(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6402947
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】面材
(51)【国際特許分類】
E04C 2/26 20060101AFI20181001BHJP
B32B 3/24 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
E04C2/26 T
B32B3/24 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-3659(P2017-3659)
(22)【出願日】2017年1月12日
(65)【公開番号】特開2018-112007(P2018-112007A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2017年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】田畑 治
【審査官】
土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−161596(JP,A)
【文献】
特開平09−328862(JP,A)
【文献】
特開平09−310437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 2/00−2/54
E04B 2/56
E04H 9/02
B32B 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の貫通孔を有する板状で鋼製の多孔材と、
前記多孔材をその厚さ方向の両側から挟むように重ね合わされて、前記多孔材に設けられる一対の板状の被覆材とを備え、
前記多孔材は、前記貫通孔の大きさ、および/または、前記貫通孔の形成される数の異なる複数種の多孔材から選択され、
前記一対の被覆材はそれぞれ、前記多孔材よりも薄く形成されており、
前記多孔材に前記一対の被覆材が設けられることで、前記貫通孔の軸方向両端部の開口が閉塞されて中空部が形成される
ことを特徴とする面材。
【請求項2】
前記多孔材は、パンチングメタルとされる
ことを特徴とする請求項1に記載の面材。
【請求項3】
前記一対の被覆材はそれぞれ合板とされる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の面材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の構造躯体に固定される面材に関するものであり、特に、耐力壁の面材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、耐力壁の面材としては、構造用合板、セメントなどの無機系材料から形成される面材などが用いられている。また、本件特許出願人は先に、下記特許文献1に開示されるように、枠形状に配設された軸組の片面にパンチングメタルである面材がその周縁部において固定具により固定されることで構成される耐力壁を提案している。
【0003】
この先の発明によれば、前述した構成であるので、耐力壁の構造を設けるに際して、軸組の切断および取替、並びに溶接施工を必要とせず、一般の作業者が能率よく耐力壁の組込施工を行うことが可能である。加えて、軸組の切断および取替を要しないことから、産業廃棄物として処理すべき軸組の切断片などが発生せず、産業廃棄物処理コストの低減を図ることができる。さらに、面材がパンチングメタルであるので、施工に際して作業者の負担を軽減し、施工能率の向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−64810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、面材が構造用合板や無機系材料から形成される場合、面材の強度不足もさることながら、建物の変形能力を左右するねばり強さに欠け、地震などの際に脆性的破壊が起こるおそれがある。また、面材が構造用合板や無機系材料から形成される場合、建物の構造躯体に面材を固定する釘の本数により、耐力の大小を調整しているが、この場合、現場施工での釘の本数の打ち間違いが生じ、適切な耐力とすることができないおそれがある。一方、面材がパンチングメタルから形成される場合、面材の強度にさらなる改善が望まれる。
【0006】
本件特許出願人は、より優れた強度の面材について鋭意研究に努めた結果、合板の一方の板面に鋼板を重ね合わせた面材が有効であることを見出した。ところが、合板の一方の板面にのみ鋼板を設けただけでは、地震などの際に、鋼板の局部的な面外座屈が起き、耐力の向上が見込めないおそれがある。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、地震などの際に生じる脆性的破壊および面外座屈を防止することができ、耐力の調整を容易にかつ確実に行うことができる面材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る面材は、多数の貫通孔を有する板状で鋼製の多孔材と、前記多孔材をその厚さ方向の両側から挟むように重ね合わされて、前記多孔材に設けられる一対の板状の被覆材とを備え、
前記多孔材は、前記貫通孔の大きさ、および/または、前記貫通孔の形成される数の異なる複数種の多孔材から選択され、前記一対の被覆材はそれぞれ、前記多孔材よりも薄く形成されており、前記多孔材に前記一対の被覆材が設けられることで、前記貫通孔の軸方向両端部の開口が閉塞されて中空部が形成されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る面材は、前記多孔材は、パンチングメタルとされることを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明に係る面材は、前記一対の被覆材はそれぞれ合板とされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る面材によれば、鋼製の多孔材を有しているので、構造用合板や無機系材料からなる面材と比較して、大きな耐力とねばり強い変形性能とを得ることができる。また、多孔材が一対の被覆材にて挟まれるので、多孔材の面外座屈を防止することができる。さらに、多孔材の貫通孔の大きさ、および/または、形成される貫通孔の数を調整することで、面材自体の強度および剛性を調整することができ、これにより耐力の調整を容易にかつ確実に行うことができる。
【0012】
また、本発明に係る面材によれば、多孔材を容易に製造することができ、これにより面材の製造コストを低減することができる。
【0013】
さらに、本発明に係る面材によれば、被覆材にかかるコストを低減することができ、また、面材の強度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の面材の一実施例の使用状態を示す斜視図である。
