特許第6402913号(P6402913)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日鐵住金株式会社の特許一覧

特許6402913クロムニッケル系ステンレス鋼の連続鋳造方法
<>
  • 特許6402913-クロムニッケル系ステンレス鋼の連続鋳造方法 図000005
  • 特許6402913-クロムニッケル系ステンレス鋼の連続鋳造方法 図000006
  • 特許6402913-クロムニッケル系ステンレス鋼の連続鋳造方法 図000007
  • 特許6402913-クロムニッケル系ステンレス鋼の連続鋳造方法 図000008
  • 特許6402913-クロムニッケル系ステンレス鋼の連続鋳造方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6402913
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】クロムニッケル系ステンレス鋼の連続鋳造方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/00 20060101AFI20181001BHJP
   B22D 11/124 20060101ALI20181001BHJP
   B22D 11/16 20060101ALI20181001BHJP
   C21D 9/00 20060101ALI20181001BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20181001BHJP
   C22C 38/48 20060101ALI20181001BHJP
   B22D 11/20 20060101ALN20181001BHJP
   C22C 38/58 20060101ALN20181001BHJP
【FI】
   B22D11/00 B
   B22D11/124 N
   B22D11/16 104P
   B22D11/16 104V
   C21D9/00 101Y
   C22C38/00 302Z
   C22C38/48
   !B22D11/20 A
   !C22C38/58
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-211651(P2014-211651)
(22)【出願日】2014年10月16日
(65)【公開番号】特開2016-78076(P2016-78076A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089462
【弁理士】
【氏名又は名称】溝上 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100129827
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 進
(72)【発明者】
【氏名】濱田 将志
(72)【発明者】
【氏名】山副 広明
(72)【発明者】
【氏名】大塚 正俊
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−034054(JP,A)
【文献】 特開2011−224649(JP,A)
【文献】 特開平09−285855(JP,A)
【文献】 特開2001−353563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/00−11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、Cr:18%以上、Ni:11%以上、Nb:0.4 %以上を含有するクロムニッケル系ステンレス鋼を連続鋳造する方法において、
連続鋳造鋳片の幅方向に隣接配置したスプレーノズルから噴射するミストスプレーによる、最大流量を100%とした最少流量の水量の比率で定義する均一冷却度が80%以上となる二次冷却設備を使用し、
二次冷却帯通過後の鋳片の表面温度上昇量T(℃)と、凝固シェル厚比[{(二次冷却帯出側の凝固シェル全体の/2)/鋳片厚}×100%]xが、
T<10・x
の関係を満足し、
かつ、二次冷却帯での比水量w1(リットル/kg・steel)と水量密度w2(リットル/min/m2)が、
2<400 ・w1
の関係(但し、比水量w1は0.33〜0.50の範囲)を満足する条件で二次冷却することを特徴とするクロムニッケル系ステンレス鋼の連続鋳造方法。
