特許第6402955号(P6402955)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6402955水槽付き家具への水栓装置の取り付け方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6402955
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】水槽付き家具への水栓装置の取り付け方法
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/042 20060101AFI20181001BHJP
   E03C 1/044 20060101ALI20181001BHJP
   A47K 1/00 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   E03C1/042 E
   E03C1/044
   A47K1/00 U
   A47K1/00 V
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-170194(P2017-170194)
(22)【出願日】2017年9月5日
(62)【分割の表示】特願2013-199119(P2013-199119)の分割
【原出願日】2013年9月26日
(65)【公開番号】特開2017-206960(P2017-206960A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2017年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松浦 利治
(72)【発明者】
【氏名】池田 勇蔵
【審査官】 七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−309240(JP,A)
【文献】 特開2002−194780(JP,A)
【文献】 特開2001−269232(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0250120(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/00−1/10
A47K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽付き家具への水栓装置の取り付け方法であって、
前記水槽付き家具は、背面が建築壁と隙間を空けて対向するよう立設される立壁と、前記立壁の前面側に設けられ水を受ける水槽とを有するカウンターと、前記立壁に取り付けられる前記水栓装置と、左右一対の側板を有し、前記立壁の下方に設けられるキャビネットと、を備え、
前記水栓装置は、水を供給する給水配管と、湯を供給する給湯配管と、前記給水配管及び前記給湯配管が接続され供給される湯と水を混合する湯水混合栓と、を有し、
前記給水配管及び前記給湯配管は、その少なくとも一方が耐圧ホースであり、
前記カウンターを前記建築壁に対し直接又は間接的に取り付ける第1の工程と、
前記湯水混合栓が前記立壁の前面側に配設される一方、前記給水配管及び前記給湯配管が前記立壁の背面側に配設されるよう、前記給水配管及び前記給湯配管を前記立壁に形成された貫通孔に当該貫通孔の前面側の上方から前記立壁の背後となる前記水槽の後方領域に向けて斜め下向きへ挿入する第2の工程と、を有し、
前記給水配管及び前記給湯配管の端部は、前記第2の工程完了時に前記水槽より下方側に位置する前記キャビネットの収納空間に到達していることを特徴とする水槽付き家具への水栓装置の取り付け方法。
【請求項2】
前記水栓装置は、前記貫通孔と前記湯水混合栓との間の隙間を前記立壁の前面側から覆うフランジを有することを特徴とする請求項1記載の水槽付き家具への水栓装置の取り付け方法。
【請求項3】
前記貫通孔は、上下方向に広がる長孔とすることを特徴とする請求項2記載の水槽付き家具への水栓装置の取り付け方法。
【請求項4】
前記湯水混合栓は、前記フランジの中心よりも上方に偏った位置に配設することを特徴とする請求項3記載の水槽付き家具への水栓装置の取り付け方法。
【請求項5】
前記キャビネットは、前記一対の側板の前記建築壁側の側部の間に設けられる後横桟と、前記後横桟の上方又は下方に設けられる背板と、をさらに有し、
