(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記主剤中のヒドロキシ基(A)と前記硬化剤中のイソシアネート基(B)のモル比、(B)/(A)が、0.5以上5.0以下である請求項1に記載の非吸着層形成用コーティング剤。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<非吸着層形成用コーティング剤>
本発明の非吸着層形成用コーティング剤(以下、「コーティング剤」と略す。)は、基材に塗工されて基材に非吸着性を付与するためのものであり、主剤と硬化剤と分散媒とを含有する。ここで、非吸着性とは、食品、医薬品、化粧品などに含まれる有効成分を吸着しづらい性質のことである。
吸着の抑制が要求される有効成分としては、例えば、揮発性成分ではオレンジジュースなどに含まれるリモネン、医薬品に含まれるサリチル酸メチル、l−メントール、dl−カンファーなどが挙げられる。吸着の抑制が要求される有効成分として、不揮発性成分では消炎鎮痛剤などに用いられる各種薬剤、例えばケトプロフェン、フルルビプロフェン、ロキソプロフェンナトリウム水和物などが挙げられる。
【0010】
(主剤)
主剤は、ヒドロキシ基を有するアクリル単量体(以下、「ヒドロキシ基含有アクリル単量体」ともいう。)単位を含む重合体である。該重合体のヒドロキシ基は、硬化剤の有するイソシアネート基と反応する。
【0011】
ヒドロキシ基含有アクリル単量体単位を形成するヒドロキシ基含有アクリル単量体としては、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル等が挙げられ、1種以上を使用できる。
【0012】
主剤を構成する重合体は、JIS K0070に基づいて測定される水酸基価が、30mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であり、40mgKOH/g以上90mgKOH/g以下であることが好ましい。水酸基価が前記下限値以上であれば、より高い非吸着性を得ることができ、前記上限値以下であれば、架橋に必要な硬化剤の量を少なくでき、コーティング剤により形成された非吸着層のブロッキングを防ぐことができる。
主剤を構成する重合体の水酸基価は、該重合体中のヒドロキシ基含有アクリル単量体単位の含有量により、調整できる。
【0013】
主剤を構成する重合体は、ヒドロキシ基含有アクリル単量体単位以外の他の単量体単位を含んでも構わない。
他の単量体単位を形成する他の単量体としては、アクリル酸アルキルエステル(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等)、メタクリル酸アルキルエステル(例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸ラウリル等)、芳香族ビニル(例えば、スチレン、ビニルトルエン等)、酢酸ビニル、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等が挙げられ、1種以上を使用できる。
【0014】
主剤を構成する重合体の水酸基価が前記範囲内である限り、該重合体中のヒドロキシ基含有アクリル単量体単位および他の単量体単位の含有量には特に制限はないが、通常、ヒドロキシ基含有アクリル単量体単位の含有量は、重合体を構成する全体単位100質量%中、3〜60質量%であることが好ましく、5〜55質量%であることがより好ましく、10〜50質量%であることがさらに好ましい。他の単量体単位の含有量は40〜97質量%であることが好ましく、45〜95質量%であることがより好ましく、50〜90質量%であることがさらに好ましい。他の単量体単位の含有量が前記下限値以上であれば、主剤を分散媒に溶解または分散させやすくなり、前記上限値以下であれば、非吸着性を充分に確保できる。
なお、本明細書において、重合体中の各単量体単位の含有量は、重合体製造時の各単量体の使用量に基づく値であり、重合体の製造に用いた単量体の総量を100質量%とした場合のその単量体の質量割合(%)である。
【0015】
主剤を構成する重合体の質量平均分子量は、10,000〜100,000が好ましく、20,000〜70,000がより好ましい。質量平均分子量が前記下限値以上であれば、コーティング剤により形成された非吸着層のブロッキングを防止でき、前記上限値以下であれば、硬化剤との相溶性を向上させることができる。ここで、質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定し、標準物質としてポリスチレンを用いて求めた値である。
主剤を構成する重合体のガラス転移点(Tg)は、50〜200℃であることが好ましく、70〜150℃であることがより好ましい。ガラス転移点が前記下限値以上であれば、コーティング剤により形成された非吸着層のブロッキングを防止でき、前記上限値以下であれば、硬化剤との反応性を向上させることができる。ここで、ガラス転移点は、示差熱分析計を用いて測定した値である。
