。
従来の電子写真法においては、感光体や静電記録体上に種々の手段を用いて静電潜像を形成し、この静電潜像に、磁気ブラシ現像法等により現像剤保持体(以下、「マグロール」ともいう。)上の磁気ブラシからトナーと呼ばれる検電性粒子を付着させて、静電潜像を現像してトナー像とし、被転写体表面に転写し、加熱等により定着する、という複数の工程を経て可視化する方法が一般的に使用されている。そして、トナー像を被転写体表面に転写した後、感光体はクリーニングされる。
これらトナーには、必要に応じて、クリーニング性を改善するためのポリテトラフルオロエチレン粒子をトナー粒子表面に外添剤として添加することがある。
【0003】
従来のポリテトラフルオロエチレン粒子が添加されたトナーとしては、特許文献1〜3が挙げられる。
特許文献1には、連続して使用した場合も、トナー粒子の凝集やトナー粒子の装置への付着が抑制された静電荷像現像用トナーであって、結着樹脂及び着色剤を含むトナー粒子と、トナー粒子表面に付着された平均粒子径100nm以上500nm以下のポリテトラフルオロエチレン粒子(以下、「PTFE粒子」ともいう。)と、トナー粒子表面に付着された平均粒子径80nm以上200nm以下の単分散球状シリカ粒子とを含み、PTFE粒子の量が、トナー粒子100部に対して0.1部以上1部以下であり、PTFE粒子1部に対してシリカ粒子が0.5部以上30部以下であり、水系分散液中で出力20W、周波数20kHzの超音波振動を1分間加える超音波処理を実施したとき、トナー粒子から脱離せずに付着しているPTFE粒子の量が、超音波処理実施前の付着量の50質量%以上100質量%以下である静電荷像現像用トナーが開示されている。
特許文献2には、感光体の偏磨耗と色筋の発生を抑制する静電荷像現像用トナーであって、結着樹脂及び着色剤を含むトナー粒子と、パーフルオロオクタン酸及びその塩の含有量が0.5ppm以下であるポリテトラフルオロエチレン粒子と、温度20℃湿度20%の環境下における水分量が0.1質量%以上10質量%であるシリカ粒子と、を含む静電荷像現像用トナーが開示されている。
特許文献3には、低湿度下において連続して画像を出力する場合でも安定したクリーニング性を示す静電潜像現像用トナーであって、結着樹脂と着色剤とを含むトナー粒子と、パーフルオロオクタン酸及びその塩の含有量が0.5ppm以下のポリテトラフルオロエチレン粒子と研磨剤とを含む外添剤と、を含有する静電潜像現像用トナーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−197732号公報
【特許文献2】特開2011−59586号公報
【特許文献3】特開2011−128218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は、印刷時の感光体のクリーニング性に優れ、かつ、高画像密度で連続プリントを行った場合であっても画像の白ぬけの発生が抑制された、静電荷像現像用トナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は、以下の<1>及び<3>〜<7>に記載の手段により解決された。好ましい実施態様である<2>とともに以下に記載する。
<1>結着樹脂を含有するトナー母粒子、及び、外添剤を含有し、前記外添剤が、ポリテトラフルオロエチレン粒子、及び、金属石鹸粒子を含有し、前記ポリテトラフルオロエチレン粒子の含有量が、トナーの全重量に対し、0.05〜0.5重量%であり、前記金属石鹸粒子の全重量が、トナーの全重量に対し、0.05〜0.5重量%であり、前記金属石鹸粒子が、脂肪酸の亜鉛塩及び脂肪酸のカルシウム塩を含み、前記金属石鹸粒子の全重量中のカルシウムの含有量が100〜10,000ppmであることを特徴とする静電荷像現像用トナー、
<2>前記脂肪酸の亜鉛塩が、ステアリン酸亜鉛である、<1>に記載の静電荷像現像用トナー、
<3><1>又は<2>に記載の静電荷像現像用トナーを含有することを特徴とする静電荷像現像剤、
<4>画像形成装置に着脱可能であり、<1>又は<2>に記載の静電荷像現像用トナーを収容するトナーカートリッジ、
<5>画像形成装置に着脱され、<3>に記載の静電荷像現像剤を収容し、かつ像保持体の表面に形成された静電潜像を前記静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段を備えることを特徴とするプロセスカートリッジ、
<6>像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、静電荷像現像剤により前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像工程と、前記トナー像を被転写体に転写する転写工程と、前記被転写体に前記トナー像を定着する定着工程と前記像保持体上に残留する静電荷像現像剤を除去するクリーニング工程と、を含み、前記トナーが<1>又は<2>に記載の静電荷像現像用トナー、又は、前記現像剤が<3>に記載の静電荷像現像剤であることを特徴とする画像形成方法、
<7>像保持体と、前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電された前記像保持体の表面に静電潜像を形成させる露光手段と、前記静電潜像を、トナーを含む現像剤によりトナー像として現像する現像手段と、前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を被転写体の表面に転写する転写手段と、前記被転写体の表面に転写された前記トナー像を定着する定着手段と、前記像保持体上に残留した残留トナーを除去するクリーニング手段と、を有し、前記トナーが<1>又は<2>に記載の静電荷像現像用トナー、又は、前記現像剤が<3>に記載の静電荷像現像剤であることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0007】
上記<1>に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比して、印刷時の感光体のクリーニング性に優れ、かつ、高画像密度で連続プリントを行った場合であっても、画像の白ぬけの発生が抑制された静電荷像現像用トナーが提供される。
上記<2>に記載の発明によれば、印刷時の感光体のクリーニング性により優れ、かつ、高画像密度で連続プリントを行った場合であっても、画像の白ぬけの発生がより抑制された静電荷像現像用トナーが提供される。
上記<3>に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比して、印刷時の感光体のクリーニング性に優れ、かつ、高画像密度で連続プリントを行った場合であっても、画像の白ぬけの発生が抑制された静電荷像現像剤が提供される。
上記<4>に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比して、印刷時の感光体のクリーニング性に優れ、かつ、高画像密度で連続プリントを行った場合であっても、画像の白ぬけの発生が抑制された静電荷像現像用トナーを収容するトナーカートリッジが提供される。
上記<5>に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比して、印刷時の感光体のクリーニング性に優れ、かつ、高画像密度で連続プリントを行った場合であっても、画像の白ぬけの発生が抑制された静電荷像現像用トナーを収容するプロセスカートリッジが提供される。
上記<6>に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比して、印刷時の感光体のクリーニング性に優れ、かつ、高画像密度で連続プリントを行った場合であっても、画像の白ぬけの発生が抑制された画像形成方法が提供される。
上記<7>に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比して、印刷時の感光体のクリーニング性に優れ、かつ、高画像密度で連続プリントを行った場合であっても、画像の白ぬけの発生が抑制された画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に好適に使用される画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
図2】本実施形態に好適に使用されるプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本実施形態について説明する。
なお、本実施形態において、「A〜B」との記載は、AからBの間の範囲だけでなく、その両端であるA及びBも含む範囲を表す。例えば、「A〜B」が数値範囲であれば、「A以上B以下」又は「B以上A以下」を表す。
【0010】
(静電荷像現像用トナー)
本実施形態の静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)は、結着樹脂を含有するトナー母粒子、及び、外添剤を含有し、前記外添剤が、ポリテトラフルオロエチレン粒子、及び、金属石鹸粒子を含有し、前記ポリテトラフルオロエチレン粒子の含有量が、トナーの全重量に対し、0.05〜0.5重量%であり、前記金属石鹸粒子の全重量が、トナーの全重量に対し、0.05〜0.5重量%であり、前記金属石鹸粒子が、脂肪酸の亜鉛塩及び脂肪酸のカルシウム塩を含み、前記金属石鹸粒子の全重量中のカルシウムの含有量が100〜10,000ppmであることを特徴とする。
【0011】
ポリテトラフルオロエチレン粒子は低表面エネルギーである特性があるため、クリーニングブレードの姿勢安定化のために有効である。しかし、PTFE粒子を含むトナーを用いて高画像濃度で連続プリントした場合、画像に白ぬけが発生してしまう不具合が、本発明者等により確認された。これは、PTFE粒子の柔らかく変形し易い特性のために、現像機内の熱や感光体と現像ブラシの接触によってトナー中のPTFE粒子がマグロールに移行又は移行及び変形し、PTFEによるマグロールの汚染が発生したためと推定している。
本発明者等が詳細な検討を行ったところ、トナーの外添剤に脂肪酸の亜鉛塩及び脂肪酸のカルシウム塩を含む金属石鹸粒子を含有させることにより、画像の白ぬけの発生が抑制されることを見出した。詳細な機構は不明であるが、脂肪酸のカルシウム塩への選択的な吸着水分によってマグロール表面に脂肪酸の亜鉛塩を主成分とする強固な金属石鹸膜が生成されるため、その潤滑作用によってマグロールへのPTFE粒子の付着が抑制されるためと推定している。
以下、トナーを構成する各成分や物性値について詳述する。
【0012】
本実施形態の静電荷像現像用トナーは、結着樹脂を含有するトナー母粒子と、外添剤とを含有する。
【0013】
<外添剤>
本実施形態の外添剤は、少なくともポリテトラフルオロエチレン粒子、及び、金属石鹸粒子を含有し、前記ポリテトラフルオロエチレン粒子の含有量が、トナーの全重量に対し、0.05〜0.5重量%であり、前記金属石鹸粒子の全重量が、トナーの全重量に対し、0.05〜0.5重量%であり、前記金属石鹸粒子が、脂肪酸の亜鉛塩及び脂肪酸のカルシウム塩を含み、前記金属石鹸粒子の全重量中のカルシウムの含有量が100〜10,000ppmである。これら2種の粒子は、それぞれトナー母粒子表面に付着された状態又は遊離した状態で外添される。
【0014】
〔ポリテトラフルオロエチレン粒子〕
本実施形態のトナーは、外添剤の一つとして、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子を含有する。
PTFE粒子の平均粒子径は、100nm以上500nm以下であることが好ましく、100nm以上400nm以下であることがより好ましく、200nm以上400nm以下であることが更に好ましい。
