特許第6403040号(P6403040)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6403040炭素繊維複合材製受熱タイルおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6403040
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】炭素繊維複合材製受熱タイルおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G21B 1/13 20060101AFI20181001BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   G21B1/13
   B23K1/00 Z
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-20421(P2014-20421)
(22)【出願日】2014年2月5日
(65)【公開番号】特開2015-148475(P2015-148475A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2017年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105795
【弁理士】
【氏名又は名称】名塚 聡
(74)【代理人】
【識別番号】110001575
【氏名又は名称】リングループ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山 田 弘 一
(72)【発明者】
【氏名】佐 藤 康 士
(72)【発明者】
【氏名】鶴 大 悟
(72)【発明者】
【氏名】櫻 井 真 治
(72)【発明者】
【氏名】中 村 誠 俊
【審査官】 山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−533492(JP,A)
【文献】 特開2011−122883(JP,A)
【文献】 特開平07−167972(JP,A)
【文献】 特開2007−155737(JP,A)
【文献】 実開平02−035097(JP,U)
【文献】 特開2014−224730(JP,A)
【文献】 T. Hirai,Engineering of In-vessel Components for ITER,PFMC-13 Workshop/FEMaS-1 Conference Tutorial Sessions,2011年 5月,全34頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21B 1/13
B23K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高熱負荷受熱機器に用いられる炭素繊維複合材製受熱タイルにおいて、
炭素繊維複合材で形成され、貫通孔を有する受熱ブロックと、
前記受熱ブロックの前記貫通孔に挿通される冷却管と、
前記冷却管の外周に設けられた緩衝材と、
前記貫通孔の内面と前記緩衝材の外面とを接合する第1のロウ付け部と、
前記緩衝材の内面と前記冷却管の外面とを接合する第2のロウ付け部と、
前記貫通孔の軸方向における前記受熱ブロックの全長にわたって、前記受熱ブロックの受熱面から少なくとも前記緩衝材の外面まで延在する材料不連続部と、
を備え
前記材料不連続部は、対面する一対の材料表面によって画成されており、
前記材料不連続部は、前記受熱タイルの製造過程において前記受熱ブロックに切り込みを入れることによって形成され、
前記一対の材料表面は、前記受熱ブロック、前記緩衝材、および前記冷却管をロウ付け処理する際に、前記受熱ブロックの熱膨張率と前記冷却管の熱膨張率との差に起因して前記受熱ブロックが変形したことにより、少なくとも前記受熱面側において互いに接触している、炭素繊維複合材製受熱タイル。
【請求項2】
前記冷却管は、銅合金材料によって形成されている、請求項記載の炭素繊維複合材製受熱タイル。
【請求項3】
前記高熱負荷受熱機器は、核融合装置の第一壁として用いられる機器である、請求項1または2に記載の炭素繊維複合材製受熱タイル。
【請求項4】
