(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物が、多官能脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート化合物および多官能脂環式ウレタン(メタ)アクリレート化合物からなる群の中から選ばれる少なくとも一種である、請求項1〜3のいずれかに記載の紫外線硬化性樹脂層。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の
紫外線硬化性樹脂層は
、紫外線吸収剤を含有する紫外線硬化性樹脂組成物を硬化せしめた紫外線硬化性樹脂層
である。そして、スチールウール摩耗性試験後の紫外線硬化性樹脂層表面における水接触角が95度以上であることを特徴とする。
【0012】
ここで、スチールウール摩耗性試験とは、紫外線硬化性樹脂層表面をスチールウール#0000を使用し、荷重250g/cm
2、移動速度60mm/秒、往復移動距離120mmで1000往復させる試験である。以下の説明において、スチールウール摩耗試験とは、断りのない限り、上記条件の試験を指す。
【0013】
スチールウール摩耗性試験後の紫外線硬化性樹脂層表面の水接触角が95度以上であるとは、即ち、タッチパネルの長期間使用に十分に耐え得る防汚耐久性を有することを意味する。
【0014】
本発明の
紫外線硬化性樹脂層を備えたタッチパネル用保護フィルム
(以下、「保護フィルム」と略記する)は、紫外線吸収剤を含有する紫外線硬化性樹脂組成物を硬化せしめた紫外線硬化性樹脂層を備えており、耐候性の向上が図られる。ここで、耐候性とは、保護フィルムの紫外線照射後の黄変が小さいこと、および紫外線照射後の紫外線硬化性樹脂層の密着性が良好であることを意味する。
【0015】
本発明において、スチールウール摩耗性試験後の紫外線硬化性樹脂層表面における水接触角は、更に98度以上であることが好ましく、100度以上であることがより好ましい。
【0016】
スチールウール摩耗性試験後の紫外線硬化性樹脂層表面における水接触角を95度以上とするためには、同試験前の紫外線硬化性樹脂層表面の水接触角は100度以上であることが好ましく、103度以上であることがより好ましく、105度以上であることが特に好ましい。
【0017】
紫外線硬化性樹脂層表面の水接触角が95度以上であれば、防汚性(例えば指紋拭き取り性)は良好であり、水接触角が100度以上で更に防汚性がよくなる。
【0018】
紫外線硬化性樹脂層表面の水接触角が高いほど防汚性(指紋の付着防止や指紋の拭き取り性)は良好であるが、現実的な上限は140度程度である。
【0019】
本発明の
紫外線硬化性樹脂層を備えた保護フィルムは耐擦傷性が良好であることが好ましい。つまり、本発明の
紫外線硬化性樹脂層を備えた保護フィルムは、スチールウール耐摩耗性試験後の紫外線硬化性樹脂層表面における傷の発生が少ないことが好ましい。具体的には、スチールウール耐摩耗性試験後の紫外線硬化性樹脂層表面に発生した傷の本数は、10本以下であることが好ましい。
【0020】
[紫外線硬化性樹脂層]
本発明の紫外線硬化性樹脂層は、紫外線吸収剤を含有する紫外線硬化性樹脂組成物に紫外線を照射することにより硬化せしめた層である。以下、説明の便宜上、「紫外線吸収剤を含有する紫外線硬化性樹脂層」あるいは「紫外線硬化性樹脂層が紫外線吸収剤を含有する」などと表現することがある。
【0021】
紫外線硬化性樹脂層は、紫外線吸収剤を含有し、かつ紫外線硬化性樹脂層表面のスチールウール摩耗性試験において、紫外線硬化性樹脂層表面の水接触角が95度以上であることが重要である。
【0022】
保護フィルムは、耐擦傷性が良好であることが好ましい。そのため、保護フィルムは、基材フィルム上に紫外線硬化性樹脂層を備えていることが好ましい。しかし、紫外線硬化性樹脂層が紫外線吸収剤を含有すると、防汚耐久性が低下する傾向にある。つまり、紫外線硬化性樹脂層が紫外線吸収剤を含有すると、スチールウール摩耗性試験後の水接触角が低下する傾向にある。
【0023】
これは、紫外線吸収剤を含有する紫外線硬化性樹脂組成物に紫外線を照射して硬化せしめるとき、照射された紫外線の一部を紫外線吸収剤が吸収するために紫外線硬化性樹脂組成物の硬化が十分に行われず、紫外線硬化性樹脂層の防汚耐久性が低下すると推測される。
【0024】
従って、保護フィルムの耐候性を向上させるために、紫外線硬化性樹脂層に紫外線吸収剤を含有させた構成において、良好な防汚耐久性を有する保護フィルムは未だ提案されていない現状に鑑みて、耐候性および防汚耐久性を共に改善した本発明の保護フィルムは極めて有益であるといえる。
【0025】
紫外線吸収剤を含有する紫外線硬化性樹脂組成物を硬化せしめた紫外線硬化性樹脂層の防汚耐久性を向上させるには、紫外線硬化性樹脂組成物に、一分子中にフッ素原子とエチレン性不飽和基を有する重合性フッ素化合物(以下、「重合性フッ素化合物」と略記する)を含有させることが好ましい。また、多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含有させることも好ましい。より好ましくは、紫外線硬化性樹脂組成物に、重合性フッ素化合物と多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物の両方を含有させることである。
【0026】
重合性フッ素化合物は、一分子中にフッ素原子とエチレン性不飽和基を有する。重合性フッ素化合物の一分子中におけるフッ素原子の数は、防汚性を高めるという観点から、3個以上が好ましく、4個以上がより好ましく、5個以上が更に好ましく、6個以上が特に好ましい。フッ素原子の数が多くなりすぎると、紫外線硬化性樹脂層の塗布性や密着性が低下することがあるため、上限のフッ素原子数は25個以下が好ましく、20個以下がより好ましく、17個以下が特に好ましい。
【0027】
重合性フッ素化合物の一分子中におけるエチレン性不飽和基の数は、1〜3個が好ましく、1〜2個が特に好ましい。非重合性のフッ素化合物(一分子中におけるエチレン性不飽和基の数が0個であるフッ素化合物)では、十分な防汚耐久性が得られない。一方、一分子中におけるエチレン性不飽和基の数が3個より多くなると、紫外線硬化性樹脂層における相溶性が悪くなることがある。
【0028】
上記エチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が挙げられる。これらの中でも、アクリロイルオキシ基およびメタクリロイルオキシ基が好ましい。
【0029】
重合性フッ素化合物として、例えば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチルヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘキシルヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロデシルエチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、ジビニルドデカフルオロヘキサン、ジビニルヘキサデカフルオロオクタン等が挙げられる。
【0030】
本発明において「・・・(メタ)アクリレート」とは、「・・・アクリレート」と「・・・メタクリレート」の総称である。
【0031】
重合性フッ素系化合物としては、市販されているものを用いることができる。例えば、ビスコートシリーズ(大阪有機化学工業(株)製)、SUA1900Lシリーズ(新中村科学(株)製)、UT−3971(日本合成化学工業(株)製)、メガファックRSシリーズおよびディフェンサTF3000シリーズ(DIC(株)製)、ライトプロコートAFC3000(共栄社化学(株)製)、オプツールDAC−HP(ダイキン工業(株)製)、KSN5300(信越化学(株)製)、UVHCシリーズ(GE東芝シリコーン(株)製)などが挙げられる。
【0032】
多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物とは、一分子中に2個以上の官能基を有するウレタン化合物(モノマーまたはオリゴマー)である。ここで、官能基とは、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を指す。
【0033】
紫外線硬化性樹脂層の耐擦傷性および防汚耐久性を向上させるという観点から、多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、4官能以上の化合物が好ましく、6官能以上の化合物がより好ましく、8官能以上の化合物が特に好ましい。上限は30官能程度である。
【0034】
多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、例えば、ポリイソシアネート化合物と水酸基含有(メタ)アクリレートとのウレタン化反応によって得ることができる。この反応は、4官能以上の多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物を得るのに適している。また、ポリイソシアネート化合物とポリオールとを反応させて末端イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを合成し、このウレタンプレポリマーに水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて合成することもできる。