【0016】
主剤を構成する重合体は、ラジカル重合開始剤を用いたラジカル重合等の公知の方法で製造できる。
【0017】
(硬化剤)
硬化剤は、イソシアネート基を有し、主剤のヒドロキシ基と反応して主剤を架橋させて硬化させるものである。硬化剤はジイソシアネート化合物が好ましい。
ジイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族系ジイソシアネートが挙げられる。また、これらジイソシアネート化合物の重合体、誘導体または混合物であってもよい。
【0018】
主剤と硬化剤の比率は、主剤中のヒドロキシ基(A)と硬化剤中のイソシアネート基(B)のモル比、(B)/(A)が0.5以上5.0以下であることが好ましく、0.8以上3.5以下であることがより好ましい。(B)/(A)が前記下限値以上であれば充分に主剤を硬化させることができ、前記上限値以下であれば、コーティング剤により形成された非吸着層のブロッキングを防ぐことができる。
【0019】
(分散媒)
分散媒は、主剤及び硬化剤を溶解または分散させる液体である。
分散媒としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、グリコール系溶剤、炭化水素系溶剤等を使用できる。
アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アノン等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル等が挙げられる。
グリコール系溶剤としては、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
炭化水素系溶剤としては、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、メチルシクロヘキサン等が挙げられる。
分散媒は、1種以上を使用できる。たとえば主剤を構成する重合体を製造した際に用いた溶媒、硬化剤が溶解または分散している液の溶媒等が、分散媒としてそのままコーティング剤に含まれてよい。
【0020】
本発明のコーティング剤は、分散媒を含むことによって、固形分濃度が3〜50質量%にされていることが好ましく、4〜40質量%にされていることがより好ましく、5〜30質量%にされていることがさらに好ましい。コーティング剤の固形分濃度が前記下限値以上であれば、1回の塗工でも充分な厚さの非吸着層を容易に形成でき、前記上限値以下であれば、粘度が適度に低くなり、塗工性が向上する。
固形分濃度とは、コーティング剤100質量%中の主剤を構成する重合体(正味量)と、硬化剤(正味量)の合計質量割合である。
【0021】
(その他の成分)
本発明のコーティング剤には、主剤、硬化剤及び分散媒以外に、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、染料、消泡剤、レベリング剤等が含まれても構わない。
【0022】
(作用効果)
本発明者らが調べたところ、前記主剤と硬化剤と分散媒とを含有するコーティング剤の塗工によって形成された非吸着層は、非吸着性に優れていた。また、コーティング剤の塗工による非吸着層の形成では、非吸着層を容易に薄くできるため、コーティング剤の使用量を少なくできる。したがって、前記コーティング剤の塗工によれば、非吸着性に優れた非吸着層を低コストで形成できる。
また、本コーティング剤は、ポリエチレンやポリプロピレンなどの熱接着性樹脂からなる樹脂フィルムに塗工できる。これらの熱接着性樹脂フィルムにパターン塗工することにより、非吸着性と共に熱接着性を発揮できる。
【0023】
<非吸着性積層体>
本発明の非吸着性積層体は、基材と、該基材に前記非吸着層形成用コーティング剤が塗工されて形成された非吸着層とを有するものである。非吸着層は、非吸着層積層体を包装材料に用いた際に、食品、医薬品、化粧品などの内容物と接する最内層に設けられるものである。
【0024】
(基材)
基材としては、プラスチックフィルム、紙、不織布、金属箔等を用いることができるが、非吸着層形成用コーティング剤の塗工量が少量でも非吸着層を形成でき、また、透明性を確保しやすいことから、プラスチックフィルムが好ましい。
プラスチックフィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等が挙げられる。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられ、ポリアミドとしては、6−ナイロン、6,6−ナイロン等が挙げられ、ポリオレフィンとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられ、これらの1種以上を使用できる。
また、プラスチックフィルムは1軸延伸フィルムであっても、2軸延伸フィルムであっても、無延伸フィルムであってもよいが、機械的強度に優れることから、1軸延伸フィルムまたは2軸延伸フィルムが好ましい。
