(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
図6に光ネットワークなどのループ構成のネットワークの一例を示す。
図6において、マスタ局#0と複数のスレーブ局#1〜#7がネットワークを介してループ状に接続されている。
【0003】
図中、1Rは受信ポート、1Tは送信ポート、TXは送信データ、RXは受信データを各々示している。
【0004】
図6のように構成されたネットワークにおいて、時分割多重化方式(Time Division Multiplexer;TDM)を用いてデータ伝送を行う場合、伝送の1周期はいくつかのタイムスロットに分割される。タイムスロットは、各局が毎周期送信する個別送信スロットと、いずれかの局が非定期に使用する共有スロットとがある。
【0005】
共有スロットの使用権利はマスタ局により管理され、使用を許可された局が送信を行う。マスタ局は、個別送信スロットで送信するフレーム(同期化フレーム)の受信を基準に各局の時刻を同期させる。マスタ局は、各スロットの送信時刻をデータサイズ、伝播遅延時間を考慮して決定する。
【0006】
尚、時分割多重アクセス方式を用いたネットワークシステムにおいて、通信サイクルの始まり毎にマスタ局から全スレーブ局に同期化フレームを送信する技術は例えば特許文献1に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、共有スロットの送信位置は、例えば
図7に示すように、各局の個別送信スロット#0〜#N(例えば
図6の構成では#0〜#7)の後に固定されていた。 このように共有スロット位置が固定の場合、1周期の伝送時間が不定、又は伝播遅延時間の見込みが長くなる。
【0009】
マスタ局での同期化フレームの送信間隔(送信周期)、伝播遅延時間を含めておく必要がある。
図6のようなループ構成のネットワークでは、伝播遅延は、伝播距離に比例した伝送路による遅延と、伝送インターフェースを通過する際の遅延からなる。
【0010】
前記伝播遅延時間は、ループ構成ネットワークにおける2局間の接続を示す
図8のように、2局間の伝送路長が最大時の伝送時間Lと、伝送インターフェースの入力又は出力の通過時間Mとを含む。
【0011】
1周期の伝播遅延時間は、最後にフレーム送信を行った局とマスタ局間の局数と距離により変動する。現在の方式では共有スロット位置が固定されているため、共有スロットを使用する局により、1周期の伝送時間が変動する。そのため、伝送周期は伝播遅延が最大となる場合に合わせて決める必要がある。伝播遅延が最大となるのは、共有スロットを、マスタ局の送信側に接続された次の(隣の)局が使用する場合である。
【0012】
すなわち、たとえば
図7のサイクル(n+1)において、最後にフレーム送信を行った局(共有スロット1を使用する局)が
図6のスレーブ局#1である場合、マスタ局#0との間の局数と距離が最大となるため伝播遅延が最大となる。
【0013】
本発明は上記課題を解決するものであり、その目的は、伝播遅延時間を最小としてデータ伝送周期を最小にすることができるループ構成ネットワークにおけるデータ伝送システムおよび方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための本発明のループ構成ネットワークにおけるデータ伝送システムは、マスタ局および複数のスレーブ局間のデータ伝送を、ループ構成のネットワークを介して時分割多重化方式を用いて行うデータ伝送システムであって、伝送の1周期を分割したタイムスロットであり、前記各局が毎周期ごとに送信する個別送信スロットを、マスタ局からの伝送経路順に割り当てる機能と、伝送の1周期を分割したタイムスロットであり、非定期に送信する共有スロットの使用権要求が格納された個別送信スロットを、前記複数のスレーブ局のうち何れかのスレーブ局から受信したときに、当該共有スロットの使用許可を格納した個別送信スロットを送信する機能と、を有したマスタ局側制御部と、共有スロットを使用する場合に、共有スロットの使用権要求を行うために該使用権要求を個別送信スロットに格納して送信する機能と、前記マスタ局から共有スロットの使用許可が格納された
マスタ局の個別送信スロットを受信したときに、前記共有スロットの使用権要求を行ったスレーブ局の場合は、個別送信スロットを送信した後に共有スロットを使用した送信を行い、前記共有スロットの使用権要求を行っていないスレーブ局の場合は、前記共有スロット
の使用権要求を行ったスレーブ局(使用許可が格納された
