特許第6403013号(P6403013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6403013銅薄膜付基材用アンダーコート剤、銅薄膜付基材、導電性フィルム及び電極フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6403013
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】銅薄膜付基材用アンダーコート剤、銅薄膜付基材、導電性フィルム及び電極フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/14 20060101AFI20181001BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20181001BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20181001BHJP
   C09D 161/28 20060101ALI20181001BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20181001BHJP
   B32B 15/082 20060101ALI20181001BHJP
   C23C 14/02 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   C09D133/14
   C09D5/00 D
   H01B5/14 B
   C09D161/28
   C09D163/00
   B32B15/082 Z
   C23C14/02 A
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-74199(P2015-74199)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-193986(P2016-193986A)
(43)【公開日】2016年11月17日
【審査請求日】2017年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山崎 彰寛
(72)【発明者】
【氏名】東本 徹
(72)【発明者】
【氏名】近藤 洋平
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−208650(JP,A)
【文献】 特開2001−071414(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/168203(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00〜 10/00
101/00〜201/10
H01B 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側鎖に1級アミノ基含有基を有するアクリル系共重合体(A)を含む導電性フィルム用の銅蒸着膜付基材用アンダーコート剤。
【請求項2】
側鎖に1級アミノ基含有基を有するアクリル系共重合体(A)と、(メタ)アクリロイル基を少なくとも3つ有する(メタ)アクリレート、メラミン樹脂及びポリエポキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の硬化剤(B)とを含む導電性フィルム用の銅蒸着膜付基材用アンダーコート剤。
【請求項3】
(A)成分のアミン価が10〜200mgKOH/gである、請求項1又は2のアンダーコート剤。
【請求項4】
(A)成分のガラス転移温度が0〜150℃である、請求項1〜3のいずれかのアンダーコート剤。
【請求項5】
(A)成分と前記(メタ)アクリレートとの使用比率が、(A)成分の1級アミノ基(NH)と前記(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基(Y)との比率(NH/Y)が0.5〜5となる範囲である、請求項2〜4のいずれかのアンダーコート剤。
【請求項6】
(A)成分に対する前記メラミン樹脂の使用量が、(A)成分100重量部(固形分換算)に対して5〜100重量部となる範囲である、請求項2〜4のいずれかのアンダーコート剤。
【請求項7】
前記(B)成分がメラミン樹脂であって、更に酸触媒を含有する、請求項2〜6のいずれかのアンダーコート剤。
【請求項8】
(A)成分と前記ポリエポキシ化合物の使用比率が、(A)成分の1級アミノ基(NH)と前記ポリエポキシ化合物のエポキシ基(Z)との比(NH/Z)が0.5〜5となる範囲である、請求項2〜7のいずれかのアンダーコート剤。
【請求項9】
基材、請求項1〜8のいずれかのアンダーコート剤が硬化してなるアンダーコート層、及び銅蒸着膜層を有する、銅蒸着膜付基材。
【請求項10】
基材がプラスチックである、請求項9の銅蒸着膜付基材。
【請求項11】
プラスチックがプラスチックフィルムである、請求項10の銅蒸着膜付基材。
【請求項12】
プラスチックフィルムがポリエステルフィルムである、請求項11の銅蒸着膜付基材。
【請求項13】
請求項9〜12のいずれかの銅蒸着膜基材を用いてなる導電性フィルム。
【請求項14】