【請求項2】
クロムニッケル系ステンレス鋼が、質量%で、Cr:20%以上、Ni:20%以上、Nb:0.4 %以上含有するものであることを特徴とする請求項1に記載のクロムニッケル系ステンレス鋼の連続鋳造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部割れ及び表面割れを同時に抑制可能なステンレス鋼、特にCrを18質量%以上、Niを11質量%以上、及びNbを0.4 質量%以上含有するクロムニッケル系ステンレス鋼を連続鋳造する方法に関するものである。
【0002】
なお、以下の説明では、鋼の成分組成については、特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【背景技術】
【0003】
例えば、油井管に使用される継目無鋼管や、化学プラントや発電所の熱交換器などに使用される継目無鋼管は、そのハイエンド化に合わせてクロム系からクロムニッケル系のステンレス鋼で製造する割合が増加している。このようなクロムニッケル系のステンレス鋼(以下、高合金鋼ともいう。)は、CuやNbなどの合金成分を多く含有している。
【0004】
従来、Nbを含有する高合金鋼は、表面割れや内部割れの感受性が高いので、Nbの含有量に応じて、Nbを含有しないステンレス鋼に比べて鋳造速度を遅くし、この鋳造速度を遅くした分だけ溶鋼温度を高くして鋳造していた。
【0005】
しかしながら、連続鋳造時における表面割れや内部割れの発生の抑制を、鋳造速度を遅くすることで対応する場合、操業能率が低下するという問題がある。
【0006】
ところで、連続鋳造速度を遅くすることなく、鋳片のコーナー割れの発生を抑制する技術として特許文献1が、鋳片の表面割れと内部割れを共に防止する技術として特許文献2が提案されている。
【0007】
このうち、特許文献1は、連続鋳造時、二次冷却帯での比水量を規定することで、連続鋳造後の鋳片の圧延時におけるコーナー割れの発生を少なくする高合金鋼の連続鋳造方法である。
【0008】
また、特許文献2は、鋳片の幅方向の温度偏差と鋳片表面の過冷却を抑制することで、鋳片の表面割れと内部割れを共に防止して、良質な鋳片を製造可能とするクロム系ステンレス鋼の連続鋳造方法である。
【0009】
しかしながら、特許文献1で対象とする鋼種は、高合金鋼であっても、Nbの含有量は0.4 %未満で、しかも、連続鋳造時に発生する鋳片のコーナー割れではなく、連続鋳造後の鋳片の圧延時におけるコーナー割れの抑制を目的としたものである。
【0010】
また、特許文献2で対象とする鋼種は、Niを含有しないクロム系ステンレス鋼であり、防止しようとするのは、バルジングに起因する内部割れと、過冷却に起因する表面割れである。
【0011】
つまり、特許文献1,2で提案された方法は、いずれもNbを0.4 %以上含有する高合金鋼に特有の連続鋳造鋳片に発生する表面割れや内部割れの抑制についての考慮はなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭60−83756号公報
【特許文献2】特許第5397214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
Nbを0.4 %以上含有する高合金鋼の連続鋳造に際し、Nbを含有しないステンレス鋼に比べて鋳造速度を遅くし、この鋳造速度を遅くした分だけ溶鋼温度を高くして鋳造する場合は、操業能率が低下するという問題がある。
【0014】
一方、特許文献1,2で提案された方法は、いずれもNbを0.4 %以上含有する高合金鋼に特有の連続鋳造鋳片に発生する表面割れや内部割れの抑制についての考慮はなされていないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記の従来技術にあった問題に鑑みてなされたものであり、連続鋳造時の鋳造速度を低下させることなく、Nbを0.4 %以上含有する高合金鋼に特有の連続鋳造鋳片に発生する表面割れや内部割れを同時に抑制可能な連続鋳造方法を提供することを目的としている。
【0016】
すなわち、本発明は、
Cr:18%以上、Ni:11%以上、Nb:0.4 %以上を含有するクロムニッケル系ステンレス鋼を連続鋳造する方法において、
連続鋳造鋳片の幅方向に隣接配置したスプレーノズルから噴射するミストスプレーによる、最大流量を100%とした最少流量の水量の比率で定義する均一冷却度が80%以上となる二次冷却設備を使用し、
二次冷却帯通過後の鋳片の表面温度上昇量T(℃)と、凝固シェル厚比[{(二次冷却帯出側の凝固シェル全体の/2)/鋳片厚}×100%]xが、
