(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6402610
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置、スイッチング電源装置の制御方法およびスイッチング電源装置の制御回路
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20181001BHJP
【FI】
H02M3/28 Q
H02M3/28 B
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-244972(P2014-244972)
(22)【出願日】2014年12月3日
(65)【公開番号】特開2016-111758(P2016-111758A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年11月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 建
【審査官】
麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】
実開平4−88382(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0080628(US,A1)
【文献】
米国特許第6018466(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源1次側及び電源2次側を有するトランス(T1)と、スイッチング素子(Q1、Q2)とを備え、前記スイッチング素子のON−OFFを切り替えることにより、入力した直流電流を高周波電流に変換して前記トランス(T1)の前記電源1次側に供給し、前記トランスの前記電源2次側に発生する高周波電流を整流して直流出力を得るスイッチング電源装置(10)であって、
前記電源1次側に接続され、前記スイッチング素子のスイッチング周波数を決定する発振回路(22)と、スタンバイモードにおけるバースト動作の制御を行うバースト制御回路(26)とを備えた制御IC(20)と、
前記電源2次側に接続された出力電圧検出部(30)と、
を備え、
前記バースト制御回路(26)は、前記トランスの前記電源1次側に配置された補助巻線の電圧(VCC)を受信し、前記スタンバイモードにおいて、前記補助巻線の電圧(VCC)と、第1のしきい値(VBL)とを比較して、前記補助巻線の電圧(VCC)が前記第1のしきい値(VBL)よりも下回った場合、前記第1の周波数制御電圧(VCS)を、充放電手段により徐々に上昇するように生成し、前記補助巻線の電圧(VCC)と、前記第1のしきい値より大きい第2のしきい値(VBH)とを比較して、前記補助巻線の電圧(VCC)が前記第2のしきい値(VBH)よりも上回った場合、前記第1の周波数制御電圧(VCS)を、前記充放電手段により徐々に下降するように生成し、
前記発振回路(22)は、前記バースト制御回路(26)から前記第1の周波数制御電圧(VCS)を受信するとともに、出力電圧検出部(30)から前記電源2次側の出力電圧に対応する第2の周波数制御電圧(VFB)を受信し、前記第1の周波数制御電圧(VCS)及び前記第2の周波数制御電圧(VFB)のいずれか小さい方の周波数制御電圧により前記スイッチング素子のスイッチング周波数を決定する
こと特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記スイッチング電源装置は前記トランス(T1)の前記電源1次側に接続された共振コンデンサを有する電流共振型のスイッチング電源装置であることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記第1の周波数制御電圧(VCS)は前記充放電手段により充放電されるコンデンサの充電電圧であることを特徴とする請求項1または2に記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記第2の周波数制御電圧(VFB)は、前記電源2次側の出力電圧が上昇すると下降することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
前記スイッチング素子のスイッチング周波数は、前記いずれか小さい方の周波数制御電圧が下降すると大きくなり、前記いずれか小さい方の周波数制御電圧が一定の値を下回ると0になることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のスイッチング電源装置。
【請求項6】
前記第1の周波数制御電圧(VCS)の下降の時間的変化は、前記第1の周波数制御電圧(VCS)の上昇の時間的変化より急であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のスイッチング電源装置。
【請求項7】
電源1次側及び電源2次側を有するトランス(T1)と、スイッチング素子(Q1、Q2)とを備え、前記スイッチング素子のON−OFFを切り替えることにより、入力した直流電流を高周波電流に変換して前記トランス(T1)の前記電源1次側に供給し、前記トランス(T1)の前記電源2次側に発生する高周波電流を整流して直流出力を得るスイッチング電源装置(10)において、
前記電源1次側に接続された、スタンバイモードにおけるバースト動作の制御を行うバースト制御回路(26)が前記トランスの前記電源1次側に配置された補助巻線の電圧(VCC)を受信するステップと、
前記バースト制御回路(26)が前記補助巻線の電圧(VCC)から、第1の周波数制御電圧(VCS)を生成するステップであって、前記補助巻線の電圧(VCC)と、第1のしきい値(VBL)とを比較して、前記補助巻線の電圧が前記第1のしきい値(VBL)よりも下回った場合、前記第1の周波数制御電圧(VCS)を、充放電手段により徐々に上昇するように生成し、前記補助巻線の電圧(VCC)と、前記第1のしきい値よりも大きい第2のしきい値(VBH)とを比較して、前記補助巻線の電圧(VCC)が前記第12のしきい値(VBL)よりも上回った場合、前記第1の周波数制御電圧(VCS)を前記充放電手段により徐々に下降するように生成する、ステップと、
