(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
《第1実施形態》
本発明の実施形態に係る電源装置を説明する。電源装置は、例えば車両に設けられており、車載バッテリの電力を変換する装置として用いられる。なお、以下では、電源装置の例として、電力変換装置を挙げた上で、実施形態を説明する。電源装置は、電力変換装置に限らず、高周波のノイズを発生する回路を含んだ装置であればよい。また電源装置は、車両に限らず、他の装置又はシステムに設けられていてもよい。
【0011】
図1は電力変換装置の斜視図である。
図2は、
図1のII-II線に沿う断面図である。電力変換装置1は、電源回路10、絶縁部20、冷却部30、導電部40、筐体50、及び支持部60を備えている。なお、
図1について、電源回路10、絶縁部20、及び冷却部30は筐体50に収容されているため、外側から見えないが、説明のために図示している。以下、他の実施形態で示す斜視図についても、同様である。
【0012】
電源回路10は、高周波のノイズを発生するスイッチング回路である。電源回路は、筐体50の内部に設けられており、パワーモジュールを有している。パワーモジュールは、IGBT等のパワー半導体素子(スイッチング素子)をモジュール化した部材である。パワー半導体素子は、制御回路から送信されるスイッチング信号により、スイッチのオン、オフを切り替える。そして、パワー半導体素子のオン、オフが切り替わることで、パワーモジュールは、入力電力を変換している。
【0013】
電源回路10の一例として、インバータが用いられる。電力変換装置1を車両の駆動システムに適用した場合に、インバータの入力側には、直流電源を供給するためのバッテリが接続される。インバータの出力側には、インバータの出力電力により回転力を得るモータが接続されている。インバータは、スイッチ群を有している。スイッチ群は、モジュール化されたパワー半導体素子により構成されたスイッチと制御回路を有している。そして、スイッチ群に含まれるスイッチのオン、オフが切り替わり、電力が変換される。このとき、スイッチ群に含まれるスイッチのオン、オフに伴い、パワーモジュールはノイズを発生する。なお、電源回路10は、インバータに限らず、例えばコンバータ(非絶縁型の昇圧回路)、絶縁側コンバータ等でもよい。また電源回路10は直方体になるように形成されている。
【0014】
絶縁部20は、電源回路10と冷却部30との間に設けられており、電源回路10と冷却部30との間を絶縁するための部材である。絶縁部20には、例えば絶縁シートが用いられ、絶縁シートは電源回路10と冷却部30との間に狭持されている。
【0015】
冷却部30は電源回路10を冷却するための冷却器である。冷却部30には例えばヒートシンクが用いられる。冷却部30は金属等の導電性の材料により形成されている。電源回路10内のパワーモジュールは、回路内の損失箇所で熱を発生する。冷却部30は、パワーモジュールの損失箇所で発生する熱を冷却している。冷却部30は直方体になるように形成されている。冷却部30の長手方向がy方向になる。そして、冷却部30の表面のうち、長手方向に沿う表面が、電源回路10を載置する面(
図1のyz面)となる。そして、電源回路10と絶縁部20との接着面と、絶縁部20と冷却部30との接続面が、yz面と平行になるように、電源回路10、絶縁部20、及び冷却部30が配置されている。
【0016】
導電部40はボルト等の締結部材により構成されており、冷却部30と筐体50とを接続するための部材である。導電部40は、軸部41と頭部42を有している。筒状の軸部41の側面には、溝(雄ネジ)が設けられている。冷却部30、筐体50、及び支持部60には、挿入孔が設けられている。挿入孔は、軸部41を挿入するための孔であり、挿入孔の表面には、溝(雌ねじ)が設けられている。そして、軸部41が挿入孔に挿入されると、冷却部30、支持部60及び筐体50が、導電部40により締結される。これにより、導電部40は、冷却部30を筐体50に固定する。なお、導電部40は締結部材に限らず、冷却部30と筐体50との間で支持部60を狭持しつつ、冷却部30を筐体50に固定する構成であればよい。
【0017】
導電部40は、導電性をもつ部材である。そのため、冷却部30が導電部40により筐体50に固定されると、冷却部30と筐体50との間が電気的に接続される。また軸部41の軸心の方向(
図2のX方向)が、漏れ電流の導通方向となる向きで、導電部40は冷却部30及び筐体50に挿入されている。漏れ電流は、電源回路10から冷却部30に向かって流れる電流である。電源回路10で発生する高周波ノイズは、絶縁部20を介して、冷却部30に流れる。このとき、冷却部30に流れる電流が、漏れ電流となる。本実施形態では、電源回路10は
