特許第6402862号(P6402862)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6402862
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】歯車ポンプ又は歯車モータ
(51)【国際特許分類】
   F04C 2/18 20060101AFI20181001BHJP
   F04C 15/00 20060101ALI20181001BHJP
   F03C 2/08 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   F04C2/18 321B
   F04C15/00 B
   F04C15/00 H
   F04C2/18 311E
   F03C2/08 A
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-17435(P2016-17435)
(22)【出願日】2016年2月1日
(65)【公開番号】特開2017-137777(P2017-137777A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2017年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】都築 克成
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−249077(JP,A)
【文献】 特開平09−004572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/18
F03C 2/08
F04C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングの内部空間において互いに噛み合うと共に、前記内部空間の内周面にそれぞれ当接して前記内部空間を高圧空間と低圧空間とに区画する駆動歯車及び従動歯車と、
前記駆動歯車及び前記従動歯車の軸を支持する軸受部材と、
前記駆動歯車及び前記従動歯車の端面と前記軸受部材との間に配置され、前記駆動歯車及び前記従動歯車の軸が通過する軸孔を有する側板とを備え、
前記側板と前記軸受部材との間には、
前記高圧空間と前記低圧空間とを区画する第1ガスケットと、
前記第1ガスケットより前記低圧空間側において前記軸孔と前記低圧空間とを区画した第2ガスケットとが配置されており、
前記ケーシングには、前記ケーシングと前記軸の端との隙間と、前記低圧空間とを連通させる通路が形成されていることを特徴とする歯車ポンプ又は歯車モータ。
【請求項2】
前記軸受部材には、前記側板と対向した溝部が形成され、
前記第2ガスケットは、前記溝部内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の歯車ポンプ又は歯車モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば平歯車として構成された駆動歯車および従動歯車を備える歯車ポンプ又は歯車モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯車ポンプとしては、互いに噛み合う駆動歯車および従動歯車を備えたものがある。歯車ポンプでは、歯車の側面とその側面に対向するケーシングとの間の隙間は、ポンプの内部漏れを減少させるため、狭い方が良い。この目的を達成するため、現在は圧力バランス型の側板が採用され、積極的に隙間を狭くしている。従来の歯車ポンプでは、図6及び図7に示すように、側板121は、駆動歯車および従動歯車の軸が通過する軸孔121aを有し、駆動歯車および従動歯車の端面と摺接する。軸受部材12、112の側板121側の面には、溝部12baが形成され、溝部12baの内部には、側板121と駆動歯車および従動歯車の軸受部材12、112との間において、ケーシングの内部空間を低圧空間10aと高圧空間10bとを区画したガスケット12bbが配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−83831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の歯車ポンプでは、図7図6のA−A線から見た断面)に示すように、駆動歯車の側面で漏れた作動流体のうちの一部は、駆動歯車の駆動歯車軸4bを支持した軸受部材12の軸受部に供給され、通路9aを通過し、低圧空間10aに流れ (実線矢印で示す)、残りの作動流体は、側板121と軸受部材12との隙間を介して低圧空間10aに流れる(点線矢印で示す)。