前記後横桟及び前記背板のうち少なくともいずれか一方の上方に、前記建築壁と前記後横桟及び前記背板の前面とを段差なく繋げる段差抑制部を設けることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の水槽付き家具への水栓装置の取り付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水槽付き家具への水栓装置の取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洗面化粧台等、手洗いや水汲みに使用する水を水槽で受ける水槽付き家具では、その水槽に近接して設けられる立壁に水栓装置を取り付ける構造が広く採用されている。
【0003】
下記特許文献1には、洗面化粧台において水槽(ボール2)の奥側に立壁(壁面3)が設けられ、その立壁の背面側に給水管を配設する構造が開示されている。給水管の水槽側の端部は、立壁に形成された貫通孔(取付開口9)を挿通して前面側に引き出され、水栓本体と接続される。この水栓本体は、取付金具等を介して立壁部の前面に取り付けられる。これにより、水栓本体と給水管との接続作業と、水栓本体の立壁部への取付作業を、立壁の前面側のみで行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−144083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
洗面化粧台等の水槽付き家具は、一般的に、その背面が建築壁に当接するよう設置される。したがって、水槽とその奥側に立設する立壁とを有する洗面化粧台を、その背面が建築壁に当接するように配置した場合、給水管は、洗面化粧台の立壁と建築壁との間に形成される隙間に配設されることになる。
【0006】
建築壁と立壁との距離を短くし、洗面化粧台をコンパクトに構成するためには、上記隙間を小さく構成することが好ましい。しかしながら、上記隙間を小さくすると、洗面化粧台の背面を建築壁に当接するよう設置した後では、その小さな隙間で給水管を取り回さなければならなくなる。したがって、特許文献1のように、給水管の端部を立壁の貫通孔から前面側に引き出す作業も大変困難なものとなる。特に、いわゆる1次圧が加わる給水管は、安全面の要求から高圧に耐え得る耐圧ホースが採用されることが多く、取り回しに十分な可撓性を確保することが難しいものである。このように可撓性に乏しい耐圧ホースの端部を貫通孔から前面側に引き出そうとすると、その作業は一層困難となる。
【0007】
給水管の配設作業を容易にする方法として、洗面化粧台を建築壁に当接させて設置する前に、予め洗面化粧台の立壁の背面側に給水管を配設しておくことが考えられる。洗面化粧台を設置する前に、十分な作業スペースにおいて給水管の配設作業を行っておくためである。
【0008】
しかしながら、法規上、水道配管からの給水が可能となるよう給水管の配設作業を行えるのは、所定の資格を有する者(水道工事有資格者)に限られる。洗面化粧台の商流が水道工事有資格者を経由しない場合もあり、洗面化粧台を設置する設置業者(水道工事無資格者)と、給水管を配設する配設業者(水道工事有資格者)が異なる場合が多々ある。このような場合には、まず設置業者が洗面化粧台を現場に搬入し、一旦洗面化粧台を建築壁に当接させた上で固定する。その固定作業とは別のタイミングで、配設業者が洗面化粧台を建築壁に固定しているネジを取り外し、洗面化粧台を建築壁から引き離した上で給水管の配設作業を行い、その後、洗面化粧台を建築壁に当接させて再固定しなければならない。
【0009】
上記のような煩雑な作業を回避するために、先に設置業者が建築壁に当接させて設置しておいた洗面化粧台を移動させることなく、前面側から立壁部の貫通孔に給水管を挿入することで、給水管を立壁部と建築壁の間の隙間に配設する方法が考えられる。しかしながら、かかる方法では、挿入された給水管が建築壁と干渉し、建築壁を損傷してしまうというおそれがあった。つまり、上記のように給水管に耐圧ホースを採用した場合、可撓性に乏しい耐圧ホースがその端部から貫通孔に挿入されると、その端部が建築壁と強く干渉し、建築壁を削ってしまうおそれがある。
