(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0017】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態の電力変換システム1の説明図である。
【0018】
図1に示す電力変換システム1は、配電装置30と、電源部20と、電力変換装置50とからなる。
【0019】
配電装置30は、商用電源から供給される電力系統2の電力を、分電盤7を介して図示しない機器へと供給する。
【0020】
配電装置30において、電力系統2は、例えば単相三線式の商用電源として構成されており、三線のうちの中性線Nが接地部5において接地される。電力系統2から供給される電力は、分電盤7において単相200Vまたは単相100Vにそれぞれ分配され、各機器に供給される。
【0021】
電力変換装置50は、電源部20からの電力を電力変換回路13により変換して、分電盤7を介して各機器または電力系統2へと供給する。
【0022】
電力変換装置50は、直流電力を供給する電源部20と、電源部20が供給する直流電力を電力系統2に合わせた交流電力に変換するインバータ、コンバータ等からなる電力変換回路13と、を備える。
【0023】
電源部20は、例えばリチウムイオンバッテリ等の二次電池から構成される。電源部20は、一例としてハイブリッド車両や電動車両等の車両に搭載されるリチウムイオンバッテリであり、車両の駆動力源や回生エネルギーによる発電、充電装置からの充電等により電力が蓄えられる。
【0024】
電力変換装置50の電力は、単相三線式(L1相、L2相、中性線N)の電力として、接続インターフェイス(着脱可能プラグ)12を介して分電盤7に供給される。供給された電力は、分電盤7を介して各機器に、または電力系統2へと供給される。このように構成することで、電力系統2と、可搬車両に搭載される電力変換装置50との間で相互に電力を供給することができきる。
【0025】
電力変換回路13と接続インターフェイス12との間には、第1の入出力回路3と、中性点電位変動補償回路11とが介装される。電源部20と電力変換回路13との間には、第2の入出力回路8が介装される。
【0026】
第1の入出力回路3は、各相及び中性点に直列に接続される三つのインダクタ(H31、H32、H33)及び各相と中性点との間に並列に接続される二つのコンデンサ(C31、C32)を備える。インダクタ(H31、H32、H33)及びコンデンサ(C31、C32)により、電力変換回路13から出力される単相三線式の交流電力が平滑化される。第2の入出力回路8は、インダクタH8及びコンデンサC8を備え、電源部20から出力される直流電力を平滑化する。
【0027】
中性点電位変動補償回路11は、L1相及びL2相に直列に接続される二つのインダクタ(H11、H12)と、中性点に直列に接続される半導体スイッチSnとを備える。中性点電位変動補償回路11は、後に説明するように、配電装置30と電力変換装置50との間で中性点の電位に変動が生じた場合に、制御装置14によって半導体スイッチSnのON/OFFが制御され、変動を補償する。
【0028】
半導体スイッチSnは、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やGTO(Gate Turn−Off Thyristor)等の半導体素子により構成され、制御装置14からの指令信号により、中性線Nにおける電力の流通をON/OFFする。
【0029】
制御装置14は、電力変換回路13を制御して、電源部20から供給される直流電流を交流電流へと変換する。制御装置14は、第1の電位差監視部9及び位相差監視部10を備える。制御装置14は、第1の電位差監視部9及び位相差監視部10の検出結果に基づいて、中性点電位変動補償回路11の半導体スイッチSnの動作を制御して、中性点の電位の変動を補償する。
【0030】
電力変換装置50のL1相と中性線Nとの間には第1の電圧検出部91が備えられ、電力変換装置50の中性線NとL2相との間には第2の電圧検出部92が備えられる。電力変換装置50のL1相には第1の電流検出部101が備えられ、電力変換装置50のL2相には第2の電流検出部102が備えられる。
【0031】
第1の電位差監視部9は、第1の電圧検出部91及び第2の電圧検出部92の検出結果から、中性線Nの接地レベルに対する電位を算出する。位相差監視部10は、第1の電流検出部101及び第2の電流検出部102の検出結果から、L1相の位相とL2相の位相を算出する。
【0032】
制御装置14は、第1の電位差監視部9の算出結果、及び、位相差監視部10の算出結果に基づいて、電力変換回路13及び中性点電位変動補償回路11を制御する。
【0033】
