特許第6402868号(P6402868)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6402868エステル系化合物、これを含む可塑剤組成物、この製造方法、及びこれを含む樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6402868
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】エステル系化合物、これを含む可塑剤組成物、この製造方法、及びこれを含む樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C07C 69/80 20060101AFI20181001BHJP
   C07C 67/03 20060101ALI20181001BHJP
   C07C 67/08 20060101ALI20181001BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20181001BHJP
   C08K 5/12 20060101ALI20181001BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20181001BHJP
【FI】
   C07C69/80 A
   C07C67/03
   C07C67/08
   C08L101/00
   C08K5/12
   !C07B61/00 300
【請求項の数】30
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2016-547097(P2016-547097)
(86)(22)【出願日】2015年2月5日
(65)【公表番号】特表2017-509592(P2017-509592A)
(43)【公表日】2017年4月6日
(86)【国際出願番号】KR2015001203
(87)【国際公開番号】WO2015119443
(87)【国際公開日】20150813
【審査請求日】2017年6月26日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0014203
(32)【優先日】2014年2月7日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2014-0021409
(32)【優先日】2014年2月24日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2014-0154390
(32)【優先日】2014年11月7日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2015-0017582
(32)【優先日】2015年2月4日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2015-0017583
(32)【優先日】2015年2月4日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2015-0017584
(32)【優先日】2015年2月4日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2015-0017574
(32)【優先日】2015年2月4日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2015-0017573
(32)【優先日】2015年2月4日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2015-0017581
(32)【優先日】2015年2月4日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒュン キュ
(72)【発明者】
【氏名】リー、ミ イェオン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ソク ホ
(72)【発明者】
【氏名】ムーン、ジョン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジョー ホ
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−295206(JP,A)
【文献】 特開平05−295207(JP,A)
【文献】 特開2013−163676(JP,A)
【文献】 特開昭63−150250(JP,A)
【文献】 特表2017−506216(JP,A)
【文献】 米国特許第03736348(US,A)
【文献】 英国特許第00851753(GB,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 69/00
C07C 67/00
C08K 5/00
C08L 101/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)、化学式(2)及び化学式(3)を含むエステル系組成物:
【化1】
【化2】
【化3】
前記化学式(1)から(3)で、
及びRはそれぞれ独立的にC−C20のアルキルであり、前記R及びRは互いに同一でなく、Rは非分岐タイプのアルキルであり、前記Rは分岐タイプのアルキルである
【請求項2】
の炭素数は、Rの炭素数より大きい請求項1に記載のエステル系組成物。
【請求項3】
前記RはC−C10のアルキルであり、前記RはC−C12のアルキルである請求項1又は2に記載のエステル系組成物。
【請求項4】
前記RはC−Cのアルキルであり、前記RはC−C12のアルキルである請求項に記載のエステル系組成物。
【請求項5】
前記Rはエチルヘキシル、イソノニル、イソデシル及びプロピルヘプチルの中から選択される請求項に記載のエステル系組成物。
【請求項6】
前記化学式(1)、化学式(2)及び化学式(3)の化合物は、エステル系組成物の総重量に対しそれぞれ0.5重量%から50重量%、0.5重量%から70重量%及び0.5重量%から85重量%の量で含む請求項1から5のいずれか1項に記載のエステル系組成物。
【請求項7】
前記化学式(1)、化学式(2)及び化学式(3)の化合物は、エステル系組成物の総重量に対しそれぞれ0.5重量%から50重量%、10重量%から50重量%及び35重量%から80重量%の量で含む請求項に記載のエステル系組成物。
【請求項8】
前記化学式(1)及び(3)の化合物の合計と、前記化学式(2)の化合物との配合比は、重量比で95:5から30:70である請求項に記載のエステル系組成物。
【請求項9】
前記エステル系組成物は、下記化学式(1−1)、化学式(2−1)及び化学式(3−1)の化合物を含む請求項1からのいずれか一項に記載のエステル系組成物:
【化4】
【化5】
【化6】
【請求項10】
前記エステル系組成物は、下記化学式(1−1)、化学式(2−2)及び化学式(3−2)の化合物を含む請求項1からのいずれか一項に記載のエステル系組成物:
【化7】
【化8】
【化9】
【請求項11】
前記エステル系組成物は、下記化学式(1−1)、化学式(2−3)及び化学式(3−3)の化合物を含む請求項1からのいずれか一項に記載のエステル系組成物:
【化10】
【化11】
【化12】
【請求項12】
前記エステル系組成物は、下記化学式(1−1)、化学式(2−4)及び化学式(3−4)の化合物を含む請求項1からのいずれか一項に記載のエステル系組成物:
【化13】
【化14】
【化15】
【請求項13】
前記エステル系組成物は、エーテルフリー(ether−free)可塑剤である請求項1からのいずれか一項に記載のエステル系組成物。
【請求項14】
下記化学式(3)の化合物を下記化学式(4)の第1アルコールとトランスエステル化(trans−esterification)反応させる段階を含む請求項1に記載のエステル系組成物の製造方法:
【化19】
【化20】
前記式で、
及びRはそれぞれ独立的にC−C20のアルキルであり、前記R及びRは互いに同一でなく、Rは非分岐タイプのアルキルであり、前記Rは分岐タイプのアルキルである
【請求項15】
