(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記指標値導出部は、前記第2のガスセンサにより検出された呼気が吹き込まれていない場合のガスの検出値に基づいて、前記ガスセンサの検出値の補正に用いる指標値を導出し、
前記指標値導出部により導出された指標値を用いて前記ガスセンサの検出値を補正することで、所望ガスの濃度を導出する処理部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のガス測定装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照し、本発明のガス測定装置(利用者の呼気中の特定のガス成分を測定する装置)の実施形態について説明する。この実施形態においては、半導体式ガスセンサユニット(第1ガスセンサユニット)60はガス測定装置に内蔵されるものとして説明するが、後述するように、半導体式ガスセンサユニット60はガス測定装置とは別体の端末であってもよい。また、必要に応じてXYZ座標系を用いて図示および説明を行う。また、
図1および
図2の左図はガス測定装置1の開状態を示し、
図1および
図2の右図はガス測定装置1の閉状態を示している。
【0009】
図1は、ガス測定装置1を表側から見た外観構成図である。ガス測定装置1は、利用者によってカバー部3が図中X方向にスライド操作されることによって、開状態と閉状態のいずれかに保持される。
【0010】
ガス測定装置1は、本体部2と、閉状態において本体部2の一部を覆うカバー部3とを備える。本体部2の第1面における、開状態においてのみ露出する部分には、吹き込み口10と、表示部20と、操作部30とが設けられている。
【0011】
吹き込み口10には取り付け取り外し可能な中空構造のアタッチメント12(
図3に示す)が開状態において挿入状態で取り付けられ、更に、アタッチメント12にはストロー(図示省略)が装着され、吹き込み口10にはストロー及びアタッチメント12を介して利用者の呼気が吹き込まれる。なお、ストローを装着しない形態のアタッチメント12とし、吹き込み口10はそのアタッチメント12を介して利用者の呼気が吹き込まれるものとしてもよい。また更に、アタッチメント12も取り付けしない形態の吹き込み口10とし、その吹き込み口10はアタッチメント12も介さず直接的に利用者の呼気が吹き込まれるものとしてもよい。
【0012】
表示部20は、例えば液晶ディスプレイ装置や有機EL(Electroluminescence)表示装置などの表示装置である。表示部20の表示内容は、後述するCPU90によって決定される。表示部20は、設定画面、測定結果を示す画面等により、利用者に対して各種情報を表示する。操作部30は、利用者による各種操作(電源のオンオフ、利用者情報等の入力、測定開始の指示、画面のスクロール等)を受け付ける。操作部30に対してなされた操作の内容は、後述するCPU90に出力される。
【0013】
また、ガス測定装置1の本体部2には、閉状態においてカバー部3と連続した表面形状をなすように形成されたベース部5が形成されている。ベース部5のカバー部3に当接する側の端部には、カバー部3の端部に対応する形状を有し、閉状態においてカバー部3と密着して気密性を向上させるための部材6が取り付けられている。部材6は、例えば、ゴム(例えば、シリコンゴム)、エラストマーなどの弾性素材によって形成される。部材6には、図中Y方向に関する中央部付近において、利用者が開操作をしやすいように、図中−X方向に進むに連れて+Z方向にせり上がる傾斜を有する、つまみ部6Aが設けられている。
【0014】
図2は、ガス測定装置1を裏側から見た外観構成図である。本体部2の第2面における、開状態においてのみ外部に露出する部分には、吸着剤収容部50と、孔部52、54、56が設けられている。なお、
図2において、つまみ部6Aは、図中−X方向に進むに連れて−Z方向にせり上がる傾斜を有する。
【0015】