【0010】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、洗面化粧台といった水槽付き家具が建築壁に固定されたままの状態であっても、建築壁を損傷させることなく、容易に水栓装置を取り付けることができる水槽付き家具への水栓装置の取り付け方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る水槽付き家具への水栓装置の取り付け方法は、前記水槽付き家具は、背面が建築壁と隙間を空けて対向するよう立設される立壁と、前記立壁の前面側に設けられ水を受ける水槽とを有するカウンターと、前記立壁に取り付けられる前記水栓装置と、左右一対の側板を有し、前記立壁の下方に設けられるキャビネットと、を備え、前記水栓装置は、水を供給する給水配管と、湯を供給する給湯配管と、前記給水配管及び前記給湯配管が接続され供給される湯と水を混合する湯水混合栓と、を有し、前記給水配管及び前記給湯配管は、その少なくとも一方が耐圧ホースであり、前記カウンターを前記建築壁に対し直接又は間接的に取り付ける第1の工程と、前記湯水混合栓が前記立壁の前面側に配設される一方、前記給水配管及び前記給湯配管が前記立壁の背面側に配設されるよう、前記給水配管及び前記給湯配管を前記立壁に形成された貫通孔に当該貫通孔の前面側の上方から前記立壁の背後となる前記水槽の後方領域に向けて斜め下向きへ挿入する第2の工程と、を有し、前記給水配管及び前記給湯配管の端部は、前記第2の工程完了時に前記水槽より下方側に位置する前記キャビネットの収納空間に到達していることを特徴としている。
【0012】
本発明に係る水槽付き家具への水栓装置の取り付け方法は、給水配管及び給湯配管を前面側の上方から立壁の背後となる水槽の後方領域に向けて斜めに挿入することにより、給水配管及び給湯配管の端部と建築壁との干渉は、抑制される。したがって、給水配管及び給湯配管の少なくとも一方が可撓性に乏しい耐圧ホースであっても、それぞれの端部によって建築壁を損傷させることなく立壁の背面側に配設し、水栓装置を立壁の前面側から容易に取り付けることができる。このため、水槽付き家具を設置する設置業者と、給水配管及び給湯配管を配設する配設業者が異なる場合であっても、設置業者が水槽付き家具を設置した後に、配設業者がその水槽付き家具を移動させることなく配設作業を行うことが可能となる。
【0013】
また、公知の技術のように、給水配管及び給湯配管のそれぞれの端部を立壁の背面側から前面側に引き出すという困難な作業を必要としないほか、端部と湯水混合栓との接続を設置現場で行う必要もないため、水栓装置の取り付け作業が容易となる。
【0014】
また本発明に係る水槽付き家具への水栓装置の取り付け方法では、前記水栓装置は、前記貫通孔と前記湯水混合栓との間の隙間を前記立壁の前面側から覆うフランジを有することも好ましい。
【0015】
この好ましい態様では、貫通孔が給水配管及び給湯配管を斜め方向に挿入可能とするために大きく形成され、この貫通孔と湯水混合栓との間に生ずる隙間を覆うためのフランジが水栓装置に一体化されているので、貫通孔と湯水混合栓の間に生じる隙間を覆うための部材を新たに追加する必要がない。したがって、施工の複雑化を避けることが可能となる。
【0016】
また本発明に係る水槽付き家具への水栓装置の取り付け方法では、前記貫通孔を、上下方向に広がる長孔とすることも好ましい。
【0017】
この好ましい態様では、貫通孔と湯水混合栓との間の隙間を覆うフランジが横に大きく広がることがないので、フランジが目立ちにくくなり、意匠性を損ねることがない。また、フランジが横に広がらないので、フランジの上端部に水が溜まりにくくすることが可能となる。
【0018】
また本発明に係る水槽付き家具への水栓装置の取り付け方法では、前記湯水混合栓は、前記フランジの中心よりも上方に偏った位置に配設することも好ましい。
【0019】
この好ましい態様では、フランジがより一層目立たなくなる。
【0020】
また本発明に係る水槽付き家具への水栓装置の取り付け方法では、前記一対の側板の前記建築壁側の側部の間に設けられる後横桟と、前記後横桟の上方又は下方に設けられる背板と、をさらに有し、前記後横桟及び前記背板のうち少なくともいずれか一方の上方に、前記建築壁と前記後横桟及び前記背板の前面とを段差なく繋げる段差抑制部を設けることも好ましい。
【0021】
