特許第6402511号(P6402511)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6402511吸着式ヒートポンプシステム及び冷熱生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6402511
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】吸着式ヒートポンプシステム及び冷熱生成方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 17/08 20060101AFI20181001BHJP
【FI】
   F25B17/08 Z
   F25B17/08 B
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-135085(P2014-135085)
(22)【出願日】2014年6月30日
(65)【公開番号】特開2016-11821(P2016-11821A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2017年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】廣田 靖樹
(72)【発明者】
【氏名】山内 崇史
(72)【発明者】
【氏名】岩田 隆一
(72)【発明者】
【氏名】志満津 孝
【審査官】 伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−329422(JP,A)
【文献】 特開平09−061001(JP,A)
【文献】 特開平08−178460(JP,A)
【文献】 特開2006−300414(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/101666(WO,A1)
【文献】 特開2014−185778(JP,A)
【文献】 特開2014−185781(JP,A)
【文献】 特開2015−183930(JP,A)
【文献】 特開2015−183931(JP,A)
【文献】 特開2015−206520(JP,A)
【文献】 特開2015−206521(JP,A)
【文献】 特開2016−011822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒を蒸発させる蒸発器と、
冷熱生成モード時に前記蒸発器と連通され前記蒸発器からの熱媒を吸着しつつ吸着熱を生成し、第1再生モード時に前記吸着した熱媒をメイン再生温度で脱離して第1再生されるメイン吸着器と、
第2再生モード時に前記第1再生後の前記メイン吸着器から熱媒を吸着して前記メイン吸着器を第2再生し、前記メイン吸着器の冷熱生成モード時に前記メイン吸着器と連通され、前記メイン吸着器の前記吸着熱により加熱されてアシスト再生される、再生アシスト吸着器と、
を備えた吸着式ヒートポンプ。
【請求項2】
前記メイン吸着器は、前記蒸発器、及び前記再生アシスト吸着器と各々接続された第1メイン吸着器及び第2メイン吸着器を含んで構成されている、請求項1に記載の吸着式ヒートポンプ。
【請求項3】
前記第1メイン吸着器による前記熱媒の吸着時に前記第2メイン吸着器の前記第1再生、前記第2再生が行われ、前記第2メイン吸着器の前記第1再生時に前記再生アシスト吸着器が前記第1メイン吸着器からの吸着熱により加熱されて前記アシスト再生が行われ、前記第2メイン吸着器による前記熱媒の吸着時に前記第1メイン吸着器の前記第1再生、前記第2再生が行われ、前記第1メイン吸着器の前記第1再生時に前記再生アシスト吸着器の前記アシスト再生が行われること、を特徴とする請求項2に記載の吸着式ヒートポンプ。
【請求項4】
前記メイン吸着器と接続され、熱交換用熱媒を蒸発させて前記メイン吸着器へ供給し、熱交換により前記メイン吸着器を前記メイン再生温度に上昇させる高温蒸発器と、
前記メイン吸着器の冷熱生成モード時に前記熱交換用熱媒を前記メイン吸着器から受け取り、前記再生アシスト吸着器を加熱する伝熱タンクと、
をさらに備えた、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の吸着式ヒートポンプ。
【請求項5】
前記メイン吸着器及び前記再生アシスト吸着器は、熱媒を凝縮する凝縮器と接続されていること、を特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の吸着式ヒートポンプ。
【請求項6】
蒸発器で熱媒を蒸発させて冷熱生成を行うと共に、前記熱媒をメイン吸着器で吸着しつつ吸着熱を生成し、該吸着熱で再生アシスト吸着器を加熱してアシスト再生し、
メイン再生温度で前記吸着した熱媒を前記メイン吸着器から脱離させて前記メイン吸着器を第1再生し、
前記第1再生後に前記メイン吸着器からの熱媒を前記再生アシスト吸着器で吸着して前記メイン吸着器を第2再生する、
冷熱生成方法。
【請求項7】
前記メイン吸着器は、第1メイン吸着器及び第2メイン吸着器を有し、
前記第1メイン吸着器での前記冷熱生成時に、前記第2メイン吸着器の前記第1再生及び前記第2再生を行うと共に、前記第2メイン吸着器の前記第1再生時に前記再生アシスト吸着器の前記アシスト再生を行い、
前記第2メイン吸着器での前記冷熱生成時に、前記第1メイン吸着器の前記第1再生及び前記第2再生を行うと共に、前記第1メイン吸着器の前記第1再生時に前記再生アシスト吸着器の前記アシスト再生を行う、
請求項6に記載の冷熱生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着式ヒートポンプシステム及び冷熱生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸着式ヒートポンプとして、特許文献1には、一対の吸着器と、凝縮器及び蒸発器を備えた構成が記載されている。