前記電源1次側に接続された発振回路(22)が前記バースト制御回路(26)から前記第1の周波数制御電圧(VCS)を受信するとともに、前記電源2次側に接続された出力電圧検出部から出力電圧に対応する第2の周波数制御電圧(VFB)を受信するステップと、
前記発振回路(22)において、前記第1の周波数制御電圧(VCS)及び前記周波数制御電圧(VFB)のいずれか小さい方の周波数制御電圧により前記スイッチング素子のスイッチング周波数を決定するステップと
を含むこと特徴とするスイッチング電源装置の制御方法。
【請求項8】
前記スイッチング電源は、前記トランス(T1)の前記電源1次側に接続された共振コンデンサを有する電流共振型のスイッチング電源装置であることを特徴とする請求項7に記載のスイッチング電源装置の制御方法。
【請求項9】
前記第1の周波数制御電圧(VCS)は、前記充放電手段により充放電されるコンデンサの充電電圧であることを特徴とする請求項7または8に記載のスイッチング電源装置の制御方法。
【請求項10】
前記第2の周波数制御電圧(VFB)は、前記電源2次側の出力電圧が上昇すると下降することを特徴とする請求項7ないし9のいずれか1項に記載のスイッチング電源装置の制御方法。
【請求項11】
前記スイッチング素子のスイッチング周波数は、前記いずれか小さい方の周波数制御電圧が下降すると大きくなり、前記いずれか小さい方の周波数制御電圧が一定の値を下回ると0になることを特徴とする請求項7ないし10のいずれか1項に記載のスイッチング電源装置の制御方法。
【請求項12】
前記第1の周波数制御電圧(VCS)の下降の時間的変化は、前記第1の周波数制御電圧(VCS)の上昇の時間的変化より急であることを特徴とする請求項7ないし11のいずれか1項に記載のスイッチング電源装置の制御方法。
【請求項13】
電源1次側及び電源2次側を有するトランス(T1)と、スイッチング素子(Q1、Q2)と、前記電源1次側に接続された共振コンデンサと、前記電源2次側に接続された出力電圧検出部(30)と、を備え、前記スイッチング素子のON−OFFを切り替えることにより、入力した直流電流を高周波電流に変換して前記トランス(T1)の前記電源1次側に供給し、前記トランスの前記電源2次側に発生する高周波電流を整流して直流出力を得る電流共振型のスイッチング電源装置(10)の制御回路であって、
該制御回路は前記電源1次側に接続され、前記スイッチング素子のスイッチング周波数を決定する発振回路(22)と、スタンバイモードにおけるバースト動作の制御を行うバースト制御回路(26)と、
を備え、
前記バースト制御回路(26)は、前記トランスの前記電源1次側に配置された補助巻線の電圧(VCC)を受信し、前記スタンバイモードにおいて、前記補助巻線の電圧(VCC)と、第1のしきい値(VBL)とを比較して、前記補助巻線の電圧(VCC)が前記第1のしきい値(VBL)よりも下回った場合、前記第1の周波数制御電圧(VCS)を、充放電手段により徐々に上昇するように生成し、前記補助巻線の電圧(VCC)と、前記第1のしきい値より大きい第2のしきい値(VBH)とを比較して、前記補助巻線の電圧(VCC)が前記第2のしきい値(VBH)よりも上回った場合、前記第1の周波数制御電圧(VCS)を、前記充放電手段により徐々に下降するように生成し、
前記発振回路(22)は、前記バースト制御回路(26)から前記第1の周波数制御電圧(VCS)を受信するとともに、出力電圧検出部(30)から前記電源2次側の出力電圧に対応する第2の周波数制御電圧(VFB)を受信し、前記第1の周波数制御電圧(VCS)及び前記第2の周波数制御電圧(VFB)のいずれか小さい方の周波数制御電圧により前記スイッチング素子のスイッチング周波数を決定する
こと特徴とするスイッチング電源装置の制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、スイッチング電源装置に関し、より詳細には、電流共振型のDC−DCコンバータであるスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電流共振型のDC−DCコンバータのスイッチング電源装置は高効率化・薄型化に適しているため、液晶テレビ、及びAC−DCアダプタなどに広く採用されている。特に、近年の地球温暖化対策に対応するために、電気機器が使用されていないときに消費される電力を低減することを目的とした電流共振型のDC−DCコンバータのスイッチング電源装置が開発されている。このようなスイッチング電源装置は、消費電力を抑えるために、待機モード(スタンバイモード)を備えている。
【0003】
スタンバイモードにおける動作時、スイッチング電源装置の消費電力をさらに低減するために、特許文献1には、スイッチングを一定期間行い、次に一定期間スイッチングを停止する、バースト動作(繰り返し間欠発振動作)を行うように構成された電流共振型のスイッチング電源装置が提案されている。バースト動作によれば、スイッチングの休止期間を設けることにより、スイッチング電源装置のスタンバイモード時の平均的な待機電力を大幅に削減することができる。特許文献1のスイッチング電源装置は、さらに、スタンバイモードのバースト動作においてスイッチングを開始する時は、ソフトスタート動作を行うように構成されている。ここで、ソフトスタート動作とは、スイッチング開始後、スイッチング周波数が時間経過と共に徐々に低くなって、ある一定の値に収束していくことを示し、ソフトスタートにより、共振回路の共振電流が徐々に上がり、トランスの1次側から2次側に供給されるエネルギーも徐々に上がっていく。
【0004】
しかし、特許文献1のスイッチング電源装置は、バースト動作のスイッチング動作においてスイッチング開始時はソフトスタートを行っているが、スイッチング停止時はスイッチング周波数が低い1次側から2次側へのエネルギ供給が大きい状態でスイッチングが即時停止することになり、音鳴りが発生しやすい。スタンバイモードではない通常動作においては、スイッチング周波数は、人間の可聴周波数帯域まで低下することなく、トランスからの音鳴りは生じないが、スタンバイモードにおいてスイッチングが停止するときは、スイッチング動作が停止するときの共振電流に依存した音鳴りが生じる。すなわち、スイッチングを急激に停止すると共振電流が急激に減少するという過渡現象が生じ、この過渡現象により共振回路に流れている電流の周波数成分に可聴ノイズのものが発生する。スイッチング動作が停止するときの共振電流が大きいほどこの可聴ノイズの周波数成分が大きくなり、音鳴りが大きくなる。
