(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6402788
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02H 3/34 20060101AFI20181001BHJP
H02M 1/00 20070101ALI20181001BHJP
H02H 3/13 20060101ALI20181001BHJP
H02H 7/00 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
H02H3/34 A
H02M1/00 A
H02H3/13
H02H7/00 J
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-14726(P2017-14726)
(22)【出願日】2017年1月30日
(62)【分割の表示】特願2016-51502(P2016-51502)の分割
【原出願日】2016年3月15日
(65)【公開番号】特開2017-169438(P2017-169438A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2017年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 重晴
【審査官】
坂本 聡生
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−247497(JP,A)
【文献】
特開2015−194447(JP,A)
【文献】
特開2008−301549(JP,A)
【文献】
特開2010−148259(JP,A)
【文献】
特開2007−202369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 3/08− 3/253
3/32− 3/52
7/00
7/10− 7/20
H02M 1/00− 1/44
F24F11/00−11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
R相、S相、T相およびN相からなる3相4線電源のうち、N相を除く3相からの出力電力を変換する電力変換モジュールと、
前記3相の出力電力から前記電力変換モジュールを駆動するための駆動制御用電源を生成するモジュール制御電源部と、
前記モジュール制御電源部を電源として前記3相のうちの2相の位相差をもとに各相の欠相および逆相を検出する3相検出部と、
前記モジュール制御電源部が生成した駆動制御用電源を電源として前記電力変換モジュールを駆動制御する駆動制御部と、
を備えた電力変換装置であって、
前記駆動制御用電源を電源として前記N相の欠相を検出するN相欠相検出部を備え、
前記モジュール制御電源部は、前記3相のうちの1相と、前記3相にスター結線された3つのコンデンサ間の中点との間の電圧から前記駆動制御用電源を生成する、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記N相欠相検出部は、前記駆動制御用電源を電源として前記N相の電圧に基づき前記N相の欠相を検出することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
さらにノイズフィルタを有し、
前記3相の出力電力は前記ノイズフィルタを介して前記電力変換モジュールに入力されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術は、3相4線電源のうちのN相を除く3相の出力電力を変換する電力変換モジュールと3相4線電源のN相と3相のうちの1相を用いて主制御電源を生成する主制御電源生成部とが混在しても各相の欠相及び逆相を確実に検出することができる電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、負荷としてモータなどを運転制御する場合、コンバータやインバータなどの電力変換装置が用いられる。電力変換装置では、スイッチング素子などを駆動するための電源が必要となる。
【0003】
ここで、特許文献1には、3相3線電源に接続された空気調和機であって、3相3線のうち1相でも欠相すると室内ユニット及び室内制御ユニットの少なくとも一方が作動不良状態となるように電源配線を接続することで、欠相を検出するための回路を不要化するものが記載されている。
【0004】
特許文献2には、3相3線電源に接続された空気調和機であって、3相3線のうちいずれか1相の欠相を、3相3線のうち2相間の電圧が所定レベルか否かにより判別するようにしたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−284985号公報
