(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。以下では、インプリント工程で用いられるインプリント用テンプレート基板の製造方法、インプリント用テンプレート基板、インプリント用テンプレート、および半導体装置の製造方法について説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1A〜
図1Fは第1の実施形態によるインプリント用テンプレートの製造工程を示す工程断面図である。まず、石英ガラス基板1の一主面上に保護膜2を形成する。保護膜2は、SiO
2、SiON、SiN、TiNなどであり、その膜厚は例えば50〜100nm程度である。次に、
図1Aに示すように、保護膜2上に、メサ部を形成するためのマスク材3を付着する。マスク材3は、レジスト膜でもよいし、ハードマスク膜でもよい。
【0011】
次に、
図1Bに示すように、マスク材3の輪郭に沿って、保護膜2がSiO
2、SiON、SiNなどの絶縁膜の場合は、CF
4やCHF
3ガスを用いたRIE(Reactive Ion Etching)を行って保護膜2の一部を除去し、また、フッ酸を用いて石英ガラス基板1の一部を除去して、凸形状のメサ部4を形成する。これにより、メサ部4の側面の高さを約30μmにする。保護膜2がTiNなどの金属窒化膜の場合は、APM (Ammonia-peroxide mixture)を用いて保護膜2の一部を除去し、続けて、フッ酸を用いて石英ガラス基板1の一部を除去して、凸形状のメサ部4を形成する。
【0012】
次に、
図1Cに示すように、SPM(Sulfuric Acid Hydrogen Peroxide Mixture)処理とO
2アッシングにより、メサ部4の上面に付着したマスク材3を除去する。
【0013】
次に、
図1Dに示すように、石英ガラス基板1の表面全体にポリシリコンまたはアモルファスシリコンのシリコン膜5を形成する。シリコン膜5は、石英ガラス基板1の表面にほぼ均一な膜厚で形成され、その膜厚は例えば300nm程度である。ここでは、チャンバ内を所定の真空度および所定の温度に設定した状態で、SIH
4ガスやSi
2H
6ガスなどをチャンバ内に導入して、石英ガラス基板1の表面にポリシリコンまたはアモルファスシリコンのシリコン膜5を形成する。あるいは、チャンバ内にマイクロ波を印加して、還元反応にて石英ガラス表面の酸素を脱離させて、石英ガラス基板1の表面にシリコンを露出させてもよい。
【0014】
次に、
図1Eに示すように、炭素およびフッ素を含有するCF系ガス(例えば、CF
4、C
2F
6、CHFなど)を用いたRIEを行う。RIEは異方性エッチングであるため、石英ガラス基板1の基板面に平行な面上のシリコン膜5は除去されて、下地の保護膜2が露出される。一方、石英ガラス基板1の側面のシリコン膜5は、すべては除去されず、一部のシリコン膜5が残存する。
図1Eの左側には、石英ガラス基板1のメサ部4の側面部分の構造を拡大図示している。図示のように、側面の上側ほどエッチングが進行して、シリコン膜5の膜厚が薄くなる側壁が形成される。しかも、この側壁部分の表面には、シリコンと、炭素と、フッ素とが結合したSiCFn(n=1、2または3)膜6が形成される。このSiCFn膜6は、優れた撥水撥油特性を持っている。SiCFn膜6は、メサ部4の側面だけでなく、その下方の石英ガラス基板1の側面にも形成される。下地の保護膜2がTiNの場合はCF系ガス用いたRIEでのエッチングレートは絶縁膜と比較して2割ほどと小さくなり、膜厚は、ほぼ初期の膜厚を維持して残される。
【0015】
次に、
図1Fに示すように、フッ酸のガスを用いて、メサ部4の上面に残存している保護膜2を除去する。保護膜2がTiNの場合はAPMを使用して除去するがテンプレートの側面のSiCFn膜6は維持される。
【0016】
以上の工程により、テンプレートの側面をSiCFn膜6で覆うことができる。その後、
図1Gに示すように、メサ部4の上面に、プラズマエッチング等により微細な凹凸パターン7を形成することにより、テンプレートが完成する。このテンプレートをウエハ上に塗布されたレジストに押しつけると、テンプレートの側面に形成されたSiCFn膜6が撥水撥油特性を有するために、テンプレートの外側にはみ出したレジストは、SiCFn膜6には付着しなくなる。
【0017】
図1Aでは、石英ガラス基板1の一主面上に保護膜2を介してマスク材3を配置しているが、石英ガラス基板1上に直接マスク材3を配置してもよい。この場合の製造工程は、例えば
図2A〜
図2Fのようになる。
【0018】
まず、
図2Aに示すように、ガラス基板上に、レジスト膜またはハードマスク膜のマスク材3を付着する。次に、
図2Bに示すように、マスク材3の輪郭に沿って、フッ酸を用いて石英ガラス基板1の一部を除去して、凸形状のメサ部4を形成する。次に
図2Cに示すように、SPM処理とO
2アッシングにより、メサ部4の上面に付着したマスク材3を除去し、その後、メサ部4の上面にハードマスク膜9を付着する。その後の工程(