【0025】
基材には、必要に応じて、例えば、静電防止剤、スリップ剤、防曇剤、紫外線吸収剤等の添加剤が含まれてもよい。
基材には、必要に応じて、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、フレーム処理等の表面処理が施されてもよい。
基材には、必要に応じて、イソシアネート系化合物、ポリエチレンイミン、変性ポリブタジエン等のアンカーコート剤があらかじめ塗工されていてもよい。
基材の厚さは特に制限されないが、経済性と使用しやすさとを両立できる点では、12〜40μmであることが好ましい。
基材は、単層であってもよいし、複層であってもよい。
【0026】
非吸着性積層体には、通常、印刷層が形成されるが、印刷層の配置は特に限定されない。例えば、基材の、非吸着層とは反対面に印刷層を積層してもよいし、基材上に印刷層を形成し、その上に非吸着層を設けてもよい。また、ポリエステルや延伸ポリプロピレンフィルムなどの汎用的に用いられる印刷用基材にあらかじめ絵柄を印刷したものと、非吸着性積層体とを、接着剤を用いてラミネートすることもできる。さらに、印刷層が形成された基材の例えば印刷層形成面に、ポリオレフィン等のシーラントフィルムを接着剤を介してラミネートした後に、当該シーラントフィルム上に非吸着層を設けてもよい。
また、非吸着性積層体に風合や剛性を付与するために、外側に紙や不織布(坪量15〜90g/m
2)を積層することも可能である。
酸素バリア性あるいは遮光性を必要とする内容物では、アルミニウム箔やアルミニウム蒸着フィルムを積層できる。ただし、本発明の非吸着性積層体においては、透明性、環境配慮の観点から、構成中にアルミニウム層を含まないことが好ましい。アルミニウム層の代わりに、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデンなどのガス/水蒸気バリア性を有する樹脂フィルムや、酸化アルミニウムや酸化ケイ素などを蒸着した樹脂フィルム、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリル酸を塗工した樹脂フィルムを積層することが好ましい。
【0027】
(非吸着性積層体の製造方法)
非吸着性積層体を製造する方法としては、基材の少なくとも一方の面に、上記コーティング剤を塗工し、乾燥させる方法が挙げられる。
コーティング剤の塗工方法としては特に制限はなく、例えば、ワイヤーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、バーコート法、ダイコート法、カーテンコート法等を適用できる。
コーティング剤の塗工厚さは、乾燥後の非吸着層の厚さで0.05〜10μmにすることが好ましく、0.1〜5μmにすることがより好ましい。塗工厚さが前記下限値以上であれば、汎用的な塗工装置によって容易に塗工でき、前記上限値以下であれば、塗工量が少なくなるため、充分に低コスト化できる。
塗工後の乾燥方法としては、熱風乾燥法、赤外線照射乾燥法等を適用できる。乾燥温度は、40〜120℃であることが好ましく、50〜100℃であることがより好ましい。乾燥温度が前記下限値以上であれば、乾燥速度を速くでき、前記上限値以下であれば、経済的である。
乾燥後には、主剤と硬化剤とを充分に反応させるための加熱処理が施されてもよい。加熱処理の温度は30〜100℃であることが好ましく、40〜70℃であることがより好ましい。
【0028】
(作用効果及び用途)
本発明の非吸着性積層体は、前記コーティング剤を基材に塗工することによって得られたものであるため、非吸着性に優れ、しかも低コストである。また、本発明者らが調べたところ、前記コーティング剤の塗工によって形成された非吸着層は、メントールなどの香り成分の透過を防ぐ保香性にも優れていることが分かった。
このような非吸着層を備える非吸着性積層体は、薬剤や食品を包装するための包装材料として好適に使用できる。
【0029】
本発明の非吸着性積層体を包装材料として使用する場合、非吸着性積層体をフィルム状のまま使用してもよいし、非吸着性積層体を成形または加工して袋状にしてもよい。
また、本発明の非吸着性積層体には、熱接着性を付与してもよい。本発明の非吸着性積層体に熱接着性を付与すると、非吸着性と共に熱接着性を発揮するため、包装袋作製用材料として好適である。熱接着性を付与する方法としては、非吸着層にパターンコートにより熱接着性を有する層を積層する方法、熱接着性を有する層を先に形成した後に、熱接着性を有する層に非吸着層をパターンコートにより形成する方法が挙げられる。熱接着性を有する樹脂としては、酢酸ビニル共重合体、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂などを利用できる。
【0030】
非吸着性積層体によって包装される内容物としては、香辛料、調味料、水産加工品、菓子類などの食品、経口薬品、経皮薬品、貼付剤などの医薬品、その他化粧品、農薬などが挙げられる。
