(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の反射器及び第3の反射器に連ねられており、かつ前記第2の反射器と前記第3の反射器との間の前記領域を埋めるように設けられている第1の配線層を、前記グラウンド配線が有する、請求項1に記載の弾性波装置。
前記グラウンド配線が、前記第2の反射器と前記第3の反射器との間の領域内において、前記第1の配線層に積層されており、かつ前記第2,第3の反射器に連ねられていない第2の配線層を有し、
前記第2の配線層において、前記異音速部分として、残りの部分よりも弾性波伝搬方向に沿う寸法が小さい部分が設けられている、請求項2に記載の弾性波装置。
前記グラウンド配線の前記第2の反射器と前記第3の反射器との間の領域に延ばされており、かつ弾性波伝搬領域と弾性波伝搬方向において重なる部分内において、弾性波伝搬方向と交叉する方向において、部分的に積層された質量付加部材をさらに備え、前記質量付加部材が前記異音速部分を構成している、請求項1に記載の弾性波装置。
受信フィルタと、送信フィルタとを有するデュプレクサであって、前記受信フィルタ及び前記送信フィルタのうち少なくとも一方が、請求項1〜7のいずれか一項に記載の弾性波装置からなる帯域通過型フィルタである、デュプレクサ。
複数の帯域通過型フィルタを備えるマルチプレクサであって、少なくとも1つの帯域通過型フィルタが請求項1〜7のいずれか一項に記載の弾性波装置からなる、マルチプレクサ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の弾性波装置においても、他の電子部品と同様に小型化が求められている。そのため、第1,第2の縦結合共振子型弾性波フィルタの隣り合う反射器間の距離を短くする必要がある。
【0005】
他方、縦結合共振子型弾性波フィルタでは、波を完全に閉じ込めることができないため、波が弾性波伝搬方向において、反射器よりも外側に漏洩することがある。よって、第1の縦結合共振子型弾性波フィルタから第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ側に漏洩する波と、第2の縦結合共振子型弾性波フィルタから第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ側に漏洩する波とが干渉し合う。この場合、第1,第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ間の距離が短くなると、不要モードである波の干渉による影響はより大きくなる。
【0006】
なお、不要モードである、例えば通過帯域低域側に位置している高次の縦モードを発生しないように反射器を設計することも可能である。もっとも、その場合には、通過帯域低域側における急峻性を得ることが困難となる。
【0007】
本発明の目的は、不要モードの影響を抑制することができる、弾性波装置を提供することにある。
【0008】
また、本発明の他の目的は、不要モードの影響の抑制と、通過帯域の低域側における急峻性とを両立し得る、帯域通過型フィルタである、弾性波装置、デュプレクサ及びマルチプレクサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、圧電基板と、前記圧電基板上に設けられており、複数のIDT電極と、前記複数のIDT電極が設けられている部分の弾性波伝搬方向一方側に配置された第1の反射器と、前記複数のIDT電極が設けられている部分の弾性波伝搬方向他方側に配置された第2の反射器とを有する第1の縦結合共振子型弾性波素子と、前記圧電基板上において、前記第1の縦結合共振子型弾性波素子と、前記弾性波伝搬方向に沿って並設されており、複数のIDT電極と、前記複数のIDT電極が設けられている部分の弾性波伝搬方向一方側に配置された第3の反射器と、前記複数のIDT電極が設けられている部分の弾性波伝搬方向他方側に配置された第4の反射器とを有する第2の縦結合共振子型弾性波素子と、前記第1及び第2の縦結合共振子型弾性波素子に電気的に接続されるように、前記圧電基板上に設けられているグラウンド配線とを備え、前記第2の反射器と、前記第3の反射器とが、弾性波伝搬方向において隣り合っており、前記グラウンド配線が前記第2の反射器と前記第3の反射器との間の領域において、前記弾性波伝搬方向と交叉する方向に延ばされており、前記グラウンド配線の前記第2の反射器と前記第3の反射器との間に延ばされている部分のうち、前記第1,第2の縦結合共振子型弾性波素子の弾性波伝搬領域と弾性波伝搬方向からみたときに重なる部分において、音速が残りの部分と異なる異音速部分が設けられている、弾性波装置である。
【0010】
本発明に係る弾性波装置のある特定の局面では、前記第2の反射器及び第3の反射器に連ねられており、かつ前記第2の反射器と前記第3の反射器との間の前記領域を埋めるように設けられている第1の配線層を、前記グラウンド配線が有する。
【0011】