【0005】
音鳴りを防止すべく、特許文献2には、スイッチング周波数固定のPWM制御を行うスイッチング電源装置において、スタンバイモードのバースト動作におけるスイッチング期間に、ソフトスタートとともにソフトエンドを実施することが提案されている。ここで、ソフトエンド動作とは、スイッチング素子のON期間とスイッチング周期の比であるON時比率を時間経過と共に徐々に小さくさせて、1次側からトランスに送るエネルギーを減少させていく動作をいう。ソフトエンドによって、バーストモードにおけるスイッチング停止時の音鳴りを防止することができる。
【0006】
ソフトスタートとソフトエンドは、特許文献2の
図6に記載の通り、PWMのパルス幅制御のための電圧VENの出力側に充放電回路601dを設置し、充放電回路601dに接続されたコンデンサCSEを定電流で充放電して長周期の三角波を作り、この三角波と発振器6cから出力されるキャリア信号を比較して、ON時比率を徐々に増やしたり減らしたりすることにより行われる。さらに、特許文献2には、このようなバースト動作を行わせる制御回路6を、共振型電源に適用すれば同様の動作が可能となる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−38857号公報
【特許文献2】特開2009−17629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献2に記載のスイッチング電源装置において、制御回路6はスイッチング周波数一定でオン時比率を変えるPWM制御に使うものである。したがって、特許文献1に記載のような、スイッチング周波数を変えることにより出力を制御する電流共振型のDC−DCコンバータのスイッチング電源装置には、特許文献2に開示されている制御回路6による制御方式を適用することができない。
【0009】
また、後述の無効領域に対応する手段については何ら開示がない。
【0010】
本発明は、このような課題を解決するために、電流共振型のDC−DCコンバータのスイッチング電源装置であって、バースト動作中のスイッチング期間において、ソフトスタート及びソフトエンドを行い、さらには無効領域にも対処可能なように構成したスイッチング電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、電源1次側及び電源2次側を有するトランスと、スイッチング素子とを備え、前記スイッチング素子のON−OFFを切り替えることにより、入力した直流電流を高周波電流に変換して前記トランスの前記電源1次側に供給し、前記トランスの前記電源2次側に発生する高周波電流を整流して直流出力を得るスイッチング電源装置であって、前記電源1次側に接続され、前記スイッチング素子のスイッチング周波数を決定する発振回路と、スタンバイモードにおけるバースト動作の制御を行うバースト制御回路とを備えた制御ICと、前記電源2次側に接続された出力電圧検出部と、を備え、前記バースト制御回路は、前記トランスの前記電源1次側に配置された補助巻線の電圧を受信し、前記スタンバイモードにおいて、前記補助巻線の電圧と、第1のしきい値とを比較して、前記補助巻線の電圧が前記第1のしきい値よりも下回った場合、前記第1の周波数制御電圧を、充放電手段により徐々に上昇するように生成し、前記補助巻線の電圧と、前記第1のしきい値より大きい第2のしきい値とを比較して、前記補助巻線の電圧が前記第2のしきい値よりも上回った場合、前記第1の周波数制御電圧を、前記充放電手段により徐々に下降するように生成し、前記発振回路は、前記バースト制御回路から前記第1の周波数制御電圧を受信するとともに、出力電圧検出部から前記電源2次側の出力電圧に対応する第2の周波数制御電圧を受信し、前記第1の周波数制御電圧及び前記第2の周波数制御電圧のいずれか小さい方の周波数制御電圧により前記スイッチング素子のスイッチング周波数を決定すること特徴とする。
【0012】
また、本発明の第2の態様は、第1の態様のスイッチング電源装置であって、前記スイッチング電源装置は前記トランスの前記電源1次側に接続された共振コンデンサを有する電流共振型のスイッチング電源装置であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様のスイッチング電源装置であって、前記第1の周波数制御電圧は前記充放電手段により充放電されるコンデンサの充電電圧であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の第4の態様は、第1ないし3のいずれか1つの態様のスイッチング電源装置であって、前記第2の周波数制御電圧は、前記電源2次側の出力電圧が上昇すると下降することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の第5の態様は、第1ないし4のいずれか1つの態様のスイッチング電源装置であって、前記スイッチング素子のスイッチング周波数は、前記いずれか小さい方の周波数制御電圧が下降すると大きくなり、前記いずれか小さい方の周波数制御電圧が一定の値を下回ると0になることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の第6の態様は、第1ないし5のいずれか1つの態様のスイッチング電源装置であって、前記第1の周波数制御電圧の下降の時間的変化は、前記第1の周波数制御電圧の上昇の時間的変化より急であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の第7の態様は、電源1次側及び電源2次側を有するトランスと、スイッチング素子とを備え、前記スイッチング素子のON−OFFを切り替えることにより、入力した直流電流を高周波電流に変換して前記トランスの前記電源1次側に供給し、前記トランスの前記電源2次側に発生する高周波電流を整流して直流出力を得るスイッチング電源装置において、前記スイッチング電源装置を制御する方法であって、前記電源1次側に接続された、スタンバイモードにおけるバースト動作の制御を行うバースト制御回路が、前記トランスの前記電源1次側に配置された補助巻線の電圧を受信するステップと、前記バースト制御回路において、前記補助巻線の電圧から、第1の周波数制御電圧を生成するステップであって、前記補助巻線の電圧と、第1のしきい値とを比較して、前記補助巻線の電圧が前記第1のしきい値よりも下回った場合、前記第1の周波数制御電圧を、充放電手段により徐々に上昇するように生成し、前記補助巻線の電圧と、前記第1のしきい値よりも大きい第2のしきい値とを比較して、前記補助巻線の電圧が前記第1のしきい値よりも上回った場合、前記第1の周波数制御電圧を前記充放電手段により徐々に下降するように生成する、ステップと、前記電源1次側に接続された発振回路が、前記バースト制御回路から前記第1の周波数制御電圧を受信するとともに、前記電源2次側に接続された出力電圧検出部から出力電圧に対応する第2の周波数制御電圧を受信するステップと、前記発振回路において、前記第1の周波数制御電圧及び前記周波数制御電圧のいずれか小さい方を第3の周波数制御電圧と設定し、前記第3の周波数制御電圧により前記スイッチング素子のスイッチング周波数を決定するステップとを含むこと特徴とする。