制御装置14は、L1相の位相と、L2相の位相と、電力変換回路13の出力の位相とを比較して、これらの位相が一致するように電力変換回路13に備えられる半導体スイッチ(図示せず)に対してPWM制御を行う。
【0034】
制御装置14によるPWM制御によって、電源部20の直流電圧が配電装置30側の交流電流に対応する波形として出力される。電力変換回路13の出力は、第1の入出力回路3により平滑化されて、交流電圧として出力される。
【0035】
制御装置14がこのように制御することにより、電源部20の直流電力を、電力系統2に対応する交流電力として出力することができる。
【0036】
さらに、制御装置14は、電位差監視部9により算出された中性線Nの電位Vnと、電力変換回路13が出力する中性点の電位Vcnとを比較して、これらの電位に変動が生じたと判定した場合には、次に説明するように、中性線Nの電位Vnと電力変換回路13の中性点の電位Vcnとが一致するように中性点電位変動補償回路11の半導体スイッチSnに対してPWM制御を行う。
【0037】
次に、制御装置14及び中性点電位変動補償回路11の動作を制御する。
【0038】
前述のように、制御装置14は、中性線Nの電位Vnと電力変換回路13の中性点の電位Vcnとの間に変動が生じたと判定した場合には、中性線Nの電位Vnと電力変換回路13の中性点の電位Vcnとが一致するように中性点電位変動補償回路11を制御する。
【0039】
このとき、制御装置14は、中性線Nの電位Vnと電力変換回路13の中性点の電位Vcnとの電位差に対応するデューティ比を決定し、半導体スイッチSnのON/OFFを指令する信号を送る。
【0040】
図2は、本実施形態における、中性線Nの電位Vnと電力変換回路13の中性点の電位Vnとで電位が変動した場合のタイムチャートである。
【0041】
図2の上段は、中性線Nの電位Vcnと電力変換回路13の中性点の電位Vnとの相違を、中断は、変動に対する半導体スイッチSnの制御指令値を、下段は制御指令値に対応して制御された中性線Nの電位Vcnを、それぞれ示す。
【0042】
制御装置14は、位相差監視部10の算出結果に基づいて電力変換回路13の動作を制御して交流電力の位相を制御し、第1の入出力回路31から配電装置30の系統電源に対応する交流電力を出力する。
【0043】
制御装置14は、第1の電位差監視部9の算出結果、及び、位相差監視部10の算出結果に基づいて、交流電力の位相を制御する。
【0044】
このとき、中性線Nの電位と電力変換回路13の中性点の電位Vcnに変動が生じた場合は、制御装置14は、変動に対応して、半導体スイッチSnのデューティ比を設定する。制御装置14は、電位差を所定値と比較し、電位差が所定値を超えた場合に、半導体スイッチSnをON/OFFさせる制御信号としてのディーティ信号を算出する。このとき、電位差が大きい場合はデューティ比を小さく設定し、電位差が小さい場合にデューティ比を大きく設定する。
【0045】
設定されたデューティ比は、半導体スイッチSnのON/OFFを制御する制御指令値として、制御装置14から半導体スイッチSnへと送信される。半導体スイッチSnは制御指令値に従って動作する。デューティ比が小さい場合は半導体スイッチSnのON時間が小さくなり、半導体スイッチSnを流通する電力量が減少させられて、電位差を解消させることができる。なお、電位差だけでなく、位相差監視部10により算出された位相差が所定値を超えた場合に、同様に半導体スイッチSnを制御してもよい。
【0046】
このような制御により、中性線Nに供給される中性点の電位Vnが変化させられて、電力変換回路13の中性点の電位との電位差が解消される。これにより、分電盤7に電位差の大きな電圧が印可されることが防止されるので、例えば分電盤7が有する遮断器が意図せずに遮断することが防止できる。
【0047】
制御装置14の制御により、半導体スイッチSnのON/OFFを制御したにもかかわらず電位差が解消しない場合は、制御装置14は、警報を通報する。例えば電力系統2において、落雷や天候により、又は発電所や送電における異常があり、接地電位が大きく変動した場合である。
【0048】
この場合は、中性点電位変動補償回路11の動作によっては、電位差が解消しない場合は、電力系統2に異常があるとして、制御装置14は、通信線、例えば制御装置14に接続されるイーサネット(登録商標)や無線通信装置を介して送信する。又は、制御装置14から電力線に重畳した信号を分電盤7を介して他の制御装置等に送信する。
【0049】
このような制御を行うことで、電力系統2の異常を早期に通報することができる。
【0050】
また、本実施形態では、中性点の電位差を中性点に挿入した半導体スイッチSnの動作によって解消した。ここで、中性線Nの電位Vnに対する電力変換回路13の中性点の電位Vcnの変動を抑制するために、電源部20の直流電力を電力変換回路13により交流電力に変換するときにPWM制御を行うこともできる。
