【文献】
レシピID:1167321,青梅のジャム,クックパッド,日本,2010年 6月24日,URL,https://cookpad.com/recipe/1167321
【文献】
レシピID:1844923,とっても爽やか!青梅のジャム,クックパッド,日本,2012年 6月 9日,URL,https://cookpad.com/recipe/1844923
【文献】
れしぴID:1844923,とっても爽やか!青梅のジャム,クックパッド,日本,2012年 6月 9日,URL,https://cookpad.com/recipe/1844923
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、完熟梅や追熟梅は収穫時期が限られており、日持ちも短く、実も傷みやすいことから、原料の確保が困難であるという課題がある。
これに対し青梅は、完熟梅や追熟梅に比べて収穫時期が長く、日持ちもし、実も傷みにくいことから、青梅を用いることができれば原料の調達や保管が容易になるため、かかる青梅を有効利用できるような梅加工品が望まれていた。
【0006】
また、近年の健康志向に伴い、上記の要望とは別の要望として低糖度(低Brix)の梅加工品や食品添加剤を用いない梅加工品が健康指向の観点から絶えず望まれているという状況がある。
【0007】
さらに、焼き菓子や菓子パンなどの分野においては、製造の際の成形性に優れる適度な硬さを持つフィリングまたはスプレッド、あるいは製造の際の加熱時において耐熱性(加熱時における形状保持性)に優れるフィリングやスプレッドの要望がある。
しかしながら、一般的なジャムやペーストではゲル化剤を添加しなければ成形性に優れるような硬さを得ることはできず、またゲル化剤を添加して成形性を確保した場合であっても、加熱をすると形が崩れたり、加熱条件によっては融けたり、炭化してしまうという耐熱性の問題があるため、従前においてはどうしても加熱後にジャムやペーストを塗布、注入せざるを得ないという状況があった。
【0008】
なお、近年においてはこのような耐熱性の要望に対応したジャムやマーマレードが開発されているが、このような耐熱性ジャムなども耐熱性を向上させるための食品添加剤を用いているのが現状であり、このような添加剤を用いずに耐熱性を実現したものは開発されていないのが現状である。
【0009】
また、梅実を用いたジャムやペーストにおいては、このような耐熱性を有する加工品自体がないことから、どうしても加熱後に梅ジャムや梅ペーストを塗布、注入せざるを得ず、加熱による風味を実現した梅ジャム若しくは梅ペースト入り焼き菓子や梅ジャム若しくは梅ペースト入り菓子パンを製造することができないという問題があった。
【0010】
今回、本発明者らは鋭意検討を行った結果、青梅または凍結した青梅を用い、かかる梅実を特定の温度範囲で加熱処理することによって、入手が容易である青梅を用いつつゲル化剤を使用することなくゲル状とすることができ、かつ耐熱性を有する梅加工品が得られるという知見を得るに至ったのである。また、かかる耐熱性を有しつつ、Brixが低く、硬度が高い梅加工品を得ることができるという知見を得るに至ったのである。
【0011】
すなわち、本発明は、上記した従来の梅加工品の問題点に鑑みてなされたものであって、青梅を用いながらもゲル化剤を使用することなくゲル状となり、かつ耐熱性(加熱時における形状保持性)を有する梅加工品および梅加工品の製造方法の提供を目的とするものである。また、耐熱性とともに高い硬度を有する梅加工品および梅加工品の製造方法の提供を目的とするものである。さらに、かかる耐熱性および硬度を低Brixの下において有する梅加工品および梅加工品の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る耐熱性梅
ジャムまたは梅ゼリー製品は、青梅または凍結した青梅と糖類を主成分とし、
青梅または凍結した青梅と水を加温して、青梅または凍結した青梅の芯温を50℃以上80℃以下で5分以上保持するとともに、保持の前または後に糖類を配合し、青梅果肉と種を分離し、加熱濃縮して得られるゲル化剤を含有しない梅
ジャムまたは梅ゼリー製品であって、Brixが45〜55であり、かつ以下の円柱状物を200℃で10分加熱した際の円柱状物の高さが、50%以上保持されていることを特徴とする。
円柱状物:内径3cm、高さ1.5cmの円筒容器に梅
ジャムまたは梅ゼリー製品を充填した後、円筒容器を除去することによって作製した円柱状物
