特許第6402918号(P6402918)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6402918-漏電遮断器の漏電電流検出装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6402918
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】漏電遮断器の漏電電流検出装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 83/02 20060101AFI20181001BHJP
   G01R 31/02 20060101ALI20181001BHJP
   G01R 19/00 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   H01H83/02 H
   H01H83/02 E
   G01R31/02
   G01R19/00 B
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-237772(P2014-237772)
(22)【出願日】2014年11月25日
(65)【公開番号】特開2016-100267(P2016-100267A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161562
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 朗
(72)【発明者】
【氏名】橋本 貴
(72)【発明者】
【氏名】細岡 洋平
(72)【発明者】
【氏名】高橋 康弘
(72)【発明者】
【氏名】野寺 俊夫
【審査官】 鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−238566(JP,A)
【文献】 特開2012−159445(JP,A)
【文献】 特開2012−42417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H69/00−69/01
H01H71/00−83/22
G01R31/02−31/06
G01R19/00−19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
漏電遮断器に搭載して配電系統に発生する交流から直流まで全領域の漏電電流を検出する漏電電流検出装置であって、漏電遮断器の主回路導体を囲む磁気コア、該磁気コアに巻回した励磁コイル、該励磁コイルに供給する矩形波の励磁電流を発生する発振回路、該発振回路の出力信号変化から前記主回路導体に流れる漏洩電流の測定信号を検出する検出回路、および前記発振回路,検出回路を駆動する電源回路とからなるものにおいて、
前記発振回路,検出回路の駆動電源を短い周期でON/OFFする電源断続制御手段を備えたことを特徴とする漏電遮断器の漏電電流検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の漏電電流検出装置において、前記電源断続制御手段を前記電源回路の出力側に接続したスイッチング素子と、該スイッチング素子を断続的にON/OFF制御する制御回路とで構成し、その電源断続周期を漏電遮断器の動作仕様に対応して設定したことを特徴とする漏電遮断器の漏電電流検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏電遮断器に搭載して配電路に生じた漏電を検出する漏電遮断器の漏電電流検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、交流商用電源のほか、太陽光発電システム,無停電電源システムなどの多様な配電系統に適用する漏電遮断器として、交流から直流まで全領域の漏電電流に対応可能な保護機能を備えたTypeB(IEC規格)に準拠する漏電遮断器の製品開発が進められている。
【0003】
また、前記TypeBの漏電遮断器に適用する漏電電流検出装置としてフラックスゲート式磁気センサーを用いた漏電電流検出装置が知られている。その一例として漏電遮断器の主回路導体を囲む磁気コア、該磁気コアに巻回した励磁コイル、該励磁コイルに供給する矩形波の励磁電流を発生する発振回路、該発振回路の出力信号変化から前記主回路導体に流れる直流,交流成分の漏洩電流測定信号を検出する検出回路とからなるフラックスゲート形の漏電電流検出装置(特許文献1参照)、およびこの漏電電流検出装置を搭載して配電系統に生じた純直流から高周波電流までの漏電保護を行うようにした漏電遮断器(特許文献2)が知られている。
【0004】
なお、前記特許文献1,特許文献2に開示の漏電電流検出装置,漏電遮断器についての回路構成,動作については、各特許文献に詳しく述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−2723号公報
【特許文献2】特開2013−38047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、漏電遮断器に搭載した前記漏電電流検出装置(特許文献1,2)は、その運用面で次記のような課題がある。すなわち、先記のフラックスゲート形磁気センサーを採用して保護対象となる配電系統で不測に発生する漏電の検出,保護を行う特許文献1,2の漏電検出装置では、磁気コアの励磁コイルに供給する励磁電流を発生する発振回路,および検出回路に対して、配電系統の通電中はその駆動電源(漏電遮断器に搭載してその主回路導体の相間電圧を直流に整流した回路駆動用の制御電源)を継続的に供給して配電系統で不測に発生する漏電を検出するようにしている。
【0007】
このために、従来の交流用漏電遮断器(TypeA(IEC規格))に適用するZCT(零相変流器)のように、漏電発生のない平時には電源供給を必要とない漏電検出方式と比べて、漏電検出回路の駆動に要する消費電力量が増加する。
【0008】
