特許第6402960号(P6402960)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6402960
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】粘性流体の充填システムおよび充填方法
(51)【国際特許分類】
   B65B 3/12 20060101AFI20181001BHJP
   B65B 3/18 20060101ALI20181001BHJP
   B65B 3/28 20060101ALI20181001BHJP
   B67C 3/00 20060101ALI20181001BHJP
   B67C 3/06 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   B65B3/12
   B65B3/18
   B65B3/28
   B67C3/00 E
   B67C3/06
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-47957(P2018-47957)
(22)【出願日】2018年3月15日
【審査請求日】2018年3月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000214250
【氏名又は名称】ナガセケムテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】特許業務法人河崎・橋本特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 淳
(72)【発明者】
【氏名】松尾 洋
(72)【発明者】
【氏名】山下 奉三
【審査官】 小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/033942(WO,A1)
【文献】 特開2007−197062(JP,A)
【文献】 特開2008−188939(JP,A)
【文献】 特開2009−113861(JP,A)
【文献】 特開2007−091249(JP,A)
【文献】 特開2012−116495(JP,A)
【文献】 特開2001−002190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 3/12
B65B 3/18
B65B 3/28
B67C 3/00
B67C 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘性流体を収容する気密封止可能な耐圧容器と、
前記耐圧容器内の前記粘性流体に圧力を加える加圧部と、
導管を介して前記耐圧容器と流体連通し、アクチュエータを用いて開閉可能なノズル孔を有するカットノズルと、
前記カットノズルのノズル孔と流体連通し、気密封止可能な減圧チャンバーと、
前記減圧チャンバー内に収容され、前記導管および前記カットノズルを介して前記粘性流体が充填されるシリンジと、
前記導管内の前記粘性流体の流体圧力を検出する導管圧力計と、
前記減圧チャンバーおよび前記耐圧容器を減圧する真空ポンプと、
前記減圧チャンバーの内部の容器圧力を検出する容器圧力計と、
前記減圧チャンバー内に配置され、前記シリンジの重量を検出する重量計と、
前記粘性流体を前記シリンジに充填するとき、前記導管圧力計が検出した前記流体圧力、前記容器圧力計が検出した前記容器圧力、および前記重量計が検出した前記重量に基づいて、前記真空ポンプ、前記アクチュエータ、および前記加圧部の動作を制御する制御部と、を備え
前記制御部は、
a)前記真空ポンプを用いて前記減圧チャンバーおよび前記耐圧容器を減圧し、
b)前記容器圧力が所定の圧力値に達したとき、前記アクチュエータを用いて前記ノズル孔を開口し、
c)前記加圧部を用いて、前記粘性流体を前記シリンジ内に充填するために、前記流体圧力を増大させるとともに、増大させた前記流体圧力が前記カットノズルの最大動作許容圧を超える場合には、前記重量計が検出した前記シリンジの前記重量が所定の重量値に達する前に、前記流体圧力を前記カットノズルの前記最大動作許容圧以下となるように低減させ、
d)前記重量計が検出した前記シリンジの前記重量が所定の重量値に達したとき、前記アクチュエータを用いて前記ノズル孔を閉口する、粘性流体の充填システム。
【請求項2】
前記シリンジは、前記減圧チャンバーの内径と略等しいか、これより小さい外径を有し、前記減圧チャンバー内に着脱自在に収容可能である、請求項に記載の粘性流体の充填システム。
【請求項3】
前記加圧部は、前記耐圧容器の内壁に液密に摺動可能な押出板に対して前記耐圧容器を押圧することにより、前記耐圧容器内の前記粘性流体に前記流体圧力を加える、請求項1または2に記載の粘性流体の充填システム。
【請求項4】
前記加圧部は、前記押出板の位置を変位させるサーボモータを有し、
前記制御部は、前記流体圧力が所望の充填圧力値となるように前記サーボモータを制御する、請求項に記載の粘性流体の充填システム。
【請求項5】
前記減圧チャンバー内に収容される前の前記シリンジの先端開口部に先端キャップを取り付ける第1の取付部、