【0015】
本発明の請求項2に係る耐熱性梅
ジャムまたは梅ゼリー製品は、さらに、レオメーター(サン科学社製レオメーター:CR−500DX)を用いて、直径20mmの円柱形治具を、内径35mmの円筒形容器に充填した梅
ジャムまたは梅ゼリー製品に、温度20℃、侵入速度20mm/分の条件で3mmの深さまで侵入させた際の最大荷重が、1.0N以上であることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項3に係る耐熱性梅
ジャムまたは梅ゼリー製品は、青梅または凍結した青梅に、直径5mmの円柱形治具を、レオメーター(サン科学社製レオメーター:CR−500DX)を用いて、侵入速度60mm/分の条件で1mmの深さまで侵入させた際の最大荷重が、7N以上の梅を使用したことを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項4に係るゲル化剤を用いないBrixが55以下の梅ジャムまたは梅ゼリーの製造方法は、青梅または凍結した青梅に対して糖類を配合する加糖工程と、加糖工程後の青梅または凍結した青梅を加熱して濃縮する加熱濃縮工程を備えるゲル化剤を用いないBrixが55以下の梅ジャムまたは梅ゼリーの製造方法であって、加熱濃縮工程の前に、青梅または凍結した青梅の芯温を50℃以上
80℃以下に加温する加温工程と、青梅または凍結した青梅の芯温が50℃以上
80℃以下になってから5分以上保持する保持工程と、青梅果肉と種を分離する分離工程を備えることを特徴とする。
【0018】
本発の請求項
5に係る
ゲル化剤を用いないBrixが55以下の梅
ジャムまたは梅ゼリーの製造方法は、青梅または凍結した青梅に、直径5mmの円柱形治具を、レオメーター(サン科学社製レオメーター:CR−500DX)を用いて、侵入速度60mm/分の条件で1mmの深さまで侵入させた際の最大荷重が、7N以上の梅を使用したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る耐熱性梅
ジャムまたは梅ゼリー製品および梅ジャムまたは梅ゼリーの製造方法によれば、青梅または凍結した青梅と、糖類を主成分とすることによって、ゲル化剤を使用せずに、耐熱性(加熱時における形状保持性)を有する梅加工品を得ることができる。
【0020】
また、本発明に係る耐熱性梅
ジャムまたは梅ゼリー製品によれば、上記の効果を発現しつつ、低Brixである梅加工品を得ることができる。
【0021】
また、本発明の請求項2に係る耐熱性梅
ジャムまたは梅ゼリー製品によれば、上記の効果とともに高い硬度を有する梅加工品を得ることができる。
【0022】
さらに、本発明の請求項3および請求項5に係る耐熱性梅
ジャムまたは梅ゼリー製品および梅ジャムおよび梅ゼリーの製造方法によれば、特定の硬さを有する梅を「青梅または凍結した青梅」として使用することで、上記の効果を発現する梅加工品をより効果的に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、以下に述べる実施形態は本発明を具体化した一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものでない。
【0025】
(基本構造)
本発明にかかる梅加工品は、1)青梅または凍結した青梅と糖類を主成分とすること、2)ペクチンなどのゲル化剤を外部から添加しないこと、3)加熱時においても耐熱性(形状保持性)を有することを構成要件とするものである。さらに、耐熱性については以下の円柱状物を200℃で10分加熱した際の円柱状物の高さが、50%以上保持されていることを特徴とするものである。
円柱状物:内径3cm、高さ1.5cmの円筒容器に梅加工品を充填した後、 円筒容器を除去することによって作製した円柱状物
【0027】
(青梅または凍結した青梅)
本発明に用いられる梅実は青梅または凍結した青梅である必要がある。このように、完熟梅や追熟梅ではなく青梅または凍結した青梅を原料の梅実とすることによって始めて、ゲル化剤を使用せずに耐熱性(加熱時における形状保持性)を有する梅加工品を得ることができるのである。具体的には、熟度が進むことによって、梅実内に存在しているペクチン成分が低分子量化していないものでなければならない。