【0003】
このような構成の吸着式ヒートポンプにおいては、一般的に、吸着時と脱離時の温度差を大きくすることにより、1サイクル当たりの吸着材における吸着量の差を大きくすることができる。吸着/脱離の量の差を大きくすることにより、効率よく冷熱生成を行うことができる。
【0004】
また、非特許文献1には、吸着式ヒートポンプシステムにおいて、吸着器を2段に分けて搭載することにより脱着能力を高めたことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−151386号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】2013年度日本冷凍空調学会年次大会「50℃で駆動する吸着式ヒートポンプの出力に対する吸着器内流量の影響」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、吸着器における吸着時と脱離時の温度差が大きいと、顕熱ロス(実際のエネルギー交換に利用できない熱量)が大きくなる。実際の吸着式ヒートポンプでは、より効率的に冷熱を得ることが望まれる。また、非特許文献1には、2段に分けた吸着器同士を接続することのみが記載されている。吸着器の吸着材を再生する際に排熱等の熱源が必要となるが、当該熱源についても効率的に利用することが求められる。
【0008】
本発明は上記事実を考慮し、効率的に冷熱生成が可能な吸着式ヒートポンプ及び冷熱生成方法を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る吸着式ヒートポンプは、熱媒を蒸発させる蒸発器と、冷熱生成モード時に前記蒸発器と連通され前記蒸発器からの熱媒を吸着しつつ吸着熱を生成し、第1再生モード時に前記吸着した熱媒をメイン再生温度で脱離して第1再生されるメイン吸着器と、第2再生モード時に前記第1再生後の前記メイン吸着器から熱媒を吸着して前記メイン吸着器を第2再生し、前記メイン吸着器の冷熱生成モード時に前記メイン吸着器と連通され、前記メイン吸着器の前記吸着熱により加熱されてアシスト再生される、再生アシスト吸着器と、を備えている。
【0010】
請求項1に係る吸着式ヒートポンプでは、冷熱生成モード時に、蒸発器における熱媒の蒸発により冷熱が生成される。また、蒸発器と連通されたメイン吸着器が蒸発器で蒸発した熱媒を吸着し、このとき吸着熱を生成する。また、メイン吸着器は、第1再生モード時に、吸着した熱媒をメイン再生温度で脱離して第1再生される。
【0011】
一方、再生アシスト吸着器は、メイン吸着器の冷熱生成モード時にメイン吸着器と連通され、メイン吸着器の吸着熱により加熱されてアシスト再生される。また、第2再生モード時に、第1再生後のメイン吸着器から熱媒を吸着してメイン吸着器を第2再生する。
【0012】
請求項1に係る吸着式ヒートポンプによれば、メイン吸着器を再生アシスト吸着器と連通させて再生することにより、第2再生時の相対圧を第1再生時の相対圧よりも小さくすることができる。したがって、再生モードでメイン吸着器からより多くの熱媒を脱離させて、冷熱モードで効率よく冷熱生成を行うことができる。
【0013】
また、請求項1に係る吸着式ヒートポンプによれば、第1再生後に再生アシスト吸着器を用いてメイン吸着器の第2再生を行うので、メイン吸着器の再生をすべて再生アシスト吸着器で行う必要がない。したがって、再生アシスト吸着器に求められる吸着量を少なくすることができ、小容量の再生アシスト吸着器で効率的にメイン吸着器の再生を補助することができる。
【0014】
さらに、メイン吸着器が生成する吸着熱を利用して再生アシスト吸着器を再生(アシスト再生)するので、アシスト再生用の熱源を別途必要とせず、熱源の利用量を少なくすることができる。
【0015】
請求項2に係る吸着式ヒートポンプは、前記メイン吸着器は、前記蒸発器、及び前記再生アシスト吸着器と各々接続された第1メイン吸着器及び第2メイン吸着器を含んで構成されている。
【0016】
請求項2に係る吸着式ヒートポンプによれば、2個のメイン吸着器が、蒸発器と再生アシスト吸着機の間に並列に配置されているので、2個のメイン吸着器の冷熱生成と再生を交互に行うことにより、連続した冷熱生成を行うことができる。
【0017】
請求項3に係る吸着式ヒートポンプは、前記第1メイン吸着器による前記熱媒の吸着時に前記第2メイン吸着器の前記第1再生、前記第2再生が行われ、前記第2メイン吸着器の前記第1再生時に前記再生アシスト吸着器が前記第1メイン吸着器からの吸着熱により加熱されて前記アシスト再生が行われ、前記第2メイン吸着器による前記熱媒の吸着時に前記第1メイン吸着器の前記第1再生、前記第2再生が行われ、前記第1メイン吸着器の前記第1再生時に前記再生アシスト吸着器の前記アシスト再生が行われること、を特徴とする。
【0018】
請求項3に係る吸着式ヒートポンプによれば、第1メイン吸着器と第2メイン吸着器の冷熱生成と第1再生、第2再生とを交互に行うことにより、連続した冷熱生成を行うことができる。また、再生アシスト吸着器のアシスト再生は、第1メイン吸着器の第1再生時、及び第2メイン吸着器の第1再生時に行われる。このように、再生アシスト吸着器の再生を行うことにより、再生アシスト吸着器は、一方のメイン吸着器が第1再生された後に連続して当該メイン吸着器の第2再生を行うことができる。したがって、1つの再生アシスト吸着器を用いて第1メイン吸着器及び第2メイン吸着器の第2再生を行うことができる。
【0019】
請求項4に係る吸着式ヒートポンプは、前記メイン吸着器と接続され、熱交換用熱媒を蒸発させて前記メイン吸着器へ供給し、熱交換により前記メイン吸着器を前記メイン再生温度に上昇させる高温蒸発器と、前記メイン吸着器の冷熱生成モード時に前記熱交換用熱媒を前記メイン吸着器から受け取り、前記再生アシスト吸着器を加熱する伝熱タンクと、をさらに備えている。