本発明に係る弾性波装置の他の特定の局面では、前記グラウンド配線が、前記第2の反射器と前記第3の反射器との間の領域内において、前記第1の配線層に積層されており、かつ前記第2,第3の反射器に連ねられていない第2の配線層を有し、前記第2の配線層において、前記異音速部分として、残りの部分よりも弾性波伝搬方向に沿う寸法が小さい部分が設けられている。この場合には、第2の配線層において、相対的に残りの部分よりも弾性波伝搬方向に沿う寸法が小さい部分を設けるだけで異音速部分を容易に形成することができる。
【0012】
本発明に係る弾性波装置のさらに他の特定の局面では、前記異音速部分の弾性波伝搬方向に沿う寸法が0であり、前記異音速部分は、前記第2の配線層を分断しているギャップ部である。この場合には、第2の配線層に上記ギャップ部を有するように第2の配線層を成膜するだけで、異音速部分を容易に形成することができる。また、異音速部分と他の部分との音速差を十分大きくすることができる。
【0013】
本発明に係る弾性波装置の別の特定の局面では、前記グラウンド配線の前記第2の反射器と前記第3の反射器との間の領域に延ばされており、かつ弾性波伝搬領域と弾性波伝搬方向において重なる部分内において、弾性波伝搬方向と交叉する方向において、部分的に積層された質量付加部材をさらに備え、前記質量付加部材が前記異音速部分を構成している。この場合には、質量付加部材として様々な材料を用いて、異音速部分を容易に形成することができる。
【0014】
本発明に係る弾性波装置のさらに他の特定の局面では、前記第1,第2の縦結合共振子型弾性波素子が第1,第2の縦結合共振子型弾性波フィルタである。この場合には、反射器の設計ではなく、異音速部分により、不要モードの影響が抑制されているため、不要モードの抑制と、通過帯域低域側の急峻性とを両立することができる。
【0015】
本発明に係る弾性波装置のさらに他の特定の局面では、弾性波装置は、前記第1,第2の縦結合共振子型弾性波フィルタが並列接続されている、帯域通過型フィルタである。
【0016】
本発明に係るデュプレクサは、受信フィルタと、送信フィルタとを有するデュプレクサであって、前記受信フィルタ及び前記送信フィルタのうち少なくとも一方が、本発明に従って構成された弾性波装置からなる帯域通過型フィルタである。
【0017】
本発明に係るマルチプレクサは、複数の帯域通過型フィルタを備えるマルチプレクサであって、少なくとも1つの帯域通過型フィルタが本発明に従って構成された弾性波装置からなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る弾性波装置によれば、不要モードの影響を抑制することができる。また、本発明において、第1,第2の縦結合共振子型弾性波フィルタが帯域通過型フィルタである場合、不要モードの影響の抑制と、通過帯域の低域側における急峻性とを両立することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0021】
なお、本明細書に記載の各実施形態は、例示的なものであり、異なる実施形態間において、構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることを指摘しておく。
【0022】
図1は、本発明の第1の実施形態としてのデュプレクサの回路図である。
【0023】
デュプレクサ1は、アンテナ端子2と、送信端子3と、受信端子4とを有する。アンテナ端子2は、アンテナANTに電気的に接続される。アンテナ端子2とグラウンド電位との間に、インピーダンス整合用インダクタンスL
0が接続されている。アンテナ端子2と送信端子3との間に送信フィルタ5が接続されている。アンテナ端子2と受信端子4との間に受信フィルタ6が接続されている。
【0024】
受信フィルタ6は、縦結合共振子型弾性波フィルタ部7を有する。縦結合共振子型弾性波フィルタ部7とアンテナ端子2との間に、弾性波共振子からなる直列腕共振子8が接続されている。
【0025】
縦結合共振子型弾性波フィルタ部7は、第1,第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ11,12と、第3,第4の縦結合共振子型弾性波フィルタ13,14とを有する。第1,第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ11,12は、受信端子4に接続されている。第3,第4の縦結合共振子型弾性波フィルタ13,14は、それぞれ、第1,第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ11,12の受信端子4とは反対側の端部に接続されている。第1〜第4の縦結合共振子型弾性波フィルタ11〜14は、いずれも5IDT型の縦結合共振子型弾性波フィルタである。
図1では、第1〜第4の縦結合共振子型弾性波フィルタ11〜14における1つのIDTを矩形のブロックで示している。
図1では省略されているが、5個のIDTが並設されている領域の、弾性波伝搬方向両側に反射器が配置されている。
【0026】
