(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ルームエアコン、店舗用パッケージエアコン、ビル用パッケージエアコン、設備用パッケージエアコン、一以上の室内機及び室外機を冷媒配管で接続したセパレート型エアコン、ウインドウ型エアコン、ポータブル型エアコン、ダクトで冷温風を搬送するルーフトップ型若しくはセントラル型エアコン、ガスエンジンヒートポンプ、列車用空調装置、自動車用空調装置、内蔵型ショーケース、別置型ショーケース、業務用冷凍冷蔵庫、製氷機、一体型冷凍機、自動販売機、カーエアコン、海上輸送用のコンテナ又は冷蔵庫を冷却するための冷凍機、チラーユニット、ターボ冷凍機、又は、暖房サイクル専用機である、請求項7に記載の冷凍機、大型空調機器及び産業用プロセス冷却機器。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の組成物、及び前記組成物を含有する冷凍機、大型空調機器又は産業用プロセス冷却機器について説明するが、先ずは前記組成物に含まれる下記一般式(1):
CmHnFxCly (1)
〔但し、4≦m≦10、n+x+y=2m−2であり、分子中に三重結合を有する。〕
で表される化合物(以下「本発明の化合物」ともいう)について説明する。
【0011】
本発明の化合物は、上記特定の組成を有することにより、冷媒、洗浄剤及び噴射剤からなる群から選択される少なくとも一種の用途に好適に使用することができる。
【0012】
上記本発明の化合物は、優れた冷凍能力を有し、低燃焼性でありながらGWPが低く、且つ、大型空調機器に適用しても運転中に負圧状態となり難い化合物である。よって、本発明の化合物は冷媒の用途に有用であり、前記化合物を含む組成物は作動流体として冷凍機、大型空調機器又は産業用プロセス冷却機器に好適に適用することができる。また、本発明の化合物は冷媒の用途以外に洗浄剤又は噴射剤の用途にも有用であり、前記化合物を含む組成物も洗浄剤又は噴射剤の用途に好適である。
【0013】
以下、本明細書における「冷媒」の用語について定義するとともに、本発明の化合物の好適な用途である冷媒、洗浄剤及び噴射剤について説明する。なお、本発明の化合物を含む組成物も、冷媒(作動流体)、洗浄剤又は噴射剤の用途に有用である。
【0014】
<用語の定義>
本明細書において用語「冷媒」には、ISO817(国際標準化機構)で定められた、冷媒の種類を表すRで始まる冷媒番号(ASHRAE番号)が付された化合物と同等の、冷媒としての特性を有するものが含まれる。冷媒は、一般に化合物の構造の面で「フルオロカーボン系化合物」と「非フルオロカーボン系化合物」とに大別されるが、一般式(1)で表される本発明の化合物は「フルオロカーボン系化合物」に該当する。
【0015】
本明細書において、用語「冷媒を含む組成物」には、
(1)冷媒そのもの(単独冷媒、及び冷媒の混合物、すなわち「混合冷媒」を含む)と、
(2)その他の成分をさらに含み、少なくとも冷凍機油と混合することにより冷凍機用作動流体を得るために用いることのできる組成物と、
(3)冷凍機油を含有する冷凍機用作動流体とが少なくとも含まれる。
【0016】
本明細書においては、これら三態様のうち、(2)の組成物のことを、冷媒そのもの(混合冷媒を含む)と区別して「冷媒組成物」と表記する。また、(3)の冷凍機用作動流体のことを「冷媒組成物」と区別して「冷凍機油含有作動流体」と表記する。
【0017】
本明細書において、用語「代替」は、第一の冷媒を第二の冷媒で「代替」するという文脈で用いられる場合、第一の類型として、第一の冷媒を使用して運転するために設計された機器において、必要に応じてわずかな部品(冷凍機油、ガスケット、パッキン、膨張弁、キャピラリー、ドライヤ、圧縮機、熱交換器、制御盤、その他の部品のうち少なくとも一種)の変更及び機器調整のみを経るだけで、第二の冷媒を使用して、最適条件下で運転することができることを意味する。すなわち、この類型は、同一の機器を、冷媒を「代替」して運転することを指す。この類型の「代替」の態様としては、第二の冷媒への置き換えの際に必要とされる変更及び/又は調整の度合いが小さい順に、「ドロップイン(drop in)代替」、「ニアリー・ドロップイン(nealy drop in)代替」及び「レトロフィット(retrofit)」があり得る。
【0018】
第二の類型として、第二の冷媒を用いて運転するために設計された機器を、第一の冷媒の既存用途と同一の用途のために、第二の冷媒を搭載して用いることも、用語「代替」に含まれる。この類型は、同一の用途を、冷媒を「代替」して提供することを指す。
【0019】
本明細書において用語「冷凍機(refrigerator)」とは、物又は空間の熱を奪い去ることにより、周囲の外気よりも低い温度にし、かつこの低温を維持する装置全般のことをいう。言い換えれば、冷凍機は温度の低い方から高い方へ熱を移動させるために、外部からエネルギーを得て仕事を行いエネルギー変換する変換装置のことをいう。
【0020】
〔冷媒、冷媒組成物及び冷凍機油含有作動流体の用途〕
1.