【0020】
請求項4に係る吸着式ヒートポンプでは、高温蒸発器で蒸発した熱交換用熱媒(気相状態)をメイン吸着器へ供給することにより、メイン吸着器を加熱してメイン再生温度に上昇させる。また、冷熱生成モード時には、当該熱交換用熱媒をメイン吸着器の吸着熱により加熱して再生アシスト吸着器へ供給することにより、再生アシスト吸着器を加熱することができる。
【0021】
請求項5に係る吸着式ヒートポンプは、 メイン吸着器及び再生アシスト吸着器が、熱媒を凝縮する凝縮器と接続されていること、を特徴とする。
【0022】
請求項5に係る吸着式ヒートポンプによれば、メイン吸着器及び再生アシスト吸着器を凝縮器と接続することにより、メイン吸着器及び再生アシスト吸着器から脱離された熱媒を凝縮し、蒸発器に送ることが可能となる。
【0023】
請求項6に係る冷熱生成方法は、蒸発器で熱媒を蒸発させて冷熱生成を行うと共に、前記熱媒をメイン吸着器で吸着しつつ吸着熱を生成し、該吸着熱で再生アシスト吸着器を加熱してアシスト再生し、メイン再生温度で前記吸着した熱媒をメイン吸着器から脱離させて前記メイン吸着器を第1再生し、前記第1再生後に前記メイン吸着器からの熱媒を前記再生アシスト吸着器で吸着して前記メイン吸着器を第2再生するものである。
【0024】
請求項6に係る冷熱生成方法によれば、メイン吸着器で生成された吸着熱を用いて再生アシスト吸着器を加熱してアシスト再生するので、アシスト再生用の熱源を別途必要とせず、熱源の利用量を少なくすることができる。
【0025】
また、再生アシスト吸着器で吸着してメイン吸着器を第2再生するので、メイン吸着器からより多くの熱媒を脱離させることができる。このように、再生アシスト吸着器を用いることにより、効率よく冷熱生成を行うことができる。
【0026】
また、請求項6に係る冷熱生成方法によれば、第1再生後に再生アシスト吸着器を用いてメイン吸着器の第2再生を行うので、メイン吸着器の再生をすべて再生アシスト吸着器で行う必要がない。したがって、再生アシスト吸着器に求められる吸着量を少なくすることができ、小容量の再生アシスト吸着器で効率的にメイン吸着器の再生を補助することができる。
【0027】
請求項7に係る冷熱生成方法は、前記メイン吸着器は、第1メイン吸着器及び第2メイン吸着器を有し、前記第1メイン吸着器での前記冷熱生成時に、前記第2メイン吸着器の前記第1再生及び前記第2再生を行うと共に、前記第2メイン吸着器の前記第1再生時に前記再生アシスト吸着器の前記アシスト再生を行い、前記第2メイン吸着器での前記冷熱生成時に、前記第1メイン吸着器の前記第1再生及び前記第2再生を行うと共に、前記第1メイン吸着器の前記第1再生時に前記再生アシスト吸着器の前記アシスト再生を行うものである。
【0028】
請求項7に係る冷熱生成方法によれば、第1メイン吸着器と第2メイン吸着器の冷熱生成と第1再生、第2再生とを交互に行うことにより、連続した冷熱生成を行うことができる。また、再生アシスト吸着器のアシスト再生は、第1メイン吸着器の第1再生時、及び第2メイン吸着器の第1再生時に行われる。このように、再生アシスト吸着器の再生を行うことにより、1つの再生アシスト吸着器を第1メイン吸着器及び第2メイン吸着器の第2再生に用いることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明は上記構成としたので、効率的に冷熱生成が可能な吸着式ヒートポンプ及び冷熱生成方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施形態の吸着式ヒートポンプシステムの構成を示す概略図である。
図2】吸着式ヒートポンプシステムの制御部とバルブの接続を示すブロック図である。
図3】吸着材の吸着特性の一例を示す吸着等温線のグラフである。
図4図3の吸着特性を有する吸着材の再生温度を80℃から5℃ずつ低下させたときの吸着量差Δqをプロットしたグラフである。
図5】アシスト吸着材の吸着特性の一例を示す吸着等温線のグラフである。
図6】吸着式ヒートポンプ10の運転処理のフローチャートである。
図7】第1冷熱生成モード開始指示のフローチャートである。
図8】第1再生第2モード開始指示のフローチャートである。
図9】アシスト再生の開始指示のフローチャートである。
図10】第2再生第2モード開始指示のフローチャートである。
図11】第2冷熱生成モード開始指示のフローチャートである。
図12】第1再生第1モードの開始指示のフローチャートである。
図13】(A)は第1冷熱生成モード及び第1再生第2モード時の配管接続関係を説明する図であり、(B)は第1冷熱生成モード及び第2再生第2モード時の配管接続関係を説明する図である。
図14】(A)は第2冷熱生成モード及び第1再生第1モード時の配管接続関係を説明する図であり、(B)は第2冷熱生成モード及び第2再生第1モード時の配管接続関係を説明する図である。
図15】実施例と比較例の吸着式ヒートポンプでの再生温度と吸着量差Δqとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1には、本発明の実施形態に係る吸着式ヒートポンプ10が示されている。吸着式ヒートポンプ10は、蒸発器12、高温蒸発器13、第1メイン吸着器14、第2メイン吸着器16、再生アシスト吸着器18、及び凝縮器20を備えている。
【0032】
吸着式ヒートポンプ10は、さらに制御部72(図2参照)を備えている。制御部72はCPU、メモリ、バルブを切り替えるドライバ等を含んで構成されている。制御部72は、予め記録されたプログラムに基づいて後述するバルブを切り替えることで、吸着式ヒートポンプ10を作動させる。
