【実施例】
【0024】
(第1実施例)
第1実施例は、
図12に示すように、本技術を半導体素子の周辺部に適用し、n型のGaN層4内の一部にp型の伝導領域16a,16b,16c,16dを形成してガードリングとした例である。以下、
図1〜
図12を参照して製造方法を説明する。
図1:n型のGaN基板2を用意する。GaN基板2は、裏面がC面であれば、表面が−C面となる性質を備えている。ここでは、−C面が表面2a(その後の加工をする面)となる向きとする。n型のGaN基板2は、サファイア基板、Si基板、SiC基板等の上にGaN結晶をヘテロ成長させた基板の支持基板側を研磨ないし剥離して得たものであってもよい。
図2:n型のGaN基板2の表面2a上に、MOVPE法によってn型のGaN層4を結晶成長させる。GaN層4の表面4aは−C面となる。n型のGaN層4は、pnダイオードのカソード領域に適した電気的特性のものを結晶成長させる。本実施例では、ドナー濃度を1E16cm
−3とした。
図3:n型のGaN層4の表面4a上に、MOVPE法によって、p型のGaN層6を結晶成長させる。GaN層6の表面6aは−C面となる。p型のGaN層6は、pnダイオードのアノードに適した電気的特性のものを結晶成長させる。本実施例では、アクセプタ―濃度を5E19cm
−3とした。p型のGaN層6とn型のGaN層4によって縦型のダイオード構造が得られる。
図4:半導体チップの中央部を覆うエッチング用保護膜8を形成する。この工程では、GaN層6の表面6a上に、プラズマCVD法によってSiO
2膜を形成し、半導体チップの周辺領域に相当する範囲に形成されたSiO
2膜を除去することによって、半導体チップの中央部のみを覆うエッチング用保護膜8を形成する。
図5:ドライエッチングし、半導体チップの周辺領域ではp型のGaN層6を除去し、n型のGaN層4を露出させる。n型のGaN層4の露出面4cは−C面となる。
図6:次に実施するイオン注入工程用のマスク膜10を形成する。この工程では、残存したp型のGaN層6の表面6a上と、露出したn型のGaN層4の露出面4c上に、プラズマCVD法でSiO
2膜を形成する。次に、後記するフィールドリングの形成領域ではSiO
2膜を除去し、イオン注入工程用のマスク膜10に開口10a,10b,10c,10d等を形成する。
図7:表面にイオン注入工程用のスルー膜12を形成する。スルー膜12には、SiNを用い、その厚みを30〜50nmとした。スルー膜12は、マスク膜10の表面を覆い、開口10a,10b,10c,10dではマスク膜10の側面を覆い、開口10a,10b,10c,10dの底面に露出するGaN層4の露出面4cを覆う。
図8:マグネシウムと水素をイオン注入する。マグネシウムは1E19cm
−3のピーク濃度となるように注入し、水素は2E20cm
−3のピーク濃度となるように注入する。マグネシウムより水素が多量に存在する関係とする。これによってGaN層4の結晶形状は、イオン注入の前後によって大きく変化することがない。その後に熱処理する際に欠陥が形成されるのを防止する。なお、マグネシウムの注入範囲は開口10a,10b,10c,10d等によって規制する必要があるが、水素の導入領域は少なくともマグネシウムの注入範囲を含んでいればよく、GaN層4の露出面4cの全域に注入してもよい。スルー膜12は、注入したマグネシウム濃度の深さ方向のプロファイルを、意図したものに調整する。
図13は、マグネシウムと水素の注入前のGaN層4の結晶形状と、マグネシウムのみを注入したGaN層4の結晶形状と、マグネシウムと水素の両者を注入したGaN層4の結晶形状の関係を示している。マグネシウムのみを注入すると、注入前後においてa軸定数が0.025977オングストロームも短くなるのに対し、マグネシウムと水素の両方を注入すると、注入前後においてa軸定数が0.000006オングストロームしか変化しないことがわかる。水素を併用することで結晶形状の変化を抑制できることが分かり、熱処理の際に生じる欠陥の数を減少できることが分かる。格子定数は、X線逆格子マップ法で計測することができる。その最少計測精度は0.001オングストローム程度であり、マグネシウムと水素の両方を注入した場合には結晶形状の変化が検出できないほど微小であることが分かる。