【0051】
しかしながら、電力変換回路13に用いられる半導体スイッチは、例えば高耐圧のブリッジ回路で構成されている。このような高耐圧の半導体スイッチを、交直流変換に加えて中性線Nの電位の制御にも用いた場合は、出力される電圧の変動が大きくなるので、半導体スイッチにおける損失が上昇し、半導体スイッチの応答時間が低下する。
【0052】
これに対して、本実施形態では、中性線Nの電圧変動は電源電圧と比較して小さい。このため、半導体スイッチSnの耐圧は電力変換回路13に用いられるものと比較して小さいもので済む。そのため、半導体スイッチSnを小型化できると共に応答性が高いものを用いることができる。
【0053】
半導体スイッチSnには、定常的に、コンデンサC31とコンデンサC32との容量のばらつきによる電位差が印加される。
【0054】
ここで、具体例として、例えばコンデンサC31とコンデンサC32との容量のばらつきが10%であるとした場合に、電力系統2が単相三線式の交流電圧200V(L1+100V、L2−100V)に接続している場合について説明する。
【0055】
この場合は、電力変換回路13の入力直流電圧は200√2V(282V)程度であると仮定すると、半導体スイッチSnにおける電圧変動は、この10%である28V程度となる。
【0056】
従って、この例の場合では、半導体スイッチSnは、電力変換回路13に使用する半導体スイッチの耐圧よりも1/10程度の耐圧のものを選定すればよい。このように、半導体スイッチSnの耐圧を小さくできることにより、半導体スイッチSnを小型化できると共に応答性が高い半導体スイッチを用いることができて、中性点Nの電圧変動を応答良く解消させることができる。
【0057】
以上のように本発明の第1実施形態では、直流電力と交流電力とを相互に変換して供給する電力変換システム1において、直流電力を交流電力に変換するときの中性点の電圧変動を抑えるように構成した。電力変換システム1は、電力変換回路13と、中性点電位変動補償回路11と、電圧検出部91、92と、制御装置14を備える。
【0058】
電力変換回路13は、電源部20から供給される直流電力を交流電力に変換する。中性点電位変動補償回路11は、電力変換回路13により変換された交流電力の出力の中性点の電位Vcnと、電力系統2から供給される交流電力の接地基準点である中性線Nの電位Vnと、の電位差を補償する。電圧検出部91、92は、電力系統2から供給される交流電力の電圧状態と電力変換回路13により変換された交流電力の電圧状態を検出する。制御装置14は、電圧検出部91、92の検出結果に基づいて、電力変換回路13及び中性点電位変動補償回路11の動作を制御する。
【0059】
本発明の第1実施形態では、このような構成により、交流電力の出力の中性点の電位Vcnと電力系統2から供給される交流電力の接地基準点である中性線Nの電位Vnの電圧変動に対応して、中性点電位変動補償回路11を動作させることにより、これらの電位差を解消させることができる。
【0060】
中性点電位変動補償回路11は、半導体スイッチSnにより構成され、制御装置14の制御によってON/OFFを行うことにより、交流電力の出力の中性点の電位Vcnと電力系統2から供給される交流電力の接地基準点である中性線Nの電位Vnの電圧変動を解消させることができる。
【0061】
さらに、制御装置14は、電流検出部101、102を備え、検出結果から、電力系統2の位相と、電力変換回路13の出力の位相とを比較して、これらの位相が一致するように中性点電位変動補償回路11を制御する。
【0062】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
【0063】
図3は、本発明の第2実施形態の電力変換システム1の説明図である。
【0064】
なお、第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0065】
図3に示す第2実施形態では、中性線Nの電位を測定するのではなく、半導体スイッチSnの端子間の電位差を検出して、検出した電位差を解消するように、半導体スイッチSnの動作を制御する。
【0066】
半導体スイッチSnには、端子間の電位差を検出する第3の電圧検出部111が備えられる。
【0067】
制御装置14には、第3の電圧検出部111の検出結果から、半導体スイッチSnの端子間の電位差を算出する第2の電位差監視部110が備えられる。
【0068】
電位差監視部110は、第3の電圧検出部111の検出結果に基づいて、半導体スイッチSnの端子間の電位差、すなわち、中性線Nの電位Vnと電力変換回路13の中性点の電位Vcnとの電位差を検出する。
【0069】
制御装置14は、検出された電位差に基づいて半導体スイッチSnのデューティ比を設定する。例えば、第1実施形態と同様に、電位差が大きい場合にデューティ比を小さく設定し、電位差が小さい場合にデューティ比を大きく設定する。