前記化学式(3)の化合物と前記化学式(4)の第1アルコールのモル比は、1:0.005から5である請求項1に記載のエステル系組成物の製造方法。
【請求項16】
前記化学式(4)の第1アルコールの添加量は、前記化学式(3)の化合物100重量部に対し0.1から89.9重量部である請求項1又は1に記載のエステル系組成物の製造方法。
【請求項17】
前記トランスエステル化(trans−esterification)反応は、120℃から190℃の温度範囲で行われる請求項1から1のいずれか一項に記載のエステル系組成物の製造方法。
【請求項18】
前記トランスエステル化(trans−esterification)反応は、無触媒反応である請求項1から1のいずれか一項に記載のエステル系組成物の製造方法。
【請求項19】
前記トランスエステル化(trans−esterification)反応後、未反応の化学式(4)の第1アルコールと反応副産物を蒸留させて除去する段階をさらに含む請求項14から18のいずれか一項に記載のエステル系組成物の製造方法。
【請求項20】
の炭素数は、Rの炭素数より大きい請求項1から19のいずれか一項に記載のエステル系組成物の製造方法。
【請求項21】
前記RはC−C10のアルキルであり、前記RはC−C12のアルキルである請求項19に記載のエステル系組成物の製造方法。
【請求項22】
前記トランスエステル化(trans−esterification)反応により、前記化学式(3)の化合物中の一部が下記化学式(1)の化合物、及び下記化学式(2)の化合物に変換される請求項1から2のいずれか一項に記載のエステル系組成物の製造方法:
【化21】
【化22】
前記式で、
及びRはそれぞれ独立的にC−C20のアルキルであり、前記R及びRは互いに同一でない。
【請求項23】
前記化学式(3)の化合物は、下記化学式(5)の化合物を下記化学式(6)の第2アルコールと触媒の存在下でエステル化反応により得られた請求項1から2のいずれか一項に記載のエステル系組成物の製造方法:
【化23】
【化24】
前記式で、
はC−C20のアルキルである。
【請求項24】
前記エステル化反応は、80℃から27℃の温度範囲で行われる請求項23に記載のエステル系組成物の製造方法。
【請求項25】
前記触媒は、Sn系又はTi系を含む有機金属触媒、スルホン酸系または硫酸系を含む酸触媒、またはこれらの混合触媒である請求項2に記載のエステル系組成物の製造方法。
【請求項26】
前記化学式(5)の化合物及び前記化学式(6)の第2アルコールは、1:1から7のモル比の量で用いられる請求項2に記載のエステル系組成物の製造方法。
【請求項27】
前記化学式(6)の第2アルコールは、前記第2アルコールの1種以上の異性質体をさらに含む請求項2に記載のエステル系組成物の製造方法。
【請求項28】
請求項1に記載のエステル系組成物を可塑剤として含み、樹脂を含む樹脂組成物。
【請求項29】
前記樹脂は、エチレン酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、熱可塑性エラストマー及びポリ乳酸の中から選択される1種以上である請求項28に記載の樹脂組成物。
【請求項30】
前記エステル系組成物は、樹脂100重量部に対し5から100重量部で含まれる請求項28に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のエステル系化合物、これを含むエステル系組成物、及びこの製造方法、並びにこれを可塑剤として含む樹脂組成物に関し、より具体的には、3種の組成のイソフタレート系化合物を含むエステル系組成物、この製造方法、及びこれを可塑剤として含む樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、可塑剤は、アルコールがフタル酸及びアジピン酸のようなポリカルボン酸と反応し、これに相応するエステルを形成する。商業的に重要な例はC8、C9及びC10アルコールのアジパート、例えば、ジ(2−エチルヘキシル)アジパート、ジイソノニルアジパート、ジイソデシルアジパート;及びC8、C9及びC10アルコールのフタレート、例えば、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレートを含む。
【0003】
具体的に、前記ジ(2−エチルヘキシル)フタレートは、プラスチゾル(plastisol)及び乾式配合を介し、玩具、フィルム、履物、塗料、床材、手袋、壁紙、人造皮革、シーラント、ターポリン、車床コーティング剤、家具、発泡マット及び防音パネルの製造時に用いられ、かつPVCケーブルの外装及び絶縁、及び他のカレンダリングされた可塑性PVC製品の生産にも用いられ得る。
【0004】
現在、可塑剤として用いられるエステル系可塑剤としてジ−(2−エチルヘキシル)フタレートなどが多く用いられているが、内分泌系を撹乱させる環境ホルモンにより人体に有害であり、かつ樹脂の加工性、樹脂との吸収速度と移行損失程度及び熱的安定性を改善させるのに限界がある。
【0005】
したがって、環境に優しいながら樹脂の加工性、樹脂との吸収速度と移行損失程度及び熱的安定性などの全ての物性の面で充分に改善させることができるエステル系可塑剤及びこの製造方法の開発が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の解決しようとする技術的課題は、新規のエステル系化合物を提供することである。
【0007】
本発明の解決しようとする他の技術的課題は、優れた可塑化効率を有して樹脂の加工性を改善させ、電線、自動車内装材、フィルム、シート、チューブ、壁紙、玩具、床材などのシート処方及びコンパウンド処方の際に優れた物性を提供することができるエステル系組成物を提供することである。
【0008】
本発明の解決しようとするさらに他の技術的課題は、前記エステル系組成物の製造方法を提供することである。
【0009】
本発明の解決しようとする最後の技術的課題は、前記エステル系組成物を可塑剤として含む樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、下記化学式(1)、化学式(2)及び化学式(3)を含むエステル系組成物を提供する:
【0011】
【化1】
【0012】
【化2】
【0013】
【化3】
前記化学式(1)から(3)で、
及びRはそれぞれ独立的にC−C20のアルキルであり、前記R及びRは互いに同一でない。
【0014】
また、本発明は、下記化学式(3)の化合物を下記化学式(4)の第1アルコールとトランスエステル化(trans−esterification)反応させる段階を含む、前記エステル系組成物の製造方法を提供する:
【0015】
【化4】
【0016】
【化5】
前記式で、
及びRはそれぞれ独立的にC−C20のアルキルであり、前記R及びRは互いに同一でない。
【0017】
さらに、本発明は、下記化学式からなる群より選択される1種以上のエステル系化合物を提供する。
【0018】
【化6】
【0019】
【化7】
【0020】
【化8】
【0021】
さらに、本発明は、前記エステル系組成物を可塑剤として含んで樹脂を含む樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一実施形態に係るエステル系組成物は、可塑剤として利用時に優れた可塑化効率及び樹脂の加工性を改善させ、引張強度と伸び率だけでなく、耐移行性及び加熱減量などの優れた物性を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に対する理解を助けるため、本発明をさらに詳細に説明する。
【0024】
本明細書及び特許請求の範囲で用いられた用語や単語は、通常的且つ辞典的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は、自身の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるとの原則に立脚して、本発明の技術的思想に適合する意味と概念として解釈されるべきである。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、下記化学式(1)、化学式(2)及び化学式(3)を含むエステル系組成物を提供する:
【0026】
【化9】
【0027】
【化10】