【0035】
ポリイソシアネート化合物としては、鎖状飽和炭化水素(脂肪族)、環状飽和炭化水素(脂環式)、あるいは芳香族炭化水素(芳香族)で構成されるポリイソシアネート化合物を用いることができる。かかるポリイソシアネート化合物として以下の化合物が挙げられるが、本発明はこれらの化合物に限定されない。
【0036】
鎖状飽和炭化水素(脂肪族)ポリイソシアネート化合物として、例えばテトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等、
環状飽和炭化水素(脂環式)ポリイソシアネート化合物として、例えばイソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、水添トルエンジイソシアネート等、
芳香族ポリイソシアネート化合物として、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアネート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等、
を挙げることができる。これらのポリイソシアネート化合物は単独で用いても2種以上混合してもよい。
【0037】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの中でも、多官能(2官能以上)の水酸基含有(メタ)アクリレートが好ましい。
【0038】
多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、市販品の中から選択して使用することができる。市販品としては、例えば、2官能ウレタン(メタ)アクリレートとして日本化薬社製の「UX−2201」、「UX−8101」、共栄社化学社製の「UF−8001」、「UF−8003」、「UX−6101」、「UX−8101」、ダイセル・サイテック社製の「Ebecryl244」、「Ebecryl284」、「Ebecryl2002」、「Ebecryl4835」、「Ebecryl4883」、「Ebecryl8807」、「Ebecryl6700」)、3官能ウレタン(メタ)アクリレートとして、ダイセル・サイテック社製の「Ebecryl254」、「Ebecryl264」、「Ebecryl265」)、4官能ウレタン(メタ)アクリレートとしてダイセル・サイテック社製の「Ebecryl8210」、6官能ウレタン(メタ)アクリレートとしてダイセル・サイテック社製の「Ebecryl1290k」、「Ebecryl5129」、「Ebecryl220」、「KRM8200」、「Ebecryl1290N」)、9官能ウレタン(メタ)アクリレートとしてダイセル・サイテック社製の「KRM7804」、根上工業(株)製の「UM−901M」、10官能ウレタン(メタ)アクリレートとしてダイセル・サイテック社製の「KRM8452」、「KRM8509」)、15官能ウレタン(メタ)アクリレートとしてダイセル・サイテック社製の「KRM8655」等が挙げられる。
【0039】
多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物の中でも、多官能芳香族ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、耐候性(黄変等の着色防止)の点でやや劣っており、従って多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、多官能芳香族ウレタン(メタ)アクリレート化合物以外の化合物、即ち、多官能脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート化合物および多官能脂環式ウレタン(メタ)アクリレート化合物からなる群の中から選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0040】
つまり、紫外線吸収剤と、多官能脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート化合物および多官能脂環式ウレタン(メタ)アクリレート化合物からなる群の中から選ばれる少なくとも一種の多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物を組み合わせて用いることにより、耐擦傷を低下させずに良好な耐候性が得られる。更に、上記した重合性フッ素化合物を併用することにより、防汚耐久性が向上する。
【0041】
多官能脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、ポリイソシアネート化合物として鎖状飽和炭化水素(脂肪族)で構成されるポリイソシアネート化合物を用いることによって合成することができる。また、多官能脂環式ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、ポリイソシアネート化合物として環状飽和炭化水素(脂環式)で構成されるポリイソシアネート化合物を用いることによって合成することができる。
【0042】
保護フィルムの耐擦傷性を向上させると言う観点から、紫外線硬化性樹脂組成物は、更に、多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物と、該多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物以外の多官能(メタ)アクリレート化合物(OA)とを併せて含有することが好ましい。
【0043】
かかる多官能(メタ)アクリレート化合物(OA)としては、3官能以上の化合物が好ましく、4官能以上の化合物がより好ましく、5官能以上の化合物が特に好ましい。
【0044】
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクロン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0045】
紫外線硬化性樹脂組成物における重合性フッ素化合物の含有量は、紫外線硬化性樹脂組成物の固形分総量100質量%に対して0.01〜10質量%の範囲が好ましく、0.1〜7質量%の範囲がより好ましく、0.5〜5質量%の範囲が特に好ましい。重合性フッ素化合物の含有量が0.01質量%未満では、十分な防汚耐久性が得られないことがあり、一方、10質量%を超えると耐擦傷性が低下することがある。本発明において、紫外線硬化性樹脂組成物の固形分総量は、溶剤を除く不揮発成分の合計量を意味する。
【0046】
紫外線硬化性樹脂組成物における多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物の含有量は、紫外線硬化性樹脂組成物の固形分総量100質量%に対して20〜80質量%の範囲が好ましく、30〜70質量%の範囲がより好ましく、40〜60質量%の範囲が特に好ましい。多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物の含有量が20質量%未満では、十分な耐擦傷性が得られないことがあり、一方、80質量%を超えると耐候性(黄変などの着色防止)が低下することがある。
【0047】
紫外線硬化性樹脂組成物における多官能(メタ)アクリレート化合物(OA)の含有量は、紫外線硬化性樹脂組成物の固形分総量100質量%に対して10〜70質量%の範囲が好ましく、15〜65質量%の範囲がより好ましく、20〜60質量%の範囲が特に好ましい。多官能(メタ)アクリレート化合物(OA)の含有量が10質量%未満では、十分な耐擦傷性が得られないことがあり、一方、70質量%を超えると紫外線硬化性樹脂層にクッラクが入ることがあり、また保護フィルムのカール性が悪化することがある。
【0048】
紫外線硬化性樹脂組成物に含有させることができる紫外線吸収剤としては、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ヒドロキシベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤の中でも、良好な耐候性が得られると言う観点から、トリアジン系紫外線吸収剤およびベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましく、特にトリアジン系紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
【0049】
更に、トリアジン系紫外線吸収剤の中でも、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が好ましく用いられる。ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤は、防汚耐久性を低下させる傾向が小さく、また紫外線硬化性樹脂層の密着性を低下させる傾向が小さいことから好ましい。
【0050】
以下、本発明に用いることができる紫外線吸収剤を例示するが、本発明はこれらに限定されない。
【0051】
