(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記積層体は、一方の主面から100μmより大きく離れ、かつ、他方の主面から100μmより大きく離れた領域に、厚みの全てが存在するガラスセラミック層を備えていない、請求項1ないし5のいずれか1項に記載された積層セラミック基板。
前記積層体は、一方の主面から100μmより大きく離れ、かつ、他方の主面から100μmより大きく離れた領域に、厚みの全てが存在するガラスセラミック層を備えていない、請求項8ないし12のいずれか1項に記載された積層セラミック基板の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献3に開示された方法により作製された多層セラミック基板は、別の理由に起因して、抗折強度が低い、表面電極との電極接合強度が低いという問題があった。
【0012】
すなわち、特許文献3に開示された多層セラミック基板の方法には、焼成時に、積層体を上下から挟み込んで加圧する拘束層が、低温焼結セラミック材料により形成された積層体からガラス成分を吸引してしまうという問題があった。そして、積層体の上下主面からガラス成分が吸引されると、積層体の上下主面近傍はガラス成分が不足してしまい、圧縮応力を得ることができず、亀裂が発生しやすく、基板の抗折強度が低下し、かつ、基板と表面電極との電極接合強度が低下するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上述した従来の問題を解決するためになされたものであり、その手段として、本発明の積層セラミック基板は、所定の層間に内部電極が配置され、複数のセラミック層が積層された積層体を備えた積層セラミック基板であって、セラミック層は、SiO
2に換算して48〜75重量%のSi、BaOに換算して20〜40重量%のBa、Al
2O
3に換算して5〜20重量%のAlを含有する主成分と、主成分50重量部に対して、少なくとも、MnOに換算して2.5〜20重量部のMnを含有する副成分と、を含有するセラミック材料からなり、積層体の内部、かつ、
一方の主面から100μm以内に、厚みの少なくとも一部が存在する第1のガラスセラミック層が配置されるとともに、積層体の内部、かつ、
他方の主面から100μm以内に、厚みの少なくとも一部が存在する第2のガラスセラミック層が配置され、積層体の一方の主面と第1のガラスセラミック層との間に積層されたセラミック層、および、積層体の他方の主面と第2のガラスセラミック層との間に積層されたセラミック層のガラス濃度が、第1のガラスセラミック層と第2のガラスセラミック層の間に積層されたセラミック層のガラス濃度よりも高いものとした。なお、上記において、積層体の内部とは、積層体の主面の表面部分を除く意味である。また、上記において、100μmは、完成した積層体(焼成後の積層体)における距離である。また、積層体の厚みは、極めて小さい内部電極の厚みを除外して、セラミック層とガラスセラミック層の合計の厚みから算出する。
積層体の一方の主面と第1のガラスセラミック層との間に積層されたセラミック層、および、積層体の他方の主面と第2のガラスセラミック層との間に積層されたセラミック層のCaO強度は、第1のガラスセラミック層と第2のガラスセラミック層の間に積層されたセラミック層のCaO強度よりも高いものとするとすることができる。
また、積層体の一方の主面と第1のガラスセラミック層との間に積層されたセラミック層、および、積層体の他方の主面と第2のガラスセラミック層との間に積層されたセラミック層の熱膨張係数は、第1のガラスセラミック層と第2のガラスセラミック層の間に積層されたセラミック層の熱膨張係数よりも低いものとするとすることができる。
【0014】
第1のガラスセラミック層
および第2のガラスセラミック層の
総層数は6層以下することが好ましい。積層体の中のガラスセラミック層の総層数が6層を超えると、セラミック層の絶縁抵抗が低下する場合があるからである。
【0015】
第1のガラスセラミック層
および第2のガラスセラミック層の
総層数は、たとえば、1層または2層とすることができる。この場合には、さらに、積層体全体に対するガラスセラミック層の割合が極めて小さいため、積層体が、収縮挙動の異なるセラミック層とガラスセラミック層とが積層されたことに起因して、基板が反ったり、抗折強度が低下したり、基板と表面電極との電極接合強度が低下したりすることがない。
【0016】
積層体は、一方の主面から100μmより大きく離れ、かつ、他方の主面から100μmより大きく離れた領域に、厚みの全てが存在するガラスセラミック層を備えていないものとすることができる。この場合には、積層体の中心部分にガラスセラミック層が存在していないため、収縮挙動の異なるセラミック層とガラスセラミック層とが積層されたことに起因して、基板が反ったり、抗折強度が低下したり、基板と表面電極との電極接合強度が低下したりすることがない。
【0017】
あるいは、積層体は、一方の主面から100μmより大きく離れ、かつ、他方の主面から100μmより大きく離れた領域に、厚みの全てが存在する
第3のガラスセラミック層を備えたものとしても良いが、第1のガラスセラミック層
、第2のガラスセラミック層および第3のガラスセラミック層の総層数は6層以下とすることが好ましい。積層体の中のガラスセラミック層の総層数が6層を超えると、セラミック層の絶縁抵抗が低下する場合があるからである。
【0018】
また、
積層体の一方の主面と、第1のガラスセラミック層との間に積層されたセラミック層、および、積層体の他方の主面と、第2のガラスセラミック層との間に積層されたセラミック層のガラス濃度は、第1のガラスセラミック層と第2のガラスセラミック層の間に積層されたセラミック層のガラス濃度よりも高い。この結果、基板の上下主面近傍のセラミック層が十分にガラス成分を含有しているため、基板の上下主面近傍の熱膨張係数が、基板の内部の熱膨張係数に比べて低くなる。そして、その結果、基板の上下主面それぞれに圧縮応力が働くため、基板に亀裂が発生しにくくなり、基板の抗折強度が高くなり、基板と表面電極との電極接合強度が高くなる。
【0019】