また、本発明に用いられる青梅または凍結した青梅は、後記する加熱処理を行ったものである必要がある。このような処理を行うことによって、梅実中に内在する各種のペクチン分解酵素の中の任意のペクチン分解酵素のみを機能させることができ、さらに機能させた任意のペクチン分解酵素によって同じく梅実中に内在するペクチン成分の一部のみを分解させることができ、その結果ゲル化剤を使用せずに耐熱性(加熱時における形状保持性)を有する梅加工品を得ることができるのである。
【0028】
なお、本発明に用いられる青梅または凍結した青梅は、一般的に完熟梅や追熟梅に分類されるものでなければよく、果皮の色や梅実の糖度など様々な手法で選別することができるが、その中でも本発明の梅加工品をより確実に得ることができることから以下の方法によって測定した梅実の最大荷重(硬度)が7N以上のものを用いることが好ましい。
[測定方法]
梅実に、直径5mmの円柱形治具を、レオメーター(サン科学社製レオメーター:CR−500DX)を用いて、侵入速度60mm/分の条件で1mmの深さまで侵入させた際の最大荷重
ここで、上記硬度が7N未満である場合には、果皮の色や梅実の糖度などの手法では完熟梅や追熟梅に分類されない梅実であっても本発明の梅加工品を得ることが難しく、ゲル化剤の添加が避けられなくなる恐れがある。
なお、上記硬度を測定する際の梅実への円柱形治具の侵入位置については、特に限定されるものではないが、確実に本発明に適する青梅であることを選別することができる点から梅実の縫合線を除いた赤道部とすることが好ましい。
【0029】
また、果皮の色で選別する場合には、果皮のb*値が39以下の青梅(特に南高梅)を用いることが好ましい。
【0030】
(糖類)
本発明に用いられる糖類は、従前からジャムやペーストに用いられているものであれば特に限定されるものではなく、例えばブドウ糖、果糖などの単糖類やショ糖、麦芽等、乳糖、トレハロースなどの二糖類を挙げることができる。また、上記糖類を用いていれば、多糖類・糖アルコール類などの糖質を添加することもできる。
【0031】
糖類の添加量については、本発明の構成要件である耐熱性を具備するものであれば特に限定されるものではないが、耐熱性や後記する梅加工品としての硬度を確実に具備するためにはBrixが45〜80となるものであることが好ましく、より好ましくはBrixが45〜55であり、さらに好ましくはBrixが50〜55である。ここで、Brixが55以下の場合にはジャムの分野においては低糖度に分類されることから、健康志向の要望に応え得る梅加工品(梅ジャム)として好適なものとなる。
【0032】
(ゲル化剤)
本発明の梅加工品はゲル化剤を含有しないことが必要である。ここで、「ゲル化剤を含有しない」とは、果実のジャムやペーストを作製する際に外部から添加されるペクチンやゼラチンなどのゲル化剤を含まないとの意である。従って、梅実内に既に存在する各種のペクチン成分までをも含まないとの意ではない。
【0033】
(耐熱性(加熱時における形状保持性))
耐熱性については、上記の通り、内径3cm、高さ1.5cmの円柱状物を200℃で10分加熱した際の円柱状物の高さが、50%以上保持されていることが必要である。ここで、焼き菓子や菓子パンの製造においては、通常200℃程度の温度が10分程度維持されることから、10分以上形状を保持することができれば焼き菓子や菓子パンの製造に用いることができる。
従って、本発明の梅加工品はかかる耐熱性を有していることから、焼き菓子や菓子パンなどに使用する際にも製造時に混合することができ、加熱によっても形状を保持するとともに、加熱による風味を実現した梅入り焼き菓子や梅入り菓子パンを製造することができるのである。
なお、耐熱性については上記した円柱状物の高さが50%以上保持されていればよいが、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは66%以上である。
【0034】
(硬度)
また、本発明の梅加工品は、耐熱性を有しつつ、高硬度の梅加工品とすることもできる。具体的には、以下の方法によって測定した梅加工品の最大荷重(硬度)が1.0N以上の梅加工品とすることができる。
従って、耐熱性を有しつつ、高い硬度を有する本発明の梅加工品は、焼き菓子や菓子パンなどに使用する際に成形が容易なものとすることができるのである。
[測定方法]
レオメーター(サン科学社製レオメーター:CR−500DX)を用いて、直径20mmの円柱形治具を、内径35mmの円筒形容器に充填した梅加工品に、室温において、侵入速度20mm/分の条件で3mmの深さまで侵入させた際の最大荷重