【0018】
また、本発明の第8の態様は、第7の態様のスイッチング電源装置の制御方法であって、前記スイッチング電源は前記トランスの前記電源1次側に接続された共振コンデンサを有する電流共振型のスイッチング電源装置であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の第9の態様は、第7又は8の態様のスイッチング電源装置の制御方法であって、前記第1の周波数制御電圧は前記充放電手段により充放電されるコンデンサの充電電圧であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の第10の態様は、第7ないし9のいずれか1つの態様のスイッチング電源装置の制御方法であって前記第2の周波数制御電圧は、前記電源2次側の出力電圧が上昇すると下降することを特徴とする。
【0021】
また、本発明の第11の態様は、第7ないし10のいずれか1つの態様のスイッチング電源装置の制御方法であって、前記スイッチング素子のスイッチング周波数は、前記いずれか小さい方の周波数制御電圧が下降すると大きくなり、前記第3の周波数制御電圧が一定の値を下回ると0になることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の第12の態様は、第7ないし11のいずれか1つの態様のスイッチング電源装置の制御方法であって、前記第1の周波数制御電圧の下降の時間的変化は、前記第1の周波数制御電圧の上昇の時間的変化より急であることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の第13の態様は、電源1次側及び電源2次側を有するトランスと、スイッチング素子と、前記電源1次側に接続された共振コンデンサと、前記電源2次側に接続された出力電圧検出部と、を備え、前記スイッチング素子のON−OFFを切り替えることにより、入力した直流電流を高周波電流に変換して前記トランスの前記電源1次側に供給し、前記トランスの前記電源2次側に発生する高周波電流を整流して直流出力を得る電流共振型のスイッチング電源装置の制御回路であって、該制御回路は前記電源1次側に接続され、前記スイッチング素子のスイッチング周波数を決定する発振回路と、スタンバイモードにおけるバースト動作の制御を行うバースト制御回路と、を備え、前記バースト制御回路は、前記トランスの前記電源1次側に配置された補助巻線の電圧を受信し、前記スタンバイモードにおいて、前記補助巻線の電圧と、第1のしきい値とを比較して、前記補助巻線の電圧が前記第1のしきい値よりも下回った場合、前記第1の周波数制御電圧を、充放電手段により徐々に上昇するように生成し、前記補助巻線の電圧と、前記第1のしきい値より大きい第2のしきい値とを比較して、前記補助巻線の電圧が前記第2のしきい値よりも上回った場合、前記第1の周波数制御電圧を、前記充放電手段により徐々に下降するように生成し、前記発振回路は、前記バースト制御回路から前記第1の周波数制御電圧を受信するとともに、出力電圧検出部から前記電源2次側の出力電圧に対応する第2の周波数制御電圧を受信し、前記第1の周波数制御電圧及び前記第2の周波数制御電圧のいずれか小さい方の周波数制御電圧により前記スイッチング素子のスイッチング周波数を決定すること特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
電流共振型のDC−DCコンバータであるスイッチング電源装置において、スタンバイモードのバースト動作時、音鳴り抑制し、さらには効率改善を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の1実施形態に係る電流共振型のDC−DCコンバータを備えるスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。
【
図2】
図1のスイッチング電源装置の制御ICの構成を示すブロック図である。
【
図3】
図2のバースト制御回路の構成を示す回路図である。
【
図4】
図2の制御ICの端子FBの電圧域あるいは端子CSの電圧域とスイッチング周波数との関係を示す図である。
【
図5】スタンバイモードにおける制御ICの端子VCCの電圧VCC及び端子CSの電圧VCSのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0027】
[スイッチング電源装置の構成]
図1は、本発明の1実施形態に係るスイッチング電源装置10の構成を示す回路図である。スイッチング電源装置10は、電流共振型のDC−DCコンバータであり、電源1次側と電源2次側とから構成される。スイッチング電源装置10においては、電源端子Vi1から入力された直流電流をスイッチングにより高周波電流に変換してトランスT1に供給する。トランスT1より電源2次側に伝達された高周波電流は、電源2次側のダイオードD3、D4とコンデンサC6により整流・平滑され、電源2次側の出力端子Vo1から直流電流として出力される。ここで、スイッチング電源装置10は、1次巻線P1と、補助巻線P2と、第1の2次巻線S1と、第2の2次巻線S2とから構成されるトランスT1を備える。1次巻線P1と補助巻き線P2はスイッチング電源装置10の電源1次側を構成し、第1の2次巻線S1と第2の2次巻線S2はスイッチング電源装置10の電源2次側を構成している。
【0028】