冷媒
1.1
冷媒成分
下記一般式(1):
CmHnFxCly (1)
〔但し、4≦m≦10、n+x+y=2m−2であり、分子中に三重結合を有する。〕
で表される本発明の化合物は、冷媒の用途に用いることができる。
【0021】
以下、冷媒、冷媒組成物及び冷凍機油含有作動流体の用途を説明するに際し、本発明の化合物は「本発明の冷媒」と称する。
【0022】
一般式(1)中、mは4≦m≦10であればよいが、その中でも4≦m≦5であることが好ましい。すなわち、本発明の冷媒は、炭素数4以上の三重結合化合物である。
【0023】
一般式(1)で示される本発明の冷媒は、従来のHFO冷媒、特にHCFO−1233zd(E)との対比において優れた冷凍能力を有する。よって、本発明の冷媒は、好適に従来のHFO冷媒、特にHCFO−1233zd(E)を代替することができる。
【0024】
一般式(1)で示される本発明の冷媒は、沸点が−15〜200℃であることが好ましく、−15〜0℃であることがより好ましく、−15〜−5℃であることが更に好ましく、−13〜−5℃であることが最も好ましい。このような沸点であることにより、本発明の冷媒(又は冷媒組成物若しくは冷凍機油含有作動流体)を大型空調機器に適用した場合に運転中に負圧状態となり難く、外気混入による配管腐食のリスクを低減できる。
【0025】
一般式(1)で示される本発明の冷媒は、低燃焼性である。燃焼速度は限定的ではないが、10cm/sec以下が好ましい。燃焼速度がかかる範囲であることにより優れた低燃焼性が確保される。燃焼速度は、5cm/sec以下がより好ましい。なお、本明細書における燃焼速度は、ASHRAE Standard34-2013及びASHRAE Standard34-2013 Appendix B2に従った装置と方法で測定される値である。
【0026】
なお、同じ三重結合を持つ低燃焼性の3,3,3−トリフルオロプロピンは燃焼速度が3.6cm/s、燃焼下限界濃度が3.9vol%である。本発明の冷媒は燃焼下限界濃度が5.5vol%以上であるため、本発明の化合物の方が燃焼範囲が狭く、3,3,3−トリフルオロプロピンよりも燃焼速度が遅いため、低燃焼性であることが分かる。
【0027】
一般式(1)で示される本発明の冷媒は、GWPが概ね10未満である。
【0028】
一般式(1)で示される本発明の冷媒としては、具体的に、ペンタフルオロブチン(PFB)、ヘプタフルオロペンチン、デカフルオロへキシン、ノナフルオロヘキシン等が挙げられる。これらの中でも、沸点の観点からはPFBが最も好ましい。なお、PFBは沸点が約−13℃であり、GWPは10未満である。
【0029】
一般式(1)で示される本発明の冷媒は、調製時の条件などに基づく副生成物としてアセトン、R23、R125、塩化メチレン、3,3,3−トリフルオロプロピン及びアセチレンからなる群から選択される少なくとも一種を含有する場合がある。なお、これらの副生成物は厳密には一般式(1)で示される本発明の冷媒とは異なるため、本発明の冷媒及び前記副生成物を含む冷媒全体(冷媒成分全体)に対して、前記副生成物の含有量は5質量%未満の含有量であることが好ましい。
【0030】
1.2
本発明の冷媒が適用できる機器
本発明の冷媒は、作動流体として、1)冷凍サイクルを運転する工程を含む冷凍方法、2)冷凍サイクルを運転する冷凍機の運転方法等における既存の冷媒の用途に幅広く利用することができる。ここで、上記冷凍サイクルは、圧縮機を介して本発明の冷媒を前記冷媒のみの状態、又は後述する冷媒組成物或いは冷凍機油含有作動流体の状態で冷凍機の内部を循環させてエネルギー変換することを意味する。
【0031】
従って、本発明には、冷凍方法における本発明の冷媒(又はそれを含む組成物)の使用の発明、冷凍機などの運転方法における本発明の冷媒(又はそれを含む組成物)の使用の発明、更には本発明の冷媒(又はそれを含む組成物)を有する冷凍機などの発明等も包含されている。
【0032】
