(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アニュラ型エジェクタは、前記スロート部における前記ロケットエンジンの燃焼ガス噴射による圧力回復の発生位置よりも上流側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のロケットエンジン高空燃焼試験設備。
【背景技術】
【0002】
宇宙輸送システムに用いられるロケットに使用されるロケットエンジンにおいて、ロケットの上段(2段目や3段目)に使用されるものは、気圧が非常に低い高空環境で作動する。このようなロケットエンジンの開発及び性能確認等の燃焼試験を実施するためには、高空模擬試験が必要である。
【0003】
従来のロケットエンジン高空燃焼試験設備としては、
図2に示すような、ロケットエンジン5が設置された低圧室2と消音塔9とを排気トンネル8で接続したロケットエンジン高空燃焼試験設備101が知られている。
ロケットエンジン高空燃焼試験設備101は、ディフューザ10(超音速ディフューザ)とともに、2段式の大型の蒸気エジェクタ12,13(センターボディ型エジェクタ)をディフューザ10の下流側に有する排気方式を採用している。蒸気エジェクタ12,13には、アキュムレータなどの蒸気供給部18から蒸気が供給される。
【0004】
ディフューザ10の壁面内部には、冷却水供給装置25から冷却水が導入されている。ディフューザ10の下流側にはスプレイ冷却装置27が設けられている。スプレイ冷却装置27には、冷却水供給装置29から冷却水が供給されている。また、スプレイ冷却装置27の下流側には、排気仕切弁21が設けられている。
ロケットエンジン燃焼試験を行う際は、ロケットエンジン5に液化酸素/液化水素が供給される。ロケットエンジン5から排出される燃焼排気ガスは、ディフューザ10で圧力回復した後、蒸気エジェクタ12,13から噴出される蒸気を用いて連続的に吸引され、消音塔9より大気放出される。
【0005】
また、特許文献1には、ロケットエンジンが収容される低圧室とディフューザとの接続部に周囲に噴射口を有するアニュラ型エジェクタを有するロケットエンジン高空燃焼試験設備が記載されている。即ち、特許文献1に用いられるエジェクタの噴射口は、ロケットエンジンから噴射される燃焼ガスの流路中央には設けられていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来のロケットエンジン高空燃焼試験設備101においては、エンジン規模が大きくなると、ロケットエンジン燃焼停止時に過渡的に発生するブローバックの圧力が非常に大きくなり、それを低減するためには、装置の規模も膨大なものになる。また、エンジン規模が大きくなると、ロケットエンジン燃焼停止時に過渡的に発生するブローバックの圧力が非常に大きくなる。また、ブローバック圧力が大きくなると、大きな薄肉ノズルスカートを有するロケットエンジンは、スカートの座屈等を起す可能性がある。
【0008】
ブローバック圧力を低減するには、燃焼試験時におけるディフューザによる圧力回復を
少なくする必要がある。しかし、ディフューザによる圧力回復を少なくする場合は、より多くの蒸気を消費する巨大な2段式の蒸気エジェクタが必要となり、より大きな装置となってしまう。
【0009】
また、特許文献1に記載されているロケットエンジン高空燃焼試験設備は、アニュラ型エジェクタをディフューザの最上流端に設置しているが、ロケットエンジン停止時に発生するブローバックを防止するものではなく、かつ、アニュラ型エジェクタを停止した際に、アニュラ型エジェクタのブローバックも発生してしまうという課題がある。
【0010】
この発明は、エンジン規模が大きくなる場合においても、よりコンパクトな設備でかつ、ロケットエンジン停止時におけるブローバックを防止することができるロケットエンジン高空燃焼試験設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第一の態様によれば、ロケットエンジン高空燃焼試験設備は、燃焼ガスを噴射するロケットエンジンを収容する低圧室と、前記燃焼ガスの流路をなす排気装置と、を有するロケットエンジン高空燃焼試験設備であって、前記排気装置は、前記低圧室に接続されて前記燃焼ガスの流れ方向に沿って流路断面積が一定とされたスロート部と、前記スロート部の下流側に設けられ前記燃焼ガスの流れ方法の下流側に向かうに従って流路断面積が拡大する拡大部と、を有するディフューザと、前記スロート部に設置され、前記スロート部の周壁からガスを噴出するアニュラ型エジェクタと、
