(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1反応器の前記保持部は、前記保持部の伝熱面に設けられ液状の熱交換媒体を収容して一時的に保持する収容部を備えている請求項1又は請求項2記載のヒートポンプ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
図1には本実施形態に係る吸着式ヒートポンプ10が示されている。吸着式ヒートポンプ10は、主な構成要素として、蒸発器12、吸着器14、蓄熱器16、凝縮器18、液タンク20及び制御部22(
図5参照)を備えている。
【0019】
なお、本実施形態において、吸着式ヒートポンプ10は本発明に係るヒートポンプの一例であり、蒸発器12は本発明における蒸発器の一例であり、吸着器14は本発明における第1反応器の一例である。また、本実施形態において、蓄熱器16は本発明における第2反応器の一例であり、凝縮器18は本発明における凝縮器の一例であり、液タンク20は本発明における貯留部の一例である。更に、本実施形態において、制御部22は後述するバルブ駆動部36及びバルブ群38と共に、本発明における切替部の一例である。
【0020】
蒸発器12は、配管116を介して液タンク20と接続されており、液タンク20から熱交換媒体が供給され、供給された熱交換媒体を蒸発(気化)させることで冷熱を生成する。なお、熱交換媒体Fとしては、例えば、水、或いはアンモニアを用いることができる。水及びアンモニアは、吸着式ヒートポンプ10において求められる条件(温度及び圧力)で吸着材に対し吸着及び脱着し、しかも安価に調達できる。但し、熱交換媒体は、例えば炭素数1〜4のアルコール等を用いてもよいし、単一物質を用いても2種以上の混合物を用いてもよい。
【0021】
蒸発器12は、熱交換用流体(例えば水又は水と水溶性溶剤との混合溶媒)で満たされた配管24が内部に配設されており、配管24の両端には配管26,28の一端が接続されている。配管26,28の他端は冷熱負荷30に各々接続されており、熱交換用流体の循環路が形成されている。循環路には図示しない循環用ポンプが設けられており、当該循環用ポンプによって循環路内を熱交換用流体が循環して流通することで、蒸発器12で生成された冷熱(例えば15[℃]の冷熱)が冷熱負荷30に供給される。なお、冷熱負荷30の具体例は特に限定されないが、例えば、冷熱負荷30としては空調負荷、より詳しくは空調装置の室外機が挙げられる。
【0022】
また、配管26,28の途中にはバルブ32,34が設けられている。バルブ32,34は、モータ等を含むバルブ駆動部36(
図5参照)によって開閉される。なお、
図5では、吸着式ヒートポンプ10に設けられた各バルブを「バルブ群38」と総称して表記している。バルブ駆動部36は制御部22(
図5参照)に接続されており、バルブ32,34の開閉は制御部22によって制御される。
【0023】
蒸発器12には配管40,42の一端が接続され、配管40の他端は吸着器14(の後述する吸着部70)に接続されており、配管40を介して蒸発器12と吸着器14(の吸着部70)は連通されている。また、配管42の他端は吸着器14(の後述する保持部72)に接続されており、配管42を介して蒸発器12と吸着器14(の保持部72)は連通されている。配管40,42の途中にはバルブ44,46が設けられている。バルブ44,46はバルブ駆動部36(
図5参照)によって開閉され、バルブ44,46の開閉は制御部22(
図5参照)によって制御される。
【0024】
図2及び