また、本発明の積層セラミック基板の製造方法は、所定の層間に内部電極が配置された複数のセラミック層が積層された積層体を備え、セラミック層が、SiO
2に換算して48〜75重量%のSi、BaOに換算して20〜40重量%のBa、Al
2O
3に換算して5〜20重量%のAlを含有する主成分と、主成分100重量部に対して、少なくとも、MnOに換算して2.5〜20重量部のMnを含有する副成分と、を含有するセラミック材料からなり、積層体の内部、かつ、
一方の主面から100μm以内に、厚みの少なくとも一部が存在する第1のガラスセラミック層が積層されるとともに、積層体の内部、かつ、
他方の主面から100μm以内に、厚みの少なくとも一部が存在する第2のガラスセラミック層が積層された積層セラミック基板の製造方法であって、セラミック層を形成するためのセラミックグリーンシートを用意する工程(a)と、セラミックグリーンシートの所定のものの主面に、ガラスセラミックスラリーを塗布して
第1または第2のガラスセラミック層を形成する工程(b)と、ガラスセラミック層が形成されていないセラミックグリーンシート、および、ガラスセラミック層が形成されたセラミックグリーンシートの少なくとも一方の所定のものの主面に、導電性ペーストを所定の形状に塗布して内部電極層を形成する工程(c)と、ガラスセラミック層や導電性ペーストが塗布されたものを含む、セラミックグリーンシートを所定の順番に積層し、未焼成積層体を作製する工程(d)と、工程(d)で得られた未焼成積層体の両主面を1対の拘束層で挟み、圧着する工程(e)と、工程(e)の後、未焼成積層体に圧力を加えた状態で、未焼成積層体を焼成し、
第1のガラスセラミック層から、積層体の一方の主面と第1のガラスセラミック層との間に積層されたセラミックグリーンシートへガラス成分を供給するとともに、第2のガラスセラミック層から、積層体の一方の主面と第2のガラスセラミック層との間に積層されたセラミックグリーンシートへガラス成分を供給して積層体を作製する工程(f)と、工程(f)の後、積層体の両主面から、拘束層を除去する工程
(g)と、を備えるようにした。なお、上記において、積層体の内部とは、積層体の主面の表面部分を除く意味である。また、上記において、100μmは、完成した積層体(焼成後の積層体)における距離である。
【0020】
なお、拘束層として拘束層グリーンシートを使用する場合には、その厚みが10μm以上であることが好ましい。10μm未満であると、積層セラミック基板に割れが発生する虞があるからである。
【0021】
また、焼成前のガラスセラミック層は、その厚みが1μm以上、30μm以下であることが好ましい。1μm未満であると、ガラス成分の供給量が不足する虞があるからである。また、30μmを超えると、積層体1の全体の厚みに対するガラスセラミック層3の厚みの割合が大きくなり過ぎてしまい、抗折強度と電極接合強度が低下してしまう虞があるからである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の積層セラミック基板は、第1のガラスセラミック層
および第2のガラスセラミック層からガラス成分が供給され、基板の上下主面近傍のセラミック層が十分にガラス成分を含有しているため、基板の上下主面近傍の熱膨張係数が、基板の内部の熱膨張係数に比べて低くなっている。そして、その結果、本発明の積層セラミック基板は、基板の上下主面それぞれに圧縮応力が働き、基板に亀裂が発生しにくく、基板の抗折強度が高く、基板と表面電極との電極接合強度が高いものになっている。
【0023】
また、本発明の積層セラミック基板の製造方法によれば、第1のガラスセラミック層
および第2のガラスセラミック層からガラス成分を供給し、基板の上下主面近傍のセラミック層に十分にガラス成分を含有させることができるため、製造された積層セラミック基板は、基板の上下主面近傍の熱膨張係数が、基板の内部の熱膨張係数に比べて低くなる。そして、その結果、本発明の積層セラミック基板の製造方法により製造された積層セラミック基板は、基板の上下主面それぞれに圧縮応力が働き、基板に亀裂が発生しにくく、基板の抗折強度が高く、基板と表面電極との電極接合強度が高いものになっている。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面とともに、本発明を実施するための形態について説明する。なお、各実施形態は、本発明の実施の形態を例示的に示したものであり、本発明が実施形態の内容に限定されることはない。また、異なる実施形態に記載された内容を組合せて実施することも可能であり、その場合の実施内容も本発明に含まれる。また、図面は、実施形態の理解を助けるためのものであり、必ずしも厳密に描画されていない場合がある。たとえば、明細書に記載されている構成要素が、図面において省略されている場合や、個数や層数を変更して描画されている場合がある。また、描画された構成要素ないし構成要素間の寸法の比率が、明細書に記載されたそれらの寸法の比率と一致していない場合がある。
【0026】
[実施形態]
図1に、本発明の実施形態にかかる多層セラミック基板100を示す。ただし、
図1は、多層セラミック基板100の断面図である。
【0027】
多層セラミック基板100は、積層体1を備える。
【0028】
積層体1は、複数のセラミック層2と、2層のガラスセラミック層3a、3bと、複数の内部電極4とが積層された構造からなる。
【0029】
各セラミック層2は、48〜75重量%のSiO
2、20〜40重量%のBaO、5〜20重量%のAl
2O
3を含有する主成分と、主成分100重量部に対して、少なくとも、2.5〜20重量部のMnOを含有する副成分と、を含有するセラミック材料を使用してセラミックグリーンシートを作製し、焼成したものからなる。
【0030】
セラミック層2の所定の層間には、所定の形状からなる内部電極4が積層されている。本実施形態においては、セラミック層2とガラスセラミック層3a、3bとの層間に内部電極4は積層されていないが、セラミック層2とガラスセラミック層3a、3bとの層間に内部電極4を積層させるようにしても良い。
【0031】