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブチロキシフェニル)−6−(2,4−ビス−ブチロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス((4−(2−エチル−ヘキシルオキシ)−2−ヒドロキシ)−フェニル))−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス((4−(3−(2−プロピルオキシ)−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ)−2−ヒドロキシ)−フェニル)−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル−6−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−プロピルオキシフェニル)−6−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(2−ヒドロキシ−4−(3’−(メトキシヘプタエトキシ)−2’−ヒドロキシプロポキシ)−フェニル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(2−ヒドロキシ−4−((メトキシトリエトキシカルボニル)−2−エトキシ)−フェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(4’−メトキシフェニル)−4,6−ビス(2’−ヒドロキシ−4’−n−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−〔2'−ヒドロキシ−5'−(ヒドロキシメチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2'−ヒドロキシ−5'−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2'−ヒドロキシ−5'−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2'−ヒドロキシ−3'−メチル−5'−(ヒドロキシメチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2'−ヒドロキシ−3'−メチル−5'−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2'−ヒドロキシ−3'−メチル−5'−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5'−(ヒドロキシメチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5'−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5'−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5'−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2'−ヒドロキシ−3'−t−オクチル−5'−(ヒドロキシメチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2'−ヒドロキシ−3'−t−オクチル−5'−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2'−ヒドロキシ−3'−t−オクチル−5'−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール等、あるいは2,2'−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(ヒドロキシメチル)フェノール〕、2,2’;−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール〕、2,2'−メチレンビス〔6−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール〕、2,2'−メチレンビス〔6−(5−ブロモ−2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール〕、2,2'−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(3−ヒドロキシプロピル)フェノール〕、2,2'−メチレンビス〔6−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(3−ヒドロキシプロピル)フェノール〕、2,2'−メチレンビス〔6−(5−ブロモ−2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(3−ヒドロキシプロピル)フェノール〕、2,2'−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(4−ヒドロキシブチル)フェノール〕、2,2'−メチレンビス〔6−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(4−ヒドロキシブチル)フェノール〕、2,2'−メチレンビス〔6−(5−ブロモ−2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(4−ヒドロキシブチル)フェノール〕、3,3−{2,2'−ビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−1−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕}プロパン、2,2−{2,2'−ビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−1−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕}ブタン、2,2'−オキシビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール〕、2,2'−ビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール〕スルフィド、2,2'−ビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール〕スルホキシド、2,2'−ビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール〕スルホン、2,2'−ビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール〕アミン等が挙げられる。
【0052】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジ(2−ヒドロキシエチル)ベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメトキシ−5,5'−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメトキシ−5,5'−ジ(2−ヒドロキシエチル)ベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−3,3'−ジ(ヒドロキシメチル)−5,5'−ジメトキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−3,3'−ジ(2−ヒドロキシエチル)−5,5'−ジメトキシベンゾフェノン、2,2−ジヒドロキシ−4,4−ジメトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0053】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3'−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3'−ジフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0054】
ヒドロキシベンゾエート系紫外線吸収剤としては、フェニルサルシレート、4−t−ブチルフェニルサルシレート、2,5−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸n−ヘキサデシルエステル、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
【0055】
紫外線吸収剤の添加量は、紫外線硬化性樹脂組成物の固形分総量100質量%に対して0.1〜10質量%の範囲が好ましく、0.5〜8質量%の範囲がより好ましく、1〜5質量%の範囲が特に好ましい。紫外線吸収剤の添加量が0.1質量%未満では、十分な耐候性が得られないことがあり、一方、10質量%を越えると耐擦傷性や防汚耐久性が低下することがある。
【0056】