T<10・x
の関係を満足し、
かつ、二次冷却帯での比水量w1と水量密度w2が、
2<400 ・w1
の関係(但し、比水量w1は0.33〜0.50の範囲)を満足する条件で二次冷却することを最も主要な特徴としている。
【0017】
なお、比水量は、単位時間当りにおける(冷却水量/鋳片重量)で表される。また、水量密度とは、単位面積当たりの冷却水量である。
【0018】
すなわち、本発明では、二次冷却帯通過後の鋳片の表面温度上昇量T(℃)と、凝固シェル厚比xの関係が最適となるように二次冷却することで、鋳片の強度を向上して、二次冷却帯通過後に鋳片が復熱によって膨張変形することを抑制する。また、二次冷却帯での比水量w1と水量密度w2の関係が最適となるように二次冷却することで、鋳片幅方向における冷却むらを抑制する。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、二次冷却帯通過後の復熱によって、鋳片凝固シェルの内面に引張応力が働くことを効果的に抑制することで、Nbを0.4 %以上含有する高合金鋼に特有の内部割れを抑制することができる。また、鋳片幅方向における冷却むらを抑制することで、Nbを0.4 %以上含有する高合金鋼に特有の表面割れを抑制することができる。また、本発明では、鋳造速度を低下させる必要がないので、操業効率が低下することもない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】(a)は二次冷却帯通過後の鋳片の表面温度上昇量T(℃)と凝固シェル厚比xの関係を示した図、(b)は二次冷却帯での比水量w1と水量密度w2の関係を示した図である。
図2】本発明方法における二次冷却について説明する図で、(a)は二次冷却を行うノズル部の構造を示した図、(b)は毎分10リットルの水を0.1MPaのエアー圧力でミスト状として噴射した時のノズル直下からの距離と流量比率の関係を示した図である。
図3】従来の二次冷却について説明する図で、(a)は二次冷却を行うノズル部の構造を示した図、(b)は毎分10リットルの水を0.2MPaのエアー圧力でミスト状として噴射した時のノズル直下からの距離と流量比率の関係を示した図である。
図4】連続鋳造鋳片の幅方向における表面温度を示した図で、(a)は従来の二次冷却設備を使用した場合の図、(b)は本発明方法に適した二次冷却設備を使用した場合の図である。
図5】(a)は連続鋳造設備における鋳型と二次冷却帯を示した図で、紙面左半分は比較例1を実施する場合、紙面右半分は発明例1を実施する場合、(b)はメニスカスからの距離と計算上の鋳片表面温度の関係の一例を示した図で、破線は比較例1、実線は発明例1を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明者らは、連続鋳造における内部割れ発生原因を整理すべく、連続鋳造後の鋳片から横断面マクロ組織を調査した。また、凝固計算によって、表面温度の履歴と凝固シェル厚の成長推移を求めた。その結果、内部割れの発生起点について二次冷却条件との関連性を認めたことから、二次冷却条件を見直して、Nbを0.4 %以上含有する高合金鋼に特有の内部割れを抑制することを考えた。
【0022】
すなわち、二次冷却帯を通過した鋳片は復熱によって膨張変形する。このとき、鋳片強度が低い場合には熱応力で鋳片内部に割れが発生する。また、鋳片の幅方向の冷却能力が不均一な場合、局所的な凝固遅れ部が発生し、表面割れの発生だけでなく、内部割れの発生率もさらに上昇する。
【0023】
この鋳片の幅方向における冷却むらによって発生する表面割れを抑制するには、水量密度を低下することが望ましい。しかしながら、その一方で、水量密度の低下により凝固シェルの成長が遅れた強度が低い鋳片は熱応力で内部割れが発生しやすくなって、内部割れの感受性が高くなる。
【0024】
そこで、発明者らは、水量密度を増加させることなく、凝固シェルの厚みを確保できる二次冷却条件、すなわち、二次冷却帯通過後の鋳片の表面温度上昇量T(℃)と凝固シェル厚比x、及び二次冷却帯での比水量w1と水量密度w2の関係に着目し、調査を行った。
【0025】
二次冷却帯通過後の鋳片の表面温度上昇量T(℃)と凝固シェル厚比xの関係を、二次冷却設備の均一冷却度が最大48%と80%以上の場合について調査した。ここで、二次冷却設備の均一冷却度とは、連続鋳造鋳片の幅方向に隣接配置したスプレーノズルから噴射するミストスプレーによる、最大流量を100%とした最少流量の水流の比率で定義する。その結果、図1(a)に示すように、二次冷却設備の均一冷却度が最大48%の場合は何れの場合も内部割れが発生するが、二次冷却設備の均一冷却度が80%以上の場合は内部割れが発生する領域と、内部割れが発生しない領域が存在することが判明した。