吸着剤収容部50の内部には、活性炭等のガス吸着剤が収容される。ガス測定装置1の閉状態において、活性炭が収容された空間は、孔部52、本体部2とカバー部3の隙間、および孔部54または56を介して、後述する半導体式ガスセンサ(第1ガスセンサ)66の置かれた空間と連通し、閉鎖空間を形成する。これによって、ガス測定装置1が閉状態にされている間、半導体式ガスセンサ66の置かれた閉鎖空間から各種ガス成分が除去され、半導体式ガスセンサ66の被毒や劣化を抑制することができる。なお、活性炭に代えて(または加えて)、ゼオライト、モレキュラーシーブ、シリカゲル等のガス吸着剤が収容されてもよい。また、活性炭が収容された空間と後述する第2ガスセンサ72の置かれた空間と連通し、閉鎖空間を形成し、第2ガスセンサ72に対して被毒や劣化を抑制することもできる。
【0016】
ガス測定装置1には、本体部2に対して着脱可能(交換可能)な半導体式ガスセンサユニット60が取り付けられる。
図3は、半導体式ガスセンサユニット60が取り外された状態のガス測定装置1の外観構成図である。半導体式ガスセンサユニット60は、本体部2に嵌合可能な筐体62の内部に、半導体式ガスセンサ66の他、センサ基板や電子部品(例えば記憶部品)を収容している。半導体式ガスセンサ66は、筐体62に設けられた孔部62Aを介して筐体62の外部に検知面を突出させる。半導体式ガスセンサ66の検知面には、酸化スズ(SnO2)などが形成されており、アセトンなどの検出対象ガス、あるいはその他の干渉ガスが触れると電気抵抗が低下するようになっている。また、半導体式ガスセンサ66は、ヒータおよび電極を備える。半導体式ガスセンサ66は、検知面における電気抵抗の低下に基づいて、検出対象ガスの濃度を検出する。
【0017】
利用者の呼気には、ケトン体、エタノール、アセトアルデヒド、一酸化酸素、アンモニア、水素、硫化水素、一酸化窒素、二酸化炭素等の様々な種類のガスが含まれる。半導体式ガスセンサ66は、所望ガスおよび干渉ガスの濃度を検出する。半導体式ガスセンサ66は、例えば、ケトン体の一種であるアセトンに対して高い感度を示す。アセトンは、脂質代謝の副産物であり、呼気におけるアセトンの濃度は脂質代謝の量を示す指標値となる。体内に糖質エネルギーが十分に存在する場合には、脂肪が燃焼されないため呼気におけるアセトンの濃度は低くなり、体内に糖質エネルギーが不足すると、脂肪が燃焼されるため呼気におけるアセトンの濃度は高くなる。
【0018】
ここで、本体部2の表面、カバー部3、および半導体式ガスセンサユニット60の筐体は、例えば、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂やポリカーボネード等で形成される。また、部材6は、例えば、ゴム(例えばシリコンゴム)やエラストマー等の弾性部材である。また、表示部20の表面は、例えば、AS(Acrylonitrile Styrene)樹脂やアクリル樹脂などで形成される。また、操作部30のボタン部は、ABS樹脂やシリコンゴム等で形成される。
【0019】
図4は、ガス測定装置1の制御関係の構成図である。ガス測定装置1は、第2ガスセンサユニット70を備える。第2ガスセンサユニット70は、第2ガスセンサ72を備える。第2ガスセンサ72は、半導体式ガスセンサ66とは被毒や劣化による少なくとも1つ以上によるセンサ寿命が異なるセンサであり、干渉ガスの濃度を検出する。第2ガスセンサ72は、例えば環境中または生体中に含まれるエタノールや、一酸化炭素、アンモニア、水素、硫化水素、一酸化窒素、二酸化炭素等などのうち、所定の干渉ガスの濃度を検出する。吹き込み口10に呼気が吹き込まれると、パイプおよびチューブを介して第2ガスセンサ72の内部に呼気が取り込まれる。ガス測定装置1は、例えば、吹き込み口10に連通するガス測定装置1内部の空間の圧力を測定する圧力センサ76が基準値以上の圧力を検出したか否かを判定し、基準値以上の圧力を検出した場合、呼気が吹き込まれたことを検出する。ガス測定装置1は、呼気が吹き込まれたことを検出した場合、第2ガスセンサ72に干渉ガスの濃度の検出をさせる。
【0020】
また、ガス測定装置1は、前述した構成の他、タイマ82、電源84、通信部86、CPU(Central Processing Unit)90、ROM(Read Only Memory)92、RAM(Random Access Memory)94、不揮発性メモリ96などを備える。これらの構成要素は、I/O98を介して通信可能に接続されている。タイマ82は、例えば設定された時間が経過した場合に警報を出力したり、時間を計時したりする。電源84は、電池または外部電源からの電気を各部に供給する。通信部86は、有線または無線により外部装置と通信を行う。