【0028】
【化11】
前記化学式(1)から(3)で、
及びRはそれぞれ独立的にC−C20のアルキルであり、前記R及びRは互いに同一でない。
【0029】
本発明の一実施形態に係るエステル系組成物は、前記化学式(1)から(3)のイソフタレート系化合物を含むことを特徴とする。つまり、前記エステル系組成物はベンゼン環で1,3位置、すなわち、メタ(Meta)−位置にエステル(−COO−)基がある3種のイソフタレート系エステル化合物を含むことにより、エステル(−COO−)基が他の位置、例えば、オルト(Ortho)−位置(ベンゼン環で1,2位置)またはパラ(Para)−位置(ベンゼン環で1,4位置)にあるフタレート系エステル化合物を含む化合物に比べ、可塑剤として利用時に環境に優しいながら、優れた引張強度と伸び率だけでなく、移行損失率及び加熱減量などを減少させることができるので、製品の加工性及び作業性の面でも優秀であり得る。
【0030】
これに反して、オルト(Ortho)−位置(ベンゼン環で1,2位置)にエステル基があるフタレート系化合物は、可塑剤として利用時に内分泌系を撹乱させる環境ホルモンにより人体に有害であり、かつ樹脂の加工性、樹脂との吸収速度と移行損失程度及び熱的安定性を改善させるのに限界がある。
【0031】
また、パラ(Para)−位置にエステル基があるテレフタレート系エステル化合物は、直線型構造による樹脂との相溶性及び結合安定性が相対的に劣り、これは製品の加工性及び作業性に悪影響を及ぼす要素として作用し得る。
【0032】
本発明の一実施形態に係る前記エステル系化合物は、樹脂組成物の可塑剤として用いる場合、従来可塑剤として主に用いられていたフタレート系化合物に比べて同等水準の硬度、引張強度と伸び率を確保することができるだけでなく、加熱減量が減少して耐移行性が遥かに優秀であり得る。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、前記化学式(1)から(3)で、前記Rの炭素数は前記Rの炭素数より大きいアルキルであり得る。
【0034】
本発明のさらに他の一実施形態によれば、前記化学式(1)から(3)で、Rは非分岐タイプのアルキルであり、前記Rは分岐タイプのアルキルであり得る。
【0035】
よって、前記化学式(1)は非混成非分岐タイプのアルキル置換されたイソフタレート系化合物であり、化学式(2)は混成分岐タイプのアルキル置換されたイソフタレート系化合物であり、化学式(3)の化合物は非混成分岐タイプのアルキル置換されたイソフタレート系化合物であり得る。
【0036】
本発明の一実施形態により、前記Rが非分岐であり、Rが分岐タイプの場合が、R及びRが全て分岐であるか非分岐の場合に比べ、強度、引張強度及び伸び率の特性が向上され得る。また、前記改善された引張強度及び伸び率の特性により最終製品の生産性及び加工性が改善され得る。
【0037】
本発明で用いる用語「非混成非分岐タイプ」は、他に特定されない限り、ベンゼン環で1,3位置、すなわち、メタ(Meta)−位置に存在するエステル(−COO−)基で置換されたR及びRのアルキル基が同一であり、分岐鎖なく2種の線形炭化水素を含む構造を指称する。
【0038】
また、本発明で用いる用語「混成分岐タイプ」は、他に特定されない限り、ベンゼン環で1,3位置、すなわち、メタ(Meta)−位置に存在するエステル(−COO−)基で置換されたR及びRのアルキル基が互いに異なり、1種の分岐鎖を含む構造を指称する。例えば、前記混成分岐タイプのアルキル置換されたイソフタレート系化合物において、前記R及びRのアルキル基のうち、何れか一つのアルキル基が分岐タイプであるアルキル基であれば、他の一つのアルキル基は非分岐タイプであるアルキル基であることを意味する。
【0039】
また、前記混成分岐タイプのアルキル置換されたイソフタレート系化合物において、分岐タイプのアルキル基は、非混成分岐タイプのアルキル置換されたイソフタレート系化合物の分岐タイプのアルキル基と同一であってよく、前記非分岐タイプのアルキル基は、前記非混成非分岐タイプのアルキル置換されたイソフタレート系化合物の非分岐タイプのアルキル基と同一であってよい。
【0040】
さらに、本発明で用いる用語「非混成分岐タイプ」は、他に特定されない限り、ベンゼン環で1,3位置、すなわち、メタ(Meta)−位置に存在するエステル(−COO−)基で置換されたR及びRのアルキル基が同一であり、2種の分岐鎖を含む構造を指称する。
【0041】
前記置換されたアルキルは一例として、炭素数1から20の炭化水素であってよく、具体的な例として、樹脂との早い吸収速度による加工容易性(可塑化効率)と移行損失(migration loss)程度を考慮するとき、RはC−C10のアルキルであり、前記RはC−C12の炭化水素のうち独立的に選択される1種以上であってよく、前記R及びRは互いに異なってよい。
【0042】
本発明のさらに他の一実施形態によれば、前記化学式(1)から(3)で、前記RはC−Cのアルキルであり、前記RはC6−12のアルキルであってよく、さらに具体的には前記Rはエチルヘキシル、イソノニル、イソデシル及びプロピルヘプチルの中から選択されるものであってよい。
【0043】
さらに、本発明は、下記化学式のエステル系化合物を提供することができる。以下、化学式のエステル系化合物は混成タイプの化合物であってよい。
【0044】
【化12】
【0045】
【化13】
【0046】
【化14】
【0047】
本発明の一実施形態によれば、前記エステル系組成物は下記化学式(1−1)、(2−1)及び(3−1)の化合物を含むことができる:
【0048】
【化15】
【0049】
【化16】
【0050】
【化17】
【0051】
本発明の一実施形態によれば、前記エステル系組成物は、下記化学式(1−1)、(2−2)及び(3−2)の化合物を含むことができる:
【0052】
【化18】
【0053】
【化19】
【0054】
【化20】
【0055】
本発明の一実施形態によれば、前記エステル系組成物は、下記化学式(1−1)、(2−3)及び(3−3)の化合物を含むことができる:
【0056】
【化21】
【0057】
【化22】
【0058】
【化23】
【0059】
本発明の一実施形態によれば、前記エステル系組成物は、下記化学式(1−1)、(2−4)及び(3−4)の化合物を含むことができる:
【0060】
【化24】
【0061】
【化25】
【0062】
【化26】
【0063】
本発明の一実施形態によれば、前記化学式(1)、化学式(2)及び化学式(3)の化合物は、エステル系組成物の総重量に対しそれぞれ0.5重量%から50重量%、0.5重量%から70重量%、及び0.5重量%から85重量%の量で含まれてよく、具体的に0.5重量%から50重量%、10重量%から50重量%、及び35重量%から80重量%の量で含まれてよい。
【0064】
本発明の一実施形態によれば、非混成タイプの化学式(1)及び(3)の化合物の合計と、前記混成タイプの前記化学式(2)の化合物との配合比は、重量比で95:5から30:70、好ましくは90:10から60:40であってよい。
【0065】
本発明の一実施形態によれば、前記エステル系組成物は、前記化学式(1)から(3)のイソフタレート系化合物が前記特定重量比の範囲内で含まれることにより、可塑剤として利用時に環境に優しいながら樹脂に対する吸収速度と短い溶融時間を有するので、樹脂の加工性をさらに改善させ、硬度(hardness)、引張強度(tensile strength)、伸び率(elongation rate)、移行損失(migration loss)、シート加熱減量、熱安定性(heat stability)及び促進耐候性(QUV)などの物性がさらに改善され得る。
【0066】
本発明の一実施形態に係る前記エステル系組成物は、エーテルフリー(ether−free)可塑剤であってよく、この場合、可塑化効率が良好で、作業性に優れる効果がある。
【0067】
前記エーテルフリーは、エステル系組成物内に含まれているエーテル成分が1,000ppm以下、100ppm以下、あるいは10ppm以下のものを意味する。
【0068】
本発明の一実施形態によれば、下記化学式(3)の化合物を下記化学式(4)の第1アルコールとトランスエステル化(trans−esterification)反応させる段階を含む、前記エステル系組成物の製造方法を提供することができる:
【0069】
【化27】
【0070】
【化28】
前記式で、
及びRはそれぞれ独立的にC−C20のアルキルであり、前記R及びRは互いに同一でない。
【0071】
本発明で用いられる「トランスエステル化反応」は、下記反応式1のように、アルコールとエステルが反応してエステルのR''がアルコールのR'と互いに相互交換される反応を意味する:
【0072】
【化29】
【0073】
本発明の一実施形態によれば、前記トランスエステル化反応が行われると、前記化学式(4)の第1アルコールのアルコキシドが前記化学式(3)の化合物の二つのエステル(RCOOR'')基の炭素を攻撃する場合、前記化学式(1)の化合物を形成することができ;前記化学式(3)の化合物の一つのエステル(RCOOR'')基の炭素を攻撃する場合、前記化学式(2)の化合物を形成することができ;反応が行われていない未反応部分として前記化学式(3)の化合物で残っていてよい。
【0074】
また、前記トランスエステル化反応は、酸−アルコール間エステル化反応に比べて廃水の問題が引き起こされない利点があり、無触媒下で進められ得るので、酸触媒の使用時の問題点を解決することができる。
【0075】
本発明の一実施形態によれば、前記トランスエステル化反応により、前記化学式(1)の化合物、前記化学式(2)の化合物、及び前記化学式(3)の化合物がエステル系組成物の総重量に対し、それぞれ0.5重量%から50重量%、0.5重量%から70重量%、及び0.5重量%から85重量%の量で形成されてよく、具体的に0.5重量%から50重量%、10重量%から50重量%、及び35重量%から80重量%の量で形成されてよい。
【0076】
前記範囲内で可塑剤として利用時に工程効率が高く、加工性及び吸収速度に優れたエステル系組成物を収得する効果がある。
【0077】
本発明の一実施形態によれば、前記トランスエステル化反応により製造されたエステル系組成物は、前記化学式(1)の化合物、前記化学式(2)の化合物及び前記化学式(3)の化合物全てを含むことができ、前記化学式(4)の第1アルコールの添加量により前記エステル系組成物の組成を制御することができる。
【0078】
本発明の一実施形態によれば、前記化学式(4)の第1アルコールの添加量は、前記化学式(3)の化合物100重量部に対して0.1から89.9重量部、具体的には3から50重量部、さらに具体的には5から40重量部であってよい。
【0079】
本発明の一実施形態によれば、前記エステル系組成物は、前記化学式(4)の第1アルコールの添加量が多いほど、トランスエステル化反応に参加する化学式(3)の化合物のモル分率(mole fraction)が大きくなるはずなので、前記エステル系組成物において前記化学式(1)の化合物及び前記化学式(2)の化合物の含量が増加し得る。
【0080】
また、これに相応して未反応で存在する化学式(3)の化合物の含量は減少する傾向を示し得る。
【0081】
本発明の一実施形態によれば、前記化学式(3)の化合物と化学式(4)の第1アルコールのモル比は、一例として1:0.005から5.0、1:0.05から2.5、あるいは1:0.1から1.0であり、この範囲内で工程効率が高く、加工性の改善効果に優れたエステル系組成物を収得する効果がある。
【0082】
本発明の一実施形態によれば、前記トランスエステル化反応は120℃から190℃、好ましくは135℃から180℃、さらに好ましくは141℃から179℃の反応温度下で10分から10時間、好ましくは30分から8時間、さらに好ましくは1時間から6時間で行われることが好ましい。前記温度及び時間の範囲内で所望の組成比のエステル系組成物を効果的に得ることができる。このとき、前記反応時間は、反応物の昇温後、反応温度に到達した時点から計算され得る。
【0083】
本発明の一実施形態によれば、前記トランスエステル化反応は、酸触媒又は金属触媒下で実施されてよく、この場合、反応時間が短縮される効果がある。
【0084】
前記酸触媒は、一例として硫酸、メタンスルホン酸またはp−トルエンスルホン酸などであってよく、前記金属触媒は、一例として有機金属触媒、金属酸化物触媒、金属塩触媒又は金属自体であってよい。
【0085】
前記金属成分は、一例として錫、チタン及びジルコニウムからなる群より選択される何れか一つ又はこれらのうち2種以上の混合物であってよい。
【0086】
また、本発明の一実施形態によれば、前記トランスエステル化反応後、未反応アルコールと反応副産物、例えば、化学式(3)の化合物を蒸留させて除去する段階をさらに含むことができる。
【0087】
前記蒸留は、一例として前記化学式(4)の第1アルコールと反応副産物との沸点の差を利用して別に分離する2段階蒸留であってよい。
【0088】
さらに他の一例として、前記蒸留は混合蒸留であってよい。この場合、エステル系組成物を所望の組成比で比較的に安定的に確保することができる効果がある。前記混合蒸留は、ブタノールと反応副産物を同時に蒸留することを意味する。
【0089】
一方、本発明のトランスエステル化反応に用いられる前記化学式(3)の化合物は、下記化学式(5)の化合物を下記化学式(6)の第2アルコール、又は前記第2アルコールとこの1種以上の異性質体の混合物と触媒の存在下でエステル化反応させて得ることができる:
【0090】
【化30】
【0091】
【化31】
【0092】
【化32】
前記式で、
はC−C20のアルキルである。
【0093】
前記エステル化反応は、80℃から270℃の温度範囲、好ましくは150℃から250℃の温度範囲で10分から10時間、好ましくは30分から8時間、さらに好ましくは1時間から6時間で行われることが好ましい。前記温度及び時間の範囲で化学式(1)の化合物を効果的に得ることができる。
【0094】
本発明の一実施形態によれば、前記エステル化反応は、Sn系又はTi系を含む有機金属触媒、スルホン酸系または硫酸系を含む酸触媒、またはこれらの混合触媒であってよく、触媒の種類に制限されるものではない。
【0095】
本発明の一実施形態によれば、前記化学式(5)の化合物及び前記化学式(6)の第2アルコール(又は、前記第2アルコールとこの1種以上の異性質体の混合物)は、1:1から7モル比の量、好ましくは1:2から5モル比の量で用いられるのが好ましい。
【0096】
本発明の一実施形態によれば、前記化学式(6)の第2アルコールは通常の方法で製造して用いるか、市販されるものを購入して用いることができる。市販されるものを購入して用いる場合、前記化学式(6)の第2アルコールは1種以上の異性質体と混合して含まれてよく、前記化学式(6)の第2アルコール:この異性質体は、例えば50重量部から100重量部:0重量部から50重量部、好ましくは70重量部から100重量部:0重量部から30重量部の量で含まれてよい。
【0097】
例えば、前記化学式(6)の第2アルコールが2−プロピルヘプタン−1−オールである場合、この異性質体として、下記化学式(6−1)の4−メチル−2−プロピル−ヘキサノールまたは下記化学式(6−2)の5−メチル−2−プロピル−ヘキサノールを含むことができる。
【0098】
【化33】
【0099】
【化34】
【0100】
具体的に前記化学式(6)の第2アルコール、又は第2アルコール及びこの異性質体の混合物は市販されているものを購入して用いることができ、例えば、2−プロピルヘプタン−1−オールの場合、この異性質体を含むBASF社のCAS No.10042−59−8、66256−62−0、159848−27−8などの市販されているものを購入して用いることができ、イソノニルアルコールの場合、この異性質体を含むEXXONMOBILE社のCAS No.68526−84−1、KYOWA社のCAS No.27458−94−2(68515−81−1)などの市販されているものを購入して用いることができる。しかし、これに制限されるものではない。
【0101】
本発明の一実施形態によれば、前記異性質体を含む化学式(6)の第2アルコールを用いる場合、化学式(3)の化合物及びこの異性質体が混合された混合物の形態に製造され得る。また、これにより、本発明の一実施形態に係るエステル系組成物は、前記化学式(1)から(3)の化合物、好ましくは化学式(2)及び(3)の化合物がそれぞれこれらの異性質体をさらに含むことができる。
【0102】