また、セラミック層2には、必要に応じて、表裏面を貫通して、所定の位置に、ビア電極5が形成されている。ビア電極5は、セラミック層2の表裏間の電気的導通をはかるためのものである。
【0032】
ガラスセラミック層3aは、積層体1の上側主面から100μm以内に、厚みの全てが存在するように、あるいは、厚みの一部が存在するように積層されている。ガラスセラミック層3bは、積層体1の下側主面から100μm以内に、厚みの全てが存在するように、あるいは、厚みの一部が存在するように積層されている。なお、主面からガラスセラミック層3a、3bまでの距離は、積層体1を焼成した後の距離である。
【0033】
ガラスセラミック層3a、3bは、たとえば、40〜60重量部のAl
2O
3に対して、BaO-Al
2O
3-SiO
2-B
2O
3-CaOを主成分とするガラス成分を60〜40重量部含む材料を使用して、ガラスセラミックスラリーを作製し、上述したセラミックグリーンシートに塗布して焼成したものからなる。なお、ガラスセラミック層3a、3bは、ガラスセラミックスラリーをセラミックグリーンシートに塗布するのに代えて、ガラスセラミックスラリーを使用してガラスセラミックグリーンシートを作製し、焼成したものであっても良い。
【0034】
ガラスセラミック層3aは、積層体1の自身よりも上側に積層されたセラミック層2にガラス成分を供給し、積層体1の上主面近傍に十分にガラス成分を含有させるために積層されている。ガラスセラミック層3bは、積層体1の自身よりも下側に積層されたセラミック層2にガラス成分を供給し、積層体1の上主面近傍に十分にガラス成分を含有させるために積層されている。
【0035】
なお、上述したとおり、ガラスセラミック層3a、3bは、それぞれ、積層体1のいずれかの主面から100μm以内に、厚みの全てが存在するように、あるいは、厚みの一部が存在するように積層されている。100μm以内としたのは、100μmよりも大きく離れて積層されると、積層体1の主面近傍にまで十分にガラス成分を供給することができなくなる虞があるからである。なお、本実施形態においては、上側主面の近くにガラスセラミック層3a、下側主面の近くにガラスセラミック層3bの2層を積層しているが、積層体1の厚みが200μm前後よりも小さい場合は、ガラスセラミック層を1層にすることも可能である。
【0036】
ガラスセラミック層3a、3bには、必要に応じて、表裏面を貫通して、所定の位置に、ビア電極5が形成されている。
【0037】
積層体1の両主面には、必要に応じて、所定の位置に、所定の形状からなる表面電極6が形成されている。
【0038】
内部電極4、ビア電極5、表面電極6は、たとえば、セラミック層2と同時に焼成することができる、銀、銅などの低融点金属を主成分とする導電性ペーストを焼成したものからなる。銀、銅などの低融点金属は、比較的安価で、かつ比抵抗が小さいため、これらを使用すれば、高周波特性に優れた多層セラミック基板を安価に製造することができる。ただし、内部電極4、ビア電極5、表面電極6に、必ずしも低融点金属を使用しなければならないことはなく、高融点金属を使用しても良い。
【0039】
積層体1の内部には、内部電極4、ビア電極5により、必要な電気配線が形成されている。また、内部電極4、ビア電極5により、インダクタやキャパシタが形成される場合がある。また、積層体1内のセラミック層2の層間に抵抗体膜を設けたり、積層体1内に電子部品素子を内蔵させたりする場合がある。
【0040】
上述した構造からなる多層セラミック基板100に電子部品を実装すれば、電子部品モジュールを作製することができる。
【0041】
図2に、一例として、多層セラミック基板100を使用した電子部品モジュール200を示す。ただし、
図2は、電子部品モジュール200の断面図である。
【0042】
電子部品モジュール200は、多層セラミック基板100の上側主面に形成された表面電極6に、複数の電子部品7が実装されている。多層セラミック基板100の下側主面に形成された表面電極6は、電子部品モジュール200を基板などに実装する際の電極として使用される。
【0043】
図3〜
図7に、多層セラミック基板100の製造方法の一例を示す。
【0044】
まず、セラミック層2を形成するための、複数枚のセラミックグリーンシートを作製した。
【0045】
具体的には、まず、図示しないが、出発原料として、SiO
2、BaCO
3、Al
2O
3、Zr
2O、MnCO
3、CeO
2の各粉末を用意した。
【0046】
次に、SiO
2、BaCO
3、Al
2O
3、Zr
2Oの各粉末を、仮焼後において、SiO
2が57.0重量%、BaOが31.0重量%、Al
2O
3が12.0重量%となり、かつ、これらのSiO
2、BaO、Al
2O
3の合計100重量部に対して、ZrO
2が0.5重量部となるように調合し、続いて、ボールミルにて純水を用いて湿式混合した。そして、混合後、蒸発乾燥させ、素材混合粉末を得た。
【0047】
次に、得られた素材混合粉末を、大気中において、840℃の温度で2時間仮焼し、仮焼粉を得た。
【0048】
次に、得られた仮焼粉に、MnCO
3およびCeO
2の各粉末を、焼成後において、SiO
2、BaO、Al
2O
3の合計100重量部に対して、MnOが4.0重量部、CeO
2が3.0重量部となるように調合し、続いて、ボールミルにて有機溶剤を用いて湿式混合し、湿式混合物を得た。
【0049】
次に、得られた湿式混合物に、ブチラール系樹脂と可塑剤(DOP)とをそれぞれ所定量添加し、混合して、セラミックスラリーを得た。
【0050】
次に、得られたセラミックスラリーを使用し、ドクターブレード法によって、厚さ20μmのセラミックグリーンシートを作製した。続いて、得られたセラミックグリーンシートを所望の寸法にカットし、複数枚のセラミックグリーンシート12を得た。本実施形態においては、50枚のセラミックグリーンシートを得た。
【0051】
以上のセラミック層2を形成するためのセラミックグリーンシートの作製と並行して、ガラスセラミック層3a、3bを形成するためのガラスセラミックスラリーを作製した。
【0052】
具体的には、まず、Al
2O
3粉末と、BaO−Al
2O
3−SiO
2−B
2O
3−CaOを主成分とするガラス粉末を用意した。
【0053】
