(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回収部は、前記回収部および前記被回収物を撮影可能なカメラを有し、該カメラが撮影した画像を前記操作部を操作する操作者が視認可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の吸引回収装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
放射線の高線量地域では、作業員が瓦礫などの回収を現地で直接行うことは、被曝の虞があり困難である。このため、遠隔操作によって瓦礫などの被回収物を回収できる装置の開発が望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、遠隔操作によって瓦礫などの被回収物を回収できる吸引回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る吸引回収装置は、被回収物を吸引する吸引部と該吸引部に吸引された前記被回収物を収容する収容部とを有する回収部と、該回収部を吊り下げられた状態に支持する支持部と、該回収部を遠隔操作可能な操作部と、を備
え、前記吸引部は、前記被回収物を吸引する吸引口を有する吸引ダクトを有し、該吸引ダクトは、複数の短管が軸方向に連結され、隣り合う前記短管が軸線に直交する回動軸を中心に相対的に回動可能に構成されていて、前記短管の軸方向の一方側に隣り合う短管と、他方側に隣り合う短管とが、前記短管に対して回動する方向が互いに異なるフレキシブル管部を有することを特徴とする。
【0007】
本発明では、支持部に吊り上げられた状態に支持された回収部を、操作部で遠隔操作可能であることにより、作業者が被回収物を直接回収することなく、遠隔操作によって瓦礫などの被回収物を回収できる。
また、回収部は、吊り上げられた状態に支持されていることにより、回収部が被回収物などが散乱している地面などの回収面を走行したり、回収面上に設置されたりする場合と比べて、障害物と干渉することが少ない。このため、遠隔操作であっても、回収部の操作を容易に行うことができ、被回収物を効率よく回収することができる。
また、隣り合う短管を相対的に回動させることによりフレキシブル管部を所望の形状とすることができる。このため、被回収物が散乱している地面などの回収面が傾斜したり、回収面に凹凸が形成されたりしている場合に、この回収面に沿うように吸引ダクトを曲げることができる。これにより、吸引ダクトの吸引口を被回収物の近傍へ確実に到達させることができ、重量が大きい被回収物や大型の被回収物などを確実に吸引させることができる。また、回収面の凹凸や回収面上の障害物などとの接触による吸引ダクトの変形や損傷を防止できる。
【0008】
また、本発明に係る吸引回収装置では、前記吸引部は、吸引した空気を前記回収部の外部へ排気する排気部を有し、該排気部は、排気方向を調整して前記回収部の向きを調整する排気方向調整機構を有することが好ましい。
このような構成とすることにより、排気を利用して回収部の向きを調整することができる。このため、吸引回収装置に回収部の向きを調整する機構を単独で設ける必要がなく、構造の簡便化を図ることができる。
【0010】
また、本発明に係る吸引回収装置では、前記吸引ダクトは、前記吸引口側の端部に、軸方向に伸縮可能な伸縮管部を有することが好ましい。
このような構成とすることにより、被回収物や回収面の凹凸などに合せて伸縮管部の長さが調整されるため、操作者が吸引口の位置の微調整を行わなくても、吸引口を最適な位置に配置することができる。また、回収面の凹凸や回収面上の障害物などによる吸引ダクトの変形や損傷を防止できる。
【0011】
また、本発明に係る吸引回収装置では、前記吸引ダクトは、前記吸引口近傍に、外周面から径方向外側に突出するフランジを有することが好ましい。
吸引口から吸引口よりも後側(吸引ダクトの吸引口がある側と反対の端部側)の領域の空気を吸引してしまうと、吸引口よりも前側(被回収物がある側)の領域を吸引する吸引力が低下することになる。
そこで、本発明では、フランジによってフランジよりも後側の領域の空気が回り込んで吸引されることを阻止できる。このため、吸引口よりも前側の領域を吸引する吸引力を確保することができ、被回収物の吸引を確実に行うことができる。
また、吸引口よりも後側の領域の空気が回り込んで吸引される場合と比べて、必要となる吸引力を小さく設定することができて、吸引力を発生させる手段の小型化やコスト削減を図ることができる。
【0012】
また、本発明に係る吸引回収装置では、前記フランジには、前記吸引口側に突出する凸部が形成されていることが好ましい。
このような構成とすることにより、フランジの面と地面などの回収面とが対向した状態で吸引を行った場合も、凸部によってフランジの面と回収面との間に隙間ができるため、フランジの面と回収面とが吸着することを防止できる。