図3に示すように、吸着器14は、第1熱交換媒体F1と反応して第1熱交換媒体F1の吸着及び脱着を行う吸着材層64を含む吸着室62を複数備えた吸着部70と、第2熱交換媒体F2が流通する流路66を複数備えた保持部72と、が設けられた吸着器筐体60を有している。吸着部70の個々の吸着室62と保持部72の個々の流路66とは隔壁を隔てて互いに分離されており、吸着部70の吸着材層64と、保持部72の流路66の壁面(伝熱面)と、の間で熱交換可能とされている。また吸着器14は、吸着部70の吸着室62と保持部72の流路66とが交互に配置されており、これにより上記の熱交換の効率が向上されている。
【0025】
なお、本実施形態において、吸着部70は本発明における第1反応器の反応部の一例であり、保持部72は本発明における第1反応器の保持部の一例である。
【0026】
また、吸着器14において、吸着部70の吸着室62は、一端が扁平矩形状の開口端である四角柱状空間とされている。一方、保持部72の流路66は、両端が扁平矩形状の開口端である四角柱状空間とされている。そして吸着器14は、吸着室62の開口方向(第1熱交換媒体F1の流通方向)と流路66の開口方向(第2熱交換媒体F2の流通方向)とが側面視で直交する、直交流型の熱交換器とされている。
【0027】
なお、吸着部の吸着室及び保持部の流路の数は、
図2及び
図3に示す数に限定されないことは勿論であり、吸着部70における第1熱交換媒体F1の吸着量や、保持部72の流路66の壁面の保持構造(後述する凹部68)に保持される第2熱交換媒体F2の量、吸着器14に入出力される熱量等を考慮して適宜設定される。
【0028】
各吸着室62内の相対する一対の壁面には、それぞれ吸着材層64が設けられており、一方の吸着材層64の表面と他方の吸着材層64の表面との間には空間(隙間)が設けられている。これにより、吸着材層64の表面全体で、第1熱交換媒体F1の吸着及び脱着を効率良く行えるようになっている。
【0029】
吸着室62には対向する壁面が二対存在し、面積が広い方の一対の壁面(吸着室62の空間の厚み方向に直交する一対の壁面)にのみ吸着材層64が設けられている。しかし、吸着材層64は、面積が広い方の一対の壁面(吸着室62の空間の厚み方向に直交する一対の壁面)に加え、面積が狭い方の一対の壁面(第2熱交換媒体F2の流通方向に直交する一対の壁面)にも設けられていてもよいし、更には吸着室62内の壁面全面(五面)に設けられていてもよい。
【0030】
一方、吸着器14の保持部72の各流路66は、上記の吸着材層64を加熱し且つ冷却する第2熱交換媒体F2を流通する流路である。詳細には、吸着器14では、第2熱交換媒体F2が流路66の壁面で凝縮するときに、その凝縮熱によって吸着材層64が加熱される。更に、第2熱交換媒体F2が流路66の壁面で蒸発するときに、その蒸発熱によって吸着材層64が冷却される。
【0031】
各流路66の相対する一対の壁面には、
図4に示すように、開口部が正六角形状である凹部68(保持構造)が複数設けられている。詳細には、各凹部68は、一端に正六角形状の開口部を有する六角柱状空間となっている。本実施形態では、これらの凹部68(保持構造)によって、凝縮した第2熱交換媒体F2(液体)が保持される。本実施形態では、この凹部68を備えたことにより、流路66の壁面で第2熱交換媒体F2の蒸発及び凝縮を繰り返し行うことができ、ひいては吸着室62内で第1熱交換媒体F1の吸着及び脱着を繰り返し行うことができる。特に、凹部68は、開口部が正六角形状であるため、第2熱交換媒体F2を取り囲む凹部68の壁面全体(底面及び6つの側壁面)を通じて第2熱交換媒体F2を効率よく加熱し、蒸発させることができる。
【0032】
また、
図4に示すように、複数の凹部68は、流路の壁面(伝熱面)にハニカム状に配列されている。この配列により、流路の壁面における複数の凹部68の配列密度が高くなっており、流路の壁面の単位面積当たりに保持できる液体状態の第2熱交換媒体F2の量が高くなっている。
【0033】
なお、凹部68の数は、