このように、歯車ポンプにおいて、歯車の側面での作動流体の漏れは少ない方が良いが、漏れた作動流体の一部は、歯車の軸受部へ流れ込み、軸受部の潤滑と冷却に役立っているのに対し、残りの作動流体は、側板121と軸受部材12との隙間を介して低圧空間10aに流れ、軸受部の潤滑と冷却に役立ってない。
【0005】
そこで、この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、歯車の端面で漏れた油により軸受部の潤滑性を向上させる歯車ポンプ又は歯車モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る歯車ポンプ又は歯車モータは、ケーシングの内部空間において互いに噛み合うと共に、前記内部空間の内周面にそれぞれ当接して前記内部空間を高圧空間と低圧空間とに区画する駆動歯車及び従動歯車と、前記駆動歯車及び前記従動歯車の軸を支持する軸受部材と、前記駆動歯車及び前記従動歯車の端面と前記軸受部材との間に配置され、前記駆動歯車及び前記従動歯車の軸が通過する軸孔を有する側板とを備え、前記側板と前記軸受部材との間には、前記高圧空間と前記低圧空間とを区画する第1ガスケットと、前記第1ガスケットより前記低圧空間側において前記軸孔と前記低圧空間とを区画した第2ガスケットとが配置されており、前記ケーシングには、前記ケーシングと前記軸の端との隙間と、前記低圧空間とを連通させる通路が形成されていることを特徴とする。
【0007】
この歯車ポンプ又はモータでは、駆動歯車及び従動歯車の端面と側板との間を漏れた油が、側板と軸受部材との間を通過し、低圧空間に流れるのを防止できる。したがって、駆動歯車及び従動歯車の端面と側板との間を漏れた油が、駆動歯車及び従動歯車の軸受部を通過し、低圧空間に流れ、軸受部の潤滑性が向上する。
【0008】
第2の発明に係る歯車ポンプ又は歯車モータは、前記軸受部材には、前記側板と対向した溝部が形成され、前記第2ガスケットは、前記溝部内に配置されていることを特徴とする。
【0009】
この歯車ポンプ又はモータでは、第2ガスケットを軸受部材の溝部に配置することにより、第2ガスケットを側板と軸受部材との間に容易に配置することができる。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明では、駆動歯車及び従動歯車の端面と側板との間を漏れた油が、側板と軸受部材との間を通過し、低圧空間に流れるのを防止できる。したがって、駆動歯車及び従動歯車の端面と側板との間を漏れた油が、駆動歯車及び従動歯車の軸受部を通過し、低圧空間に流れ、軸受部の潤滑性が向上する。
【0011】
第2の発明では、第2ガスケットを軸受部材の溝部に配置することにより、第2ガスケットを側板と軸受部材との間に容易に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る歯車ポンプの全体構成を説明する図である。
図2図1のII-II線における断面図である。
図3図1のIII-III線における断面図であり、軸受部材の図である。
図4図1の歯車ポンプの要部の断面図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る歯車ポンプの全体構成を説明する図である。
図6】従来の歯車ポンプの軸受部材の図である。
図7】従来の歯車ポンプの要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を添付図面に従って説明する。
【0014】
図1に示すように、歯車ポンプ1は、互いに噛み合う駆動歯車2及び従動歯車3と、駆動歯車2及び従動歯車3をそれぞれ軸支する駆動歯車軸4a、4b及び従動歯車軸5a、5bと、駆動歯車2、従動歯車3、駆動歯車軸4a、4b及び従動歯車軸5a、5bを収納するケーシング6とを備えている。本実施形態の歯車ポンプ1は、作動流体(例えば作動油)を貯留するタンクから供給される作動流体を吸い込んで昇圧した後、その作動流体を吐出して油圧機器に供給するものである。