PTFE粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(S−4700型、(株)日立製作所製)を用いて、100視野(50,000倍)の観察を実施し、PTFE粒子の画像面積に相当する粒子を円として近似して粒径(長径と短径の平均値)を1,000箇所測定し、その平均値をPTFE粒子の個数平均一次径とすることにより測定される。
【0015】
PTFE粒子は、例えば、乳化重合法により製造される。また、PTFE粒子として市販品を用いることもでき、例えば、ルブロンシリーズ(ダイキン工業(株)製)が挙げられる。
【0016】
PTFE粒子の組成としては、テトラフルオロエチレンの単独重合体が好ましいが、例えば、フッ化ビニリデン、モノフルオロエチレンを10重量%以下の濃度で含むものであってもよい。
【0017】
PTFE粒子は、トナー粒子表面に付着した状態又は遊離した状態で本実施形態のトナーに外添される。トナー粒子表面への付着は、乾燥状態で剪断力を加えてトナー粒子表面に添加すればよい。この時の具体的な条件としては、高剪断力(例えば、ヘンシェルミキサーを用いて高回転数で撹拌する。)を付与する手段により行われる。
【0018】
PTFE粒子の重量平均分子量Mwは、2,000〜300,000であることが好ましく、4,000〜200,000であることがより好ましく、6,000〜100,000であることが更に好ましい。
【0019】
PTFE粒子は、パーフルオロオクタン酸(以下、「PFOA」ともいう。)及びその塩の含有量が0.5ppm以下であることが好ましい。PFOA及びその塩の含有量は、PTFE0.2gをその10倍量のアセトンに溶解させ、アセトン溶液を約2倍量の水にゆっくりと滴下し、得られた水溶液をLC/MS/MS(アプライドバイオシステムズジャパン(株)製 3200 Q TRAP(登録商標)LC/MS/MSシステム)にて定量される。
なお、PFOAは、PTFE粒子を合成する際に界面活性剤として添加されるものである。
【0020】
PTFE粒子におけるPFOA及びその塩の含有量を0.5ppm以下とするには、パーフルオロオクタン酸を用いないでPTFE粒子を乳化重合する方法や、パーフルオロオクタン酸とパーフルオロオクタン酸以外の界面活性剤とを併用する方法が挙げられる。また、パーフルオロオクタン酸を使用し乳化重合した後に水溶液をフッ化アルキル系溶媒で抽出する方法、ノニオン性界面活性剤に水溶液を接触させる方法、超臨界流体を用いてパーフルオロオクタン酸を除去することによっても、PTFE粒子におけるPFOAの含有量を0.5ppm以下としうる。
【0021】
PTFE粒子の含有量は、トナーの全重量に対し、0.05〜0.5重量%であり、0.1〜0.5重量%であることが好ましく、0.1〜0.3重量%であることがより好ましい。
【0022】
〔金属石鹸粒子〕
本実施形態のトナーは、外添剤の一つとして、脂肪酸の亜鉛塩及び脂肪酸のカルシウム塩を含み、前記金属石鹸粒子の全重量中のカルシウムの含有量が100〜10,000ppmである金属石鹸粒子(以下、「特定金属石鹸粒子」ともいう。)を含有することを特徴とする。
【0023】
特定金属石鹸粒子に含まれる、上記脂肪酸の亜鉛塩としては、炭素数14〜18の脂肪酸の亜鉛塩であることが好ましく、炭素数16〜18の脂肪酸の亜鉛塩であることがより好ましく、ステアリン酸亜鉛であることが更に好ましい。
また、上記脂肪酸のカルシウム塩としては、炭素数14〜18の脂肪酸のカルシウム塩であることが好ましく、炭素数16〜18の脂肪酸のカルシウム塩であることがより好ましく、ステアリン酸カルシウムであることが更に好ましい。
また、上記脂肪酸の亜鉛塩と上記脂肪酸のカルシウム塩のそれぞれの脂肪酸は、同一の脂肪酸であることが好ましく、どちらもステアリン酸であることがより好ましい。
【0024】
また、特定金属石鹸粒子の全重量に対するカルシウムの含有量は、100〜10,000ppmであり、100〜2,000ppmであることが好ましく、100〜500ppmであることがより好ましい。
カルシウムの含有量が上記範囲であれば、好適な金属石鹸膜の形成能を有する金属石鹸が得られる。
【0025】
ステアリン酸亜鉛及びステアリン酸カルシウムを含む金属石鹸粒子の製造方法を例にして、特定金属石鹸粒子の製造方法について説明する。
純水にステアリン酸を加え、加熱下に撹拌して得られた懸濁液に、水酸化カリウム水溶液を加えて更に加熱、撹拌し、ステアリン酸カリウム水溶液を調製する。
上記ステアリン酸カリウム水溶液に硫酸亜鉛及び硫酸カルシウムを加熱下で少量ずつ添加し、撹拌しながら混合する。
その後得られたスラリーのろ物を水洗、乾燥した後にジェットミルを用いて粉砕することにより、ステアリン酸亜鉛及びステアリン酸カルシウムを含む金属石鹸粒子が得られる。
上記の製造方法の中で、硫酸カルシウムの量及び水洗の程度を適宜変更することにより、金属石鹸粒子中のカルシウムの含有量が調整される。なお、水洗の程度は、水洗時のろ液の導電率を測定することにより測定される。
上記カルシウムの含有量は、ICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析計、ICPM−8500、島津製作所(株)製)を用いて測定される。
また、ジェットミルの回転数、回転時間を調整することにより、目的の粒径の金属石鹸粒子が得られる。
【0026】
特定金属石鹸粒子の組成としては、脂肪酸の亜鉛塩及び脂肪酸のカルシウム塩以外の成分を含んでもよいが、脂肪酸の亜鉛塩及び脂肪酸のカルシウム塩以外の成分が20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、2%以下であることが更に好ましい。
【0027】
特定金属石鹸粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜8.0μmであることがより好ましく、1.0〜7.0μmであることが更に好ましい。
特定金属石鹸粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(S−4700型、(株)日立製作所製)を用いて、100視野(50,000倍)の観察を実施し、金属石鹸粒子の画像面積に相当する粒子を円として近似して粒径(長径と短径の平均値)を1,000箇所測定し、その平均値を金属石鹸粒子の個数平均一次径とすることにより測定される。
【0028】
特定金属石鹸粒子は、トナー粒子表面に付着した状態又は遊離した状態で本実施形態のトナーに外添される。トナー粒子表面への付着は、乾燥状態で剪断力を加えてトナー粒子表面に添加すればよい。この時の具体的な条件としては、高剪断力(例えば、ヘンシェルミキサーを用いて高回転数で撹拌する。)を付与する手段により行われる。
【0029】
特定金属石鹸粒子の含有量は、トナーの全重量に対し、0.05〜0.5重量%であり、0.1〜0.5重量%であることが好ましく、0.1〜0.3重量%であることがより好ましい。
【0030】
〔その他の外添剤〕
本実施形態において、トナーには流動化剤や帯電制御剤等のその他の外添剤を添加処理してもよい。
その他の外添剤としては、無機粒子や有機粒子が挙げられる。
無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、塩化セリウム、ベンガラ、酸化クロム、酸化セリウム、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられる。
無機粒子は、一般に流動性を向上させる目的で使用される。前記無機粒子の平均一次粒径としては、1〜200nmの範囲が好ましい。無機粒子の添加量としては、トナー100重量部に対して、0.01〜20重量部の範囲が好ましい。
【0031】
有機粒子は、一般にクリーニング性や転写性を向上させる目的で使用され、具体的には例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂粉末、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。
【0032】
これらの中でも、流動性や帯電特性を良好にする観点から、酸化チタンやシリカ等の無機酸化物を用いることが好ましい。
また、その他の外添剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
その他の外添剤の含有量は、トナーの全重量に対し、0.01〜5.0重量%の範囲が好ましく、0.1〜3.0重量%の範囲がより好ましい。
【0033】
<トナー母粒子>
本実施形態において、トナー母粒子は、少なくとも結着樹脂を含有し、必要に応じて着色剤、離型剤等を含有する。
【0034】
<結着樹脂>
結着樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)等を主成分とするスチレン系樹脂、ポリメチルメタアクリレート、ポリアクリロニトリル等を主成分とする(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂及びこれらの共重合樹脂が挙げられるが、静電荷像現像用トナーとして用いる際の帯電安定性や現像耐久性の観点からスチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合樹脂及びポリエステル樹脂が好ましい。
【0035】
結着樹脂としては、低温定着性の観点から、ポリエステル樹脂を含有することが好ましく、非晶性(非結晶性)ポリエステル樹脂を含有することがより好ましい。
ポリエステル樹脂とは、例えば、主として多価カルボン酸類と多価アルコール類との縮重合により得られるものである。
前記多価カルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族カルボン酸類;無水マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アルケニル無水コハク酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類、及び、これらの低級アルキルエステルや酸無水物が挙げられる。なお、低級アルキルとは、炭素数1〜8の直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表す。これらの多価カルボン酸は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これら多価カルボン酸の中でも、芳香族カルボン酸を用いることが好ましい。また、良好な定着性を確保することを目的として、架橋構造あるいは分岐構造をとるためにジカルボン酸とともに三価以上のカルボン酸(トリメリット酸やその酸無水物等)を併用することが好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂を得るために使用される多価カルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、1,4−フェニレン二酢酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸や脂環式炭化水素基を有するジカルボン酸などが挙げられ、これらの酸無水物及び低級アルキルエステルも挙げられる。
【0036】
前記多価アルコールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、などの脂肪族ジオール類;シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式ジオール類;ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族ジオール類が挙げられる。これら多価アルコールは、1種単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