マスタ局の個別送信スロット
に記載されている局)よりも後の伝送経路順位に割り当てられている個別送信スロットの送信を、前記共有スロットの占有時間分遅らせる機能と、を有したスレーブ局側制御部と、を備えたことを特徴としている。
【0015】
また本発明のループ構成ネットワークにおけるデータ伝送方法は、マスタ局および複数のスレーブ局間のデータ伝送を、ループ構成のネットワークを介して時分割多重化方式を用いて行うシステムにおけるデータ伝送方法であって、マスタ局側制御部が、伝送の1周期を分割したタイムスロットであり、前記各局が毎周期ごとに送信する個別送信スロットを、マスタ局からの伝送経路順に割り当てるステップと、スレーブ局側制御部が、伝送の1周期を分割したタイムスロットであり、非定期に送信する共有スロットを使用する場合に、共有スロットの使用権要求を行うために該使用権要求を個別送信スロットに格納して送信するステップと、マスタ局側制御部が、前記複数のスレーブ局のうち何れかのスレーブ局から、共有スロットの使用権要求が格納された個別送信スロットを受信したときに、当該共有スロットの使用許可を格納した個別送信スロットを送信するステップと、前記共有スロットの使用権要求を行ったスレーブ局側制御部が、前記マスタ局から共有スロットの使用許可が格納された
マスタ局の個別送信スロットを受信したときに、個別送信スロットを送信した後に共有スロットを使用した送信を行うステップと、前記共有スロットの使用権要求を行っていないスレーブ局側制御部が、前記マスタ局から共有スロットの使用許可が格納された
マスタ局の個別送信スロットを受信したときに、前記共有スロット
の使用権要求を行ったスレーブ局(使用許可が格納された
マスタ局の個別送信スロット
に記載されている局)よりも後の伝送経路順位に割り当てられている個別送信スロットの送信を、前記共有スロットの占有時間分遅らせるステップと、を備えたことを特徴としている。
【0016】
上記構成によれば、個別送信スロットをマスタ局から経路順に割り当て、共有スロットを、使用権を得たスレーブ局の個別送信スロットの後に挿入して送信するようにしたので、1周期の最後の送信が必ず経路順最後のスレーブ局となり、経路順最後のスレーブ局からマスタ局への伝播遅延時間は最小であるため、伝送周期を最小にすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、伝播遅延時間を最小とし、データ伝送周期を最小にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態例における1周期を分割したタイムスロットを表し、共有スロットを使用する場合の説明図。
【
図2】本発明の実施形態例における1周期を分割したタイムスロットを表し、共有スロット未使用の場合の説明図。
【
図3】タイムスロットでの送信フレームの伝送時間と伝搬遅延を説明するための、3局のループ構成のネットワークを示す構成図。
【
図4】本発明の実施形態例の、1つの共有スロットを使用する場合の各サイクルにおけるタイムスロットの説明図。
【
図5】本発明の実施形態例の、2つの共有スロットを使用する場合のタイムスロットの説明図。
【
図6】本発明が適用されるループ構成のネットワークの一例を示す構成図。
【
図7】1周期を分割したタイムスロットを表し、従来方式における共有スロットを使用する場合の説明図。
【
図8】ループ構成のネットワークにおける、2局間の伝送路長に基づく伝送時間と伝送インターフェースの入力又は出力の経過時間を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明するが、本発明は下記の実施形態例に限定されるものではない。本実施形態例は、
図6のようにマスタ局(#0)および複数のスレーブ局(#1〜#7)がループ構成のネットワークを介して接続され、時分割多重化方式を用いて前記各局間のデータ伝送を行うデータ伝送システムに適用したものである。
【0020】
図6において、マスタ局#0には、伝送の1周期を分割したタイムスロットであり、各局(#0〜#7)が毎周期ごとに送信する個別送信スロットを、マスタ局からの伝送経路順(
図6では#1→#2→#3→#4→#5→#6→#7)に割り当てる機能と、伝送の1周期を分割したタイムスロットであり、非定期に送信する共有スロットの使用権要求が格納された個別送信スロットを、前記複数のスレーブ局(#1〜#7)のうち何れかのスレーブ局から受信したときに、当該共有スロットの使用許可を格納した個別送信スロットを送信する機能と、を有したマスタ局側制御部(図示省略)が設けられている。