【0026】
また、二次冷却帯での比水量w1と水量密度w2の関係を、二次冷却設備の均一冷却度が最大48%と80%以上の場合について調査した。その結果、図1(b)に示すように、二次冷却設備の均一冷却度が最大48%の場合は何れの場合も表面割れが発生するが、二次冷却設備の均一冷却度が80%以上の場合は何れの場合も表面割れが発生しないことが判明した。
【0027】
上記調査結果に基づき、発明者らは、二次冷却設備の均一冷却度と、二次冷却帯通過後の鋳片の表面温度上昇量T(℃)と凝固シェル厚比xの関係、及び二次冷却帯での比水量w1と水量密度w2の関係を規定することで、Nbを0.4 %以上含有する高合金鋼に特有の連続鋳造鋳片に発生する表面割れと内部割れを同時に抑制できることを見出した。
【0028】
すなわち、復熱による内部割れの発生を抑制するためには、二次冷却帯を通過する間に凝固シェル厚を確保することと、二次冷却帯通過後の温度上昇量を低減することが有効である。
【0029】
以上の観点から、図1(a)に示すように、凝固シェル厚と温度上昇量の関係により、内部割れの発生の有無を整理できることを見出した結果、二次冷却帯通過後の鋳片の表面温度上昇量T(℃)と、凝固シェル厚比xが、T<10・xを満たせば、内部割れの発生を抑制することが可能であるという知見を得た。
【0030】
また、表面割れの発生は鋳片の幅方向に生じる冷却能率の不均一さによって助長されることから、水量密度を増加させることなく、鋳片の冷却に必要な比水量を確保することが要求される。
【0031】
以上の観点から、図1(b)に示すように、水量密度w2と比水量w1の関係より表面割れの発生の有無を整理できることを見出した結果、w2<400 ・w1を満たせば、表面割れの発生を抑制することが可能であるという知見を得た。
【0032】
本発明は、発明者らが調査した上記知見に基づいてなされたものであり、
Cr:18%以上、Ni:11%以上、Nb:0.4 %以上を含有するクロムニッケル系ステンレス鋼を連続鋳造する方法において、
連続鋳造鋳片の幅方向に隣接配置したスプレーノズルから噴射するミストスプレーによる、最大流量を100%とした最少流量の水量の比率で定義する均一冷却度が80%以上となる二次冷却設備を使用し、
二次冷却帯通過後の鋳片の表面温度上昇量T(℃)と、凝固シェル厚比[{(二次冷却帯出側の凝固シェル全体の/2)/鋳片厚}×100%]xが、
T<10・x
の関係を満足し、
かつ、二次冷却帯での比水量w1(リットル/kg・steel)と水量密度w2(リットル/min/m2)が、
2<400 ・w1
の関係(但し、比水量w1は0.33〜0.50の範囲)を満足する条件で二次冷却することを最も主要な特徴としている。
【0033】
本発明において、Cr:18%以上、Ni:11%以上、Nb:0.4 %以上を含有するクロムニッケル系ステンレス鋼を対象とするのは、Nbを0.4 %以上を含有する、Cr:18%以上、Ni:11%以上含有するクロムニッケル系ステンレス鋼を、Nbの含有量が0.4 %未満のステンレス鋼と同様の条件で連続鋳造した場合に、特有の表面割れや内部割れが発生するからである。
【0034】
また、本発明において、前記均一冷却度が80%以上となる二次冷却設備を使用するのは、図1に示した調査結果、及びその他の調査結果によれば、前記均一冷却度が80%以上でないと、二次冷却帯通過後の鋳片の表面温度上昇量T(℃)と凝固シェル厚比xの関係、二次冷却帯での比水量w1と水量密度w2の関係をどのように変化させても内面割れ、表面割れが発生しない領域が存在しないからである。
【0035】
発明者らが調査した結果、上記本発明は、Cr:20%以上、Ni:20%以上、Nb:0.4 %以上含有するクロムニッケル系ステンレス鋼の連続鋳造にも効果的であった。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の効果を確認するために行った実験結果について説明する。
下記表1に記載の成分組成の高合金鋼を、垂直型連続鋳造機を使用して380mm/分、450mm/分、510mm/分の鋳造速度で厚み280mm×幅600mmの角鋳片を連続鋳造した。
【0037】
【表1】
【0038】