デュプレクサ1の特徴は、この縦結合共振子型弾性波フィルタ部7における第1,第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ11,12が設けられている部分にある。これを、
図2及び
図3を参照してより具体的に説明する。
【0027】
図2は、第1,第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ11,12が圧電基板上に設けられている部分を示す模式的平面図である。圧電基板9上に、第1,第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ11,12が配置されている。圧電基板9の材料としては、LiTaO
3やLiNbO
3などの圧電単結晶を用いることができる。また、絶縁性基板上に圧電膜を積層してなる圧電基板を用いてもよい。
【0028】
圧電基板9上には、
図1に示した受信フィルタ6を構成している他の構成要素も配置されている。例えば第3,第4の縦結合共振子型弾性波フィルタ13,14や直列腕共振子8も圧電基板9上に配置されている。
図2では、第1,第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ11,12が設けられている部分のみを図示して説明することとする。
【0029】
第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ11では、弾性波伝搬方向に沿って第1〜第5のIDT11a〜11eが配置されている。第1〜第5のIDT11a〜11eが設けられている部分の弾性波伝搬方向一方側に、第1の反射器21が設けられている。第1〜第5のIDT11a〜11eが設けられている部分の弾性波伝搬方向他方側に、第2の反射器22が配置されている。
【0030】
第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ12は、第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ11と、弾性波伝搬方向において並設されている。この場合、弾性波伝搬方向からみたときに、第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ11の弾性波伝搬領域が、第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ12の弾性波伝搬領域と重なっている。また、第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ11と第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ12とは並列接続されている。
【0031】
第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ12もまた、第1〜第5のIDT12a〜12eを有する。第1〜第5のIDT12a〜12eが設けられている部分の弾性波伝搬方向一方側に、第3の反射器23が設けられている。第1〜第5のIDT12a〜12eが設けられている部分の弾性波伝搬方向他方側に、第4の反射器24が設けられている。
【0032】
第2の反射器22と、第3の反射器23とが弾性波伝搬方向において隣り合っている。
【0033】
図2では、第1〜第4の反射器21〜24は、細長い矩形に、2本の対角線を加えた記号で示されている。第2の反射器22と第3の反射器23とが近接している部分を、
図3(a)及び(b)を参照して説明する。
【0034】
第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ11及び第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ12を製造するに際しては、圧電基板9上に1層目の金属膜を成膜することにより、
図3(a)に示す電極構造を得る。すなわち、第1,第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ11,12の第1〜第5のIDT11a〜11e,12a〜12eと、第1〜第4の反射器21〜24を金属膜の成膜により形成する。本実施形態では、第2の反射器22と、第2の反射器22と隣り合っている第3の反射器23とは、第1の配線層25により連ねられている。第1の配線層25上に、
図3(b)に示す第2の配線層26a,26bを成膜する。それによって、第1の配線層25と、第2の配線層26a,26bとを有するグラウンド配線27を形成する。
【0035】
グラウンド配線27は、グラウンド電位に接続される配線である。また、グラウンド配線27の第1の配線層25は、第2の反射器22及び第3の反射器23と連ねられている。
図3(a)の破線Aが、第1の配線層25と第2の反射器22との間の境界部分であり、破線Bが、第3の反射器23と第1の配線層25との境界部分である。
【0036】