【特許文献2】特開平10−164747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、本願の発明者は、空気調和機において、R相、S相、T相、及びN相からなる3相4線電源から供給される交流電力を電力変換モジュールによって直流電力に変換する場合、R相、S相、T相、及びN相全てを電力変換モジュールに接続すると、4線全てに対してノイズフィルタを設けなければならないため、ノイズフィルタが大型化、複雑化するという課題を見出し、この課題を解決する手段として、3相4線電源からN相を分離した3相3線を、3相3線用ノイズフィルタを介して電力変換モジュールに接続するようにした。そして、電力変換モジュールを駆動するための電源は、200Vの電圧を基準に生成する必要があるため、3相3線の各線にスター接続されたフィルタ用コンデンサの中点と3相3線のうちのいずれか1相の線との間から200Vの電圧を取り出すようにした(特願2015−214497号)。
【0007】
一方、例えば空気調和機の室外機に設けられるコンプレッサ、ファンモータ、四方弁などは、主制御電源基板内の主制御電源生成部によって生成された制御電源により駆動される制御部により制御される。主制御電源生成部は、3相4線電源のN相と、N相を除く3相の各相のうちの1相とから200Vの電圧を取り出している。
【0008】
ここで、電力変換モジュール側は3相4線電源のうちのN相を除く3相のみが接続されているため、N相の欠相を検出できない。従って、N相に欠相が生じた場合、主制御電源生成部は電源供給ができず、主制御部が動作できなくなるが、電力変換モジュール側はN相を用いていないため、正常に駆動し続けてしまうという新たな問題が生じる。
【0009】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、3相4線電源のうちのN相を除く3相の出力電力を変換する電力変換モジュールと3相4線電源のN相と3相のうちの1相を用いて主制御電源を生成する主制御電源生成部とが混在しても各相の欠相及び逆相を確実に検出することができる電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
開示の態様の電力変換装置は、R相、S相、T相およびN相からなる3相4線電源のうち、N相を除く3相からの出力電力を変換する電力変換モジュールと、前記3相の出力電力から前記電力変換モジュールを駆動するための駆動制御用電源を生成するモジュール制御電源部と、前記モジュール制御電源部を電源として前記3相のうちの2相の位相差をもとに各相の欠相および逆相を検出する3相検出部と、前記モジュール制御電源部が生成した駆動制御用電源を電源として前記電力変換モジュールを駆動制御する駆動制御部と、を備えた電力変換装置であって、前記駆動制御用電源を電源として前記N相の欠相を検出するN相欠相検出部を備え
る。
【0011】
また、
開示の態様の電力変換装置は、上記の発明において、前記N相欠相検出部は、前記駆動制御用電源を電源として前記N相の電圧に基づき前記N相の欠相を検出す
る。
【0012】
また、
開示の態様の電力変換装置は、上記の発明において、さらにノイズフィルタを有し、前記3相の出力電力は前記ノイズフィルタを介して前記電力変換モジュールに入力され
る。
【発明の効果】
【0013】
開示の態様によれば、電力変換装置内に、N相に接続されてN相の欠相を検出するN相欠相検出部を設けている。この結果、3相4線電源のうちの3相の出力電力を変換する電力変換モジュールと3相4線電源のN相と3相のうちの1相を用いて主制御電源を生成する主制御電源生成部とが混在しても各相の欠相及び逆相を確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態である電源供給システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態の変形例である電源供給システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照してこの発明を実施するための形態について説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態である電源供給システム100の構成を示す図である。
図1に示すように、電源供給システム100は、例えばコンプレッサに搭載されたブラシレスDCモータとインバータなどの負荷(第1負荷5)に直流電力を供給するために、交流電力を直流電力に変換する電力変換装置1を有する。電力変換装置1は、3相4線(R相、S相、T相、N相)電源4のうち、3相(R相、S相、T相)から、3相3線3に対するノイズフィルタ2を介して入力される電力をP−N間直流電力に変換し、電力変換装置1を介してコンプレッサに搭載されたブラシレスDCモータとインバータなどの負荷(第1負荷5)に供給する。
【0017】
電力変換装置1は、電力変換モジュール10を有する。電力変換モジュール10は、入力される3相交流電力を、スイッチング素子などのアクティブ素子10aを駆動制御して所望の直流電力に変換して出力する。上述したように、電力変換モジュール10は、3相交流電力を、P−N間に発生する直流電力に変換している。
図1では、電力変換モジュール10がコンバータとして機能しているが、3相交流電力を、2相あるいは3相などの交流電力に変換する交流―交流変換器として機能するものであってもよい。また、電力変換モジュール10は、コンバータとインバータとを含むものであってもよい。さらに、電力変換モジュール10は、マトリクスコンバータであってもよい。
【0018】