前記シリンジに充填された前記粘性流体の表面にプランジャーを取り付ける第2の取付部、および
前記粘性流体を充填した前記シリンジの上方開口部にヘッドキャップを取り付ける第3の取付部を備えた、請求項1〜のいずれか1項に記載の粘性流体の充填システム。
【請求項6】
粘性流体を収容する気密封止可能な耐圧容器と、
前記耐圧容器内の前記粘性流体に圧力を加える加圧部と、
導管を介して前記耐圧容器と流体連通し、アクチュエータを用いて開閉可能なノズル孔を有するカットノズルと、
前記カットノズルのノズル孔と流体連通し、気密封止可能な減圧チャンバーと、
前記減圧チャンバー内に収容され、前記導管および前記カットノズルを介して前記粘性流体が充填されるシリンジと、
前記導管内の前記粘性流体の流体圧力を検出する導管圧力計と、
前記減圧チャンバーおよび前記耐圧容器を減圧する真空ポンプと、
前記減圧チャンバーの内部の容器圧力を検出する容器圧力計と、
前記減圧チャンバー内に配置され、前記シリンジの重量を検出する重量計と、を備えた充填システムにおいて、
前記導管圧力計が検出した前記流体圧力、前記容器圧力計が検出した前記容器圧力、および前記重量計が検出した前記重量に基づいて、前記真空ポンプ、前記アクチュエータ、および前記加圧部の動作を制御して、前記粘性流体を前記シリンジに充填する工程を備え、前記工程は、
a)前記真空ポンプを用いて前記減圧チャンバーおよび前記耐圧容器を減圧する工程と、
b)前記容器圧力が所定の圧力値に達したとき、前記アクチュエータを用いて前記ノズル孔を開口する工程と、
c)前記加圧部を用いて、前記粘性流体を前記シリンジ内に充填するために、前記流体圧力を増大させるとともに、増大させた前記流体圧力が前記カットノズルの最大動作許容圧を超える場合には、前記重量計が検出した前記シリンジの前記重量が所定の重量値に達する前に、前記流体圧力を前記カットノズルの最大動作許容圧以下となるように低減させる工程と、
d)前記重量計が検出した前記シリンジの前記重量が所定の重量値に達したとき、前記アクチュエータを用いて前記ノズル孔を閉口する工程と、を有する、粘性流体の充填方法。
【請求項7】
前記シリンジは、上方に配置された前記カットノズルの前記ノズル孔から前記粘性流体が充填される、請求項に記載の粘性流体の充填方法。
【請求項8】
前記減圧チャンバー内に収容される前の前記シリンジの先端開口部にキャップを取り付ける工程と、
前記シリンジに充填された前記粘性流体の表面にプランジャーを取り付ける工程と、
前記粘性流体を充填した前記シリンジの上方開口部にヘッドキャップを取り付ける工程と、を有する、請求項6または7に記載の粘性流体の充填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘性流体の充填システムおよび充填方法に関し、とりわけ液状樹脂等の粘性流体をストック容器からシリンジへ充填する充填システムおよび充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高粘度のペースト状の材料をシリンジに充填する装置は、これまでにも提案されている。例えば特許文献1には、ペースト状の材料が収納され、シリンジが嵌合される貫通穴を有する収納容器と、貫通穴の内壁とシリンジとの間に配置され、シリンジを開放状態/固定状態に切り替えるシリンジ固定手段と、収納容器およびシリンジを収納し、内部を減圧できる真空チャンバーと、収納容器内の材料を加圧することによって、材料をシリンジ内に上方に向けて供給する加圧供給手段と、を有するペースト状材料の充填装置が開示されている。
【0003】
また特許文献2には、半導体パッケージの封止に用いられる液状封止樹脂をシリンジに充填する際の樹脂充填量のばらつきを低減することができるシリンジ用液状樹脂充填装置が開示されている。具体的には、この樹脂充填装置は、液状樹脂ストックタンクから供給される液状樹脂をシリンジ内に充填する注入ノズルを有し、移送ホースと分岐管とが液状樹脂流路を形成し、液状樹脂流路に流路断面積を制御する手段を設け、この制御手段を設けた部位の流路断面積を0から全開時まで連続的に制御することにより、シリンジへの液状樹脂の供給速度および供給量を連続量として制御し、シリンジへの液状樹脂の充填量の制御精度を向上させるものである。
【0004】
また特許文献3には、注入ノズル内に残存する液状樹脂を押し出す際に、液状樹脂の飛散を防止するとともに、真空雰囲気室内の真空度が低下しにくい、シリンジへの液状樹脂の充填装置および充填方法が記載されている。より詳しくは、この充填装置は、注入ノズルが、円筒状のノズル本体と、その先端に移送ホースが接続される分岐管と、上下動可能であるプランジャーとを備えており、プランジャーを上昇させたときには、ノズル本体と分岐管とが連通し、プランジャーを下降させたときには、プランジャーの側面で分岐管の出口が閉塞されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−113862号公報
【特許文献2】特許第4069824号公報