本発明の一実施形態に係る前記化学式(3)の製造のための前記エステル化反応により、化学式(3)の化合物が約80%以上の収率で製造可能であり、このように製造された化学式(3)の化合物と前記化学式(4)の第1アルコールとトランスエステル化反応させることにより、所望の組成のエステル系組成物を容易に製造することができる。
【0103】
一方、本発明は、前記製造方法により製造されたエステル系組成物を提供する。
【0104】
また、本発明は、前記エステル系組成物を可塑剤として含み、樹脂を含む樹脂組成物を提供する。
【0105】
本発明の一実施形態によれば、前記樹脂は当分野に知られている樹脂を用いることができる。例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、熱可塑性エラストマー及びポリ乳酸の中から選択される1種以上の混合物などを用いることができるが、これに制限されるものではない。
【0106】
本発明の一実施形態によれば、前記エステル系組成物は、前記樹脂100重量部を基準に5から100重量部で含まれてよい。
【0107】
本発明の一実施形態によれば、前記樹脂組成物は充填剤をさらに含むことができる。
【0108】
前記充填剤は、前記樹脂100重量部を基準に0から300重量部、好ましくは50から200重量部、さらに好ましくは100から200重量部であってよい。
【0109】
本発明の一実施形態によれば、前記充填剤は当分野に知られている充填剤を用いることができ、特に制限されない。例えば、シリカ、マグネシウムカーボネイト、カルシウムカーボネイト、硬炭、タルク、水酸化マグネシウム、チタンジオキシド、マグネシウムオキシド、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミニウムシリケート、マグネシウムシリケート及び硫酸バリウムの中から選択される1種以上の混合物であってよい。
【0110】
また、本発明の一実施形態によれば、前記樹脂組成物は必要に応じて安定化剤などのその他の添加剤をさらに含むことができる。
【0111】
前記安定化剤などのその他の添加剤は、一例としてそれぞれ前記樹脂100重量部を基準に0から20重量部、好ましくは1から15重量部であってよい。
【0112】
本発明の一実施形態に基づいて用いられ得る安定化剤は、例えば、カルシウム−亜鉛の複合ステアリン酸塩などのカルシウム−亜鉛系(Ca−Zn系)安定化剤を用いることができるが、これに特に制限されるものではない。
【0113】
また、本発明の一実施形態によれば、前記樹脂組成物は、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルテレフタレート(DOTP)、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)及びジ−(2−エチルヘキシル)テレフタレート(DEHTP)の中から1種以上選択される可塑剤をさらに含むことができる。前記可塑剤は、前記樹脂100重量部を基準に0から150重量部、好ましくは5から100重量部の範囲内であってよい。
【0114】
本発明の一実施形態によれば、前記樹脂組成物は、ゾル粘度が4000から15000cp、5000から11000cp、あるいは6000から9000cpであり、この範囲内で安定的な加工性を確保することができる効果がある。
【0115】
本記載のゾル粘度は、ブルックフィールド(Brookfield)(LV type)粘度計を利用して測定され、用いるスピンドル(spindle)は#4であり、6rpm、12rpmで測定する。試料は一例としてPVC(PB900、LG化学)100phr、エステル系可塑剤75phr、安定化剤(KSZ111XF)4phr、発泡剤(W1039)3phr、TiO(TMCA100)13phr、CaCO(OMYA10)130phr、粘度低下剤(Exa−sol)10phr、分散剤(BYK3160)1phrを配合してプラスチゾルを製造し、25℃で1時間保管後、測定することができる。
【0116】
前記樹脂組成物は一例として、粘度低下剤の投入量を既存の製品に比べて低めるか、あるいは用いていない樹脂組成物、すなわち粘度低下剤フリー樹脂組成物であってよい。
【0117】
本記載の粘度低下剤フリー組成物は、樹脂組成物の粘度を調節するための粘度低下剤を全く含まないものを意味する。
【0118】
本発明の一実施形態に係るエステル系組成物は、樹脂に対する吸収速度と短い溶融時間を有するので、樹脂の加工性を改善させ、電線、自動車内装材、フィルム、シート、チューブ、壁紙、玩具、床材などのシート処方及びコンパウンド処方時に優れた物性を提供することができる。
【0119】
特に、前記エステル系組成物を可塑剤として含む樹脂組成物が壁紙シートとして処方される場合、優れた物性を提供することができる。
【0120】
以下、本発明を具体的に説明するため、実施形態を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明に係る実施形態は幾多の他の形態に変形されてよく、本発明の範囲が下記で詳述する実施形態に限定されるものとして解釈されてはならない。本発明の実施形態は、当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0121】
[製造例、実験例、実施例及び比較例]
製造例1
冷却器、ウォーターストリッパー、コンデンサ、デカンター、還流ポンプ、温度コントローラ、撹拌器などを備えた4つ口の3リットル反応器に精製イソフタル酸(purified isophthalic acid;PIA)498.4g、エチルヘキシルアルコール1172.1g(イソフタル酸:エチルヘキシルアルコールのモル比1:3)、触媒としてチタン系触媒(TIPT、tetra isopropyl titanate)1.54g(イソフタル酸100重量部に対して0.3重量部)を投入し、約170℃まで徐々に昇温させた。約170℃近くで生成水の発生が始まり、反応温度約220℃、常圧条件で窒素ガスを投入し続けながら約4.5時間の間エステル化反応を行い、酸価が0.01に到達すると反応を終結した。
【0122】
反応完了後、未反応原料を除去するために減圧下で蒸留抽出を0.5から4時間の間実施する。一定の含量の水準以下に未反応原料を除去するため、スチームを用いて減圧下で0.5から3時間の間スチーム抽出を行い、反応液の温度を約90℃に冷却し、アルカリ溶液を利用して中和処理を実施する。さらに、水洗を実施することもでき、以後反応液を脱水して水分を除去した。水分が除去された反応液に濾材を投入して一定時間撹拌した後、濾過して最終的にジ−(2−エチルヘキシル)イソフタレート1162g(収率:99.0%)を得た。
【0123】
製造例2
エチルヘキシルアルコールの代わりに2−プロピルヘプチルアルコール(2−プロピルヘプタン−1−オール(85%−100%)、1−ヘキサノール;4−メチル−2−プロピル(0−15%);1−ヘキサノール、5−メチル−2−プロピル(0−15%))(BASF社のCAS No.10042−59−8、66256−62−0、159848−27−8)を用いたことを除き、製造例1と同一の方法でビス(2−プロピルヘプチル)イソフタレートを得た。
【0124】
製造例3
エチルヘキシルアルコールの代わりにイソノニルアルコール(EXXONMOBILE社のCAS No.68526−84−1)を用いたことを除き、製造例1と同一の方法でビス(イソノニル)イソフタレートを得た。
【0125】
製造例4
エチルヘキシルアルコールの代わりにイソデシルアルコールを用いたことを除き、製造例1と同一の方法でビス(イソデシル)イソフタレートを得た。
【0126】
実施例1
撹拌器、凝縮器及びデカンターが設けられた反応器に、製造例1で得たジ−(2−エチルヘキシル)イソフタレート(以下、DEHIP)1000g及びブタノール70g(DEHIP 100重量部を基準に7重量部)を投入した後、窒素雰囲気下、140℃の反応温度で触媒なく5時間の間トランスエステル化反応させ、下記化学式(1−1)、化学式(2−1)及び化学式(3−1)の化合物をそれぞれ1.5重量%、22.4重量%及び76.1重量%の範囲で含むエステル系組成物を得た:
【0127】
【化35】
【0128】
【化36】
【0129】
【化37】
【0130】