次に、Al
2O
3粉末50重量部に対して、ガラス粉末が50重量部となるように調合し、続いて、ブチラール系樹脂、可塑剤を添加し、混合して、ガラスセラミックスラリーを作製した。
【0054】
次に、セラミックグリーンシート12の中の2枚の主面全面に、ガラスセラミックスラリーを使用して、ドクターブレード法によって、厚さ4μmのガラスセラミック層13aまたは13bを形成した。
【0055】
図3に、ガラスセラミック層の形成されていないセラミックグリーンシート12と、ガラスセラミック層13aまたは13bが形成されたセラミックグリーンシート12を、後述する未焼成積層体11内での積層順に示す。
【0056】
図3から分かるように、後述する拘束層グリーンシート18を除き(以下において、積層された層の順番の説明は、拘束層グリーンシート18を除外しておこなっている)、未焼成積層体11内において、最上層、上から3層目〜下から3層目、最下層に、それぞれ、無地のセラミックグリーンシート12が積層される。そして、上から2層目に、ガラスセラミック層13aが上面に形成されたセラミックグリーンシート12が積層され、下から2層目に、ガラスセラミック層13bが下面に形成されたセラミックグリーンシート12が積層される。なお、本実施形態においては、セラミックグリーンシート12の総数を50枚としたが、
図3においては、見やすくするため、枚数を省略して示している(他の図においても同じ)。
【0057】
次に、
図4に示すように、ガラスセラミック層の形成されていないセラミックグリーンシート12、ガラスセラミック層13a、13bが形成されたセラミックグリーンシート12に、ビア電極5を形成するための孔15を、レーザー加工機、パンチングマシーンなどを使用して形成した。
【0058】
また、孔15の形成と並行して、Cu粉末を主成分として含有する導電性ペーストを用意した。導電性ペーストは、Cuに代えて、Agなどを主成分として含有するものであっても良い。
【0059】
次に、
図5に示すように、ガラスセラミック層の形成されていないセラミックグリーンシート12、ガラスセラミック層13a、13bが形成されたセラミックグリーンシート12に、スクリーン印刷法などにより導電性ペーストを塗布した。
【0060】
この結果、未焼成積層体11内で最上層に積層されるセラミックグリーンシート12の上側主面に、焼成後に表面電極6となる導電性ペースト膜16が所望の形状に形成され、そのセラミックグリーンシート12に形成された孔15内にビア電極5を形成するための導電性ペースト25が充填された。
【0061】
また、未焼成積層体11内で上から2層目に積層される、ガラスセラミック層13aが形成されたセラミックグリーンシート12に形成された孔15内に、ビア電極5を形成するための導電性ペースト25が充填された。
【0062】
また、未焼成積層体11内で、上から3層目〜下から3層目までに積層される、ガラスセラミック層の形成されていないセラミックグリーンシート12の上側主面に、必要に応じて、焼成後に内部電極4となる導電性ペースト膜14が所望の形状に形成され、セラミックグリーンシート12に形成された孔15内にビア電極5を形成するための導電性ペースト25が充填された。
【0063】
また、未焼成積層体11内で下から2層目に積層される、ガラスセラミック層13bが形成されたセラミックグリーンシート12に形成された孔15内に、ビア電極5を形成するための導電性ペースト25が充填された。
【0064】
さらに、未焼成積層体11内で最下層に配置されるセラミックグリーンシート12の下側主面に、焼成後に表面電極6となる導電性ペースト膜16が形成され、そのセラミックグリーンシート12に形成された孔15内にビア電極5を形成するための導電性ペースト25が充填された。
【0065】
次に、
図6(A)に示すように、ガラスセラミック層の形成されていないセラミックグリーンシート12と、ガラスセラミック層13a、13bが形成されたセラミックグリーンシート12と、さらに1対の拘束層である拘束層グリーンシート18、18を、所望の順番に積層し、加圧して、未焼成積層体11を作製した。この状態で、未焼成積層体11を上下から圧着して、圧着体を形成した。
【0066】
拘束層グリーンシート18、18には、たとえば、ZrO
2、Al
2O
3、MgOなどを主成分とするセラミックグリーンシートを使用することができる。
【0067】
次に、
図6(B)に示すように、未焼成積層体11を、さらに、上下から1対の加圧治具19、19で挟み込んだ。
【0068】
続いて、加圧治具19、19により、拘束層グリーンシート18、18に圧力を加えた状態で、未焼成積層体11を焼成した。加えた圧力は10kgf/cm
2とした。焼成雰囲気は還元性とした。焼成温度は980℃とした。
【0069】
焼成時に、拘束層グリーンシート18、18により、最上層および最下層に積層されたセラミックグリーンシート12から、それぞれ、ガラス成分が吸収されるが、本実施形態においては、ガラスセラミック層13aから最上層に積層されたセラミックグリーンシート12にガラス成分が供給され、ガラスセラミック層13bから最下層に積層されたセラミックグリーンシート12にガラス成分が供給されるため、最上層および最下層に積層されたセラミックグリーンシート12は十分にガラス成分を含有した状態で焼成される。
【0070】
次に、
図7に示すように、全体を自然冷却した後、加圧治具19、19を取り外すとともに、焼成された積層体1の上下主面の拘束層(拘束層グリーンシート18、18)を除去した。
【0071】
焼成により、厚み20μmのセラミックグリーンシート12は、厚み10μmのセラミック層2となった。同様に、焼成により、厚み4μmのガラスセラミック層13a、13bは、厚み2μmのガラスセラミック層3a、3bとなった。
【0072】
最後に、図示しないが、積層体1の両主面に形成された表面電極6の表面に、電解めっきにより、第1層としてNiめっき膜、第2層としてAuめっき膜を形成し、セラミック多層基板100を完成させた。
【0073】