図4に示す数に限定されないことは勿論であり、保持部72に保持される第2熱交換媒体F2の体積や、吸着器14に入出力される熱量等を考慮して適宜設定される。また、凹部68の壁面(側壁面及び底面)には、公知の方法により表面処理(例えば親水化処理)が施されていてもよい。また、本実施形態において、凹部68は本発明における収容部の一例である。
【0034】
また、本実施形態では、吸着器14の吸着材層64の吸着材として、AQSOA−Z05(「AQSOA」は三菱樹脂株式会社の登録商標)を用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、活性炭、メソポーラスシリカ、ゼオライト、シリカゲル、粘土鉱物等であってもよい。また、本実施形態では、第1熱交換媒体F1及び第2熱交換媒体F2として、蒸発器12から同一の熱交換媒体Fが供給される。
【0035】
また、吸着器筐体60(流路66の壁面を含む)の材質としては、金属(例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金等)等の、熱伝導性が高く、かつ、熱交換媒体Fに対して耐食性を有する材質が好適である。上述した吸着器14は、伝熱抵抗と物質移動抵抗が軽減されることで、吸着材層64の細孔内部での流体の相速度変化が支配的となって吸着及び脱離の速度が定まる構成になっている。
【0036】
吸着器14の吸着部70には配管48の一端が接続されており、配管48の他端は蓄熱器16に接続されている。吸着器14の吸着部70と蓄熱器16は配管48を介して連通されており、吸着部70の吸着材層64から脱着した熱交換媒体は蓄熱器16に案内される。配管48の途中にはバルブ50が設けられている。バルブ50はバルブ駆動部36(
図5参照)によって開閉され、バルブ50の開閉は制御部22(
図5参照)によって制御される。
【0037】
蓄熱器16は、前述した吸着器14と同様に、熱交換媒体と反応して熱交換媒体を吸着し、外部からエネルギーが加えられると熱交換媒体を脱着する吸着材を含む吸着部を備えている。本実施形態では、蓄熱器16の吸着材として、Y型ゼオライトを用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、活性炭、メソポーラスシリカ、ゼオライト、シリカゲル、粘土鉱物等であってもよい。また、蓄熱器16が吸着・保持可能な熱交換媒体の容量は、吸着器14の吸着部70が保持可能な熱交換媒体の容量よりも大きく(例えば2倍程度と)されている。
【0038】
また、蓄熱器16は、熱交換用流体で満たされた配管52が内部に配設されており、配管52の両端には配管54,56の一端が接続されている。配管54,56の他端は中温熱源58に各々接続されており、熱交換用流体の循環路が形成されている。また、配管54,56の途中にはバルブ80,82が設けられている。バルブ80,82はバルブ駆動部36(
図5参照)によって開閉され、バルブ80,82の開閉は制御部22(
図5参照)によって制御される。循環路には図示しない循環用ポンプが設けられており、バルブ80,82が開放されている状態で、前記循環用ポンプによって循環路内を熱交換用流体が循環して流通することで、中温熱源58から蓄熱器16に中温(例えば30[℃])の熱交換用流体が供給される。
【0039】
また、蓄熱器16は、熱交換用流体で満たされた配管84が内部に配設されており、配管84の両端には配管86,88の一端が接続されている。配管86,88の他端は高温熱源90に各々接続されており、熱交換用流体の循環路が形成されている。また、配管86,88の途中にはバルブ92,94が設けられている。バルブ92,94はバルブ駆動部36(
図5参照)によって開閉され、バルブ92,94の開閉は制御部22(
図5参照)によって制御される。循環路には図示しない循環用ポンプが設けられており、バルブ92,94が開放されている状態で、前記循環用ポンプによって循環路内を熱交換用流体が循環して流通することで、高温熱源90から蓄熱器16に高温(例えば200[℃])の熱交換用流体が供給される。