【0013】
また、本発明に係る吸引回収装置では、前記吸引ダクトの前記吸引口近傍に、着脱可能な回転ブラシを有することが好ましい。
このような構成とすることにより、被回収物が回収面に固着している場合や、被回収物が砂などの微細な場合も、回転ブラシで被回収物を擦って回収面から離間させたり、被回収物を掃き出したりすることができるため、被回収物を確実に吸引して回収することができる。
【0014】
また、本発明に係る吸引回収装置では、前記吸引部は、吸引経路の途中に該吸引経路の内外を連通可能なダンパを有することが好ましい。
このような構成とすることにより、非常時や吸引しなくてよいものを吸引しそうになったり、吸引してしまったりした場合に、吸引部の吸引力を発生させる手段を急停止させなくても、吸引力を低減させる、または吸引を停止させることができる。
特に、吸引力を発生させる手段が大型のファンなどの場合、急停止が困難であるため、大型のファンを停止させなくても、吸引力を低減させる、または吸引を停止させることができる。
【0015】
また、本発明に係る吸引回収装置では、前記回収部は、前記吸引部で吸引された被回収物を選別する選別部を有し、前記選別部は、前記被回収物を側方から衝突板に衝突させ、前記被回収物のうち衝突の衝撃によって落下する被回収物を下方に配置された前記収容部へ落下させ、前記収容部へ落下しなかった被回収物を通過させる衝突選別部と、該衝突選別部を通過した前記被回収物を通過させて、所定の粒径で前記被回収物を選別するフィルタ選別部と、を有することが好ましい。
このような構成とすることにより、被回収物のうち、瓦礫などの比較的大型や重量のあるものを、衝突選別部で選別して収容することができ、粉塵などの微細なものをフィルタ選別部で選別して収容することができる。そして、被回収物は、大きさによって選別されて収容されるため、収容された被回収物の処理を容易に行うことができる。
また、フィルタ選別部に比較的大型や重量のある被回収物が通過する場合と比べて、フィルタ選別部のフィルタの目詰まりが少なく、フィルタの清掃回数を少なくすることができる。
【0016】
また、本発明に係る吸引回収装置では、前記収容部は、前記被回収物を収容する収容器が、放射線を遮蔽する遮蔽材に覆われていることが好ましい。
このような構成とすることにより、収容部に収容された被回収物に放射性物質が含まれる場合に、作業員が収容部に近づいたとしても、作業員の被曝を少なくすることができる。
【0017】
また、本発明に係る吸引回収装置では、前記回収部は、前記収容部に収容された被回収物に散水を行う散水部を有することが好ましい。
このような構成とすることにより、収容部に収容された被回収物に粉塵が含まれる場合に、この粉塵の拡散を防止することができる。
【0018】
また、本発明に係る吸引回収装置では、前記回収部は、前記回収部および前記被回収物を撮影可能なカメラを有し、該カメラが撮影した画像を前記操作部を操作する操作者が視認可能に構成されていることが好ましい。
このような構成とすることにより、操作者が画像を確認しながら確実に回収部を操作することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、支持部に吊り上げられた状態に支持された回収部を、操作部で遠隔操作可能であることにより、作業者が被回収物を直接回収することなく、遠隔操作によって瓦礫などの被回収物を回収できる。
また、回収部は、吊り上げられた状態に支持されていることにより、回収部が被回収物などが散乱している地面などの回収面を走行したり、回収面上に設置されたりする場合と比べて、障害物と干渉することが少ない。このため、遠隔操作であっても、回収部の操作を容易に行うことができ、被回収物を効率よく回収することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態による吸引回収装置について、
図1乃至
図12に基づいて説明する。
図1乃至
図4に示すように、本実施形態による吸引回収装置1は、放射線の高線量地域において地面(回収面)11に散乱した瓦礫などの被回収物12を吸引して回収する装置で、被回収物12を吸引して回収する回収部2と、回収部2をクレーンなどの揚重手段(不図示)に吊り下げられた状態に支持する支持部3と、回収部2を遠隔操作可能な操作部(不図示)と、を備えている。
【0022】
回収部2は、被回収物12を吸引する吸引部4と、吸引部4で吸引された被回収物12を選別する選別部5と、選別部5に選別された被回収物12を収容する収容部6と、収容部6に収容された被回収物12に散水を行う散水部7と、吸引される被回収物12および回収部2を撮影する撮影部8と、を有している。
ここで、
図1の矢印Aの方向を前後方向とし、矢印Bの方向を上下方向とし、