図2D〜
図2F)は
図1D〜
図1Fと同様であるため、説明を省略する。
【0019】
図1A〜
図1Fと
図2A〜
図2Fのいずれの製造工程でも、テンプレート8の側面にSiCFn膜6を形成することができる。ここで、テンプレート8の側面とは、メサ部4の側面と、メサ部4の側面から第1面を介して接合される第2面とである。メサ部4の上面(凹凸パターン7の形成面)と第1面は、RIEでシリコン膜5が除去されるため、SiCFn膜6は形成されない。
【0020】
図1A〜
図1Fと
図2A〜
図2Fでは、ポリシリコンまたはアモルファスシリコンのシリコン膜5を用いてSiCFn膜6を形成しているが、SiCFn膜6の下地がポリシリコンか、アモルファスシリコンかによって、SiCFn膜6のレジストに対する接触角が変化する。
【0021】
図3は材料が異なる複数の膜のレジストに対する接触角(WCA:Water Contact Angle)を示すグラフである。
図3からわかるように、下地がアモルファスシリコンやベアシリコンの場合と比べて、下地がポリシリコンの場合には、レジストに対する接触角が10〜15%ほど高くなる。よって、撥水撥油特性をできるだけ向上させたい場合は、下地をポリシリコンにするのが望ましい。ただし、
図3からわかるように、下地がアモルファスシリコンであっても、下地が酸化膜の場合よりもはるかに撥水撥油特性を向上できる。よって、アモルファスシリコンを採用しても、撥水撥油特性を向上させることができる。
【0022】
このように、第1の実施形態では、インプリント用テンプレート8の母材である石英ガラス基板1の側面に、撥水撥油特性に優れたSiCFn膜6を形成するため、テンプレート8をレジストに押しつけても、レジストがテンプレート8の側面に付着しにくくなる。よって、テンプレート8の側面に付着したレジストがウエハ上に落下して不良箇所を増やすような不具合も生じなくなる。
【0023】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、石英ガラスの表面に、ポリシリコンやアモルファスシリコンのシリコン膜5を形成することなく、炭素およびフッ素を含有するCFポリマ層を形成するものである。
【0024】
図4A〜
図4Cは第2の実施形態によるインプリント用テンプレート8の製造工程を示す断面図である。まず、
図4Aに示すように、石英ガラス基板1上に、レジスト膜またはハードマスク膜からなるマスク材3を付着する。次に、
図4Bに示すように、マスク材3の輪郭に沿って、石英ガラス基板1の一部を除去して、凸形状のメサ部4を形成する。
【0025】
次に、
図4Cに示すように、石英ガラス基板1を、200℃に加熱したチャンバに収納して、チャンバ内でCF系溶媒を気化させる。これにより、石英ガラス基板1の表面には、炭素およびフッ素を含有するCF系ポリマ層10が形成される。次に、マスク材3を除去する。その後、メサ部4の上面に微細パターンを形成して、テンプレート8が完成する。
【0026】
第2の実施形態におけるテンプレート8は、石英ガラスの表面に直接CFポリマ層が形成されるため、石英ガラス中の酸素と、CFポリマ層中の炭素およびフッ素とが結合する。この結合の強さは、第1の実施形態におけるSiCFn膜6を構成するシリコン、炭素およびフッ素の結合の強さよりも弱いと考えられる。よって、第2の実施形態におけるテンプレート8の側面に付着したCFポリマ層は、第1の実施形態におけるSiCFn層よりも剥がれやすくなるおそれがあるが、CFポリマ層自体は、撥水撥油特性を有するため、テンプレート8の側面にCFポリマ層が付着している限りは、テンプレート8の側面にレジストが付着しにくくなる。
【0027】
このように、第2の実施形態では、インプリント用テンプレート8の母材である石英ガラスの表面にCFポリマ層を形成するため、第1の実施形態よりも簡易な製法で、テンプレート8の側面に撥水撥油特性を持たせることができる。
【0028】
上述した第1および第2の実施形態におけるインプリント用テンプレート8は、例えば、ガラスメーカにて、石英ガラスを加工して凸形状のメサ部4を形成する工程の中で、テンプレート8の側面に上述した撥水撥油特性を持たせる処理を行うことができる。これにより、ガラスメーカから納品されたテンプレート8の原盤には、すでにその側面に撥水撥油処理が施されていることになり、その後の工程に何ら変更を加えることなく、側面にレジストが付着しにくいテンプレート8を作製することができる。また、第1および第2の実施形態におけるインプリント用テンプレート8を用いて、テンプレート8に形成されたパターンを半導体基板上に塗布されたレジストに転写し、転写されたレジストパターンに基づき半導体基板を加工することにより、欠陥発生を抑えた半導体装置の製造を実現することができる。
【実施例】
【0029】
(第1実施例)
15cm角の石英ガラスを、真空度30パスカルで、基板温度150℃に保持したチャンバ内に収納した。この状態で、チャンバ内にSiH