【特許文献3】特開2004−345697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、シリンジ先端部を下向きに配置して、シリンジ先端部を介して高粘度のペースト状の材料を充填する場合、シリンジ先端部の径が細いため、長い充填時間を要する。また、単位時間当たりの流量を増大させるためには、材料を加圧する加圧供給手段が大型化しやすいという課題があった。
【0007】
また特許文献1および特許文献2のように、高粘度のペースト状の材料または液状樹脂から気泡の巻き込みを防止するため(脱泡するため)には、充填装置全体を真空チャンバー内に収容して、例えば200Pa以下となるまで減圧する必要があるが、真空チャンバーの容量が大きいため、減圧および減圧解除(大気圧まで加圧)に要する時間が増大してしまうという問題があった。
【0008】
またシリンジは、通常、高粘度のペースト状の材料または液状樹脂が充填された後、プランジャーが取り付けられ、さらに上方開口部にキャップが取り付けられる。このとき特許文献1および特許文献2の充填装置においては、減圧工程および減圧解除工程の律速段階となり、樹脂材料充填された(製品として完成された)シリンダの生産性が実質的に低減する(全体的な製造プロセスが遅延する)という課題もあった。
【0009】
特許文献3に記載の充填装置は、特許文献1および特許文献2と同様、真空雰囲気室内に収容され、液状樹脂をシリンジ内に充填するカットノズルであり、吐出口からの液垂れを防止するように設計されたものである。
【0010】
特許文献1〜3に記載の充填装置は、高い粘性を有する流体をシリンジに充填する充填装置全体が真空チャンバー内に収容されるため大型化しやすく、減圧工程および減圧解除工程に要する時間が長くかかるため生産性が低減するという課題があった。
【0011】
さらに、粘性流体をできるだけ迅速にシリンジ内に充填して、生産性を向上させたいという要請もある。また、粘性流体が充填されたシリンダの製品仕様で定められた一定重量(容量)の粘性流体をできるだけ正確にシリンジ内に充填するという必要性もある。シリンジ内に充填された粘性流体が製品仕様で定められた一定重量より少なければ、ユーザから苦情が出るし、多ければ、余分に充填された粘性流体に対する生産コストが増大してしまうためである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで本発明に係る態様は、粘性流体の充填システムに関し、
この粘性流体の充填システムは、
粘性流体を収容する気密封止可能な耐圧容器と、
耐圧容器内の粘性流体に圧力を加える加圧部と、
導管を介して耐圧容器と流体連通し、アクチュエータを用いて開閉可能なノズル孔を有するカットノズルと、
カットノズルのノズル孔と流体連通し、気密封止可能な減圧チャンバーと、
減圧チャンバー内に収容され、導管およびカットノズルを介して粘性流体が充填されるシリンジと、
導管内の粘性流体の流体圧力を検出する導管圧力計と、
減圧チャンバーおよび耐圧容器を減圧する真空ポンプと、
減圧チャンバーの内部の容器圧力を検出する容器圧力計と、
減圧チャンバー内に配置され、シリンジの重量を検出する重量計と、
粘性流体をシリンジに充填するとき、導管圧力計が検出した流体圧力、容器圧力計が検出した容器圧力、および重量計が検出した重量に基づいて、真空ポンプ、アクチュエータ、および加圧部の動作を制御する制御部と、を備える。
【0013】
また制御部は、
a)真空ポンプを用いて減圧チャンバーおよび耐圧容器を減圧し、
b)容器圧力が所定の圧力値に達したとき、アクチュエータを用いてノズル孔を開口し、
c)加圧部を用いて、粘性流体をシリンジ内に充填するために、前記カットノズルの耐用圧力の範囲で流体圧力を増大させるとともに、重量計が検出したシリンジの重量が所定の重量値に達する前に、流体圧力をカットノズルの最大動作許容圧以下となるように低減させ、
d)重量計が検出したシリンジの重量が所定の重量値に達したとき、アクチュエータを用いてノズル孔を閉口するものであってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る態様によれば、シリンジが収容される減圧チャンバーを小型化するとともに、気泡を巻き込むことなく、できるだけ正確な重量の粘性流体をできるだけ迅速にシリンジ内に充填することができる充填装置および充填方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る粘性流体の充填システムを示す概略図である。
図2】(a)〜(d)は、粘性流体が充填されたシリンジの製造プロセスの各工程を概略的に示す断面図である。
図3】制御部により制御される流体圧力および容器圧力の時間的推移を示すタイミングチャートである。
図4】本実施形態に係る粘性流体の充填方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る粘性流体の充填システムおよび充填方法の実施形態について以下説明する。本発明に係る粘性流体の充填システムは、概略、高粘度の液状樹脂等の粘性流体を、実質的に過不足なく迅速にシリンジに充填するとともに、粘性流体をシリンジに充填する工程の前後の付帯工程を含む一連のシリンジ製造プロセスを遅滞なく実施することを可能にするものである。