非晶性ポリエステルを得るために使用される多価アルコールとしては、例えば、好ましくは、脂肪族、脂環式、芳香式の多価アルコールが挙げられ、具体的には例えば、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノールZのアルキレンオキサイド付加物、水素添加ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等を挙げることができる。中でも、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を好ましく用いることができ、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物をより好ましく用いることができる。
また、より良好な定着性を確保することを目的として、架橋構造あるいは分岐構造をとるためにジオールとともに三価以上の多価アルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等)を併用してもよい。
【0037】
非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(以下、「Tg」と略記することがある。)は50℃以上80℃以下であることが好ましく、50℃以上70℃以下がより好ましい。Tgが80℃以下であると、低温定着性に優れるので好ましい。また、Tgが50℃以上であると、耐熱保存性に優れ、また、定着画像の保存性に優れるので好ましい。
【0038】
樹脂のガラス転移温度は、公知の方法で測定してもよく、例えば、ASTM D3418−82に規定された方法(DSC法)で測定される。
結晶性樹脂の融点の測定には、示差走査熱量計(DSC)を用い、室温から150℃まで毎分10℃の昇温速度で測定を行った時のJIS K−7121に示す入力補償示差走査熱量測定の融解ピーク温度として求めることができる。
なお、結晶性樹脂に示すような「結晶性」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有することを示し、具体的には、昇温速度10℃/minで測定した際の吸熱ピークの半値幅が15℃以内であることを意味する。
一方、吸熱ピークの半値幅が15℃を超える樹脂や、明確な吸熱ピークが認められない樹脂は、非結晶性(非晶質)であることを意味する。非結晶性樹脂のDSCによるガラス転移温度は、自動接線処理システムを備えた(株)島津製作所製の示差走査熱量計(DSC−50)等により、ASTM D3418に準拠して測定する。測定条件を以下に示す。
試料:3〜15mg、好ましくは5〜10mg
測定法:試料をアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用いる。
温度曲線:昇温I(20℃〜180℃、昇温速度10℃/min)
上記温度曲線において昇温時に測定される吸熱曲線から、ガラス転移温度を測定する。
ガラス転移温度とは、吸熱曲線の微分値が極大となる温度である。
【0039】
非晶性ポリエステル樹脂の酸価は、5mgKOH/g以上25mgKOH/g以下が好ましく、6mgKOH/g以上23mgKOH/g以下がより好ましい。酸価が5mgKOH/g以上であれば、トナーの紙への親和性がよく、帯電性もよい。また、後述する乳化凝集法によりトナーを製造した場合に、乳化粒子を作製し易く、また乳化凝集法の凝集工程における凝集速度や融合工程における形状変化速度が著しく速くなることが抑制され、粒度制御や形状制御を行い易い。また、非晶性ポリエステル樹脂の酸価が25mgKOH/g以下であれば、帯電の環境依存性に悪影響を及ぼさない。また、乳化凝集法でのトナー製造における凝集工程での凝集速度や融合工程での形状変化速度が著しく遅くなることが抑えられ、生産性の低下が防止される。
【0040】
非晶性ポリエステル樹脂は、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による分子量測定で、重量平均分子量(Mw)が5,000以上1,000,000以下であることが好ましく、より好ましくは7,000以上500,000以下であり、数平均分子量(Mn)が2,000以上100,000以下であることが好ましく、分子量分布Mw/Mnが1.5以上100以下であることが好ましく、より好ましくは2以上60以下である。
非晶性ポリエステル樹脂の分子量と分子量分布が上記範囲内であると、低温定着性を損なうことなく優れた定着画像強度を得られるため好ましい。
【0041】
本実施形態においては、トナー母粒子が結晶性ポリエステル樹脂を含んでもよい。
結晶性ポリエステル樹脂は、溶融時に非晶性ポリエステル樹脂と相溶してトナー粘度を著しく低下させることから、より低温定着性に優れたトナーが得られる。また結晶性ポリエステル樹脂のうち、芳香族結晶性ポリエステル樹脂は一般に後述の融解温度範囲よりも高いものが多いため、結晶性ポリエステル樹脂を含む場合には、脂肪族結晶性ポリエステル樹脂であることがより好ましい。
【0042】
本実施形態において、トナー母粒子における結晶性ポリエステル樹脂の含有量としては、2重量%以上30重量%以下が好ましく、4重量%以上25重量%以下がより好ましい。2重量%以上あれば、溶融時に非晶性ポリエステル樹脂を低粘度化することができ、低温定着性の向上が得られ易い。また、30重量%以下であれば、結晶性ポリエステル樹脂の存在に起因するトナーの帯電性の悪化が防止され、更に被記録媒体への定着後の高画像強度が得られ易い。
【0043】
結晶性ポリエステル樹脂の融解温度は、50℃以上90℃以下の範囲であることが好ましく、55℃以上90℃以下の範囲であることがより好ましく、60℃以上90℃以下の範囲であることが更に好ましい。融解温度が50℃以上あれば、トナーの保存性や、定着後のトナー画像の保存性に優れる。また、90℃以下であれば、低温定着性が向上する。
【0044】
また、結晶性ポリエステル樹脂は、その主鎖に対して他成分を共重合したポリマーの場合、他成分が50重量%未満の場合は、この共重合体も結晶性ポリエステルと呼ぶ。
【0045】
前記結晶性ポリエステル樹脂の合成に用いられる酸成分としては、種々の多価カルボン酸が挙げられるが、ジカルボン酸が好ましく、直鎖型の脂肪族ジカルボン酸がより好ましい。
例えば、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸など、又は、その低級アルキルエステルや酸無水物が挙げられるが、この限りではない。これらの中では、入手容易性を考慮すると、アジピン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸が好ましい。
また、前記結晶性ポリエステル樹脂の合成に用いられる酸成分としては、その他としてエチレン性不飽和結合を持つジカルボン酸や、スルホン酸基を持つジカルボン酸を用いてもよい。
【0046】
前記結晶性ポリエステル樹脂の合成に用いられるアルコール成分としては、脂肪族ジオールが好ましく、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9―ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ドデカンジオール、1,12−ウンデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオールなどが挙げられるが、この限りではない。これらの中では、入手容易性やコストを考慮すると、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールが好ましい。
【0047】
結晶性ポリエステル樹脂の分子量(重量平均分子量;Mw)は、樹脂の製造性、トナー製造時の微分散化や、溶融時の相溶性の観点から、8,000以上40,000以下が好ましく、10,000以上30,000以下が更に好ましい。重量平均分子量が8,000以上であれば、結晶性ポリエステル樹脂の抵抗の低下が抑制されるので、帯電性の低下が防止される。また、40,000以下であれば、樹脂合成のコストが抑えられ、また、シャープメルト性の低下が防止されるために低温定着性に悪影響を与えない。
【0048】
本実施形態において、ポリエステル樹脂の分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography)により測定し、算出する。具体的には、GPCは東ソー(株)製HLC−8120を使用し、カラムは東ソー(株)製TSKgel SuperHMーM(15cm)を使用し、ポリエステル樹脂をTHF溶媒で測定する。次に、単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用してポリエステル樹脂の分子量を算出する。
ポリエステル樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、酸成分とアルコール成分とを反応させる一般的なポリエステル重合法で製造してもよい。例えば、直接重縮合、エステル交換法等を、モノマーの種類によって使い分けて製造する。前記酸成分とアルコール成分とを反応させる際のモル比(酸成分/アルコール成分)としては、反応条件等によっても異なるため、一概には言えないが、高分子量化するためには通常1/1程度が好ましい。
ポリエステル樹脂の製造時に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;及びアミン化合物等が挙げられる。
【0049】
スチレン系樹脂及び(メタ)アクリル系樹脂、特にスチレン−(メタ)アクリル系共重合樹脂は本実施形態において結着樹脂として有用である。
ビニル芳香族単量体(スチレン系単量体)60〜90重量部、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体((メタ)アクリル酸エステル系単量体)10〜40重量部、及びエチレン性不飽和酸単量体1〜3重量部よりなる単量体混合物を重合して得られる共重合体を界面活性剤で分散安定化したラテックスを結着樹脂成分として好ましく使用することができる。
上記の共重合体のガラス転移温度は50〜70℃であることが好ましい。
【0050】
以下に上記の共重合樹脂を構成する重合性単量体について説明する。
スチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレンや、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン等のアルキル鎖を持つアルキル置換スチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン等のハロゲン置換スチレン、4−フルオロスチレン、2,5−ジフルオロスチレン等のフッ素置換スチレン等が挙げられる。これらの中でも、スチレン系単量体としては、スチレンが好ましい。
【0051】
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、(メタ)アクリル酸n−メチル、(メタ)アクリル酸n−エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸n−ラウリル、(メタ)アクリル酸n−テトラデシル、(メタ)アクリル酸n−ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸n−オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸イソヘキシル、(メタ)アクリル酸イソヘプチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ビフェニル、(メタ)アクリル酸ジフェニルエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルフェニル、(メタ)アクリル酸ターフェニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸β−カルボキシエチル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド等がある。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、アクリル酸n−ブチルが好ましい。