【0021】
CPU90は、ガス測定装置1の各部を制御する。
図5は、ガス測定装置1の機能ブロック図である。ガス測定装置1は、取得部100と、判定部102と、指標値導出部104と、導出処理部106と、濃度導出部108とを備える。なお、導出処理部106および濃度導出部108が、「処理部」の一例である。これらの各機能部が、例えば、半導体式ガスセンサ66の検出値と第2ガスセンサ72の検出値の双方を加味して、ガス測定装置1の測定結果を確定する処理を行う。なお、各機能部の詳細な機能については後述する。
【0022】
ROM92には、CPU90が実行するプログラムなどが格納されている。RAM94は、CPU90が処理を行う際のワーキングメモリとして機能する。不揮発性メモリ96には、CPU90が実行するプログラムやガス測定装置1が保持する利用者のデータなどが格納される。CPU90が実行するプログラムやガス測定装置1が保持する利用者のデータなどは、メモリカードなどの記憶媒体により提供するようにしてもよいし、外部のサーバ装置(不図示)から取得してもよい。
図5に示す機能部のうち、判定部102、指標値導出部104、導出処理部106、および濃度導出部108は、CPU90がプログラムを実行することにより機能するソフトウェア機能部である。また、これらの機能部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハードウェア機能部であってもよい。
【0023】
取得部100は、後述するような種々のタイミングで、例えば半導体式ガスセンサ66および第2ガスセンサ72に環境中や、呼気中のガスを検出させる。
【0024】
判定部102は、例えば半導体式ガスセンサ66により検出された2つ以上の検出値を比較、または半導体式ガスセンサ66により検出された検出値と予め設定された基準値とを比較して、半導体式ガスセンサ66が被毒や劣化しているか否かを判定する。また、判定部102は、判定結果を示す画像を表示部20に表示させる。
【0025】
指標値導出部104は、例えば環境中の空気における第2ガスセンサ72の検出値に基づいて、半導体式ガスセンサ66の検出値の補正に用いる指標値である指標Rairを導出し、導出結果をRAM94へ記憶する。
【0026】
導出処理部106は、例えば半導体式ガスセンサ66の検出値と、指標Rairとに基づいて所望ガスの濃度を導出し、第2ガスセンサ72の検出値から干渉ガスの濃度を算出する。
【0027】
濃度導出部108は、例えば半導体式ガスセンサ66の検出値と第2ガスセンサ72の検出値の双方を加味して、ガス測定装置1の測定結果を確定する。
【0028】
図6は、ガス測定装置1が実行する被毒や劣化の判定処理の流れを示すフローチャートである。まず、取得部100が、ガス測定装置1のカバー部3が利用者に操作され、閉状態から開状態になったとき、環境中(吹きかけなし)の空気に対して半導体式ガスセンサ66および第2ガスセンサ72に検出を行うように指示し、検出させた検出値を取得する(ステップS100)。以下、半導体式ガスセンサ66の検出値を「Rair」と、ガス測定装置1の開状態における半導体式ガスセンサ66の検出値を「開状態Rair」と称する。各センサにより検出された検出結果は、例えばRAM94に記憶される。なお、被毒や劣化の判定のための環境中の空気に対する検出動作は、例えば、利用者により、操作部30に設けられた所定のボタンなどが操作された場合に行われるようにしてもよい。
【0029】
ここで、半導体式ガスセンサ66の検出値は、例えば、半導体式ガスセンサ66の検出対象ガスの濃度が高くなる程、低い値として現れる。逆に、第2ガスセンサ72の検出値は、第2ガスセンサ72の検出対象ガスの検出対象ガスの濃度が高くなる程、高い値として現れる。半導体式ガスセンサ66が被毒や劣化した状態とは、検出対象ガスの濃度が低いにも拘わらず、低い値を出力してしまう(すなわち高濃度と検出してしまう)状態である。
【0030】