下記表2,3に記載の比較例1〜4は、鋳型直下の二次冷却を、図5(a)の紙面左側に示す、メニスカスから0.70m 〜0.73m の範囲を水冷却、メニスカスから0.73m 〜1.89m の範囲をミスト冷却(エアー圧力:0.2MPa)によって行った。このミスト冷却は、図3(a)に示した形状の、図3(b)に示す流量分布(前記均一冷却度:最大48%)のノズルを使用して行った。
【0039】
また、下記表2,3に記載の比較例5,6は、鋳型直下の二次冷却を、図5(a)の紙面左側に示す、メニスカスから0.70m 〜0.73m の範囲を水冷却、メニスカスから0.73m 〜3.86m の範囲をミスト冷却(エアー圧力:0.2MPa)によって行った。このミスト冷却は、図3(a)に示した形状の、図3(b)に示す流量分布(前記均一冷却度:最大48%)のノズルを使用して行った。
【0040】
また、下記表2,3に記載の比較例7,8は、鋳型直下の二次冷却を、図5(a)の紙面右側に示す、メニスカスから0.70m 〜0.73 m の範囲を水冷却、メニスカスから0.73m 〜1.89m の範囲をミスト冷却(エアー圧力:0.1MPa)によって行った。このミスト冷却は、図2(a)に示した形状の、図2(b)に示す流量分布(前記均一冷却度:80%以上)のノズルを使用して行った。
【0041】
前記比較例1〜8は、鋼種Aを連続鋳造したもので、比較例1,3,5,7は380 mm/分の速度で、また比較例2,4,6,8は510 mm/分の速度で連続鋳造した。
【0042】
一方、下記表2,3に記載の発明例1,2は、図5(a)の紙面右側に示す、メニスカスから0.70m 〜0.73 m の範囲は水冷却、メニスカスから0.73m 〜3.86m の範囲はミスト冷却(エアー圧力:0.1MPa)によって二次冷却した。このミスト冷却は、図2(a)に示した形状の、図2(b)に示す流量分布(前記均一冷却度:80%以上)のノズルを使用して行った。このうち、鋼種Aを連続鋳造した発明例1は510 mm/分で、鋼種Bを連続鋳造した発明例2は450 mm/分の速度で連続鋳造した。
【0043】
比較例1〜8、及び発明例1,2の、二次冷却条件及び鋳造結果を下記表2,3に示す。なお、下記表3中の内部割れは、連続鋳造後の鋳片を100 mm間隔で3断面作成し、その横断面マクロ組織を調査して内部に割れの発生がないものを〇、内部に割れの発生があったものを×とした。また、表面割れは前記鋳片の全面をショットブラストした後浸透探傷試験を行い、割れが見つかった場合を×、見つからなかった場合を○とした。
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
比較例1〜8では、図3(a)に示すノズルを使用して二次冷却しているので、図4(a)に示すように、連続鋳造鋳片の幅方向において局所的な温度むらが発生する。さらに、比較例1〜4,7,8では、図5(a)の紙面左側のメニスカスからの距離に示すように、二次冷却帯の長さがメニスカスから1.89m の位置までであるため、図5(b)に破線で示した計算表面温度にみるように、二次冷却帯通過後の鋳片の表面温度上昇量T(℃)が大きい。
【0047】
このような二次冷却設備を用いて連続鋳造した場合、二次冷却帯での比水量w1と水量密度w2がw2<400 ・w1、二次冷却帯通過後の鋳片の表面温度上昇量Tと凝固シェル厚比xがT<10・xの関係の何れか一方でも満たしていない場合は勿論(比較例1〜4,7,8)、前記両関係を共に満たしても、表面割れ及び内部割れが共に発生した(比較例5,6)。
【0048】
これに対して、鋼種Aを連続鋳造した発明例1は、図4(b)に示すような局所的な温度むらの無い、図2(a)に示すノズルを使用するのと共に二次冷却帯の長さをメニスカスから3.86m の位置まで延長し、かつ、前記w2<400 ・w1及びT<10・xの関係を共に満たしているので、内部割れ、表面割れの発生が共に認められなかった。
【0049】
また、Crを20%以上、Niを20%以上、Nbを0.4 %以上含有する鋼種Bを連続鋳造した発明例2も、発明例1と同様、内部割れ、表面割れの発生が共に認められなかった。
【0050】
一方、発明例1,2と同じ二次冷却設備を使用し、前記w2<400 ・w1の関係を満たしているものの、前記T<10・xの関係を満たしていない比較例7,8は、表面割れは生じなかったが、内部割れの発生が見られた。
【0051】
本発明は上記した例に限らないことは勿論であり、請求項に記載の技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
図1
図2
図3
図4
図5