前記材料不連続部は、前記受熱ブロックの受熱面から前記冷却管の外面まで延在する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の炭素繊維複合材製受熱タイル。
【請求項5】
高熱負荷受熱機器に用いられる炭素繊維複合材製受熱タイルの製造方法において、
炭素繊維複合材で形成され、貫通孔を有する受熱ブロックを提供する工程であって、前記受熱ブロックは、前記貫通孔の軸方向における前記受熱ブロックの全長にわたって、前記受熱ブロックの受熱面から前記貫通孔まで延在するスリットを有する、工程と、
前記貫通孔の内面に第1のロウ材薄膜を配置する工程と、
前記第1のロウ材薄膜の内側に緩衝材を配置する工程と、
前記緩衝材の内側に第2のロウ材薄膜を配置する工程と、
前記第2のロウ材薄膜の内側に冷却管を配置する工程と、
前記受熱ブロック、前記第1のロウ材薄膜、前記緩衝材、前記第2のロウ材薄膜、および前記冷却管で構成された組立体をロウ付けする工程と、を備え
前記受熱ブロックの前記スリットの幅は、前記組立体をロウ付けする工程において、前記受熱ブロックの熱膨張率と前記冷却管の熱膨張率との差に起因して前記受熱ブロックが変形することにより、ロウ付け処理が完了した時点で少なくとも前記受熱面側において前記受熱ブロックの前記スリットが閉じるような値に設定されている、炭素繊維複合材製受熱タイルの製造方法。
【請求項6】
前記受熱ブロックを提供する工程は、前記受熱ブロックを形成する材料に切り込みを入れて前記スリットを形成する工程を含む、請求項記載の炭素繊維複合材製受熱タイルの製造方法。
【請求項7】
前記冷却管は、銅合金材料によって形成されている、請求項5または6に記載の炭素繊維複合材受熱タイルの製造方法。
【請求項8】
前記高熱負荷受熱機器は、核融合装置の第一壁として用いられる機器である、請求項5乃至7のいずれか一項に記載の炭素繊維複合材製受熱タイルの製造方法。
【請求項9】
前記受熱ブロックは、前記受熱面と反対側に嵌合溝を有し、
前記ロウ付けする工程における前記スリットの変形による前記嵌合溝の変形を抑制するジグを適用する、請求項5乃至8のいずれか一項に記載の炭素繊維複合材製受熱タイルの製造方法。
【請求項10】
前記緩衝材は、前記貫通孔の軸方向に延在するスリットを有し、
前記受熱ブロックの前記スリットと前記緩衝材の前記スリットとが一致するように前記緩衝材を前記第1のロウ材薄膜の内側に配置する、請求項5乃至9のいずれか一項に記載の炭素繊維複合材製受熱タイルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核融合装置の第一壁などの高熱負荷受熱機器に使用する炭素繊維複合材製受熱タイルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
核融合装置における第一壁は、炉内で生成されるプラズマに直接的に対向する機器全般を意味し、具体的には、ダイバータ、ブランケット表面、リミッターなどを含む。第一壁は、プラズマに直接的に対向するため、高温のプラズマによる厳しい熱・粒子負荷を受ける。そのため、プラズマに悪影響を与えることなく、構造健全性を維持し、周囲の構造物にとってプラズマに対する遮蔽体となることが要求される。
【0003】
したがって、第一壁には、高温のプラズマによる高熱負荷に耐えて除熱を行う機能が要求される。そのような高熱負荷に対する除熱機能を満たすために、熱伝導性が高い材料で第一壁を構成することが必要である。
【0004】
図5は、核融合装置のダイバータに使用する従来の炭素繊維複合材製受熱タイルの一例を示しており、とりわけトカマク型核融合装置のダイバータに適した受熱タイルである。
【0005】
トカマク型核融合装置のダイバータは、そこに入射する荷電粒子の持つ運動エネルギーが熱として与えられるため、核融合装置内において最も高い熱負荷を受ける機器である。したがって、ダイバータには、そのような高熱負荷に耐えて除熱を行う機能が要求される。
【0006】
図5に示したダイバータの受熱タイル50は、イオン照射によるスパッタリングやプラズマディスラプションにおける熱衝撃から冷却構造を保護するために、プラズマに対向する表面に、プラズマへの悪影響が小さい材料で形成された受熱ブロック51を備える。
【0007】
受熱ブロック51は、スパッタリングなどによりその表面から粒子が放出されてプラズマ中に混入し、プラズマ温度の低下や閉じ込め性能の低下を招くため、プラズマへの悪影響が小さい原子番号の小さい材料で形成されることが望まれる。そのような材料としては、熱伝導性も考慮して、炭素繊維複合材(CFC)が代表例としてあげられる。