【0040】
なお、中温熱源58及び高温熱源90の具体例は特に限定されないが、中温熱源58は蒸発器12が生成する冷熱よりも高温であり、高温熱源90は中温熱源58よりも高温である。中温熱源58としては、例えば外気等を用いることができる。高温熱源90としては、例えば、内燃機関を搭載した車両の排気ガス等を用いることができる。
【0041】
蓄熱器16の吸着部には配管96の一端が接続され、配管96の他端は凝縮器18に接続されており、蓄熱器16の吸着部と凝縮器18は配管96を介して連通されている。配管96の途中にはバルブ98が設けられている。バルブ98はバルブ駆動部36(
図5参照)によって開閉され、バルブ98の開閉は制御部22(
図5参照)によって制御される。バルブ98が開放されている状態で、蓄熱器16の吸着部から脱着した熱交換媒体は凝縮器18に案内される。
【0042】
吸着器14の保持部72には配管100の一端が接続され、配管100の他端は凝縮器18に接続されており、吸着器14の保持部72と凝縮器18は配管100を介して連通されている。配管100の途中にはバルブ102が設けられている。バルブ102はバルブ駆動部36(
図5参照)によって開閉され、バルブ102の開閉は制御部22(
図5参照)によって制御される。バルブ102が開放されている状態で、吸着器14の保持部72から脱離した熱交換媒体は凝縮器18に案内される。
【0043】
凝縮器18は、熱交換用流体で満たされた配管104が内部に配設されており、配管104の両端には配管106,108の一端が接続されている。配管106,108の他端は中温熱源58に各々接続されており、熱交換用流体の循環路が形成されている。また、配管106,108の途中にはバルブ110,112が設けられている。バルブ110,112はバルブ駆動部36(
図5参照)によって開閉され、バルブ110,112の開閉は制御部22(
図5参照)によって制御される。循環路には図示しない循環用ポンプが設けられており、バルブ110,112が開放されている状態で、前記循環用ポンプによって循環路内を熱交換用流体が循環して流通することで、中温熱源58から凝縮器18に中温(例えば30[℃])の熱交換用流体が供給される。
【0044】
凝縮器18では、吸着器14の保持部72又は蓄熱器16の吸着部から送り込まれた熱交換媒体が、配管104によって冷却されて凝縮される。凝縮器18は配管114を介して液タンク20と接続されており、凝縮器18で凝縮された熱交換媒体は、配管114を経由して液タンク20へ送られ、液タンク20に貯留される。
【0045】
図5に示すように、制御部22は、CPU120、ROMやRAM等を含むメモリ122、ハードディスクドライブ、或いはフラッシュメモリを含む不揮発性の記憶部124、入出力(I/O)インタフェース部126を備えている。記憶部124には、CPU120が後述するヒートポンプ制御処理を行うためのヒートポンプ制御プログラム128がインストールされている。先に説明したバルブ駆動部36はI/Oインタフェース部126に接続されている。
【0046】
次に本実施形態の作用を説明する。吸着式ヒートポンプ10の制御部は、電力が供給されている間、
図6に示すヒートポンプ制御処理を行う。なお、ヒートポンプ制御処理は本発明に係る冷熱生成方法が適用された処理である。
【0047】
本実施形態に係る吸着式ヒートポンプ10は、動作ステップとして、第1の冷熱生成ステップ、第2の冷熱生成ステップ及び蓄熱器再生ステップが設けられている。各ステップの詳細は後述するが、第1の冷熱生成ステップでは、蒸発器12で蒸発した熱交換媒体を吸着器14の吸着部70で吸着することで、蒸発器12で冷熱が生成される。また、第2の冷熱生成ステップでは、蒸発器12で蒸発した熱交換媒体を吸着器14の保持部72で保持することで、蒸発器12で冷熱が生成される。また、蓄熱器再生ステップでは、蓄熱器16の吸着部から熱交換媒体を脱着することで、蓄熱器16が再生される。