特に、非吸着性積層体によって包装される薬剤としては、サリチル酸メチルやリモネン、シトラール、l−メントール、dl−カンファーなどのテルペン類、サリチル酸、ナフタレンなどの芳香族化合物、その他ビタミン類などが挙げられる。また、鎮痛消炎剤などとして用いられるケトプロフェンやフルルビプロフェン、ロキソプロフェンナトリウム水和物なども挙げられる。一般的には、分子量が低いほど揮発しやすく、吸着しやすいと言われており、低分子量の薬剤、また比較的高分子量であっても高価な薬剤などの包装に対しては、本発明の非吸着性積層体は、より有用である。
【実施例】
【0031】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の例において、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を意味する。
【0032】
(実施例1)
還流冷却管、窒素導入管、温度計、攪拌機、滴下ロート等を備えた反応容器に、酢酸エチル100部、酢酸n−プロピル300部、メチルエチルケトン300部を仕込み、90℃となるまで加熱し、その温度を保持した。次いで、前記反応容器内を攪拌し続けながら、反応容器に、メタクリル酸メチル80部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル20部、ベンゾイルパーオキサイド3部を含む混合液を90℃で3時間滴下し、さらに1時間保持した。
その後、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)1.5gをイソプロピルアルコール200gに溶解した開始剤溶液を沸点にて、均一に2時間掛けて滴下し、さらに1時間保持した。これにより、主剤を得た。
得られた主剤の固形分濃度は10%、質量平均分子量は32,000(昭和電工社製SHODEX KF−80MによりGPC法で測定、ポリスチレン基準)、水酸基価は86mgKOH/g(JIS K0070に従って測定)、ガラス転移点は94℃(JIS K7121に従って測定)であった。
得られた主剤100部に対し、硬化剤として、ヘキサメチレンジイソシアネート3量体の固形分75%酢酸エチル溶液(日本ポリウレタン工業社製:商品名コロネートHL)を10部添加し、スターラーによって攪拌して、コーティング剤を得た。このとき、主剤中のヒドロキシ基(A)と硬化剤中のイソシアネート基(B)のモル比、(B)/(A)=2.0であった。また、コーティング剤の固形分濃度は、15.9%であった。
コロナ処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製E5100、厚さ12μm)を用意し、ポリエチレンテレフタレートフィルムのコロナ処理面にコーティング剤を、#6のワイヤーバーを用いて1回塗工した。次いで、80℃で1分間乾燥させ、50℃で5日間加熱処理して、厚さ1.0μmの非吸着層を形成した。これにより、非吸着性積層体を得た。
【0033】
(実施例2)
主剤100部に対し、硬化剤を20部にした以外は実施例1と同様に非吸着性積層体を得た。主剤中のヒドロキシ基(A)と硬化剤中のイソシアネート基(B)のモル比、(B)/(A)=3.9であった。また、コーティング剤の固形分濃度は、20.8%であった。
【0034】
(実施例3)
主剤100部に対し、硬化剤を5部にした以外は実施例1と同様に非吸着性積層体を得た。主剤中のヒドロキシ基(A)と硬化剤中のイソシアネート基(B)のモル比、(B)/(A)=1.0であった。また、コーティング剤の固形分濃度は、13.1%であった。
【0035】
(実施例4)
主剤100部に対し、硬化剤を40部にした以外は実施例1と同様に非吸着性積層体を得た。主剤中のヒドロキシ基(A)と硬化剤中のイソシアネート基(B)のモル比、(B)/(A)=7.8であった。また、コーティング剤の固形分濃度は、28.6%であった。
【0036】
(実施例5)
還流冷却管、窒素導入管、温度計、攪拌機、滴下ロート等を備えた反応容器に、酢酸エチル400部、酢酸n−プロピル300部を仕込み、80℃となるまで加熱し、その温度を保持した。次いで、前記反応容器内を攪拌し続けながら、反応容器に、メタクリル酸メチル90部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル10部、ベンゾイルパーオキサイド3部を含む混合液を85℃で3時間滴下し、さらに1時間保持した。
その後、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)1.5gをイソプロピルアルコール200gに溶解した開始剤溶液を沸点にて、均一に2時間掛けて滴下し、さらに1時間保持した。これにより、主剤を得た。