図1、2のX軸に沿う方向で、冷却部30の上部に配置されているため、漏れ電流の導通方向は、X軸に沿う方向となる。なお、
図2では、冷却部30と筐体50が2つの導電部40により接続されているが、導電部40は2つに限らず、3つ以上であってもよい。
【0018】
筐体50は、電源回路10、絶縁部20、冷却部30、及び支持部60を収容している。筐体50は、金属等で形成されており、導電性を有している。また筐体50は、直方体の形状になるように形成されている。
【0019】
支持部60は、冷却部30が筐体50に接触しない状態で、冷却部30を支える部材である。支持部60は、冷却部30と筐体50との間に配置されている。支持部60は、比誘電率が空気より大きい誘電体により形成されている。支持部60は冷却部30の対向面と筐体50の対向面に沿うように、板状に形成されている。冷却部30の対向面は、直方体状の冷却部30の面のうち、筐体50と対向する面である。筐体50の対向面は、筐体50の内側の面であって、冷却部30の底面と対向する面である。
【0020】
次に、電力変換装置の各構成の接続状態と、冷却部30と筐体50との間に形成される並列共振回路について、
図3を用いて説明する。
図3は、電力変換装置の各構成の接続状態を説明するための回路図である。
【0021】
電源回路10と冷却部30との間は、絶縁部20により絶縁されているが、電源回路10と冷却部30との間には容量成分が形成されている。そのため、電源回路10で発生したノイズは、電源回路10と冷却部30との間の結合容量を介して冷却部30に伝搬する。
【0022】
冷却部30と筐体50との間には、容量成分(Ca)と誘導成分(La)とを並列に接続したLC共振回路が形成される。冷却部30と筐体50との間には、支持部60を配置しており、支持部60は、比誘電率が空気より大きい誘電体である。そのため、冷却部30と筐体50の間が容量結合され、冷却部30と筐体50との間には容量成分(Ca)が形成される。誘導成分(La)は、導電部40の有するインダクタンスである。
【0023】
LC共振回路のインピーダンスZとすると、インピーダンスは下記式(1)で表される。
【0024】
【数1】
ただし、ωは角周波数であって、ω=2πf
rで表される。f
rはLC共振回路の共振周波数である。
【0025】
式(1)より、LC共振回路の共振周波数は、下記式(2)で表される。
【数2】
【0026】
LC共振回路のインピーダンス特性は
図4のグラフで表される。
図4はインピーダンス特性を示すグラフであり、横軸は周波数を示し、縦軸はインピーダンスの大きさを示す。
【0027】
図4に示すように、LC共振回路のインピーダンスは、共振周波数(f
r)で最も高くなり、共振周波数(f
r)を中心とした特定の周波数帯域で高くなる。そのため、漏れ電流の周波数が、共振周波数(f
r)を中心とした特定の周波数帯域に含まれる場合には、冷却部30と筐体50との間のインピーダンスが高くなるため、漏れ電流が筐体50に流れ難くなる。式(2)に示すように、共振周波数(f
r)は容量成分(Ca)と誘導成分(La)により設定され、容量成分(Ca)と誘導成分(La)は、冷却部30、導電部40、筐体50、及び支持部60の各種パラメータから導出できる。
【0028】
ここで、誘導成分(La)と容量成分(Ca)を導出するためのパラメータについて、
図5及び
図6を用いて説明する。
図5は導電部40の斜視図を示し、
図6は冷却部30、支持部60及び筐体50の斜視図を示す。
【0029】
説明を容易にするために、導電部40が、
図5に示すような直方体状の導体で構成されたとする。そして、誘導成分(La)を規定するためのパラメータとして、導電部40の幅をwとし、高さをHとし、長さをLとする。また、真空の透磁率をμ
0とし、非透磁率をμ
rとする。誘導成分(La)は下記式(3)で表される。
【0031】
図6に示すように、容量成分(Ca)を規定するためのパラメータとして、冷却部30の対向面の面積及び筐体50の対向面の面積をSとし、冷却部30の対向面と筐体50の対向面との間の距離をdとする。また、真空の誘電率をε
0とし、比誘電率をε
rとする。容量成分(Ca)は下記式(4)で表される。
【0033】