上記第1の配線層25及び第2の配線層26a,26bを有するグラウンド配線27は、図示のように、第2の反射器22と第3の反射器23との間の領域、すなわち、破線Aと破線Bとの間の領域に延ばされている。そして、第2の配線層26aと、第2の配線層26bとの間には、ギャップ部26cが設けられている。
【0037】
ギャップ部26cが、本発明における異音速部分を構成している。すなわち、グラウンド配線27の、第2の反射器22と第3の反射器23との間の領域に延ばされている部分であって、弾性波伝搬方向からみたときに弾性波伝搬領域と重なり合う部分に、異音速部分としてギャップ部26cが設けられている。
【0038】
弾性波伝搬領域と重なり合う部分において、ギャップ部26cが設けられている部分の音速が、残りの部分の音速よりも高くなる。ギャップ部26cが設けられている部分の音速と、残りの部分の音速との音速差により、以下に述べるように、不要モードによる影響を効果的に抑制することができる。
【0039】
なお、
図3(a)及び(b)において、矢印Tで示す領域が、弾性波伝搬領域である。この弾性波伝搬領域とは、第1,第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ11,12において、弾性波伝搬方向にみたときに、異なる電位に接続される電極指同士が重なり合っている交叉領域である。
【0040】
縦結合共振子型弾性波フィルタのような縦結合型弾性波素子では、反射器はストップバンド外の周波数域では、容量として作用する。従って、ストップバンドより低い周波数の弾性波は反射されず、素通りする。そのため、例えば縦結合共振子型弾性波フィルタでは、通過帯域よりも低い周波数域に、通過帯域を形成していない高次の縦モードが発生するが、この高次の縦モードを反射器で反射させることができない。従って、2つの縦結合共振子型弾性波フィルタが隣り合っている場合、上記高次の縦モードが隣接している縦結合共振子型弾性波素子に漏洩する。よって、高次の縦モードが不要モードとなり、減衰帯域に生じやすくなる。そのため、帯域外減衰量を十分大きくすることができなくなる。
【0041】
他方、縦結合型弾性波素子により生じる上記不要モードは、反射器のストップバンドの周波数を高めることにより反射させることもできる。もっとも、その場合には、反射器のストップバンドの周波数が高くなるため、通過帯域低域側におけるフィルタ特性の急峻性が悪化する。すなわち、従来、上記のような帯域外減衰量の拡大と、通過帯域低域側における急峻性とを両立することは困難であった。
【0042】
これに対して、本実施形態では、第1,第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ11,12間で生じる不要モード同士の干渉を利用して、不要モード同士を打ち消し合わせている。すなわち、上記第2,第3の反射器22,23同士が隣り合っている領域内において、上記ギャップ部26cと、ギャップ部26c以外の部分との間での上記音速差が生じている。この音速差により、不要モード同士が打ち消し合うことになる。それによって、上記不要モードの影響が効果的に抑制される。
【0043】
しかも、第2,第3の反射器22,23で不要モードが反射されるように第2,第3の反射器22,23を設計する必要がない。よって、通過帯域低域側における急峻性を確保することができる。従って、帯域外減衰量の拡大と、通過帯域低域側における急峻性とを両立することができる。
【0044】
なお、送信フィルタ5は、弾性波共振子からなる直列腕共振子S1,S2a,S2b,S3a,S3b,S3cと、並列腕共振子P1〜P3とを有する。直列腕共振子S3a,S3bと並列に、インダクタンスL1が接続されている。並列腕共振子P1とグラウンド電位との間にインダクタンスL2が接続されている。並列腕共振子P2,P3のグラウンド電位側端部が共通接続されており、共通接続されている部分とグラウンド電位との間にインダクタンスL3が接続されている。
【0045】
上述したように、上記実施形態によれば、不要モードによる影響を抑制し、かつ通過帯域よりも低い周波数帯における帯域外減衰量を十分に大きくし得ることを、具体的な実験例に基づき説明する。
【0046】
以下の要領で、第1,第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ11,12と第3,第4の縦結合共振子型弾性波フィルタ13,14並びに直列腕共振子8を作製し、フィルタ特性を評価した。
【0047】
(第1〜第4の縦結合共振子型弾性波フィルタ11〜14の仕様)
第1,第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ11,12の第1〜第5のIDT11a〜11e,12a〜12eの電極指の対数、及び電極指ピッチを下記の表1に示す通りとした。また、第3及び第4の縦結合共振子型弾性波フィルタ13,14における第1〜第5のIDTの電極指の対数、及び電極指ピッチは下記の表2に示す通りとした。なお、第1〜第5のIDTは、IDT同市が隣り合う部分に狭ピッチ部を有する。表1,2では、メインの電極指ピッチと狭ピッチ部の電極指ピッチを第1のIDTから第5のIDTまでの方向に沿って順に示す。