電力変換装置1は、モジュール制御電源生成部11と駆動制御部12とを有する。モジュール制御電源生成部11は、モジュール制御電源部13、3相検出部14、N相欠相検出部15を有する。モジュール制御電源部13は、相間電圧400Vの3相3線3から電力変換モジュール10を駆動するための駆動制御用電源を生成する。モジュール制御電源部13は、3相のうちの1相(例えばT相)と、3相(R相、S相、T相)にスター結線されたコンデンサC1,C2,C3間の中点との間の電圧(200V)から
駆動制御用電源を生成する。
【0019】
3相検出部14は、例えば3相のうちの2相の電圧の位相差をもとに各相の欠相及び逆相を検出するが、3相検出部14にはN相は接続されない。したがって、3相(R相、S相、T相)が正常に接続される場合には、3相検出部14は、N相の欠相を検出することができない。接続されていないN相の欠相を検出するため、電力変換装置1にはN相欠相検出部15が設けられる。N相欠相検出部15は3相4線電源4のN相の電圧を検出することによってN相の欠相を検出する。例えばN相と3相(R相、S相、T相)のうちのいずれか1相との相間電圧を検知することによりN相の欠相を検出する。
【0020】
駆動制御部12は、モジュール制御電源部13が生成した駆動制御用電源を用いて電力変換モジュール10に含まれるアクティブ素子10aを駆動制御するとともに、3相検出部14が欠相または逆相を検出した場合、あるいはN相欠相検出部15がN相の欠相を検出した場合、電力変換モジュール10の駆動を停止する。
【0021】
一方、電力変換装置1の外部の主制御電源基板6は、例えば空気調和機を構成する室外機に設けられる。主制御電源基板6は、例えば電力変換装置1を介さずに電力が供給される四方弁21や室内機22、あるいは図示しない室外機送風ファンなどの負荷(以下、これらを総称して第2負荷24という)に電源を供給したり、例えば電力変換装置1を介して電力が供給される第1負荷5や前記第2負荷24を制御する主制御部23に供給する電源を生成する主制御電源生成部20などに電源を供給する。主制御電源基板6には、3相3線3にN相を含めた3相4線電源4のN相と3相のうちの2相(例えばS相及びT相)が引き込まれる。主制御電源生成部20は、このN相とS相との相間電圧(200V)をもとに主制御電源基板に接続される機器に供給する電源を生成する。また、四方弁21と室内機22は、主制御電源基板6を介して3相4線電源4のN相と3相のうちの1相(例えばT相)とから直接、電源供給されている。
【0022】
ここで、
図1に示すように、主制御電源基板6内のN相とN相欠相検出部15とは、絶縁回路30を介して接続される。しかし、本発明はこの実施の形態には限られず、例えば、
図2に示すように、主制御電源基板6外のN相とN相欠相検出部15とを、絶縁回路30を介して接続するようにしてもよい。いずれの実施の形態においても、N相欠相検出部15は、N相電圧を検出し、検出したN相電圧値に応じてN相の欠相があったものと判定する。なお、N相欠相検出部15は、N相と3相(R相、S相、T相)のうちのいずれか1相との相間電圧が所定時間内に、所定回、所定値以下となった場合に欠相が生じたと判定することが好ましい。これは、ノイズなどによってN相の電圧値が一時的に低下する場合があり、誤判定を防止するためである。N相欠相判定は、例えば空気調和機の起動時に、N相欠相検出部15で検出したN相と3相のいずれか1相(例えばR相)との相間電圧が200Vを示した後、第2負荷24(四方弁21、室内機22など)の駆動が開始されてから1分間にN相とR相との相間電圧が主制御部23の制御を維持できる電圧以下まで低下して、空気調和機が再起動される、という起動シーケンスを2回以上繰り返すとき、N相が欠相していると判定する。
【0023】
また、絶縁回路30は、絶縁トランスであってもよいし、フォトカプラであってもよい。
【0024】
上記の通り、本実施の形態では、電力変換装置1内に、N相を用いる主制御電源基板6のN相電圧を検出してN相の欠相を検出するN相欠相検出部15を設けている。この結果、N相が欠相して、第2負荷24に電力が供給されず、電源供給システム100が動作できなくなった場合でも、電力変換装置1でN相欠相を検出できるので、確実にN相欠相を検出することができる。また、電力変換装置1でN相欠相を検出した場合、電力変換装置1自体の動作を停止するようにすることで、電源供給システム100が動作できないにもかかわらず、電力変換装置1だけが駆動し続けてしまうという事態を防止することができる。また、N相欠相検出部15が絶縁回路30を介してN相電圧を検出するようにすることで、電力変換装置1から外部へノイズを漏えいさせずに電力変換装置1側でN相電圧を検出することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 電力変換装置
2 ノイズフィルタ
3 3相3線
4 3相4線電源
5 第1負荷
6 主制御電源基板
10 電力変換モジュール
10a アクティブ素子
11 モジュール制御電源生成部
12 駆動制御部
13 モジュール制御電源部
14 3相検出部
15 N相欠相検出部
20 主制御電源生成部
21 四方弁
22 室内機
23 主制御部
24 第2負荷
30 絶縁回路
100 電源供給システム
C1,C2,C3 コンデンサ