【0052】
エチレン性不飽和酸単量体は、カルボキシル基、スルホン酸基、酸無水物等の酸性基を含有するエチレン性不飽和単量体である。
前記スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂及びスチレン−(メタ)アクリル系共重合樹脂にカルボキシル基を含有させる場合は、カルボキシル基を有する重合性単量体を共重合させることによって得ることができる。
このようなカルボキシル基含有重合性単量体の具体例としては、アクリル酸、アコニット酸、アトロパ酸、アリルマロン酸、アンゲリカ酸、イソクロトン酸、イタコン酸、10−ウンデセン酸、エライジン酸、エルカ酸、オレイン酸、o−カルボキシケイ皮酸、クロトン酸、クロロアクリル酸、クロロイソクロトン酸、クロロクロトン酸、クロロフマル酸、クロロマレイン酸、ケイ皮酸、シクロヘキセンジカルボン酸、シトラコン酸、ヒドロキシケイ皮酸、ジヒドロキシケイ皮酸、チグリン酸、ニトロケイ皮酸、ビニル酢酸、フェニルケイ皮酸、4−フェニル−3−ブテン酸、フェルラ酸、フマル酸、ブラシジン酸、2−(2−フリル)アクリル酸、ブロモケイ皮酸、ブロモフマル酸、ブロモマレイン酸、ベンジリデンマロン酸、ベンゾイルアクリル酸、4−ペンテン酸、マレイン酸、メサコン酸、メタクリル酸、メチルケイ皮酸、メトキシケイ皮酸等が挙げられる。これらの中でも、重合体形成反応の容易性などから、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ケイ皮酸、フマル酸が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
【0053】
前記結着樹脂は、その重合時に連鎖移動剤を用いることができる。
連鎖移動剤としては特に制限はないが、チオール成分を有する化合物を用いることができる。具体的には、ヘキシルメルカプタン、ヘプチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ノニルメルカプタン、デシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類が好ましく、特に分子量分布が狭く、そのため高温時のトナーの保存性が良好になる点で好ましい。
【0054】
前記結着樹脂には、必要に応じて架橋剤を添加することもできる。架橋剤は、分子内に2以上のエチレン性不飽和基を有する、多官能単量体が代表的である。
このような架橋剤の具体例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族の多ビニル化合物類;フタル酸ジビニル、イソフタル酸ジビニル、テレフタル酸ジビニル、ホモフタル酸ジビニル、トリメシン酸ジビニル/トリビニル、ナフタレンジカルボン酸ジビニル、ビフェニルカルボン酸ジビニル等の芳香族多価カルボン酸の多ビニルエステル類;ピリジンジカルボン酸ジビニル等の含窒素芳香族化合物のジビニルエステル類;ピロムチン酸ビニル、フランカルボン酸ビニル、ピロール−2−カルボン酸ビニル、チオフェンカルボン酸ビニル等の不飽和複素環化合物カルボン酸のビニルエステル類;ブタンジオールメタクリレート、ヘキサンジオールアクリレート、オクタンジオールメタクリレート、デカンジオールアクリレート、ドデカンジオールメタクリレート等の直鎖多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類;ネオペンチルグリコールジメタクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン等の分枝、置換多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類;コハク酸ジビニル、フマル酸ジビニル、マレイン酸ビニル/ジビニル、ジグリコール酸ジビニル、イタコン酸ビニル/ジビニル、アセトンジカルボン酸ジビニル、グルタル酸ジビニル、3,3’−チオジプロピオン酸ジビニル、trans−アコニット酸ジビニル/トリビニル、アジピン酸ジビニル、ピメリン酸ジビニル、スベリン酸ジビニル、アゼライン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル、ドデカン二酸ジビニル、ブラシル酸ジビニル等の多価カルボン酸のポリビニルエステル類等が挙げられる。
本実施形態において、これらの架橋剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記架橋剤の好ましい含有量は、重合性単量体総量の0.05〜5重量%の範囲が好ましく、0.1〜1.0重量%の範囲がより好ましい。
【0055】
前記結着樹脂のうち、重合性単量体のラジカル重合により製造することができるものはラジカル重合用開始剤を用いて重合することができる。
ラジカル重合用開始剤としては、特に制限はない。具体的には、過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化tert−ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド、1−フェニル−2−メチルプロピル−1−ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸tert−ブチルヒドロペルオキシド、過蟻酸tert−ブチル、過酢酸tert−ブチル、過安息香酸tert−ブチル、過フェニル酢酸tert−ブチル、過メトキシ酢酸tert−ブチル、過N−(3−トルイル)カルバミン酸tert−ブチル等の過酸化物類、2,2’−アゾビスプロパン、2,2’−ジクロロ−2,2’−アゾビスプロパン、1,1’−アゾ(メチルエチル)ジアセテート、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)硝酸塩、2,2’−アゾビスイソブタン、2,2’−アゾビスイソブチルアミド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオン酸メチル、2,2’−ジクロロ−2,2’−アゾビスブタン、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、1,1’−アゾビス(1−メチルブチロニトリル−3−スルホン酸ナトリウム)、2−(4−メチルフェニルアゾ)−2−メチルマロノジニトリル、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸、3,5−ジヒドロキシメチルフェニルアゾ−2−メチルマロノジニトリル、2−(4−ブロモフェニルアゾ)−2−アリルマロノジニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルバレロニトリル、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸ジメチル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサンニトリル、2,2’−アゾビス−2−プロピルブチロニトリル、1,1’−アゾビス−1−クロロフェニルエタン、1,1’−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、1,1’−アゾビス−1−シクロへプタンニトリル、1,1’−アゾビス−1−フェニルエタン、1,1’−アゾビスクメン、4−ニトロフェニルアゾベンジルシアノ酢酸エチル、フェニルアゾジフェニルメタン、フェニルアゾトリフェニルメタン、4−ニトロフェニルアゾトリフェニルメタン、1,1’−アゾビス−1,2−ジフェニルエタン、ポリ(ビスフェノールA−4,4’−アゾビス−4−シアノペンタノエート)、ポリ(テトラエチレングリコール−2,2’−アゾビスイソブチレート)等のアゾ化合物類、1,4−ビス(ペンタエチレン)−2−テトラゼン、1,4−ジメトキシカルボニル−1,4−ジフェニル−2−テトラゼン等が挙げられる。
【0056】
また、結晶性ビニル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸オレイル、(メタ)アクリル酸ベヘニル等の長鎖アルキル、アルケニルの(メタ)アクリル酸エステルを用いたビニル系樹脂が挙げられる。なお、本明細書において、“(メタ)アクリル”なる記述は、“アクリル”及び“メタクリル”のいずれか、又は、その両方を含むことを意味するものである。
【0057】
また、スチレン系樹脂及び(メタ)アクリル系樹脂等のような付加重合型樹脂の重量平均分子量は、5,000〜50,000であることが好ましく、7,000〜35,000であることがより好ましい。重量平均分子量が5,000以上であると、結着樹脂としての凝集力が良好であり、ホットオフセット性の低下が生じない。また、重量平均分子量が50,000以下であると、良好なホットオフセット性と、良好な最低定着温度が得られ、また、重縮合に要する時間や温度が適切であり、製造効率が良好である。
なお、結着樹脂の重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)等により測定することができる。
【0058】
本実施形態のトナーにおける結着樹脂の含有量としては、特に制限はないが、トナーの全重量に対して、10〜95重量%であることが好ましく、25〜90重量%であることがより好ましく、45〜85重量%であることが更に好ましい。上記範囲であると、定着性、帯電特性等に優れる。
【0059】
〔着色剤〕
本実施形態において、得られる画像の着色を目的として、トナー母粒子は着色剤を含有することが好ましい。なお、透明トナーとする場合には、必ずしも着色剤を含有しなくてもよい。
着色剤としては、公知のものを用いることができ、色相角、彩度、明度、耐候性、OHP透過性、トナー中での分散性等の観点から任意に選択すればよい。
着色剤は、染料であっても顔料であってもよいが、耐光性や耐水性の観点から、顔料であることが好ましい。また、着色剤は有色着色剤に限定されるものではなく、白色着色剤、金属色を呈する着色剤であってもよい。
例えばシアントナーにおいては、その着色剤として、例えば、C.I.ピグメントブルー1、同2、同3、同4、同5、同6、同7、同10、同11、同12、同13、同14、同15、同15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同15:6、同16、同17、同23、同60、同65、同73、同83、同180、C.I.バットシアン1、同3、同20等や、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルーの部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBCのシアン顔料、C.I.ソルベントシアン79、162等のシアン染料などが用いられる。