紫外線硬化性樹脂組成物は、更に光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、o−ベンゾイルメチルベンゾエート、アセトフェノン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、エチルアントラキノン、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1,ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、メチルベンジルホルメートなどが挙げられる。
【0057】
また、光重合開始剤は一般に市販されており、それらを使用することができる。例えば、
チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製のイルガキュア907、イルガキュア379、イルガキュア819、イルガキュア127、イルガキュア184、イルガキュア500、イルガキュア754、イルガキュア250、イルガキュア1800、イルガキュア1870、イルガキュアOXE01、DAROCUR TPO、DAROCUR1173等、日本シイベルヘグナー(株)製のSpeedcureMBB、SpeedcurePBZ、SpeedcureITX、SpeedcureCTX、SpeedcureEDB、Esacure ONE、Esacure KIP150、Esacure KTO46等、日本化薬(株)製のKAYACUREDETX−S、KAYACURE CTX、KAYACURE BMS、KAYACURE DMBI等が挙げられる。
【0058】
光重合開始剤の含有量は、紫外線硬化性樹脂組成物の固形分総量100質量%に対して0.1〜10質量%の範囲が適当であり、0.5〜8質量%の範囲が好ましい。
【0059】
紫外線硬化性樹脂層(紫外線硬化性樹脂組成物)には、更に、酸化防止剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤等を含有させることができる。
【0060】
紫外線硬化性樹脂層(紫外線硬化性樹脂組成物)は、平均粒子径が2μm以上の粒子を実質的に含有しないことが好ましく、特に平均粒子径が1μm以上の粒子を実質的に含有しないことが好ましい。このような平均粒子径が比較的大きい粒子が紫外線硬化性樹脂層中に存在すると、紫外線硬化性樹脂層表面に凹凸が形成されることがあり、耐擦傷性や防汚耐久性が低下することがある。
【0061】
紫外線硬化性樹脂層が、平均粒子径が2μm以上の粒子あるいは平均粒子径が1μm以上の粒子を実質的に含有しないとは、これらの粒子の含有量が紫外線硬化性樹脂層の固形分総量100質量%に対して1.0質量%未満を意味する。これらの粒子の含有量は0.5質量%未満であることが好ましく、0.1質量%未満であることがより好ましく、全く含有しないことが最も好ましい。
【0062】
紫外線硬化性樹脂層は、上述した紫外線硬化性樹脂組成物をウェットコーティング法により塗布し、必要に応じて乾燥した後、紫外線を照射して硬化することにより形成されることが好ましい。
【0063】
ウェットコーティング法としては、例えばリバースコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、ダイコート法、スピンコート法、エクストルージョンコート法等の塗布方法を用いることができる。
【0064】
紫外線を照射するための光源としては、特に限定されないが、例えば、紫外線蛍光灯、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。また、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、エキシマランプ又はシンクロトロン放射光等も用いることができる。このうち、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプを好ましく用いられる。
【0065】
紫外線の照射光量は、50mJ/cm
2以上が好ましく、100mJ/cm
2以上がより好ましく、特に150mJ/cm
2以上が好ましい。上限は2000mJ/cm
2以下が好ましく、1000mJ/cm
2以下がより好ましい。
【0066】
また、紫外線を照射するときに、低酸素濃度下の雰囲気下、例えば、酸素濃度が500ppm以下の雰囲気下で照射を行なうと、効率よく硬化させることができるので好ましい。
【0067】
紫外線硬化性樹脂層の厚みは、3〜8μmの範囲が好ましく、4〜7μmの範囲がより好ましい。紫外線硬化性樹脂層の厚みが3μm未満となると、良好な耐擦傷性および良好な防汚耐久性が得られないことがある。一方、紫外線硬化性樹脂層の厚みが8μmを越えると保護フィルムのカール性が悪化したり、紫外線硬化性樹脂層にクラックが入るなどの不都合が生じることがある。
【0068】
また、紫外線硬化性樹脂層を形成するための紫外線硬化性樹脂組成物が、多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含有しない場合、上記のカールとクラックの問題が起こりやすくなり、更に紫外線硬化性樹脂層の厚みが8μmを超えるとこれらの問題が助長されることがある。
【0069】
[基材フィルム]
本発明における基材フィルムの材料は、特に限定される物ではないが、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなど)、ポリメチルメタクリレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、トリアセチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、金属イオン架橋エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリウレタン、セロファン等が挙げられる。好ましくは、熱、溶剤、折り曲げ等の加工時の負荷に対する耐性が高く、透明性が特に高い点で、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等が挙げられ、より好ましくは、加工性に優れている点でポリエチレンテレフタレートが使用される。
【0070】
本発明における基材フィルムの厚みは、25〜300μmの範囲が好ましく、50〜25μmの範囲がより好ましく、75〜200μmの範囲が特に好ましい。
【0071】
基材フィルムは、少なくとも紫外線硬化性樹脂層を積層する面に、熱硬化性樹脂層が設けられていることが好ましい。基材フィルムとして、特にポリエチレンテレフタレートフィルムを用いる場合は、ポリエチレンテレフタレートフィルムの少なくとも紫外線硬化性樹脂層が積層される面に熱硬化性樹脂層が設けられていることが好ましい。
【0072】
[熱硬化性樹脂層]
基材フィルムは、少なくとも紫外線硬化性樹脂層を積層する面に熱硬化性樹脂層が設けられていることが好ましい。基材フィルムとして、特にポリエチレンテレフタレートフィルムを用いる場合は、ポリエチレンテレフタレートフィルムの少なくとも紫外線硬化性樹脂層が積層される面に熱硬化性樹脂層が設けられていることが好ましい。
【0073】
基材フィルム上に、紫外線吸収剤とフッ素化合物を含有する紫外線硬化性樹脂組成物を硬化せしめた紫外線硬化性樹脂層を積層した場合、基材フィルムと紫外線硬化性樹脂層との密着性が低下しやすくなる。特に、基材フィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた場合に密着性低下が起こりやすくなる。
【0074】
基材フィルムと紫外線硬化性樹脂層との間に熱硬化性樹脂層を介在させることにより、基材フィルムと紫外線硬化性樹脂層との密着性が高められる。特に、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に熱硬化性樹脂層を介して紫外線硬化性樹脂層を積層することにより、高い密着性が得られる。
【0075】
熱硬化性樹脂層の好ましい一つの態様として、少なくとも樹脂と架橋剤を含有する熱硬化性樹脂組成物を基材フィルム上に塗布し、加熱することにより形成された層を挙げることができる。
【0076】
樹脂としては、紫外線硬化性樹脂層の密着性を高めるという観点から、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂およびポリウレタン樹脂からなる群の中から選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。
【0077】
熱硬化性樹脂層における樹脂の含有量は、熱硬化性樹脂層の固形分総量100質量%に対して60質量%以が好ましく、70質量%以上がより好ましく、特に80質量%以上が好ましい。上限は、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。
【0078】
基材フィルムと紫外線硬化性樹脂層との更に密着性を高めるという観点から、熱硬化性樹脂層は、樹脂としてアクリル樹脂およびポリウレタン樹脂からなる群の中から選ばれる少なくとも一種を含有することが特に好ましい。この場合、アクリル樹脂およびポリウレタン樹脂からなる群の中から選ばれる少なくとも一種の樹脂の含有量は、熱硬化性樹脂層における樹脂総量100質量%に対して10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。上限は100質量%である。