【0015】
ケーシング6は、断面形状が略8の字状をした内部空間10を有する本体7と、本体7の一端面に螺着されたマウンティング8と、本体7の他端面に螺着されたカバー9とを有している。歯車ポンプ1において、マウンティング8及びカバー9によって、本体7の内部に形成された内部空間10が閉塞されている。ケーシング6は、内部空間10に挿入された駆動歯車2及び従動歯車3を支持する軸受部材11,12と軸受部材111,112を有している。
【0016】
図1および図2に示すように、駆動歯車2及び従動歯車3はそれぞれ、平歯車として構成され、ケーシング6の内部に形成された内部空間10に挿入されている。内部空間10において、駆動歯車軸4a、4bが駆動歯車2の両端面から軸方向に沿ってそれぞれ延設され、従動歯車軸5a、5bが従動歯車3の両端面から軸方向に沿ってそれぞれ延設される。駆動歯車軸4aは、マウンティング8に形成された挿通孔8aに挿通されており、駆動歯車軸4aの端部には、図示しない駆動手段が接続される。
【0017】
歯車ポンプ1において、駆動歯車2及び従動歯車3は、相互に噛合した状態で内部空間10内に収納され、その歯先が内部空間10の内周面に摺接するようになっている。これにより、駆動歯車2及び従動歯車3は、ケーシング6の内部空間において噛み合いながら回転する。駆動歯車2及び従動歯車3は回転時に、ケーシング6の内部空間の内周面にそれぞれ当接して内部空間10を低圧空間10aと高圧空間10bとに区画する。
【0018】
ケーシング6は、図1において、駆動歯車2から左方に向かって延在する駆動歯車軸4aを支持する軸受部材11と、駆動歯車2から右方に向かって延在する駆動歯車軸4bを支持する軸受部材12とを有している。軸受部材11は、駆動歯車軸4aの軸受であるベアリング11aを有し、軸受部材12は、駆動歯車軸4bの軸受であるベアリング12aを有している。同様に、ケーシング6は、図1において、従動歯車3から左方に向かって延在する従動歯車軸5aを支持する軸受部材111と、従動歯車3から右方に向かって延在する従動歯車軸5bを支持する軸受部材112とを有している。軸受部材111は、従動歯車軸5aの軸受であるベアリング111aを有し、軸受部材112は、従動歯車軸5bの軸受であるベアリング112aを有している。
【0019】
したがって、軸受部材11は、駆動歯車軸4aがベアリング11aに挿通されることで駆動歯車軸4aを回転自在に支持するとともに、軸受部材12は、駆動歯車軸4bがベアリング12aに挿通されることで駆動歯車軸4bを回転自在に支持する。同様に、軸受部材111は、従動歯車軸5aがベアリング111aに挿通されることで従動歯車軸5aを回転自在に支持するとともに、軸受部材112は、従動歯車軸5bがベアリング112aに挿通されることで従動歯車軸5bを回転自在に支持する。
【0020】
駆動歯車2及び従動歯車3の両側には、2つの側板20、21が配置される。側板21は、2つの貫通孔21aが形成された8の字型の板状部材である。側板21は内部空間10に嵌入され、駆動歯車2及び従動歯車3の端面と、軸受部材12、112との間に配置されている。駆動歯車軸4b及び従動歯車軸5bが2つの貫通孔21aに挿通された状態で、側板21は駆動歯車2及び従動歯車3の端面に当接している。側板20は、側板21と同様の構成である。したがって、2つの側板20、21は、それぞれ、駆動歯車2及び従動歯車3の端面と、軸受部材11、111及び軸受部材12、112との間に配置され、駆動歯車2及び従動歯車3の端面と摺接している。側板20、21の非摺接面側の高圧部面積が摺接面側の高圧部面積よりも若干広くなっており、摺接面が駆動歯車2及び従動歯車3の側面に押し付けられて、隙間が極力狭くなるようにしている。
【0021】
軸受部材11、111の側板20側の面には、溝部11baが形成され、その溝部11baの内部に、それぞれ、弾性を有するガスケット11bbが設けられている。ガスケット11bbは、軸受部材11、111と側板20との間の隙間を低圧空間10aと高圧空間10bとに区画する。同様に、軸受部材12、112の側板21側の面には、溝部12baが形成され、その溝部12baの内部に、弾性を有するガスケット12bbが設けられている。ガスケット12bbは、軸受部材12、112と側板21との間の隙間を低圧空間10aと高圧空間10bとに区画する。
【0022】