請求項13の導電性フィルムより得られる電極フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主に、各種基材の表面に銅薄膜を形成するために使用するアンダーコート剤、並びに該アンダーコート剤を用いて得られる銅薄膜付基材、導電性フィルム及び電極フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書において「銅薄膜付基材」とは、プラスチック成形品やプラスチックフィルム、金属、ガラス、紙、ナノセルロース紙、木材等の各種基材の表面に銅薄膜が形成されてなる物品をいう。以下、ITO導電性フィルムの代替品としての銅薄膜付プラスチックフィルムである「銅蒸着プラスチックフィルム」を例に挙げ、背景技術について説明する。
【0003】
ITO導電性フィルムは透明性と導電性に優れるため、スマートフォンやタブレットPC等のタッチパネル用の電極フィルムとして賞用されているが、インジウムが高価なレアメタルであるためコストの面で問題があり、またITO層が一般に硬く脆いため曲げや変形に弱い等加工性の点で課題がある。
【0004】
そこで斯界では、ITOに代えてポリチオフェンやポリアニリン、ポリピロール等の成膜性を有する有機導電性高分子を導電材として用いる試みもなされているが、該高分子は一般に強く着色しているため、これを導電層とする導電性フィルム乃至電極フィルムは色調の点で問題が残る。この点、色調を改善するためには該高分子の使用量を減らせば良いが、導電性が損なわれる。
【0005】
一方、斯界では、ITO層に代えて銅蒸着層を用いた導電性フィルムも検討されており、このものはITO導電性フィルムと遜色ない導電性を示し、また加工性も良好であり、何より安価である。また、銅蒸着プラスチックフィルムは、銅がITOよりも低抵抗率であることに起因し、ITOフィルムと比較して導電性に優れている。そのため、銅蒸着プラスチックフィルムを電極フィルムとするタッチパネルは、更なる大画面化が可能となり、例えばインタラクティヴ型のデジタル・サイネージとしての有効活用が期待される。
【0006】
銅蒸着プラスチックフィルムは、一般的には基材となるフィルム面にニッケルを真空蒸着させ、その上に更に銅を真空蒸着させることにより得られる。なお、このニッケル蒸着層は、フィルムと銅蒸着層とをより強く密着させるためのアンカー層として機能する。そして、銅蒸着プラスチックフィルムにレジストを塗布し、電極パターンを描写した後でエッチング液(アルカリ溶液)に浸漬し、レジストを除去することによって電極フィルムが得られる。
【0007】
ところが、前記銅蒸着プラスチックフィルムには、ニッケルがそもそも耐アルカリ性に乏しいことから、エッチング処理後に銅蒸着層が基材フィルムから剥離乃至脱落し易い問題があった。また、前記銅蒸着プラスチックフィルムは、ITO導電性フィルムと比較して安価であるとはいえ、アンカー層をなすニッケルが銅よりも高価であるため、そのぶん割高である。そこで斯界では、有機高分子を主成分とするアンダーコート剤をアンカー層とする銅蒸着プラスチックフィルムも検討されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−28835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、基材と銅薄膜との初期密着性のみならず、該銅薄膜基材をアルカリ溶液で処理した後の基材と銅薄膜との密着性(耐アルカリ密着性)においても優れる、新規なアンダーコート剤を提供することを主たる課題とする。
【0010】
本発明者は鋭意検討を重ねた結果、所定のアミノ基含有アクリル系共重合体を含むアンダーコート剤と、これに更に所定の硬化剤を配合してなるアンダーコート剤とによれば、前記課題を解決できることを見出した。
【0011】
即ち本発明は、側鎖に1級アミノ基含有基を有するアクリル系共重合体(A)を含む銅蒸着膜付基材用アンダーコート剤、側鎖に1級アミノ基含有基を有するアクリル系共重合体(A)と、(メタ)アクリロイル基を少なくとも3つ有する(メタ)アクリレート、メラミン樹脂、ポリエポキシ化合物からなる群より選ばれる一種の硬化剤(B)とを含む銅蒸着膜付基材用アンダーコート剤、並びに該アンダーコート剤が硬化してなるアンダーコート層、及び銅薄膜層を有する銅薄膜付基材、該銅薄膜基材を用いてなる導電性フィルム、及び該導電性フィルムより得られる電極フィルムに関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のアンダーコート剤によれば、基材と銅薄膜との初期密着性のみならず、耐アルカリ密着性も良好なアンダーコート層が得られる。なお、以下、両密着性を単に密着性ということがある。
【0013】
本発明の銅薄膜基材は、基材フィルムと銅蒸着膜との初期密着性及び耐アルカリ密着性が良好であるため、該フィルムをエッチング液で処理しても基材フィルムから銅蒸着膜が脱落し難い。よって該銅薄膜基材は、ITO導電性フィルムを代替する導電性フィルムとして有用である。
【0014】