本実施形態にかかる積層セラミック基板100は、ガラスセラミック層3a、3b(ガラスセラミック層13a、13b)からガラス成分が供給されるため、積層体の上下主面近傍のセラミック層2が十分にガラス成分を含有している。そのため、積層セラミック基板100の上下主面近傍の熱膨張係数は、積層体1の内部の熱膨張係数に比べて低い。この結果、積層セラミック基板100の上下主面には圧縮応力が働くため、積層セラミック基板100は亀裂が発生しにくく、抗折強度が高く、表面電極との電極接合強度が高いものになっている。
【0074】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかしながら、本発明がこれらの内容に限定されることはなく、発明の趣旨に沿って、種々の変更をなすことができる。
【0075】
たとえば、実施形態では、積層体1内に2層のガラスセラミック層3a、3bを形成しているが、ガラスセラミック層の層数は任意であり、積層体1の厚みが100μm前後よりも小さい場合は、1層のガラスセラミック層で、積層体1の両主面側にガラス成分を供給することも可能である。
【0076】
また、ガラスセラミック層3a、3bの材質や厚みも任意であり、上述した内容に限定されることはない。
【0077】
また、セラミック層2の層数や厚みも任意であり、上述した内容に限定されることはない。
【0078】
なお、ガラスセラミック層3aとガラスセラミック層3bとの間に、さらに別のガラスセラミック層(
第3のガラスセラミック層)を積層しても良いが、積層体1内のガラスセラミック層の総層数は6層以内とすることが好ましい。6層を超えると、セラミック層の絶縁抵抗が低下してしまう場合があるからである。
【0079】
本発明の有効性を確認するために、以下の実験をおこなった。
【0080】
[実験例1]
以下の要領で、実施例1にかかる積層セラミック基板と、比較例1にかかる積層セラミック基板を作製した。
【0081】
まず、実施形態で使用した、複数のセラミックグリーンシート12と、ガラスセラミックスラリーと、複数の拘束層グリーンシート18を用意した。
【0082】
セラミックグリーンシート12は、縦50mm、横50mm、厚み20μmとした。拘束層グリーンシート18は、縦50mm、横50mm、厚み100μmとした。
【0083】
次に、セラミックグリーンシート12の中の1枚の一方の主面全面に、ドクターブレード法により、ガラスセラミックスラリーを塗布し、厚み4μmのガラスセラミック層13を形成した。
【0084】
実施例1にかかる積層セラミック基板を作製するために、最下層に拘束層グリーンシート18を積層した。次に、その上に、49枚の無地のセラミックグリーンシート12を積層した。次に、その上に、ガラスセラミック層13が形成されたセラミックグリーンシート12を、ガラスセラミック層13が下側になるように積層した。最後に、その上に、拘束層グリーンシート18を積層し、実施例1にかかる未焼成積層体を作製した。
【0085】
次に、実施例1にかかる未焼成積層体を、上下から加圧した状態で、実施形態と同じ条件で焼成し、実施例1にかかる積層セラミック基板を得た。
【0086】
また、比較例1にかかる積層セラミック基板を作製するために、最下層に拘束層グリーンシート18を積層した。次に、その上に、50枚の無地のセラミックグリーンシート12を積層した。最後に、その上に、拘束層グリーンシート18を積層し、比較例1にかかる未焼成積層体を作製した。
【0087】
次に、比較例1にかかる未焼成積層体を、上下から加圧した状態で、実施形態1と同じ条件で焼成し、比較例1にかかる積層セラミック基板を得た。
【0088】
図8に、実施例1および比較例2にかかる積層セラミック基板をそれぞれ示す。ただし、
図8は要部断面図であり、それぞれの積層セラミック基板の上層部分のみを示している。
【0089】
実施例1にかかる積層セラミック基板は、最上層に拘束層(拘束層グリーンシート18)が、上から2層目にセラミック層2が、上から3層目にガラスセラミック層3が、上から4層目以下に複数のセラミック層2が積層されている。
【0090】
一方、比較例1にかかる積層セラミック基板は、最上層に拘束層(拘束層グリーンシート18)が、上から2層目以下に複数のセラミック層2が積層されている。
【0091】
次に、実施例1にかかる積層セラミック基板の上から2層目のセラミック層2の点Xと、上から4層目のセラミック層2の点Yと、比較例1にかかる積層セラミック基板の上から2層目のセラミック層2の点Zについて、それぞれ、XRD分析により、CaOの強度を測定した。なお、CaOは、ガラスセラミック層13のガラス成分であるBaO-Al
2O
3-SiO
2-B
2O
3-CaOに含まれているが、セラミックグリーンシート12には含まれていない。
【0092】
表1に、点X、点Y、点Zにおける、CaOの強度比を示す。(点Xの強度を1.0として、点Y、点Zの強度を比で示した。)
【0093】
【表1】
表1から分かるように、点XのCaO強度と比較して、点YのCaO強度は低い。また、比較例1の点XのCaO強度は0.0であった。
【0094】
これは、未焼成積層体を焼成する際に、最上層の拘束層グリーンシート18が、上から2層目のセラミックグリーンシート12からガラス成分を吸収するが、実施例1においては、それを補うために、上から3層目のガラスセラミック層13から、上から2層目のセラミックグリーンシート12へ、ガラス成分が供給されることを示しているものと考えられる。したがって、ガラスセラミックグリーンシート12が十分にガラス成分を供給する機能を果たしている場合には、ガラスセラミック層3よりも基板の主面側に積層されたセラミック層2のガラス濃度は、ガラスセラミック層3よりも基板の内部側に積層されたセラミック層2のガラス濃度よりも高くなる。
【0095】
以上より、発明によれば、積層セラミック基板の主面近傍のセラミック層に、十分にガラス成分を含有させることができることが分かった。
【0096】
[実験例2]
以下の要領で、実施例2-1〜実施例2-6にかかる積層セラミック基板と、比較例3〜比較例6にかかる積層セラミック基板を作製した。
【0097】
まず、実施形態で使用した、複数のセラミックグリーンシート12と、ガラスセラミックスラリーと、導電性ペーストと、複数の拘束層グリーンシート18を用意した。