スイッチング電源装置10の電源1次側は、電源端子Vi1(陽極側)にドレインが接続されたNチャネルMOSFETにより構成されるスイッチング素子Q1と、スイッチング素子Q1のソースがドレインに接続され、ソースが接地されたNチャネルMOSFETにより構成されるスイッチング素子Q2とを備える。また、スイッチング電源装置10の電源1次側は、1次巻線P1の一端と、スイッチング素子Q1のソース及びスイッチング素子Q2のドレインとの間に接続された共振コンデンサC5と、電源端子Vi1と、電源端子Vi2(陰極側)との間に接続されたコンデンサC1を備える。第1次巻線P1の他端は接地されている。
【0029】
また、スイッチング電源装置10の電源1次側は、スイッチング電源装置10の出力電圧を制御する制御IC20を備えている。制御IC20は、STB、VCC、HO、LO、VB、VS、VH、FB、CSおよびGNDの10の端子が設けられている。端子STBには、スタンバイ信号が入力される。端子VCCには、ダイオードD1を介して補助巻線P2の一端が接続される。ダイオードD1は、アノード側に補助巻線P2が、カソード側に端子VCCが接続される。端子HOには、抵抗R4を介してスイッチング素子Q1のゲートが接続される。端子LOには、抵抗R5を介してスイッチング素子Q2のゲートが接続される。端子FBには、コンデンサC2及びフォトカプラPC1を介して補助巻線P2の他端が接続される。フォトカプラPC1のトランジスタのエミッタ側には端子FBが、コレクタ側には補助巻線P2が接続される。端子CSには、コンデンサC10を介して補助巻線P2の他端が接続される。端子VBには、コンデンサC4を介してスイッチング素子Q1とQ2との接続点および共振コンデンサC5が接続される。端子VSには、スイッチング素子Q1とQ2との接続点および共振コンデンサC5が接続される。端子VHには、抵抗R3を介して電源端子Vi1が接続される。端子VBと端子VCCとの間には、ダイオードD2が接続され、カソードが端子VB側に、アノードが端子VCC側に接続される。また、端子VCCと補助巻線P2との間にはコンデンサC3が接続される。
【0030】
また、スイッチング電源装置10の電源2次側は、第1の2次巻線S1の一端にアノードが接続されたダイオードD3と、第2の2次巻線S2の一端にアノードが接続され、カソードにダイオードD3のカソードが接続されたダイオードD4とを備える。また、スイッチング電源装置10の電源2次側は、出力端子Vo1(陽極側)とダイオードD3、D4のカソードとの接続点、及び出力端子Vo2(陰極側)と、の間に接続されたコンデンサC6を備える。
【0031】
また、スイッチング電源装置10の電源2次側は、出力端子Vo1及びVo2に接続された出力電圧検出部30を備える。出力電圧検出部30は、出力端子Vo1に一端が接続された抵抗R8と、出力端子Vo1に一端が接続された抵抗R8、R9と、抵抗R8の他端にアノードが接続されたフォトカプラPC1のLEDと、一端が抵抗R9の他端に接続された抵抗R7とを備える。また、出力電圧検出部30は、一端がフォトカプラPC1のLEDのカソードと、他端がフォトカプラPC1のLEDのアノードと接続された抵抗R6と、フォトカプラPC1のLEDのカソードと、R7の他端との間に接続されたコンデンサC7とを備える。また、出力電圧検出部30は、カソードがフォトカプラPC1のLEDのカソードと、アノードが出力端子Vo2と、レファレンスが抵抗R9の他端と接続されたシャントレギュレータSR1と、シャントレギュレータSR1のレファレンスとアノードとの間に接続された抵抗R10とを備える。
【0032】
図2は、スイッチング電源装置10の制御IC20の構成を示すブロック図である。制御IC20は、端子VHからの電圧を受けて端子VCCを介してコンデンサC3に起動電流を供給する起動回路21と、端子FB及び端子CSからの信号を受信する発振回路22と、発振回路22からの信号を受信する制御回路23とを備える。また、制御IC20は、制御回路23から信号を受信し、端子HOに信号を出力するハイサイドドライブ回路24と、制御回路23からの信号を受信し、端子LOに信号を送信するローサイドドライブ回路25と、端子VCC及びSTBからの信号を受信し、端子CSを介してコンデンサC10に対する充放電電流を供給して端子CSの電圧を制御するバースト制御回路26とを備える。なお、
図1に示すコンデンサC4は、ハイサイドドライブ回路24を含むハイサイド側回路の電源を供給するもので、端子VBがハイサイド側の高電位側電源端子、端子VSがハイサイド側の低電位側電源端子となる。コンデンサC4は、スイッチング素子Q1がOFF、スイッチング素子Q2がONとなってスイッチング素子Q1とQ2の接続点電位が電源端子Vi2(陰極側)と同電位になっているときに、ダイオードD2を介して充電される。また、
図1に示すコンデンサC3がローサイドドライブ回路25を含むローサイド側回路の電源を供給するもので、端子VCCがローサイド側の高電位側電源端子、端子GNDがローサイド側の低電位側電源端子となる。
【0033】
図3は、
図2のバースト制御回路26の構成を示す回路図である。バースト制御回路26は、非反点入力端子に端子VCCが、反転入力端子に参照電源VBrefが接続されたヒステリシス特性を有する比較器CMP1と、一端のゲートにCMP1の出力が、他端のゲートにSTB端子が接続された論理回路AND1とを備える。また、バースト制御回路26は、論理回路AND1の出力が入力されるインバータINV1と、例えばMOSFETにより構成され、インバータINV1の出力が制御信号として(ゲートに)入力され、ドレインが端子CSに接続されるスイッチSW1と、例えばNチャネルMOSFETにより構成され、論理回路AND1の出力が制御信号として(ゲートに)入力され、ドレインが接地されるスイッチSW2とを備える。スイッチSW1、SW2は制御信号がHレベルのときON(導通)となり、制御信号がLレベルのときOFF(遮断)となる。また、バースト制御回路26は、電源VDDとスイッチSW1の間に接続された電流源VA1と、端子CSとスイッチSW1の接続点、及びスイッチSW2との間に接続された電流源VA2とを備える。ここで、電流源VA1の値Ichgは端子CSに接続されたコンデンサC10の充電電流、電流源VA2の値Idchgは端子CSに接続されたコンデンサC10の放電電流の値である。スイッチSW1及びSW2と、電源VDDと、電流源VA1及びVA2と、グラウンド端子とは、充放電回路を形成する。