前記低圧室の下流側、かつ、前記アニュラ型エジェクタの上流側に配置され、前記流路を閉塞可能なバルブと、前記バルブ下流側であって、前記ディフューザの下流側端部近傍に配置され、前記燃焼ガスの冷却を行う冷却水を噴射するスプレイ冷却装置と、を
有することを特徴とする。
【0012】
このような構成によれば、アニュラ型エジェクタがディフューザのスロート部に配置されていることによって、ロケットエンジン停止時におけるブローバックを低減することができる。即ち、ロケットエンジンから排出される燃焼ガス噴射によるエジェクタ効果がなくなることによって低圧室側に逆流しようとする燃焼ガスを、アニュラ型エジェクタによって下流側の方向に押し戻すことができる。
また、ロケットエンジン停止後かつ、アニュラ型エジェクタ停止前においてバルブを閉状態とすることによって、アニュラ型エジェクタ停止時に発生するブローバックを低減することができる。
【0013】
また、上記ロケットエンジン高空燃焼試験設備において、前記アニュラ型エジェクタは、前記スロート部における前記ロケットエンジンの燃焼ガス噴射による圧力回復の発生位置よりも上流側に配置されている構成としてもよい。
【0014】
このような構成によれば、ロケットエンジン停止時に発生するブローバックの位置よりも上流側に配置されているアニュラ型エジェクタによってブローバックを押し戻すことができる。
【0015】
また、上記ロケットエンジン高空燃焼試験設備において、前記アニュラ型エジェクタに蒸気を供給する蒸気源を有し、前記アニュラ型エジェクタから噴出される蒸気により前記ディフューザの壁面を冷却する構成としてもよい。
【0016】
このような構成によれば、アニュラ型エジェクタの駆動蒸気によるディフューザ壁面冷却効果によって、高温の燃焼ガスからディフューザ壁面への熱負荷を低減することができる。
【0018】
また、上記ロケットエンジン高空燃焼試験設備において、前記アニュラ型エジェクタの噴射口は、前記アニュラ型エジェクタの上流側における前記スロート部の内周面よりも径方向外側に配置されている構成としてもよい。
このような構成によれば、ロケットエンジン試験中にロケットエンジンの燃焼ガスが噴射口に衝突することにより発生する圧力回復を抑制することができる。
【0019】
また、本願の第二の態様によれば、ロケットエンジン高空燃焼試験設備の運転方法は、上記のいずれかのロケットエンジン高空燃焼試験設備の運転方法であって、前記アニュラ型エジェクタを作動させた状態で前記ロケットエンジンを停止するロケットエンジン停止工程と、前記バルブを閉状態とするバルブ閉鎖工程と、前記アニュラ型エジェクタを停止するエジェクタ停止工程と、を
この順番で有し、ロケットエンジン停止時のブローバックを低減することを特徴とする。
【0020】
このような構成によれば、エジェクタを作動させた状態でロケットエンジンを停止することによって、ロケットエンジン停止直後における、ガスが低圧室側に逆流しようとするブローバックが低減される。また、ロケットエンジン停止後においてバルブを閉状態とすることによって、アニュラ型エジェクタ停止時に発生するブローバックを低減することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、アニュラ型エジェクタがディフューザのスロート部に配置されていることによって、ロケットエンジン停止時におけるブローバックを低減することができる。即ち、ロケットエンジンから排出される燃焼ガス噴射によるエジェクタ効果がなくなることによって低圧室側に逆流しようとする燃焼ガスを、アニュラ型エジェクタによって下流側の方向に押し戻すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態のロケットエンジン高空燃焼試験設備について図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態のロケットエンジン高空燃焼試験設備は、例えば人工衛星打ち上げ用ロケットに用いられる液体酸素(液化酸素)・液体水素(液化水素)エンジンであるロケットエンジンのための試験設備である。ロケットエンジンは、噴射ノズルから高温、高圧の燃焼排気ガス(以下、燃焼ガスという)を噴射するエンジンである。ロケットエンジン高空燃焼試験設備は、この様な宇宙空間などの高空雰囲気の下で使用されるロケットエンジンの燃焼試験を、地上にて行うための装置である。
なお、ロケットエンジンは、液体燃料を推進剤として用いるものに限らず、固体燃料を推進剤として用いるロケットエンジンでもよい。
【0024】