【0098】
セラミックグリーンシート12の平面寸法は、縦50mm、横50mmとした。セラミックグリーンシート12には、厚みの異なる複数種類のもの、たとえば、10μmのものと20μmのものを用意した。
【0099】
拘束層グリーンシート18の平面寸法は、縦50mm、横50mmとした。拘束層グリーンシート18の厚みは、100μmとした。
【0100】
所定のセラミックグリーンシート12の一方の主面全面に、ドクターブレード法により、ガラスセラミックスラリーを塗布し、厚み4μmのガラスセラミック層13(実施形態の製造方法の説明においては、上側のガラスセラミック層を符号13a、下側のガラスセラミック層を符号13bで示したが、以下の説明においては、説明が煩雑になるのを避けるため、両者とも符合13で統一して示す)を形成した。
【0101】
また、所定のセラミックグリーンシート12の一方の主面上に、導電性ペーストを、縦2mm、横2mmの正方形状に、厚み20μmで塗布し、導電性ペースト膜16を形成した。
【0102】
また、主面にガラスセラミック層13を形成したセラミックグリーンシート12のうちの一部のものについては、形成されたガラスセラミック層13一方の主面上に、導電性ペーストを、縦2mm、横2mmの正方形状に、厚み20μmで塗布し、導電性ペースト膜16を形成した。
【0103】
これらの導電性ペースト膜16は、完成した多層セラミック基板の主面に、電極接合強度を測定するための表面電極6を形成するためのものである。
【0104】
これらの材料を使い、まず、実施例2-1〜実施例2-6の未焼成積層体11を作製した。
【0105】
実施例2-1〜実施例2-6の未焼成積層体11は、下から順に、拘束層グリーンシート18、導電性ペースト膜16、セラミックグリーンシート12、下側のガラスセラミック層13、セラミックグリーンシート12、上側のガラスセラミック層13、セラミックグリーンシート12、導電性ペースト膜16、拘束層グリーンシート18が積層された構造からなる。
【0106】
実施例2-1〜実施例2-6の未焼成積層体11は、厚みの異なるセラミックグリーンシート12を使い分けることにより、相互に、拘束層グリーンシート18を除いた主面(以下において同じ)からガラスセラミック層13までの距離が異なるように作製されている。表2に、焼成後の、各積層体1の主面からガラスセラミック層3までの距離を示す。なお、主面からガラスセラミック層3までの距離とは、主面から、ガラスセラミック層3の主面に近い側の面までの距離を意味する。
【0107】
【表2】
次に、比較例3の未焼成積層体11を作製した。
【0108】
比較例3の未焼成積層体11は、実施例2-1〜実施例2-6の未焼成積層体11と、ガラスセラミック層13の位置が異なる。すなわち、比較例3の未焼成積層体11においては、積層体の両主面に、主面に導電性ペースト膜16が形成されたガラスセラミック層13を積層した。したがって、比較例3の未焼成積層体11は、主面からガラスセラミック層13までの距離は0μmである。
【0109】
次に、比較例4の未焼成積層体11を作製した。
【0110】
比較例4の未焼成積層体11は、実施例2-1〜実施例2-6の未焼成積層体11と基本的な積層構造は同一であるが、主面からガラスセラミック層3までの距離を150μm(焼成後)と大きくした。
【0111】
以上の、実施例2-1〜実施例2-6、比較例3、比較例4の未焼成積層体11は、いずれも、複数のセラミックグリーンシート12の厚みの合計が1000μmになり、2層のガラスセラミック層13の厚みの合計が8μmになるように作製されている。
【0112】
次に、比較例5、比較例6の未焼成積層体11を作製した。比較例5の未焼成積層体11と、比較例6の未焼成積層体11は、共通のものからなる。また、比較例5、比較例6の未焼成積層体11は、特許文献2(特許第5024064号公報)に開示された未焼成積層体と類似した構造からなる。
【0113】
まず、主面に4μmのガラスセラミック層13が形成された厚さ20μmのセラミックグリーンシート12を48枚用意した。また、主面に4μmのガラスセラミック層13が形成された厚さ20μmのセラミックグリーンシート12であって、さらにその表面に導電性ペースト膜16が形成されたものを2枚用意した。
【0114】
次に、これらの材料を使い、下から順に、導電性ペースト膜16側を下にして主面にガラスセラミック層13と導電性ペースト膜16とが形成されたセラミックグリーンシート12を1枚、ガラスセラミック層13側を下にして主面にガラスセラミック層13が形成されたセラミックグリーンシート12を24枚、ガラスセラミック層13側を上にして主面にガラスセラミック層13が形成されたセラミックグリーンシート12を24枚、導電性ペースト膜16側を上にして主面にガラスセラミック層13と導電性ペースト膜16が形成されたセラミックグリーンシート12を1枚積層し、比較例5の未焼成積層体11を得た。比較例6の未焼成積層体11は、比較例5の未焼成積層体11の上下にそれぞれ、さらに拘束層グリーンシート18を積層した。
【0115】
次に、実施例2-1〜実施例2-6、比較例3〜比較例6の未焼成積層体11を焼成した。
【0116】
実施例2-1〜実施例2-6、比較例3、比較例4、比較例6の未焼成積層体11は、それぞれ、上下から加圧した状態で、実施形態1と同じ条件で焼成した。
【0117】
比較例5の未焼成積層体11は、加圧しない状態で、実施形態1と同じ条件で焼成した。
【0118】
次に、得られた焼成された各積層体1の表面電極6の表面に、Niめっき膜、Auめっき膜を形成し、実施例2-1〜実施例2-6、比較例3〜比較例6の積層セラミック基板をそれぞれ完成させた。
【0119】
次に、実施例2-1〜実施例2-6、比較例3〜比較例6の積層セラミック基板それぞれにつき、電極接合強度と抗折強度を測定した。
【0120】
電極接合強度は、各積層セラミック基板の主面に形成された表面電極6(Niめっき膜およびAuめっき膜あり)にリード端子をはんだ付けし、引っ張り強度試験機により測定した。
【0121】
抗折強度は、3点曲げ試験機により測定した。
【0122】
表2に、各積層セラミック基板の電極接合強度と抗折強度を示す。