【0017】
具体的には、本実施形態に係る粘性流体の充填システムは、図1に示すように、粘性流体を収容する気密封止可能な耐圧容器10と、耐圧容器内の粘性流体に圧力を加える加圧部15と、導管50を介して耐圧容器10と流体連通し、アクチュエータ48を用いて開閉可能なノズル孔46を有するカットノズル40と、カットノズル40のノズル孔46と流体連通し、気密封止可能な減圧チャンバー30と、減圧チャンバー30内に収容され、導管50およびカットノズル40を介して粘性流体が充填されるシリンジ20と、導管50内の粘性流体の流体圧力P1を検出する導管圧力計54と、減圧チャンバー30および耐圧容器10を減圧する真空ポンプ60と、減圧チャンバー30および耐圧容器10の内部の容器圧力p2を検出する容器圧力計34と、減圧チャンバー30内に配置され、シリンジ20の重量を検出する重量計80と、粘性流体をシリンジ20に充填するとき、導管圧力計54が検出した流体圧力P1、容器圧力計34が検出した容器圧力p2、および重量計80が検出した重量に基づいて、真空ポンプ60、アクチュエータ48、および加圧部15の動作を制御する制御部70と、を備える。
本実施形態に係る粘性流体の充填システムによれば、シリンジ20ごとに順次、i)先端キャップ取付工程、ii)粘性流体の充填工程、iii)プランジャー取付工程、およびiv)ヘッドキャップ取付工程を実施できるので、前掲特許文献1および2のように、大型の収納用器を減圧および減圧解除する必要がなく、これに要する待機時間を排除して、生産性を格段に向上させることができる。
【0018】
さらに制御部70は、a)真空ポンプ60を用いて減圧チャンバー30および耐圧容器10を減圧し、b)容器圧力p2が所定の圧力値に達したとき、アクチュエータ48を用いてノズル孔46を開口し、c)加圧部15を用いて、粘性流体をシリンジ20内に充填するために、カットノズル40の最大動作許容圧Pnを超えるまで流体圧力を増大させるとともに、重量計80が検出するシリンジ20の重量が所定の重量値に達する前に、流体圧力p1をカットノズル40の最大動作許容圧Pn以下となるように低減させ、d)重量計80が検出するシリンジ20の重量が所定の重量値に達したとき、アクチュエータ48を用いてノズル孔46を閉口するものであってもよい。
このように構成された充填システムによれば、正確に測定された一定重量の粘性流体Fをできるだけ迅速にシリンジ20内に充填することができる。
【0019】
またシリンジ20は、減圧チャンバー30の内径と略等しいか、これより小さい外径を有し、減圧チャンバー30内に着脱自在に収容可能に構成される。減圧チャンバー30およびシリンジ20の形状は、特に限定されないが、例えば円筒または角筒などの筒形状であってもよい。また減圧チャンバー30とシリンジ20との形状はそれぞれ異なっていてもよいが、略同形状とすることで、シリンジ20の外径と減圧チャンバー30の内径の間に形成されるギャップ(空間)を小さくすることができる。ギャップが小さいほど、真空ポンプ60が減圧チャンバー30を所定の圧力(例えば200Pa以下)まで減圧するために必要な時間を短縮することができる。
【0020】
また加圧部15は、耐圧容器10の内壁に液密に摺動可能な押出板16に対して耐圧容器10を押圧することにより、耐圧容器10内の粘性流体に流体圧力を加えるように構成してもよい。好適には、加圧部15は、押出板16の位置を変位させるサーボモータ14を有し、制御部70は、流体圧力p1が所望の圧力値となるようにサーボモータ14を制御するように構成される。なお、粘性流体の粘度は、1Pa・s以上であってもよい。特に、本発明の充填システムでは、粘性流体が50〜2000Pa・sのような高粘度、更には600〜2000Pa・sのような超高粘度である場合でも、生産性よくシリンジに充填することが可能である。なお、粘度は、ブルックフィールド社製、HBT型粘度計を用いて、25℃、せん断速度2.5(1/s)において測定される値である。
【0021】
この充填システムは、減圧チャンバー内に収容される前のシリンジの先端開口部に先端キャップを取り付ける第1の取付部、シリンジに充填された粘性流体の表面にプランジャーを取り付ける第2の取付部、および粘性流体を充填したシリンジの上方開口部にヘッドキャップを取り付ける第3の取付部を備えることが好ましい。
本実施形態に係る粘性流体の充填システムによれば、高粘度の液状樹脂等の粘性流体を、実質的に過不足なく迅速にシリンジに充填するとともに、粘性流体をシリンジに充填する工程の前後の付帯工程を含む一連のシリンジ製造プロセスを遅滞なく実施することができる。
【0022】
[粘性流体の充填システムの全体構成]
ここで図1を参照しながら、本発明の実施形態に係る粘性流体の充填システム1(以下、単に「充填システム」という。)の構成について以下説明する。図1は、充填システム1の構成部品を示す概略図である。なお、本願でいう粘性流体とは、一般に、高い粘性を有する流体をいい、例えばフィラーを多く含有し(例えば60〜95質量%)、半導体装置の封止モールド樹脂を形成するための高粘度の液状樹脂をいうが、これに限定されるものではない。