【0033】
蒸発器12は、内部に熱媒である流体を有し、熱媒を蒸発させ、その際の気化熱により外部からエネルギー(熱量)を吸収する動作(冷熱生成)を行うことが可能である。本実施形態では、熱媒として水を用いる。
【0034】
蒸発器12内には、配管PAが配設されており、配管PAは冷熱機器70に接続されている。配管PA内は熱交換用の流体(本実施形態では水)で満たされており、不図示のポンプによって配管PA内を熱交換流体が循環することにより、蒸発器12で生成した冷熱が冷熱機器70に供給される。
【0035】
凝縮器20は、送られてくる熱媒(気相状態)を凝縮させ、凝縮熱を外部に放出する動作(温熱生成)を行う。凝縮器20内には、配管PBが配設されており、配管PBは冷却部71に接続されている。配管PB内は熱交換用の流体(本実施形態では水)で満たされており、不図示のポンプによって配管PB内を熱交換流体が循環することにより、凝縮器20内を所定の温度に維持し、凝縮器20へ送られた蒸気を凝縮させる。
【0036】
凝縮器20は、蒸発器12及び高温蒸発器13と配管29を介して接続されている。配管29には、液バルブVLが設けられている。配管29の一端側は、凝縮器20に接続され、他端側は、蒸発器12側に接続される配管29Aと高温蒸発器13側に接続される配管29Bとに分岐されている。液バルブVLは、配管29の分岐部に対する凝縮器20側に設けられている。また、配管29Bには、ポンプPが設けられている。液バルブVLは、制御部72と接続され、適宜開閉されて、凝縮器20から蒸発器12、高温蒸発器13へ水を送出する。高温蒸発器13へ水を送出する際には、ポンプPも作動させる。
【0037】
高温蒸発器13内には、熱交換流体(本実施形態では水)が貯留されている。高温蒸発器13内の水は、不図示の熱源により加熱されて水蒸気が生成される。生成された水蒸気は、第1メイン吸着器14、第2メイン吸着器16へ適宜供給される。
【0038】
第1メイン吸着器14内には吸着材14A及び伝熱タンク14Bが配置され、第2メイン吸着器16内には吸着材16A及び伝熱タンク16Bが配置されている。吸着材14A、16Aは、熱媒として気相の水を吸着,脱離するものであり、例えば、活性炭、メソポーラスシリカ、ゼオライト等を用いることができる。吸着材14A、16Aは、後述する冷熱生成モード時には、蒸発器12からの熱媒を吸着し、第1、第2再生モード時には吸着した熱媒を脱離する。伝熱タンク14B、16Bは、吸着材14A、16Aとは隔壁を介して熱交換可能とされ、熱媒としての水を貯留可能とされている。
【0039】
再生アシスト吸着器18内にはアシスト吸着材18A及び伝熱タンク18Bが配置されている。アシスト吸着材18Aは、熱媒として気相の水を吸着/脱離するものであり、例えば、活性炭、メソポーラスシリカ、ゼオライト等を用いることができる。なお、アシスト吸着材18Aとしては、吸着材14A、16Aとは異なる吸着特性を有するものが選択される。アシスト吸着材18Aは、後述する第1再生モード時には吸着した熱媒を脱離する。また、第2再生モード時には、吸着材14A、16Aからの熱媒を吸着する。伝熱タンク18Bは、アシスト吸着材18Aとは隔壁を介して熱交換可能とされ、熱媒としての水を貯留可能とされている。
【0040】
蒸発器12は、第1メイン吸着器14の吸着材14Aが収容されている空間(以下、この空間を「吸着材空間14R」という)、及び、第2メイン吸着器16の吸着材16Aが収容されている空間(以下、この空間を「吸着材空間16R」という)と、配管22を介して接続されている。配管22は、第1メイン吸着器14と接続される配管22A、第2メイン吸着器16に接続される配管22Bに分岐されており、配管22AにはバルブV11が設けられており、配管22BにはバルブV12が設けられている。図2に「示されるように、バルブV11、V12は、制御部72と接続されており、制御部72によって開閉が制御されている。バルブV11、V12を開放することにより、蒸発器12から第1メイン吸着器14の吸着材空間14R、第2メイン吸着器16の吸着材空間16Rへの熱媒(気相状態)の移動が可能となる。
【0041】
高温蒸発器13は、第1メイン吸着器14の伝熱タンク14B、第2メイン吸着器16の伝熱タンク16Bと、配管T1で接続されている。配管T1は、伝熱タンク14Bと接続される配管T1A、第2メイン吸着器16に接続される配管T1Bに分岐されており、配管T1AにはバルブV2が設けられており、配管T1BにはバルブV1が設けられている。バルブV1、V2は、制御部72と接続されており(図2参照)、制御部72によって開閉が制御されている。バルブV1、V2を開放することにより、高温蒸発器13から第1メイン吸着器14の伝熱タンク14B、第2メイン吸着器16の伝熱タンク16Bへの熱媒(気相状態)の移動が可能となる。
【0042】
第1メイン吸着器14の吸着材空間14R、及び、第2メイン吸着器16の吸着材空間16Rは、配管24を介して再生アシスト吸着器18の吸着材18Aが収容されている空間(以下、この空間を「吸着材空間18R」という)と接続されている。配管24は、一端が吸着材空間18Rに接続されており、中間部で吸着材空間14Rに接続される配管24Aと、吸着材空間16Rに接続される配管24Bに分岐されている。配管24AにはバルブV3が設けられ、配管24BにはバルブV4が設けられ、配管24A、24Bが合流した配管24にはバルブV5が設けられている。バルブV3〜5は、制御部72と接続されており、制御部72によって開閉が制御されている。
【0043】
第1メイン吸着器14の伝熱タンク14B、及び、第2メイン吸着器16の伝熱タンク16Bは、配管T2を介して再生アシスト吸着器18の伝熱タンク18Bと接続されている。配管T2は、一端が伝熱タンク18Bに接続されており、中間部で伝熱タンク14Bに接続される配管T2Aと、伝熱タンク16Bに接続される配管T2Bに分岐されている。配管T2AにはバルブV6が設けられ、配管T2BにはバルブV7が設けられている。バルブV6、V7は、制御部72と接続されており、制御部72によって開閉が制御されている。