【0034】
[スイッチング電源装置の動作:通常動作モード]
次に、スイッチング電源装置10の動作について説明する。まず、スイッチング電源装置10が通常動作モードである場合について説明する。通常動作モードでは、スイッチング電源装置10の出力電圧に応じてスイッチング素子Q1及びQ2をスイッチング制御する。この場合、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2は交互にON状態になる。具体的には、制御IC20が、スイッチング素子Q1をON状態にすると共にスイッチング素子Q2をOFF状態にしたり、スイッチング素子Q1をOFF状態にすると共にスイッチング素子Q2をON状態にしたりするように制御すると、1次巻線P1に高周波電流が供給され、1次巻線P1に磁束が発生する。1次巻線P1に発生した磁束は、補助巻線P2、第1の2次巻線S1及び第2の2次巻線S2を貫く。したがって、補助巻線P2、第1の2次巻線S1及び第2の2次巻線S2には起電力が発生する。第1の2次巻線S1及び第2の2次巻線S2に発生した起電力は、ダイオードD3及びダイオードD4により整流されて、コンデンサC6により平滑化されて、出力端子Vo1から出力される。補助巻線P2に発生した起電力は、ダイオードD1により整流され、端子VCCを介して制御IC20に供給される。
【0035】
ここで、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2とのON−OFFの切替は、制御IC20の制御回路23によって行う。制御回路23は、ON−OFFの切替周波数(スイッチング周波数)の信号を発振回路22から受信する。スイッチング周波数は、発振回路22において端子FBの電圧VFB及び端子CSの電圧VCSの値のいずれか小さいほうに応じて決定される。
図4は、電圧VFBの電圧域あるいは電圧VCSの電圧域とスイッチング周波数との関係を示す図である。端子FBの電圧VFBあるいは端子CSの電圧VCSが0の場合、スイッチング周波数は0であるが、電圧が上昇すると、ある一定の値(VCSON)で、スイッチング周波数は最大(
図4のMaximum)になり、電圧上昇に伴い下降して、一定の周波数(
図4のMinimum)に収束する。
図1に示すような電流共振型のDC−DCコンバータにおいては、伝達比率(出力電圧/入力電圧)はスイッチング周波数によって決まり、
図4に示すMinimumとMaximumの間のスイッチング周波数においては、スイッチング周波数が高いほど伝達比率は低くなる。 ここで、通常動作モードにおける端子CSの電圧VCS(第1の周波数制御電圧)について説明する。
図3のバースト制御回路の端子STBには、スタンバイ信号が入力されるが、通常動作モードにおいては、スタンバイ信号はLレベルとなる。したがって、比較器CMP1の出力に関わらず論理回路AND1からはLレベルの信号が出力される。そうすると、インバータINV1からHレベルの信号が出力されるため、スイッチSW1はON、スイッチSW2はOFFとなる。そうすると端子CSに接続されたコンデンサC10は電源VDDの電位VDDまで充電されてそのまま電位VDDに固定される。
【0036】
端子FBの電圧VFB(第2の周波数制御電圧)については、スイッチング電源装置10の出力電圧に依存する。具体的には、以下の通りになる。
【0037】
スイッチング電源装置10の出力電圧は、出力電圧検出部30によって検出される。出力電圧検出部30は、検出したスイッチング電源装置10の出力電圧が高くなるに従って、フォトカプラPC1を流れる電流を増加させて、フォトカプラPC1のLEDから出射される光の光量を増加させる。
【0038】
出力電圧検出部30のシャントレギュレータSR1は、内蔵された基準電圧と、出力端子Vo1からの出力電圧を抵抗R9及びR10により分圧した電圧と、の誤差を増幅し、フォトカプラPC1に流す電流を調整する。抵抗R8はフォトカプラPC1の電流制限抵抗、抵抗R6はシャントレギュレータSR1に必要最小限の電流を流す値に設定される。また、抵抗R7とコンデンサC7は帰還定数を設定する。
【0039】
すなわち、出力端子Voからの出力電圧がシャントレギュレータSR1の基準電圧と抵抗R9及びR10の分圧比で決まる所定の電圧より低下した場合は、フォトカプラPC1に流す電流が減少し、フォトカプラPC1のLEDから出射する光量が減少する。また、出力端子Voからの出力電圧がシャントレギュレータSR1の基準電圧と抵抗R9及びR10の分圧比で決まる所定の電圧より上昇した場合は、フォトカプラPC1に流れる電流が増加し、フォトカプラPC1のLEDから出射する光量が増加する。
【0040】
フォトカプラPC1のLEDから出射された光は、フォトカプラPC1のフォトトランジスタにより受光される。フォトカプラPC1のフォトトランジスタが受光した光量が増加するに従って、制御IC20の端子FBから引き抜かれる電流量が増加し、制御IC20内部の当該電流による電圧ドロップが大きくなるため、電圧VFB(=基準電圧値−前記電圧ドロップ)が減少する。一方で、受光した光量が減少した場合、制御IC20の端子FBから引き抜かれる電流量が減少し、制御IC20内部の当該電流による電圧ドロップが小さくなるため、電圧VFBが上昇する。すなわち、端子FBの電圧VFBは、スイッチング電源装置10の出力電圧が高くなるに従って、減少する。
【0041】
制御IC20の発振回路22は、端子FBの電圧VFB(第2の周波数制御電圧)と、端子CSの電圧VCS(第1の周波数制御電圧)とを比較し、どちらか小さいほうの電圧値(第3の周波数制御電圧)により発振周波数を決定する構成となっている。しかしながら通常動作モードでは、端子FBの電圧VFBが電源VDDの電位VDDに固定されている端子CSの電圧VCSより高くなることはないので、端子FBの電圧VFBのみにより発振周波数が決定される。制御IC20は、スイッチング素子Q1及びQ2を、端子FBの電圧に応じてスイッチング制御することで、出力電圧を所望の値に制御することができる。
【0042】
すなわち、出力電圧が所望の値より高くなると端子FBの電圧VFBが低下し、電圧VFBの低下によりスイッチング周波数が高くなる。スイッチング周波数が高くなると、電流共振型のDC−DCコンバータは出力電圧が下がるよう機能する。また、出力電圧が所望の値より低くなると端子FBの電圧VFBが上昇し、電圧VFBの上昇によりスイッチング周波数が低くなる。スイッチング周波数が低くなると、電流共振型のDC−DCコンバータは出力電圧が上がるよう機能して、出力電圧を所望の値に制御する。