電源回路10で発生する高周波ノイズのうち、抑制したいノイズの周波数帯域を決定する。例えば、電力変換装置1を車両に設けた場合には、車載ラジオの干渉を防ぐために、抑制したい周波数帯域はラジオの受信帯域に設定される。そして、共振周波数(fr)が設定した周波数帯域になるように、式(1)及び式(2)により容量成分(Ca)及び誘導成分(La)が導出される。そして、導出した容量成分(Ca)及び誘導成分(La)を満たすように、式(3)及び式(4)によって、パラメータを規定する。これにより、共振周波数(fr)は、電源回路10で発生する高周波ノイズの周波数に応じて設定されている。
【0034】
例えば、抑制したいノイズの周波数帯域の中心周波数が100[MHz]とする。100[MHz]は、FMラジオの受信帯域であって、例えば国際無線障害特別委員会(CISPR)で規定するノイズ規格により、規制を求められる周波数である。導電部40の有する誘導成分(La)が10[nH]とすると、冷却部30と筐体50との間に形成される容量成分(Ca)は約25[pH]となる。支持部60の比誘電率、冷却部30と筐体50が対向する面積(S)、及び、冷却部30と筐体50との間の距離(d)は、容量成分(Ca)は約25[pH]となるように、設計されることで、共振周波数(fr)が100[MHz]となる。これにより、100[MHz]を中心とした特定の周波数帯域において、漏れ電流が冷却部30から筐体50に流れることを防ぐ。その結果として、スイッチング回路で発生したノイズの筐体50への伝搬を抑制できる。
【0035】
また、冷却部30が、導電部40により筐体50に接続されている。冷却部30から筐体50までの熱の伝導経路が金属でつながるため、当該伝導経路の熱抵抗が小さい。これにより、電力変換装置1は、冷却性能も維持できる。
【0036】
図7は、60MHzから140MHzまでの周波数帯域におけるノイズ特性を示すグラフである。
図7の横軸は周波数とし、縦軸はノイズの大きさをdBで表示している。グラフaは、導電部40及び支持部60を設けない場合の特性を示し、グラフbは導電部40及び支持部60を設けた場合の特性を示す。
図7に示すように、冷却部30から筐体50に流れる漏れ電流を24dB以上、低減できる。
【0037】
上記のように本実施形態では、比誘電率が空気より大きい誘電体で支持部60を形成し、当該支持部60を冷却部30と筐体50との間に配置する。そして、冷却部30と筐体50との間に、並列共振回路が形成されている。これにより、所望の周波数帯域でインピーダンスを高めることができるため、冷却性能を維持しつつ、電源回路10で発生したノイズが冷却部30から筐体50へ漏洩することを抑制できる。
【0038】
また本実施形態において、並列共振回路の共振周波数が電源回路10で発生するノイズの周波数に応じて設定されている。これにより、高周波ノイズのうち、電力変換装置1の外部に漏洩したくない周波数をもつノイズを、効果的に抑制できる。
【0039】
また本実施形態において、冷却部30と筐体50との間に容量成分が形成され、並列共振回路は、当該容量成分と導電部40のもつ誘導成分とを並列に接続したLC共振回路である。これにより、電源回路10で発生したノイズが冷却部30から筐体50へ漏洩することを抑制できる。
【0040】
上記の電源回路10が本発明の「スイッチング回路」に相当し、支持部60が本発明の「部材」に相当する。
【0041】
《第2実施形態》
図8は、発明の他の実施形態に係る電力変換装置の断面図の一部である。
図8に示す断面は、
図2と同様に、
図1のII-II線に沿う断面に相当する。本実施形態では、上述した第1実施形態に対して、支持部の構成の一部が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、その記載を援用する。
【0042】
支持部60は、冷却部30と筐体50との間に配置されている。支持部60は、比透磁率が1より大きい誘導体により形成されている。また支持部60は、比誘電率がより大きくなるように形成されている。支持部60は、複数の導電部40に対応するように、複数設けられている。複数の支持部60のうち一方の支持部60は、一方の導電部40の軸部41の一部分を覆うように設けられている。複数の支持部60のうち他方の支持部60は、他方の導電部40の軸部41の一部分を覆うように設けられている。
【0043】
複数の支持部60の間には、隙間61が設けられている。隙間61の上面は冷却部30の底面で覆われ、隙間61の下面は筐体50の表面で覆われている。
【0044】
冷却部30と筐体50との間には、容量成分(Ca)と誘導成分(La)とを並列に接続したLC共振回路が形成される。隙間61は、導電性をもつ冷却部30及び筐体50に狭持されている。そのため、冷却部30と筐体50との間には、容量成分が形成される。また、支持部60は、比誘電率が空気より大きい誘電体としても機能するため、容量成分は支持部60を狭持する部分にも発生する。そして、容量成分(Ca)は、隙間61の部分の容量成分と、支持部60の部分の容量成分とを合わせたものとなる。誘導成分(La)は、支持部60の有するインダクタンスである。