図1の紙面に直交する方向を横幅方向として以下説明する。
【0023】
吸引部4は、被回収物12を吸引する吸引口4aを有する第1吸引ダクト(吸引ダクト)41と、第1吸引ダクト41に接続された第2吸引ダクト42と、第2吸引ダクト42と接続され、第1吸引ダクト41および第2吸引ダクト42の内部の空気を回収部2の外部へ排気させて第1吸引ダクト41および第2吸引ダクト42に吸引力を発生させる排気部43と、を有している。
ここで、吸引部4の吸引口4aがある側を上流側とし、排気部43がある側を下流側として以下説明する。
【0024】
図1および
図3に示すように、第1吸引ダクト41は、吸引口4aを有し軸方向に伸縮可能な伸縮管部110と、伸縮管部110の下流側に接続されフレキシブルに屈曲可能なフレキシブル管部120と、フレキシブル管部120の下流側に接続された第1管部130と、上流側が第1管部130の下流側に接続されているとともに下流側が第2吸引ダクト42に接続された第2管部140と、を有している。
【0025】
第1吸引ダクト41は、回収部2が吊り下げられた状態に支持部3に支持されて、被回収物12を回収可能な状態となると、伸縮管部110およびフレキシブル管部120が地面11と当接するように構成されている。そして、第1吸引ダクト41は、第1管部130および第2管部140が伸縮管部110およびフレキシブル管部120の上方に配置され、第2吸引ダクト42から垂下するように構成されている。
【0026】
図1、
図3および
図5に示すように、伸縮管部110は、吸引口4aが形成された第1管体111と、フレキシブル管部120に接続された第2管体112と、を有している。
第1管体111の外径と第1管体111の内径とが略同じ寸法に形成され、第1管体111の軸方向の長さと第1管体111の軸方向の長さとが略同じ寸法に形成されている。
第1管体111は、第2管体112の内部に同軸に挿入されると、外周面が第2管体112の内周面と接触またはわずかな隙間をあけて対向する。そして、この状態で、第1管体111と第2管体112とは、軸方向に相対的にスライド可能に構成されている。
【0027】
このような伸縮管部110は、第1管体111が第2管体112の内側に重なった状態となると収縮状態となり、第1管体111が第2管体112に対して上流側にスライドし、第1管体111の下流側の端部近傍に第2管体112の上流側の端部近傍が重なった状態となると伸長状態となる。
そして、伸縮管部110は、第1管体111および第2管体112の少なくとも一方に作用する軸方向の外力に応じて伸縮する。なお、伸縮管部110は、吊り上げられて地面11から離間すると、重力によって第1管体111が第2管体112に対して下側(上流側)にスライドし、伸長状態となる。
【0028】
また、本実施形態では、
図5に示すように、第1管体111には、吸引口4a近傍の外周面111aから径方向外側に突出するフランジ113を有している。フランジ113は、中心部に第1管体111の外径と同じ径の孔部が形成された円板状に形成されている。フランジ113の外縁部は、軸を含む平面による断面形状が外方に突出する略円弧状に形成されている。
また、フランジ113には、上流側の端面113aに上流側に突出する凸部114が形成されている。本実施形態では、凸部114は、突出する側に湾曲した半球状に形成され、フランジ113の径方向に90°間隔をあけて4つ設けられている。
【0029】
また、本実施形態では、フランジ113の上流側には、回転ブラシ115が着脱可能に構成されている。回転ブラシ115は、略円環状のブラシ本体116と、ブラシ本体116を回転させる回転機構117と、を有している。回転機構117は、例えば、電動モータを利用して回転ブラシ115を回転させる構成としてもよいし、吸引部4の吸引力を利用して回転ブラシ115を回転させる構成としてもよい。
【0030】
図5に戻り、フレキシブル管部120は、軸方向に連結された複数の短管121,121…を有している。複数の短管121,121…は、例えば、鋼管などで構成されている。
図7に示すように、短管121は、軸方向の一方側に配置される大径部122と、軸方向の他方側に配置される小径部123と、大径部122と小径部123とを連結する連結部124と、を有している。大径部122および小径部123は、ともに円筒状に形成されている。大径部122の内径は、小径部123の外径よりも大きくなるように設定されている。
連結部124は、軸方向の一方側の外径および内径が大径部122の外径および内径と略同じ寸法に形成され、軸方向の他方側の外径および内径が小径部123の外径および内径と略同じ寸法に形成されたテーパ状の筒体に形成されている。連結部124のテーパは、連結部124の軸方向全体に形成されている。