【0043】
[スイッチング電源装置の動作:スタンバイモード]
次に、スイッチング電源装置10のスタンバイモードの動作について説明する。スタンバイモードでは、スイッチング素子Q1及びQ2に対してバースト動作を行うように制御する。スタンバイモードにおけるバースト動作により、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2とが交互にON状態になるスイッチング期間と、スイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q2双方が、OFFになり、スイッチングが一時停止するスイッチング休止期間とが交互に繰り返される。
【0044】
まず、スタンバイモードにおけるスイッチング電源装置10の制御IC20の動作、特にバースト制御回路26における動作について説明する。スタンバイモードの場合、
図3のバースト制御回路26の端子STBには、Hレベルのスタンバイ信号が入力される。一方で、比較器CMP1の非反転入力端子には、端子VCCを介してコンデンサC3から電圧VCCが供給される。端子VCCの電圧VCC(端子VCCの電圧もVCCと記す)と、比較器CMP1の反転入力端子に接続された参照電源VBrefの参照電圧VBH/VBL(VBH>VBL)は比較される。ここで比較器CMP1はヒステリシス特性を有し、電圧VCCが上昇してVBHを超えるまではLレベルの信号を出力し、電圧VCCが下降してVBLを下回るまではHレベルの信号を出力する。
【0045】
比較器CMP1の端子からHレベルの信号が出力されると、論理回路AND1からはHレベルの信号が出力される。そうすると、論理回路AND1の信号はインバータINV1において反転され、バースト制御回路26の充放電回路を形成するスイッチSW1にLレベルの制御信号が、スイッチSW2にHレベルの制御信号が出力される。このとき、スイッチSW1はOFFとなり、スイッチSW2はONとなる。一方で、比較器CMP1の端子からLレベルの信号が出力されると、論理回路AND1からはLレベルの制御信号が出力される。そうすると、論理回路AND1の信号はインバータINV1において反転され、スイッチSW1にHレベルの制御信号が、スイッチSW2にLレベルの制御信号が出力される。このとき、スイッチSW1はONとなり、スイッチSW2はOFFとなる。
【0046】
まとめると、1.電圧VCCが上昇しVBHを超えるまでは、スイッチSW1はONとなり、スイッチSW2はOFFとなる。2.電圧VCCがVBHを超えると、スイッチSW1はOFFとなり、スイッチSW2はONとなる。3.電圧VCCが下降しVBLを下回るまでは、スイッチSW1はOFFであり、スイッチSW2はONである。4.電圧VCCがVBLを下回ると、スイッチSW1はONとなり、スイッチSW2はOFFとなる。以降は、上記1〜4を繰り返す。
【0047】
充放電回路を形成するスイッチSW1がONし、SW2がOFFすると、電流源VA1の充電電流IchgによりコンデンサC10への電流の充電が行われ、電圧VCSが徐々に上昇する。また、スイッチSW1がOFFし、SW2がONすると、電流源VA2の放電電流IdchgによりコンデンサC10からの電流の放電が行われ、電圧VCSが徐々に下降する。
【0048】
次に、スタンバイモードにおける制御IC20の端子VCCの電圧VCC及び端子CSの電圧VCSの変化について説明する。
図5は、スタンバイモードにおける制御IC20の端子VCCの電圧VCC及び端子CSの電圧VCSのタイミングチャートである。なお、Ic5は共振コンデンサC5に流れる共振電流を示す。
【0049】
スイッチング電源装置の諸定数は、スタンバイモードのときの端子FBの電圧VFBが電圧VCSONよりある程度大きくなるように設定されるのが通常である。したがって、スタンバイモードでは、基本的には、端子CSの電圧VCSの方が端子FBの電圧VFBより小さくなり、スイッチング周波数は電圧VCSによって決定される。
【0050】
まず、スイッチング電源装置10の電源端子Vi1に電源が入力されると、起動回路から端子VCCに接続されているコンデンサC3に充電電流が供給され、制御回路23の電源電圧でもある電圧VCCが上昇してスイッチング素子Q1及びQ2のスイッチング動作が開始される。スイッチングが開始すると、補助巻線P2に起電力が発生し、補助巻線P2から端子VCCを介してコンデンサC3に充電電流が供給されるようになる。そして、端子VCCの電圧VCCがある程度上昇し、起動回路から電流を供給しなくてもスイッチングを行えるようになると、起動回路からの電流供給は停止される。
【0051】
端子VCCの電圧VCCがVBLを下回ってからVBHを超えるまでは(上記1の状態)スイッチSW1がONとなり、スイッチSW2がOFFとなる。そうすると、充電電流IchgがコンデンサC10に蓄積されていく。すると、CS端子の電圧VCSも上昇する。VCSが上昇してしきい値VSCONを超えると、スイッチング素子Q1及びQ2のスイッチングが開始され(スイッチング期間)、端子CSの電圧VCSは上昇を続ける。スイッチング期間の最初ではスイッチング動作によりコンデンサC3のエネルギーが消費されて端子VCCの電圧VCCが下がるが、直に補助巻線P2からコンデンサC3に電流が供給されるようになり、端子VCCの電圧VCCは上昇に転ずる。
【0052】
次に、電圧VCCがVBHを超えると(上記2の状態)、スイッチSW1がOFFとなり、スイッチSW2がONとなる。そうすると、コンデンサC10に蓄積されていた電荷が放電電流Idchgによりグラウンドに放電される。端子CSの電圧VCSは徐々に下がり、最後には0になる。ここで電圧VCSが下降し、しきい値VSCONを下回るまではスイッチング素子Q1及びQ2のスイッチングが行われる。
【0053】
電圧VCSがしきい値VSCONを下回るとスイッチング素子Q1及びQ2のスイッチングが停止し、電圧VCCが下降する。電圧VCCの下降中(上記3の状態)は、スイッチSW1がOFF、スイッチSW2がONのままで電圧VCSは上昇しない。従ってスイッチング素子Q1及びQ2のスイッチングが行われない(スイッチング休止期間)。