この点について、発明者等が試算したところによれば、通常のZCTを搭載してその二次側出力から配電系統(交流)に発生した漏電を検出する方式の検出回路と較べて、フラックスゲート形の漏電検出装置を採用した検出方式では、磁気コアの励磁コイルに供給する励磁電流分を含めてその漏電検出装置の消費電流は一桁大きくなって消費電力量はおよそ10倍まで増大する。しかも、大規模な太陽光発電設備などでは、その設備内に設置する漏電遮断器の台数も多くなることを考慮すると、トータル的に設備内の漏電遮断器で消費する電力量もかなり大きくなることから、個々の漏電遮断器についても所定の漏電保護機能を維持しつつ、その漏電検出回路に給電する消費電力量をできるだけ低く抑えて節電化を図ることが望まれる。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、その目的は漏電遮断器の漏電保護機能を維持しつつ、その漏電検出回路で消費する電力量を低減して節電,省電力化が図れるように改良した漏電遮断器の漏電電流検出回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明によれば、漏電遮断器に搭載して配電系統に発生する交流から直流まで全領域の漏電電流を検出する漏電電流検出装置が、漏電遮断器の主回路導体を囲む磁気コア、該磁気コアに巻回した励磁コイル、該励磁コイルに供給する矩形波の励磁電流を発生する発振回路、該発振回路の出力信号変化から前記主回路導体に流れる漏洩電流の測定信号を検出する検出回路、および前記発振回路,検出回路を駆動する電源回路とからなるものにおいて、
前記発振回路,検出回路の駆動電源を短い周期でON/OFFする電源断続制御手段を備える(請求項1)。
【0011】
そして、前記の電源断続制御手段は、前記電源回路の出力側に接続したスイッチング素子と、該スイッチング素子を断続的にON/OFF制御する制御回路とで構成し、その電源断続周期を漏電遮断器の動作仕様に対応して設定するものとする(請求項2)。
【発明の効果】
【0012】
上記構成の漏電検出装置によれば、配電系統の通電中は常に漏電検出装置における磁気コアの励磁コイルに供給する励磁電流を発生する発振回路,検出回路に駆動電源を継続的に供給していた従来方式と比べて、前記発振回路,検出回路で消費する電力量を低減して節電,省電力化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例による漏電検出装置の模式回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図1に示す実施例に基づいて説明する。
【0015】
図1に示す模式回路図において、1は漏電遮断器の主回路導体、2は主回路導体1を囲むリング状の磁気コア、3は磁気コア2に巻回した励磁コイルであり、磁気コア2には主回路の往路,復路に対応する導体1a,1bが挿通している。なお、前記磁気コア2は高透磁率材料の非線形性磁気特性を有している。4は前記励磁コイル3に供給する矩形波の励磁電流を発生する発振回路、5は発振回路4の出力信号変化から前記主回路導体1に流れる漏洩電流の測定信号を検出する検出回路であり、発振回路4,検出回路5の詳細は先記した特許文献1に詳しく述べられている。
【0016】
また、6は前記発振回路4,検出回路5に駆動電源を供給する電源回路(例えば、漏電遮断器に搭載して前記主回路導体1の相間電圧(交流)を降圧して直流に整流した制御電源)であり、該電源回路6の出力を短い周期でON/OFFする電源断続制御手段として、電源回路6と発振回路4,検出回路5との間の給電路に接続したスイッチング素子7(例えば、MOSFET)、および該スイッチング素子7を断続的にON/OFF制御する制御回路(断続パルス発生回路)8を追加して漏電検出装置を構成している。
【0017】
上記の回路構成になる漏電検出装置を搭載した漏電遮断器を配電系統に接続して通電すると、主回路導体1に電流が流れるとともに、電源回路6からスイッチング素子7を通じて発振回路4,検出回路5に駆動電源が供給される。ここで、予め制御回路8でスイッチング素子7を断続的にON/OFFする断続周期を設定しておくことにより、発振回路4,検出回路5に供給される駆動電源が制御回路8で設定した断続周期に同期してON/OFF制御されることになる。
【0018】
この場合に、前記の電源断続周期は、漏電遮断器の選定(高速形,時延形)に合わせて指定したトリップ動作時間に対応して、その動作時間よりも短い周期(例えば、動作時間の1/2〜1/10、ON/OFFデューティ比は1)に設定しておけば、スイッチング素子7がOFFとなる駆動電源のデッドタイムで発振回路4,検出回路5への給電が停止する。これにより、駆動電源を継続的に供給している従来の漏電検出方式と比べて、発振回路4,検出回路5で消費する電力量がほぼ半減することになる。
【0019】
また、配電系統に適用する漏電遮断器の選定に際して、高速形では漏電検出から遮断器をトリップさせるまでの動作時間は0.1sec、時延形では動作時間が0.3〜0.8secと規定されていることから、前記発振回路,検出回路に給電する駆動電源の断続周期を、前記のように動作時間の1/2〜1/10(ON/OFFデューティ比は1)に設定しておけば、配電系統で不測に発生する漏電事故が前記駆動電源のデッドタイム(駆動電源OFF)中に発生した場合でも、漏電遮断器のトリップ動作時間の遅れは極僅少で済む。
【0020】
これにより、実用的には規定の動作特性に殆ど影響を及ぼすことなく漏電遮断器に課せられた漏電保護機能を確保しつつ、配電系統の漏電発生がない平時の給電状態を含めて前記発振回路4,検出回路5で消費する電力量が低減して漏電遮断器の節電,省電力化が図れる。また、特に大規模な太陽光発電設備のように多数台の漏電遮断器を給電系統に接続して使用する場合にはトータル的に大きな節電効果が期待できる。
【0021】
なお、フラックスゲート形の漏電検出回路を装備した漏電遮断器では、漏電電流の演算、閾値との比較などを行うためにマイクロプロセッサーなどを搭載していることから、このマイクロプロセッサーを前記制御回路8に適用すれば、そのクロック信号を基に発振回路4,検出回路5に給電する駆動電源の断続周期の設定,調整を行うことができるので、独立した制御回路(断続パルス発生回路)8の追加、およびこれに伴う消費電流の増加を考慮せずに漏電遮断器の節電化が実現できる。
【符号の説明】
【0022】
1 漏電遮断器の主回路導体
2 磁気コア
3 励磁コイル
4 発振回路
5 検出回路
6 電源回路
7 スイッチング素子
8 制御回路(断続パルス発生回路)
図1