前記反応生成物を混合蒸留してブタノール及び2−エチルヘキシルアルコールを除去し、最終にエステル系組成物を製造した。
【0131】
実施例2
前記実施例1において製造例1で得たジ−(2−エチルヘキシル)イソフタレート(以下、DEHIP)の代わりに製造例2で得たビス(2−プロピルヘプチル)イソフタレートを用いたことを除き、前記実施例1と同一の方法を行い、下記化学式(1−1)、化学式(2−2)及び化学式(3−2)の化合物をそれぞれ1.4重量%、20.7重量%及び77.9重量%の範囲で含むエステル系組成物を得た:
【0132】
【化38】
【0133】
【化39】
【0134】
【化40】
【0135】
実施例3
前記実施例1において製造例1で得たジ−(2−エチルヘキシル)イソフタレート(以下、DEHIP)の代わりに製造例2で得たビス(イソノニル)イソフタレートを用いたことを除き、前記実施例1と同一の方法を行い、下記化学式(1−1)、化学式(2−3)及び化学式(3−3)の化合物をそれぞれ1.5重量%、21.3重量%及び77.2重量%の範囲で含むエステル系組成物を得た:
【0136】
【化41】
【0137】
【化42】
【0138】
【化43】
【0139】
実施例4
前記実施例1において製造例1で得たジ−(2−エチルヘキシル)イソフタレート(以下、DEHIP)の代わりに製造例4で得たビス(イソデシル)イソフタレートを用いたことを除き、前記実施例1と同一の方法を行い、下記化学式(1−1)、化学式(2−4)及び化学式(3−4)の化合物をそれぞれ1.4重量%、20.5重量%及び78.1重量%の範囲で含むエステル系組成物を得た:
【0140】
【化44】
【0141】
【化45】
【0142】
【化46】
【0143】
実施例5から13
前記ブタノールの量を下記表1に記載の量に調節したことを除き、実施例1と同一の方法を行い、化学式(1)、化学式(2)及び化学式(3)の化合物が下記表1の組成を有するエステル系組成物を得た。
【0144】
比較例1(エステル化反応、R及びRが全て分岐タイプ)
冷却器、ウォーターストリッパー、コンデンサ、デカンター、還流ポンプ、温度コントローラ、撹拌器などを備えた4つ口の3リットル反応器に精製イソフタル酸498.4g、エチルヘキシルアルコール1015.8g、2−プロピルヘプタノール1067g、触媒としてメタンスルホン酸(Methanesulfonic acid(MSA))15g(PTA 100重量部に対して3重量部)を投入し、約210℃まで徐々に昇温させた。約170℃近くで生成水の発生が始まり、反応温度約210℃、常圧条件で窒素ガスを投入し続けながら約4時間の間エステル化反応を行い、酸価が4に到達すると反応を終結する。
【0145】
反応完了後、未反応原料を除去するため、減圧下で蒸留抽出を0.5から4時間の間実施する。一定含量の水準以下に未反応原料を除去するため、スチームを用いて減圧下で0.5から3時間の間スチーム抽出を行い、反応液の温度を約90℃に冷却し、アルカリ溶液を用いて中和処理を実施した。さらに、水洗を実施することもでき、以後、反応液を脱水して水分を除去した。水分が除去された反応液に濾材を投入して一定時間撹拌した後、濾過して最終的にDEHIP 2重量%、2−プロピルヘプチルエチルヘキシルイソフタレート(PHEHIP)2.5重量%、及びビス(2−プロピルヘプチル)イソフタレート(DPHIP)73重量%を得た。
【0146】
比較例2(テレフタレート系)
前記製造例1でイソフタル酸の代わりにテレフタル酸を用いて製造例1及び実施例1と同一の方法で行い、ジ−(2−エチルヘキシル)テレフタレート(DEHTP)75.5重量%、1−ブチル 4−(2−エチルヘキシル)テレフタレート(以下、BEHTP)22.8重量%、及びジブチルテレフタレート(以下、DBTP)1.7重量%を含む反応生成物を収得した。
【0147】
比較例3(フタレート系)
前記製造例1でイソフタル酸の代わりにフタル酸を用いて製造例1及び実施例1と同一の方法で行い、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート(DEHP)75.0重量%、1−ブチル 4−(2−エチルヘキシル)フタレート(以下、BEHP)22.5重量%、及びジブチルフタレート(以下、DBP)2.5重量%を含む反応生成物を収得した。
【0148】
【表1】
【0149】
実験例1:エステル系組成物の含量の測定
本発明の実施例1から13及び比較例1から3のエステル系組成物において、各化合物の含量(wt%)はAgilent社のガスクロマトグラフ機器(Agilent 7890 GC、コラム:HP−5、キャリアガス:ヘリウム)を利用して測定した。
【0150】
前記実施例1から13のエステル系組成物でエーテルは検出されなかった。
【0151】
実験例2:試片の製作(シート)及び性能評価
実施例1から13及び比較例1から3で製造されたエステル系組成物を、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC(LS 130s))100重量部に対し可塑剤55重量部、添加剤としてBZ安定化剤(BZ210、ソンウォン産業)2重量部、エポキシド化大豆油(ESO、ソンウォン産業)2重量部を配合して1300rpmで100℃で混合した。ロールミル(Roll mill)を利用して175℃で4分間作業し、プレス(press)を利用して185℃で3分(低圧)及び2分30秒(高圧)で作業し、2mmの厚さにシートを製作した。
【0152】
前記シートに対し硬度(hardness)、引張強度(tensile strength)、伸び率(elongation rate)、移行損失(migration loss)及びシート加熱減量の測定を行った。
【0153】
それぞれの性能評価の条件は次の通りである。
【0154】
硬度(hardness)の測定
ASTM D2240を利用し、25℃でのショア(shore)硬度(SHORE A)を測定した。
【0155】
引張強度(tensile strength)の測定
ASTM D638方法により、テスト機器であるU.T.M(製造社;Instron、モデル名;4466)を利用してクロスヘッドスピード(cross head speed)を200mm/minで引っ張った後、試片が切断される地点を測定した。引張強度は次のように計算した:
引張強度(kgf/cm)=ロード(load)値(kgf)/厚さ(cm)×幅(cm)
【0156】
伸び率(elongation rate)の測定
ASTM D638方法により、前記U.T.Mを利用してクロスヘッドスピード(cross head speed)を200mm/minで引っ張った後、試片が切断される地点を測定してから、伸び率を次のように計算した:
伸び率(%)=伸張後の長さ/初期長さ100で計算した。
【0157】
移行損失(migration loss)の測定
KSM−3156に従い厚さ2mm以上の試験片を得て、試験片の両面にABS(Natural Color)を貼り付けた後、1kgf/cmの荷重を加えた。試験片を熱風循環式オーブン(80℃)で72時間の間放置した後、取り出して常温で4時間の間冷却させた。その後、試験片の両面に貼り付けられたABSを除去してから、オーブンに放置する前と後の重量を測定し、移行損失量を下記のような式により計算した。
移行損失量(%)={(常温での試験片の初期重量−オーブン放置後の試験片の重量)/常温での試験片の初期重量}×100
【0158】
シート加熱減量の測定
前記製作された試片を70℃で72時間の間作業した後、試片の重量を測定した。
加熱減量(重量%)=初期試片の重量−(70℃、72時間作業後の試片の重量)/初期試片の重量×100で計算した。
【0159】
【表2】
【0160】
前記表2は、トランスエステル化反応またはエステル化反応、並びにR及びRの分岐/非分岐に伴う実施例1から4及び比較例1のエステル系組成物を用いて試片に適用する場合の物性を測定した結果である。
【0161】
前記表2で分かるところのように、トランスエステル化反応により製造された本発明の実施例1から4のエステル系組成物は、硬度、引張強度、伸び率の特性が、エステル化反応により製造された比較例1に比べて遥かに向上することが分かる。
【0162】