【0048】
ヒートポンプ制御処理のステップ200において、制御部22は、第1の冷熱生成ステップを開始するタイミングが到来したか否か判定する。ステップ200の判定が否定された場合はステップ202へ移行し、ステップ202において、制御部22は、第2の冷熱生成ステップを開始するタイミングが到来したか否か判定する。ステップ202の判定が否定された場合はステップ204へ移行し、ステップ204において、制御部22は、蓄熱器再生ステップを開始するタイミングが到来したか否か判定する。ステップ204の判定が否定された場合はステップ200に戻り、ステップ200〜204の何れかの判定が肯定される迄、ステップ200〜204を繰り返す。
【0049】
本実施形態において、各ステップの実行順序のパターンは、一例として、第1の冷熱生成ステップと第2の冷熱生成ステップとを交互に繰り返し、蓄熱器16の再生が必要になった時点で蓄熱器再生ステップを割り込み実行するパターンとすることができる。第1の冷熱生成ステップと第2の冷熱生成ステップの継続時間は、例えば、実験等によってそれぞれの継続時間の最適値を予め求めておき、第1の冷熱生成ステップを最適値に相当する時間継続した後、第2の冷熱生成ステップを最適値に相当する時間継続することを繰り返すことができる。また、熱交換媒体の温度を検出して後述する相対圧を算出し、算出した相対圧に基づいて第1の冷熱生成ステップと第2の冷熱生成ステップの継続時間を決定するようにしてもよい。
【0050】
また、蓄熱器再生ステップを割り込み実行するタイミングは、例えば、第1の冷熱生成ステップと第2の冷熱生成ステップの繰り返し回数が所定回に達したか否かに基づいて判定するようにしてもよいし、例えば、蓄熱器再生ステップを前回行ってからの経過時間が所定時間を越えたか否かに基づいて判定するようにしてもよい。また、蓄熱器再生ステップの継続時間については、例えば、実験等によって継続時間の最適値を予め求めておき、蓄熱器再生ステップを最適値に相当する時間継続することができる。
【0051】
(第1の冷熱生成ステップ)
第1の冷熱生成ステップを開始するタイミングが到来すると、ステップ200の判定が肯定されてステップ206へ移行する。ステップ206において、制御部22は、
図7にも示すように、蒸発器12と冷熱負荷30との間のバルブ32,34、蒸発器12と吸着器14の吸着部70との間のバルブ44、吸着器14の保持部72と凝縮器18との間のバルブ102、凝縮器18と中温熱源58との間のバルブ110,112、蓄熱器16と中温熱源58との間のバルブ80,82を各々開放する。
【0052】
また、次のステップ208において、制御部22は、
図7にも示すように、蒸発器12と吸着器14の保持部72との間のバルブ46、吸着器14の吸着部70と蓄熱器16との間のバルブ50、蓄熱器16と高温熱源90との間のバルブ92,94、蓄熱器16と凝縮器18との間のバルブ98を各々閉塞する。ステップ208の処理を行うとステップ200に戻る。なお、上記のステップ206,208は本発明における切替部による第1状態への切替えの一例である。
【0053】
上述したバルブ群38の開閉により、蒸発器12で蒸発した熱交換媒体が、蒸発器12から吸着器14の吸着部70に供給される。そして、吸着部70の吸着材(吸着材層64)は、吸着部70に供給された熱交換媒体に反応し、熱交換媒体を吸着する。
【0054】
ここで、蒸発器12で生成する冷熱の温度T1を15[℃]、吸着器14の吸着部70の温度T2を30[℃]とする。吸着器14の吸着部70における相対圧φ2は、蒸発器12の温度T1における飽和蒸気圧P1、吸着器14の吸着部70の温度T2における飽和蒸気圧P2を用いて、φ2=P1/P2となる。例えばP1=1.5[kPa]、P2=4.3[kPa]とすると、φ2≒0.348である。