【
図3】
図1の面材の横断面図であり、一部を省略して示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の面材の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1から
図3は、本発明の面材の一実施例を示す図であり、
図1は使用状態を示す斜視図、
図2は分解斜視図、
図3は一部を省略した横断面図である。本実施例の面材1は、多数の貫通孔2,2,…を有する板状で鋼製の多孔材3と、多孔材3に設けられる一対の板状の被覆材4,4とを備える。ここでは、面材1は、建物の構造躯体5に固定されるものであり、耐力壁の面材とされる。
【0017】
建物の構造躯体5は、梁6、土台7および複数の柱8,8,…により略矩形枠状に構成される。梁6と土台7とは、上下に離隔して平行に配置され、それぞれ角材から形成される。各柱8は、垂直に配置され、それぞれ角材から形成される。複数の柱8は、互いに左右に離隔して土台7の上面に固定される。その固定された各柱8の上面に梁6が載せ置かれた状態で、各柱8に梁6が固定される。このようにして、構造躯体5は、上下に離隔して配置される梁6と土台7、および左右に離隔して配置される二本の柱8,8により略矩形枠状に構成される。これにより、構造躯体5には、梁6、土台7および二本の柱8,8により囲まれた矩形状の開口部9が形成される。
【0018】
構造躯体5には、面材1が固定される。面材1は、矩形板状とされ、構造躯体5の開口部9よりも大きく形成されている。具体的には、面材1は、上下長さが開口部9の上下長さよりも長く形成されていると共に、左右長さが開口部9の左右長さよりも長く形成されている。前述したように、面材1は、多孔材3と一対の被覆材4,4とを備える。
【0019】
多孔材3は、矩形板状の鋼板とされ、前後方向に貫通して正面視円形状の貫通孔2が複数形成されている。本実施例では、多孔材3は、パンチングメタルとされる。また、各被覆材4は、矩形板状とされ、多孔材3と外形が同一形状に形成されている。本実施例では、各被覆材4は、木製の合板とされ、二枚のラミナ10,10が積層されて形成される。なお、図示例では、各被覆材4は、多孔材3よりも薄く形成されている。
【0020】
一対の被覆材4,4は、多孔材3をその厚さ方向の両側から挟むように重ね合わされて、多孔材3に設けられる。具体的には、一方の被覆材4が多孔材3の前面に重ね合わされて設けられると共に、他方の被覆材4が多孔材3の後面に重ね合わされて設けられる。本実施例では、多孔材3と各被覆材4とは、接着剤により接着される。このようにして、多孔材3と一対の被覆材4,4とを有する面材1が形成される。
【0021】
多孔材3に一対の被覆材4,4が設けられることで、多孔材3に形成された各貫通孔2の軸方向両端部の開口が閉塞される。具体的には、各貫通孔2の前側の開口が一方の被覆材4により閉塞されると共に、各貫通孔2の後側の開口が他方の被覆材4により閉塞される。これにより、
図3に示されるように、面材1の内部に中空部11が形成される。すなわち、面材1は、内部に多数の中空部11,11,…を有する板材とされる。
【0022】
次に、面材1の構造躯体5への固定について説明する。本実施例では、面材1は、構造躯体5に釘12で固定される。
図1に示されるように、面材1は、その後面が構造躯体5の前面に重ね合わされた状態で、面材1を介して構造躯体5に複数の釘12,12,…が打ち込まれることで、構造躯体5に固定される。
【0023】
前述したように面材1が構造躯体5の開口部9よりも大きく形成されているので、面材1の上縁部、下縁部、左縁部および右縁部をそれぞれ、梁6、土台7、左側の柱8および右側の柱8に当接させることができる。従って、構造躯体5の開口部9を前方から覆うようにして、面材1の周縁部の後面を構造躯体5の前面に重ね合わせ、その状態において面材1の周縁部を介して構造躯体5に複数の釘12を打ち込むことができる。なお、複数の釘12は、互いに所定間隔を空けて、面材1を介して構造躯体5に打ち込まれる。このようにして面材1が構造躯体5に固定されることで、耐力壁が構成される。
【0024】
本実施例の面材1の場合、多孔材3が一対の被覆材4,4で挟まれる構成であるので、地震などによって生じる力に対する十分な耐力と、ねばり強い変形性能を得ることができる。従って、面材1の脆性的破壊を防止することができる。また、本実施例の面材1の場合、多孔材3が一対の被覆材4,4で挟まれる構成であるので、地震時などにおける多孔材3の面外座屈を防止することができる。
【0025】
また、本実施例の面材1の場合、貫通孔2の大きさ、および/または、貫通孔2の形成される数の異なる複数種の多孔材3から選択された多孔材3を用いて、面材1を形成することができる。従って、選択される多孔材3によって面材1自体の強度および剛性を調整することができ、打ち付ける釘の数で耐力を調整する場合と比較して、耐力の調整を容易にかつ確実に行うことができる。
【0026】
また、本実施例の面材1の場合、多数の貫通孔2が形成された多孔材3を有するので、面材1の重量を軽減することができる。面材1の重量を軽減することで、製造コストを低減することができると共に、現場で容易に施工することができる。また、本実施例の面材1の場合、多孔材3がパンチングメタルであるので、従来の部材を用いることができ、面材1の製造コストを低減することができる。さらに、本実施例の面材1の場合、各被覆材4が合板であるので、面材1の製造コストを低減することができると共に、面材1の強度をさらに向上させることができる。
【0027】
このような本実施例の面材1を用いた建物は、構造用合板、無機系材料からなる面材または鋼板のみからなる面材を用いた場合と比較して、建物の構造安全性の向上を図ることができる。また、耐力面材部を減らすことができるので、建物に大きな開口や空間を設けることができる。
【0028】
本発明の面材は、前記実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。たとえば、前記実施例では、多孔材3は、パンチングメタルとされたが、これに限定されるものではなく、多数の貫通孔2を有する板材であればよい。また、前記実施例では、各被覆材4は、二枚のラミナ10,10が積層されて構成されたが、これに限定されるものではなく、一枚の板材から構成されてもよいし、三枚以上のラミナ10が積層されて構成されたものでもよい。さらに、前記実施例では、面材1の構造躯体5への固定が釘12でなされたが、面材1を介して構造躯体5に打ち込まれる固定具であればよく、たとえば、ビスであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、耐力壁の面材として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0030】
1 面材
2 貫通孔
3 多孔材
4 被覆材
11 中空部