【0044】
配管24のバルブV3及びV4とバルブV5の間には、配管26の一端が接続されている。配管26の他端は、凝縮器20と接続されている。配管26には、バルブV8が設けられている。バルブV8は、制御部72と接続されており、制御部72によって開閉が制御されている。
【0045】
再生アシスト吸着器18の吸着材空間18Rは、配管28を介して凝縮器20と接続されている。配管28には、バルブV10が設けられている。バルブV10は、制御部72と接続されており、制御部72によって開閉が制御されている。
【0046】
再生アシスト吸着器18の伝熱タンク18Bは、配管T3を介して凝縮器20と接続されている。配管T3には、バルブV9が設けられている。バルブV9は、制御部72と接続されており(図2参照)、制御部72によって開閉が制御されている。
【0047】
本実施形態では、上記のように、蒸発器12と再生アシスト吸着器18の間に、第1メイン吸着器14と第2メイン吸着器16が並列的に配置されている。したがって、第1メイン吸着器14を冷熱生成用に用いている時に第2メイン吸着器16を再生し、第2メイン吸着器16を冷熱生成用に用いているときに第1メイン吸着器14を再生することにより、連続した冷熱生成を行うことができる。
【0048】
なお、本実施形態において、冷却部71で冷却される熱交換流体の温度は常温Tmとする。また、高温蒸発器13で生成されて送出される水蒸気の温度は60℃〜90℃程度が想定されており、この温度が吸着材14A、16Aを再生する際のメイン再生温度Thとなる。本実施形態では、常温Tmを35℃程度、冷熱温度Tlを20℃程度、メイン再生温度Thを80℃程度とする。
【0049】
ここで、第1メイン吸着器14内の吸着材14A、第2メイン吸着器16内の吸着材16Aによる熱媒の吸着と脱離について説明する。
【0050】
図3には、相対圧φ(吸着材の圧力と飽和蒸気圧の比)と吸着材の吸着量qとの関係(吸着特性)の一例を示すグラフ(吸着等温線)が示されている。吸着材による吸着量は、相対圧φによって変化するので、この相対圧φを変化させることにより、吸着材による熱媒の吸着、及び吸着材からの熱媒の脱離を行うことができる。相対圧φの変化に対応する吸着材による吸着量の差Δqが大きいほど、効率的に冷熱生成を行うことができる。
【0051】
上記の相対圧φは、温度に依存するため、熱媒を脱離させるときの温度(再生温度Th)が低いと、吸着量差Δqが小さくなる。図4には、図3の吸着特性を有する吸着材の再生温度を80℃から5℃ずつ低下させたときの吸着量差Δqをプロットしたグラフが示されている。図4に示されるように、再生温度が低下すると、吸着量差Δqが小さくなり、冷熱生成を効率よく行うことが難しい。一方、吸着材の再生に工場やその他各種の排熱を用いることが効率的な冷熱生成には求められる。
【0052】
冷熱生成モードの間、上記の特性を有する吸着材14A(または「吸着材16A」、以下、括弧内に第2メイン吸着器16に対応するものを併記している)を備えた第1メイン吸着器14の吸着材空間14R(第2メイン吸着器16の吸着材空間16R)は、蒸発器12と連通され、蒸発器12から蒸発した熱媒を吸着している。このとき、蒸発器12では冷熱生成が行われている。第1メイン吸着器14(第2メイン吸着器16)内の温度を常温Tmとし、蒸発器12内の冷熱温度を常温Tmよりも低い冷熱温度Tlとすると、第1メイン吸着器14(第2メイン吸着器16)の相対圧φ2は、式1で表わされる。
【0053】
φ2 = 温度Tlでの飽和蒸気圧/温度Tmでの飽和蒸気圧 …(式1)
【0054】
図3に示された吸着特性を有する吸着材を吸着材14A、16Aとして使用した場合、冷熱温度Tl=20℃、常温Tm=35℃で、相対圧φ2=0.4とすると、吸着材当たり(単位質量当たり)の熱媒吸着量q0a=0.3程度となる。
【0055】
また、本実施形態では、冷熱生成モードの間、第1メイン吸着器14(第2メイン吸着器16)の吸着熱による蒸気を再生アシスト吸着器18に送るため、伝熱タンク14B(伝熱タンク16B)と再生アシスト吸着器18の伝熱タンク18Bとを接続する。この時の伝熱タンク18Bの温度をアシスト再生温度Taとし、吸着材14A(吸着材16A)の吸着時の平衡温度をTbとすると、第1メイン吸着器14(第2メイン吸着器16)の吸着材14A(吸着材16A)の相対圧φ4は、式2で表わされる。
【0056】
φ4 = 温度Taでの飽和蒸気圧/平衡温度Tbでの飽和蒸気圧 …(式2)
【0057】
図3に示された吸着特性を有する吸着材を吸着材14A、16Aとして使用した場合、再生アシスト温度Ta=45℃、平衡温度Tb=70℃で、相対圧φ4=0.3とすると、吸着材当たりの熱媒吸着量q0b=0.2程度となる。
【0058】
吸着材14A、16Aが吸着した熱媒を脱離する動作を再生といい、本実施形態では、第1再生、第2再生の2段階で再生が行われる。第1再生では、第1メイン吸着器14の吸着材14A(第2メイン吸着器16の吸着材16A)は凝縮器20と連通される。また、第1メイン吸着器14の伝熱タンク14B(第2メイン吸着器16の伝熱タンク16B)は高温蒸発器13と連通される。このとき、第1メイン吸着器14(第2メイン吸着器16)内の温度を再生温度Thとし、凝縮器20内の温度を常温Tmとすると、第1メイン吸着器14(第2メイン吸着器16)の相対圧φ1は、式3で表わされる。
【0059】
φ1 = 温度Tmでの飽和蒸気圧/温度Thでの飽和蒸気圧 …(式3)
【0060】