歯車ポンプ1において、本体7には、その一方の側面に内部空間10の低圧空間10aに通じる吸込み孔(図示しない)が形成されるとともに、これと相対する他方の側面に、内部空間10の高圧空間10bに通じる吐出し孔(図示しない)が形成されている。
【0023】
したがって、歯車ポンプ1では、ケーシング6の吸込み孔に、作動流体を貯留するタンクからの配管が接続されるとともに、吐出し孔に、油圧機器へ向かう配管が接続され、駆動歯車2の駆動歯車軸4aを図示しない駆動手段によって回転させる。これにより、駆動歯車2に噛み合った従動歯車3が回転し、内部空間10の内周面と駆動歯車2及び従動歯車3の歯面によって囲まれた空間の作動流体が歯車の回転によって吐出し孔側に移送され、駆動歯車2及び従動歯車3の噛み合い部を境として、吐出し孔側が高圧側に、吸込み孔側が低圧側になる。
【0024】
作動流体が吐出し孔側に移送されることによって吸込み孔側が負圧になると、タンク内の作動流体が配管及び吸込み孔を介して低圧側の内部空間10内に吸引され、内部空間10の内周面と駆動歯車2及び従動歯車3の歯面によって囲まれた空間の作動流体が歯車の回転によって吐出し孔側に移送され、高圧に加圧されて吐出し孔及び配管を介して油圧機器に送られる。
【0025】
また、軸受部材12、112の側板21側の面には、図3に示すように、溝部12caが形成される。溝部12caの内部には、弾性を有するガスケット12cbが配置される。ガスケット12cbは、ガスケット12bbより低圧空間10a側において、2つの貫通孔21aと低圧空間10aとを区画する。ガスケット12cbは、低圧空間10aの外周に沿って配置される。なお、軸受部材11、111は、軸受部材12、112と同様の構成である。
【0026】
本発明の歯車ポンプ1では、ガスケット12cbにより、歯車の側面で漏れた作動流体が、側板21と軸受部材12、112との隙間を介して低圧空間10aに流れることがない。したがって、 本発明の歯車ポンプ1では、図4図3のA−A線から見た断面)に示すように、歯車の側面で漏れた作動流体のほとんどが、軸受部材12、112の軸受部に供給され、通路9aを通過し、低圧空間10aに流れる(実線矢印で示す)。図4では、駆動歯車2の駆動歯車軸4bの周囲の油の流れを説明したが、駆動歯車2の駆動歯車軸4aの周囲、従動歯車3の従動歯車軸5a、5bの周囲の油の流れも同様である。
【0027】
[本実施形態の歯車ポンプの特徴]
本実施形態の歯車ポンプ1には以下の特徴がある。
【0028】
本実施形態の歯車ポンプ1では、駆動歯車2及び従動歯車3の端面と側板20、21との間を漏れた油が、側板20、21と軸受部材11、111、12、112との間を通過し、低圧空間10aに流れるのを防止できる。したがって、駆動歯車2及び従動歯車3の端面と側板20、21との間を漏れた油が、駆動歯車2及び従動歯車3の軸受部を通過し、低圧空間10aに流れ、軸受部の潤滑性が向上する。
【0029】
本実施形態の歯車ポンプ1では、ガスケット12cbを軸受部材12の溝部12caに配置することにより、ガスケット12cbを側板21と軸受部材12との間に容易に配置することができる。
【0030】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0031】
上述の本実施形態では、ケーシング6が軸受部材11、111、12、112を有している場合を説明したが、図5に示すように、ケーシング6と別体の軸受部材であるベアリングケース11、111,12、112がケーシング6内に配置されてよい。
【0032】
上述の本実施形態では、側板と軸受部材との間に配置されたガスケットが、軸受部材の溝部の内部に配置された場合を説明したが、これに限られない。したがって、側板と軸受部材との間に配置されたガスケットが、側板の溝部の内部に配置されてよい。
【0033】
上述の本実施形態では、本発明が歯車ポンプに適用された場合を説明したが、本発明は歯車モータに適用されてよい。
【符号の説明】
【0034】
1 歯車ポンプ
2 駆動歯車
3 従動歯車
6 ケーシング
11、12、111、112 軸受部材
12bb ガスケット(第1ガスケット)
12ca 溝部
12cb ガスケット(第2ガスケット)
20、21 側板


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7