【0023】
本実施形態に係る充填システム1は、概略、図1に示すように、大量の粘性流体Fを収容する耐圧容器10と、粘性流体Fが充填されるシリンジ20を収容する減圧チャンバー30と、粘性流体Fをシリンジ20内に吐出するとともに、せん断力により粘性流体Fを切断するカットノズル40とを備える。耐圧容器10とカットノズル40は、ステンレス等で形成された導管50(配管)を介して流体連通するように構成されている。導管50は二方バルブ52を含むものであってもよい。二方バルブ52は、閉状態および開状態を選択することができ、耐圧容器10の交換を容易にするためのものであり、閉状態に切り替えて耐圧容器10を充填システム1から取り外し、新たな耐圧容器10を充填システム1に取り付けた後に開状態に切り替えて、粘性流体Fの連続的な充填プロセスを実現するものである。
【0024】
また本実施形態に係る充填システム1は、耐圧容器10および減圧チャンバー30を減圧する真空ポンプ60を備える。真空ポンプ60は、排気管62を介して耐圧容器10および減圧チャンバー30の内部の圧力が例えば200Pa以下となるまで減圧するように構成されている。なお、耐圧容器10および減圧チャンバー30を独立して減圧する2つの真空ポンプ(図示せず)を設けてもよい。
【0025】
[耐圧容器]
耐圧容器10は、例えばアクリル樹脂で形成された略円筒形状の容器であり、上述のとおり、大量の粘性流体Fを収容または貯蔵するものである。耐圧容器10は、昇降ステージ12上に載置され、ステップモータ等のサーボモータ14を用いて昇降されるように構成されている。またサーボモータ14は、プログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)等の制御部70と電気的に接続され、制御部70は、耐圧容器10の昇降位置を正確に認識するとともに、サーボモータ14を用いて昇降ステージ12の昇降位置を精度よく制御することができる。
【0026】
耐圧容器10は、充填された粘性流体Fの上方に配置され、耐圧容器10の内壁11に液密に摺動可能な押出板16を有する。押出板16は、所与の高さ位置に固定されている。また耐圧容器10の内壁11に接する押出板16の周端壁には弾性材料で形成されたOリング(図示せず)が設けられている。こうして耐圧容器10は、押出板16(およびOリング)と協働して、気密封止される。
【0027】
押出板16は、その略中央に、導管50の一方の端部が連結された貫通孔18と、排気管62が連結された排気孔19とを有する。真空ポンプ60が作動すると、耐圧容器10および減圧チャンバー30は、排気管62を介して真空引きされ、これらの内部の圧力が例えば200Pa以下となるまで減圧される。耐圧容器10が減圧されると、耐圧容器10内に収容された粘性流体Fに含まれていた気泡が取り除かれ、すなわち粘性流体Fが脱泡される。粘性流体F内に気泡が含まれていると、ユーザサイドで粘性流体Fを用いて製造された製品に著しい不具合をもたらすことから、シリンジ20に充填される粘性流体Fは気泡を含まないことが強く求められる。こうした理由から、本実施形態に係る充填システム1を用いてシリンジ20に粘性流体Fを充填する際、真空ポンプ60は、耐圧容器10および減圧チャンバー30を実質的に減圧するように構成されている。
【0028】
他方、サーボモータ14を用いて、昇降ステージ12を上昇させると、耐圧容器10に収容された粘性流体Fは、正の圧力を加えられ(加圧され)、導管50から上方に押し出される。加圧された粘性流体Fは、導管50を通ってカットノズル40に供給される。同様に、サーボモータ14を用いて、昇降ステージ12を下降させると、粘性流体Fの圧力は小さくなる。本願では、耐圧容器10が載置される昇降ステージ12、および耐圧容器10内の粘性流体Fに圧力を加えるサーボモータ14を総称して加圧部15ともいう。
【0029】
導管50の形状および径が一定であるとき、導管50に流れる粘性流体Fの流速(単位時間当たりの粘性流体Fの流量)は、導管50内の粘性流体Fに加わる圧力(ベルヌーイの定理で決まる流体圧力p1)に依存するため、サーボモータ14で駆動される昇降ステージ12の昇降位置および昇降速度を調整することにより、流体圧力p1を極めて精緻に制御することができる。このとき、カットノズル40のノズル孔46を適正なタイミングで開閉することにより、カットノズル40からシリンジ20に吐出される粘性流体Fの流量を正確に制御することができる。
【0030】
また、導管50の形状および径が一定であるとき、導管50が許容できる最大の圧力が決まる。流体圧力p1が最大圧力以下となるように導管50に流れる粘性流体Fを加圧する(昇降ステージ12の上昇速度を増大させる)ことにより、導管50が許容する圧力範囲(耐用可能な圧力範囲)において、粘性流体Fの最大の流速が得ることができる。すなわち粘性流体Fのシリンジ20への充填速度を最大化または最適化することができる。このように本実施形態に係る加圧部15によれば、粘性流体Fを極力迅速に(導管50に対して最適化された流速で)シリンジ20内に充填することにより、シリンジ20の生産性を向上させることができる。