図1に示すように、本実施形態のロケットエンジン高空燃焼試験設備1は、ロケットエンジン5を収容する低圧室2と、低圧室2を減圧するための排気装置3と、制御装置4と、を有している。排気装置3は、燃焼ガスの流路をなしている。
ロケットエンジン5は、図示しない架台を介して低圧室2に設置されている。また、ロケットエンジン5には、図示しない燃料供給装置が接続されている。
【0025】
低圧室2は、気密に形成されたチャンバーであり、排気装置3によって内部を所定の真空度に設定することが可能である。低圧室2には、例えば、ロケットエンジン5の再着火試験のコースト時の真空維持のために真空引きを行うための真空ポンプ7が接続されている。
排気装置3は、低圧室2に対して燃焼ガスの流れ方向F下流側に接続された排気トンネル8と、排気トンネル8の下流側に設けられた消音塔9と、を有している。
排気トンネル8は、最も上流側に設けられ、アニュラ型エジェクタ11(第一エジェクタ)が設けられたディフューザ10と、ディフューザ10の下流側に接続されたセンターボディ型エジェクタ12(第二エジェクタ)と、を有している。即ち、本実施形態の排気装置3は、ディフューザ10と二段のエジェクタ11,12を有する排気方式を採用している。
【0026】
ディフューザ10は、燃焼ガスの流れ方向F下流側に向かって漸次狭くなる縮小部14と、縮小部14の下流側に接続され燃焼ガスの流れ方向Fに沿って流路断面積が一定とされたスロート部15と、スロート部15の下流側に接続され下流側に向かって漸次太くなる拡大部16と、を有している。即ち、燃焼ガスの流路は、スロート部15にて絞られた後、拡大部16にて広がっている。なお、スロート部15の流路断面積は一定とされているとしたが、一定である必要はなく、設計都合による断面積の変化は許されるものとする。
スロート部15の断面積は、長手方向(燃焼ガスの流れ方向F)に沿って完全に同一ではなく、アニュラ型エジェクタ11の設置位置より下流側でやや拡大している。この拡大については後述する。
【0027】
アニュラ型エジェクタ11は、ディフューザ10のスロート部15の入口近傍に、ディフューザ10と一体となるように配置されている。アニュラ型エジェクタ11は、ディフューザ10のスロート部15の内周面22(周壁)より燃焼ガスの流れ方向F下流側に蒸気を噴射する第一エジェクタ噴射ノズル17(噴射口)と、第一エジェクタ噴射ノズル17に蒸気を供給する蒸気供給部18と、蒸気供給部18と第一エジェクタ噴射ノズル17とを接続する蒸気配管19と、蒸気配管19に設けられているバルブ20と、を有している。
蒸気供給部18としてはアキュムレータや、蒸気発生器等の蒸気源を採用することができる。また、エジェクタ11,12から噴出されるガスは蒸気に限ることはなく、例えば、窒素ガスを採用してもよい。
【0028】
第一エジェクタ噴射ノズル17は、ディフューザ10のスロート部15の壁面に、周方向に環状に設けられている。第一エジェクタ噴射ノズル17は、ディフューザ10のスロート部15の内周面22より突出しないように形成されている。
スロート部15におけるアニュラ型エジェクタ11の第一エジェクタ噴射ノズル17より下流側は、蒸気の噴射を妨げないように、やや拡大されている(符号15b)。
また、拡大された部位15bより下流側は、アニュラ型エジェクタ11の蒸気の噴射を妨げない範囲で、アニュラ型エジェクタ11の第一エジェクタ噴射ノズル17より上流側(符号15a)と同じになるように縮小されている(符号15c)。なお、第一エジェクタ噴射ノズル17よりも下流側のスロート部15b,15cの断面積を第一エジェクタ噴射ノズル17より上流側の断面積よりも小さくしてもよい。
即ち、本実施形態のスロート部15は、符号Sで示される範囲であり、スロート部15の標準となる直径で形成された部位(15a,15c)、及び当該部位よりもやや拡大された部位(符号15b)を含む。もちろん、符号Sで示される範囲における燃焼ガスの流れ方向Fに沿う断面積を一定にしてもよい。
【0029】
アニュラ型エジェクタ11は、スロート部15の直径をD、スロート部15の上流側端部からの距離Lとした場合、L/D<4となるような位置に配置されている。即ち、アニュラ型エジェクタ11は、スロート部15の直径をD、スロート部15の上流側端部からの距離をLとすると、以下の数式(1)が成り立つような位置に設置されている。
L/D<4 ・・・(1)
【0030】