これらの大径部122、小径部123、および連結部124は、例えば溶接などで接合され一体化されている。
そして、短管121は、大径部122が小径部123よりも上流側となるように配置されている。
【0031】
軸方向に隣り合う短管121,121は、上流側の短管121の小径部123の外側に下流側の短管121の大径部122が重なるように配置され、これらの短管121,121は、回動軸125を中心に相対的に回動可能に構成されている。
回動軸125は、仮想の軸線で、隣り合う短管121,121が重なっている領域において短管121の軸線に直交する方向に延びている。
本実施形態では、軸方向隣り合う短管121,121のうち、上流側の短管121の小径部123と、下流側の短管121の大径部122とが、回動軸125上の対向する2カ所においてピンなどの連結具126(
図5参照)で回動軸125を中心に相対的に回動可能に連結されている。
【0032】
また、隣り合う短管121,121は、同軸の状態において、上流側の短管121の小径部123の連結部124との境界部123aは、下流側の短管121の大径部122の上流側の端部122aよりも上流側に配置されている。そして、回動軸125を中心に相対的に回動する隣り合う短管121,121は、下流側の短管121の大径部122の上流側の端部122aが、上流側の短管121の小径部123または連結部124の外周面と当接することで、回動が停止するように構成されている。
【0033】
また、軸方向に連結された3つの短管121,121,121を上流側から下流側に向かって第1短管121A,第2短管121B,第3短管121Cとすると、第1短管121Aと第2短管121Bとの第1回動軸125Aと、第2短管121Bと第3短管121Cとの第2回動軸125Bとは、第2短管121Bの軸方向から見て90°異なっている。
このため、第2短管121Bに対して第1短管121Aが回動可能な方向と、第2短管121Bに対して第3短管121Cが回動可能な方向とが、第2短管121Bの軸方向から見て90°異なっている。
そして、複数の短管121,121…が軸方向連結されている状態では、第1回動軸125Aと第2回動軸125Bとが軸方向に交互に配置されている。
【0034】
このようなフレキシブル管部120は、複数の短管121,121…それぞれに作用する外力に応じて隣り合う短管121,121が相対的に回動し、変形する。
これにより、フレキシブル管部120が地面11の上に配置されると、地面11の形状に沿った形状に変形する。
【0035】
図1に戻り、第1管部130は、軸方向全体が同径となるように形成され、上流側と下流側に屈曲部131,132を有し、上流側の屈曲部131と下流側の屈曲部132との間に直線部133を有している。上流側の屈曲部131と下流側の屈曲部132とは、略同じ曲率に設定されている。
第1管部130は、上流側が下方に向かって開口し、上流側の屈曲部131によって、下流側に向かってその軸が後方に向かうとともに上方に向かう斜め方向となるように曲げられている。そして、直線部133は、この斜め方向に延在している。
また、第1管部130は、下流側の屈曲部132によって、下流側に向かってその軸が上下方向となるように曲げられている。
また、本実施形態では、第1管部130は、上方から支持部3に吊り支持されている。
これにより、第2管部140にかかる第1管部130、フレキシブル管部120および伸縮管部110の重量を軽減させているとともに、第2吸引ダクト42にかかる第1吸引ダクト41の重量を軽減させている。
【0036】
第2管部140は、軸方向全体が同径となるように形成され、上流側にその軸が上下方向に延びる直線部141を有し、下流側に屈曲部142を有している。第2管部140は、屈曲部142によって、下流側に向かってその軸が前後方向となるように曲げられている。
【0037】
また、本実施形態では、第1管部130を第2管部140に対して第2管部140の直線部141の軸線を中心に回動可能とする回動機構134が設けられている。回動機構134は、例えば、電動モータなどを利用して第1管部130を回動させるように構成されている。
これにより、
図8に示すように、第1管部130は、第1管部130よりも上流側のフレキシブル管部120や伸縮管部110とともに、第2管部140の直線部141の軸線を中心に回動可能となる。
第1管部130の回動は、操作部から遠隔操作可能に構成されている。
【0038】
図1に戻り、第2吸引ダクト42は、内部に選別部5が設けられている。また、第2吸引ダクト42は、その吸引経路の中間部に、内外を連通させるダンパ用開口部42aと、選別部5に選別された被回収物12を収容部6へ導入するための収容部用開口部42bと、が形成されている。
ダンパ用開口部42aは、ダンパ150によって開閉されるように構成されている。