図3に示される吸着特性を有する吸着材を吸着材14A、16Aとして使用した場合、再生温度Th=80℃、常温Tm=35℃で、相対圧φ1=0.1とすると、吸着材当たりの熱媒吸着量q1=0.08程度となる。相対圧φ2で吸着を行った吸着材14A、16Aからは、q0aとq1の差分Δq1a=0.22の熱媒が脱離される。
【0061】
第2再生では、第1メイン吸着器14の吸着材14A(第2メイン吸着器16の吸着材16A)が再生アシスト吸着器18のアシスト吸着材18Aと連通される。このとき、第1メイン吸着器14(第2メイン吸着器16)内の温度は再生温度Thであり、再生アシスト吸着器18内の温度は常温Tmである。この時の第1メイン吸着器14(第2メイン吸着器16)の相対圧φ5は、式4で表わされる。
【0062】
φ5=温度Tmでの再生アシスト吸着器の平衡圧力/温度Thでの飽和蒸気圧…式4)
【0063】
ここで、再生アシスト吸着器18内の温度は常温Tmであり、飽和蒸気圧は凝縮器20における飽和蒸気圧と同じである。同じ常温Tm下では、アシスト吸着材18Aにより、再生アシスト吸着器18内の平衡圧力は常温Tmでの飽和蒸気圧よりも低くなる。したがって、相対圧φ5は、相対圧φ1よりも小さくなる。図3に示される吸着特性を有する吸着材を吸着材14A、16Aとして使用した場合、相対圧φ5=0.05とすると、吸着材当たりの熱媒吸着量q2=0.05程度となり、吸着材14A、16Aからは、q1とq2の差分Δq2=0.03程度の熱媒がさらに脱離される。
【0064】
以上のように、冷熱生成時には多くの熱媒を吸着し、再生時には吸着した熱媒をできるだけ多く脱離させることにより、効率のよい冷熱生成を行うことができる。すなわち、冷熱生成時における吸着材による吸着量q0と、再生時における吸着材の吸着量q2の差Δq0=Δq1a+Δq2が大きいほど、効率的に冷熱生成を行うことができる。
【0065】
次に、再生アシスト吸着器18内のアシスト吸着材18Aによる熱媒の吸着及び脱離(アシスト再生)について説明する。
【0066】
アシスト吸着材18Aから熱媒を脱離させるアシスト再生は、第1メイン吸着器14(第2メイン吸着器16)の第1再生時に行われる。このとき、伝熱タンク14B(伝熱タンク16B)から再生アシスト吸着器18内の伝熱タンク18Bに供給された熱媒の蒸気が凝縮されて液相になるときの凝縮熱により再生アシスト吸着器18内が加熱され、再生アシスト吸着器18内はアシスト再生温度Taとなる。再生アシスト吸着器18(アシスト吸着材18A)は凝縮器20と連通状態とされる。このときの再生アシスト吸着器18の相対圧φ3は、式5で表される。
【0067】
φ3 = 温度Tmでの飽和蒸気圧/温度Taでの飽和蒸気圧 …(式5)
【0068】
図5には、相対圧とアシスト吸着材18Aの吸着量の関係(吸着特性)の一例を示すグラフ(吸着等温線)が示されている。当該吸着特性を有するアシスト吸着材18Aを使用した場合、常温Tm=35℃、アシスト再生温度Ta=45℃で、相対圧φ3=0.58とすると、吸着材当たりの熱媒吸着量q5=0.04程度となる。
【0069】
一方、アシスト吸着材18Aは、第1メイン吸着器14、第2メイン吸着器16の第2再生時に、第1メイン吸着器14、第2メイン吸着器16から脱離された熱媒を吸着(アシスト吸着)する。第2再生時には、伝熱タンク18Bは、凝縮器20と接続され、再生アシスト吸着器18内の温度は常温Tmとなる。
【0070】
このとき、再生アシスト吸着器18では、熱媒の吸着が行われ、図5に示される吸着特性を有する吸着材をアシスト吸着材18Aとして使用すると、吸着量が0.35程度となるまで吸着が進む。
【0071】
上記の例では、アシスト吸着材18Aでの吸着差Δq5=0.31となる。吸着量差Δq5が大きいほど、効率よくアシスト吸着材18Aを用いることができるため、アシスト吸着材18Aとしては、相対圧φ3から0.1〜0.2程度高い相対圧で大きな吸着量差を有するもの(立ち上がり傾斜の大きいもの)を選択することが好ましい。
【0072】
次に、本実施形態の吸着式ヒートポンプ10の運転処理について説明する。吸着式ヒートポンプ10の運転処理においては、第1メイン吸着器14及び第2メイン吸着器16の一方の冷熱生成モード時に、他方が第1再生モード、第2再生モードになり、冷熱生成モードと第1再生モード、第2再生モードとが交互に繰り返されて、連続した冷熱生成が行われる。以下、第1メイン吸着器14の冷熱生成モードを冷熱生成第1モード、第2メイン吸着器16の冷熱生成モードを冷熱生成第2モードという。また、第1メイン吸着器14の第1再生モード、第2再生モードを第1再生第1モード、第2再生第1モードといい、第2メイン吸着器16の第1再生モード、第2再生モードを第1再生第2モード、第2再生第2モードという。
【0073】
吸着式ヒートポンプ運転処理は、制御部72によって実行される。ユーザーから制御部72へ処理開始指示が入力されると、図6に示す吸着式ヒートポンプ運転処理が実行される。
【0074】
まず、ステップS10において、第1冷熱生成モードの開始が指示される。第1冷熱生成モードの開始は、図7に示されるように、ステップS12でバルブV2、V3、V12を閉鎖させ、ステップS14でバルブV6、V11を開放させる指示により行われる。これにより、蒸発器12と第1メイン吸着器14の吸着材空間14Rとが接続される。蒸発器12では熱媒が蒸発し、蒸発した熱媒が配管22、22Aを経由して第1メイン吸着器14へ移動し、吸着材14Aで吸着される。このとき、蒸発器12内の温度は、冷熱温度Tlである。また、第1メイン吸着器14の伝熱タンク14Bは再生アシスト吸着器18の伝熱タンク18Bと接続され、吸着材14Aの吸着熱により加熱されて伝熱タンク14B内の蒸気が再生アシスト吸着器18の伝熱タンク18Bへ送出される。第1メイン吸着器14内の温度は、アシスト再生温度Taである。吸着材14Aは、相対圧φ4で熱媒を吸着する(図13(A)参照)。