図9:イオン注入工程用のマスク膜10とスルー膜12を除去する。除去した後に、基板を1000℃以上に加熱する熱処理を実施する。本実施例では1230℃に加熱した。注入したマグネシウムが活性化し、p型の伝導領域16a,16b,16c,16dに変質する。マグネシウムを注入したGaN層4の露出面4cが露出した状態で、すなわち、露出面4cを保護膜で覆わない状態で熱処理するために、GaN層4あるいはp型の伝導領域16a,16b,16c,16dに、保護膜を形成する元素が侵入することがない。GaN層4あるいはp型伝導領域16a,16b,16c,16dの電気的特性を意図したものに調整することができる。熱処理すると、GaN層4に導入した水素の相当数はGaN層4から離脱してしまう。熱処理後の水素濃度はマグネシウム濃度よりも低下することがある。
図10:裏面電極18を形成する。GaN基板2の裏面2bにチタン層とアルミニウム層を積層し、窒素雰囲気中で600℃に5分間熱処理すると、GaN基板2の裏面2bと裏面電極18がオーミック接触する。
図11:半導体装置の表面側の必要部位に、絶縁膜20を形成する。プラズマCVD法でSiO
2膜を形成し、それをパターンニングすることで絶縁膜20を形成する。
図12:表面電極22を形成する。p型GaN層6の表面6aにニッケル層と金層を積層し、酸素雰囲気中で550℃に5分間熱処理すると、p型GaN層6の表面6aと表面電極22がオーミック接触する。
【0025】
第1実施例では、n型GaN層4の−C面(露出面)4cにII族元素(本実施例ではマグネシウム)と水素を注入して熱処理する。熱処理の際には1000℃以上に加熱する必要があるが、−C面を用いることから窒素抜けが生じず、保護膜で覆わないで熱処理することができる。GaN層4あるいはp型の伝導領域16a,16b,16c,16dに保護膜を形成する元素が侵入することがない。元素が侵入すると、露出面4cから深さ方向にとった不純物濃度のプロファイルに、露出面4cに接近するほど不純物が高濃度となるパターンが認められはずであるが、本実施例ではそのような濃度のプロファイルが見られない。また、p型の伝導領域16a,16b,16c,16dとn型GaN層4の界面に、酸素あるいはシリコンが集中して存在することもなく、フィールドリングによる耐圧向上効果が安定している。
【0026】
C面にII族元素を注入して熱処理する場合は、窒素抜けを防止するために保護膜で被覆する必要がある。この場合は、前記したように保護膜を形成する元素が基板内に侵入して特性を乱すという問題に加えて、下記の問題が生じる。
図14は、GaN基板のC面(Ga面)にSiN膜(厚み30nm)を形成した状態で1230℃に熱処理した後の表面を光学顕微鏡で観察した図面である。GaNとSiNの熱膨張率の相違によって、昇温時にSiN膜が引っ張られ、円形状の欠損が多数できてしまうことが分かる。欠損部では基板から窒素抜けが生じる。保護膜を利用する方法では、表面に沿って一様に延びるp型伝導領域を形成することが難しい。
【0027】
保護膜を形成して熱処理する技術には、熱処理した保護膜を除去するのが困難であるという問題も生じる。
図15は、GaN基板のC面(Ga面)にSiN膜(厚み30nm)を形成し、1230℃に熱処理し、その後にバッファ―ドフッ酸に15分以上晒した後の表面を光学顕微鏡で観察した図面である。
図16は、同じ表面のオージェ電子分光法の測定結果を示す。バッファ―ドフッ酸によってSiN膜を除去する工程を実施しても除去しきれず、
図16に示すように、SiNに由来するSiが面内の至るところで観測された。バッファ―ドフッ酸に15分以上晒してもSiN膜を除去しきれないことが分かる。
第1実施例では、半導体チップの中央領域にダイオードが形成される。中央領域に形成する半導体装置はダイオードに限定されない。
【0028】
(特性評価装置)
図21に示すように、本技術による場合の特性を評価するために、n型GaN基板62の表面62aから、表面近傍のn型GaN基板62内に、マグネシウムと水素を注入してから熱処理することで、p型GaN層64を製造した。p型GaN層64を製造する前は、
図21の62aに示す位置までn型GaN基板62が延びている。表面62aは、p型GaN層64を製造する前のn型GaN基板62の表面である。表面62aは−C面であり、裏面62bはC面である。
【0029】
参照番号66は裏面電極であり、カソード電極となり、参照番号68は表面電極であり、アノード電極となる。
図21の半導体装置は、pnダイオードである。
【0030】
図22の横軸は、カソード電極66とアノード電極68の間の電位差であり、縦軸は、カソード電極66とアノード電極68の間を離れる電流である。
カーブ74は、
図21に示すpnダイオードの計測結果であり、3ボルトで電流が立ち上がっており、理論値から予想される特性によく一致している。