なお、硬度については、上記した最大荷重が1.0N以上であればよいが、成形性をより容易なものとするためには1.5N以上であることが好ましい。
【0035】
(その他)
また、本発明の梅加工品は耐熱性を損なわない範囲において、ゲル化剤以外の各種の果汁、香料、色素、梅以外の果実などを添加することもできる。
【0036】
(製造方法)
本発明の梅加工品の製造方法は、加糖工程の前または後に、青梅または凍結した青梅の芯温を50℃以上に加温する加温工程と、青梅または凍結した青梅の芯温が50℃以上になってから5分以上保持する保持工程を備えることを必要とする。
ここで、従前のジャムやペーストの製造方法としては、まず原料となる果実などに糖類を配合する加糖工程を行い、次にこの配合物を加熱して濃縮する加熱濃縮工程を行うことによって、果実に含まれているペクチンおよび酸と、糖類とを作用させて粘度を上昇させる方法が一般的である。しかしながら、Brixが55以下の低糖度のジャムやペーストを製造する場合には、上記の加糖工程と加熱濃縮工程のみでは粘度が上昇しないことから、糖類以外にゲル化剤などの増粘成分を加える混合工程を追加する必要がある。
すなわち、熟度が進んだ果実を使用したジャムやペーストの製造方法においては、原料に熟度が進んだ果実を使用するため、かかる果実内に存在しているペクチン成分は熟度が進むことによって既に低分子量化していることから、糖類の配合量が少ない場合にはゲル化剤などの増粘成分を加える混合工程を追加する必要があるのである。
【0037】
これに対し、本発明の梅加工品の製造方法は、原料に青梅または凍結した青梅を用いるとともに、従前の製造方法における混合工程を行わず、その代わりに上記した加温工程および保持工程を行うことに特徴があるのである。そして、このような構成を具備することによって、ゲル化剤を使用せずに耐熱性(加熱時における形状保持性)を有する梅加工品を得ることができるのである。
【0038】
具体的には、加温工程および保持工程を経ることによって梅実内において以下の反応が起こることによるものと考えられる。
まず、果実内にはペクチナーゼと呼ばれるペクチン分解酵素が内在していることが知られており、ペクチナーゼはポリガラクツロナーゼ、ペクチックエンザイム、ポリメチルガラクツロナーゼ、ペクチンデポリメラーゼとも呼ばれ、ペクチンメチルエステラーゼ、などの各種のペクチン分解酵素の総称であることが知られている。そして、これらのペクチン分解酵素は果実中に内在するペクチンの官能基を加水分解したり、ペクチン成分を低分子化したりする機能を有する。
ここで、通常のジャムやペーストの製造においては糖類による増粘効果があることからゲル化剤などの増粘成分を加えることなくジャムやペーストとすることができるが、低糖度のジャムやペーストを製造する場合には糖類による増粘効果が低いことから、ペクチンなどのゲル化剤を新たに混合しなければジャムやペーストとすることができないのである。
これに対し、本発明の製造方法は、特徴である加温工程および保持工程を行うことによって、上記したペクチンの低分子量化を行う機能を有するペクチン分解酵素の活性を抑制するとともに、官能基の加水分解反応を行う機能を有するペクチン分解酵素を選択的に活性化させることができるものと考えられる。
そして、構造が変化した官能基同士や、構造が変化した官能基とペクチン鎖との間において、水素結合、イオン結合、共有結合等の架橋効果が発生すると考えられ、その結果ゲル化剤を添加することなくゲル化が進むことになり、高粘度および耐熱性が付与されるものと考えられる。
また、本発明においては原料に青梅または凍結した青梅を用いることから、梅実内のペクチン成分は、熟度が進んだ完熟梅や追熟梅のように低分子量化しておらず高い分子量のままで保持されているから、かかるペクチン成分の絡み合い効果とも相俟って、高粘度および耐熱性が付与されることになると考えられる。
【0039】
なお、加温工程および保持工程の際の温度については、青梅または凍結した青梅の芯温(梅実内の種近傍の温度)が50℃以上である必要があり、好ましくは50〜80℃であり、より好ましくは50〜70℃である。なお、芯温の上限値については80℃以下であれば特に限定されないが、好ましくは70℃以下であり、より好ましくは65℃以下である。
【0040】
また、保持工程の際の保持時間については、青梅または凍結した青梅の芯温が50℃以上になってから5分以上である必要があり、より好ましくは10分以上であり、さらに好ましくは30分以上である。なお、保持時間の上限については特に限定されないが、あまり保持時間を長くしても耐熱性や硬度が頭打ちとなり、製造効率も悪くなることから180分を上限値とすることが好ましい。