【0021】
スレーブ局#1〜#7には、共有スロットを使用する場合に、共有スロットの使用権要求を行うために該使用権要求を個別送信スロットに格納して送信する機能と、マスタ局#0から共有スロットの使用許可が格納された個別送信スロットを受信したときに、前記共有スロットの使用権要求を行ったスレーブ局の場合は、個別送信スロットを送信した後に共有スロットを使用した送信を行い、前記共有スロットの使用権要求を行っていないスレーブ局の場合は、前記共有スロットの使用許可が格納された個別送信スロットよりも後の伝送経路順位に割り当てられている個別送信スロットの送信を、前記共有スロットの占有時間分遅らせる機能と、を有したスレーブ局側制御部(図示省略)が各々設けられている。
【0022】
マスタ局側制御部は、各局が毎周期送信する個別送信スロットをマスタ局#0からの経路順に割り当てる。個別送信スロットのサイズは各局毎に固定サイズとする。従来と同様にマスタ局#0の基準フレームの受信を基準にスレーブ局#1〜#7の送信時刻を決める。
【0023】
共有スロットの使用権の要求は、スレーブ局#1〜#7の個別送信で行う。共有スロットの使用許可は、マスタ局#0の個別送信で行う。共有スロットは、
図1に示すように使用許可を得た局の個別送信スロットの後に挿入する。
図1ではスレーブ局#1の個別送信スロットの後にスレーブ局#1が共有スロット0を使用した送信を行う。共有スロットを使用しない場合は、共有スロットは、
図2のように最後のスレーブ局#Nの個別送信スロットの後にあるものとする。
【0024】
図1のように共有スロット0の使用が許可されている場合、使用が許可された局(#1)より経路順が後の局(#2〜#N)は、送信開始時刻を共有スロット0の占有時間分遅らせる。これにより、最後に送信を行う局が、必ず経路順が最後の局(#N)となり、1周期の伝播遅延を最小にすることができる。
【0025】
ここで、タイムスロットでの送信フレームの伝送時間と伝播遅延について
図3とともに説明する。
【0026】
タイムスロットのサイズ(伝送路の占有時間)は、そのスロットでの送信フレームの最大サイズの伝送時間と、伝播遅延を合わせた時間となる。伝送路による伝播遅延は、局間の最大伝送路長か、1周の最大伝送路長により決まる。送信順序が経路順であれば、伝播遅延は局間の最大伝送路長となり、伝送インターフェースを通過する際の遅延は2局分となり、最小のタイムスロットサイズとなる。
【0027】
図3は3局のループ構成のネットワークを示し、各局(n=1、2、3)の送信フレームの伝送時間をFn、2局間の伝送路長が最大時の伝送時間をL、伝送インターフェースの入力又は出力の経過時間をMとする。送信は局番号(#1、#2、#3)順に行うものとする。
【0028】
#1、#2、#3のように局番号順に接続されている場合、1周期つまり#1局の送信開始から、#3局の送信フレームが#1局に届くまでの時間は以下のようになる。
【0029】
各局は、前の局のフレームが受信完了すれば、自局の送信ができるので、
#2での#1の受信完了 F1+L+2M
#3での#2の受信完了 +F2+L+2M
#1での#3の受信完了 +F3+L+2M
1周期の時間 (F1+F2+F3)+3×(L+2M)
となる。
【0030】
したがって、前記のように経路順の送信(局番号#1、#2、#3の順の送信)が保証される場合、各タイムスロットでの伝送遅延は{3×(L+2M)}/3=L+2Mでよい。
【0031】
これに対して局番号順ではなく、例えば#1、#3、#2の順に接続されている場合は、
#2での#1の受信完了 F1+(L+2M)×2
#3での#2の受信完了 +F2+(L+2M)×2
#1での#3の受信完了 +F3+(L+2M)×2
1周期の時間 (F1+F2+F3)+6×(L+2M)
となる。
【0032】
局数が増え、経路順の送信が保証されない場合、各タイムスロットでの伝送遅延を、(局数−1)×(L+2M)で見積もる必要がある(1周の最大伝送路長Laが設定されている場合は、La+(局数−1)×2Mでもよい)。
【0033】
次に、個別送信スロット数がNで、共有スロット数が2の場合のマスタ局側制御部およびスレーブ局側制御部が行う共有スロットの使用手順を
図4、
図5を用いて説明する。
図4において、個別送信スロット#0(マスタ局)の右下の2つの枠は、2つの共有スロットの使用許可されている個別送信スロット番号を示す。マスタ局以外の個別送信スロット#nの右下の1つの枠は、共有スロットの使用権の要求を示す。共有スロットの右下の枠は、使用している個別送信スロット番号を示す。