次に、判定部102は、初期Rairが、ステップS100において検出された開状態Rairを超えるか否かを判定する(ステップS102)。初期Rairとは、例えば工場出荷時など、半導体式ガスセンサ66が被毒や劣化していないときに測定された値を基準として定められた基準値である。初期Rairは、例えば、半導体式ガスセンサ66が被毒や劣化していないときに測定された値よりも、ある程度低い値に設定してもよい。仮に、半導体式ガスセンサ66が被毒や劣化していないときに測定された値をそのまま初期Rairとすると、わずかな被毒や劣化により、ステップS102の判定が常に肯定的な判定となってしまうからである。また、判定部102は、初期Rairが、閉状態Rairを超えるか否かを判定してもよい。この場合、ステップS100では、閉状態Rairを検出する。なお、初期Rairは、例えば不揮発性メモリ96に予め記憶されている。
【0031】
初期Rairが、ステップS100において検出された開状態Rair以下である場合、判定部102は、ガス測定装置1は正常である(被毒や劣化していない)と判定する(ステップS104)。
【0032】
一方、初期Rairが、ステップS100において検出された開状態Rairを超える場合、判定部102は、開状態Rairが、ガス測定装置1が閉状態であるときのRair(以下、閉状態Rair)を超えるか否かを判定する(ステップS106)。閉状態Rairとは、ガス測定装置1が閉状態のとき(好ましくは、閉状態にされてから十分な時間が経過したとき)に検出された半導体式ガスセンサ66の検出値である。閉状態Rairは、後述する
図11の処理におけるステップS200で取得された閉状態Rairを用いてもよいし、他の場面で検出された閉状態Rairを用いてもよい。
【0033】
開状態Rairが閉状態Rairを超える場合、判定部102は、吸着剤収容部50の内部に収容された活性炭等のガス吸着剤の交換が必要であることを示す画像を表示部20に表示させる(ステップS108)。これは、ガス測定装置1が閉状態のときには、ガス吸着剤の作用によって半導体式ガスセンサ66の検出値が上がる筈であるのに、その逆の傾向を示しているので、ガス吸着剤が十分に作用していないことが推察されるからである。
【0034】
開状態Rairが閉状態Rair以下である場合、指標値導出部104は、第2ガスセンサ72の検出値を、例えばRAM94から読み出して取得する(ステップS110)。次に、指標値導出部104は、環境中の空気における第2ガスセンサ72の検出値に基づいて、半導体式ガスセンサ66の検出値の補正に用いる指標値である指標Rairを導出し、導出結果をRAM94へ記憶する(ステップS112)。指標値導出部104は、例えば、式(1)に基づいて、指標Rairを導出する。式中、k1は係数、k2は切片であり、実験等により予め求められた最適値が使用される。また、Vsは第2ガスセンサ72の検出値であり、∫Vsは環境中の空気における第2ガスセンサ72の検出値の所定時間における時間積分値である。なお、式(1)に代えて、∫Vsを使用した二次以上の多項式や、∫Vsの逆数、指数、または対数などを用いた計算によって指標Rairを導出してもよいし、∫Vsを座標とするマップなどによって指標Rairを導出してもよい。また、利用者の性別や年齢、体格に応じて、指標Rairを導出するためのパラメータ(一例として係数k1)を補正してもよい。また、時間積分値は、サンプリングによって離散値を取得する場合、サンプリング値を合計することで求められる。
指標Rair=k1×∫Vs+k2 ‥(1)
【0035】
また、指標値導出部104は、予め、実験などにより得られた第2ガスセンサ72の検出値(Vs)のピーク値と第2ガスセンサ72の積分値との対応関係に基づくテーブルデータを不揮発性メモリ96等に記憶させ、テーブルデータに基づいて、積分値を導出してもよい。
【0036】
次に、判定部102が、半導体式ガスセンサ66が被毒や劣化しているか否かを判定する(ステップS114)。判定部102は、例えば半導体式ガスセンサ66により検出された開状態Rairが、上述の(1)式に基づいて導出された指標Rairより、所定値以上、下回っている場合、半導体式ガスセンサ66が被毒や劣化していると判定する。半導体式ガスセンサ66が被毒や劣化していないと判定した場合は、ステップS118へ進む。半導体式ガスセンサ66が被毒や劣化していると判定した場合、判定部102は、判定結果および処理内容をRAM94に記憶させる(ステップS116)。