【0079】
アクリル樹脂およびポリウレタン樹脂からなる群の中から選ばれる少なくとも一種の樹脂と他の樹脂を併用することができる。この場合の他の樹脂としてはポリエステル樹脂が好ましい。
【0080】
架橋剤としては、例えばメラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メチロール化あるいはアルキロール化した尿素系架橋剤、アクリルアミド系架橋剤、ポリアミド系樹脂、アミドエポキシ化合物、各種シランカップリング剤、各種チタネート系カップリング剤などが挙げられる。これらの中でも、紫外線硬化性樹脂層の密着性を高めるという観点から、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤が好ましく、特にメラミン系架橋剤が好ましい。
【0081】
メラミン系架橋剤としては、例えばイミノ基型メチル化メラミン樹脂、メチロール基型メラミン樹脂、メチロール基型メチル化メラミン樹脂、完全アルキル型メチル化メラミン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、イミノ基型メラミン樹脂、メチロール化メラミン樹脂が好ましく用いられる。
【0082】
熱硬化性樹脂層における架橋剤の含有量は、熱硬化性樹脂層の固形分総量100質量%に対して0.5〜40質量%の範囲が好ましく、1〜30質量%の範囲がより好ましく、特に2〜20質量%の範囲が好ましい。
【0083】
熱硬化性樹脂層の好ましい他の態様として、少なくとも自己架橋型樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物を基材フィルム上に塗布し、加熱することにより形成された層を挙げることができる。自己架橋型樹脂としては、自己架橋型ポリウレタン樹脂が好ましく用いられる。この熱硬化性樹脂層は、樹脂として自己架橋型ポリウレタン樹脂とポリエステル樹脂(自己架橋型ではないポリエステル樹脂)を組み合わせて含有することが好ましい。
【0084】
自己架橋型ポリウレタン樹脂とポリエステル樹脂(自己架橋型ではないポリエステル樹脂)との混合比率(質量比)は、1:9〜9:1の範囲が好ましく、2:8〜8:2の範囲がより好ましい。
【0085】
熱硬化性樹脂層は、保護フィルムの製造工程における適度な滑り性や巻き取り性を確保するという観点から、粒子を含有することが好ましい。かかる粒子としては特に限定されないが、シリカ粒子、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、ゼオライト粒子などの無機粒子や、アクリル粒子、シリコーン粒子、ポリイミド粒子、テフロン(登録商標)粒子、架橋ポリエステル粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋重合体粒子、コアシェル粒子などの有機粒子が挙げられる。これらの中でもシリカ粒子が好ましく、特にコロイダルシリカが好ましい。
【0086】
熱硬化性樹脂層に含有される粒子は、その平均粒子径が熱硬化性樹脂層の厚みより大きいことが好ましい。具体的には、平均粒子径は熱硬化性樹脂層の厚みの1.3倍以上が好ましく、1.5倍以上がより好ましく、2.0倍以上が特に好ましい。上限は20倍以下が好ましく、15倍以下がより好ましく、10倍以下が特に好ましい。
【0087】
熱硬化性樹脂層に含有される粒子の平均粒子径は熱硬化性樹脂層の厚み設計に応じて適宜選択されるが、具体的には平均粒子径は0.02〜1μmの範囲であることが好ましく、0.05〜0.7μmの範囲がより好ましく、特に0.1〜0.5μmの範囲が好ましい。平均粒子径が0.02μm未満であると滑り性が低下することがある。平均粒子径が1μmを越えると粒子が脱落したり、透明性が低下したり、あるいは外観が悪化することがある。
【0088】
熱硬化性樹脂層における粒子の含有量は、熱硬化性樹脂層の固形分総量100質量%に対して0.05〜10質量%の範囲が好ましく、0.1〜8質量%の範囲がより好ましく、特に0.5〜5質量%の範囲が好ましい。
【0089】
熱硬化性樹脂層の厚みは、0.005〜0.3μmの範囲であることが好ましい。熱硬化性樹脂層の厚みが0.005μm未満の場合は、基材フィルムと紫外線硬化性樹脂層との密着性が低下する。また、熱硬化性樹脂層の厚みが0.3μmより大きくなると紫外線硬化性樹脂層の耐擦傷性が低下することがある。なお、後述するように熱硬化性樹脂層が複数層で構成されている場合は、複数層の合計厚みを熱硬化性樹脂層の厚みとする。
【0090】
熱硬化性樹脂層の厚みは、更に0.01μm以上が好ましく、0.015μm以上がより好ましく、特に0.02μm以上が好ましい。上限の厚みは0.25μm以下が好ましく、0.2μm以下が好ましく、0.15μm以下が特に好ましい。
【0091】
熱硬化性樹脂層は、2層で構成されていてもよい。2層構成の場合は、基材フィルムと紫外線硬化性樹脂層との密着性を高めるという観点から、基材フィルム側から順にポリエステル樹脂を主成分とする第1樹脂層とアクリル樹脂を主成分とする第2樹脂層で構成されることが好ましい。ここで、ポリエステル樹脂あるいはアクリル樹脂を主成分とするとは、第1樹脂層あるいは第2樹脂層の固形分総量100質量%に対してポリエステル樹脂あるいはアクリル樹脂を50質量%以上含有することを意味する。上限は99質量%である。
【0092】
2層構成の熱硬化性樹脂層は、1つの塗布液を1回塗布し、その乾燥過程で自己相分離を生起させて形成されることが好ましい。つまり、第1樹脂層の主成分(ポリエステル樹脂)と第2樹脂層の主成分(アクリル樹脂)とを含有する塗布液を塗布し、その乾燥過程でそれぞれの成分の自己相分離を利用して第1樹脂層と第2樹脂層を形成する方法を採用することが好ましい。
【0093】
この相分離方法を実施するに際し、第1樹脂層の主成分(ポリエステル樹脂)と第2樹脂層の主成分(アクリル樹脂)との表面エネルギー差を大きくすることが好ましい。つまり、表面エネルギーの高いポリエステル樹脂と表面エネルギーの低いアクリル樹脂を用いることが好ましい。特に、ポリエステル樹脂の表面エネルギーを高くするために、スルホン酸基を有するポリエステル樹脂を用いることが好ましい。
【0094】
熱硬化性樹脂層が2層構成の場合、基材フィルムと紫外線硬化性樹脂層との密着性を強化し、保護フィルムの反射色をニュートラルな無色に近づけるという観点から、第1樹脂層の厚みが第2樹脂層の厚みより大きいことが好ましい。第1樹脂層の厚みは第2樹脂層の厚みの1.5倍以上が好ましく、2.0倍以上がより好ましく、特に3.0倍以上が好ましい。
【0095】
第1樹脂層の厚みの範囲は、具体的には0.02〜0.2μmの範囲が好ましく、0.03〜0.15μmの範囲がより好ましく、特に0.05〜0.12μmの範囲が好ましい。第2樹脂層の厚みの範囲は0.005〜0.1μmの範囲が好ましく、0.01〜0.07μmの範囲がより好ましく、特に0.01〜0.05μmの範囲が好ましい。
【0096】
熱硬化性樹脂層は、基材フィルム上に熱硬化性樹脂組成物をウェットコーティング法で塗布し、熱硬化して積層されることが好ましい。熱硬化するときの条件(加熱温度、時間)は特に限定されないが、加熱温度は70℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、150℃以上が特に好ましく、200℃以上が最も好ましい。上限の加熱温度は300℃以下が好ましい。加熱時間は5〜300秒の範囲が好ましく、10〜200秒の範囲がより好ましい。
【0097】
更に、熱硬化性樹脂層は、基材フィルムの製造工程内で熱硬化性樹脂組成物をウェットコーティング法で塗布する、いわゆるインラインコーティング法によって塗布し、熱硬化して積層されることが好ましい。ウェットコーティング法としては、例えばリバースコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、ダイコート法等が挙げられる。
【0098】
[保護フィルム]
本発明の
紫外線硬化性樹脂層を備えた保護フィルムは、基材フィルムの紫外線硬化性樹脂層が積層された面とは反対面(裏面)が、粘着剤層あるいは接着剤層を介してタッチパネルのタッチ面に装着される。
【0099】
本発明の
紫外線硬化性樹脂層を備えた保護フィルムは、基材フィルムの裏面にハードコート層が設けられていることが好ましい。かかるハードコート層は、保護フィルムに良好な滑り性や良好な耐ブロッキング性を付与するために、粒子が含有されていることが好ましい。
【0100】
ハードコート層における粒子の含有量は、ハードコート層の固形分総量100質量%に対して1〜30質量%の範囲が好ましく、2〜25質量%の範囲がより好ましく、3〜20質量%の範囲がより好ましい。かかる粒子は、有機粒子であっても無機粒子であってもよい。粒子の平均粒子径は、0.03〜5.0μmの範囲が好ましく、0.04〜4.0μmの範囲がより好ましく、0.05〜3.0μmの範囲が特に好ましい。
【0101】
また、保護フィルムは、裏面に加飾印刷が施されることがあり、基材フィルムの裏面に設けられるハードコート層は良好な印刷適性を有していることが好ましい。この観点から、ハードコート層表面の水接触角は80度以下が好ましく、75度以下がより好ましい。
【0102】