本発明の導電性フィルムは、各種電極フィルムとして、例えばタッチパネル、ICカード用基板、ICタグ用基板、電子ペーパー用基板、フレキシブルディスプレイ用基板等の用途に供し得る。特に、スマートフォンやタブレットPC等のタッチパネル用の電極フィルムとして好適である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の銅薄膜付基材用アンダーコート剤(以下、単にアンダーコート剤ともいう。)のうち第一態様のものは、側鎖に1級アミノ基含有基を有するアクリル系共重合体(A)(以下、(A)成分ともいう。)を含む組成物である。
【0016】
また、第二態様のアンダーコート剤は、(A)成分と下記所定の硬化剤(B)(以下、(B)成分ともいう。)とを含む組成物である。
【0017】
(A)成分としては、側鎖に1級アミノ基含有基を有するアクリル系共重合体であれば、各種公知のものを特に限定なく使用できる。具体的には、例えば、側鎖にカルボキシル基を有するアクリル系共重合体のカルボキシル基にアルキレンイミンを反応させたもの、側鎖にエポキシ基を有するアクリル系共重合体のエポキシ基にアルキレンジアミンを反応させたもの、側鎖にシアノ基を有するアクリル系共重合体のシアノ基に水素を付加させたもの、側鎖にカルボキシル基を有するアクリル系共重合体のカルボキシル基にアルキレンジアミンを反応させたもの及び側鎖にケチミン基を有する(メタ)アクリレートの重合体を重合後加水分解したもの等が挙げられる。
【0018】
(A)成分の物性は特に限定されないが、密着性の観点より、通常、アミン価が10〜200mgKOH/g程度、好ましくは30〜80mgKOH/gであり、また、ガラス転移温度が0〜150℃程度、好ましくは5〜110℃である。
【0019】
(B)成分は、主剤である(A)成分の硬化剤として機能する成分であり、(メタ)アクリロイル基を少なくとも3つ有する(メタ)アクリレート、メラミン樹脂及びポリエポキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種であれば、各種公知のものを特に制限なく使用できる。
【0020】
前記(メタ)アクリレートの具体種としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノヒドロキシトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート及びグリセロールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは二種以上を組み合わせることができる。該(メタ)アクリレートは、加熱下に(A)成分の1級アミノ基とのマイケル付加したり、(メタ)アクリロイル基間でラジカル重合反応したりすることにより、アンダーコート層に架橋構造が生じる。
【0021】
(A)成分と前記(メタ)アクリレートの使用比率は特に限定されないが、密着性の観点より、(A)成分の1級アミノ基(NH)と前記(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基(Y)との比率(NH/Y)が通常0.5〜5程度、好ましくは1〜2となる範囲であるのがよい。
【0022】
なお、(B)成分として前記(メタ)アクリレートを用いる場合、本発明のアンダーコート剤には、更に光重合開始剤を含めることが出来る。前記光重合開始剤は、活性エネルギー線によりラジカルを発生させて重合を開始させることができるものであれば、特に限定されず公知のものを用いることができる。前記光重合開始剤の具体例としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−シクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、4−メチルベンゾフェノン、1−[4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)ファニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルホニル)プロパン−1−オン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)等が挙げられ、二種以上を組み合せて用いることができる。また、該光重合開始剤の使用量は特に限定されないが、通常、前記(メタ)アクリレート化合物に対して10重量%未満である。
【0023】
前記メラミン樹脂の具体例としては、例えば、メトキシ化メラミン、メチロール基含有メトキシ化メラミン、イミノ基含有メトキシ化メラミン、メトキシ化ブトキシ化メラミン、ブトキシ化メラミン等が挙げられ、これらは二種以上を組み合わせることができる。
【0024】
(A)成分に対する前記メラミン樹脂の使用量は特に限定されないが、密着性の観点より、(A)成分を100重量部(固形分換算)とした場合において、通常5〜100重量部程度、好ましくは30〜70重量部程度(いずれも固形分換算)となる範囲である。
【0025】
なお、(B)成分としてメラミン樹脂を用いる場合、本発明のアンダーコート剤には、更に酸触媒を含めることができる。該酸触媒は、(A)成分とメラミン樹脂を速やかに反応させる。
【0026】
前記酸触媒としては、各種公知のものを特に制限なく使用できる。具体種としては、パラトルエンスルホン酸、塩酸、臭素酸、ヨウ素酸、フッ素酸、フルオロスルホン酸及び硫酸、リン酸等の酸触媒等が挙げられる。これらの中では、取扱いが容易であり、かつ、(A)成分とメラミン樹脂との反応が速やかに進行し密着性に優れたアンダーコート層が得られることから、特にパラトルエンスルホン酸が好ましい。