収容部用開口部42bは、上下方向に開口していて、収容部用開口部42bの下側に収容部6が設けられている。
【0039】
図1、
図2および
図9に示すように、ダンパ150は、ダンパ用開口部42aを開閉可能な扉部151と、扉部151の開閉動作を行うエアシリンダ152と、を有している。
扉部151の開閉は、操作部から遠隔操作可能に構成されている。
【0040】
このようなダンパ150は、通常時には扉部151でダンパ用開口部42aを閉鎖していて、吸引部4の吸引を急激に停止させたい非常時に、エアシリンダ152を操作して、ダンパ用開口部42aを開口可能に構成されている。
本実施形態では、第2吸引ダクト42に2つのダンパ用開口部42a,42aが形成され、2つのダンパ用開口部42a,42aに対してそれぞれ扉部151およびエアシリンダ152が設けられている。
【0041】
図1、
図2および
図4に示すように、排気部43は、第2吸引ダクト42と接続された排気ダクト161と、排気ダクトの排気を行う第1排気ファン162および第2排気ファン163と、排気ダクト161の下流側に接続され排気方向を調整可能な第1方向調整管部164および第2方向調整管部165と、第1方向調整管部164および第2方向調整管部165の排気方向をそれぞれ調整可能な排気方向調整機構(不図示)と、を有している。
【0042】
第1排気ファン162および第2排気ファン163は、排気ダクト161内の排気を行うことで、第1吸引ダクト41および第2吸引ダクト42に吸引力を発生させている。
第1排気ファン162によって排気される空気は、第1方向調整管部164から回収部2の外部に排出され、第2排気ファン163によって排気される空気は、第2方向調整管部165から回収部2の外部に排出されるように構成されている。
【0043】
第1方向調整管部164および第2方向調整管部165は、下流側に軸線が略90°曲げられた屈曲部167が形成され、屈曲部167よりも上流側には前後方向に延びる直線部168が形成されている。第1方向調整管部164および第2方向調整管部165は、上流側が排気ダクト161に接続され、下流側が開放されていて、下流側の開口から空気が外部に排出されるように構成されている。
第1方向調整管部164と第2方向調整管部165とは、横方向に間隔をあけて配置されている。
【0044】
また、第1方向調整管部164および第2方向調整管部165は、排気ダクト161に対して上流側の前後方向に延びる軸線を中心に回転可能に構成されている。排気方向調整機構は、第1方向調整管部164および第2方向調整管部165をそれぞれ回動(回転)させる手段を有し、操作部からの遠隔操作によって、第1方向調整管部164および第2方向調整管部165をそれぞれ回動させてその排気方向を調整するように構成されている。
第1方向調整管部164および第2方向調整管部165は、排気方向がそれぞれ個別に調整されるように構成されている。そして、操作部の遠隔操作によって排気方向調整機構が第1方向調整管部164の排気方向と第2方向調整管部165の排気方向とを調整することで、吊り下げられた状態の回収部2の向きが調整されるように構成されている。
なお、排気方向調整機構は、第1方向調整管部164および第2方向調整管部165の排気方向と併せて第1方向調整管部164および第2方向調整管部165から排気される排気量を調整するように構成されていてもよい。
【0045】
図1に示すように、選別部5は、第2吸引ダクト42に吸引された被回収物12を前方から衝突板51に衝突させ、衝突の衝撃によって落下する被回収物12を収容部用開口部42bから収容部6に落下させ、収容部6に落下しなかった被回収物12通過させる衝突選別部52と、衝突選別部52を通過した被回収物12を通過させて、所定の粒径で被回収物12を選別するフィルタ選別部53と、を有している。
【0046】
衝突板51は、第2吸引ダクト42の上流側の端部よりも間隔をあけた下流側で、第2吸引ダクト42の上流側の端部より後方に配置されている。そして、衝突板51は、被回収物12が衝突する衝突面が前方を向くように配置されている。これにより、第1吸引ダクト41から第2吸引ダクト42に流入した被回収物12が衝突板51に前方から衝突し、衝突板51に衝突した被回収物12は、衝突の衝撃で落下する。なお、衝突板51には、空気や被回収物12が通過可能な孔部が形成されていない。
【0047】
本実施形態では、第2吸引ダクト42の内部に発生する吸引力の方向は、
図1の矢印Cのように上流側から順番に、後方の衝突板51に向かい、その下流側で衝突板51から下方に向かい、その下流側で収容部用開口部42bのやや上側において後方に向かい、その下流側で上方に向かう方向に設定されている。