【0037】
図7は、ある環境中において、半導体式ガスセンサ66と第2ガスセンサ72とにより検出された検出値との関係を示す図である。
図7の縦軸は、半導体式ガスセンサ66の検出値である開状態Rairを示している。
図7の横軸は、第2ガスセンサ72の検出値Vsの時間積分値を示している。図中、「Rf」は、開状態Rair=初期Rairを示す直線である。ある環境中において半導体式ガスセンサ66により検出された検出値が、被毒や劣化の影響がない、または少ない場合、図中の黒丸で示すように、開状態Rairと積分Vsの組み合わせである座標は「Rf」の近傍に位置する。これに対して、半導体式ガスセンサ66が被毒や劣化した状態では、例えば図中の「×」で示すように、開状態Rairと積分Vsの組み合わせである座標は、「Rf」を下回る位置に現れる。判定部102は、開状態Rairと初期Rairとの比較により、半導体式ガスセンサ66が被毒や劣化しているか否かを判定する。
【0038】
図8は、被毒や劣化の判定の手法について、説明するための図である。判定部102は、開状態Rairが、初期Rairより閾値Th以上、下回っている場合、半導体式ガスセンサ66は被毒や劣化していると判定する。また、判定部102は、初期Rairから開状態Rairを差し引いた差分を複数の閾値と比較することで、段階的に被毒や劣化の状態を判定してもよい。
【0039】
図9は、被毒や劣化の判定の他の手法について、説明するための図である。判定部102は、開状態Rairと∫Vsとの組み合わせである座標を被毒や劣化の判定マップに適用することで、半導体式ガスセンサ66が被毒や劣化しているか否かを判定してもよい。図示するように、被毒や劣化の判定マップには、例えば、座標に応じて、被毒や劣化していない領域「正常領域」、被毒や劣化のレベルが低い領域「Level1領域」、被毒や劣化のレベルが中程度の領域「Level2領域」、および被毒や劣化のレベルが高い領域「Level3領域」が設定されている。被毒や劣化の判定マップは、開状態Rairと∫Vが共に高い場合に被毒や劣化のレベルが低く判定され、開状態Rairと∫Vが共に低い場合に被毒や劣化のレベルが高く判定されるように作られている。なお、被毒や劣化の判定マップに設定される領域は、上述した例に限らず、被毒や劣化のレベルを4つ以上に設定してもよい。また、座標が「Level1領域」に位置する場合は、被毒や劣化していないと判定してもよい。
【0040】
図6の説明に戻る。取得部100は、吹き込み口10に呼気が吹き込まれるまで待機する(ステップS118)。呼気が吹き込まれたことの検出は、例えばガス測定装置1が備えた圧力センサ76が基準値以上の圧力を検知したか否かを判定することによって行われる。
【0041】
吹き込み口10に呼気が吹き込まれると、取得部100は、呼気取得タイミングを算出し、算出した呼気取得タイミングで半導体式ガスセンサ66および第2ガスセンサ72に検出を行わせ、検出値を取得する(ステップS120、S122)。導出処理部106は、取得部100に取得された半導体式ガスセンサ66および第2ガスセンサ72の検出値をRAM94に記憶させる。
【0042】
次に、導出処理部106は、RAM94に半導体式ガスセンサ66について被毒や劣化の判定結果(ステップS116参照)が記憶されているか否かを判定する(ステップS124)。半導体式ガスセンサ66が被毒や劣化している旨の情報が記憶されていない場合、導出処理部106は、半導体式ガスセンサ66の検出値から所望ガスの濃度を導出する(ステップS126)。例えば、例えば、式(2)に基づいて、呼気が吹き込まれた際の半導体式ガスセンサ66の検出値Rsに、実験等により予め求められた最適値である係数k3を乗算し、切片k4を加算して算出する。式(2)に代えて、Rsを使用した二次以上の多項式や、Rsの逆数、指数、または対数などを用いた計算によってConc1を導出してもよいし、Rsを座標とするマップによってConc1を導出してもよい。また、利用者の性別や年齢、体格に応じて、Conc1を導出するためのパラメータ(一例として係数k3)を補正してもよい。
Conc1=k3×Rs+k4 ‥(2)
【0043】