【0041】
さらに、加温工程および保持工程は、最終工程である加熱濃縮手段の前に行えばよく、加糖工程の前に行っても加糖工程の後に行っても良い。
【0042】
またその他、本発明の梅加工品の製造方法においては、必要に応じて真空釜を使用したり、果肉と種とを分離するためにパルパーフィニッシャーや金網などの裏ごし装置を用いたりすることもできる。なお、真空釜を使用すれば加熱濃縮工程において梅実と糖類との混合物に過剰な熱がかからずに梅加工品を作製することができ、果肉中のペクチン成分の低分子量化を防止できるので好適である。
【実施例】
【0043】
次に、実施例および比較例に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0044】
(実施例1)
まず、開放釜に水100L(青梅の重量に対して1.2倍量の水)を入れ、60℃になるまで加温した。
次に、[0028]に記載の方法で梅実の縫合線を除いた赤道部を測定した際の硬度が10〜25Nであった青梅(和歌山県産南高梅)を凍結した凍結青梅80kgを、上記した温水に投入して浸漬した。なお、青梅の浸漬直後、温水温度は約25℃まで低下したが再び65℃になるまで加温を続けた。また、青梅の芯部まで挿入した温度センサーで青梅の芯温を確認し続け、浸漬開始後約15分で芯温が65℃に到達したのを確認した(加温工程)。
その後、青梅の芯温が50〜70℃に保持されていることを確認しつつ、さらに30分浸漬を続けた(保持工程)。
なお、浸漬中は釜内部の温度のばらつきを抑える目的で、青梅の果皮を破らない程度におだやかに撹拌した。
【0045】
次に、保持工程後の青梅を笊で取りだし、湯切り後、パルパーフィニッシャーに投入し、果肉と種を分離した。なお、このときの青梅果肉の歩留まりは68.8%であった。その後、この青梅果肉を冷蔵庫に一晩保管した。
【0046】
次に、開放釜に水5Lを入れ、加熱しながらグラニュー糖30kgを数回に分けて投入し溶解することで糖液を作製し、この糖液へ一晩保管後の青梅果肉30kgを投入した(加糖工程)。
【0047】
次に、撹拌混合しながら約20分間、混合物の最終温度が約100℃となるまで加熱濃縮を続け、糖度計でBrixが55に到達したのを確認して加熱を終了し、実施例1の梅加工品を作製した(加熱濃縮工程)。
【0048】
最後に、加熱濃縮終了の梅加工品を5〜10分間静置して内部の気泡が抜けるのを待った後、開放釜から取り出し、一般的な食品の充填ラインで容器に一定量ずつ充填した。なお、充填中の梅加工品の温度は80℃以上を維持しており、この段階ではまだゲル化していなかった。その後、一般的なジャムやゼリーを製造する場合と同様にして、充填した容器を85℃の温水に15分間浸漬して殺菌した。
【0049】
(実施例2)
加温工程の加温到達温度を50℃にし、さらに保持工程の時間を5分にした以外は実施例1と同様にして実施例2の梅加工品を作製した。
【0050】
(実施例3)
保持工程の時間を10分にした以外は実施例1と同様にして実施例3の梅加工品を作製した。
【0051】
(実施例4)
加温工程の加温到達温度を50℃にし、さらに保持工程の時間を15分にした以外は実施例1と同様にして実施例4の梅加工品を作製した。
【0052】
(実施例5)
保持工程の時間を180分にした以外は実施例1と同様にして実施例5の梅加工品を作製した。
【0053】
(実施例6)
加熱濃縮工程における最終Brixが45になるように、水およびグラニュー糖の量を調整した以外は実施例1と同様にして実施例6の梅加工品を作製した。
【0054】
(実施例7)
加温工程の加温到達温度を50℃にし、さらに加熱濃縮工程における最終Brixが50になるように、水およびグラニュー糖の量を調整した以外は実施例1と同様にして実施例7の梅加工品を作製した。
【0055】
(実施例8)
加温工程の加温到達温度を50℃にし、さらに加熱濃縮工程における最終Brixが80になるようにグラニュー糖の量を調整した以外は実施例1と同様にして実施例8の梅加工品を作製した。
【0056】
(実施例9)
開放釜を真空釜に変更した以外は実施例1と同様にして実施例9の梅加工品を作製した。
【0057】
(実施例10)
原料の梅実に、実施例1で用いた凍結青梅の凍結前の青梅を用い、さらに加温工程の加温到達温度を50℃にした以外は実施例1と同様にして実施例10の梅加工品を作製した。