【0027】
また、必要に応じ、該酸触媒は各種中和剤で中和したものであってよい。該中和剤としては、アンモニア;モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノブチルアミン、シクロヘキシルアミン等の第1級アミン類;ジメチルアミン、ジエチルアミン等の第2級アミン類;トリエチルアミン等の第3級アミン類;アニリン、アリールアミン、アルカノールアミン等の他のアミン類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物;水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物等が挙げられる。
【0028】
前記酸触媒の使用量は特に限定されないが、(A)成分を100重量部(固形分換算)、メラミン樹脂を50重量部とした場合において、通常0.5〜10重量部程度、好ましくは1〜5重量部程度(いずれも固形分換算)となる範囲である。また、前記中和剤の使用量も特に限定されないが、通常、メラミン樹脂に対して0.1〜20重量%程度となる範囲である。
【0029】
前記ポリエポキシ化合物の具体例としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラグリシジルーm−キシレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル(4,4’−メチレンビスアニリン)、N、N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、N,N’−(シクロヘキサン−1,3−ジイルビスメチレン)ビス(ジグリシジルアミン)等のグリシジルアミン型エポキシ化合物;フタル酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル、トリメシン酸トリグリシジルエステル、ピロメリット酸テトラグリシジルエステル等のグリシジルエステル型エポキシ化合物;1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジグリシジルエステル、3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジグリシジルエステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジクリジシルエステル、3−メチルヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、4−メチルヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸トリグリシジルエステル、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸テトラグリシジルエステル等の脂環式ポリカルボン酸グリシジルエステル;グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル型エポキシ化合物;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のイソシアヌル型エポキシ化合物;水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル等の水添ポリフェノール型エポキシ化合物;1−ビニル−3−シクロヘキセンジオキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルヘキシル)アジペート、テトラキス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)ブタンテトラカルボキシレート、ジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)−4,5−エポキシテトラヒドロフタレート)、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エチレンビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート)、リモネンジオキサイド、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)、1,2,5,6−シクロオクタジエンジオキサイド、ジシクロペンタジエンジオキサイド等の脂環式エポキシ化合物が挙げられる。
【0030】
(A)成分に対する前記ポリエポキシ化合物の使用量は特に限定されないが、密着性の観点より、(A)成分のアミノ基(NH)と前記ポリエポキシ化合物のエポキシ基(Z)との比(NH/Z)が通常0.5〜5程度、好ましくは1〜2となる範囲であるのがよい。
【0031】