マゼンタトナーにおいては、その着色剤として、例えば、C.I.ピグメントレッド1、同2、同3、同4、同5、同6、同7、同8、同9、同10、同11、同12、同13、同14、同15、同16、同17、同18、同19、同21、同22、同23、同30、同31、同32、同37、同38、同39、同40、同41、同48、同49、同70、同51、同52、同53、同54、同55、同57、同58、同60、同63、同64、同68、同81、同83、同87、同88、同89、同90、同112、同114、同122、同123、同163、同184、同185、同202、同206、同207、同209、同238等、ピグメントバイオレット19のマゼンタ顔料や、C.I.ソルベントレッド1、同3、同8、同23、同24、同25、同27、同30、同49、同81、同82、同83、同84、同100、同109、同121、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ベーシックレッド1、同2、同9、同12、同13、同14、同15、同17、同18、同22、同23、同24、同27、同29、同32、同34、同35、同36、同37、同38、同39、同40等のマゼンタ染料等、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ロータミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bなどが用いられる。
イエロートナーにおいては、その着色剤として、例えば、C.I.ピグメントイエロー2、同3、同15、同16、同17、同74、同93、同97、同128、同155、同180、同185、同139等のイエロー顔料などが用いられる。
また、ブラックトナーにおいては、その着色剤として、例えば、カーボンブラック、活性炭、チタンブラック、磁性粉、Mn含有の非磁性粉などが用いられる。また、イエロー、マゼンタ、シアン、レッド、グリーン、ブルー顔料を混合して、ブラックトナーとしてもよい。
着色剤としては、表面処理された着色剤を使用したり、顔料分散剤を使用してもよい。上記着色剤の種類を選択することにより、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナー等のカラートナーが調製される。
【0060】
着色剤の使用量は、トナー母粒子100重量部に対して、0.1〜20重量部であることが好ましく、0.5〜15重量部であることがより好ましい。また、着色剤として、これらの顔料や染料等を1種単独で使用する、又は、2種以上を併せて使用することができる。
【0061】
なお、本実施形態において、着色剤を含有しない透明トナーを含むトナーセットとしてカラー画像を形成してもよい。光沢付与が望まれるカラートナー像に対し、その上ないし周辺に転写定着することで良好な光沢画像を得るための透明トナーとして好適に使用される。
【0062】
〔離型剤〕
本実施形態において、トナー母粒子は離型剤を含有することが好ましい。
離型剤の具体例としては、例えば、エステルワックス、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリエチレンとポリプロピレンの共重合物が好ましいが、ポリグリセリンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、カルナウバワックス、サゾールワックス、モンタン酸エステルワックス、脱酸カルナバワックス、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、ブランジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸などの不飽和脂肪酸類、ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベフェニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、あるいは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルアルコール類などの飽和アルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加などによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物などが挙げられる。
【0063】
離型剤として用いられるワックスは、70〜140℃のいずれかの温度で溶融しかつ1〜200センチポアズの溶融粘度を示すことが好ましく、1〜100センチポアズの溶融粘度を示すことがより好ましい。溶融するのが70℃以上であると、ワックスの変化温度が十分高く、耐ブロッキング性、及び、複写機内温度が高まった時に現像性に優れる。140℃以下であると、ワックスの変化温度が十分低く、高温での定着を行う必要がなく、省エネルギー性に優れる。また、溶融粘度が200センチポアズ以下であると、トナーからの溶出が適度であり、定着剥離性に優れる。
本実施形態のトナーにおいて、離型剤は、定着性、トナーブロッキング性、トナー強度等の観点から選択される。離型剤の添加量は、特に制限はないが、トナー母粒子に含まれる結着樹脂100重量部に対して、2〜20重量部の範囲内が好適である。
【0064】
〔その他の成分〕
本実施形態において、トナー母粒子は上記の成分に加え、必要に応じてその他の成分を含有していてもよく、その他の成分としては、内添剤、帯電制御剤、無機粉体(無機粒子)、有機粒子、滑剤、研磨剤等が例示される。
【0065】
−内添剤−
内添剤としては、例えば、フェライト、マグネタイト、還元鉄、コバルト、ニッケル、マンガン等の金属、合金、又はこれら金属を含む化合物などの磁性体等が挙げられる。上記磁性体等を含有させて磁性トナーとして用いる場合、これらの強磁性体は平均粒子が2μm以下が好ましく、0.1〜0.5μm程度のものがより好ましい。トナー中に含有させる量としては樹脂成分100重量部に対し20〜200重量部が好ましく、特に樹脂成分100重量部に対し40〜150重量部が好ましい。また、10Kエルステッド印加での磁気特性が保磁力(Hc)が20〜300エルステッド、飽和磁化(σs)が50〜200emu/g、残留磁化(σr)が2〜20emu/gのものが好ましい。
【0066】
−帯電制御剤−
本実施形態において、トナーの帯電性を制御するために、トナー母粒子に帯電制御剤を添加してもよい。例えば、正帯電性の帯電制御剤として、ニグロシン染料、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の四級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩、及びこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料;高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート等のジオルガノスズボレート類;グアニジン化合物、イミダゾール化合物、アミノアクリル系樹脂、ポリエチレンイミンなどが挙げられる。
また、負帯電性の帯電制御剤としては、トリメチルエタン系染料、サリチル酸の金属錯塩、ベンジル酸の金属錯塩、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、金属錯塩アゾ系染料、アゾクロムコンプレックス等の重金属含有酸性染料、カリックスアレン型のフェノール系縮合物、環状ポリサッカライド、カルボキシル基及び/又はスルホニル基を含有する樹脂等が挙げられる。
これらの帯電制御剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0067】
帯電制御剤の添加量は、トナー母粒子の全重量に対して0.1〜5重量%であることが好ましい。添加量が上記範囲内であると、良好な帯電性が得られる。
【0068】
−無機粉体−
トナーは、粘弾性調整を目的として、無機粉体を含んでもよい。無機粉体としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、燐酸カルシウム、酸化セリウム等の下記に詳細に列挙する、通常トナー表面の外添剤として使用されるすべての無機粒子が挙げられる。
【0069】
(トナーの製造方法及びトナー物性)
<トナー物性>
トナーの体積平均粒径は、2μm以上20μm以下が好ましく、2.5μm以上15μm以下がより好ましく、3μm以上13μm以下が更に好ましい。トナーの体積平均粒径が上記範囲内であると、流動性に優れ、また、高解像度な画像が得られる。
なお、トナー、トナー母粒子等の粒子の平均粒径測定には、コールターマルチサイザーII(ベックマン−コールター社製)を用いて好適に測定される。この場合、粒子の粒径レベルにより、最適なアパーチャーを用いて測定される。粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描き、累積50%となる粒径を体積D50v、数D50pと定義する。体積平均粒径はD50vとして算出され、数平均粒径はD50pとして算出される。
トナー母粒子は、単層構造のトナー粒子であってもよいし、芯部(コア粒子)と芯部を被覆する被覆層(シェル層)とで構成された所謂コアシェル構造のトナー粒子であってもよい。ここで、コアシェル構造のトナー粒子は、例えば、結着樹脂と必要に応じて着色剤及び離型剤等のその他添加剤とを含んで構成された芯部と、結着樹脂を含んで構成された被覆層と、で構成されていることが好ましい。
【0070】
<トナーの製造方法>
本実施形態において、トナーの製造方法は、特に制限はなく、公知の方法により製造すればよい。
例えば、結着樹脂、必要に応じて、着色剤、離型剤、帯電制御剤等の成分を混合した後、ニーダー、押し出し機などを用いて上記材料を溶融混練し、この後、得られた溶融混錬物を粗粉砕した後、ジェットミル等で微粉砕し、風力分級機により、目的とする粒径のトナー粒子を得る混練粉砕法;混練粉砕法にて得られた粒子を機械的衝撃力又は熱エネルギーにて形状を変化させる方法;結着樹脂を乳化させ、形成された分散液と、着色剤、必要に応じて離型剤、帯電制御剤等の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化凝集法;結着樹脂を得るための単量体、着色剤、及び、必要に応じて離型剤、帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法;結着樹脂、着色剤、及び、必要に応じて離型剤、帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法等;が使用される。また上記方法で得られたトナー粒子をコアにして、更に凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造を形成する製造方法を行ってもよい。
既に述べたように、本実施態様においては、トナー母粒子が水性媒体中での重合により得られるケミカルトナーであることが好ましく、乳化凝集法により製造されたトナー母粒子であることがより好ましい。
【0071】
(ケミカルトナー)
本実施形態において、トナーは、粉砕トナーであっても、ケミカルトナーであってもよいが、ケミカルトナーであることが好ましい。ケミカルトナーとは、重合トナーとも呼ばれ、前述の乳化凝集法、懸濁重合法、溶解懸濁法が含まれ、乳化凝集法により製造されるトナー母粒子が好ましい。
乳化凝集法(EA法;Emulsion Aggregation)とは、乳化重合法により得た乳化重合樹脂粒子に加えて、顔料粒子、ワックス粒子を水中で凝集した後合一して、トナー母粒子を形成する方法である。乳化凝集法では、凝集工程及び合一工程において、均一かつ長時間のせん断力を付与することにより、トナー母粒子を製造する方法であって、粒径と形状係数を制御が容易となる点で優れている。