【0008】
長時間放電を行う核融合装置においては、ダイバータを構成する部材自体の熱容量ではその表面温度が構成材料の使用限界温度を超えてしまう。そこで、受熱ブロック51の中央に貫通孔52を形成し、その中に冷却管53が挿通されている。冷却管53としては、伝熱性が高く強度の高い、たとえばクロム・ジルコニウム銅(CuCrZr)などの銅合金製の冷却管が採用される。
【0009】
核融合装置の運転時には、冷却管53の内部に水などの冷却材を流通させ、受熱ブロック51が受けた熱を強制的に除去する。これにより、受熱ブロック51がその使用限界温度を超えて損傷を受けることを防止する。
【0010】
しかしながら、CFCなどの炭素材で形成した受熱ブロック51と、CuCrZrなどの銅合金製の冷却管52とは、両者の接合性が悪く、また、熱膨張率に大きな違いがある。
【0011】
このため、プラズマから受ける熱エネルギーを効率よく冷却管53に伝え、かつ熱膨張率の差を吸収するために、受熱ブロック51と冷却管53との間には、CuWなどの銅材製の緩衝材54を介装している。
【0012】
受熱ブロック51と緩衝材54との間、および緩衝材54と冷却管53との間は、Cu−Mg系やTi−Cu系の熱伝導の良い接合材を用いたロウ付けにより冶金的に接合して、伝熱抵抗を可能な限り低減するようにしている。すなわち、受熱ブロック51と緩衝材54との間には第1のロウ付け部55が存在し、緩衝材54と冷却管53との間には第2のロウ付け部56が存在する。
【0013】
なお、受熱ブロック51の、受熱面57と反対側の面には、受熱タイル50を他の機器に固定するためのレールを通す嵌合溝58が形成されている。
【0014】
ところで、受熱ブロック51、冷却管53、および緩衝材54は、それらの熱膨張係数が、受熱ブロック51において1×10−6、冷却管54において2×10−5、緩衝材54において1×10−5と大きく異なる。
【0015】
このため、ロウ付け工程中の高熱処理、特に降温工程において素材が収縮する際に、熱膨張係数が小さい受熱ブロック51や緩衝材54が、熱膨張係数が大きい冷却管53の収縮に追従できず、それらの間の接合部分に欠陥が生じやすい。
【0016】
その結果、受熱ブロック51内の、緩衝材54との接合面近傍に割れ59が発生したり、受熱ブロック51と緩衝材54との間に剥離60が生じたりする場合がある。このような割れ59や剥離60が発生すると、熱伝達率が低下して、受熱ブロック51の冷却効率が低下してしまう。
【0017】
特許文献1には、グラファイト部と金属部がロウ層を介して互いに結合され、金属部とロウ層の間に中間層が配置されている高耐熱構造部品が記載されている。特許文献1においては、この特殊な中間層により、異種材料間の熱膨張率の違いを吸収して、グラファイトと金属の間を強固に結合することができるとされている。
【0018】
特許文献1に記載の高耐熱構造部品においては、核融合装置の運転中に加えられる熱サイクル負荷には耐えて、構造部品の著しい変形や材料割れを防止することができるかも知れない。
【0019】
しかしながら、ロウ付けは850℃乃至1900℃の間の温度で行われるため、部品の製造工程中に施される高熱処理に耐えられない場合があり、製品としての歩留まりは高くないものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特表平8−506315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
そこで、本発明は、核融合装置の第一壁などの高熱負荷受熱機器に使用する炭素繊維複合材製受熱タイルにおいて、受熱タイルを構成する各部材間の剥離や部材の割れなど、冷却効率を低下させるような欠陥を含んでいない炭素繊維複合材製受熱タイルおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決するために、本発明は、高熱負荷受熱機器に用いられる炭素繊維複合材製受熱タイルにおいて、炭素繊維複合材で形成され、貫通孔を有する受熱ブロックと、前記受熱ブロックの前記貫通孔に挿通される冷却管と、前記冷却管の外周に設けられた緩衝材と、前記貫通孔の内面と前記緩衝材の外面とを接合する第1のロウ付け部と、前記緩衝材の内面と前記冷却管の外面とを接合する第2のロウ付け部と、前記貫通孔の軸方向における前記受熱ブロックの全長にわたって、前記受熱ブロックの受熱面から少なくとも前記緩衝材の外面まで延在する材料不連続部と、を備えたことを特徴とする。