【0031】
なお、ここでは、耐圧容器10を載置した昇降ステージ12の昇降により、粘性流体Fへの加圧を行っているが、加圧部15はこれに限定されず、例えば、耐圧容器10を固定し、押出板16を下降させて粘性流体Fを加圧するような構成であってもよい。また耐圧容器10の上昇/下降と押出板16の上昇/下降とを組み合わせて加圧制御するような構成であってもよい。
【0032】
[減圧チャンバー]
減圧チャンバー30は、例えばアクリル樹脂で形成された略円筒形状の容器であり、その内部にシリンジ20を着脱自在に収容するものである。また減圧チャンバー30は、真空ポンプ60で減圧されるように気密封止されている。
【0033】
シリンジ20は、同様にアクリル樹脂で形成された略円筒形状の容器であり、カットノズル40から供給される粘性流体Fが充填されるものである。シリンジ20の外径は、減圧チャンバー30の内径と略等しいか、これより小さいことが好ましい。シリンジ20の外径と減圧チャンバー30の内径の間に形成されるギャップ(空間)が小さいほど、有利にも、真空ポンプ60が減圧チャンバー30(およびシリンジ20)を所定の圧力(例えば200Pa以下)まで減圧するために必要な時間を短縮することができる。すなわち、シリンジ20の外径が、減圧チャンバー30の内径と略等しいとき、真空ポンプ60による減圧に要する動作時間を最適化することができる。
【0034】
また減圧チャンバー30は、その底部に設けられたロードセル等の重量計80を有する。重量計80は、制御部70と電気的に接続されている。重量計80は、充填されている粘性流体Fを含めたシリンジ20の重量を測定(検出)し、測定された重量に対応する重量データを制御部70に送信する。すなわち重量計80は、充填工程において充填されている粘性流体Fの重量をリアルタイムで測定し、制御部70にフィードバックする機能を有する。
【0035】
[カットノズル]
カットノズル40は、概略、導管50(配管)の他方の端部に連結された供給管42と、略円筒状のノズル本体44と、先端部に設けたノズル孔46とを備え、導管50を介して耐圧容器10と流体連通している。またカットノズル40は、ノズル孔46付近まで延び、エアシリンダー等のアクチュエータ48により駆動されるカットヘッド(図示せず)を有する。アクチュエータ48の動作に応じてカットヘッドが上下移動し、カットヘッドの先端部がノズル孔46を開閉する。すなわちカットノズル40は、アクチュエータ48を用いて選択的に開閉可能なノズル孔46を有する。ノズル孔46が開いた状態にあるとき、加圧部15で加圧された粘性流体Fが、減圧されたシリンジ20の内部に吐出(充填)され、ノズル孔46が閉じようとするとき、カットヘッドの先端部のせん断作用により、吐出されている粘性流体Fが液垂れすることなく切断される。つまり、すなわちカットノズル40のノズル孔46を適正なタイミングで開閉することにより、一定の流量(重量)の粘性流体Fを極めて正確にシリンジ20内に充填することができる。
【0036】
なお、せん断力により粘性流体Fを切断するようにカットノズル40を機能させるためには、粘性流体Fの流体圧力p1を所定の(許容される)最大の動作圧力以下に減圧する必要がある。すなわちカットノズル40は、その機能を十分に発揮させる上で許容される最大の動作圧力(以下、「最大動作許容圧Pn」という。)が仕様上設定されている。
ただし、本実施形態に係る加圧部15は、流体圧力p1が最大動作許容圧Pn以下となるように減圧する(昇降ステージ12の上昇速度を低減するか、あるいは下降速度を増大する)ことにより、カットノズル40の機能を担保する流体圧力p1の最大動作許容圧Pn以下の条件で、信頼性よく粘性流体Fを切断することができる。このように本実施形態に係る加圧部15によれば、粘性流体Fをシリンジ20にできるだけ迅速に充填した後、流体圧力p1をカットノズル40の最大動作許容圧Pn以下となるまで減圧して、せん断力により粘性流体Fを切断するので、適正な重量の粘性流体Fをシリンジ20内に迅速に充填することができる。
【0037】
[圧力計]
本実施形態に係る充填システム1は、導管50内の粘性流体Fの流体圧力p1を測定/検出する導管圧力計54、および耐圧容器10ならびに減圧チャンバー30の内部の容器圧力p2を検出する容器圧力計34をさらに備える。導管圧力計54および容器圧力計34は、制御部70に電気的に接続され、制御部70は、導管50内の粘性流体Fの流体圧力p1、および耐圧容器10ならびに減圧チャンバー30の内部の容器圧力p2を常時モニターして、アクチュエータ48、および加圧部15の動作の制御にフィードバックすることができる。なお、耐圧容器10および減圧チャンバー30の内部の容器圧力p2を独立して検出する2つの容器圧力計34(図示せず)を設けてもよい。
【0038】
[粘性流体が充填されたシリンジの製造プロセス]
図2は、粘性流体が充填されたシリンジ20の製造プロセスの各工程を概略的に示す断面図である。本実施形態に係る製造プロセスは、概略、i)先端キャップ取付工程(図2(a))、ii)粘性流体の充填工程(図2(b))、iii)プランジャー取付工程(図2(c))、およびiv)ヘッドキャップ取付工程(図2(d))を有する。