【0070】
設定されたデューティ比は、半導体スイッチSnのON/OFFを制御する制御指令値として、制御装置14から半導体スイッチSnへと送信される。半導体スイッチSnは制御指令値に従って、中性線Nと中性点との導通をON/OFFする。
【0071】
半導体スイッチSnをON/OFFさせることにより、電力系統2の中性線Nの電位Vnと電力変換回路13の中性点の電位Vcnとの電位差を解消させることができる。
【0072】
これにより、分電盤7に意図しない電圧が印可されることが防止され、分電盤7の遮断器が意図しない遮断を防止できる。
【0073】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態を説明する。
【0074】
図4は、本発明の第3実施形態の電力変換システム1の説明図である。
【0075】
なお、第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0076】
図4に示す第3実施形態は、第2実施形態の変形例であり、電力変換装置23の構成が、第1実施形態及び第2実施形態の電力変換回路13と異なる。
【0077】
電力変換装置23は、電源部20が供給する直流電力を、単相3線式の交流電力のうち、中性線を省略した2線により出力する。電力変換装置23の出力は、第3の入出力回路31に入力される。
【0078】
第3の入出力回路31は、コンデンサC31、C32を備え、電力変換回路13から出力される単相三線式の交流電力を平滑化すると共に、コンデンサC31、C32が結合された中点が中性点に対応する。コンデンサC31、32の中点は、半導体スイッチSnを経由して、中性線Nに結合する。従って、電力変換装置50における中性線Nの電位Vcnは、コンデンサC31、C32により決定される。
【0079】
半導体スイッチSnには、第2実施形態と同様に、端子間の電位差を検出する第3の電圧検出部111が備えられる。制御装置14は、第3の電圧検出部111の検出結果に基づいて、半導体スイッチSnの端子間の電位差、すなわち、電力系統2の中性線Nの電位Vnと電力変換回路13の中性点の電位Vcnとの電位差を検出する。
【0080】
制御装置14は、第3の電圧検出部111により検出された電位差に基づいて半導体スイッチSnのデューティ比を設定し、これを、半導体スイッチSnのON/OFFを制御する制御指令値として、半導体スイッチSnに送信する。半導体スイッチSnは制御指令値に従って動作する。
【0081】
半導体スイッチSnをON/OFFさせることにより、電力系統2の中性線Nの電位Vnと電力変換回路13の中性点の電位Vcnとの電位差を解消させることができる。
【0082】
これにより、分電盤7に意図しない電圧が印可されることが防止され、分電盤7の遮断器が意図しない遮断を防止できる。
【0083】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態を説明する。
【0084】
第4実施形態は、電力変換回路13が双方向コンバータである点が異なる。なお、第4実施形態の基本構成は第1実施形態と同一である。
【0085】
電力変換回路13は、双方向コンバータとして構成され、電源部20が供給する直流電力を電力系統2に合わせた交流電力に変換するだけでなく、電力系統2が供給する交流電力を直流電力に変換して電源部20へと供給する機能を有する。
【0086】
このような機能により、電力系統2の電力を電源部20へと充電することができる。
【0087】
前述のように、制御装置14は、中性線Nの電位と電力変換回路13の中性点の電位に変動が生じた場合は、電位の変動に対応して、半導体スイッチSnのデューティ比を設定して、半導体スイッチSnのON/OFFを制御する。
【0088】
第4実施形態では、制御装置14は、電力変換回路13において電力系統2が供給する交流電力を直流電力に変換して電源部20へと供給するように制御しているときにも、この制御を行う。
【0089】
すなわち、電力系統2から電力変換回路13へと電力を供給しているときにも、電力系統2の中性線Nの電位Vnと電力変換回路13の中性点の電位Vcnとの電位に変動が生じた場合は、制御装置14は、半導体スイッチSnのON/OFFを制御して、電位差を解消させる。
【0090】
このような制御により、電力系統2から供給される交流電力の中性線Nの電位Vnが変化させられて、電力系統2と電力変換回路13の中性点の電位差を解消させることができる。
【0091】
従って、電力系統2から電源部20へと電力を供給し、電源部20を充電する場合にも、電位差を解消することにより、電力変換回路13に意図しない大きな電力が入力されることが防止され、電力変換回路13の動作が異常となることが防止できる。