また、水中で樹脂や顔料の粒子を凝集合一させる際に、低温定着性や画像強度を付与するために、スチレンアクリル樹脂に代わってポリエステル樹脂が使用されるようになってきた。この場合のポリエステル樹脂としては、主としてジカルボン酸類とジアルコール類との縮重合により得られるものが好ましい。ポリエステル樹脂、特に非晶性ポリエステル樹脂の配合が大きい場合には、樹脂の酸価の調整や、イオン性界面活性剤などを用いて乳化分散することにより樹脂粒子分散液が容易に調製される。
本実施形態の静電荷像現像用トナーは、EA法によるケミカルトナーであることがより好ましい。
【0072】
(帯電極性)
本実施形態において、トナー母粒子の帯電性を制御するため、トナー母粒子表面を表面処理してもよく、このためにトナー母粒子に上記の帯電制御剤を使用してもよい。
なお、特に帯電性を制御しない場合、負帯電のトナー母粒子となることが多い。
本実施形態においては、トナー母粒子が負帯電性であるよりも、正帯電性であることが好ましい。
トナー母粒子が正帯電性となるように表面処理する方法としては、上記の帯電制御剤の使用が好ましい。
【0073】
外添剤をトナー母粒子へ外添する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。具体的には例えば、Vブレンダー、ヘンシェルミキサー等の混合機を用いて乾式でトナー母粒子表面に付着する方法、外添剤を液体に分散させた後、スラリー状態のトナーに添加し乾燥させ表面に付着する方法、又は、湿式方法として、乾燥トナーにスラリーをスプレーしながら乾燥する方法が挙げられる。
【0074】
(静電荷像現像剤)
本実施形態の静電荷像現像剤は、本実施形態の静電荷像現像用トナーを少なくとも含有する。必要に応じて、他の公知の成分を含有していてもよい。
本実施形態に係る静電荷像現像剤(以下、単に「現像剤」と称することがある。)は、本実施形態に係るトナーを含むものであれば特に限定されず一成分現像剤あるいは二成分現像剤のいずれであってもよい。なお、一成分系の現像剤の場合には、磁性金属粒子を含むトナーであっても磁性金属粒子を含まない非磁性一成分トナーであっても構わないが、二成分現像剤又は磁性金属粒子を含む一成分系の現像剤であることが好ましい。
【0075】
(1)二成分現像剤
二成分現像剤として用いる場合には、本実施形態の静電荷像現像用トナーと、キャリアとを混合して使用される。
二成分現像剤に使用しうるキャリアとしては、特に制限はなく、例えば酸化鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物や、これら芯材表面に樹脂被覆層を有する樹脂コートキャリア、磁性分散型キャリア等が挙げられる。またキャリアは、マトリックス樹脂に導電材料などが分散された樹脂分散型キャリアであってもよい。
【0076】
キャリアに使用される被覆樹脂・マトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコーン樹脂又はその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
導電材料としては、例えば、金、銀、銅といった金属やカーボンブラック、更に酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、酸化スズ、カーボンブラック等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
またキャリアの芯材としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物、ガラスビーズ等が挙げられるが、キャリアを磁気ブラシ法に用いるためには、磁性材料であってもよい。
キャリアの芯材の体積平均粒径としては、例えば、10μm以上500μm以下の範囲が挙げられ、30μm以上100μm以下が好ましい。
またキャリアの芯材の表面を樹脂被覆する方法としては、例えば、前記被覆樹脂、及び必要に応じて各種添加剤を溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する被覆樹脂、塗布適性等を勘案して選択すればよい。
具体的な樹脂被覆方法としては、例えば、キャリアの芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被覆層形成用溶液をキャリアの芯材表面に噴霧するスプレー法、キャリアの芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成用溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法等が挙げられる。
【0078】
以上のように形成された磁性キャリア全体の104V/cmの電界下における磁気ブラシの状態での電気抵抗は108〜1013Ωcmであることが好ましい。磁性キャリアの該電気抵抗が108Ωcm以上であると、像担持体上の画像部にキャリアの付着が抑制され、また、ブラシマークが出にくい。一方、磁性キャリアの該電気抵抗が1013Ωcm以下であると、エッジ効果の発生が抑制され、良好な画質が得られる。
なお、電気抵抗(体積固有抵抗)は以下のように測定する。
エレクトロメーター(KEITHLEY社製、商品名:KEITHLEY 610C)及び高圧電源(FLUKE社製、商品名:FLUKE 415B)と接続された一対の20cm2の円形の極板(鋼製)である測定治具の下部極板上に、サンプルを厚さ約1mm〜3mmの平坦な層を形成するように載置する。次いで上部極板をサンプルの上にのせた後、サンプル間の空隙をなくすため、上部極板上に4kgの重しをのせる。この状態でサンプル層の厚さを測定する。次いで、両極板に電圧を印加することにより電流値を測定し、次式に基づいて体積固有抵抗を計算する。
体積固有抵抗=印加電圧×20÷(電流値−初期電流値)÷サンプル厚
上記式中、初期電流は印加電圧0のときの電流値であり、電流値は測定された電流値を示す。
【0079】
前記二成分現像剤におけるトナーとキャリアとの混合比(重量比)としては、例えば、トナー:キャリア=1:100乃至30:100の範囲が挙げられ、3:100乃至20:100の範囲であってもよい。
【0080】
(2)一成分現像剤
本実施形態に係る現像剤は、一成分現像剤であってもよい。一成分現像剤の場合には、磁性金属粒子を含む磁性一成分現像剤であってもよく、磁性金属粒子を含有しない非磁性一成分現像剤であってもよい。
本実施形態において、磁性一成分現像剤が好適である。
【0081】
(画像形成方法)
また、静電荷像現像剤(静電荷像現像用トナー)は、静電荷像現像方式(電子写真方式)の画像形成方法に使用される。
本実施形態の画像形成方法は、像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、静電荷像現像剤により前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像工程と、前記トナー像を被転写体に転写する転写工程と、前記被転写体に前記トナー像を定着する定着工程と、前記像保持体上に残留する静電荷像現像剤を除去するクリーニング工程と、を含み、前記現像剤が、本実施形態の静電荷像現像用トナー又は本実施形態の静電荷像現像剤であることを特徴とする。
【0082】
前記各工程は、それ自体一般的な工程であり、例えば、特開昭56−40868号公報、特開昭49−91231号公報等に記載されている。なお、本実施形態の画像形成方法は、それ自体公知のコピー機、ファクシミリ機等の画像形成装置を用いて実施することができる。
前記静電潜像形成工程は、像保持体(感光体)上に静電潜像を形成する工程である。
前記現像工程は、現像剤保持体上の現像剤層を前記像保持体に接触若しくは近接させることにより、前記静電潜像を現像してトナー画像を形成する工程である。前記現像剤層としては、本実施形態の静電荷像現像用トナーを含んでいれば特に制限はない。
前記転写工程は、前記トナー画像を被転写体上に転写する工程である。また、転写工程における被転写体としては、中間転写体や紙等の被記録媒体が例示できる。
前記定着工程では、例えば、加熱ローラの温度を一定温度に設定した加熱ローラ定着器により、転写紙上に転写したトナー像を定着して複写画像を形成する方式が挙げられる。
前記クリーニング工程は、像保持体上に残留する静電荷像現像剤を清掃する工程である。
また、本実施形態の画像形成方法においては、前記クリーニング工程は、像保持体上に残留する静電荷像現像剤をクリーニングブレードにより除去する工程を含むことがより好ましい。
被記録媒体としては、公知のものを使用することができ、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される紙、OHPシート等が挙げられ、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等を好適に使用することができる。
【0083】
本実施形態の画像形成方法においては、更にリサイクル工程をも含む態様でもよい。前記リサイクル工程は、前記クリーニング工程において回収した静電荷像現像用トナーを現像剤層に移す工程である。このリサイクル工程を含む態様の画像形成方法は、トナーリサイクルシステムタイプのコピー機、ファクシミリ機等の画像形成装置を用いて実施される。また、現像と同時にトナーを回収する態様のリサイクルシステムに適用してもよい。
【0084】
(画像形成装置)
本実施形態の画像形成装置は、像保持体と、前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電された前記像保持体の表面に静電潜像を形成させる露光手段と、前記静電潜像を、トナーを含む現像剤によりトナー像として現像する現像手段と、前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を被転写体の表面に転写する転写手段と、前記被転写体の表面に転写された前記トナー像を定着する定着手段と、前記像保持体上に残留した残留トナーを除去するクリーニング手段と、を有し、前記現像剤が、本実施形態の静電荷像現像用トナー又は本実施形態の静電荷像現像剤であることを特徴とする。
なお、本実施形態の画像形成装置は、上記のような像保持体と、露光手段と、現像手段と、転写手段と、定着手段と、クリーニング手段とを少なくとも含むものであれば特に限定はされないが、その他必要に応じて、除電手段等を含んでいてもよい。
前記転写手段では、中間転写体を用いて2回以上の転写を行ってもよい。また、転写手段における被転写体としては、中間転写体や紙等の被記録媒体が例示できる。
【0085】
前記像保持体、及び、前記の各手段は、前記の画像形成方法の各工程で述べた構成を好ましく用いることができる。前記の各手段は、いずれも画像形成装置において公知の手段が利用できる。また、本実施形態の画像形成装置は、前記した構成以外の手段や装置等を含むものであってもよい。また、本実施形態の画像形成装置は、前記した手段のうちの複数を同時に行ってもよい。
【0086】
また、前記現像手段は、現像剤を表面に保持する現像剤保持体(マグロール)を有していることが好ましく、上記現像剤保持体が像補自体に対向して回転し、前記現像剤を像補自体に搬送させる態様であることがより好ましい。
【0087】
更に、像保持体上に残留する静電荷像現像剤を清掃するクリーニング手段としては、例えば、クリーニングブレード、クリーニングブラシなどが挙げられるが、クリーニングブレードが好ましい。
クリーニングブレードの材質としては、ウレタンゴム、ネオプレンゴム、シリコーンゴム等が好ましく挙げられる。
【0088】
本実施形態における画像形成装置において、例えば前記現像手段を含む部分が、画像形成装置本体に対して脱着可能なカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。該プロセスカートリッジとしては、本実施形態の静電荷像現像剤を収容し、かつ像保持体の表面に形成された静電潜像を前記静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段を備える、本実施形態のプロセスカートリッジが好適に用いられる。