【0039】
i)先端キャップ取付工程では、用意されたシリンジ20の先端開口部22に先端キャップ24が取り付けられる(図2(a))。ii)粘性流体の充填工程では、詳細後述するが、上方に配置されたカットノズル40から上方開口部26を介して、粘性流体Fが上方(矢印で図示)からシリンジに充填される(図2(b))。iii)プランジャー取付工程では、粘性流体Fが充填されたシリンジ20を減圧下でプランジャー27が取り付けられる(図2(c))。そして、iv)ヘッドキャップ取付工程では、上方開口部26をカバーするようにヘッドキャップ28が取り付けられる(図2(d))。
【0040】
本実施形態によれば、ii)粘性流体の充填工程(充填方法)のみならず、その前後の付帯工程を含む上記i)〜iv)の一連の工程を、シリンジ20ごとに連続的に実施することができる。したがって、前掲特許文献1および2のように、バッチ処理で粘性流体が充填処理される大型の収納容器を減圧し、減圧解除するために必要な時間を省略できるので、上記i)〜iv)の一連の工程を滞りなく(シリンジ20の全体的な製造プロセスを遅延なく)、より円滑に実施することができる。
【0041】
[粘性流体の充填工程(充填方法)]
上述のように、本実施形態に係る制御部70は、サーボモータ14で駆動される昇降ステージ12の昇降位置および昇降速度を調整することにより、流体圧力p1を極めて精緻に制御することができる。また制御部70は、真空ポンプ60を用いて、耐圧容器10および減圧チャンバー30の内部の容器圧力p2を制御することができる。図3は、制御部70により制御される流体圧力p1および容器圧力p2の時間的推移を示すタイミングチャートである。図3において、流体圧力p1を実線で示し、容器圧力p2を破線で示し、流体圧力p1および容器圧力p2が一致するとき、これらを実線のみで示す。図4は、本実施形態に係る粘性流体Fの充填方法を示すフローチャートである。
【0042】
図4のフローチャートのステップST01において、図2(a)に示す先端キャップ取付工程において、先端開口部22に先端キャップ24が取り付けられたシリンジ20を、減圧チャンバー30内にセット(収容)する。このとき、カットノズル40のノズル孔は閉じており、耐圧容器10および減圧チャンバー30の内部の容器圧力p2は、大気圧(P=101.3kPa)である。
【0043】
ステップST02において、制御部70は、真空ポンプ60を用いて、容器圧力p2が所望の真空圧力(例えば200Pa以下)となるまで減圧を開始する(t=t)。
【0044】
ステップST03において、容器圧力p2が所望の真空圧力Pvに達したことを容器圧力計34が検出したとき(t=t)、制御部70は、アクチュエータ48を用いて、カットノズル40のノズル孔46を開く。このとき、導管50内の流体圧力p1は減圧される。その後、真空ポンプ60の真空引きが解除されるまで(t=t)、容器圧力p2は所望の真空圧力Pvに維持される。
【0045】
ステップST04において、制御部70は、サーボモータ14(加圧部15)を用いて、昇降ステージ12を上昇させて、導管50内の流体圧力p1を所定の目標圧力Pfに達するまで増大させる(t=t)。そして制御部70は、一定の上昇速度で昇降ステージ12を上昇させることにより、流体圧力p1を目標圧力Pfに維持し、導管50内に流れる粘性流体Fの流速を一定に維持する。このとき、粘性流体Fは、導管50からカットノズル40に送出され、開口したノズル孔46からシリンジ20内に上から充填される。
【0046】
なお、所定の目標圧力Pfは、カットノズル40が許容する耐用圧力と導管50が許容する耐用圧力のうち低い方の耐用圧力Pcより小さくなるように設定される。最大動作許容圧Pnは、カットノズル40にもよるが、例えば0.5MPaであってもよく、カットノズル40または導管50の耐用圧力Pcは、例えば1.0MPaであってもよい。耐用圧力Pcが高いほど、導管50に流れる粘性流体Fの流速を大きくでき、より迅速に粘性流体Fをシリンジ20に充填することができるが、耐用圧力範囲において安全率をみた目標圧力Pfを設定することが好ましい。
【0047】
粘性流体Fをシリンジ20内に充填するにつれて、シリンジ20の重量は増大する。ステップST05において、重量計80は、充填されている粘性流体Fの重量をリアルタイムで測定する。シリンジ20内に充填される粘性流体Fの目標の重量は、ユーザの要求に即した任意の重量であるが、例えば600gであってもよい。
【0048】
ステップST06において、制御部70は、充填されている粘性流体Fの重量が目標の重量の所定の割合(例えば90%、すなわち重量540g)に達したか否かを判断する。充填されている粘性流体Fの重量が所定の割合の重量未満であるとき、引き続き、粘性流体Fがシリンジ20に充填される。一方、充填されている粘性流体Fの重量が所定の割合の重量に達したと制御部70が判断したとき(t=t)、ステップST07において、昇降ステージ12の上昇速度を低減するか、昇降ステージ12を下降させることにより、流体圧力p1をカットノズル40の最大動作許容圧Pn以下となるまで低減する。