【0023】
また、好ましくは、前記材料不連続部は、対面する一対の材料表面によって画成されている。
【0024】
また、好ましくは、前記一対の材料表面は、互いに離間して形成されている。
【0025】
また、好ましくは、前記材料不連続部は、スリットである。
【0026】
また、好ましくは、前記一対の材料表面は、少なくとも前記受熱面側においてそれらが互いに接触している。
【0027】
また、好ましくは、前記材料不連続部は、前記受熱タイルの製造過程において前記受熱ブロックに切り込みを入れることによって形成される。
【0028】
また、好ましくは、前記冷却管は、銅合金材料によって形成されている。
【0029】
また、好ましくは、前記高熱負荷受熱機器は、核融合装置の第一壁として用いられる機器である。
【0030】
また、好ましくは、前記材料不連続部は、前記受熱ブロックの受熱面から前記冷却管の外面まで延在する。
【0031】
上記課題を解決するために、本発明は、高熱負荷受熱機器に用いられる炭素繊維複合材製受熱タイルの製造方法において、炭素繊維複合材で形成され、貫通孔を有する受熱ブロックを提供する工程であって、前記受熱ブロックは、前記貫通孔の軸方向における前記受熱ブロックの全長にわたって、前記受熱ブロックの受熱面から前記貫通孔まで延在するスリットを有する、工程と、前記貫通孔の内面に第1のロウ材薄膜を配置する工程と、前記第1のロウ材薄膜の内側に緩衝材を配置する工程と、前記緩衝材の内側に第2のロウ材薄膜を配置する工程と、前記第2のロウ材薄膜の内側に冷却管を配置する工程と、前記受熱ブロック、前記第1のロウ材薄膜、前記緩衝材、前記第2のロウ材薄膜、および前記冷却管で構成された組立体をロウ付けする工程と、を備えたことを特徴とする。
【0032】
また、好ましくは、前記受熱ブロックを提供する工程は、前記受熱ブロックを形成する材料に切り込みを入れて前記スリットを形成する工程を含む。
【0033】
また、好ましくは、前記受熱ブロックの前記スリットの幅は、前記組立体をロウ付けする工程において、前記受熱ブロックの熱膨張率と前記冷却管の熱膨張率との差に起因して前記受熱ブロックが変形することにより、ロウ付け処理が完了した時点で少なくとも前記受熱面側において前記受熱ブロックの前記スリットが閉じるような値に設定されている。
【0034】
また、好ましくは、前記冷却管は、銅合金材料によって形成されている。
【0035】
また、好ましくは、前記高熱負荷受熱機器は、核融合装置の第一壁として用いられる機器である。
【0036】
また、好ましくは、前記受熱ブロックは、前記受熱面と反対側に嵌合溝を有し、前記ロウ付けする工程における前記スリットの変形による前記嵌合溝の変形を抑制するジグを適用する。
【0037】
また、好ましくは、前記緩衝材は、前記貫通孔の軸方向に延在するスリットを有し、前記受熱ブロックの前記スリットと前記緩衝材の前記スリットとが一致するように前記緩衝材を前記第1のロウ材薄膜の内側に配置する。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、核融合装置の第一壁などの高熱負荷受熱機器に用いられる炭素繊維複合材製受熱タイルにおいて、受熱タイルを構成する部材間の剥離や部材の割れなど、冷却効率を低下させるような欠陥を含んでいない炭素繊維複合材製受熱タイルおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の一実施形態による、核融合装置のダイバータに用いられる炭素繊維複合材製受熱タイルの縦断面図。
図2図1に示した炭素繊維複合材製受熱タイルの斜視図。
図3図1に示した受熱タイルの製造方法を説明するための分解斜視図。
図4】本発明の他の実施形態による、核融合装置のダイバータに用いられる炭素繊維複合材製受熱タイルの縦断面図。
図5】核融合装置のダイバータに用いられる、従来の炭素繊維複合材製受熱タイルの一例を示した縦断面図であり、従来の問題点を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の一実施形態による炭素繊維複合材製受熱タイルおよびその製造方法について図面を参照して説明する。なお、本実施形態によるCFC製受熱タイルは、高熱負荷機器に用いられるものであり、特にトカマク型核融合装置のダイバータに適したものである。