【0075】
次に、ステップS20において、第1再生第2モードの開始が指示される。第1再生第2モードの開始は、図8に示されるように、ステップS22でバルブV5、V7を閉鎖させ、ステップS24でバルブV1、V4、V8を開放させる指示により行われる。これにより、高温蒸発器13と第2メイン吸着器16の伝熱タンク16Bが接続され、高温蒸発器13からの蒸気が凝縮し、第2メイン吸着器16内の温度はメイン再生温度Thとなる。また、第2メイン吸着器16の吸着材空間16Rは凝縮器20と接続され、吸着材16Aが相対圧φ1で再生される。
【0076】
次に、ステップS30において、アシスト再生の開始が指示される。アシスト再生の開始は、図9に示されるように、ステップS32でバルブV9を閉鎖させ、ステップS34でバルブV10を開放させる指示により行われる。再生アシスト吸着器18の伝熱タンク18Bには、第1メイン吸着器14の伝熱タンク14Bから蒸気が送られ、当該蒸気が凝縮し、再生アシスト吸着器18内の温度はアシスト再生温度Taとなる。また、再生アシスト吸着器18のアシスト吸着材18Aは、凝縮器20(常温Tm)と連通され、アシスト吸着材18Aが相対圧φ3で再生される。
【0077】
次に、ステップS38(図6参照)で所定時間T1が経過したかどうかを判断する。ここでの所定時間T1は、第2メイン吸着器16の吸着材16A及び再生アシスト吸着器18のアシスト吸着材18Aの再生にかける時間であり、各々の相対圧で吸着材16A、アシスト吸着材18Aを十分再生させることのできる時間を確保することが好ましい。所定時間T1が経過すると、ステップS40に進む。
【0078】
ステップS40において、第2再生第2モードの開始が指示される。第2再生第2モードの開始は、図10に示されるように、ステップS42でバルブV8、V10を閉鎖させ、ステップS44でバルブV5、V9を開放させる指示により行われる。これにより、第2メイン吸着器16の吸着材空間16Rは再生アシスト吸着器18の吸着材空間18Rと連通される。第2メイン吸着器16内は再生温度Thが維持される。一方、再生アシスト吸着器18内の温度は、伝熱タンク18Bに貯留された液相の熱媒が蒸発して冷却され、凝縮器20内と同じ常温Tmとなり、第2メイン吸着器16の吸着材16Aは相対圧φ5で再生される。このとき、再生アシスト吸着器18のアシスト吸着材18Aは、第2メイン吸着器16からの熱媒を吸着する(図13(B)参照)。
【0079】
次に、ステップS48(図6参照)で所定時間T2が経過したかどうかを判断する。ここでの所定時間T2は、第2メイン吸着器16の吸着材16Aが相対圧φ5で十分に再生することができる時間を確保することが好ましい。所定時間T2が経過すると、ステップS50に進む。
【0080】
ステップS50では、第2冷熱生成モードの開始が指示される。第2冷熱生成モードの開始は、図11に示されるように、ステップS52でバルブV1、V4、V11を閉鎖させ、ステップS54でバルブV7、V12を開放させる指示により行われる。これにより、蒸発器12と第2メイン吸着器16の吸着材空間16Rとが接続される。蒸発器12では熱媒が蒸発し、蒸発した熱媒が配管22、22Bを経由して第2メイン吸着器16へ移動し、吸着材16Aで吸着される。このとき、蒸発器12内の温度は、冷熱温度Tlである。また、第2メイン吸着器16の伝熱タンク16Bは再生アシスト吸着器18の伝熱タンク18Bと接続され、吸着材16Aの吸着熱により加熱されて伝熱タンク16B内の蒸気が再生アシスト吸着器18の伝熱タンク18Bへ送出される。第2メイン吸着器16内の温度は、アシスト再生温度Taである。吸着材16Aは、相対圧φ4で熱媒を吸着する(図14(A)参照)。
【0081】
次に、ステップS60において、第1再生第1モードの開始が指示される。第1再生第1モードの開始は、図12に示されるように、ステップS62でバルブV5、V6を閉鎖させ、ステップS64でバルブV3、V8を開放させる指示により行われる。これにより、第1メイン吸着器14内の温度はメイン再生温度Thとなり、凝縮器20(常温Tm)と連通され、吸着材14Aが相対圧φ1で再生される。
【0082】
次に、ステップS70において、アシスト再生の開始が指示される。アシスト再生の開始は、前述した図9に示される、ステップS32、S34で定義される。再生アシスト吸着器18の伝熱タンク18Bには、第2メイン吸着器16の伝熱タンク16Bから蒸気が送られ、当該蒸気が凝縮し、再生アシスト吸着器18内の温度はアシスト再生温度Taとなる。また、再生アシスト吸着器18のアシスト吸着材18Aは、凝縮器20(常温Tm)と連通され、アシスト吸着材18Aが相対圧φ3で再生される。
【0083】
次に、ステップS78(図6参照)で所定時間T3が経過したかどうかを判断する。ここでの所定時間T3は、第1メイン吸着器14の吸着材14A、再生アシスト吸着器18のアシスト吸着材18Aの再生にかける時間であり、各々の相対圧で吸着材14A、アシスト吸着材18Aを十分再生させる時間を確保することが好ましい。所定時間T3が経過すると、ステップS80に進む。
【0084】
ステップS80において、第2再生第1モードの開始が指示される。第2再生第1モードの開始は、図10に示される、ステップS42、S44で定義される。これにより、第1メイン吸着器14の吸着材空間14Rは再生アシスト吸着器18の吸着材空間18Rと連通される。第1メイン吸着器14内は再生温度Thが維持される。一方、再生アシスト吸着器18内の温度は、伝熱タンク18Bに貯留された液相の熱媒が蒸発して冷却され、凝縮器20内と同じ常温Tmとなり、第1メイン吸着器14の吸着材14Aは相対圧φ5で再生される。このとき、再生アシスト吸着器18のアシスト吸着材18Aは、第1メイン吸着器14からの熱媒を吸着する(図14(B)参照)。
【0085】