本発明の冷媒(又はそれを含む組成物)が適用できる冷凍機、大型空調機器又は産業用プロセス冷却装置としては限定的ではないが、例えばルームエアコン、店舗用パッケージエアコン、ビル用パッケージエアコン、設備用パッケージエアコン、一以上の室内機及び室外機を冷媒配管で接続したセパレート型エアコン、ウインドウ型エアコン、ポータブル型エアコン、ダクトで冷温風を搬送するルーフトップ型若しくはセントラル型エアコン、ガスエンジンヒートポンプ、列車用空調装置、自動車用空調装置、内蔵型ショーケース、別置型ショーケース、業務用冷凍冷蔵庫、製氷機、一体型冷凍機、自動販売機、カーエアコン、海上輸送用のコンテナ又は冷蔵庫を冷却するための冷凍機、チラーユニット、ターボ冷凍機、又は、暖房サイクル専用機を挙げることができる。前記暖房サイクル専用機とは、例えば、給湯装置、床暖房装置、融雪装置等が挙げられる。なお、本発明の冷媒(又はそれを含む組成物)は運転中に負圧状態となり難いため、上記の中でも大型空調機器に適用する場合には本発明の優れた効果が得られ易い。
【0033】
2.
冷媒組成物
本発明の冷媒組成物は、本発明の冷媒を少なくとも含み、本発明の冷媒と同じ用途のために使用することができる。また、本発明の冷媒組成物は、さらに少なくとも冷凍機油と混合することにより冷凍機用作動流体を得るために用いることができる。
【0034】
本発明の冷媒組成物は、本発明の冷媒に加えて、さらに少なくとも一種のその他の成分を含有する。本発明の冷媒組成物は、必要に応じて、以下のその他の成分のうち少なくとも一種を含有していてもよい。上述の通り、本発明の冷媒組成物を、冷凍機などにおける作動流体として使用するに際しては、通常、少なくとも冷凍機油と混合して用いられる。ここで、本発明の冷媒組成物は、好ましくは冷凍機油を実質的に含まない。具体的には、本発明の冷媒組成物は、冷媒組成物全体に対する冷凍機油の含有量が好ましくは0〜1質量%であり、より好ましくは0〜0.1質量%である。
【0035】
2.1
トレーサー
トレーサーは、本発明の冷媒組成物が希釈、汚染、その他何らかの変更があった場合、その変更を追跡できるように検出可能な濃度で本発明の冷媒組成物に添加される。
【0036】
本発明の冷媒組成物は、トレーサーとして、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0037】
トレーサーとしては、特に限定されず、一般に用いられるトレーサーの中から適宜選択することができる。
【0038】
トレーサーとしては、例えば、ハイドロフルオロカーボン、重水素化炭化水素、重水素化ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、フルオロエーテル、臭素化化合物、ヨウ素化化合物、アルコール、アルデヒド、ケトン、亜酸化窒素(N
2O)等が挙げられる。トレーサーとしては、ハイドロフルオロカーボン及びフルオロエーテルが特に好ましい(なお、一般式(1)で示される化合物とは異なるものを用いる)。
【0039】
2.2
紫外線蛍光染料
本発明の冷媒組成物は、紫外線蛍光染料として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0040】
紫外線蛍光染料としては、特に限定されず、一般に用いられる紫外線蛍光染料の中から適宜選択することができる。
【0041】
紫外線蛍光染料としては、例えば、ナフタルイミド、クマリン、アントラセン、フェナントレン、キサンテン、チオキサンテン、ナフトキサンテン及びフルオレセイン、並びにこれらの誘導体が挙げられる。紫外線蛍光染料としては、ナフタルイミド及びクマリンのいずれか又は両方が特に好ましい。
【0042】
2.3
安定剤
本発明の冷媒組成物は、安定剤として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0043】
安定剤としては、特に限定されず、一般に用いられる安定剤の中から適宜選択することができる。
【0044】
安定剤としては、例えば、ニトロ化合物、エーテル類及びアミン類等が挙げられる。