なお、(B)成分として前記ポリエポキシ化合物を用いる場合、本発明のアンダーコート剤には、更に、(A)成分と前記ポリエポキシ化合物との反応を促進するための触媒を含めることができる。具体的には、例えば、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの三級アミン類;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾールなどのイミダゾ−ル類;トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィンなどの有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレートなどのテトラフェニルボロン塩等を使用することができ、これらは2種以上を組み合わせてもよい。また、当該触媒の使用量は特に限定されないが、通常、前記ポリエポキシ化合物に対して5重量%未満である。
【0032】
本発明の第一態様及び第二態様のアンダーコート剤には、更に有機溶剤(C)を(以下、(C)成分ともいう。)を含めることができる。具体的には、例えば、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンの低級ケトン類、トルエン等の芳香族炭化水素類、エチルアルコール、プロピルアルコール等の非エーテル系アルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエーテルエステル類、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系アルコール類、酢酸エチル等の非エーテル系エステル類、クロロホルム、ジメチルホルムアミドが挙げられ、これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、該(C)成分は、(A)成分として市販品を使用する場合には、当該市販品に由来するものであってもよい。
【0033】
(C)成分の使用量は特に限定されないが、通常、本発明の第一態様及び第二態様のアンダーコート剤の固形分濃度がいずれも通常1〜60重量%程度となる範囲である。
【0034】
本発明の第一態様及び第二態様のアンダーコート剤には、その他、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含めることができる。添加剤としては、例えば、一般式(1):X−Si(OR3−a(R(式(1)中、Xは、アミノ基、(メタ)アクリロイル基及びエポキシ基からなる群より選ばれる少なくとも一種と反応する官能基を、aは0、1又は2を、R及びRは炭素数1〜3のアルキル基を示す。)で表される反応性アルコキシシリル化合物が挙げられる。また、前記一般式(1)のXとしては、例えば、イソシアネート基を含む基、チオール基を含む基、アミノ基を含む基、エポキシ基を含む基、酸無水物基を含む基、及びビニル基を含む基からなる群より選ばれる1種が挙げられる。また、Xがイソシアネート基を含む基の化合物としては、例えば、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシランや、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン及び3−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシシラン等が挙げられる。また、Xがチオール基を含む基の化合物としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランや、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン及び3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシシラン等が挙げられる。また、Xがアミノ基を含む基の化合物としては、例えば、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミオンプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン及び3−ウレイドプロピルトリアルコキシシラン等が挙げられる。また、Xがエポキシ基を含む基の化合物としては、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン及び3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。また、Xが酸無水物基を含む基の化合物としては、例えば、3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物が挙げられる。また、Xがビニル基を含む基の化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、スチリルトリメトキシリラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン及び3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0035】
本発明の銅薄膜付基材は、各種基材、本発明のアンダーコート剤が硬化してなるアンダーコート層、及び銅薄膜層を有する積層体である。
【0036】
基材は特に限定されず、表面に銅薄膜を形成できるものであれば、各種公知のものを使用できる。具体的には、例えば、プラスチック、金属、セルロース材、ガラス等が挙げられる。該プラスチックとしては、例えば、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレン及びポリプロピレン等が挙げられる。また、該金属としては、例えば、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス鋼等が挙げられる。また、該セルロース材としては、例えば、紙、ナノセルロース紙及び木材等が挙げられる。