アニュラ型エジェクタ11の燃焼ガスの流れ方向Fの位置は、ロケットエンジン5から噴射される燃焼ガスによる圧力回復が発生する位置に基づいて決定される。具体的には、アニュラ型エジェクタ11の燃焼ガスの流れ方向Fの位置は、スロート部15におけるロケットエンジン5の燃焼ガス噴射による圧力回復の発生位置よりも上流側に配置されている。換言すれば、アニュラ型エジェクタ11の上流側にて、ロケットエンジン5の燃焼ガスのみの圧力回復が発生しないような位置に設定されている。
【0031】
ディフューザ10のスロート部15において、アニュラ型エジェクタ11の上流側には、燃焼ガスの流路を閉塞可能なブロックオフバルブ23が設けられている。ブロックオフバルブ23は、ゲート式のバルブである。
ブロックオフバルブ23は、ブロックオフバルブ23を閉状態とすることによって、ディフューザ10におけるブロックオフバルブ23の上流側と下流側とを遮断することができる仕切弁である。
また、ディフューザ10には、ブロックオフバルブ23の上流側と下流側とをバイパスするバイパスライン33が設けられている。バイパスライン33には、バイパスライン33を遮断することができるバイパス弁34が設けられている。
また、ブロックオフバルブ23は、燃焼ガスの冷却を行う冷却水を噴射するスプレイ冷却装置27よりも上流側に配置されている。スプレイ冷却装置27については後述する。
【0032】
また、ディフューザ10は、ディフューザ壁面冷却装置24を有している。ディフューザ壁面冷却装置24は、中空構造とされているディフューザ10の壁部にディフューザ冷却水を供給する第一冷却水供給装置25と、第一冷却水供給装置25とディフューザ10の壁部の内部空間とを接続する第一冷却水配管26と、を有している。第一冷却水供給装置25から供給されるディフューザ冷却水が、ディフューザ10を構成する壁部に供給されることによって、高温の燃焼ガスに晒されるディフューザ10の壁面が冷却される。
【0033】
ディフューザ10の下流側端部近傍には、スプレイ冷却装置27が設けられている。スプレイ冷却装置27は、ディフューザ10の流路上に設けられた冷却水ノズル28と、冷却水ノズル28にスプレイ冷却水を供給する第二冷却水供給装置29と、第二冷却水供給装置29と冷却水ノズル28とを接続する第二冷却水配管30と、を有している。スプレイ冷却装置27は、所定量の冷却水を排気トンネル8内に噴霧する装置である。
【0034】
センターボディ型エジェクタ12は、排気トンネル8内であって、ディフューザ10の下流側に配置されている。センターボディ型エジェクタ12は、燃焼ガスの流れ方向Fから見てチャンバーの略中央に配置された第二エジェクタ噴射ノズル32と、第二エジェクタ噴射ノズル32に蒸気を供給する蒸気供給部18と、蒸気供給部18と第二エジェクタ噴射ノズル32とを接続する蒸気配管19と、蒸気配管19に設けられているバルブ20と、を有している。本実施形態は、アニュラ型エジェクタ11とセンターボディ型エジェクタ12とで、蒸気供給部18を共有している。
【0035】
次に、本実施形態のロケットエンジン高空燃焼試験設備1の運転方法について説明する。
(設備始動方法)
ロケットエンジン高空燃焼試験設備1の始動時においては、ロケットエンジン5を起動する前に低圧室2を低圧にする。具体的には、ブロックオフバルブ23を閉状態としてエジェクタ(アニュラ型エジェクタ11、及びセンターボディ型エジェクタ12)を作動させて、ブロックオフバルブ23の下流側の領域の排気処理を行う。
【0036】
一方、バイパス弁34を開状態として、バイパスライン33を介して低圧室2の真空引き処理を行う。具体的には、バイパスライン33を介して低圧室2及びディフューザ10におけるブロックオフバルブ23の上流側の領域の真空引きを行う。
次いで、低圧室2が十分に低圧となった状態(例えば100Torr,13332Pa)でブロックオフバルブ23を開状態とするとともに、バイパス弁34を閉状態として、更に低圧室2を10Torr(1333Pa)程度にまで低圧にする。
【0037】
低圧室2が10Torrとなったらロケットエンジン5を起動させて、ロケットエンジン5の燃焼試験を行う。この際、アニュラ型エジェクタ11の下流では、排気装置3を安定差動させるべく、亜音速に圧力回復させている。そして、アニュラ型エジェクタ11の下流側でスプレイ冷却を実施して燃焼ガスの温度を低減している。
【0038】
(設備停止方法)
ロケットエンジン高空燃焼試験設備1の停止時におけるオペレーションについて説明する。
ロケットエンジン高空燃焼試験設備1の停止時において、制御装置4は、アニュラ型エジェクタ11、及びセンターボディ型エジェクタ12を作動させた状態でエンジン燃焼を停止させる(ロケットエンジン停止工程)。ロケットエンジン5から排出される燃焼ガスが完全に流れた後、制御装置4は、ブロックオフバルブ23を閉状態にする命令を発する。