この好ましい態様では、段差抑制部によって、貫通孔から斜めに挿入された給水配管及び給湯配管の端部が後横桟あるいは背板に引っ掛かるのを防止して、給水配管及び給湯配管をスムーズに押し込むことが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、建築壁を損傷させることなく、容易に水栓装置を取り付けることができる水槽付き家具への水栓装置の取り付け方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る洗面化粧台の斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る洗面化粧台のカウンター及びキャビネットの断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る洗面化粧台の貫通孔の斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る洗面化粧台の水栓装置挿入直後の断面図である。
図5】本発明の実施形態に係る洗面化粧台の水栓装置挿入途中の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0025】
まず、図1乃至図3を参照して、本発明の実施形態に係る洗面化粧台の構成を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る洗面化粧台の斜視図であり、図2は、本発明の実施形態に係る洗面化粧台のカウンター及びキャビネットの断面図であり、図3は、本発明の実施形態に係る洗面化粧台の貫通孔の斜視図である。
【0026】
図1に示すように、洗面化粧台1は、洗面室床Fに載置されるとともに、その背面を洗面室壁Wに当接させて設置されている。洗面化粧台1は、カウンター10と、化粧鏡ユニット20と、キャビネット30と、水栓装置40を備えている。
【0027】
カウンター10は、その背面が洗面室壁Wに直接又は固定のための金具等やキャビネット30を介して間接的に取り付けられており、略垂直な前面を有する立壁11と、その立壁11の前面側に設けられる水槽12を有する。立壁11と水槽12は、樹脂材料で一体的に形成されている。水槽12は椀状に形成され、その内部で水を受けるとともに、その水を貯留することも可能である。図2に示すように、水槽12の下面には、受けた水を下方に排出するための排水口13が形成されており、排出された水は、この排水口13に接続される排水管(図示せず)によって下水管側に導かれる。なお、立壁11には、その前方と後方とを連通する貫通孔14(図2図3参照)が形成されている。
【0028】
化粧鏡ユニット20は箱状に形成され、内部に歯ブラシ等を収納可能である。図1に示すように、化粧鏡ユニット20は立壁11上に配置されるとともに、背面が洗面室壁Wに対し直接又は間接的に取り付けられている。また、その前面には、使用者の姿を映す化粧鏡21が取り付けられており、その上部には、前方に投光する照明22を備えている。
【0029】
キャビネット30は、カウンター10の下方に配置されており、左右一対の側板31L、31Rと、前面を構成する扉32を備えている。また、図2に示すように、側板31L、31Rの下部の間に、それぞれを連結するように底板33が設けられる。また、図2及び図3に示すように、側板31L、31Rの洗面室壁W側の側部の間には、それぞれを連結するように後横桟34が設けられている。これら側板31L、31R、扉32、底板33、後横桟34により、キャビネット30は内部に収納空間35を形成する箱状を呈している。洗面化粧台1の使用者は、扉32を開閉することで、前方から収納空間35にアプローチし、収納や取り出しを行うことができる。さらに、一対の側板31L、31Rの間であって、後横桟34の下方且つ前方には、後横桟34よりも厚みが小さい背板36が設けられており、使用者が扉32を開けた際に、収納空間35を介して洗面室壁Wが見えないよう覆っている。また、後横桟34及び背板36のうち少なくともいずれか一方に、洗面室壁Wと後横桟34及び背板36の前面とを段差なく繋げる段差抑制部39を設けている。この段差抑制部39は、後横桟34の上部の前面と洗面室壁Wとを傾斜面によって段差なく繋いでいる。
【0030】
図2に示すように、水栓装置40は、湯水混合栓41と、この湯水混合栓41に接続される給水配管42c、給湯配管42h、フレキシブルホース42fと、フレキシブルホース42fに接続される吐水部45を備えている(図2では、給水配管42cと給湯配管42hは紙面垂直方向に重合しているため、手前側の給水配管42cのみが表示されている)。
【0031】