【0041】
図1および図2に示したように、本実施形態による炭素繊維複合材製受熱タイル10は、炭素繊維複合材(CFC)で形成され、貫通孔12を有する受熱ブロック11を備えている。受熱ブロック11は、全体として略直方体状に形成されている。
【0042】
受熱ブロック11の貫通孔12には、冷却管13が挿通されている。冷却管13は、好ましくは、伝熱性が高く強度の高い、たとえばクロム・ジルコニウム銅(CuCrZr)などの銅合金製の管で構成される。銅合金製の管の内部には、ねじ切りが施されている。核融合装置の運転時において冷却管13の内部に水などの冷却材を流すことにより、受熱ブロック11を冷却してその熱損傷を防止する。
【0043】
冷却管13の外面には緩衝材14が設けられている。緩衝材14は、好ましくは、無酸素銅あるいは銅タングステン(CuW)などの銅合金で形成する。緩衝材14は、冷却管13と受熱ブロック11との熱膨張差を、ある程度吸収する役割を果たす。
【0044】
受熱ブロック11の貫通孔12の内面と緩衝材14の外面との間には、それらを互いに接合する第1のロウ付け部15が形成されている。また、緩衝材14の内面と冷却管13の外面との間には、それらを互いに接合するる第2のロウ付け部16が形成されている。第1のロウ付け部15および第2のロウ付け部16は、好ましくは、熱伝導性の高いCu−Mg系やTi−Cu系の接合材で形成される。
【0045】
さらに、本実施形態によるCFC製受熱タイル10は、受熱ブロック11の貫通孔12の軸方向D1(図2)における受熱ブロック11の全長にわたって、受熱ブロック11の受熱面17から緩衝材14の外面まで延在するスリット(材料不連続部)19を有している。
【0046】
スリット19は、対面し且つ離間する一対の材料表面20A、20Bによって画成されている。スリット19は、好ましくは、受熱ブロック11の受熱面17において軸方向D1に直交する幅方向D2(図2)の中央部に形成される。
【0047】
次に、本発明の一実施形態によるCFC製受熱タイル10の製造方法について、図3を参照して説明する。
【0048】
本実施形態による製造方法は、炭素繊維複合材(CFC)で形成され、貫通孔12を有する受熱ブロック11を提供する工程を備える。受熱ブロック11は、貫通孔12の軸方向D1における受熱ブロック17の全長にわたって、受熱ブロック11の受熱面17から貫通孔12まで延在するスリット19Aを有する。スリット19Aは、受熱ブロック11を形成する材料に切り込みを入れることにより形成される。
【0049】
受熱ブロック11の貫通孔12の内側に、第1のロウ材薄膜15を配置する。第1のロウ材薄膜15は、貫通孔12の軸方向D1に延在するスリット19Bを有し、そのスリット19Bが受熱ブロック11のスリット19Aと一致するように配置される。
【0050】
第1のロウ材薄膜15の内側に、緩衝材14を配置する。
【0051】
緩衝材14の内側に第2のロウ材薄膜16を配置する。
【0052】
第2のロウ材薄膜15の内側に冷却管13を配置する。冷却管13は、複数の受熱ブロック11の各貫通孔12を貫くようにして配置される。
【0053】
受熱ブロック11、第1のロウ材薄膜15、緩衝材14、第2のロウ材薄膜16、および冷却管13で構成された組立体を、真空ロウ付けして時効処理する。
【0054】
このとき、図5に示した従来の受熱タイルにおいては、ロウ付け工程中の高熱処理、特に降温工程において素材が収縮する際に、熱膨張係数が小さい受熱ブロックや緩衝材が、熱膨張係数が大きい冷却管の収縮に追従できず、それらの間の接合部分に欠陥が生じやすい。
【0055】
これに対して本実施形態においては、受熱ブロック11、および第1のロウ付け薄膜15に、スリット19A、19Bがそれぞれ形成されているので、降温工程において冷却管13が大きく収縮した場合でも、冷却管13の外面に接合された緩衝材14が冷却管13に追従して変形し、同様に、受熱ブロック11が緩衝材14に追従して変形する。
【0056】
これにより、各部材間の熱膨張率の差を、各部材の周方向の変位として吸収できるので、降温工程における冷却管13の収縮時に各部材間の接合面に過度の応力が発生することを防止でき、受熱ブロック11の接合面近傍での割れや、各部材間の接合面の剥離などを防止することができる。