図21の構造によると、意図した通りのp型伝導領域64が製造できることが分かる。
カーブ72は、n型GaN層のC面(Ga面)にマグネシウムを注入して熱処理することでp型伝導領域の形成を試みた場合の計測結果であり、整流特性を示さない。窒素抜け等に起因してp型伝導領域が形成されないことが分かる。
カーブ76は、n型GaN層の−C面(窒素極性面)にマグネシウムのみを注入して熱処理することでp型伝導領域の形成した場合の計測結果であり、電流の立ち上がり電圧が高く、高抵抗である。p型伝導領域が形成されるものの、高抵抗であることが分かる。マグネシウムと水素を併用することによって、ほぼ理論通りの特性74を持つダイオードを製造することができる。
【0031】
(第2実施例)
第2実施例では、
図17に示すように、低濃度のp型GaN層36の表面の一部に、マグネシウムと水素を注入して熱処理することで高濃度のp型GaN領域46を形成する。金属電極44は、低濃度のp型GaN層36に対してはオーミック接触しないが、高濃度のp型GaN領域46に対してはオーミック接触する。低濃度のp型GaN層36は、高濃度のp型GaN領域46を介して金属電極44に導通し、電極44と同電位となる。
【0032】
参照番号32は、n
+型のGaN基板であり、表面32aは−C面であり、裏面32bがC面である。n
+型のGaN基板32の裏面(C面)32bに、裏面電極(ドレイン電極)52が形成されている。n
+型のGaN基板32は、ドレイン領域となる。
参照番号34は、GaN基板32の表面(−C面)32a上にエピタキシャル成長したn
−型のGaN層であり、表面34aは−C面であり、裏面34bがC面である。n
−型のGaN層34は、ドリフト領域となる。MOVPE法によってn
−型のGaN層34を結晶成長させることが好ましい。ドナー濃度は1E16cm
−3とした。
参照番号36は、n
−型のGaN層34表面(−C面)34a上にエピタキシャル成長したp型のGaN層であり、表面36aは−C面であり、裏面36bがC面である。製造工程では、n
+型のGaN領域38の位置と、p
+型のGaN領域46に位置にも、p型のGaN層36を成長させ、その後に、n
+型のGaN領域38とp
+型のGaN領域46に変化させる。n
+型のGaN領域38とp
+型のGaN領域46に変質しない範囲のp型のGaN層36はボディ領域となる。MOVPE法によってp型のGaN層36を結晶成長させることが好ましい。アクセプタ濃度は5E16cm
−3とした。
参照番号38は、p型のGaN層36の表面36aの一部の範囲に臨む位置に形成されたn
+型のGaN領域であり、ソース領域として機能する。実際には、n
+型GaN領域38の形成範囲にあるp型GaN層36に、シリコンまたはゲルマニウムをイオン注入して形成する。イオン注入範囲を規制するためには、実施例1と同様に、パターニングされたSiO
2膜を用い、イオン注入深さを規制するためには、実施例1と同様に、SiN膜を用いる。シリコンまたはゲルマニウムを活性化させる熱処理は、後記するマグネシウムの熱処理と兼用させることが好ましい。
参照番号46は、p
−型のGaN層36の表面36aの一部の範囲に臨む位置に形成されたp
+型のGaN領域であり、ボディコンタクト領域として機能する。実際には、p
+型GaN領域46の形成範囲のp
−型GaN層36に、マグネシウムと水素をイオン注入して形成する。イオン注入範囲を規制するためには、実施例1と同様に、パターニングされたSiO
2膜を用い、イオン注入深さを規制するためには、実施例1と同様に、SiN膜を用いる。
n
+型のGaN領域38の形成範囲にシリコンまたはゲルマニウムを注入し、p
+型のGaN領域46の形成範囲にマグネシウムと水素を注入したら、注入範囲を規制するSiO
2膜とイオン注入深さを規制するSiN膜を除去する。すなわち、p型のGaN層36の表面36aを露出させる。表面36aを露出させた状態で、1230℃に加熱する。この結果、シリコンまたはゲルマニウムが活性化してn
+型のGaN領域38が形成され、マグネシウムが活性化してp
+型のGaN領域46が形成される。マグネシウムに加えて水素を導入する目的は実施例1と同様であり、重複説明を省略する。
【0033】
参照番号40aは、n
+型のGaN領域38(ソース領域)と、p
−型のGaN層36(ボディ領域)を貫通してn
−型のGaN領域34(ドレイン領域)に侵入しているトレンチゲート電極である。
製造時には、トレンチゲート電極40aの形成するためのトレンチを形成する。すなわち、n
+型のGaN領域38とp
+型のGaN領域46が形成されたp