【0045】
ニトロ化合物としては、例えば、ニトロメタン及びニトロエタン等の脂肪族ニトロ化合物、並びにニトロベンゼン及びニトロスチレン等の芳香族ニトロ化合物等が挙げられる。
【0046】
エーテル類としては、例えば、1,4−ジオキサン等が挙げられる。
【0047】
アミン類としては、例えば、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルアミン、ジフェニルアミン等が挙げられる。
【0048】
その他にも、ブチルヒドロキシキシレン、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0049】
安定剤の含有割合は、特に限定されず、冷媒100質量部に対して、通常、0.01〜5質量部とすることが好ましく、0.05〜2質量部とすることがより好ましい。
【0050】
なお、冷媒組成物の安定性の評価方法は、特に限定されず、一般的に用いられる手法で評価することができる。そのような手法の一例として、ASHRAE標準97-2007にしたがって遊離フッ素イオンの量を指標として評価する方法等が挙げられる。その他にも、全酸価(total acid number)を指標として評価する方法等も挙げられる。この方法は、例えば、ASTM D 974-06にしたがって行うことができる。
【0051】
2.4
重合禁止剤
本発明の冷媒組成物は、重合禁止剤として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0052】
重合禁止剤としては、特に限定されず、一般に用いられる重合禁止剤の中から適宜選択することができる。
【0053】
重合禁止剤としては、例えば、4−メトキシ−1−ナフトール、ヒドロキノン、ヒドロキノンメチルエーテル、ジメチル−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0054】
重合禁止剤の含有割合は、特に限定されず、冷媒100質量部に対して、通常、0.01〜5質量部とすることが好ましく、0.05〜2質量部とすることがより好ましい。
【0055】
2.5
冷媒組成物に含み得るその他の成分
本発明の冷媒組成物は、下記の成分も含み得るものとして挙げられる。
【0056】
例えば、前述の冷媒とは異なるフッ素化炭化水素を含有することができる。他の成分としてのフッ素化炭化水素は特に限定されず、HCFC−1122及びHCFC−124、CFC−1113からなる群より選択される少なくとも一種のフッ素化炭化水素が挙げられる。
【0057】
また、その他の成分としては、例えば、式(A):C
mH
nX
p[式中、Xはそれぞれ独立してフッ素原子、塩素原子又は臭素原子を表し、mは1又は2であり、2m+2≧n+pであり、p≧1である。]で表される少なくとも一種のハロゲン化有機化合物を含有することができる。上記ハロゲン化有機化合物は特に限定されず、例えば、ジフルオロクロロメタン、クロロメタン、2−クロロ−1,1,1,2,2−ペンタフルオロエタン、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロエタン、2−クロロ−1,1−ジフルオロエチレン、トリフルオロエチレン等が好ましい。
【0058】
また、その他の成分としては、例えば、式(B):C
mH
nX
p[式中、Xはそれぞれ独立してハロゲン原子ではない原子を表し、mは1又は2であり、2m+2≧n+pであり、p≧1である。]で表される少なくとも一種の有機化合物を含有することができる。上記有機化合物は特に限定されず、例えば、プロパン、イソブタン等が好ましい。
【0059】
これらのフッ素化炭化水素、式(A)で表わされるハロゲン化有機化合物、及び式(B)で表わされる有機化合物の含有量は限定的ではないが、これらの合計量として、冷媒組成物の全量に対して0.5質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が特に好ましい。
【0060】
3.