【0039】
ロケットエンジン5が停止することによって、ロケットエンジン5から排出される燃焼ガスによるエジェクタ効果がなくなり、燃焼ガスが低圧室2側に逆流しようとする。しかしながら、アニュラ型エジェクタ11が作動していることによって、ロケットエンジン5の停止直後における、燃焼ガスが低圧室2側に逆流しようとするブローバックが低減される。即ち、本実施形態のロケットエンジン高空燃焼試験設備1においては、アニュラ型エジェクタ11がロケットエンジン5の燃焼ガス噴射による圧力回復の発生位置よりも上流側に配置されていることによって、ブローバックが低減される。
【0040】
また、ブロックオフバルブ23は、やや遅れて閉状態となる(バルブ閉鎖工程)。ブロックオフバルブ23は、ロケットエンジン5から排出される燃焼ガスが完全に流れた後、ブローバックの発生後に完全に閉状態となる。
ブロックオフバルブ23が、ディフューザ10のスロート部15において上流側と下流側とを遮断することにより、アニュラ型エジェクタ11の停止時に発生するブローバックを防止することができる。
次いで、制御装置4は、アニュラ型エジェクタ11及びセンターボディ型エジェクタ12の二つのエジェクタを停止させる(エジェクタ停止工程)。次いで、低圧室2内を大気圧に圧力復帰させる。
【0041】
上記実施形態によれば、アニュラ型エジェクタ11がディフューザ10のスロート部15に配置されていることによって、ロケットエンジン5の停止時におけるブローバックを低減することができる。即ち、ロケットエンジン5の停止に伴いロケットエンジン5から排出される燃焼ガスによるエジェクタ効果がなくなり、低圧室2側に逆流しようとする燃焼ガスを、アニュラ型エジェクタ11によって下流側の方向に押し戻すことができる。
【0042】
また、アニュラ型エジェクタ11の上流側に設けられているブロックオフバルブ23を閉鎖することによって、アニュラ型エジェクタ11の停止時に発生するブローバックを防止することができる。即ち、アニュラ型エジェクタ11の停止に伴って蒸気が逆流した場合においても、ブロックオフバルブ23によって逆流する蒸気を遮断することができる。
【0043】
また、ブロックオフバルブ23をディフューザ10に設置したことによって、ロケットエンジン5起動前の減圧工程における低圧室2及びディフューザ10におけるブロックオフバルブ23の上流側の領域の真空引きに必要となる時間を短縮することができる。即ち、バイパスライン33を介して真空引きされる容積を低減でき、試験前における真空度到達までの時間を短縮することができる。さらに、ブロックオフバルブ23をディフューザ10に設置したことによって、ロケットエンジン5の再着火試験のコースト時における真空引き時間を短縮するとともに真空ポンプ7容量を低減することができる。
【0044】
また、アニュラ型エジェクタ11がロケットエンジン5の燃焼ガス噴射による圧力回復の発生位置よりも上流側に配置されていることによって、ロケットエンジン5自体の圧力回復能力を有効に活用することができ、エジェクタ11,12に必要な蒸気消費量の低減が可能となる。
また、ロケットエンジン燃焼試験中は、アニュラ型エジェクタ11の駆動蒸気による壁面冷却効果で高温の燃焼ガスから熱負荷を低減し、必要な冷却水流量を低減することができる。
【0045】
また、アニュラ型エジェクタ11とディフューザ10とを一体型とすることにより、エジェクタをディフューザの下流側に配置する形態と比較して、排気装置3に必要な長さを短縮することができる。
また、アニュラ型エジェクタ11の第一エジェクタ噴射ノズル17をスロート部15の内周面22よりも径方向外側に配置したことによって、ロケットエンジン燃焼試験中にロケットエンジン5の燃焼ガスがノズルに衝突することにより発生する圧力回復を防止することができる。
【0046】
また、ブロックオフバルブ23(仕切弁)をスプレイ冷却装置27の上流側に配置したことによって、仕切弁をスプレイ冷却装置27の下流側に配置した場合と比較して、真空引きを容易とすることができる。即ち、仕切弁をスプレイ冷却装置27の下流側に配置した場合は、仕切弁の上流側にスプレイ冷却装置27より噴射された冷却水が溜まることによって、真空引きする際にこの冷却水が蒸発することにより、真空度の上昇が抑制される。一方、冷却水が溜まることがない為、真空引きが容易となる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはなく、クレームの範囲によってのみ限定される。