−型のGaN層36の表面36aに、SiO
2膜を形成してエッチング用マスク膜を形成し、SiO
2膜を部分的に除去してトレンチ形成範囲に開口を形成し、その開口からドライエッチンして、n
+型のGaN領域38とp
−型のGaN層36を貫通してn
−型のGaN領域34に侵入するトレンチを形成する。
参照番号42は、そうして形成したトレンチの側面と底面と、p型のGaN層36の表面36aに形成した絶縁膜であり、SiO
2またはAl
2O
3等を原子堆積法などで堆積させて形成した絶縁膜である。参照番号40aは、絶縁膜42で側面等が覆われたトレンチ内に形成されたトレンチゲート電極である。参照番号40bは、ゲート電極の一部であり、トレンチ外を延びており、金属電極50とトレンチゲート電極40aを導通させる。ゲート電極40a,40bは、多結晶シリコンなどで形成する。
参照番号48は層間絶縁膜であり、必要箇所には縦方向に延びる貫通孔が形成されており、そこに金属電極50,44が入り込んでいる。金属電極50は、トレンチゲート電極40aに導通しており、金属電極44は、n
+型のGaN領域38(ソース領域)と、p
+型のGaN領域46(コンタクト領域)に導通している。金属電極44は、ソース電極であり、p型のGaN層36の電位を安定させる電極でもある。
【0034】
上記の半導体装置は、ドレイン電極52を高電位に接続し、ソース電極44を接地し、電極50に加える電位を変化させる。電極50に正電位を加えると、絶縁膜42を介してトレンチゲート電極40aに対向している位置にあるp
−型のGaN層36がn型に反転し、反転層によってn
+型のGaN領域38(ソース領域)とn
−型のGaN領域34(ドリフト領域)が導通し、ソース電極44とドレイン電極50の間を電流が流れる。電極50に正電位を加えるのを停止すると、反転層が消失し、ソース電極44とドレイン電極50の間が高抵抗な状態となる。
図17の装置は、縦型のトランジスタであることが分かる。
【0035】
第2実施例では、p型のGaN層36の表面36aにII族元素を注入してから熱処理することで、p
+型のGaN領域46を製造する。ここで、p型のGaN層36の表面36aが−C面であることから、熱処理の際に窒素が抜けず、保護膜で被覆しない状態で熱処理することができる。実施例1で説明した利点を享受できる。
この実施例では、p
−型のGaN層36内にp
+型のGaN領域46を形成する。これに対して第1実施例では、n型のGaN層内にp型のGaN領域を形成した。後者の場合は、pn接合界面の深さと、p型イオンの注入によって生じる損傷の発生深さが一致し、pn接合界面を漏れ出るリーク電流の増大が懸念される。前者の場合は、リーク電流の増大が問題とならない。本技術は、前者に適用する場合の方が広く適用でき、後者に適用する場合はリーク電流が許容値に抑えられるか否かに関して注意を払う必要がある。
【0036】
特表2010−509177号公報に、GaN層の積層途中でAlN層を積層し、その上にGaN層を積層し、その上にp型のGaN層を積層する技術が開発されている。AlN層の存在によってGaN層の極性が反転し、AlN層上に積層されるGaN層の表面は窒素極性面となる。この場合、表裏両面が−C面となる。厚みの中間部にAlNといった極性反転層を持っている。実施例1〜2のいずれでも、表面電極と裏面電極の間にAlNといった極性反転層を持たない。このために表面電極と裏面電極間の抵抗値が低い。また極性反転層を利用する場合に比して、表面(−C面)における欠陥密度が低く、イオン注入によってp型伝導性に変質させる現象を阻害する要因が少ない。実施例1〜2によって低抵抗で高特性の縦型半導体装置を得ることができる。
【0037】
(第3実施例)
第1実施例では、半導体基板の中央領域にダイオードを形成する。中央領域に形成する半導体装置はダイオードに限定されない。例えば、
図18に示す縦型MOSトランジスタ(または縦型MOSFET)などであってもよい。
図18において、71は裏面電極であり、本実施例ではドレイン電極となる。72はn型GaN基板であり、73はn型GaN層である。n型GaN層73は、n型GaN基板72の表面にエピタキシャル成長した層であり、その表面は−C面であり、裏面はC面である。n型GaN層73が結晶成長した段階では、後にp型伝導領域74a,74bとなる領域と、後でn型伝導領域75a,75bとなる領域の表面73aまで、n型のGaN層73の表面73aである。74a,74bは、n型GaN層73の表面(−C面)73aからMgを注入して熱処理することで得られたp型伝導領域であり、本実施例ではボディ領域となる。75a,75bは、表面73aからSiを注入して熱処理することで得られたn型伝導領域であり、本実施例ではソース領域となる。76a,76bはソース電極であり、77はゲート絶縁膜であり、78はゲート電極である。