以下、本実施形態の画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主用部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0089】
図1は、本実施携帯にかかる画像形成装置の一例である4連タンデム方式のフルカラー画像形成装置を示す概略構成図である。図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1から第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する。)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置本体に対して脱着可能なプロセスカートリッジであってもよい。
【0090】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、図における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ローラ22及び中間転写ベルト20内面に接する支持ローラ24に巻きつけられて設けられ、第1ユニット10Yから第5ユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。なお、支持ローラ24は、図示しないバネ等により駆動ローラ22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写ベルト20に張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ローラ22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収容されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーが供給される。
【0091】
上述した第1から第4ユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1ユニット10Yについて代表して説明する。なお、第1ユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2から第4ユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0092】
第1ユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を帯電させる帯電ローラ2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yよって露光して静電潜像を形成する露光装置3、静電潜像に帯電したトナーを供給して静電潜像を現像する現像装置(現像手段)4Y、現像したトナー像を中間転写ベルト20上に転写する1次転写ローラ5Y(1次転写手段)、及び1次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段)6Yが順に配設されている。
なお、1次転写ローラ5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各1次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kには、1次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各1次転写ローラに印加する転写バイアスを可変する。
【0093】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。まず、動作に先立って、帯電ローラ2Yによって感光体1Yの表面が−600V〜−800V程度の電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(20℃における体積抵抗率:1×10-6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂程度の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー印字パターンの静電潜像が感光体1Yの表面に形成される。
【0094】
静電潜像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
このようにして感光体1Y上に形成された静電潜像は、感光体1Yの走行に従って現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電潜像が、現像装置4Yによって現像像化される。
【0095】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロートナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で撹拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー像が形成された感光体1Yは、引続き走行され、感光体1Y上に現像されたトナー像が1次転写位置へ搬送される。
【0096】
感光体1Y上のイエロートナー像が1次転写位置へ搬送されると、1次転写ローラ5Yに1次転写バイアスが印加され、感光体1Yから1次転写ローラ5Yに向う静電気力がトナー像に作用され、感光体1Y上のトナー像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部(図示せず)によって+10μA程度に制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーは感光体クリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0097】
また、第2ユニット10M以降の1次転写ローラ5M、5C、5Kに印加される1次転写バイアスも、第1ユニットに準じて制御されている。
こうして、第1ユニット10Yにてイエロートナー像の転写された中間転写ベルト20は、第2から第4ユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー像が重ねられて多重転写される。
【0098】
第1から第4ユニットを通して4色のトナー像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト20内面に接する支持ローラ24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された2次転写ローラ(2次転写手段)26とから構成された2次転写部へと至る。一方、記録紙(被転写体)Pが供給機構を介して2次転写ローラ26と中間転写ベルト20とが圧接されている隙間に給紙され、2次転写バイアスが支持ローラ24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と同極性の(−)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー像が記録紙P上に転写される。なお、この際の2次転写バイアスは2次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0099】
この後、記録紙Pは定着装置(定着手段)28へと送り込まれトナー像が加熱され、色重ねしたトナー像が溶融されて、記録紙P上へ定着される。カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
なお、上記例示した画像形成装置は、中間転写ベルト20を介してトナー像を記録紙Pに転写する構成となっているが、この構成に限定されるものではなく、感光体から直接トナー像が記録紙に転写される構造であってもよい。
【0100】
トナー像を転写する記録媒体としては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙、OHPシート等が挙げられる。
【0101】
(トナーカートリッジ、現像剤カートリッジ及びプロセスカートリッジ)
本実施形態のトナーカートリッジは、画像形成装置に着脱可能であり、本実施形態の静電荷像現像用トナーを少なくとも収容しているトナーカートリッジであることを特徴とする。
本実施形態の現像剤カートリッジは、画像形成装置に着脱可能であり、本実施形態の静電荷像現像剤を収容する現像剤カートリッジであることを特徴とする。
また、本実施形態のプロセスカートリッジは、画像形成装置に着脱され、本実施形態の静電荷像現像剤を収容し、かつ像保持体の表面に形成された静電潜像を前記静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段を備えることを特徴とする
【0102】
トナーカートリッジが着脱可能な構成を有する画像形成装置において、本実施形態のトナーを収納した本実施形態のトナーカートリッジが好適に使用される。
本実施形態の現像剤カートリッジは、前記本実施形態の静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像剤を含有するものであればよく、特に制限はない。現像剤カートリッジは、例えば、現像手段を備えた画像形成装置に着脱され、この現像手段に供給されるための現像剤として、前記本実施形態の静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像剤が収納されているものである。
また、現像剤カートリッジは、トナー及びキャリアを収納するカートリッジであってもよく、トナーを単独で収納するカートリッジとキャリアを単独で収納するカートリッジとを別体としたものでもよい。
【0103】
本実施形態のプロセスカートリッジは、上記現像手段として、静電荷像現像剤を保持して搬送する現像剤保持体を有することが好ましい。また、その他必要に応じて、像保持体表面に残存したトナーを除去するためのクリーニング手段、除電手段等、その他の部材を含んでもよく、クリーニング手段を含むことが好ましい。
図2は、本実施形態の静電荷像現像剤を収容するプロセスカートリッジの好適な一例を示す概略構成図である。プロセスカートリッジ200は、感光体107と共に、帯電ローラ108、現像剤保持体を備えた現像装置111、感光体クリーニング装置(クリーニング手段)113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117を取り付けレール116を用いて組み合わせ、そして一体化したものである。
そして、このプロセスカートリッジ200は、転写装置112と、定着装置115と、図示しない他の構成部分とから構成される画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、画像形成装置本体と共に、記録紙300に画像を形成する画像形成装置を構成するものである。
【0104】
図2で示すプロセスカートリッジでは、帯電ローラ108、現像装置111、クリーニング装置(クリーニング手段)113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117を備えているが、これら装置は選択的に組み合わせられる。本実施形態のプロセスカートリッジでは、現像剤保持体を備えた現像装置111を備え、感光体107、帯電装置108、クリーニング装置(クリーニング手段)113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117から構成される群から選択される少なくとも1種を備えていることが好ましい。