【0055】
図10には、吸着器14の吸着部70や蓄熱器16の吸着部に使用可能な各種の吸着材について、相対圧と吸着量との関係を示している。
図10から、吸着器14の吸着部70で吸着材として使用しているAQSOA−Z05は、相対圧φ2が0.348のとき、吸着可能な熱交換媒体量のほぼ全量を吸着できることが明らかである。このため、蒸発器12で蒸発した熱交換媒体が吸着部70の吸着材に吸着されることで、蒸発器12で15[℃]の冷熱を生成することができる。
【0056】
また、吸着部70の吸着材への熱交換媒体の吸着に伴って吸着熱が発生し、吸着器14のうち、吸着部70と保持部72の間に存在している隔壁が加熱され、隔壁の温度が上昇する。これにより、前回の第2の冷熱生成ステップで保持部72の凹部68に保持されていた熱交換媒体が気化し、凝縮器18へ移動することで、発生した吸着熱が吸着器14から除去される。凝縮器18へ移動した熱交換媒体は、凝縮器18で凝縮された後、液タンク20へ送られる。
【0057】
(第2の冷熱生成ステップ)
また、第2の冷熱生成ステップを開始するタイミングが到来すると、ステップ202の判定が肯定されてステップ210へ移行する。ステップ210において、制御部22は、
図8にも示すように、蒸発器12と冷熱負荷30との間のバルブ32,34、蒸発器12と吸着器14の保持部72との間のバルブ46、吸着器14の吸着部70と蓄熱器16との間のバルブ50、蓄熱器16と中温熱源58との間のバルブ80,82を各々開放する。
【0058】
次のステップ212において、制御部22は、
図8にも示すように、蒸発器12と吸着器14の吸着部70との間のバルブ44、吸着器14の保持部72と凝縮器18との間のバルブ102、凝縮器18と中温熱源58との間のバルブ110,112、蓄熱器16と高温熱源90との間のバルブ92,94、蓄熱器16と凝縮器18との間のバルブ98を各々閉塞する。ステップ212の処理を行うとステップ200に戻る。なお、上記のステップ210,212は本発明における切替部による第2状態への切替えの一例である。
【0059】
上述したバルブ群38の開閉により、蒸発器12で蒸発した熱交換媒体が、蒸発器12から吸着器14の保持部72に移動し、保持部72に供給された熱交換媒体は保持部72で凝縮されて凹部68に保持される。
【0060】
また、蒸発器12から吸着器14の保持部72に移動した熱交換媒体により、吸着器14のうち、吸着部70と保持部72の間に存在している隔壁が加熱され、隔壁の温度が上昇する。これにより、吸着部70の吸着材が加熱される。また、蓄熱器16の吸着部の吸着材は、吸着器14の吸着部70から脱着して蓄熱器16に供給された熱交換媒体に反応し、熱交換媒体を吸着する。これにより、吸着器14の吸着部70に吸着されていた熱交換媒体が脱着される。このように、蒸発器12から供給された熱と、蓄熱器16の吸着部の吸着材による熱交換媒体との反応と、の相乗効果によって吸着器14の吸着部70から熱交換媒体を脱着させるので、吸着器14の吸着部70からの熱交換媒体の脱着を高効率で行うことができる。
【0061】
ここで、吸着器14の吸着部70における温度T1を15[℃]、中温熱源58の温度T2を30[℃]とする。吸着器14の吸着部70における相対圧φ1は、蓄熱器16の吸着部における温度T2での平衡圧P3、吸着器14の吸着部70における温度T1での飽和蒸気圧P4を用いて、φ1=P3/P4と定義される。実質的に、P4≒P1である。
【0062】
図10に示すY型ゼオライトの吸着等温線において、相対圧φ1=0.05になるまでY型ゼオライトを使用すると仮定した場合、蓄熱器16の吸着部における温度T2での平衡圧P3は、
P3=P2×0.05=4.3[kPa]×0.05=0.215[kPa]
となる。これにより、φ1=0.143となる。