図18のMOSを半導体基板の中央領域に形成し、その周囲に、
図12に示したp型のガードリング構造を形成してもよい。この実施例では、n型GaN結晶層73の−C面を表面73aにし、その表面からMgを注入して熱処理することによってp型伝導領域74a,74bを形成することから、熱処理の際に窒素抜けを防止することができる。
【0038】
(第4実施例)
本明細書に開示する技術は、横型MOSトランジスタ(または横型MOSFET)に適用することもできる。
図19において、80は絶縁基板であり、82a,82bは絶縁壁である。81はn型GaN層であり、周囲は絶縁基板80と絶縁壁82a,82bで取り囲まれている。n型GaN層81が結晶成長した段階では、後にp型ボディ領域83になる領域と、後でn型伝導領域85になる領域と、後でn型伝導領域88になる領域の表面も、n型のGaN層81の表面81aである。83は、n型GaN層81の表面(−C面)81aからMgを注入して熱処理することで得られたp型伝導領域であり、本実施例ではボディ領域となる。85は、表面81aからSiを注入して熱処理することで得られたn型伝導領域であり、本実施例ではソース領域となる。88は、表面81aからSiを注入して熱処理することで得られたn型伝導領域であり、本実施例ではドレイン領域となる。84はソース電極であり、86はゲート絶縁膜であり、87はゲート電極であり、89はドレイン電極である。この実施例では、n型GaN結晶層81の−C面を表面81aにし、その表面からMgを注入して熱処理することによってp型伝導領域83を形成することから、基板からの窒素抜けを防止することができる。
【0039】
(第5実施例)
本明細書に開示する技術は、CMOSに適用することもできる。
図20において、90は絶縁基板である。91はn型GaN層であり、n型GaN層91が結晶成長した段階における表面91aは、−C面である。92は、その−C面91aからMgを注入して熱処理することで得られたp型伝導領域であり、本実施例ではp型ウエル領域となる。p型ウエル領域92内に、nチャネルMOSが形成される。94は、表面91aからSiを注入して熱処理することで得られたn型伝導領域であり、本実施例ではソース領域となる。95は、表面91aからSiを注入して熱処理することで得られたn型伝導領域であり、本実施例ではドレイン領域となる。93は、表面91aからMgを注入して熱処理することで得られたp
+型伝導領域であり、本実施例ではコンタクト領域となる。99はソース電極であり、101はゲート絶縁膜であり、100はゲート電極であり、102はnチャネルMOSのドレイン電極とpチャネルMOSのソース電極を兼用する電極である。ソース電極99は、接地して用いる。p型伝導領域92の電位は、p
+型伝導領域93を介して接地電位に維持される。
【0040】
96は、表面(−C面)91aからMgを注入して熱処理することで得られたp
+型伝導領域であり、pチャネルMOSのソース領域となる。97は、表面91a(−C面)からMgを注入して熱処理することで得られたp
+型伝導領域であり、本実施例ではドレイン領域となる。98は、表面91aからSiを注入して熱処理することで得られたn
+型伝導領域であり、本実施例ではコンタクト領域となる。102はpチャネルMOSのソース電極(nチャネルMOSのドレインを兼用している)であり、105はゲート絶縁膜であり、104はゲート電極であり、106はドレイン電極である。ドレイン電極106には、一定の電圧V
DDが印加される。pチャネルMOSのボディ領域(n
―型GaN層91)の電位は、V
DDに維持される。nチャネルMOSのドレインとpチャネルMOSのソースを兼用している電極102は、出力端子でもあり、ゲート電極100,104に印加する電圧によって、接地電圧又はV
DDのいずれかとなる。参照番号103,107は、絶縁膜である。
本実施例では、n型GaN結晶層91の−C面を表面91aにし、その表面からMgを注入して熱処理することによってp
−型伝導領域92、p
+型伝導領域93,96,97を形成することから、高温度の熱処理を必要とするMgの活性時に、基板から窒素抜けを防止することができる。
【0041】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。