つまり、基材フィルムの裏面に設けられるハードコート層は、粒子を含有し、かつハードコート層表面の水接触角が80度以下が好ましい。
【0103】
ハードコート層の厚みは、0.5〜5μmの範囲が好ましく、1〜4μmの範囲がより好ましく、1.5〜3μmの範囲が特に好ましい。
【0104】
基材フィルムの裏面にハードコート層を積層する場合、基材フィルムとハードコート層との密着性を高めるという観点から、基材フィルムとハードコート層との間に前述した熱架橋性樹脂層を介在させることが好ましい。
【実施例】
【0105】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。尚、実施例で用いた測定方法および評価方法を以下に記載する。
【0106】
(1)スチールウール摩耗性試験
保護フィルムの紫外線硬化性樹脂層が積層された表面を、スチールウール#0000(日本スチールウール(株)製)を使用し、荷重250g/cm
2、速度60mm/秒、往復移動距離120mmで1000往復させた。試験環境は、温度23℃、相対湿度55%である。
【0107】
摩耗試験装置として、学振型摩擦堅牢度試験器(テスター産業(株)製の「AB−301」)を用いた。
【0108】
(2)耐擦傷性の評価
上記(1)のスチールウール耐摩耗性試験を実施した後、保護フィルムの裏面(紫外線硬化性樹脂層が積層された面とは反対面)に黒テープを貼り付け、蛍光灯下(照度600ルックス)で目視により紫外線硬化性樹脂層表面の傷の発生状況を観察し、以下の基準で評価した。尚、傷の観察は、視力1.2〜1.5(矯正視力を含む)の20代男性3人で行い、平均した。
【0109】
A;傷の本数が10本以下。
【0110】
B;傷の本数が11本〜29本。
【0111】
C;傷の本数が30本以上。
【0112】
(3)紫外線硬化性樹脂層表面の水接触角(表1中の「初期水接触角」)の測定
スチールウール摩耗性試験を実施する前の紫外線硬化性樹脂層表面の水接触角を、協和界面科学(株)製の自動接触角計(DM−500)と解析ソフトFAMAS(バージョン3.34)を用いて測定した。測定には純水を用い、純水の滴下量を2マイクロリットルとした。5回測定し、最大と最小値を除く3点の平均値を採用した。測定環境は、温度23℃、相対湿度55%である。
【0113】
(4)防汚耐久性(スチールウール摩耗性試験後の水接触角)の測定
上記(1)のスチールウール摩耗性試験を実施した後、紫外線硬化性樹脂層表面の水接触角を上記(3)に準じて測定した。
【0114】
(5)紫外線硬化性樹脂層の密着性(表1中の「初期密着性」)の評価
保護フィルムを5cm×5cmに切り出して試験サンプルとした。温度23℃、相対湿度55%の雰囲気下で、この試験サンプルの紫外線硬化性樹脂層上に、縦方向と横方向にそれぞれ1mm間隔の直線状カットを11本入れて1mm
2のクロスカットマス目を100個作製した。このクロスカットマス目上にニチバン(株)製セロハンテープを貼り付けた後、セロハンテープを180度方向に剥離し、紫外線硬化性樹脂層の残存した個数により以下の基準で評価した。
【0115】
1級:100個残存
2級:90〜99個残存
3級:0〜89個残存
1級と2級は実用上問題なく、3級は実用上問題となるレベルである。
【0116】
(6)耐候性(1);紫外線照射後の密着性の評価
紫外線蛍光ランプ式耐光性試験機(Q−Panel社製の「QUV」;紫外線蛍光ランプUVA340nmを搭載)を使用して、紫外線照射(63℃−50%RHの雰囲気下で8時間紫外線を照射)と紫外線未照射(50℃−100%RHの雰囲気下で紫外線を照射せず4時間放置)とを8サイクル繰り返し行って、保護フィルムに紫外線を照射した。その後保護フィルムを試験機から取り出し、23℃−55%RHの雰囲気下で60分間放置した後、上記(5)に準じて密着性を評価した。
【0117】
(7)耐候性(2);紫外線照射後の黄変度の評価
上記(6)の紫外線蛍光ランプ式耐光性試験機を使用して、同条件にて保護フィルムに紫外線を照射した。その後保護フィルムを試験機から取り出し、23℃−55%RHの雰囲気下で60分間放置した後、蛍光下で黄変度を目視で評価した。このとき、ブランク(紫外線照射前の保護フィルム)と対比して、黄変の進み具合を以下に基準で評価した。
○;黄変がほとんど進んでいない。
△;黄変がやや進んでいる。
×;黄変が大きく進んでいる。
【0118】
(8)熱硬化性樹脂層の厚みの測定
熱硬化性樹脂層が積層されたポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略称することがある。)フィルムの断面を超薄切片に切り出し、RuO
4 染色、OsO
4 染色、あるいは両者の二重染色による染色超薄切片法により、TEM(透過型電子顕微鏡)で断面構造が目視可能な以下の条件にて観察し、その断面写真から熱硬化性樹脂層の厚みを測定する。尚、測定個所は粒子が存在しない部分である。なお、5箇所を測定して、その平均値を熱硬化性樹脂層の厚みとした。
・測定装置:透過型電子顕微鏡(日立(株)製 H−7100FA型)
・測定条件:加速電圧 100kV
・試料調整:凍結超薄切片法
・倍率:30万倍。
【0119】
(9)紫外線硬化性樹脂層の厚みの測定
保護フィルムの断面を超薄切片に切り出し、TEM(透過型電子顕微鏡)で加速電圧100kVにて観察(1〜30万倍の倍率で観察)し、その断面写真から厚みを測定する。尚、紫外線硬化性樹脂層が表面に突出部を有する場合は、突出部が存在しない部分における厚みである。厚みの測定は5箇所で行い、その平均値を厚みとした。
【0120】
(10)紫外線硬化性樹脂層に含有される粒子の平均粒子径の測定
紫外線硬化性樹脂層の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察(約1万〜10万倍)し、その断面写真から、無作為に選択した30個の粒子のそれぞれの最大長さを計測し、それらを平均した値を粒子の平均粒子径とした。
【0121】
(11)熱硬化性樹脂層に含有される粒子の平均粒子径の測定
基材フィルムに積層された熱硬化性樹脂層表面を、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて倍率一万倍で観察し、粒子の画像(粒子によってできる光の濃淡)をイメージアナライザー(たとえばケンブリッジインストルメント製QTM900)に結び付け、観察箇所を変えてデータを取り込み、合計粒子数5000個以上となったところで次の数値処理を行ない、それによって求めた数平均径dを平均粒径(直径)とした。
・d=Σdi /N
ここでdi は粒子の等価円直径(粒子の断面積と同じ面積を持つ円の直径)、Nは個数である。
【0122】
(12)ハードコート層表面の水接触角の測定
ハードコート層表面の水接触角を、上記(3)に準じて測定した。
【0123】
[製造例1]
熱硬化性樹脂層が積層されたポリエチレンテレフタレートフィルム(積層PETフィルム)を以下の要領で製造した。
【0124】
実質的に外部添加粒子を含有しないPETペレット(極限粘度0.63dl/g)を充分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し285℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめた。この未延伸フィルムを90℃に加熱して長手方向に3.4倍延伸し、一軸延伸フィルムとした。この一軸延伸フィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施した後、一軸延伸フィルムの両面に下記の熱硬化性樹脂組成物aをそれぞれ塗布した。
【0125】
次に、両面に熱硬化性樹脂組成物aが塗布された一軸延伸フィルムをクリップで把持して予熱ゾーンに導き、雰囲気温度75℃で乾燥、ラジエーションヒーターを用いて110℃に上げ、再度90℃で乾燥して後、引き続き連続的に120℃の加熱ゾーンで幅方向に3.5倍延伸し、続いて220℃の加熱ゾーンで20秒間熱処理を施し、結晶配向の完了したポリエチレンテレフタレートフィルムを作製した。得られたポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みは125μm、両面に積層された熱硬化性樹脂層の厚みはそれぞれ0.09μmであった。
【0126】
<熱硬化性樹脂組成物a>
ポリエステル樹脂1/アクリル樹脂1/メラミン系架橋剤/粒子を固形分質量比で、80/20/20/3の割合で混合して調製した。
【0127】
<ポリエステル樹脂1>
下記の共重合組成からなるポリエステル樹脂を粒子状に水に分散させた水性分散体。
・多価カルボン酸成分
テレフタル酸 34モル%
2,6−ナフタレンジカルボン酸 10モル%
5−Naスルホイソフタル酸 6モル%
・ジオール成分
エチレングリコール 49モル%
ジエチレングリコール 1モル%。
【0128】
<アクリル樹脂1>
下記の共重合成分を共重合させたアクリル樹脂を粒子状に水に分散させた水性分散体
・共重合成分
メチルメタクリレート 63質量%
エチルアクリレート 35質量%
アクリル酸 1質量%
N−メチロールアクリルアミド 1質量%。
【0129】
<メラミン系架橋剤>
メチロール型メラミン系架橋剤(三和ケミカル(株)製の「ニカラック MW12LF」)。
【0130】