給水配管42c及び給湯配管42hは、いずれも耐圧性の高い耐圧ホースであり、それぞれ上方側の端部で金属製のエルボ43c、43hを介して湯水混合栓41と接続され、下方に伸びている。給水配管42c及び給湯配管42hのそれぞれの下方側の端部には、袋ナット44c、44hがそれぞれ設けられている。給水配管42cは、この袋ナット44cによって、キャビネット30の収納空間35に設けられる止水栓37と通水可能に接続される。また、給湯配管42hは、その袋ナット44hが収納空間35に配置される給湯機(図示せず)に接続され、湯の供給を受けるように接続される。
【0032】
湯水混合栓41は、給水配管42cと給湯配管42hから供給される湯と水を、その内部に流入させて混合する。後述するように、湯水混合栓41は、カウンター10の立壁11に形成される貫通孔14にその一部が挿入され、立壁11の前面側に配設されている。湯水混合栓41の前方側には、レバー状のハンドル46が設けられている。使用者は、このハンドル46を操作することにより、湯水混合栓41に流入する湯と水の比率の変更と、混合した湯水のフレキシブルホース42fへの供給又は停止と、供給するその湯水の流量の変更を行うことが可能である。なお、湯水混合栓41には、フランジ部47が一体的に設けられている。
【0033】
吐水部45は、カウンター10の立壁11の前面側に着脱自在であり、使用者は吐水部45を立壁11から取外すことで、所望の位置で湯水の吐出を行わせることができる。吐水部45には、貫通孔14とは別に立壁11に形成されている開口(図示せず)を介して、立壁11の背面側に配設されているフレキシブルホース42fと接続されている。吐水部45は、フレキシブルホース42fから供給される湯水を、シャワー、整流など、種々の形態で吐出することができる。
【0034】
フレキシブルホース42fは給水配管42cや給湯配管42hに比べて可撓性が高いホースであり、吐水部45が立壁11に取り付けられた状態では、その大部分が立壁11の背面側に配設される。一方、吐水部45が立壁11から取り外されると、それに伴って立壁11に形成されている開口(図示せず)から前面側に引き出される。湯水混合栓41で混合された湯水は、このフレキシブルホース42fを介して吐水部45に供給される。
【0035】
このように構成された洗面化粧台は、立壁11に形成された貫通孔14は、給水配管42cと給湯配管42hとフレキシブルホース42fを同時に斜め方向に挿入するために、貫通孔14に対して垂直方向から挿入する場合よりも大きく形成されている。
これにより、貫通孔14に対して、給水配管42c及び給湯配管42hを貫通孔14の前面側の上方から立壁11の背後となる水槽12の後方領域15に向けて斜め方向に挿入することが可能である。斜め方向に挿入された給水配管42c、給湯配管42hの端部は、洗面室壁Wにほとんど干渉することがなく、給水配管42c、給湯配管42hの端部で洗面室壁Wを損傷させることなく、立壁11の背面側に無理なく配設することができる。また、このために、大きめに形成された貫通孔14と湯水混合栓41との間には隙間が生ずるが、その隙間は、湯水混合栓41に設けられたフランジ47で前方から覆われる。
【0036】
貫通孔14は、例えば、図3に示すように、左右方向の幅よりも上下方向の高さの方が大きい縦長の長孔とされている。これにより、フランジ47は湯水混合栓41に対して左右に大きく広げる必要がない。さらに、湯水混合栓41は、フランジ47に対して相対的に上方に偏って配設されている。これにより、フランジ47の多くは湯水混合栓41の下方となるので、フランジ47が湯水混合栓41やハンドル46の背後となるので、フランジ47が目立ちにくくなる。
【0037】
次に、図2、3に加えて図4及び図5を参照して、水栓装置の立壁への取り付け工程について説明する。図4は、本発明の実施形態に係る洗面化粧台の水栓装置挿入直後の断面図であり、図5は、本発明の実施形態に係る洗面化粧台の水栓装置挿入中の断面図である。
【0038】
<第1の工程>
まず、洗面化粧台1を移動させ、その背面を洗面室壁Wに当接させて設置する。
【0039】
<第2の工程>
次に、図4に示すように、水栓装置40の給水配管42c、給湯配管42h、フレキシブルホース42fを、それらの端部に設けられた袋ナット44c、44h、44fから押し込むようにして貫通孔14に挿入する。給水配管42c及び給湯配管42hは可撓性に乏しい耐圧ホースであるから、それらの一部のみを大きく曲げて貫通孔14に挿入することは難しい。したがって、挿入の際には、給水配管42c、給湯配管42h、フレキシブルホース42fを立壁11の前面部の上方から立壁11の背後の水槽12の後方領域15に向けて、斜め下向きに押し込んでいく。
【0040】