【0054】
電圧VCCが下降してVBLを下回ると(上記4の状態)、再びスイッチSW1がONとなり、スイッチSW2がOFFとなる。そうすると、充電電流IchgがCS端子に流れ始め、コンデンサC10に蓄積されていく。すると、CS端子の電圧VCSも上昇する。
【0055】
電圧VCSが上昇してしきい値VSCONを超えると、スイッチング素子Q1及びQ2のスイッチングが開始され(スイッチング期間)、補助巻線P2からの充電電流が再び供給されるようになる(上記1の状態)。補助巻線P2からの充電電流がコンデンサC3に蓄積されて、電圧VCCが再び上昇し始める。
【0056】
制御IC20の発振回路22は、端子FBの電圧VFB(第2の周波数制御電圧)と、端子CSの電圧VCS(第1の周波数制御電圧)とを比較し、どちらか小さいほうの電圧値(第3の周波数制御電圧)により発振周波数を決定する。電圧VFBは、通常動作モードと同様の原理により生成されるが、上述のようにスタンバイモードでは基本的には電圧VCSにより発振周波数が決定される。
【0057】
スタンバイモードにおいて、スイッチング休止期間の補助巻線の電圧VCCは、必ずしも2次側の出力電圧Voと対応しない。これは、補助巻線からの電流を蓄積して制御回路に供給するコンデンサの容量値と、2次側の巻線からの電流を蓄積して負荷に供給するコンデンサの容量値との差異、及び制御回路の消費電流と負荷の消費電流との差異等により、補助巻線の電圧と負荷電流とが正確に対応できないためである。このような場合、例えば特許文献2のように補助巻線の電圧VCCを参照して生成した電圧VCSのみにより発振周波数を決定すると、スタンバイモードにおいて出力電圧に応じたバースト動作を正確に行うことができず、スイッチング電源装置の効率改善が達成できない。したがって、より正確な制御を行うのならば、電圧VCSだけでなく、バースト動作においても出力電圧に対応する電圧である電圧VFBを参照する必要がある。
【0058】
発振周波数は、具体的には、電圧VCSが上昇して、電圧VFBを超えるまでは、電圧VCSにより発振周波数が決定される。上記のように、スタンバイモードでは、基本的には電圧VCSの動作範囲が電圧VFBより小さくなるよう設定されるが、負荷が消費する電力よりバースト動作で供給される電力の方が大きいと出力電圧が徐々に上昇するとともに電圧VFBが下がり、電圧VFBが電圧VCSの動作範囲に入るようになる。電圧VCSが電圧VFBを超えると、電圧VFBにより発振周波数が決定され、電圧VCSにより決まるものよりスイッチング周波数が高くなり、伝達比率(出力電圧/入力電圧)が低くなって出力電圧の上昇が抑制される。電圧VCSが下降して電圧VFBを下回ると、再び電圧VCSにより発振周波数が決定される。電圧VFBと、電圧VCSとを比較し、どちらか小さいほうの電圧値により発振周波数を決定することにより、バースト動作を行う際、補助巻線P2の電圧VCCからの情報に依存する電圧VCSだけでなく、出力電圧に対応する電圧である電圧VFBの情報も取り込むことにより、スタンバイモードにおいてより正確に出力電圧を制御することができる。
【0059】
ここで、上述の第3の周波数制御電圧が徐々に上昇する場合、ソフトスタートが開始される。例えば第3の周波数制御電圧が電圧VCSである場合、上記1の状態である場合又は3から4の状態に変化すると、電圧VCSは値が0から徐々に上昇する。電圧VCSが上昇してしきい値VSCONを超えると発振回路においてスイッチング周波数が発生し、その後、電圧VCSの値の上昇に従ってスイッチング周波数が徐々に下がっていく。そうすると2次巻線に発生する起電力が徐々に大きくなるソフトスタートを行うことができる。
【0060】
また、上述の第3の周波数制御電圧が徐々に下降する場合、ソフトエンドが開始される。例えば第3の周波数制御電圧が電圧VCSである場合、上記1から2の状態に変化すると、電圧VCSは値が下降する。電圧VCSの値の下降に従って、発振回路においてスイッチング周波数が徐々に上がり、しきい値VSCONで最大になる。しきい値VSCONを超えるとスイッチング周波数が0になり、スイッチングが停止する。これにより2次巻線に発生する起電力が徐々に小さくなるソフトエンドを行うことができる。
【0061】
ソフトエンドにおいては、スイッチングしても、出力電圧が上がらない領域がある。この領域を無効領域という。無効領域は、入力電圧と伝達比率で決まる2次巻線からの出力電圧がコンデンサC6の電圧より低く、スイッチ端子Q1及びスイッチ端子Q2のスイッチングを行ってもコンデンサC6や出力端子にエネルギーを送れない状態の領域である。無効領域は、ソフトエンド時に電圧VCSが低下してスイッチング周波数が上昇し、伝達比率が下がることにより発生する。無効領域は、スイッチング周波数が高いとき、電源2次側の出力電圧、又は補助巻線の出力電圧VCCが高いとき、又は入力電圧が低いときに、特に発生しやすい。
【0062】
スイッチング電源装置10においては、
図5のようにソフトスタートよりソフトエンド時の負荷電圧が高いため、ソフトスタート時よりソフトエンド時に無効領域は発生しやすい。そのため、ソフトエンド時の無効領域を減らす対策が必要である。この場合、ソフトエンド時の端子CSの電圧VCSの傾きの傾斜が急になるようにすることにより補助巻線の出力電圧VCCを低くして無効領域を減らすることができる。電圧VCSの傾きの傾斜が急になると、電圧VCSが下降し始めてからのスイッチングが停止するまでの期間(無効領域が発生する期間)を短くできるからである。具体的には、Idchg≧Ichgとすると、ソフトエンド時の電圧VCSの傾きの傾斜を急にすることができる。
【符号の説明】
【0063】
10 スイッチング電源装置
20 制御IC
21 起動回路
22 発振回路
23 制御回路
24 ハイサイドドライブ回路
25 ローサイドドライブ回路
26 バースト制御回路
30 出力電圧検出部
Vi1、Vi2 電源端子
Vo1、Vo2 出力端子
C1〜C10 コンデンサ
R1〜R10 抵抗
D1〜D4 ダイオード
Q1、Q2 スイッチング素子
PC1 フォトカプラ
SR1 シャントレギュレータ
T1 トランス
P1〜P4、S1、S2 巻線
VH、CS、STB、FB、VB、VS、HO、LO、VCC、GND 端子
CMP1 比較器
AND1 論理回路
SW1、SW2 スイッチ
VDD 電源
VA1、VA2 電流源