【0037】
基材の形状は特に限定されない。例えば球状、円柱状、直方体状、板状、フィルム状であってよい。また、基材は表面の一部又は全部が凹凸若しくは曲面であってもよい。本発明の銅薄膜付基材を導電性フィルムとして用いる場合には、基材としては、耐熱性や光学特性等の点よりプラスチックフィルムが、特にポリエステルフィルムが好ましい。また、該基材フィルムの厚みも特に限定されないが、通常50〜200μm程度である。また、アンダーコート層の厚みは特に限定されないが、通常0.1〜5μm程度である。
【0038】
前記銅薄膜層としては、例えば、銅蒸着膜、銅スパッタ膜、銅CVD膜が挙げられる。本発明の銅薄膜付フィルムを電極フィルムに供する場合には、該銅薄膜としては、特に銅蒸着膜又は銅スパッタ膜が好ましい。また、該銅蒸着膜又は銅スパッタ膜の厚みは特に限定されないが、通常、0.1〜2μm程度である。
【0039】
本発明の銅薄膜付基材の製法は特に限定されないが、一般的には次の製法を例示できる。即ち、前記基材の表面に、本発明のアンダーコート剤を塗工し、次いで該基材に熱を加えることにより硬化アンダーコート層(1)を形成し、次いで該硬化アンダーコート層(1)の上に銅薄膜層を形成する方法、が挙げられる。
【0040】
塗工条件は特に限定されず、例えば塗工手段としてはスプレー、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ドットコーター等が挙げられ、また塗工量も特に限定されないが通常、乾燥固形分として0.01〜10g/m2程度である。
【0041】
加熱条件も特に限定されず、通常、温度80〜150℃程度で、時間が10秒〜2分程度である。
【0042】
硬化アンダーコート層(1)に銅薄膜層を形成する手段は特に限定されないが、所謂ドライコート法が好ましい。具体的には、例えば、真空蒸着法又はスパッタリング法等の物理的方法や、CVD等の化学的方法(化学的気相反応等)が挙げられる。本発明の製造方法で得られる銅薄膜付フィルムを電極フィルムに供する場合には、真空蒸着法又はスパッタリング法が好ましい。
【0043】
本発明の電極フィルムは、本発明の導電性フィルムより得られる電子部品である。特に、本発明の導電性フィルムのうち銅蒸着プラスチックフィルム又は銅スパッタフィルムより得られる電極フィルムは、ITO導電性フィルムを用いた電極フィルムの代替品として有用である。
【0044】
本発明の電極フィルムは、本発明の導電性フィルムのレジストを電極パターン状に塗工し、エッチング液(アルカリ溶液、酸性溶液)で処理した後、該レジストを除去することによって得られる。電極パターンの形状は特に限定されず、細線状、ドット状、メッシュ状、面状等が挙げられる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例を通じて本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらによって限定されるものではない。また、実施例中の「部」は重量基準を表す。また、水酸基価はJIS−0070に準拠して測定した値である。また、ガラス転移温度は、市販の測定器具(製品名「DSC8230B」、理学電機(株)製)を用いて測定した値である。
【0046】
<第一態様のアンダーコート剤の調製>
実施例1
アミノエチル化アクリルポリマー(商品名「ポリメントNK−380」、アミン価56mgKOH/g、ガラス転移温度100℃、固形分30重量%、トルエン/MIBK(3/1)溶液、日本触媒(株)製)をメチルエチルケトンで希釈し、固形分7.5%のアンダーコート剤を調製した。
【0047】
実施例2
アミノエチル化アクリルポリマー(商品名「ポリメントNK−350」、アミン価45mgKOH/g、ガラス転移温度40℃、固形分35重量%、トルエン/IPA(7/3)溶液、日本触媒(株)製)をメチルエチルケトンで希釈し、固形分7.5%のアンダーコート剤を調製した。
【0048】
実施例3
アミノエチル化アクリルポリマー(商品名「ポリメントNK−100PM」、アミン価143mgKOH/g、ガラス転移温度13℃、固形分49重量%、プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液、日本触媒(株)製)をプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈し、固形分7.5%のアンダーコート剤を調製した。
【0049】
<第二態様のアンダーコート剤の調製>
実施例4
(A)成分としてポリメントNK-350を100部、(B)成分としてトリメチロールプロパントリアクリレート(商品名「ビスコート#295」、大阪有機化学工業(株)製)を5部、よく混合した後、更にメチルエチルケトンで希釈し、固形分7.5%のアンダーコート剤を調製した。
【0050】
実施例5