得られた主剤の固形分濃度は10%、質量平均分子量は35,000(昭和電工社製SHODEX KF−80MによりGPC法で測定、ポリスチレン基準)、水酸基価は43mgKOH/g(JIS K0070に従って測定)、ガラス転移点は99℃(JIS K7121に従って測定)であった。
上記主剤100部に対し、硬化剤として、ヘキサメチレンジイソシアネート3量体の固形分75%酢酸エチル溶液(日本ポリウレタン工業社製:商品名コロネートHL)を10部添加し、スターラーによって攪拌して、コーティング剤を得た。このとき、主剤中のヒドロキシ基(A)と硬化剤中のイソシアネート基(B)のモル比、(B)/(A)=3.9であった。また、コーティング剤の固形分濃度は、15.9%であった。
コロナ処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製E5100、厚さ12μm)を用意し、ポリエチレンテレフタレートフィルムのコロナ処理面にコーティング剤を、#6のワイヤーバーを用いて1回塗工した。次いで、80℃で1分間乾燥させ、50℃で5日間加熱処理して、厚さ1.0μmの非吸着層を形成した。これにより、非吸着性積層体を得た。
【0037】
(実施例6)
主剤100部に対し、硬化剤を5部にした以外は実施例5と同様に非吸着性積層体を得た。主剤中のヒドロキシ基(A)と硬化剤中のイソシアネート基(B)のモル比、(B)/(A)=2.0であった。また、コーティング剤の固形分濃度は、13.1%であった。
【0038】
(実施例7)
実施例1で得られた非吸着積層体の非吸着層上に、熱接着性を有する樹脂層を形成した。具体的には、非吸着層の上に、熱圧着型接着剤(大日精化工業(株)“セイカダイン1900W”)をグラビアコート法によりパターン状に塗工して、熱接着層を有する非吸着性積層体を得た。熱接着層の塗布量は乾燥時で5g/m
2であった。
【0039】
(比較例1)
主剤100部に対し、硬化剤を0部にした以外は実施例1と同様に非吸着性積層体を得た。
(比較例2)
厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、ポリウレタン系樹脂を主成分とする接着剤を塗布し、シーラント層として厚さ30μmのポリアクリロニトリルフィルム(タマポリ(株)“ハイトロンBX”)を貼り合わせた。これにより、非吸着性積層体を得た。
【0040】
[評価1]
各実施例及び各比較例で得られた非吸着性積層体を、直径約100mmの円形状に切り取って試験片を作成した。次いで、その試験片を、セパラブルフラスコ(柴田科学 容量200ml、内径86mm)を構成する容器部と蓋部とで挟み込んだ。次いで、非吸着層積層体の非吸着層上に市販の湿布薬(商品名サロンパスAe、久光製薬(株)製、dl−カンファー含有量:1.24/100g、l−メントール含有量:5.71g/100g、サリチル酸メチル含有量:6.29g/100g)を1シート(6.5cm×4.2cm)置き、容器部と蓋部とをそれらに設けられたフランジ部にクランプを挟むことにより固定した。温度40℃、相対湿度75%の環境下にて3日間放置後、試験片を短冊状に切り刻み、メタノール10ml中に浸漬して、温度55℃で3時間、dl−カンファー、l−メントール、サリチル酸メチルを抽出させた。抽出物における非吸着性積層体の単位面積あたりのdl−カンファー、l−メントール、サリチル酸メチル吸着量を、ガスクロマトグラフィーおよび液体クロマトグラフィーを用いて測定した。測定結果を
図1〜4に示す。
【0041】
[評価2]
実施例7及び比較例2の非吸着性積層体を、インパルスシーラーを用いて非吸着層が内面に配置されるようにパウチ状に製袋し、約0.1gのl−メントールを封入した後、完全に密封した。温度40℃、相対湿度75%の環境下に7日間放置後、パウチの外部にメントール臭が漏れ出しているか官能評価を行った。実施例7及び比較例2で作製したパウチはいずれもメントール臭はなく、メントールに対して充分な保香性を有していた。
【0042】
[考察]
反応性官能基含有アクリル単量体単位を含む主剤と、硬化剤と分散媒とを含有するコーティング剤の塗工により非吸着層を形成した実施例1〜6は、非吸着性に優れていた。
実施例1〜4及び比較例1、2の結果より、硬化剤未添加では非吸着性が無く、主剤中のヒドロキシ基(A)と硬化剤中のイソシアネート基(B)のモル比、(B)/(A)が0.5以上である実施例1〜4では非吸着性が得られ、市販のポリアクリロニトリルフィルムを用いた比較例2の非吸着性積層体と、ほぼ同等の非吸着性を有していた。ただし、モル比(B)/(A)が3.9の実施例2及び実施例5では非吸着層にややべたつきがみられ、モル比(B)/(A)が7.8の実施例4では、非吸着層のブロッキングが発生した。
また、実施例1、2及び実施例5、6の結果より、主剤の水酸基価が40mgKOH/gから90mgKOH/gの範囲において、非吸着性が優れることが分かった。
さらに、実施例7の非吸着性積層体では、l−メントールに関して、市販のポリアクリロニトリルフィルムを用いた比較例2の非吸着性積層体と、少なくとも同等の保香性を備えていることがわかった。