<粒子>
平均粒子径が0.19μmのコロイダルシリカ((日産化学工業(株)製の「スノーテックス」)。
【0131】
[製造例2]
製造例1において、熱硬化性樹脂組成物を下記の熱硬化製樹脂組成物bに変更する以外は、製造例1と同様にして熱硬化性樹脂層が積層されたポリエチレンテレフタレートフィルム(積層PETフィルム)を製造した。
【0132】
<熱硬化性樹脂組成物b>
下記のポリエステル樹脂2を固形分換算で22質量部、自己架橋型ポリウレタン樹脂水溶液(第一工業製薬製:商品名エラストロンH−3;固形分濃度20質量%)を固形分換算で78質量部、エラストロン用触媒(第一工業製薬製:商品名Cat64)を5質量部、および平均粒子径が0.19μmのコロイダルシリカ((日産化学工業(株)製の「スノーテックス」)を3質量部含む。
【0133】
<ポリエステル樹脂2>
ジメチルテレフタレート95質量部、ジメチルイソフタレート95質量部、エチレングリコール35質量部、ネオペンチルグリコール145質量部、酢酸亜鉛0.1質量部及び三酸化アンチモン0.1質量部を反応容器に仕込み、180℃で3時間かけてエステル交換反応を行った。次に5−ナトリウムイソフタル酸6質量部を添加し、240℃で1時間かけてエステル化反応を行った後、重縮合反応を行い、ポリエステル樹脂2(固形分濃度30質量%の水性分散体)を得た。
【0134】
[製造例3]
製造例1において、熱硬化性樹脂組成物を下記の熱硬化製樹脂組成物cに変更する以外は、製造例1と同様にして熱硬化性樹脂層が積層されたポリエチレンテレフタレートフィルム(積層PETフィルム)を製造した。
【0135】
<熱硬化性樹脂組成物c>
ポリエステル樹脂1/メラミン系架橋剤/粒子を固形分質量比で、100/20/3の割合で混合して調製した。ここで用いた、ポリエステル樹脂1、メラミン系架橋剤および粒子は、製造例1と同じものである。
【0136】
[実施例1]
製造例1で作製した積層PETフィルムの一方の熱硬化性樹脂層の上に、下記の紫外線硬化性樹脂組成物をグラビアコーターで塗工し、90℃で熱風乾燥した後、紫外線(積算光量400mJ/cm
2)を照射して、厚みが5.5μmの紫外線硬化性樹脂層を形成し、保護フィルムを作製した。
【0137】
<紫外線硬化性樹脂組成物>
多官能脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート化合物(ダイセル・サイテック(株)の「KRM8452」、10官能)を50質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを40質量部、重合性フッ素化合物(大阪有機化学工業(株)の「ビスコート8F」;オクタフルオロペンチルアクリレート;エチレン性不飽和基1個、フッ素原子8個)を2質量部、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製の「チヌビン460」)を3質量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製「イルガキュア184」)5質量部を有機溶剤(メチルエチルケトン)に混合して、固形分濃度が30質量%の組成物を調製した。
【0138】
[実施例2]
下記の紫外線硬化性樹脂組成物に変更する以外は、実施例1と同様にして保護フィルムを作製した。
【0139】
<紫外線硬化性樹脂組成物>
多官能脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート化合物(ダイセル・サイテック(株)の「KRM8452」、10官能)を50質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを40質量部、重合性フッ素化合物(大阪有機化学工業(株)の「ビスコート8F」;オクタフルオロペンチルアクリレート;エチレン性不飽和基1個、フッ素原子8個)を2質量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製の「チヌビン328」)を3質量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製「イルガキュア184」)5質量部を有機溶剤(メチルエチルケトン)に混合して、固形分濃度が30質量%の組成物を調製した。
【0140】
[実施例3]
下記の紫外線硬化性樹脂組成物に変更する以外は、実施例1と同様にして保護フィルムを作製した。
【0141】
<紫外線硬化性樹脂組成物>
多官能脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート化合物(ダイセル・サイテック(株)の「Ebecryl 5129」、6官能)を50質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを40質量部、重合性フッ素化合物(大阪有機化学工業(株)の「ビスコート8F」;オクタフルオロペンチルアクリレート;エチレン性不飽和基1個、フッ素原子8個)を2質量部、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製の「チヌビン460」)を3質量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製「イルガキュア184」)5質量部を有機溶剤(メチルエチルケトン)に混合して、固形分濃度が30質量%の組成物を調製した。
【0142】
[実施例4]
下記の紫外線硬化性樹脂組成物に変更する以外は、実施例1と同様にして保護フィルムを作製した。
【0143】
<紫外線硬化性樹脂組成物>
多官能芳香族ウレタン(メタ)アクリレート化合物(ダイセル・サイテック(株)の「Ebecryl 220」、6官能)を50質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを40質量部、重合性フッ素化合物(大阪有機化学工業(株)の「ビスコート8F」;オクタフルオロペンチルアクリレート;エチレン性不飽和基1個、フッ素原子8個)を2質量部、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製の「チヌビン460」)を3質量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製「イルガキュア184」)5質量部を有機溶剤(メチルエチルケトン)に混合して、固形分濃度が30質量%の組成物を調製した。
【0144】
[実施例5]
下記の紫外線硬化性樹脂組成物に変更する以外は、実施例1と同様にして保護フィルムを作製した。
【0145】
<紫外線硬化性樹脂組成物>
多官能脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート化合物(ダイセル・サイテック(株)の「Ebecryl 8210」、4官能)を50質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを40質量部、重合性フッ素化合物(大阪有機化学工業(株)の「ビスコート8F」;オクタフルオロペンチルアクリレート;エチレン性不飽和基1個、フッ素原子8個)を2質量部、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製の「チヌビン460」)を3質量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製「イルガキュア184」)5質量部を有機溶剤(メチルエチルケトン)に混合して、固形分濃度が30質量%の組成物を調製した。
【0146】
[実施例6]
下記の紫外線硬化性樹脂組成物に変更する以外は、実施例1と同様にして保護フィルムを作製した。
【0147】
<紫外線硬化性樹脂組成物>
多官能脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート化合物(ダイセル・サイテック(株)の「KRM8452」、10官能)を50質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを40質量部、重合性フッ素化合物(ダイキン工業(株)の「オプツールDAC」;テトラフルオロ−1−プロパノール;エチレン性不飽和基1個、フッ素原子4個)を2質量部、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製の「チヌビン460」)を3質量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製「イルガキュア184」)5質量部を有機溶剤(メチルエチルケトン)に混合して、固形分濃度が30質量%の組成物を調製した。
【0148】
[実施例7]
下記の紫外線硬化性樹脂組成物に変更する以外は、実施例1と同様にして保護フィルムを作製した。
【0149】
<紫外線硬化性樹脂組成物>