【0123】
表2からわかるように、焼成後に、積層体の内部であって、主面から100μm以内に、厚みの全てが存在する、または、厚みの一部が存在する、ガラスセラミック層を有する実施例2-1〜実施例2-6にかかる積層セラミック基板は、電極接合強度、抗折強度とも、良好な結果であった。
【0124】
これに対し、積層体の主面の表面部分にガラスセラミック層が形成された比較例3は、抗折強度は良好であったが、電極接合強度が低下してしまった。
【0125】
また、焼成後に、積層体の主面から100μmより大きく離れてガラスセラミック層が形成された比較例4にかかる積層セラミック基板は、電極接合強度が低下してしまい、抗折強度もやや低下してしまった。
【0126】
また、セラミックグリーンシートの各層間に、拘束層としてガラスセラミック層を挿入し、圧力を加えず焼成した比較例5にかかる積層セラミック基板、圧力を加えて焼成した比較例6にかかる積層セラミック基板は、いずれも、電極接合強度が低下してしまい、抗折強度もやや低下してしまった。
【0127】
以上より、発明によれば、積層セラミック基板と表面電極との電極接合強度を高め、かつ、積層セラミック基板の抗折強度を高めることが出来ることが分かった。
【0128】
[実験例3]
以下の要領で、実施例3-1〜実施例3-7にかかる積層セラミック基板と、比較例7にかかる積層セラミック基板を作製した。
【0129】
実施例3-1〜実施例3-7においては、未焼成積層体11の上下に積層される拘束層グリーンシート18の厚みを変化させた。すなわち、焼成前において、拘束層グリーンシート18の厚みを、2μm、10μm、25μm、50μm、100μm、200μm、300μmに変化させた。
【0130】
一方、比較例7については、上下に拘束層グリーンシート18を積層しなかった。
【0131】
表3に、実施例3-1〜実施例3-7の各拘束層グリーンシート18の厚みを示す。
【0132】
【表3】
まず、各実施例および比較例の未焼成積層体11を作製した。
【0133】
各実施例の未焼成積層体11は、下から順に、所定の厚みからなる拘束層グリーンシート18を1枚、導電性ペースト膜16側を下にして導電性ペースト膜16が形成された20μmのセラミックグリーンシート12を1枚、ガラスセラミック層13側を下にして4μmのガラスセラミック層13が形成された20μmセラミックグリーンシート12を1枚、無地の20μmのセラミックグリーンシート12を46枚、ガラスセラミック層13側を上にして4μmのガラスセラミック層13が形成された20μmセラミックグリーンシート12を1枚、導電性ペースト膜16側を上にして導電性ペースト膜16が形成された20μmのセラミックグリーンシート12を1枚、所定の厚みからなる拘束層グリーンシート18を1枚、積層した構造とした。
【0134】
比較例の未焼成積層体11は、実施例の未焼成積層体11から上下の拘束層グリーンシート18を除いたものからなる。
【0135】
次に、実施例3-1〜実施例3-7、比較例7の未焼成積層体11を、それぞれ焼成した。
【0136】
実施例3-1〜実施例3-7の未焼成積層体11については、上下から、拘束層グリーンシート18を介して加圧治具で加圧した状態で、実施形態1と同じ条件で焼成した。
【0137】
比較例7の未焼成積層体11については、上下から加圧治具で直接加圧して、実施形態1と同じ条件で焼成した。
【0138】
この結果、拘束層グリーンシート18を積層しなかった比較例7の積層体と、2μmの拘束層グリーンシート18を積層した実施例3-1の積層体には、それぞれ割れが発生した。
【0139】
割れが発生しなかった実施例3-2〜実施例3-7の積層体につき、表面電極6の表面にNiめっき膜、Auめっき膜を形成し、各積層セラミック基板を完成させた。
【0140】
表3に、完成した各積層セラミック基板の電極接合強度と抗折強度を示す。
【0141】
表3からわかるように、実施例3-2〜実施例3-7の積層セラミック基板全てにおいて、良好な電極接合強度、抗折強度が得られた。
【0142】
以上より、良好な電極接合強度、抗折強度、外観形状を得るためには、未焼成積層体11の上下に拘束層グリーンシート18を積層し、上下から加圧した状態で焼成する必要があることが分かった。また、拘束層グリーンシート18の厚みは、2μmでは不足し、10μm以上にすることが望ましいことが分かった。
【0143】
[実験例4]
以下の要領で、実施例4-1〜実施例4-8にかかる積層セラミック基板を作製した。
【0144】
そして、実験例4においては、実施例4-1〜実施例4-8ごとに、ガラスセラミック層13の厚みを変化させ、その影響を調べた。
【0145】
表4に、実施例4-1〜実施例4-8、それぞれの、ガラスセラミック層13の厚みを示す。
【0146】
未焼成積層体11における積層の順番は全て同じとし、下から順に、厚み100μmの拘束層グリーンシート18を1枚、導電性ペースト膜16側を下にして導電性ペースト膜16が形成された20μmのセラミックグリーンシート12を1枚、ガラスセラミック層13側を下にして所定の厚みのガラスセラミック層13が形成された20μmセラミックグリーンシート12を1枚、無地の20μmのセラミックグリーンシート12を46枚、ガラスセラミック層13側を上にして所定の厚みのガラスセラミック層13が形成された20μmセラミックグリーンシート12を1枚、導電性ペースト膜16側を上にして導電性ペースト膜16が形成された20μmのセラミックグリーンシート12を1枚、厚み100μmの拘束層グリーンシート18を1枚、積層した構造とした。
【0147】
次に、これらの未焼成積層体11を、それぞれ、加圧した状態で、実施形態1と同じ条件で焼成した。
【0148】
次に、得られた焼成された各積層体1の表面電極6の表面に、Niめっき膜、Auめっき膜を形成し、実施例4-1〜実施例4-7、比較例8の積層セラミック基板をそれぞれ完成させた。
【0149】
上述のとおり、表4には、それぞれのガラスセラミック層13の厚みを示している。これに加えて、表4には、実施例4-1〜実施例4-8、それぞれの場合の、焼成後の完成した各積層セラミック基板における、積層体の厚みに対する、ガラスセラミック層13の厚み合計の比率(%)を示している。
