特許第6403181号(P6403181)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6403181電子ペン、電子ペン本体部及び電子ペン本体部の製法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6403181
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】電子ペン、電子ペン本体部及び電子ペン本体部の製法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/03 20060101AFI20181001BHJP
【FI】
   G06F3/03 400F
   G06F3/03 400A
【請求項の数】17
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2018-502534(P2018-502534)
(86)(22)【出願日】2016年12月5日
(86)【国際出願番号】JP2016086023
(87)【国際公開番号】WO2017149879
(87)【国際公開日】20170908
【審査請求日】2018年6月6日
(31)【優先権主張番号】特願2016-39113(P2016-39113)
(32)【優先日】2016年3月1日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】神山 良二
(72)【発明者】
【氏名】堀江 利彦
【審査官】 木内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3189572(JP,U)
【文献】 特開2010−198193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の外部筐体の中空部内に、少なくとも、
芯体を含む電子ペンの機能を実現するための構成部材と、
前記構成部材の少なくとも一部が配置される回路基板と、
を含む電子ペンであって、
前記外部筐体の前記中空部内に収納される筒状の内部筐体の中空部内に、前記構成部材と前記回路基板とが収納されると共に、前記芯体の先端部が前記内部筐体の軸心方向の一方側の第1の開口部から外部に突出する状態で、前記芯体が前記内部筐体に収納され、前記内部筐体の中空部内が樹脂により充填される
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項2】
前記構成部材は、前記芯体の先端部に印加される圧力を検出するための圧力検出部を含み、
前記圧力検出部は、前記内部筐体の前記芯体の先端部側とは反対側となる前記軸心方向の他方側の第2の開口部の近傍に配置されていると共に、
前記圧力検出部は、前記内部筐体の全体が、前記芯体の先端部に印加された圧力に応じて前記外部筐体内において前記芯体の先端部側とは反対側へ変位することに基づいて変化する電気的な量を検出することで、前記圧力を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項3】
前記圧力検出部は、前記外部筐体の前記芯体の先端部側とは反対側に設けられている部材と結合する弾性部材を備える
ことを特徴とする請求項2に記載の電子ペン。
【請求項4】
前記圧力検出部は、性部材を介して受けた圧力を、前記電気的な量として静電容量を検出することで検出する半導体デバイスを備える
ことを特徴とする請求項2に記載の電子ペン。
【請求項5】
前記内部筐体の前記芯体の先端部とは反対側の第2の開口部側の露呈している端面と、前記外部筐体の前記芯体の先端部側とは反対側に設けられている部材との間には弾性部材が設けられ、前記芯体の先端部に印加された圧力に応じて、前記内部筐体の全体が、前記弾性部材を介して前記外部筐体内において前記芯体の先端部側とは反対側へ変位する
ことを特徴とする請求項2に記載の電子ペン。
【請求項6】
前記圧力検出部は、前記電気的な量としてインダクタンスを検出するものであって、磁性体コアに巻回されたコイルを備えており、
前記外部筐体の前記芯体の先端部側とは反対側には、前記弾性部材を介して前記内部筐体内の前記圧力検出部の磁性体コアと離間する磁性体が配置されている
ことを特徴とする請求項5に記載の電子ペン。
【請求項7】
前記構成部材は、磁性体コアと、前記磁性体コアに巻回されたコイルとを含み、
少なくとも前記磁性体コアの巻回された前記コイルと、前記コイルと前記回路基板との電気的な接続部分とは、前記内部筐体の前記樹脂が充填される中空部内とされる
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項8】
前記磁性体コアは、軸心方向の貫通孔は有さず、
前記磁性体コアの前記コイルが巻回されていない部分が、前記内部筐体の前記第1の開口部から外部に突出することで、前記芯体を構成する、あるいは前記芯体の一部を構成する
ことを特徴とする請求項7に記載の電子ペン。
【請求項9】
前記回路基板には、前記コイルと接続されて共振回路を構成するキャパシタが設けられている
ことを特徴とする請求項7に記載の電子ペン。
【請求項10】
前記磁性体コアは、前記芯体を挿通するための貫通孔を有し、