【0050】
第1〜第4の反射器21〜24の電極指ピッチは4.325μm、電極指の対数は12.5対とした。同様に、第3,第4の縦結合共振子型弾性波フィルタ13,14における各反射器の電極指ピッチは4.345μm、電極指の対数は14.5対とした。
【0051】
圧電基板9としては、LiTaO
3基板を用い、第1の配線層25及びIDT電極などを構成する金属膜として、トータル厚み343nmの主電極がPtからなる膜を成膜した。また、第2の配線層26a,26bはトータル厚み2910nmの主電極がAlCu多結晶からなる膜を成膜することにより形成した。
【0052】
弾性波伝搬領域の幅すなわち交叉幅は76.6μmの値であり、ギャップ部26cの寸法は、弾性波伝搬方向に沿う寸法を40μm、弾性波伝搬方向と直交する方向に沿う寸法を16μmとした。
【0053】
なお、直列腕共振子8については、以下の通りとした。
【0054】
IDT電極の電極指の対数=206対、交叉幅=67.7μm、電極指ピッチ=3.896μm。反射器の電極指ピッチ=3.896μm、電極指の対数=4.5対。IDT電極及び反射器は、第1,第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ11,12と同じ金属を用い、同じ膜厚とした。
【0055】
比較のために、ギャップ部26cが設けられていないことを除いては、上記と同様にして、比較例の弾性波装置を作製した。
【0056】
上記実施形態及び比較例の受信フィルタの減衰量周波数特性を
図4に、受信フィルタのリターンロス特性を
図5に示す。また、
図6は、上記実施形態及び比較例のインピーダンススミスチャートを示す。なお、
図4〜
図6において、実線が実施形態の結果を、破線が比較例の結果を示す。
【0057】
なお、本実施形態のデュプレクサは、BAND26用のデュプレクサである。従って、送信フィルタ5の通過帯域は814〜849MHzであり、受信フィルタ6の通過帯域は859〜894MHzである。
【0058】
図4〜
図6に矢印D1,D2,D3でそれぞれ示すように、比較例では、不要モードにより、通過帯域である859〜894MHzよりも低域側の減衰域における減衰量が小さくなっており、帯域外減衰量を十分小さくすることができていない。これに対して、実施形態では、帯域外減衰量を十分大きくすることが可能とされている。従って、本実施形態によれば、上記異音速部分としてのギャップ部26cが設けられていることにより、不要モードによる影響を効果的に抑制することが可能とされていることがわかる。また、反射器の設計により不要モードを抑制する必要がないため、通過帯域低域側の急峻性も十分に確保されている。
【0059】
なお、上記実施形態では、異音速部分を形成するためのギャップ部26cが設けられていたが、異音速部分は、様々な形態で設けることができる。例えば、
図7に示すように、グラウンド配線27の第2の配線層26Aに残りの部分よりも幅の細い細幅部26dを設けてもよい。この場合においても、細幅部26dにおける音速と、細幅部26dの両側の部分における音速との間に音速差が生じる。従って、細幅部26dからなる異音速部分が設けられていることによって、不要モード同士を打ち消し合わせることができる。
【0060】
図8(a)に示すように、第2の配線層26B上に質量付加部材28を積層することにより異音速部分を形成してもよい。この質量付加部材28としては、音速を低めるように、質量を付加する適宜の材料からなる部材を用いることができる。このような材料としては、SiO
2やSiNのような無機絶縁物や、Ptなどの金属を適宜用いることができる。
【0061】
異音速部分では、上記質量付加部材28を用いる構成と、前述したようなギャップ部26cを設ける方法などを適宜併用してもよい。
【0062】
また、上記異音速部分は、第3,第4の縦結合共振子型弾性波フィルタ13,14間に設けられてもよい。また、第1,第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ11,12間及び第3,第4の縦結合共振子型弾性波フィルタ13,14間の双方において、異音速部分を設けてもよい。
【0063】
また、本実施形態では、隣り合う第1,第2の縦結合型弾性波素子として、第1,第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ11,12を例にとり説明したが、縦結合型の他の弾性波素子であってもよい。
【0064】
さらに、上記実施形態では、デュプレクサ1を説明したが、デュプレクサ1よりも、さらに多くの帯域通過型フィルタを有するマルチプレクサにも本発明を適用することができる。すなわち、複数の帯域通過型フィルタを有するマルチプレクサにおいて、少なくとも1つの帯域通過型フィルタにおいて、上記異音速部分を有する構成を採用してもよい。
【0065】
また、デュプレクサやマルチプレクサ以外の複数の帯域通過型フィルタを有する弾性波装置において、第1,第2の縦結合共振子型弾性波素子が隣り合っている部分にも、本発明を適用することができる。