次に、ステップS88(図6参照)で所定時間T4が経過したかどうかを判断する。ここでの所定時間T2は、相対圧φ5で第1メイン吸着器14の吸着材14Aを十分再生させる時間を確保することが好ましい。所定時間T4が経過すると、ステップS10に戻り、以下の処理を繰り返す。
【0086】
以上のように、吸着式ヒートポンプ運転が行われることにより、連続して冷熱生成することができる。
【0087】
本実施形態の吸着式ヒートポンプ10では、第1メイン吸着器14、第2メイン吸着器16を再生アシスト吸着器と連通させて第2再生を行うので、相対圧φ3を第1再生時の相対圧φ4よりも小さくすることができる。したがって、吸着材14A、16Aからより多くの熱媒を脱離させることができ、効率よく冷熱生成を行うことができる。
【0088】
また、本実施形態の吸着式ヒートポンプ10では、第1メイン吸着器14、第2メイン吸着器16の第2再生は、第1再生の後に行われる。したがって、第1メイン吸着器14、第2メイン吸着器16の再生のすべてを再生アシスト吸着器18で行う必要がない。これにより、再生アシスト吸着器18に求められる吸着量を少なくすることができ、再生アシスト吸着器18を小容量のもので、第1メイン吸着器14、第2メイン吸着器16の再生を補助することができる。
【0089】
また、本実施形態の吸着式ヒートポンプ10では、第1メイン吸着器14、第2メイン吸着器16の吸着熱を再生アシスト吸着器18の吸着材18Aを再生する際の熱源として利用するので、熱源を別途必要とせず、アシスト再生用の、熱源を少なくすることができる。
【0090】
また、本実施形態の吸着式ヒートポンプ10では、再生アシスト吸着器18の再生(アシスト再生)が、第1メイン吸着器14、第2メイン吸着器16の第1再生時に行われる。したがって、一方のメイン吸着器(第1メイン吸着器14、第2メイン吸着器16の一方)が第1再生された後に連続して当該メイン吸着器(第1メイン吸着器14、第2メイン吸着器16の一方)の第2再生を行うことができ再生アシスト吸着器18の再生を時間ロスをなくして効率よく行うことができる。また、2個のメイン吸着器(第1メイン吸着器14、第2メイン吸着器16)を1個の再生アシスト吸着器18で第2再生することができる。
【0091】
また、本実施形態の吸着式ヒートポンプ10では、2個のメイン吸着器(第1メイン吸着器14、第2メイン吸着器16)を用い、一方での冷熱処理と他方での再生を交互に行うことで、連続した冷熱生成を行うことができる。
【0092】
また、本実施形態の吸着式ヒートポンプ10では、第1メイン吸着器14、第2メイン吸着器16、及び再生アシスト吸着器18が凝縮器20と接続され、凝縮器20が蒸発器12、高温蒸発器13と接続されているので、各々からの蒸気を凝縮器20で凝縮させて、蒸発器12、高温蒸発器13へ送ることができる。
【0093】
なお、本実施形態の吸着式ヒートポンプ10は、第1メイン吸着器14と第2メイン吸着器16の2個のメイン吸着器を備えたが、連続運転しない場合には、1個のメイン吸着器(例えば、第1メイン吸着器14)のみを備えるものであってもよい。この場合には、1個のメイン吸着器で冷熱生成、第1再生、第2再生を繰り返す。この場合、冷熱生成モード時に第1メイン吸着器14からの吸着熱により再生アシスト吸着器18のアシスト吸着材18Aが再生される。この場合でも、第1メイン吸着器14を再生アシスト吸着器と連通させて第2再生を行うので、相対圧φ5を第1再生時の相対圧φ1よりも小さくすることができ、吸着材14A(16A)からより多くの熱媒を脱離させることができ、効率よく冷熱生成を行うことができる。また、第1メイン吸着器14(または第2メイン吸着器16)の第2再生は、第1再生の後に行われる。したがって、第1メイン吸着器14(または第2メイン吸着器16)の再生のすべてを再生アシスト吸着器18で行う必要がなく、比較的小容量の再生アシスト吸着器18を効率的に使用することができる。
【0094】
さらに、再生アシスト吸着器18の再生の際の熱源として、第1メイン吸着器14(第2メイン吸着器16)の吸着熱を利用するので、効率よく熱を利用することができる。また、アシスト再生用の熱源を別途必要とせず、熱源を少なくすることができる。
【0095】
なお、上記実施形態において、熱媒としては、たとえば、水やアンモニアを用いることが可能である。また、吸着材14A、16Aとしては、熱媒の吸着及び脱着が可能であれば良く、例えばシリカゲルを用いることが可能である。また、アシスト吸着材18Aとしては、シリカゲルを用いることもできるが、ゼオライト、活性炭、その他の物質を用いることもできる。
【0096】
図15には、再生アシスト吸着器18を有しない比較例としての吸着式ヒートポンプで冷熱生成を行った場合と、本実施形態の吸着式ヒートポンプ10で冷熱生成を行った場合の、メイン再生温度Th毎の吸着量差Δqを示すグラフが示されている。いずれの吸着式ヒートポンプにおいても、吸着材14A、16Aとしては図3に示す吸着特性を有するものを用い、アシスト吸着材18Aとしては、図5に示すように、相対圧φ3よりも0.1高い相対圧で大きな吸着量差を持つ吸着特性を有するものを用いた。メイン再生温度Th55℃〜80℃において、5℃ずつ変化させた場合の吸着量差Δqは、低温になるほど、本実施形態の吸着式ヒートポンプ10と比較例の吸着式ヒートポンプの吸着量差Δqの差が開いている。本実施形態の吸着式ヒートポンプ10によれば、メイン再生温度Thが55℃という低温であっても、大きな吸着量差Δqを得ることができる。
【符号の説明】
【0097】
10 吸着式ヒートポンプ
12 蒸発器
13 高温蒸発器
14 メイン吸着器
16 メイン吸着器
18 再生アシスト吸着器
20 凝縮器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15