【0150】
たとえば、実施例4−7では、50枚の厚さ20μmのセラミックグリーンシート12と、2層の厚さ30μmのガラスセラミック層13が積層されて、50層の厚さ10μmのセラミック層と、2層の厚さ15μmのガラスセラミック層3が積層された積層セラミック基板が作製されるため、比率は、(15×2)/(10×50+15×2)≒5.66%となる。
【0151】
また、実施例4−8では、50枚の厚さ20μmのセラミックグリーンシート12と、2層の厚さ40μmのガラスセラミック層13が積層されて、50層の厚さ10μmのセラミック層と、2層の厚さ20μmのガラスセラミック層3が積層された積層セラミック基板が作製されるため、比率は、(20×2)/(10×50+20×2)≒7.41%となる。
【0152】
表4に、完成した各積層セラミック基板の電極接合強度と抗折強度を示す。
【0153】
【表4】
表4からわかるように、1μm〜30μmのガラスセラミック層13を使用した実施例4-2〜実施例4-7にかかる積層セラミック基板は、電極接合強度、抗折強度とも、良好な結果であった。特に、実施例4-7は、ガラスセラミックグ層13の厚みを30μmとし、積層体1の全体の厚みに対するガラスセラミック層3の厚みの割合が、5.66%と比較的大きかったが、良好な電極接合強度と抗折強度を得ることができた。
【0154】
これに対し、ガラスセラミック層13の厚みを0.5μmとした実施例4-1は、抗折強度、電極接合強度ともに低下してしまった。ガラスセラミックグリーンシート23の厚みが小さく、ガラス成分の供給量が不足してしまったものと考えられる。
【0155】
また、ガラスセラミック層13の厚みを40μmにした実施例4-8は、抗折強度、電極接合強度ともに低下してしまった。積層体1の全体の厚みに対するガラスセラミック層3の厚みの割合が、7.41%と大きくなり過ぎてしまい、抗折強度と電極接合強度が低下してしまったものと考えられる。
【0156】
以上より、積層体1の全体の厚みに対するガラスセラミック層3の厚みの割合が、6%以下程度であれば、良好な電極接合強度と抗折強度を得ることができることが分かった。
【0157】
[実験例5]
実験例5では、積層体1の内部におけるガラスセラミック層3の総層数が、積層体1(セラミック層2)の絶縁抵抗に与える影響を調べた。
【0158】
次の内容からなる、実施例5-1〜実施例5-15にかかる積層セラミック基板を作製した。各実施例の製造方法は、特に断りがない限り、実施形態において説明した製造方法によった。
【0159】
各実施例は、積層体1に、2層、4層、6層、8層、10層のいずれかから選ばれるガラスセラミック層3を備える。各実施例において、これらのガラスセラミック層3のうち、1層は一方の主面から100μm以内に、他の1層は他方の主面から100μm以内に、厚みの全てが存在するように配置した。ガラスセラミック層3の総層数が4層以上の場合は、残りのガラスセラミック層3を、いま説明した主面から100μm以内に配置された2層のガラスセラミック層3の間に、等間隔で配置した。
【0160】
また、各実施例は、積層体1に、10層、40層、80層のいずれかから選ばれるセラミック層2を備える。
【0161】
なお、各実施例において、各ガラスセラミック層3の厚みは2μm(焼成前のガラスセラミック層13の段階で4μm)とした。また、セラミック層の厚みは10μm(セラミックグリーンシート12の段階で20μm)とした。
【0162】
また、各実施例には、絶縁抵抗を測定するための内部電極4および外部電極を形成した。具体的には、積層体1の積層方向の真ん中付近に隣接して配置される2層のセラミック2用のグリーンシート12の各主面にCuを主成分とした導電性ペースト膜14を塗布しておき、1対の内部電極4を形成した。また、焼成後の積層体1の両端に、Cuを主成分とした導電性ペースト膜を塗布し、焼付け、1対の外部電極を形成した。1対の内部電極4は、それぞれ、1対の外部電極のいずれか一方に接続されている。
【0163】
実施例5-1〜実施例5-15にかかる積層セラミック基板それぞれに対し、温度85℃、湿度85%の条件で、1000時間の100V負荷の試験を実施した。そして、試験後に、各実施例の外部電極間の絶縁抵抗を測定した。
【0164】
表5に、実施例5-1〜実施例5-15それぞれの絶縁抵抗(Ω(常用対数))を示す。
【0165】
【表5】
表5から分かるように、積層体1の内部におけるガラスセラミック層3の総層数は、積層体1(セラミック層2)の絶縁抵抗に影響を与えた。一方、積層体1の内部におけるセラミック層2の総層数は、積層体1(セラミック層2)の絶縁抵抗に影響を与えなかった。
【0166】
具体的には、積層体1の内部におけるガラスセラミック層3の総層数が、2層、4層、6層の場合は、セラミック層2の総層数のいかんにかかわらず、絶縁抵抗は12Ωであった。これに対し、積層体1の内部におけるガラスセラミック層3の総層数が8層の場合は、セラミック層2の総層数のいかんにかかわらず、絶縁抵抗は8Ωに低下した。さらに、積層体1の内部におけるガラスセラミック層3の総層数が10層の場合は、セラミック層2の総層数のいかんにかかわらず、絶縁抵抗は6Ωにさらに低下した。
【0167】
本件発明者において、詳しいメカニズムについては研究中である。ガラスセラミック層3の総層数が6層を超えると、焼成時に、セラミックグリーンシート12に含まれるバインダーや、ガラスセラミック層13に含まれるバインダーの蒸発が妨げられ、層中にバインダーが残存しやすくなる。焼成後に、層中のバインダーが徐々に揮発することにより、欠陥が発生しやすくなり、絶縁抵抗が低下するのではないかと考えられる。
【0168】
以上より、高い絶縁抵抗を維持するためには、積層体1の内部におけるガラスセラミック層3の総層数を、6層以下にすれば良いことが分かった。なお、本実施例では、積層体の主面から100μmより離れた領域にガラスセラミック層が存在する形態を説明した。しかし、全てのガラスセラミック層が積層体の主面から100μm以内に存在していても、ガラスセラミック層13の層数が6層以下であれば絶縁抵抗が低下しにくい傾向は同じであると考えられる。