そして、収容部用開口部42bのやや上側において後方に向かう方向の吸引力は、衝突板51に衝突して落下する被回収物12の落下経路と交差している。このため、例えば、比較的重量が小さかったり、体積当たりの重量が小さかったり、表面積が大きかったりする被回収物12は、吸引力によって下流側の後方へ移動することになる。よって、比較的重量が大きかったり、体積当たりの重量が大きかったり、表面積が小さかったりする被回収物12は、落下して第2吸引ダクト42の収容部用開口部42bを通って収容部6に収容され、比較的重量が小さかったり、体積当たりの重量が小さかったり、表面積が大きかったりする被回収物12は、衝突選別部52を通過し、フィルタ選別部53に流入するように構成されている。
【0048】
フィルタ選別部53は、上流側に配置されたプリーツ式バグフィルタ171と、下流側に配置されたHEPAフィルタ172とを有している。
プリーツ式バグフィルタ171は、比較的大きい粒径の被回収物12を捕獲し、HEPAフィルタ172は、プリーツ式バグフィルタ171を通過した比較的小さい粒径の被回収物12を捕獲するように構成されている。
【0049】
図10に示すように、プリーツ式バグフィルタ171は円筒状に形成され、本実施形態では、その軸方向が上下方向となる向きに配置されている。また、本実施形態では、10のプリーツ式バグフィルタ171,171…が同一高さにおいて、前後方向に2ずつ、横方向に5ずつ配列されている。
これらの10のプリーツ式バグフィルタ171,171…は、それぞれ上端部がボルトなどの固定具で同一の枠体173に固定されてユニット化されている。このため、枠体173を移動させることで10のプリーツ式バグフィルタ171,171…を一度に着脱させることができる。
このようなプリーツ式バグフィルタ171,171…には、下側から上側に向かって被回収物12を含む空気が通過する。
【0050】
図11に示すように、HEPAフィルタ172は、略四角形状の板状に形成され、本実施形態では、その面が前後方向を向く向きに配置されている。また、本実施形態では、9のHEPAフィルタ172,172…が同一面において横方向に3ずつ、上下方向に3ずつ配列されている。
これらの9のHEPAフィルタ172,172…は、固定面174にフラットバー175で押さえられるようにして固定されている。
【0051】
図11および
図12に示すように、本実施形態では、固定面174がHEPAフィルタ172(
図11参照)の下流側に配置され、フラットバー175がHEPAフィルタ172の上流側に配置されている。
フラットバー175は、横幅方向に長尺でHEPAフィルタ172よりも横幅方向の寸法が長く形成されている。フラットバー175には、固定面174側突出するボルト176が接合されている。
そして、HEPAフィルタ172を固定面174とフラットバー175とで挟むように配置し、固定面174に形成された孔部にフラットバー175から突出するボルト176を挿入させることでHEPAフィルタ172が固定面174に固定されている。
このため、フラットバー175を外すことで、HEPAフィルタ172を容易に外すことができる。
【0052】
このようなHEPAフィルタ172には、その面に交差するように被回収物12を含む空気が通過する。そして、HEPAフィルタ172を通過した空気は、排気ダクト161から回収部2の外部へ排気される。
【0053】
図1および
図3に示すように、収容部6は、被回収物12を収容するバケット(収容器)61を有し、バケット61の外部は鉛などの放射線を遮蔽する遮蔽材62で被覆されている。収容部6は、回収部2に着脱可能に構成されていて、収容部6の内部の被回収物12を廃棄する際には、回収部2から収容部6を外して収容部6のみを移動させることが可能に構成されている。
【0054】
図1に示すように、散水部7は、第2吸引ダクト42の内の収容部用開口部42b近傍に配置されて、収容部6に向かって散水を行う散水ノズル71と、散水ノズル71に水を供給する給水タンク72および給水ポンプ73と、を有している。
散水部7による散水は、操作部によって遠隔操作可能に構成されている。
【0055】
撮影部8は、第1吸引ダクト41の上部に配置されて第1吸引ダクト41を撮影可能な第1カメラ81と、第1吸引ダクト41の吸引口4a近傍および地面11を撮影可能な第2カメラ82と、収容部6の内部を撮影可能な第3カメラ86と、を有している。そして、これらのカメラ81〜83が撮影した映像は通信手段(不図示)によって操作部を操作する操作者が視認可能なモニタ(不図示)に通信されるように構成されている。
カメラ81〜83の撮影は、操作部によって遠隔操作可能に構成されている。
【0056】
なお、撮影部8は、カメラ81〜83が撮影する対象物に明かりを照らすLEDライトなどの照明器具を有していてもよい。また、撮影部8は、カメラ81〜83を所定の範囲で移動させる移動機構を有していてもよい。撮影部8が照明器具や移動機構を有する場合、照明器具のスイッチのオンオフや、カメラ81〜83の移動は、操作部によって遠隔操作可能に構成されている。