前記芯体の一部のみが、前記内部筐体の前記第1の開口部から外部に突出するように、前記磁性体コアの全体が前記内部筐体の前記樹脂が充填される中空部内とされている
ことを特徴とする請求項7に記載の電子ペン。
【請求項11】
前記芯体は、導体からなると共に、
前記回路基板には、信号発信回路が形成されており、
前記信号発信回路からの信号が前記芯体を通じて送出されるように、前記芯体と前記信号発信回路とが電気的に接続され、
前記芯体と前記信号発信回路との電気的な接続部が、前記内部筐体の前記樹脂が充填される中空部内とされる
ことを特徴とする請求項1または請求項10に記載の電子ペン。
【請求項12】
前記外部筐体の前記芯体の先端部側とは反対側には、ノック式機構部が設けられており、前記内部筐体は、前記ノック式機構部に前記第1の開口部とは反対側の第2の開口部側において結合される
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項13】
前記外部筐体には、複数本の前記内部筐体が、それぞれ用の前記ノック式機構部に結合されて設けられている
ことを特徴とする請求項12に記載の電子ペン。
【請求項14】
筒状の外部筐体の中空部内に収納される電子ペン本体部であって、
筒状の電子ペン本体部筐体の中空部内に、芯体を含む電子ペンの機能を実現するための構成部材と、前記構成部材の少なくとも一部が配置される回路基板とが収納されると共に、
前記芯体の先端部が前記電子ペン本体部筐体の軸心方向の一方側の第1の開口部から外部に突出する状態で、前記芯体が前記電子ペン本体部筐体に収納され、前記電子ペン本体部筐体の中空部が樹脂により充填される
ことを特徴とする電子ペン本体部。
【請求項15】
前記構成部材は、前記芯体の先端部に印加される圧力を検出するための圧力検出部を含み、
前記圧力検出部は、前記電子ペン本体部筐体の前記芯体の先端部側とは反対側となる前記軸心方向の他方側の第2の開口部の近傍に配置されていると共に、
前記圧力検出部は、前記電子ペン本体部筐体の全体が、前記芯体の先端部に印加された圧力に応じて前記外部筐体内において前記芯体の先端部側とは反対側へ変位することに基づいて変化する電気的な量を検出することで、前記圧力を検出する
ことを特徴とする請求項14に記載の電子ペン本体部。
【請求項16】
筒状の外部筐体の中空部内に収納される電子ペン本体部であって、
芯体を含む電子ペンの機能を実現するための構成部材と、前記構成部材の少なくとも一部が配置される回路基板とが、前記芯体の露出する先端部側を除いて、樹脂により覆われていると共に、
前記構成部材は、前記芯体の先端部に印加される圧力を検出するための圧力検出部を含み、
前記圧力検出部は、前記芯体の先端部側とは反対側となる前記筒状の外部筐体の軸心方向の他方側に配置されており、
前記圧力検出部は、前記電子ペン本体部の全体が、前記芯体の先端部に印加された圧力に応じて前記外部筐体内において前記芯体の先端部側とは反対側へ変位することに基づいて変化する電気的な量を検出することで、前記圧力を検出する
ことを特徴とする電子ペン本体部。
【請求項17】
筒状の外部筐体の中空部内に収納される電子ペン本体部であって、芯体を含む電子ペンの機能を実現するための構成部材と、前記構成部材の少なくとも一部が配置される回路基板とが、前記芯体の露出する先端部側を除いて、樹脂により覆われていると共に、前記構成部材は、前記芯体の先端部に印加される圧力を検出するための圧力検出部を含み、前記圧力検出部は、前記芯体の先端部側とは反対側となる前記筒状の外部筐体の軸心方向の他方側に配置されており、前記圧力検出部は、前記電子ペン本体部の全体が、前記芯体の先端部に印加された圧力に応じて前記外部筐体内において前記芯体の先端部側とは反対側へ変位することに基づいて変化する電気的な量を検出することで、前記圧力を検出するようにする電子ペン本体部の製法であって、
前記外部筐体の前記中空部内に収納される大きさの筒状のモールド用型部材の中空部内に、前記芯体を含む電子ペンの機能を実現するための構成部材と、前記回路基板とを、前記芯体の露出する先端部側を除いて収納する第1の工程と、
前記第1の工程の後に、前記モールド用型部材の前記中空部内に樹脂を充填する第2の工程と、
前記第2の工程の後に、前記モールド用型部材を除去する第3の工程と、
を有することを特徴とする電子ペン本体部の製法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、位置検出装置と共に使用される電子ペンであって、特に防水型とした電子ペンに関する。また、この発明は、電子ペンに収納される電子ペン本体部及び当該電子ペン本体部の製法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、普及してきた携帯端末は、携帯できる利便性により室外で使用する機会が多くなっている。特殊な例として工事現場等の塵埃が多い環境や水場に近接した厳しい環境で使用される場合もあった。また、室内での使用においても、洗面所や台所などにおいて、水中に落下させてしまう場合も出てきた。そのため、携帯端末に対して防塵の要望や防水の要望が多くなり、携帯端末は、上記のような厳しい環境でも使用に耐えられるような仕様となってきている。
【0003】