冷凍機油含有作動流体
本発明の冷凍機油含有作動流体は、本発明で用いる冷媒又は冷媒組成物と、冷凍機油とを少なくとも含む。具体的には、本発明で用いる冷凍機油含有作動流体は、冷凍機の圧縮機において使用される冷凍機油と、冷媒又は冷媒組成物とが互いに混じり合うことにより得られる。冷凍機油含有作動流体には冷凍機油は一般に1〜50質量%含まれる。
【0061】
3.1
冷凍機油
本発明の冷凍機油含有作動流体は、冷凍機油として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0062】
冷凍機油としては、特に限定されず、一般に用いられる冷凍機油の中から適宜選択することができる。その際には、必要に応じて、前記混合物との相溶性(miscibility)及び前記混合物の安定性等を向上する作用等の点でより優れている冷凍機油を適宜選択することができる。
【0063】
冷凍機油の基油としては、例えば、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリオールエステル(POE)及びポリビニルエーテル(PVE)からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。
【0064】
冷凍機油は、基油に加えて、さらに添加剤を含んでいてもよい。添加剤は、酸化防止剤、極圧剤、酸捕捉剤、酸素捕捉剤、銅不活性化剤、防錆剤、油性剤及び消泡剤からなる群より選択される少なくとも一種であってもよい。
【0065】
冷凍機油として、40℃における動粘度が5〜400cStであるものが、潤滑の点で好ましい。
【0066】
本発明の冷凍機油含有作動流体は、必要に応じて、さらに少なくとも一種の添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば以下の相溶化剤などが挙げられる。
【0067】
3.2
相溶化剤
本発明の冷凍機油含有作動流体は、相溶化剤として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0068】
相溶化剤としては、特に限定されず、一般に用いられる相溶化剤の中から適宜選択することができる。
【0069】
相溶化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレングリコールエーテル、アミド、ニトリル、ケトン、クロロカーボン、エステル、ラクトン、アリールエーテル、フルオロエーテルおよび1,1,1−トリフルオロアルカン等が挙げられる。相溶化剤としては、ポリオキシアルキレングリコールエーテルが特に好ましい。
【0070】
〔洗浄剤、又は噴射剤の用途〕
下記一般式(1):
CmHnFxCly (1)
〔但し、4≦m≦10、n+x+y=2m−2であり、分子中に三重結合を有する。〕
で表される本発明の化合物は、洗浄剤、又は噴射剤の用途に用いることができる。
【0071】
一般式(1)中、mは4≦m≦10であればよいが、その中でも4≦m≦5であることが好ましい。すなわち、本発明の化合物は、炭素数4以上の三重結合化合物である。
【0072】
一般式(1)で示される本発明の化合物は、沸点が−15〜200℃であることが好ましく、−15〜0℃であることがより好ましく、−15〜−5℃であることが更に好ましく、−13〜−5℃であることが最も好ましい。このような沸点であることは、本発明の化合物が噴射剤の用途に適することを示している。
【0073】
一般式(1)で示される本発明の化合物は、低燃焼性である。燃焼速度は限定的ではないが、10cm/sec以下が好ましい。燃焼速度がかかる範囲であることにより優れた低燃焼性が確保される。燃焼速度は、5cm/sec以下がより好ましい。なお、本明細書における燃焼速度は、ASHRAE Standard34-2013及びASHRAE Standard34-2013 Appendix B2に従った装置と方法で測定される値である。
【0074】
なお、同じ三重結合を持つ低燃焼性の3,3,3−トリフルオロプロピンは燃焼速度が3.6cm/s、燃焼下限界濃度が3.9vol%である。本発明の化合物は燃焼下限界濃度が5.5vol%以上であるため、本発明の化合物の方が燃焼範囲が狭く、3,3,3−トリフルオロプロピンよりも燃焼速度が遅いため、低燃焼性であることが分かる。