【0045】
上記のように本実施形態では、比透磁率が1より大きい誘導体で支持部60を形成し、当該支持部60を冷却部30と筐体50との間に配置する。そして、冷却部と筐体との間に、並列共振回路が形成されている。これにより、所望の周波数帯域でインピーダンスを高めることができるため、冷却性能を維持しつつ、電源回路10で発生したノイズが冷却部30から筐体50へ漏洩することを抑制できる。
【0046】
また本実施形態において、冷却部30と筐体50との間に容量成分が形成され、並列共振回路は、当該容量成分と支持部60のもつ誘導成分とを並列に接続したLC共振回路である。これにより、電源回路10で発生したノイズが冷却部30から筐体50へ漏洩することを抑制できる。
【0047】
また本実施形態は、冷却部30と筐体50との間に隙間61を設けることで、冷却部30の下面の全体に支持部60を設けていない。そのため、並列共振回路で必要とされる容量値(Caの大きさ)を規定する際に、支持部60の厚みに加えて、支持部60を設ける部分の面積(
図6に示す面積Sに相当)により、容量値を調整することができる。
【0048】
なお、本実施形態において、支持部60は、比透磁率が1より大きい誘導体及び比誘電率がより大きい誘電体により形成されたが、支持部60は、比透磁率が1より大きい誘導体だけで形成されてもよい。
【0049】
《第3実施形態》
図9は、発明の他の実施形態に係る電力変換装置の断面図の一部である。
図10は、
図9のX-X線に沿う断面図である。
図9に示す断面は、
図2と同様に、
図1のII-II線に沿う断面に相当する。本実施形態では、上述した第1実施形態に対して、冷却部30、導電部40、支持部60の構成が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、その記載を援用する。
【0050】
冷却部30は、本体部31と複数のフィン32を備えている。本体部31は板状の部材である。複数のフィン32は、冷却部30の表面積を増やすための部材であって、本体部31の表面(底面)から筐体50に向かって延在するように、それぞれ形成されている。本体部31と複数のフィン32は、同一の金属により一体化して形成されている。
【0051】
導電部40は、1つのフィン32となるように構成されている。導電部40は、本体部31の表面から筐体50に延在するように形成されている。導電部40の一端は本体部31に接続されており、導電部40の他端は筐体50に接続されている。
図10に示すように、導電部40の内部にはスリットが設けられている。複数のスリットが設けられることで、XY平面に沿う板状の導電性の部材が複数並べられる。これにより、導電部40は、冷却部30と筐体50との間を電気的に接続しつつ、冷却部30のフィン32としての機能も発揮する。
【0052】
なお、複数のフィン32のうち、導電部40以外のフィン32は、筐体50と接続せず、フィンの32の端部は開放端になっている。
【0053】
支持部60は、導電部40を覆うように形成されている。支持部60は導電部40のスリットの間にも充填されている。支持部60は、比透磁率が1より大きい誘導体により形成されている。また、支持部60は、比誘電率が空気よりも大きくなるように形成されている。
【0054】
冷却部30と筐体50との間には、容量成分(Ca)と誘導成分(La)とを並列に接続したLC共振回路が形成される。
図10に示すように、導電部40の内部にはスリットが設けられており、スリット間には支持部60が充填されている。導電部40により支持部60を狭持している部分がキャパシタとして機能するため、容量成分(Ca)が形成される。誘導成分(La)は、支持部60の有するインダクタンスである。
【0055】
上記のように本実施形態では、導電部40は冷却部30のフィン32により構成されている。また本実施形態では、導電部40はスリットを有する。これにより、所望の周波数帯域でインピーダンスを高めることができるため、冷却性能を維持しつつ、電源回路10で発生したノイズが冷却部30から筐体50へ漏洩することを抑制できる。
【0056】
なお、本実施形態において、導電部40は複数でもよく、複数の導電部40は複数のフィン32によりそれぞれ構成されてもよい。
【0057】
《第4実施形態》
図11は、発明の他の実施形態に係る電力変換装置の断面図の一部である。