【0057】
このように、受熱タイル10を構成する各部材間の剥離や部材の割れなどを防止することにより、受熱タイル10の冷却効率の低下を防止することができる。
【0058】
特に、本実施形態によるCFC製受熱タイル10においては、核融合装置の運転時における受熱面17側にスリット19を形成したので、各部材間の、受熱面17側における接合をより確実なものとすることができる。このため、特に高い冷却効率が要求される受熱面17側において十分な伝熱効率を確保することができ、核融合装置の運転中において受熱ブロック11を十分に冷却することができる。
【0059】
また、本実施形態においては、冷却管13を構成する銅合金製の管の内部にねじ切りがされており、そのため、ねじ切りがない通常の管に比べて管肉厚が厚い上に肉厚が不連続となり、ロウ付け時の管の収縮力が通常の配管よりも大きく、不均一な状態になる。
【0060】
そのため、通常の配管よりもロウ付けの難易度が高くなっているが、上述したようにスリット19によってロウ付け時の各部材の変形を吸収することで、冷却管13を構成する銅合金製の管の内部にねじ切りがされている場合でも、ロウ付け処理を適切に行うことができる。
【0061】
次に、本発明の他の実施形態によるCFC製受熱タイルおよびその製造方法について、図4を参照して説明する。
【0062】
図4に示したように本実施形態によるCFC製受熱タイル40は、そのスリット19が、受熱ブロック11の受熱面17側において閉じている。
【0063】
本実施形態による受熱タイル40の製造方法においては、ロウ付け処理を行う前の受熱ブロック11のスリット19A(図3)の幅を、受熱ブロック11等からなる組立体を真空ロウ付けして時効処理する工程において、受熱ブロック11の熱膨張率と冷却管13の熱膨張率との差に起因して受熱ブロック11が変形することにより、ロウ付け処理が完了した時点で少なくとも受熱面17側において受熱ブロック11のスリット19が閉じるような値に設定する。
【0064】
即ち、ロウ付け時の高温処理工程において膨張した冷却管13は、その後の降温工程において大きく収縮するが、CFC製受熱ブロック11は冷却管13に比べて収縮率が小さい。この両者の収縮率の違いによって受熱ブロック11に応力が作用し、図4に示したように受熱面17側においてスリット19を閉じる方向に受熱ブロック11が変形する。
【0065】
そこで、ロウ付け処理前の受熱ブロック11のスリット10Aの幅を、降温工程における受熱ブロック11の変形量を考慮して、完成時にスリット10Aの幅が受熱面17側において消失するように設定する。
【0066】
本実施形態によれば、完成した受熱タイル40のスリット19が、受熱ブロック11の受熱面17側において閉じているので、核融合装置の運転時おける熱輻射がスリット19を介して冷却管13に直接到達することを確実に防止できる。
【0067】
また、ロウ付け処理時にスリット19が閉じることで、スリット19とは逆側に配置された嵌合溝18の変形が誘起されるため、それに対しては、当該部幅を固定するジグと、ジグと製品の間に緩衝材として素材よりも柔らかく変形しやすいカーボンシートを適用して対処する。
【0068】
上記各実施形態の一変形例としては、受熱ブロック11のスリット19に対応させて、緩衝材14にもスリットを形成することができる。すなわち、本変形例においては、緩衝材14が、受熱ブロック11の貫通孔12の軸方向に延在するスリットを有しており、緩衝材14のスリットと受熱ブロック11のスリット19とが一致するように構成されている。
【0069】
なお、上述した各実施形態および変形例においては、トカマク型核融合装置の第一壁を構成するダイバータに適した受熱タイルについて説明したが、本発明によるCFC製受熱タイルは、核融合装置の第一壁への適用に限られるものではなく、CFC製の受熱ブロックに冷却管を冶金的に接合して形成するタイプの受熱タイルに広く適用できるものである。
【符号の説明】
【0070】
10、40 CFC製受熱タイル
11 受熱ブロック
12 貫通孔
13 冷却管
14 緩衝材
15 第1のロウ付け部(第1のロウ付け薄膜)
16 第2のロウ付け部(第2のロウ付け薄膜)
17 受熱面
18 嵌合溝
19、19A、19B スリット(材料不連続部)
20A、20B 材料表面
図1
図2
図3
図4
図5