半導体式ガスセンサ66が被毒や劣化している旨の情報が記憶されている場合、導出処理部106は、半導体式ガスセンサ66の検出値と、指標Rairとに基づいて所望ガスの濃度を導出する(ステップS128)。例えば、式(3)または式(4)に基づいて、ガス測定装置1の測定結果Conc1#を導出する。式中、k5は係数であり、実験等により予め求められた最適値が使用される。Rsは呼気を測定した場合の半導体式ガスセンサ66の検出値であり、k6は切片である。なお、式(3)および式(4)に代えて、Rsおよび指標Rairを使用した二次以上の多項式によってガス測定装置1の測定結果Conc1#を導出してもよいし、(Rs/指標Rair)またはRs/{指標Rair+(指標Rair−開状態Rair)}を座標とするマップによってガス測定装置1の測定結果Conc1#を導出してもよい。また、利用者の性別や年齢、体格に応じて、ガス測定装置1の測定結果Conc1#を導出するためのパラメータ(一例として係数k5)を補正してもよい。
Conc1#=k5×(Rs/指標Rair)+k6 ‥(3)
Conc1#=k5×Rs/{指標Rair+(指標Rair−開状態Rair)}+k6 ‥(4)
【0044】
次に、導出処理部106は、第2ガスセンサ72の検出値から干渉ガスの濃度を算出する(ステップS130)。例えば、式(5)に基づいて、ガス測定装置1の測定結果Conc2を導出する。式中、k6は係数であり、実験等により予め求められた最適値が使用される。Rtは呼気が吹き込まれた際の第2ガスセンサ72の検出値であり、k7は切片である。なお、式(5)に代えて、Rtを使用した二次以上の多項式によってガス測定装置1の測定結果Conc2を導出してもよいし、Rtを座標とするマップによってガス測定装置1の測定結果Conc2を導出してもよい。また、利用者の性別や年齢、体格に応じて、ガス測定装置1の測定結果Conc2を導出するためのパラメータ(一例として係数k6)を補正してもよい。
Conc2=k6×Rt+k7 ‥(5)
【0045】
次に、濃度導出部108が、例えば、半導体式ガスセンサ66の検出値と第2ガスセンサ72の検出値の双方を加味して、ガス測定装置1の測定結果を確定する(ステップS132)。濃度導出部108は、例えば、式(6)または式(7)に基づいて、ガス測定装置1の測定結果Conc3を導出する。式中、C1は、上述の式(2)で導出した被毒や劣化していないと判定された半導体式ガスセンサ66の検出値より導出したConc1であり、C1#は、上述の式(3)および式(4)で導出した被毒や劣化していると判定された半導体式ガスセンサ66の検出値と、指標Rairとに基づいて導出したConc1#である。また、C2は、上述の式(5)で導出した第2ガスセンサ72の検出値から導出したConc2である。k8、k9は係数であり、実験等により予め求められた最適値が使用される。k9は、例えば負の値に設定される。なお、式(6)および式(7)に代えて、C1またはC1#と、C2とを使用した二次以上の多項式によってガス測定装置1の測定結果Conc3を導出してもよいし、C1またはC1#と、C2とを座標とするマップによってガス測定装置1の測定結果Conc3を導出してもよい。また、利用者の性別や年齢、体格に応じて、ガス測定装置1の測定結果Conc3を導出するためのパラメータ(一例として係数k8、k9)を補正してもよい。
Conc3=k8×C1+k9×C2 ‥(6)
Conc3=k8×C1#+k9×C2 ‥(7)
【0046】
なお、半導体式ガスセンサ66または第2ガスセンサ72の検出値は、電圧値(V)、抵抗値(kΩ)または電流値(A)などであってもよい。また、半導体式ガスセンサ66または第2ガスセンサ72の検出値は、ある検出値(例えばピーク値)から半導体式ガスセンサ66または第2ガスセンサ72の検出値が定常状態に戻った時間内における積分値としてもよい。
【0047】
そして、濃度導出部108は、確定させたガス測定装置1の測定結果を表示部20に表示させる(ステップS134)。なお、判定部102が、ガス測定装置1を被毒や劣化と判定した場合(ステップS114参照)、ガス測定装置1は被毒や劣化のレベルと共に、測定結果を表示部20に表示させてもよい。また、判定部102は、被毒や劣化の判定結果や、被毒や劣化のレベルの判定結果に基づいて、半導体式ガスセンサ66の部品や、メンテナンスなどのアドバイスを含む画像を表示部20に表示させてもよい。これにより、本フローチャートの処理は終了する。