貫通孔14を通過した袋ナット44c、44h、44fは、給水配管42c等を押し込むと、斜め下方の向きに押し込まれるので、洗面室壁Wに当たることなく水槽12の背後となる後方領域15に到達する。さらに、給水配管42c等を押し込むと、後横桟34の上端34Tに取り付けた段差抑制部39によって、給水配管42c等の端部は後横桟34の上端34Tに引っ掛かることなく、背板36の前面側、すなわち、キャビネット30の収納空間35に到達する。
【0041】
起立させた湯水混合栓41に設けられているフランジ部47が、立壁11の貫通孔14の周縁に当接するまで水栓装置40を押し込んだら、フランジ部47と取付金具(図示せず)をネジで締結して、水栓装置40の立壁11への取り付けは完了である。この時、袋ナット44c、44h、44fは、キャビネット30の収納空間35に位置している。
【0042】
次に、キャビネット30の収納空間35に垂下している給水配管42cと止水栓37を接続する。また、給湯配管42hと給湯機(図示せず)を接続する。具体的には、給水配管42cの端部の袋ナット44cと、止水栓37の上端部に設けられている雄ネジ部38を螺合することによって、止水栓37と給水配管42cが給水可能に接続される。また、収納空間35に配置される給湯機の湯の出口と、給湯配管42hの端部の袋ナット44hを接続することにより、給湯可能に接続される。
【0043】
さらに、フレキシブルホース42fの端部の袋ナット44fを、吐水部45側のフレキシブルホース42fの端部に接続する。すなわち、フレキシブルホース42fは、湯水混合栓41に接続された部分と、吐水部45に接続された部分に分割されたものを、キャビネット30の収納空間35の中で接続するものである。このようにしてフレキシブルホース42fを中間位置で接続することで、水栓装置40の取り付け工程は完了となる。
【0044】
以上のような水栓装置40の取り付け工程において、給水配管42c等の端部の袋ナット44c、44h、44fと洗面室壁Wとの干渉は、給水配管42c等を大きめに形成された貫通孔14から斜め下向きに挿入することによって抑制され、洗面室壁Wを激しく傷つけることなく給水配管42c等の配設が可能となる。したがって、給水配管42c、給湯配管42hが可撓性に乏しい耐圧ホースであっても、それぞれの端部に設けられた袋ナット44c、44hによって洗面室壁Wを損傷させることなく、損傷した洗面室壁Wに引っ掛かることなく、立壁11の背面側に配設し、水栓装置40を立壁の前面側から容易に取り付けることができる。このため、洗面化粧台1を設置する設置業者と、給水配管42c及び給湯配管42hを配設する配設業者が異なる場合であっても、設置業者が洗面化粧台1を設置した後に、配設業者がその洗面化粧台1を移動させることなく配設作業を行うことが可能となる。
【0045】
また、後横桟34の上端34Tに、後横桟34の前面と洗面室壁Wとを段差なく繋げる段差抑制部39を設けているため、立壁11の貫通孔14への挿入中に、給水配管42cや給湯配管42hが垂下し、それらの端部の袋ナット44c、44h、44fがキャビネット30の後横桟34の上端34Tに引っ掛かることがない。したがって、給水配管42c及び給湯配管42hの配設作業を効率良く行うことが可能となる。
【0046】
以上、洗面化粧台1の具体例を参照しつつ、本発明に係る水槽付き家具への水栓装置の取り付け方法の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
例えば、貫通孔14から斜め下向きに挿入した給水配管42c等がキャビネット30の背板36の前面側まで洗面室壁Wに当たらずに到達させることができる程度に貫通孔14を大きくすれば、段差抑制部39を設けなくともよい。また、製造工程が増えるものの、湯水混合栓41に一体的に設けられたフランジ47を、湯水混合栓14とは別体とすることも可能である。また、立壁11の貫通孔14周辺を上側が後方に傾く傾斜面とすれば、貫通孔14の広がりを抑制することが可能である。
【0047】
また、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0048】
1:洗面化粧台
10:カウンター
11:立壁
12:水槽
14:貫通孔
30:キャビネット
31L、31R:側板
33:底板
34:後横桟
35:収納空間
36:背板
39:段差抑制部
40:水栓装置
41:湯水混合栓
42c:給水配管
42h:給湯配管
42f:フレキシブルホース
45:吐水部
47:フランジ
図1
図2
図3
図4
図5