【0075】
一般式(1)で示される本発明の化合物は、GWPが概ね10未満である。
【0076】
一般式(1)で示される本発明の化合物としては、具体的に、ペンタフルオロブチン(PFB)、ヘプタフルオロペンチン、デカフルオロへキシン、ノナフルオロヘキシン等が挙げられる。これらの中でも、沸点の観点からはPFBが最も好ましい。なお、PFBは沸点が約−13℃であり、GWPは10未満である。
【0077】
一般式(1)で示される本発明の化合物は、調製時の条件などに基づく副生成物としてアセトン、R23、R125、塩化メチレン、3,3,3−トリフルオロプロピン及びアセチレンからなる群から選択される少なくとも一種を含有する場合がある。なお、これらの副生成物は厳密には一般式(1)で示される本発明の化合物とは異なるため、本発明の化合物及び前記副生成物(アセトン、R23、R125、塩化メチレン、3,3,3−トリフルオロプロピン及びアセチレンのうち含有するものの全量)の合計量に対して、前記副生成物の含有量は5質量%未満の含有量であることが好ましい。
【0078】
本発明の化合物は、洗浄剤、又は噴射剤の用途にも有用であるため、本発明は、一般式(1)で表される化合物、又は当該化合物に任意の添加剤を添加した組成物の、洗浄剤、又は噴射剤としての使用、並びに、当該化合物、又は当該化合物に任意の添加剤を添加した組成物を利用する洗浄装置、又は噴射装置の発明も包含する。
【0079】
シリコーンオイル、フッ素系オイル、鉱物系オイル、グリース、ワックス等の潤滑油をはじめとする様々な油類が諸用途のために使用されている。これらの油類は、潤滑を必要とする基材面又は機械部品面に単独で使用される他、所定の必要性又は目的に鑑みて溶剤に溶解した上で使用されることも多い。例えば、粘度などを調整する必要がある場合や、被適用面に油類の潤滑膜を形成させる目的に使用される場合等が挙げられる。そして、これらの溶剤と同様の組成を有し、様々な油類を溶解して除去(洗浄)するために用いられるものは特に洗浄剤、洗浄用溶剤等とも呼ばれる。
【0080】
洗浄剤は、良好な溶解特性を有すること、潤滑剤が適用される機械部品又はシステムの構成要素(O−リング、シールなど)と適合性があること、安全であること、低引火性であること、使用が容易であること、迅速に乾燥すること等の特性が要求されており、後に問題を起こし得る残渣を残すことは避ける必要がある。
【0081】
不燃性の溶剤としては、従来、商品名「アサヒクリン AK−225」、「ゼオローラH」、「ノベック」等に代表される低毒性のフッ素系溶剤が用いられている。
【0082】
しかしながら、これらの不燃性及び低毒性を利点とする従来のフッ素系溶剤又は洗浄剤においては、オゾン層破壊のおそれや地球温暖化に寄与するおそれ等の環境破壊の面での問題があることが指摘されている。また、これらの状況に鑑みて、環境配慮型溶剤として各種ハイドロフルオロオレフィン、1,2−ジクロロエチレン(沸点48℃)等の製品が開発されており、例えば、クロロフルオロオレフィン(沸点46℃),ハイドロクロロフルオロオレフィン(沸点53℃),1,2−ジクロロエチレンと前述のハイドロフルオロオレフィンとの混合物,環状ハイドロフルオロカーボン(沸点83℃)等が挙げられる。
【0083】
しかしながら、一方で、これらの環境配慮型溶剤には、溶解性が低い、溶剤自体が燃焼性を示すといった諸課題がある。
【0084】
一般式(1)で表される化合物は、公知のシリコーンオイル、フッ素系オイル、鉱物系オイル、グリース、ワックス等の潤滑油に対して十分な溶解性を有する、低引火性、且つ操作が安全な洗浄剤である。また、一般式(1)で表される化合物は、洗浄後、問題のある残渣を残さずに容易に除去することもできる。なお、洗浄剤としての用途では、一般式(1)で表される化合物の沸点は、40〜100℃であることが好ましい。
【実施例】
【0085】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0086】
実施例1及び比較例1