図10から明らかなように、吸着器14の吸着部70の吸着材であるAQSOA−Z05は、相対圧が0.143のとき、吸着可能な熱交換媒体量のほぼ全量を脱着できる。このように、蒸発器12で15[℃]の冷熱が生成されることで吸着器14の吸着部70における温度T1が15[℃]になったとしても、吸着部70で吸着可能な熱交換媒体量のほぼ全量を脱着できるので、蒸発器12で15[℃]の冷熱を生成することができる。また、第2の冷熱生成ステップでは、前述のように、吸着器14の吸着部70に吸着されていた熱交換媒体のほぼ全量が脱着され、蓄熱器16の吸着部の吸着材に吸着されるので、吸着器14の吸着部70が再生される。
【0063】
上述した第1の冷熱生成ステップと第2の冷熱生成ステップとが繰り返されている間、蒸発器12では連続的に冷熱が生成される。また、吸着器14は、外部の熱源からエネルギーを直接受けることなく作動する。
【0064】
(蓄熱器再生ステップ)
また、蓄熱器再生ステップを開始するタイミングが到来すると、ステップ204の判定が肯定されてステップ214へ移行する。ステップ214において、制御部22は、
図9にも示すように、蓄熱器16と高温熱源90との間のバルブ92,94、蓄熱器16と凝縮器18との間のバルブ98、凝縮器18と中温熱源58との間のバルブ110,112を各々開放する。
【0065】
次のステップ216において、制御部22は、
図9にも示すように、蒸発器12と冷熱負荷30との間のバルブ32,34、蒸発器12と吸着器14の吸着部70との間のバルブ44、蒸発器12と吸着器14の保持部72との間のバルブ46、吸着器14の保持部72と凝縮器18との間のバルブ102、吸着器14の吸着部70と蓄熱器16との間のバルブ50、蓄熱器16と中温熱源58との間のバルブ80,82を各々閉塞する。ステップ216の処理を行うとステップ200に戻る。なお、上記のステップ214,216は本発明における切替部による第3状態への切替えの一例である。
【0066】
上述したバルブ群38の開閉により、高温熱源90から蓄熱器16に高温の熱交換用流体が供給され、蓄熱器16の吸着部の吸着材が加熱されることで、蓄熱器16の吸着部の吸着材に吸着されていた熱交換媒体が脱着する。脱着した熱交換媒体は、凝縮器18へ移動し、凝縮器18で凝縮された後、液タンク20へ送られる。これにより、蓄熱器16の吸着部が再生される。
【0067】
なお、上記では凝縮器18が設けられた態様を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、吸着器14の保持部72から気化した熱交換媒体を吸着式ヒートポンプ10の系外へ排出することで、凝縮器18を省略することも可能である。
【0068】
また、上記では蓄熱器再生ステップにおいて、蓄熱器16の吸着部の吸着材から脱着した熱交換媒体を、凝縮器18で凝縮させた後に液タンク20へ送る態様を説明したが、これに限定されるものではなく、蓄熱器16の吸着部の吸着材から脱着した熱交換媒体を、吸着器14を経由して蒸発器12へ送り、蒸発器12で凝縮させた後に液タンク20へ送るようにしてもよい。特に、前述のように凝縮器18を省略した構成においては、蓄熱器16の吸着部の吸着材から脱着した熱交換媒体を蒸発器12で凝縮させる方式は有用である。
【0069】
また、上記では本発明に係るヒートポンプの一例として吸着式ヒートポンプ10を説明すると共に、本発明における第1反応器及び第2反応器の一例として、吸着材によって熱交換媒体を吸着及び脱着する構成の吸着器14及び蓄熱器16を説明したが、本発明における第1反応器及び第2反応器は、吸着材によって熱交換媒体を吸着及び脱着する構成に限定されるものではなく、熱交換媒体の飽和蒸気圧以下の圧力で熱交換媒体と反応することで、系の圧力を低下させることが可能な反応器であればよい。ここでいう反応には、物理吸着、化学吸着、吸収、化学反応等が含まれる。