【0034】
(1)サイクル(n−1)において、タイムスロットは個別送信スロット#0〜#N、共有スロット0、1(未使用)の順となっている。
【0035】
(2)個別送信スロット#1を使用するスレーブ局が共有スロットを使用したい場合、サイクル(n)の個別送信スロット#1の送信で、使用権の要求を格納する。
【0036】
(3)使用権の要求が格納された個別スロット#1を受信したマスタ局は、サイクル(n+1)のマスタ局の個別送信スロット#0の送信で、共有スロット0の使用許可を、個別送信スロット#1を使用するスレーブ局に与える。
【0037】
(4)サイクル(n+1)において、共有スロット0の使用許可が格納された個別送信スロット#0を受信した、個別送信スロット#1を使用するスレーブ局は、個別送信スロット#1での送信後、共有スロット0を使用した送信を行う。
【0038】
(5)サイクル(n+1)の使用許可が格納された個別送信スロット#0を受信した各スレーブ局は、使用許可された個別送信スロット番号が、自局の使用する個別送信スロット番号より小さい場合、共有スロットの占有時間分、個別送信スロットの送信開始時刻を遅らせる(個別送信スロット#1よりも後の伝送経路順位に割り当てられている個別送信スロット#2〜#Nの送信を、共有スロット0の占有時間分遅らせる)。
【0039】
(6)サイクル(n+2)では、サイクル(n−1)、サイクル(n)と同様の送信順となっている。
【0040】
また、マスタ局が2つの共有スロットを使用許可している場合のタイムスロットの送信順は
図5となる。自局の使用する個別送信スロット番号より小さい、使用許可された個別送信スロット番号が複数ある場合、その数分の共有スロットのタイムスロット占有時間分、個別送信スロットの送信開始時刻を遅らせる。
【0041】
(1)個別送信スロット#1、#2を使用するスレーブ局が共有スロットを使用したい場合、
図4のサイクル(n)の場合と同様に、個別送信スロット#1、#2の送信で、各々使用権の要求を格納する。
【0042】
(2)使用権の要求が格納された個別スロット#1、#2を受信したマスタ局は、
図4のサイクル(n+1)の場合と同様に、マスタ局の個別送信スロット#0の送信で、共有スロット0の使用許可を、個別送信スロット#1を使用するスレーブ局に与え、共有スロット1の使用許可を、個別送信スロット#2を使用するスレーブ局に与える(
図5のサイクル(n+x))。
【0043】
(3)
図5のサイクル(n+x)において、共有スロット0、1の使用許可が格納された個別送信スロット#0を受信した、個別送信スロット#1を使用するスレーブ局は、個別送信スロット#1での送信後、共有スロット0を使用した送信を行い、その後個別送信スロット#2を使用するスレーブ局は、個別送信スロット#2での送信後、共有スロット1を使用した送信を行う。
【0044】
(4)サイクル(n+x)の使用許可が格納された個別送信スロット#0を受信した各スレーブ局は、使用許可された個別送信スロット番号が、自局の使用する個別送信スロット番号より小さい場合、共有スロットの占有時間分、個別送信スロットの送信開始時刻を遅らせる(個別送信スロット#2よりも後の伝送経路順位に割り当てられている個別送信スロット#3〜#Nの送信を、共有スロット0と1の占有時間分遅らせる)。
【0045】
上記
図4、
図5の共有スロット使用時におけるマスタ局側制御部とスレーブ局側制御部の処理をまとめると、以下のとおりである。
【0046】
<マスタ局側制御部>
1.受信した、スレーブ局が送信した個別送信スロット#nのデータ中に共有スロットの使用権の要求があれば、個別送信スロット番号を使用権の要求リストに追加する。
【0047】
2.マスタ局の個別送信スロットでの送信データ作成時に、共有スロットの使用権の要求リストから、共有スロット数までの局に使用許可を与える。
【0048】
<スレーブ局側制御部>
1.共有スロットを使用したい場合、自局の個別送信スロット#nの送信に使用権の要求を格納する。
【0049】
2.受信したマスタ局の個別送信スロット#0の送信データ中に、自局への共有スロット使用許可があれば、そのサイクル中の自局の個別送信スロット#nの送信後、共有スロットで送信を行う。
【0050】
3.受信したマスタ局の個別送信スロット#0の送信データ中に、自局番号より小さい局番号の局への使用許可があれば、そのサイクル中の自局の個別送信スロット#nの送信開始時刻を、共有スロットのタイムスロット占有時間分遅らせる。