実施例1の冷媒としてペンタフルオロブチン(PFB)を用意し、比較例1の冷媒としてHCFO−1233zd(E)を用意した。
【0087】
上記冷媒を使用し、大型空調機器(ビル用パッケージエアコン)を用いてCOPc,冷凍能力(kJ/m
3)、密度(吸入)(kg/m
3)、吸入圧力(MPa)、吐出圧力(MPa)、吐出温度(℃)を評価した。
【0088】
大型空調機器の運転条件(サイクル条件)は、蒸発器における冷媒の蒸発温度が0℃、凝縮器における冷媒の凝縮温度が40℃、過熱度が5℃及び過冷却度が0℃とした。
【0089】
各評価の結果を表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
表1の結果から明らかな通り、本発明の化合物であるPFBは、HFO冷媒の一つであるHCFO−1233zd(E)に比して、優れた冷凍能力を有することが分かる。
【0092】
実施例2及び比較例2
実施例2の冷媒としてペンタフルオロブチン(PFB)を用意し、比較例2の冷媒としてHCFO−1233zd(E)を用意した。
【0093】
上記冷媒を使用し、ターボ冷凍機(ビル用パッケージエアコン)を用いてCOPc,冷凍能力(kJ/m
3)、密度(吸入)(kg/m
3)、吸入圧力(MPa)、吐出圧力(MPa)、吐出温度(℃)を評価した。
【0094】
ターボ冷凍機の運転条件(サイクル条件)は、蒸発器における冷媒の蒸発温度が5℃、凝縮器における冷媒の凝縮温度が35℃、過熱度が0℃及び過冷却度が5℃とした。
【0095】
各評価の結果を表2に示す。
【0096】
【表2】
【0097】
表2の結果から明らかな通り、本発明の化合物であるPFBは、HFO冷媒の一つであるHCFO−1233zd(E)に比して、優れた冷凍能力を有することが分かる。
【0098】
実施例3及び比較例3
実施例3の冷媒としてペンタフルオロブチン(PFB)を用意し、比較例3の冷媒としてHCFO−1233zd(E)を用意した。
【0099】
上記冷媒を使用し、二段サイクルターボ冷凍機(ビル用パッケージエアコン)を用いてCOPc,冷凍能力(kJ/m
3)、密度(吸入)(kg/m
3)、吸入圧力(MPa)、吐出圧力(MPa)、吐出温度(℃)を評価した。
【0100】
二段サイクルターボ冷凍機の運転条件(サイクル条件)は、蒸発器における冷媒の蒸発温度が5℃、凝縮器における冷媒の凝縮温度が35℃、過熱度が0℃及び過冷却度が5℃とした。
【0101】
各評価の結果を表3に示す。
【0102】
【表3】
【0103】
表3の結果から明らかな通り、本発明の化合物であるPFBは、HFO冷媒の一つであるHCFO−1233zd(E)に比して、優れた冷凍能力を有することが分かる。
【0104】
実施例4及び比較例4
実施例4の冷媒としてペンタフルオロブチン(PFB)を用意し、比較例4の冷媒としてHCFO−1233zd(E)を用意した。
【0105】
上記冷媒を使用し、スクリューチラー(ビル用パッケージエアコン)を用いてCOPc,冷凍能力(kJ/m
3)、密度(吸入)(kg/m
3)、吸入圧力(MPa)、吐出圧力(MPa)、吐出温度(℃)を評価した。
【0106】
スクリューチラーの運転条件(サイクル条件)は、蒸発器における冷媒の蒸発温度が5℃、凝縮器における冷媒の凝縮温度が45℃、過熱度が0℃及び過冷却度が5℃とした。
【0107】
各評価の結果を表4に示す。
【0108】
【表4】
【0109】
表4の結果から明らかな通り、本発明の化合物であるPFBは、HFO冷媒の一つであるHCFO−1233zd(E)に比して、優れた冷凍能力を有することが分かる。
【0110】
実施例5
実施例5の洗浄剤(溶剤)としてノナフルオロヘキシン(n−C
4F
9C≡CH)を用意し、粘度が約1.0万cPのシリコーンオイル50gと、ノナフルオロヘキシン(n−C
4F
9C≡CH)100gとを混合したところ、二成分が互いに相溶し、均一溶液を得ることができる。
【課題】本発明は、低燃焼性でありながらGWPが低く、且つ、大型空調機器に適用しても運転中に負圧状態となり難い化合物を含む組成物、及び前記組成物を含有する冷凍機、大型空調機器又は産業用プロセス冷却機器を提供する。