【0048】
なお、ステップS102、S106、S114、S116またはS124の処理(被毒や劣化の判定に関する処理)を省略し、半導体式ガスセンサ66が検出したすべての検出値について、指標Rairに基づいて所望ガスの濃度を導出してもよい。また、例えばステップS114の処理において、指標RairとRairとの値が所定値以内の場合、または被毒や劣化の判定の結果が例えば上述したLevel1の場合は、指標Rairを用いずに所望ガス濃度を導出してもよい。
【0049】
図10は、Rairに基づいて所望ガスの濃度を導出した結果と指標Rairに基づいて所望ガスの濃度を導出した結果を示す図である。左図は、指標Rairを用いず所望ガスの濃度を導出した結果を示し、右図は指標Rairを用いて所望ガスの濃度を導出した結果を示す。
図10の縦軸は、センサガスクロマトログラフィにより検出した所望ガス濃度[ppm]を示し、
図10の横軸は、ガス測定装置1により検出された所望ガスの検出値を上述した処理を実行することにより換算した濃度[ppm]を示す。また、図中の実線は被毒や劣化の影響が大であるガス測定装置の測定結果を示し、点線は被毒や劣化の影響がない、または少ないガス測定装置の測定結果を示している。なお、センサガスクロマトログラフィでは、ガス中に含まれる成分を個々に分離して、分離した成分を定量的に測定するため、精度良く各成分を測定することができる。図示するように、ガス測定装置により検出したRairに基づいて所望ガスの濃度を導出した場合、センサガスクロマトログラフィの検出結果と、ガス測定装置の検出結果との相関は低い。特に、被毒や劣化の影響が大であるガス測定装置の測定結果と、センサガスクロマトログラフィの測定結果との相関は低い。これに対して、ガス測定装置1において指標Rairに基づいて所望ガスの濃度を導出した場合、被毒や劣化の影響が大である、および被毒や劣化の影響がない、または少ないガス測定装置の測定結果と、センサガスクロマトログラフィの検出結果との相関は高くなっている。
【0050】
以上説明した第1の実施形態のガス測定装置1によれば、判定部102が、開状態で取得されたガスセンサの検出値と閉状態で取得されたガスセンサの検出値を比較することにより、ガスセンサの状態を判定するため、ガス測定装置1の状態を精度良く判定することができる。また、第1のガスセンサ(半導体式ガスセンサ66)の検出値、および第1のガスセンサとは被毒や劣化によるセンサ寿命が異なる第2のセンサ(第2ガスセンサ72)の検出値を取得する取得部と、第2のセンサから取得した検出値に基づいて、第1のガスセンサの検出値の補正に用いる指標値を導出する指標値導出部と、指標値導出部により導出された指標値を用いて第1のガスセンサの検出値を補正することで、所望ガスの濃度を導出する処理部とを備えるため、所望ガスを精度良く測定することができる。
【0051】
(第2の実施形態)
図11は、第2の実施形態におけるガス測定装置1が実行する処理の流れを示すフローチャートである。前述した
図6と同様の処理については、説明を省略する。
【0052】
まず、取得部100が、ガス測定装置1のカバー部3が利用者に操作され、開状態から閉状態になったとき、環境中(吹きかけなし)の空気に対して半導体式ガスセンサ66および第2ガスセンサ72に検出を行うように指示し、検出させた検出値を取得する(ステップS200)。判定部102は、初期Rairが、ステップS200において検出された閉状態Rairを超えるか否かを判定する(ステップS202)。初期Rairが、ステップS200において検出された閉状態Rair以下である場合、判定部102は、ガス測定装置1は正常である(被毒や劣化していない)と判定する(ステップS204)。なお、ステップS202において、判定部102は、初期Rairが、ステップS200において検出された開状態Rairを超えるか否かを判定してもよいが、閉状態Rairと比較することで、環境中に干渉ガスが存在している場合であっても、ガス吸着剤の作用により適切に半導体式ガスセンサ66が正常であるか否かを判定することができる。
【0053】