【0057】
このような吸引回収装置1は、被回収物12を吸引する作業を行っている状態において、第1吸引ダクト41の吸引口4aの位置を調整する場合は、操作部を遠隔操作して、第1方向調整管部164および第2方向調整管部165の排気方向を調整して回収部2の位置や向きを調整するとともに、第1吸引ダクト41の第1管部130を旋回させて、第1吸引ダクト41の吸引口4aの位置を調整する。なお、これらの調整に加えて、揚重手段を遠隔操作して回収部2の位置や向きを調整してもよい。
【0058】
次に、上記の本実施形態による吸引回収装置1の作用・効果について図面を用いて説明する。
【0059】
本実施形態による吸引回収装置1では、支持部3に吊り上げられた状態に支持された回収部2を、操作部で遠隔操作可能であることにより、作業者が被回収物12を直接回収することなく、遠隔操作によって被回収物12を回収できる。
また、回収部2は、吊り上げられた状態に支持されていることにより、回収部2が地面11を走行したり、地面11上に設置されたりする場合と比べて、障害物と干渉することが少ない。このため、遠隔操作であっても、回収部2の操作を容易に行うことができ、被回収物12を効率よく回収することができる。
【0060】
また、排気方向調整機構を有することにより、排気を利用して回収部2の向きを調整することができる。このため、吸引回収装置1に回収部2の向きを調整するための機構を単独で設ける必要がなく、構造の簡便化を図ることができる。
【0061】
また、フレキシブル管部120は、軸方向に連結された複数の短管121,121…を有し、隣り合う短管121,121が回動軸125を中心に相対的に回動可能に構成され、第2短管121Bの上流側に隣り合う第1短管121Aと、下流側に隣り合う第3短管121Cとは、第2短管121Bに対して回動する方向が互いに異なることにより、所望の形状とすることができる。このため、被回収物12が散乱している地面11が傾斜したり、地面11に凹凸が形成されたりしている場合に、この地面11に沿うようにフレキシブル管部120を曲げることができる。これにより、第1吸引ダクト41の吸引口4aを被回収物12の近傍へ確実に到達させることができ、大重量で大型の被回収物12なども、確実に吸引することができる。また、地面11の凹凸や地面11の障害物などによるフレキシブル管部120の変形や損傷を防止できる。
また、フレキシブル管部120の複数の短管121,121…が鋼管で構成されている場合は、硬い瓦礫などの被回収物12が通過しても、フレキシブル管部120の変形や損傷を防止できる。また、大重量で大型の被回収物12を吸引するために吸引力を上げた場合でも、樹脂製の管体のように吸引力によってつぶれることを防止できる。
【0062】
また、第1吸引ダクト41の伸縮管部110は、軸方向に伸縮可能に構成されていることにより、被回収物12や地面11の凹凸などに併せて伸縮管部110の軸方向の長さ寸法が調整されるため、操作者が吸引口4aの位置の微調整を行わなくても、吸引口4aを最適な位置に配置することができる。また、地面11の凹凸や地面11の障害物などによる第1吸引ダクト41の変形や損傷を防止できる。
【0063】
また、第1吸引ダクト41は、吸引口4a近傍の外周面から径方向外側に突出するフランジ113を有している。そして吸引部4は、吸引口4aから吸引口4aよりも後側(第1吸引ダクト41の吸引口4aがある側と反対の端部側)の領域の空気を吸引してしまうと、吸引口4aよりも前側(被回収物12がある側)の領域を吸引する吸引力が低下することになる。
このため、本発明では、第1吸引ダクト41は、吸引口4a近傍の外周面から径方向外側に突出するフランジ113を有することにより、フランジ113よりも後側(吸引口4aよりも後側)の領域の空気が回り込んで吸引されることを防止できる。
そして、本発明では、吸引口4aよりも後側の領域の空気が回り込んで吸引されることを防止できるため、被回収物12の吸引を確実に行うことができる。また、吸引口4aよりも後側の領域の空気が回り込んで吸引される場合と比べて、必要となる吸引力を小さく設定することができて、吸引力を発生させる手段の小型化やコスト削減を図ることができる。
【0064】
また、フランジ113には、吸引口4a側に突出する凸部114が形成されていることにより、フランジ113の面と地面11とが対向した状態で吸引力が発生しても、凸部がフランジ113の面と地面11とが面接触することを防止できるため、フランジ113の面と地面11とが吸着することを防止できる。
【0065】
また、第1吸引ダクト41は、吸引口4a近傍に回転ブラシ115を着脱可能であることにより、被回収物12が地面11に固着している場合や、被回収物12が砂などの微細な場合も、回転ブラシ115で被回収物12を擦って地面11から離間させたり、被回収物12を掃き出したりすることができるため、被回収物12を確実に回収することができる。