具体的に検討すると、本発明の実施例1から4のエステル系組成物、特にトランスエステル化反応によりRは非分岐であり、Rが分岐タイプである実施例1から4は、R及びRが全て分岐タイプである比較例1に比べて硬度、引張強度及び伸び率の特性に優れた。
【0163】
例えば、本発明の実施例1から4は、比較例1に比べ硬度が5%以上減少することが分かる。本発明の実施例のように硬度が減少することにより、実際の製品に適用する場合、優れた工程性及び作業性の安定化も提供することができる。
【0164】
また、伸び率の場合、本発明の実施例1から4が比較例1に比べて約4%以上向上することが分かる。伸び率の増加により、製品の生産性及び加工性に優れることができる。
【0165】
【表3】
【0166】
前記表3は、ブタノールの添加量に伴う実施例5から13の硬度、引張強度、伸び率及び耐移行性を測定した結果である。
【0167】
前記表3で分かるところのように、ブタノールの使用量に従って硬度、引張強度、伸び率及び耐移行性が著しく変わることが分かる。
【0168】
具体的に、ブタノールの使用量が少ないほど硬度、引張強度及び伸び率が相対的に向上し、耐移行性は減少する傾向を確認した。
【0169】
したがって、多様な製品の目的に従ってブタノールの添加量を調節し、用途に合うように物性を調節することができ、これらを有効に適用することができることが分かる。
【0170】
【表4】
【0171】
前記表4は、酸の種類を異にして製造された実施例1、及び比較例2と3の可塑剤で製造されたシートの硬度、引張強度、伸び率及び耐移行性を比べた結果である。
【0172】
前記表4で分かるところのように、本発明の実施例のイソフタレート系エステル可塑剤を用いた場合、テレフタレート系及びフタレート系エステル可塑剤を用いた比較例2と3に比べて伸び率が向上し、特に耐移行性及び加熱減量の効果に優れることが分かった。
【0173】
具体的に、本発明のイソフタレート系エステル可塑剤を用いた試片の場合、オルト(Ortho)−位置及びパラ(Para)−位置にエステル基があるフタレート系及びテレフタレート系エステル可塑剤に比べ、伸び率、耐移行性及び加熱減量が改善されるので、樹脂の加工性、樹脂との吸収速度と移行損失程度及び熱的安定性が向上することが分かる。
【0174】
特に、耐移行性の場合、本発明の実施例1は比較例3に比べて10倍以上減少することが分かる。
【0175】
また、加熱減量の場合、本発明の実施例1は比較例2と3に比べて約20%から45%まで減少することが分かる。
【0176】
比較例2及び3のように加熱減量が増加するのは、最終製品の加工性及び長期安定性において致命的な欠点になり得る。すなわち、加熱減量が増加するとのことは、試片の内部に存在するエステル系組成物(可塑剤)の量が減少したとの意味であり、これは正に伸び率の低下として現れることがある。
【0177】
したがって、本発明のイソフタレート系エステル可塑剤は、テレフタレート系及びフタレート系可塑剤に比べて物性が遥かに改善することを確認することができる。
【0178】
製造例5、実施例、比較例、実験例
製造例5
冷却器、ウォーターストリッパー、コンデンサ、デカンター、還流ポンプ、温度コントローラ、撹拌器などを備えた4つ口の3リットル反応器に精製イソフタル酸(purified isophthalic acid;PIA)498.4g、2−プロピルヘプタノール(2−PH)1425g(BASF社、2−PH 80〜100重量%、4−メチル−2−プロピルヘキサノール0〜15重量%及び5−メチル−2−プロピル−ヘキサノール0〜15重量%を含む)(イソフタル酸:2−PHのモル比1:3)、触媒としてチタン系触媒(TIPT、tetra isopropyl titanate)を1.54g(イソフタル酸100重量部に対して0.3重量部)を投入し、約170℃まで徐々に昇温させた。約170℃近くで生成水の発生が始まり、反応温度約220℃、常圧条件で窒素ガスを投入し続けながら約4.5時間の間エステル化反応を行い、酸価が0.01に到達すると反応を終結した。
【0179】
反応完了後、未反応原料を除去するため、減圧下で蒸留抽出を0.5から4時間の間実施する。反応液を冷却し、アルカリ溶液を利用して中和処理を実施する。以後、反応液を脱水して水分を除去した。水分が除去された反応液に濾材を投入して一定時間撹拌した後、濾過して最終的にジ−(2−プロピルヘプチル)イソフタレート1162g(収率:99.0%)を得た。
【0180】
実施例14
撹拌器、凝縮器及びデカンターが設けられた反応器に、製造例5で得たジ−(2−プロピルヘプチル)イソフタレート(以下、DPHIP)1000g及びブタノール70g(DPHIP 100重量部を基準に7重量部)を投入した後、窒素雰囲気下140℃の反応温度で触媒なく5時間の間トランスエステル化反応させ、下記化学式(2−2)、化学式(1−1)及び化学式(3−2)の化合物をそれぞれ21.0重量%、1.6重量%、及び77.4重量%の範囲で含むエステル系組成物を得た:
【0181】
【化47】
【0182】
【化48】
【0183】
【化49】
【0184】
実施例15から21
前記ブタノールの量を下記表5に記載された量に調節したことを除き、実施例14と同一の方法を行い、化学式(2−2)、化学式(1−1)及び化学式(3−2)の化合物が下記表5の組成を有するエステル系組成物を得た。
【0185】
比較例4(テレフタレート系)
前記製造例2でイソフタル酸の代わりにテレフタル酸を用いて製造例2及び実施例14と同一の方法で行い、ジ−(2−プロピルヘプチル)テレフタレート(DPHTP)75.4重量%、1−ブチル4−(2−プロピルヘプチル)テレフタレート(以下、BPHTP)23.2重量%及びジブチルテレフタレート(以下、DBTP)1.4重量%を含む反応生成物を収得した。
【0186】
比較例5(フタレート系)
前記製造例2でイソフタル酸の代わりにフタル酸を用いて製造例2及び実施例と同一の方法で行い、ジ−(2−プロピルヘプチル)フタレート(DPHP)74.5重量%、1−ブチル 4−(2−プロピルヘプチル)フタレート(以下、BPHP)22.1重量%及びジブチルフタレート(以下、DBP)3.4重量%を含む反応生成物を収得した。
【0187】
【表5】
【0188】
実験例3:エステル系組成物の含量の測定
本発明の実施例14から21及び比較例4から5のエステル系組成物において、各化合物の含量(wt%)はAgilent社のガスクロマトグラフ機器(Agilent 7890 GC、コラム:HP−5、キャリアガス:ヘリウム)を利用して測定した。
前記実施例14から21のエステル系組成物でエーテルは検出されなかった。
【0189】
実験例4:試片の製作(シート)及び性能評価
実施例14から21及び比較例3から4で製造されたエステル系組成物を、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC(LS 130s))100重量部に対し可塑剤55重量部、添加剤としてBZ安定化剤(BZ210、ソンウォン産業)2重量部、エポキシド化大豆油(ESO、ソンウォン産業)2重量部を配合して1300rpmで100℃で混合した。ロールミル(Roll mill)を利用して175℃で4分間作業し、プレス(press)を利用して185℃で3分(低圧)及び2分30秒(高圧)で作業し、2mmの厚さにシートを製作した。
【0190】
前記シートに対して硬度(hardness)、引張強度(tensile strength)、伸び率(elongation rate)、移行損失(migration loss)及びシート加熱減量の測定を行った。結果を表6、7に示した。
【0191】
【表6】
【0192】
前記表6は、ブタノールの添加量に伴う実施例15から21の可塑剤で製造されたシートの硬度、引張強度、伸び率及び耐移行性を測定した結果である。
【0193】
前記表6で分かるところのように、ブタノールの使用量に従って硬度、引張強度、伸び率及び耐移行性が著しく変わることが分かる。
【0194】
具体的に、ブタノールの使用量が少ないほど引張強度と耐移行性が相対的に向上し、可塑化効率は減少する傾向を確認した。
【0195】
したがって、多様な製品の目的に従ってブタノールの添加量を調節し、用途に合うように物性を調節することができ、これらを有効に適用することができることが分かる。
【0196】
【表7】
【0197】