多官能脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート化合物(ダイセル・サイテック(株)の「KRM8452」、10官能)を50質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを40質量部、重合性フッ素化合物(大阪有機化学工業(株)(株)の「ビスコート3F」;トリフルオロエチルアクリレート;エチレン性不飽和基1個、フッ素原子3個)を2質量部、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製の「チヌビン460」)を3質量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製「イルガキュア184」)5質量部を有機溶剤(メチルエチルケトン)に混合して、固形分濃度が30質量%の組成物を調製した。
【0150】
[実施例8]
製造例2で作製した積層PETフィルムに変更する以外は、実施例1と同様にして保護フィルムを作製した。
【0151】
[実施例9]
製造例3で作製した積層PETフィルムに変更する以外は、実施例1と同様にして保護フィルムを作製した。
【0152】
[比較例1]
下記の紫外線硬化性樹脂組成物に変更する以外は、実施例1と同様にして保護フィルムを作製した。
【0153】
<紫外線硬化性樹脂組成物>
多官能脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート化合物(ダイセル・サイテック(株)の「KRM8452」、10官能)を50質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを40質量部、重合性フッ素化合物(大阪有機化学工業(株)の「ビスコート8F」;オクタフルオロペンチルアクリレート;エチレン性不飽和基1個、フッ素原子8個)を2質量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製「イルガキュア184」)5質量部を有機溶剤(メチルエチルケトン)に混合して、固形分濃度が30質量%の組成物を調製した。
【0154】
[比較例2]
下記の紫外線硬化性樹脂組成物に変更する以外は、実施例1と同様にして保護フィルムを作製した。
【0155】
<紫外線硬化性樹脂組成物>
多官能脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート化合物(ダイセル・サイテック(株)の「KRM8452」、10官能)を50質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを40質量部、非重合性フッ素化合物(DIC(株)の「メガファックF−561」)を固形分換算で2質量部、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製の「チヌビン460」)を3質量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製「イルガキュア184」)5質量部を有機溶剤(メチルエチルケトン)に混合して、固形分濃度が30質量%の組成物を調製した。
【0156】
[比較例3]
下記の紫外線硬化性樹脂組成物に変更する以外は、実施例1と同様にして保護フィルムを作製した。
【0157】
<紫外線硬化性樹脂組成物>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを90質量部、重合性フッ素化合物(ダイキン工業(株)の「オプツールDAC」;テトラフルオロ−1−プロパノール;エチレン性不飽和基1個、フッ素原子4個)を2質量部、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製の「チヌビン460」)を3質量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製「イルガキュア184」)5質量部を有機溶剤(メチルエチルケトン)に混合して、固形分濃度が30質量%の組成物を調製した。
【0158】
[比較例4]
下記の紫外線硬化性樹脂組成物に変更する以外は、実施例1と同様にして保護フィルムを作製した。
【0159】
<紫外線硬化性樹脂組成物>
多官能脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート化合物(ダイセル・サイテック(株)の「KRM8452」、10官能)を50質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを40質量部、重合性フッ素化合物(大阪有機化学工業(株)の「ビスコート8F」;オクタフルオロペンチルアクリレート;エチレン性不飽和基1個、フッ素原子8個)を2質量部、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製の「チヌビン460」)を3質量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製「イルガキュア184」)を5質量部、平均粒径が5μmのアクリル粒子(綜研化学(株)製の「MX500」)5質量部を有機溶剤(メチルエチルケトン)に混合して、固形分濃度が30質量%の組成物を調製した。
【0160】
[評価]
実施例および比較例で作製した保護フィルムの特性を評価した。その結果を表1に示す。
【0161】
【表1】
【0162】
本発明の実施例はいずれも、耐擦傷性、初期水接触角、初期密着性、防汚耐久性、耐候性1(紫外線照射後の密着性)、および耐候性2(紫外線照射後の黄変度)の評価がいずれも良好である。
【0163】
一方、比較例1は、紫外線硬化性樹脂層が紫外線吸収剤を含有していないため、耐候性(1)と耐候性(2)が低下している。
【0164】
比較例2は、紫外線硬化性樹脂層に含有されるフッ素化合物が非重合性であるため、耐擦傷性と防汚耐久性が低下している。
【0165】
比較例3は、紫外線硬化性樹脂層に多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含有していないため、防汚耐久性が低下している。
【0166】
比較例4は、紫外線硬化性樹脂層が、平均粒子径が5μmの粒子を含有しているため、耐擦傷性と防汚耐久性が低下している。
【0167】
[実施例11〜19]
実施例1〜9で得られた保護フィルムの裏面(紫外線硬化性樹脂層が積層されている面とは反対面)に、下記のハードコート層形成用組成物をグラビアコーターで塗工し、90℃で乾燥した後、紫外線(積算光量400mJ/cm
2)を照射して厚みが2μmのハードコート層を形成して実施例11〜19の保護フィルムを得た。
【0168】
尚、実施例11は実施例1の保護フィルムを使用、実施例12は実施例2の保護フィルムを使用、・・(中略)・・、実施例19は実施例9の保護フィルムを使用した。
【0169】
<ハードコート層形成用組成物>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを92質量部、有機粒子としてスチレン−アクリル系共重合樹脂粒子(ガンツ化成(株)製の商品名「スタフィロイド EA−1135」;平均粒子径130nm)を固形分換算で8質量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製「イルガキュア(登録商標)184」)5質量部を有機溶媒(酢酸エチル:トルエン=1:1(質量比)の混合溶媒)に溶解あるいは分散した組成物(固形分濃度30質量%)である。
【0170】
[評価]
実施例11〜19の保護フィルムについて前述と同様の評価を行った。その結果、実施例11〜19の保護フィルムは、それぞれが対応する実施例1〜9の保護フィルムと同様の結果であった。
【0171】
また、実施例11〜19の保護フィルムについて、下記の方法で滑り性と耐ブロッキング性を評価した。その結果、いずれの保護フィルムも、滑り性および耐ブロッキング性が良好であった。
【0172】
また、実施例11〜19の保護フィルムのハードコート層面に、黒インキ(帝国インキ製造(株)の「IPX」)を用いてスクリーン印刷法にて加飾印刷を施したが、いずれの保護フィルムも印刷性は良好であった。
【0173】
実施例11〜19の保護フィルムのハードコート層表面における水接触角は、いずれも65度であった。
【0174】
<滑り性の評価>
保護フィルムを切断して2枚のシート片(20cm×15cm)を作製する。この2枚のシート片の紫外線硬化性樹脂層の面とハードコート層の面とが向き合うように2枚のシート片を僅かにずらして重ね合わせて平滑な台上の置き、下方のシート片を指で台上に固定し、上方のシート片を手で滑らせる方法で滑り性の良否判定を行った。測定環境は23℃、55%RHである。
・良好:上方のシート片の滑り性が良好である。
・不良:上方のシート片が滑らない。
【0175】
<耐ブロッキング性の評価>
保護フィルムを切断して2枚のシート片(20cm×15cm)を作製する。この2枚のシート片の紫外線硬化性樹脂層の面とハードコート層の面とが向き合うようにして重ね合わせる。次に、2枚のシート片を重ね合わせた試料をガラス板で挟み込み、約3kgの重りを載せて、50℃、90%(RH)の雰囲気下に48時間放置する。次に、重ね合わせ面を目視により観察しニュートンリングの発生状況を確認した後、両者を剥離し、以下の基準で評価した。
・良好:剥離前はニュートンリングが発生しておらず、剥離時には剥離音を立てずに軽く剥離される。
・不良:剥離前は全面にニュートンリングが発生しており、剥離時には大きな剥離音を立てて剥離される。