【0066】
また、吸引部4は、吸引経路の途中に吸引経路の内外を連通可能なダンパ150を有することにより、非常時や吸引しなくてよいものを吸引しそうになった場合に、吸引力を発生させる手段を急停止させなくても、吸引力を低減または吸引を停止させることができる。
特に、吸引力を発生させる手段が大型のファンなどの場合、急停止が困難であるため、大型のファンを停止させなくても、吸引力を低減または吸引を停止させることができる。
【0067】
また、選別部5は、衝突選別部52と、フィルタ選別部53と、を有することにより、被回収物12のうち、瓦礫などの比較的大型や重量のあるものを、衝突選別部52で選別して収容でき、粉塵などの微細なものをフィルタ選別部53で選別して収容することができる。そして、被回収物12は、大きさによって選別されて収容されるため、収容された被回収物12の処理を容易に行うことができる。
また、衝突選別部52が設けられておらず、フィルタ選別部53を比較的大型や重量のある被回収物12を含む空気が通過する場合と比べて、フィルタ選別部53のプリーツ式バグフィルタ171やHEPAフィルタ172の目詰まりが少なく、フィルタ171,172の清掃回数を少なくすることができる。
【0068】
また、収容部6は、バケット61が放射線を遮蔽する遮蔽材62に覆われていることにより、収容部6に収容された被回収物12に放射性物質が含まれる場合に、作業員が収容部6に近づいたとしても、作業員の被曝を少なくすることができる。
【0069】
また、回収部2は、収容部6に収容された被回収物12に散水を行う散水部7を有することにより、収容部6に収容された被回収物12に粉塵が含まれる場合に、この粉塵の拡散を防止することができる。
【0070】
また、回収部2は、回収部2および被回収物12を撮影可能な撮影部8を有し、撮影部8が撮影した画像を操作部を操作する操作者が視認可能に構成されていることにより、操作者が画像を確認しながら確実に回収部2を操作することができる。
【0071】
以上、本発明による吸引回収装置の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態では、吸引回収装置1は、放射線の高線量地域において地面11に散乱した瓦礫などの被回収物12を吸引して回収しているが、設置される場所や回収するものは上記以外でもよい。
また、上記の実施形態では、排気方向調整機構によって回収部2の向きが調整されているが、上記以外の機構によって回収部2の向きが調整されていてもよい。
また、排気方向調整機構によって回収部2の向きが調整される場合、排気ファン162,163の数や、方向調整管部164,165の数は適宜設定されてよい。
【0072】
また、上記の実施形態では、第1吸引ダクト41は、伸縮管部110、フレキシブル管部120、第1管部130および第2管部140を有する構成であるが、上記以外の構成であってもよい。また、伸縮管部110、フレキシブル管部120、第1管部130および第2管部140の形態は、上記以外であってもよい。また、フランジ113に凸部114が形成されていなくてもよいし、凸部114の形状も上記以外でもよい。また、フランジ113が設けられていなくてもよい。
また、上記の実施形態では、フレキシブル管120の複数の短管121,121…は、鋼管で構成されているが、フレキシブル管部120の変形や損傷を防止でき、耐力的に問題がないようであれば、例えば、鋼管以外であってもよい。
また、第1吸引ダクト41が樹脂製のフレキシブル管などの内部に配置された構成としてもよい。
また、第1吸引ダクト41は、回転ブラシ115を取り付けない構成であってもよい。
【0073】
また、上記の実施形態では、ダンパ150が設けられているが、このようなダンパ150が設けられていなくてもよい。また、ダンパ150が設けられている場合、ダンパ150の数や位置は適宜設定されてよい。
また、上記の実施形態では、選別部5が設けられているが、設けられていなくてもよい。また、選別部5における衝突板51やフィルタ171,172などの選別手段は、上記以外であってもよい。
【0074】
また、上記の実施形態では、収容部6のバケット61は、遮蔽材62に被覆されているが、遮蔽材62が必要ない場合は、被覆されていなくてもよい。また、遮蔽材62は鉛以外を材料としてもよい。
また、上記の実施形態では、散水部7が設けられているが、設けられていなくてもよい。また、散水部7が設けられる位置は適宜設定されてよい。また、複数の散水部7が設けられていてもよい。
また、上記の実施形態ではカメラ81〜83が設けられているが、設けられていなくてもよい。また、カメラが設けられる位置やカメラの数は適宜設定されてよい。