前記表7は、酸の種類を異にして製造された実施例14、及び比較例4から5の可塑剤で製造されたシートの硬度、引張強度、伸び率及び耐移行性を比べた結果である。
【0198】
前記表7で分かるところのように、本発明の実施例のイソフタレート系エステル可塑剤を用いた場合、テレフタレート系及びフタレート系エステル可塑剤を用いた比較例4と5に比べて伸び率が向上し、特に耐移行性及び加熱減量の効果に優れることが分かった。
【0199】
具体的に、本発明のイソフタレート系エステル可塑剤を用いた試片の場合、オルト(Ortho)−位置及びパラ(Para)−位置にエステル基があるフタレート系及びテレフタレート系エステル可塑剤に比べ、伸び率、耐移行性及び加熱減量が改善されるので、樹脂の加工性、樹脂との吸収速度と移行損失程度及び熱的安定性が向上することが分かる。
【0200】
また、加熱減量の場合、本発明の実施例14は比較例4と5に比べて約30%から65%まで減少することが分かる。
【0201】
比較例4及び5のように加熱減量が増加するのは、最終製品の加工性及び長期安定性において致命的な欠点になり得る。すなわち、加熱減量が増加するとのことは試片の内部に存在するエステル系組成物(可塑剤)の量が減少したとの意味であり、これは正に伸び率の低下として現われることがある。
【0202】
したがって、本発明のイソフタレート系エステル可塑剤は、テレフタレート系及びフタレート系可塑剤に比べて物性が遥かに改善することを確認することができる。
【0203】
製造例6、実施例、比較例、実験例
製造例6
冷却器、ウォーターストリッパー、コンデンサ、デカンター、還流ポンプ、温度コントローラ、撹拌器などを備えた4つ口の3リットル反応器に精製イソフタル酸(purified isophthalic acid;PIA)498.4g、イソノニルアルコール(EXXONMOBILE社のCAS No.68526−84−1)1298.3g(イソフタル酸:イソノニルアルコールのモル比1:3)、触媒としてチタン系触媒(TIPT、tetra isopropyl titanate)を1.54g(イソフタル酸100重量部に対して 0.31重量部)を投入し、約170℃まで徐々に昇温させた。約170℃近くで生成水の発生が始まり、反応温度約220℃、常圧条件で窒素ガスを投入し続けながら約4.5時間の間エステル化反応を行い、酸価が0.01に到達すると反応を終結した。
【0204】
反応完了後、未反応原料を除去するため、減圧下で蒸留抽出を0.5から4時間の間実施する。反応液を冷却し、アルカリ溶液を利用して中和処理を実施する。以後、反応液を脱水して水分を除去した。水分が除去された反応液に濾材を投入して一定時間撹拌した後、濾過して最終的にジ−イソノニルイソフタレート1243.3g(収率:99.0%)を得た。
【0205】
実施例22
攪拌器、凝縮器及びデカンターが設けられた反応器に、製造例6で得たジ−イソノニルイソフタレート(以下、DINIP)1000g及びブタノール70g(DINIP 100重量部を基準に7重量部)を投入した後、窒素雰囲気下140℃の反応温度で触媒なく5時間の間トランスエステル化反応させ、下記化学式(2−3)、化学式(1−1)、化学式(3−3)の化合物をそれぞれ21.3重量%、2.3重量%、及び77.2重量%の範囲で含むエステル系組成物を得た。
【0206】
【化50】
【0207】
【化51】
【0208】
【化52】
【0209】
前記反応生成物を混合蒸留してブタノール及びイソノニルアルコールを除去し、最終のエステル系組成物を製造した。
【0210】
実施例23から29
前記ブタノールの量を下記表8に記載された量に調節したことを除き、実施例22と同一の方法を行い、化学式(2−3)、化学式(1−1)及び化学式(3−3)の化合物が下記表8の組成を有するエステル系組成物を得た。
【0211】
比較例6(テレフタレート系)
前記製造例3でイソフタル酸の代わりにテレフタル酸を用いて製造例3及び実施例22と同一の方法で行い、ジ−(イソノニル)テレフタレート(DINTP)75.1重量%、1−ブチル 4−(イソノニル)テレフタレート(以下、BINTP)23.0重量%及びジブチルテレフタレート(以下、DBTP)1.9重量%を含む反応生成物を収得した。
【0212】
比較例7(フタレート系)
前記製造例3でイソフタル酸の代わりにフタル酸を用いて製造例3及び実施例22と同一の方法で行い、ジ−(イソノニル)フタレート(DNIP)75.9重量%、1−ブチル 4−(イソノニル)フタレート(以下、BINP)22.0重量%及びジブチルフタレート(以下、DBP)2.1重量%を含む反応生成物を収得した。
【0213】
【表8】
【0214】
実験例5:エステル系組成物の含量の測定
本発明の実施例22から29及び比較例6から7のエステル系組成物において、各化合物の含量(wt%)はAgilent社のガスクロマトグラフ機器(Agilent 7890 GC、コラム:HP−5、キャリアガス:ヘリウム)を利用して測定した。
【0215】
前記実施例22から29のエステル系組成物でエーテルは検出されなかった。
【0216】
実験例6:試片の製作(シート)及び性能評価
実施例22から29及び比較例6から7で製造されたエステル系組成物を、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC(LS 130s))100重量部に対し可塑剤55重量部、添加剤としてBZ安定化剤(BZ210、ソンウォン産業)2重量部、エポキシド化大豆油(ESO、ソンウォン産業)2重量部を配合して1300rpmで100℃で混合した。ロールミル(Roll mill)を利用して175℃で4分間作業し、プレス(press)を利用して185℃で3分(低圧)及び2分30秒(高圧)で作業して2mmの厚さにシートを製作した。
【0217】
前記シートに対して硬度(hardness)、引張強度(tensile strength)、伸び率(elongation rate)、移行損失(migration loss)及びシート加熱減量の測定を行った。結果を表9、表10に示した。
【0218】
【表9】
【0219】
前記表9は、ブタノールの添加量に伴う実施例23から29の可塑剤で製造されたシートの硬度、引張強度、伸び率及び耐移行性を測定した結果である。
【0220】
前記表9で分かるところのように、ブタノールの使用量に従って硬度、引張強度、伸び率及び耐移行性が著しく変わることが分かる。
【0221】
具体的に、ブタノールの使用量が少ないほど引張強度と耐移行性が相対的に向上し、可塑化効率は減少する傾向を確認した。
【0222】
したがって、多様な製品の目的に従ってブタノールの添加量を調節し、用途に合うように物性を調節することができ、これらを有効に適用することができることが分かる。
【0223】
【表10】
【0224】
前記表10は、酸の種類を異にして製造された実施例22、及び比較例6と7の可塑剤で製造されたシートの硬度、引張強度、伸び率及び耐移行性を比べた結果である。
【0225】
前記表10で分かるところのように、本発明の実施例のイソフタレート系エステル可塑剤を用いた場合、テレフタレート系及びフタレート系エステル可塑剤を用いた比較例6と7に比べて伸び率が向上し、特に耐移行性及び加熱減量の効果に優れることが分かった。
【0226】
具体的に、本発明のイソフタレート系エステル可塑剤を用いた試片の場合、オルト(Ortho)−位置及びパラ(Para)−位置にエステル基があるフタレート系及びテレフタレート系エステル可塑剤に比べ、伸び率、耐移行性及び加熱減量が改善するので、樹脂の加工性、樹脂との吸収速度と移行損失程度及び熱的安定性が向上することが分かる。
【0227】
また、加熱減量の場合、本発明の実施例22は、比較例6と7に比べて約20%から45%の水準まで減少することが分かる。
【0228】
比較例6及び7のように加熱減量が増加するのは、最終製品の加工性及び長期安定性において致命的な欠点になり得る。すなわち、加熱減量が増加するとのことは、試片の内部に存在するエステル系組成物(可塑剤)の量が減少したとの意味であり、これは正に伸び率の低下として現れることがある。
【0229】
したがって、本発明のイソフタレート系エステル可塑剤組成物は、テレフタレート系及びフタレート系可塑剤に比べて物性が遥かに改善することを確認することができる。