4ガスをガス流量100sccm導入した。次に、2.45GHzのマイクロ波を石英ガラスに照射し、石英ガラスの表面にポリシリコンのシリコン膜5を形成した。次に、チャンバ内のガスをSiH
4ガスからCF
4ガスに切り替えて、ガス流量50sccmでシリコン膜5の表面にSiCFn膜6を形成した。このSiCFn(n=1、2または3)膜6のレジストに対する接触角は、65degであった。
【0030】
一方、ポリシリコンの代わりにアモルファスシリコンのシリコン膜5を形成し、シリコン膜5の表面にSiCFn膜6を形成した場合の接触角は、35degであった。
【0031】
(第2実施例)
15cm角の石英ガラスを、真空度30パスカルで、基板温度400℃に保持したチャンバ内に収納した。この状態で、チャンバ内にSiH
4ガスをガス流量100sccm導入した。次に、2.45GHzのマイクロ波を石英ガラスに照射し、石英ガラスの表面にポリシリコンのシリコン膜5を形成した。次に、チャンバ内のガスをSiH
4ガスからCF
4ガスに切り替えて、ガス流量50sccmでシリコン膜5の表面にSiCFn膜6を形成した。このSiCFn膜6のレジストに対する接触角は、70degであった。
【0032】
一方、ポリシリコンの代わりにアモルファスシリコンのシリコン膜5を形成し、シリコン膜5の表面にSiCFn膜6を形成した場合の接触角は、40degであった。
【0033】
(第3実施例)
15cm角の石英ガラスを、真空度300パスカルで、基板温度500℃に保持したチャンバ内に収納した。この状態で、チャンバ内にSi
2H
6ガスをガス流量300sccm導入した。次に、熱励起にて、石英ガラスの表面にポリシリコンのシリコン膜5を形成した。次に、チャンバ内のガスをSi
2H
6ガスからCF
4ガスに切り替えて、ガス流量50sccmでシリコン膜5の表面にSiCFn膜6を形成した。このSiCFn膜6のレジストに対する接触角は、73degであった。
【0034】
一方、ポリシリコンの代わりにアモルファスシリコンのシリコン膜5を形成し、シリコン膜5の表面にSiCFn膜6を形成した場合の接触角は、43degであった。
【0035】
(第4実施例)
15cm角の石英ガラスを、真空度300パスカルで、基板温度500℃に保持したチャンバ内に収納した。この状態で、チャンバ内にSi
2H
6ガスをガス流量300sccm導入した。次に、熱励起にて、石英ガラスの表面にポリシリコンのシリコン膜5を形成した。次に、チャンバ内のガスをSi
2H
6ガスからC
2F
6ガスに切り替えて、ガス流量50sccmでシリコン膜5の表面にSiCFn膜6を形成した。このSiCFn膜6のレジストに対する接触角は、77degであった。
【0036】
一方、ポリシリコンの代わりにアモルファスシリコンのシリコン膜5を形成し、シリコン膜5の表面にSiCFn膜6を形成した場合の接触角は、47degであった。
【0037】
(第5実施例)
15cm角の石英ガラスを、真空度30パスカルで、基板温度500℃に保持したチャンバ内に収納した。この状態で、チャンバ内にH
2ガスをガス流量200sccm導入した。次に、2.45GHzのマイクロ波を石英ガラスに照射し、還元反応にてガラス表面の酸素を脱離し、高密度のシリコン層を形成した。次に、チャンバ内のガスをH
2ガスからCF
4ガスに切り替えて、ガス流量50sccmでシリコン膜5の表面にSiCFn膜6を形成した。このSiCFn膜6のレジストに対する接触角は、65degであった。
【0038】
一方、ポリシリコンの代わりにアモルファスシリコンのシリコン膜5を形成し、シリコン膜5の表面にSiCFn膜6を形成した場合の接触角は、45degであった。
【0039】
(第6実施例)
上述した第1〜第4実施例において、SiCFn膜6を形成する際にチャンバ内に供給するCF
4ガスやC
2F
6ガスを用いて、石英ガラス表面のシリコン膜5のエッチバックを行い、石英ガラスの側面のみにSiCFn膜6が残存するようにした。そして、石英ガラスの側面に付着されるレジストの量が低減することを確認した。
【0040】
(第7実施例)
15cm角の石英ガラスを、真空度30パスカルで、基板温度150℃に保持したチャンバ内に収納した。この状態で、2.45GHzのマイクロ波を石英ガラスに照射し、チャンバ内にCF
4ガスを導入した。これにより、石英ガラスの表面にCF系ポリマ層10を形成した。このCF系ポリマ層10のレジストに対する接触角は、25degであった。
【0041】
(第8実施例)
15cm角の石英ガラスを、真空度30パスカルで、基板温度500℃に保持したチャンバ内に収納した。この状態で、2.45GHzのマイクロ波を石英ガラスに照射し、チャンバ内にC
2F
6ガスを導入した。これにより、石英ガラスの表面にCF系ポリマ層10を形成した。このCF系ポリマ層10のレジストに対する接触角は、20degであった。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。