【0058】
(比較例1)
加温工程および保持工程を行わなかった以外は、実施例1と同様にして比較例1の梅加工品を作製した。
【0059】
(比較例2)
加温工程および保持工程を行わず、最終Brixが70になるようにグラニュー糖の量を調整した以外は、実施例1と同様にして比較例2の梅加工品を作製した。
【0060】
(比較例3)
加温工程および保持工程を行わず、最終Brixが75になるようにグラニュー糖の量を調整した以外は、実施例1と同様にして比較例3の梅加工品を作製した。
【0061】
(比較例4)
原料の梅実に、[0028]に記載の方法で測定した梅実の縫合線を除いた赤道部における硬度が4〜5Nである凍結した完熟梅を用いた以外は実施例1と同様にして比較例4の梅加工品を作製した。
【0062】
(比較例5)
原料の梅実に、[0028]に記載の方法で測定した梅実の縫合線を除いた赤道部における硬度が4〜5Nである凍結した完熟梅を用い、さらに加温工程および保持工程を行わない以外は実施例1と同様にして比較例5の梅加工品を作製した。
【0063】
(比較例6)
原料の梅実に、[0028]に記載の方法で測定した梅実の縫合線を除いた赤道部における硬度が3〜4Nである凍結した追熟梅を用い、さらに加温工程の加温到達温度を50℃にした以外は実施例1と同様にして比較例6の梅加工品を作製した。
【0064】
次に、各実施例および各比較例の梅加工品について、耐熱性(加熱時における形状保持性)および硬度の評価を行った。
【0065】
(耐熱性(加熱時における形状保持性)の評価)
耐熱性の評価については、以下の円柱状物を200℃で加熱した際の円柱状物の高さおよび直径の変化を測定することによって評価した。結果を表1および
図1〜
図3に示す。なお、円柱状物の高さの評価は以下の基準によって評価した。
円柱状物:内径3cm、高さ1.5cmの円筒容器に梅加工品を充填した後、円筒容器を除去することによって作製した円柱状物
評価基準
◎:66%以上保持されている。
○:50%以上保持されている。
△:50%未満しか保持されていない。
×:測定不能(融けてしまっている)
【0066】
(硬度の評価)
硬度の評価については、[0034]に記載の通り、以下の円柱形治具を梅加工品に侵入させた際の最大荷重を測定することによって評価した。結果を表1に示す。
[測定方法]
レオメーター(サン科学社製レオメーター:CR−500DX)を用いて、直径20mmの円柱形治具を、内径35mmの円筒形容器に充填した梅加工品に、室温において、侵入速度20mm/分の条件で3mmの深さまで侵入させた際の最大荷重
【0067】
【表1】
【0068】
表1の結果から、実施例の梅加工品については全て、200℃で10分加熱した際の円柱状物の高さが50%以上保持されており、また硬度についても1.0N以上の数値を示した。特に、実施例1〜7、9、10の梅加工品はBrixが55以下という低糖度に分類されるものであり、従前においてはペクチンやゼラチンなどのゲル化剤を外部から添加しなければゲル化することができないものであるところ、このような低糖度の領域においてもゲル化剤を外部から添加することなくゲル化させることができ、その上耐熱性をも有する梅加工品とすることができることは特筆すべきものである。
なお、実施例1については、円柱状物の高さおよび直径の変化を
図1、2に示すとともに円柱状物の形状変化の状況を
図3(
図3(a):平面観察、
図3(b):側面観察)に示すが、優れた耐熱性を示すことが分かった。
さらに、
図4において、実施例1の梅加工品(
図4(a))と、実施例1の梅加工品を製菓用型に充填し、固めたゼリー菓子(
図4(b)、(c))を示すが、本発明の梅加工品は高い硬度を有することから、従前においては不可能であった低糖度の領域においてもゲル化剤を用いずにこのような菓子を製造することができた。
【0069】
これに対して比較例の梅加工品は、表1に示す通り全てにおいて耐熱性を有さず、特に比較例1と比較例5においては硬度も低い梅加工品となった。また、
図1〜
図3からもわかる通り、耐熱性においては円柱状を保たないほど融けてしまい測定(評価)ができない程になってしまった。
【0070】
以上から、本発明の梅加工品および梅加工品の製造方法は、青梅または凍結した青梅を用い、かかる梅実を特定の温度範囲で加熱処理することによって、ゲル化剤を使用することなくゲル状とすることができ、かつ耐熱性を有する梅加工品を得ることができることがわかった。