一方、初期Rairが、ステップS200において検出された閉状態Rairを超える場合、判定部102は、ガス測定装置1のカバー部3が利用者に操作され、開状態から閉状態になったとき、環境中(吹きかけなし)の空気に対して半導体式ガスセンサ66および第2ガスセンサ72に検出を行うように取得部100に指示し、検出させた検出値を取得する(ステップS206)。判定部102は、ステップS206で検出された開状態Rairが、ステップS200において検出された閉状態Rairを超えるか否かを判定する(ステップS208)。ステップS206で検出された開状態Rairが、ステップS200において検出された閉状態Rairを超える場合、判定部102は、ガス吸着剤の交換が必要であると判定する(ステップS210)。ステップS206で検出された開状態Rairが、ステップS200において検出された閉状態Rair以下である場合、判定部102は、ガス測定装置1が被毒や劣化していると判定し、判定結果をRAM94に記憶させる(ステップS212)。判定部102は、開状態Rairが閉状態Rairとの差分が大きい場合には被毒や劣化レベル3と判定し、中程度の場合には被毒や劣化レベル2と判定し、小さい場合には被毒や劣化レベル1と判定してもよい。
【0054】
そして、判定部102は、確定させたガス測定装置1の測定結果を表示部20に表示させると共に、ガス測定装置1の被毒や劣化の状態、または被毒や劣化のレベルなどを表示させる(ステップS134)。これにより、本フローチャートの処理は終了する。また、第2ガスセンサ72を用いない場合、本フローチャートにおけるステップS122、ステップS130およびステップS132の処理を省略してもよい。また、所望ガス濃度を算出しない場合、本フローチャートにおけるステップS118〜ステップS134の処理を省略し、被毒や劣化の判定結果またはガス吸着剤の交換を示す表示を表示部20へ表示させてもよい。
【0055】
以上説明した第2の実施形態のガス測定装置1によれば、ガス測定装置1は、初期の検出値と、閉状態における検出値と、開状態における検出値とを比較することによって、ガス測定装置1が正常状態であるか、被毒や劣化の状態であるか、またはガス吸着剤の交換が必要な状態である否かを判定することができる。また、ガス測定装置1が被毒や劣化の状態である場合、被毒や劣化のレベルと共に測定結果を表示することにより、利用者に測定結果とその測定結果の精度とを提供することができる。
【0056】
なお、第2ガスセンサ72が検出対象とするガスは、エタノール、一酸化窒素、アンモニア、水素、硫化水素、または一酸化炭素などであってもよい。また、半導体式ガスセンサ66が検出した検出値と、第2ガスセンサ72の検出した所定ガスの検出値とに基づいて、以下の症状について評価してもよい。第2ガスセンサ72の検出対象とするガスを、例えば一酸化窒素とした場合、喫煙や、気管支喘息、気道感染、肺高血圧などを評価することができる。例えばアンモニアとした場合、肝性脳症や、尿素回路の先天酵素異常、H.pylоri感染症などを検出することができる。例えば水素とした場合、腸内嫌気性菌の異常増殖や、消火不良症候群や、難消化性糖、腸内フローラなどを評価することができる。例えば硫化水素とした場合、歯周病を評価でき、例えば硫化一酸化炭素とした場合、ガス中毒や、喫煙などを評価することができる。
【0057】
また、上記実施形態では、ガス測定装置1は、表示部20、操作部30、および半導体式ガスセンサ66の検出値を補正するための各機能部が一つの装置に内蔵されるものとして説明したが、表示部20、操作部30、各機能部、および不揮発性メモリ96のうち一部または全部は、半導体式ガスセンサ66を備えるガス測定装置と通信可能な別体の装置であってもよい。
図12は、ガス測定装置1と通信可能な別体の装置として構成される場合のガス測定システム200の構成例を示す図である。端末装置210は、上記説明した表示部20、操作部30、判定部102と、指標値導出部104と、導出処理部106と、濃度導出部108と、不揮発性メモリ96とを備える。ガス測定装置1は、各センサの検出値等の情報を、通信部86を介して端末装置210に送信する。端末装置210は、上記実施形態におけるガス測定装置1と同等の処理を行い、測定結果を得る。
【0058】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。