【0049】
すなわち制御部70は、ステップST04〜ステップST07において、加圧部15を用いて、粘性流体Fをシリンジ20内に充填するために、流体圧力Fを増大させるとともに、重量計80が検出したシリンジ20の重量が所定の重量値に達する前に、流体圧力p1をカットノズル40の最大動作許容圧Pn以下となるように低減させる。
【0050】
なお、ステップST08において、制御部70は、導管圧力計54を用いて流体圧力p1を継続的に測定し、流体圧力p1がカットノズル40の最大動作許容圧Pn以下の圧力で安定していることをモニターしてもよい。このとき粘性流体Fのシリンジ20への充填は、より小さい流量で継続され、流体圧力p1は、カットノズル40の機能を十分に発揮させる最大動作許容圧Pnに維持される。
【0051】
ステップST09において、制御部70は、重量計80で測定されたシリンジ20内の粘性流体Fの重量が目標の重量(例えば600g)に達したと判断したとき、ステップST10において、カットノズル40のノズル孔46を閉め、せん断力により粘性流体Fを液垂れすることなく切断する(t=t)。これと同時に、制御部70は、昇降ステージ12を下降させて、流体圧力p1が大気圧に戻るまで減圧する。ステップST09において、シリンジ20内の粘性流体Fの重量が目標の重量に達していないときは、引き続き、シリンジ20内の粘性流体Fの重量を測定し続ける。このように本実施形態に係る粘性流体の充填方法によれば、シリンジ20に充填された粘性流体Fの重量を極めて精緻に調整することができる。
【0052】
ステップST11において、制御部70は、流体圧力p1が大気圧に戻ったと判断したとき、真空ポンプ60を停止し、耐圧容器10および減圧チャンバー30の内部の圧力を大気圧に戻す(t=t)。
【0053】
上記説明した粘性流体の充填工程の後、粘性流体が充填されたシリンジ20は、減圧チャンバー30から取り出され(あるいは減圧チャンバー30内で)、上記説明したiii)プランジャー取付工程およびiv)ヘッドキャップ取付工程に搬送される。すなわち、本実施形態に係る粘性流体の充填工程は、シリンジ20ごとに順次、i)先端キャップ取付工程、iii)プランジャー取付工程、およびiv)ヘッドキャップ取付工程の連続的実施を可能にするものであり、前掲特許文献1および2のように、大型の収納用器に複数のシリンジを配置してバッチ処理することに起因して、その収納用器を減圧および減圧解除する必要がないので、減圧および減圧解除に要する待機時間を排除して、生産性を格段に向上させることができる。
【0054】
なお、図1のカットノズル40は、単一の減圧チャンバー30内に収容された単一のシリンジ20に粘性流体Fを吐出するように構成されているが、導管50と複数の供給管42の間にマニホールド(図示せず)を設けて、単一の導管50から複数のカットノズル40に粘性流体Fを供給するように構成してもよい。このとき、複数のカットノズル40の下方には、それぞれ減圧チャンバー30内に収容されたシリンジ20、および重量計80が配置され、単一の充填工程で、複数のシリンジ20に粘性流体Fを充填することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、粘性流体をシリンジ内に充填する充填システムおよび充填方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1…粘性流体の充填システム、10…耐圧容器、11…内壁、12…昇降ステージ、14…サーボモータ、15…加圧部、16…押出板、18…貫通孔、19…排気孔、20…シリンジ、22…先端開口部、24…先端キャップ、26…上方開口部、27…プランジャー、28…ヘッドキャップ、30…減圧チャンバー、34…容器圧力計、40…カットノズル、42…供給管、44…ノズル本体、46…ノズル孔、48…アクチュエータ、50…導管(配管)、52…二方バルブ、54…導管圧力計、60…真空ポンプ、62…排気管、70…制御部(PLC)、80…重量計、F…粘性流体、Pv…真空圧力、P…大気圧、Pn…カットノズルの最大動作許容圧、Pf…目標圧力、Pc…耐用圧力

【要約】
【課題】気泡を巻き込むことなく、できるだけ正確な重量の粘性流体をできるだけ迅速にシリンジ内に充填することができる充填装置および充填方法を提供する。
【解決手段】粘性流体を収容する耐圧容器と、耐圧容器内の粘性流体に圧力を加える加圧部と、導管を介して耐圧容器と流体連通し、アクチュエータを用いて開閉可能なノズル孔を有するカットノズルと、ノズル孔と流体連通する減圧チャンバーと、減圧チャンバー内に収容され、粘性流体が充填されるシリンジと、導管内の粘性流体の流体圧力を検出する導管圧力計と、減圧チャンバーおよび耐圧容器を減圧する真空ポンプと、容器圧力を検出する容器圧力計と、シリンジの重量を検出する重量計と、粘性流体をシリンジに充填するとき、流体圧力、容器圧力、およびシリンジの重量に基づいて、真空ポンプ、アクチュエータ、および加圧部の動作を制御する制御部と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4