(A)成分としてポリメントNK−100PMを100部、(B)成分としてN,N,N’,N’−テトラグリシジルーm−キシレンジアミン(商品名「TETRAD−X」、三菱ガス化学(株)製)を5部、よく混合した後、更にプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈し、固形分7.5%のアンダーコート剤を調製した。
【0051】
実施例6
(A)成分としてポリメントNK−100PMを100部、(B)成分としてメチル化メラミン樹脂(商品名「サイメル303−LF」、日本サイテック(株)製)を50部、(C)成分としてパラトルエンスルホン酸を2.5部、よく混合した後、更にプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈し、固形分7.5%のアンダーコート剤を調製した。
【0052】
比較例1
側鎖にカルボキシル基を有する共重合体(商品名「ARUFON UC−3920」、ガラス転移温度102℃、酸価240mgKOH/g、東亞合成(株)製)をメチルエチルケトンに溶解させ、固形分30%のアンダーコート剤を調製した。
【0053】
比較例2
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えた反応容器に、メタクリル酸メチル192部、アクリル酸ノルマルブチル7.2部、及びアクリル酸2−ヒドロキシエチル40.8部、並びにメチルエチルケトン360部を仕込み、反応系を80℃に設定した。次いで、アゾビスイソブチロニトリル1.2部を仕込み、80℃付近で5時間保温した。次いで、アゾビスイソブチロニトリル2.4部を仕込み、反応系を同温度付近において更に4時間保温した。その後反応系を室温まで冷却することにより、ガラス転移温度70℃、水酸基価80mgKOH/g、不揮発分40%のアクリルコポリマーの溶液を得た。
【0054】
比較例3
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えた反応容器に、メタクリル酸メチル201.6部、アクリル酸33.6部、及びアクリルアミド100.8部、並びにイソプロピルアルコール92.7部、水269.0部を仕込み、反応系を75℃に設定した。次いで、水溶性アゾ重合開始剤(商品名「V−50」、和光純薬工業(株)製)0.72部を仕込み、75℃付近で4時間保温した。次いで、V−50を1.2部を仕込み、反応系を同温度付近において更に3時間保温した。その後、水98部、トリエチルアミン47部を加え、反応系を室温まで冷却することにより、ガラス転移温度120℃、価数(1級アミド基)240mgKOH/g、不揮発分40%のアクリルコポリマーの溶液を得た。
【0055】
比較例4
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えた反応容器に、メタクリル酸メチル152.4部、アクリル酸15.6部、及びN−n−ブトキシメチルアクリルアミド72.0部、並びにイソプロピルアルコール360部を仕込み、反応系を80℃に設定した。次いで、アゾビスイソブチロニトリル1.2部を仕込み、80℃付近で5時間保温した。次いで、アゾビスイソブチロニトリル2.4部を仕込み、反応系を同温度付近において更に4時間保温した。その後反応系を室温まで冷却することにより、ガラス転移温度120℃、価数(2級アミド基)110mgKOH/g、不揮発分40%のアクリルコポリマーの溶液を得た。
【0056】
比較例5
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えた反応容器に、メタクリル酸ブチル24.0部、アクリル酸48.0部、及びアクリロイルモルフォリン168.0部、並びにイソプロピルアルコール360部を仕込み、反応系を80℃に設定した。次いで、アゾビスイソブチロニトリル1.2部を仕込み、80℃付近で5時間保温した。次いで、アゾビスイソブチロニトリル2.4部を仕込み、反応系を同温度付近において更に4時間保温した。その後反応系を室温まで冷却することにより、ガラス転移温度120℃、価数(3級アミド基)280mgKOH/g、不揮発分40%のアクリルコポリマーの溶液を得た。
【0057】
<銅蒸着プラスチックフィルムの作製>
実施例1のアンダーコート剤を市販のポリエステルフィルム(商品名「ルミラーU48」、東レ(株)製、100μm厚)に、乾燥膜厚が1.0μm程度となるようバーコーターで塗工し、120℃で1分間乾燥させた。次いで当該塗工フィルムのアンダーコート面に、市販の蒸着装置(製品名「NS−1875−Z」、西山製作所(株)製)を使用し、銅を蒸着させることにより(厚み約100nm)、銅蒸着プラスチックフィルムを得た。他の実施例及び比較例のアンダーコート剤についても同様にして銅蒸着プラスチックフィルムを得た。
【0058】
実施例1〜6及び比較例1〜5のそれぞれの銅蒸着プラスチックフィルムについて以下の試験を実施した。結果を表1に示す。
【0059】
1.初期密着性
各実施例及び比較例の銅蒸着フィルムの銅蒸着面にカッターナイフで100マスの碁盤目を入れ、粘着テープ(製品名「セロテープ(登録商標)」、ニチバン(株)製)を貼り付けた後、垂直方向に引き剥がすことにより、銅蒸着層の密着性を評価した。
【0060】
2.耐アルカリ密着性
各実施例及び比較例の銅蒸着フィルムを、40℃に加温した4%水酸化ナトリウム水溶液に5分間浸漬した後、銅蒸着層の密着性を、前記同様、碁盤目試験により評価した。
【0061】
【表1】