【0105】
トナーカートリッジ及びプロセスカートリッジとしては、公知の構成を採用してもよく、例えば、特開2008−209489号公報、及び、特開2008−233736号公報等が参照される。
【0106】
なお、図1に示す画像形成装置は、トナーカートリッジ8T、8Y、8M、8C、8Kが着脱可能な構成を有する画像形成装置であり、現像装置4T、4Y、4M、4C、4Kは、各々の現像装置(色)に対応したトナーカートリッジと、図示しないトナー供給管で接続されている。また、トナーカートリッジ内に収納されているトナーが少なくなった場合には、このトナーカートリッジを交換してもよい。
【実施例】
【0107】
以下、実施例を挙げて本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態は以下に示す実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は重量基準である。
【0108】
(実施例1)
(トナー母粒子の調製)
〔各種分散液の調製〕
<ポリエステル樹脂分散液の調整>
・テレフタル酸:30mol%
・フマル酸:70mol%
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物:20mol%
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物:80mol%
【0109】
撹拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに上記モノマーを仕込み、1時間を要して190℃まで上げ、反応系内が均一に撹拌されていることを確認した後、ジブチル錫オキサイド1.2部を投入した。更に生成する水を留去しながら同温度から6時間を要して240℃まで温度を上げ、240℃で更に3時間脱水縮合反応を継続し、酸価が12.0mgKOH/g、重量平均分子量が9,700であるポリエステル樹脂を得た。
【0110】
上記重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー(株)製GPC・HLC−8120を用い、東ソー(株)製カラム・TSKgel SuperHM−M(15cm)を使用し、THF溶媒で行った。重量平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出したものである。
また、酸価の測定は、JIS K−0070−1992に準ずる。
【0111】
次いで、これを溶融状態のまま、キャビトロンCD1010((株)ユーロテック製)に毎分100gの速度で移送した。別途準備した水性媒体タンクには試薬アンモニア水をイオン交換水で希釈した0.37%濃度の希アンモニア水を入れ、熱交換器で120℃に加熱しながら毎分0.1リットルの速度で、上記ポリエステル樹脂溶融体と同時にキャビトロンCD1010((株)ユーロテック製)に移送した。
回転子の回転速度が60Hz,圧力が5kg/cmの条件でキャビトロンを運転し、平均粒径0.16μm,固形分濃度30%のポリエステル樹脂を含むポリエステル樹脂分散液を得た。
【0112】
<着色剤分散液の調製>
・シアン顔料(銅フタロシアニンB15:3:大日精化工業(株)製) 45部
・イオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬(株)製) 5部
・イオン交換水 200部
【0113】
以上を混合溶解し、ホモジナイザー(IKAウルトラタラックス)により10分間分散し、中心粒径168nm,固形分濃度22.0%の着色剤分散液(1)を得た。
【0114】
<離型剤分散液の調整>
・パラフィンワックス HNP9(溶融温度75℃:日本精鑞(株)製) 45部
・カチオン性界面活性剤ネオゲン RK(第一工業製薬(株)製) 5部
・イオン交換水 200部
【0115】
以上を95℃に加熱して、IKA製ウルトラタラックスT50にて十分に分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理し、中心径200nm,固形分濃度20.0%の離型剤分散液(1)を得た。
【0116】
〔トナー母粒子の作製〕
・ポリエステル樹脂分散液 292.2部
・着色剤分散液(1) 26.3部
・離型剤分散液(1) 34部
【0117】
以上を丸型ステンレス製フラスコ中においてウルトラタラックスT50で十分に混合・分散した。次いで、これにポリ塩化アルミニウム0.25部を加え、ウルトラタラックスで分散操作を継続した。加熱用オイルバスでフラスコを撹拌しながら48℃まで加熱した。48℃で60分保持した後、ここに前記ポリエステル樹脂分散液を、緩やかに70.0部を追加した。
その後、0.5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液で系内のpHを9.0にした後、ステンレス製フラスコを密閉し、磁力シールを用いて撹拌を継続しながら96℃まで加熱し、5時間保持した。
反応終了後、冷却し、濾過し、イオン交換水で十分に洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を施した。固形分を更に40℃のイオン交換水1Lに再分散し、18分350rpmで撹拌・洗浄した。
これを更に5回繰り返し、濾液のpHが7.5、電気伝導度7.0μS/cmとなったところで、ヌッチェ式吸引濾過によりNo5Aろ紙を用いて固液分離を行った。次いで真空乾燥を12時間継続した。
この時の粒子径を測定したところ体積平均粒径D50は6.1μm、であった。また、ルーゼックスによる形状観察より求めた粒子の形状係数SF1は128であることが観察された。
【0118】
(外添剤の調製)
<金属石鹸粒子の調製>
80℃の純水10Lにステアリン酸(関東化学(株)製、特級)350gを懸濁させた後に40%の水酸化カリウム水溶液(関東化学(株)製、特級)を200mL加えて60分撹拌させた後に70℃にしてステアリン酸カリウム使用液を調整した。別に、70℃の純水5Lに硫酸亜鉛7水和物(純正化学(株)製 試薬特級)250gと硫酸カルシウム2水和物(和光純薬工業(株)製、試薬特級)2gを溶解させて硫酸カルシウム、硫酸亜鉛混合水溶液を調製した。上記混合水溶液を先に調製したステアリン酸カリウム水溶液に温度70℃にて15分かけて滴下して加えた後、2時間撹拌した。得られたスラリーをろ過した後、得られたウエットケーキを純水で洗浄し、ろ液の導電率が0.5mS/cm以下になるまで通水、洗浄した。得られたケーキを真空乾燥機で10時間乾燥した。乾燥して得られたステアリン酸亜鉛をジェットミル(ホソカワミクロン(株)製 スパイラルジェットミルAS)にて粉砕して、D50v=3.9μmの金属石鹸粒子を作製した。
上記カルシウムの含有量を、ICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析計、ICPM−8500、島津製作所(株)製)を用いて測定したところ、250ppmであった。
【0119】
(静電荷像現像用トナーの調製)
上記で得られたトナー母粒子に対して酸化チタン粒子(JMT150IB、テイカ(株)製)を1.0重量%、シリカ粒子(RY50 日本アエロジル(株)製)を2.0重量%、と上記金属石鹸粒子0.2重量%、PTFE粒子(ルブロンL2、ダイキン工業(株)製)0.2重量%を加えてヘンシェルミキサーで混合(10,000rpm、30秒間)した後、目開き45μmの振動篩いを用いて篩分してトナーを得た。
【0120】
(キャリア)
・フェライト粒子(体積平均粒径50μm、体積電気抵抗3×10Ω・cm):100部
・トルエン:14部
・パーフルオロオクチルエチルアクリレート/メチルメタクリレート共重合体(共重合比40:60(質量基準)、Mw=80,000):1.6部
・カーボンブラック(VXC−72;キャボット社製):0.12部
【0121】
(現像剤の作製)
得られた静電荷現像用トナーを5部と上記キャリア100部とをV−ブレンダーを用いて40rpmで10分間撹拌し、現像剤を得た。
【0122】
(実施例2〜8比較例1〜5及び比較例7)
トナーの全重量に対するPTFE粒子の添加量、トナーの全重量に対するステアリン酸亜鉛の含有量、及び、金属石鹸粒子の全重量に対するカルシウムの含有量を表1に記載のように変更した以外は、実施例1と同様にトナーを調製し、実験を行った。
なお、金属石鹸粒子中のカルシウムの含有量は、硫酸カルシウム、硫酸亜鉛混合水溶液を調整する際の硫酸カルシウム量(g)、及び、洗浄終了時のろ液の導電率(mS/cm)を表1に記載の条件に変更することにより調整した。金属石鹸粒子の調製は、硫酸カルシウム量及びろ液の導電率を上記のように変更した以外は、実施例1と同様に行った。
【0123】
【表1】
【0124】
<クリーニング性評価>
20℃15%の低湿環境下でDocuCentreColor400(富士ゼロックス(株)製)の改造機を用いて、A4サイズの普通紙(富士ゼロックス(株)製、C2紙)を使用し、日本画像学会テストチャート番号8を用いて30,000枚の画像を出力する試験を行った。10,000枚ごとに感光体を抜き出し、感光体表面と出力した画像表面を目視で観察した。評価は以下の通りであり、3までを許容範囲とした。なお4になったものはその段階で試験を中止した。20,000枚終了時点での評価結果が1〜3のものについて、本実施形態に係るトナーとしてクリーニング性に優れるものとした。
1:感光体上の異物の付着、画像上のトナー汚れをともに目視では観察できない。
2:感光体上の異物の付着は認められるが、画像上には現れていない。
3:感光体上の異物の付着が認められ、画像上に僅かなトナー汚れが観察される。
4:感光体全面にトナー汚れが観察される。
実施例1〜8比較例1〜5、及び比較例7の評価結果を表2に示す。
【0125】
<白ぬけ発生評価>
20℃50%の環境下でDocuCenterColor400(富士ゼロックス(株)製)の改造機を用いて、A4サイズの普通紙(富士ゼロックス(株)製、C2紙)を使用し、画像濃度40%となるように長方形パッチを書いた画像サンプルを用いて100,000枚の画像を10日間かけて出力する試験を行った。初日に10,000枚連続出力し、翌日の朝一運転で日本画像学会テストチャート番号5を出力した後に、更に1日で10,000枚連続出力を繰り返し、計100,000枚出力した翌日の朝一運転で日本画像学会テストチャート番号5を出力し画質を評価した。
評価は3までを許容範囲とした。
1:画像上に白抜けは観察されず、画質に問題はない。
2:画像上に白抜けがわずかに観察されるが、画質に問題はない。
3:画像上に白抜けが若干観察されるが、実使用上は問題ない。
4:画像上にはっきりとした白ぬけが観察される。
実施例1〜8比較例1〜5及び比較例7の評価結果を表2に示す。
【0126】
【表2】
【符号の説明】
【0127】
1Y,1M,1C,1K 感光体
2Y,2M,2C,2K 帯電ローラ
3Y,3M,3C,3K レーザ光線
3 露光装置
4Y,4M,4C,4K 現像装置
5Y,5M,5C,5K 1次転写ローラ
6Y,6M,6C,6K 感光体クリーニング装置(クリーニング手段)
8Y,8M,8C,8K トナーカートリッジ
10Y,10M,10C,10K 画像形成ユニット
20 中間転写ベルト
22 駆動ローラ
24 支持ローラ
26 2次転写ローラ(2次転写手段)
28 定着装置(定着手段)
30 中間転写体クリーニング装置
P 記録紙
107 感光体
108 帯電ローラ
111 現像装置
112 転写装置
113 感光体クリーニング装置(クリーニング手段)
115 定着装置
116 取り付けレール
117,118 開口部
200 プロセスカートリッジ
300 記録紙
図1
図2