図11に示す断面は、
図2と同様に、
図1のII-II線に沿う断面に相当する。本実施形態では、上述した第1実施形態に対して、導電部40、支持部60の構成が異なり、また基板70を備えている点が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、その記載を援用する。なお、
図11では、図示を容易にするために、導電部40を回路記号で表している。
【0058】
支持部60は、冷却部30が筐体50に接触しない状態で、冷却部30を支える部材である。支持部60は、冷却部30と筐体50との間に配置されている。なお、支持部60は、第1実施形態と異なり、導電部40を挿入するための挿入孔を有していない。
【0059】
基板70は電源回路10を実装する基板である。基板70は板状に形成されており、基板70の表面には電源回路10が実装されている。また基板70には、コイル等のインダクタ部品が実装されている。このインダクタ部品が導電部40となる。導電部40の一端は冷却部30に接続され、導電部40の他端は筐体50に接続されている。これにより、導電部40は、基板に実装されたインダクタ部品により構成され、冷却部30と筐体50との間を電気的に接続する。
【0060】
上記のように本実施形態では、導電部40が、基板70に実装されたインダクタ部品によって構成されている。これにより、所望の周波数帯域でインピーダンスを高めることができるため、冷却性能を維持しつつ、電源回路10で発生したノイズが冷却部30から筐体50へ漏洩することを抑制できる。また、インダクタ部品のパラメータを調整することで、並列共振回路の誘導成分(La)の大きさを変更できる。そのため、所望の周波数帯域におけるインピーダンスを容易に高めることができる。
【0061】
なお、本実施形態において、導電部40は、インダクタ部品の代わりに、基板70の配線パターンにより構成されていてもよい。配線パターンは基板70の表面に形成されている。並列共振回路の誘導成分(La)は配線パターンのインダクタンスとなる。なお、導電部40は、配線パターン及びインダクタ部品により構成されていてもよい。
【0062】
《第5実施形態》
図12は、発明の他の実施形態に係る電力変換装置の斜視図である。
図13は、
図12のXIII- XIII線に沿う断面図である。
図14は
図13のXIV- XIV線に沿う断面図である。本実施形態では、上述した第1実施形態に対して、冷却部30、導電部40、支持部60の構成が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、その記載を援用する。
【0063】
冷却部30は、水冷式の冷却器であり、配管33とカバー34を有している。配管33は、水を流すための管であり円筒状に形成されている。配管33は冷却部30と筐体50との間に接続されている。配管33は、金属により形成されている。そのため、配管33は、冷却部30と筐体50との間を電気的に接続する部材である。すなわち、本実施形態では、冷却部30と筐体50との間を接続する導電性の部材を、第1実施形態の導電部40の代わりに、配管33で構成している。
【0064】
配管33の側面は、カバー34により覆われている。カバー34は、比透磁率が1より大きい誘導体により形成されている。また、カバー34は、比誘電率が空気よりも大きく空気より大きくなるように形成されている。カバー34は円筒状に形成されている。カバー34は、冷却部30と筐体50との間の配管33の部分を覆っている。
【0065】
冷却部30と筐体50との間には、容量成分(Ca)と誘導成分(La)とを並列に接続したLC共振回路が形成される。冷却部30の側面及び筐体50の側面は、空気層を挟みつつ対向しており、キャパシタとして作用する。また、カバー34は、比誘電率が空気より大きい誘電体としても機能するため、冷却部30と筐体50でカバー34を狭持する部分も、キャパシタとして作用する。そして、容量成分(Ca)は、これら容量成分を合わせたものとなる。誘導成分(La)は、カバー34の有するインダクタンスである。
【0066】
上記のように本実施形態では、冷却部30と筐体50とを接続する導電性の部材(本発明の導電部に相当)が、水を流す配管により構成されている。これにより、所望の周波数帯域でインピーダンスを高めることができるため、冷却性能を維持しつつ、電源回路10で発生したノイズが冷却部30から筐体50へ漏洩することを抑制できる。
【0067】
なお、本実施形態では、電源回路10を冷やすための冷媒として、水を用いたが、冷媒は水以外の液体でもよく、気体でもよい。