ところで、最近は、上記のような携帯端末の入力装置として電子ペンと位置検出センサを備える位置検出装置とからなるものが使用されるようになってきている。この場合に、位置検出センサは携帯端末に内蔵されるので、防塵や防水については問題ないが、電子ペンは、携帯端末とは別個のものであるために、防塵や防水が必要となる。
【0004】
すなわち、電子ペンには、細かい電子部品が用いられており、水分に弱い構成となっている。また、電子ペンには、電磁誘導方式のものなど、磁性体コアに巻回されたコイルが用いられているが、水分の影響でコイルの定数が変化して誤動作の原因となっていた。
【0005】
そこで、出願人は、既に、電子ペンの防塵に関しては、特許文献1(特開2010−198193号公報)を提案し、また、電子ペンの防水に介しては、特許文献2(WO2015/122280A1公報)を提案している。特許文献1では、ゴムキャップを芯体と筐体との間に取り付けることで、防塵を実現するようにしている。また、特許文献2では、ゴム製のパッキンにより筐体のペン先側における開口部と芯体との間の隙間を塞ぐと共に、Oリングを用いて、筐体のペン先側とは反対側における部品保持部と筐体との間の隙間を塞ぐようにして、防塵及び防水を実現するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−198193号公報
【特許文献2】WO2015/122280A1公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ゴム製のパッキンを用いる場合には、パッキンの部品としての精度が必要であり、また、パッキンの締め付け具合等により性能が変化してしまう問題がある。また、芯体に印加される筆圧を、芯体の軸心方向への変位により検出する場合には、パッキンが変位部分(芯体)に対する負荷となってしまって筆圧が正確に検出できなくなるおそれがあった。また、ゴム製のパッキンは長期間使用していると劣化して、塵埃や水分を防ぐ効果が減衰してしまうという問題もある。
【0008】
この発明は、以上の問題点を解決して防塵・防水の能力が高い電子ペンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、
筒状の外部筐体の中空部内に、少なくとも、
芯体を含む電子ペンの機能を実現するための構成部材と、
前記構成部材の少なくとも一部が配置される回路基板と、
を含む電子ペンであって、
前記外部筐体の前記中空部内に収納される筒状の内部筐体の中空部内に、前記構成部材と前記回路基板とが収納されると共に、前記芯体の先端部が前記内部筐体の軸心方向の一方側の第1の開口部から外部に突出する状態で、前記芯体が前記内部筐体に収納され、前記内部筐体の中空部内が樹脂により充填される
ことを特徴とする電子ペンを提供する。
【0010】
上記の構成を備える請求項1の発明によれば、芯体の先端部となる一部を除く部分と、電子ペンの機能を実現するための構成部材と、構成部材の少なくとも一部が配置される回路基板とが、内部筐体の中空部内に収納されると共に、それらが収納された状態において、内部筐体の中空部が樹脂により充填される。すなわち、内部筐体内に収納された全ての部品が樹脂モールドされ、電子部品に対する防塵及び防水が十分になされる。
【0011】
このため、防塵・防水の能力が高く、水中での使用も可能な電子ペンを実現することができる。そして、従来のようなゴム製のパッキンやOリングを用いるものではないので、冒頭で説明したような不具合は全く生じないという効果がある。
【0012】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、
前記構成部材は、前記芯体の先端部に印加される圧力を検出するための圧力検出部を含み、
前記圧力検出部は、前記内部筐体の前記芯体の先端部側とは反対側となる前記軸心方向の他方側の第2の開口部の近傍に配置されていると共に、
前記圧力検出部は、前記内部筐体の全体が、前記芯体の先端部に印加された圧力に応じて前記外部筐体内において前記芯体の先端部側とは反対側へ変位することに基づいて変化する電気的な量を検出することで、前記圧力を検出する
ことを特徴とする電子ペンを提供する。
【0013】
この請求項2の発明によれば、圧力検出部は、内部筐体の芯体の先体部側とは反対側となる前記軸心方向の他方側の第2の開口部の近傍に配置されていて、内部筐体の全体が変位することに基づいて変化する電気的な量を検出することで、筆圧を検出する。したがって、従来のゴム製のパッキンのように、圧力(筆圧)の検出のために変位する変位部に対して負荷がかかることはなく、正確に圧力(筆圧)を検出することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、芯体の先端部となる一部を除く部分と、電子ペンの機能を実現するための構成部材と、構成部材の少なくとも一部が配置される回路基板とが、内部筐体の中空部内に収納されると共に、それらが収納された状態において、内部筐体の中空部が樹脂により充填されて、内部筐体内に収納された全ての部品が樹脂モールドされるので、電子部品に対する防塵及び防水が十分になされる。
【0015】
また、この発明によれば、従来のような防塵や防水のための特殊な部品を用いる必要がないという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明による電子ペンの第1の実施形態の構成例を説明するための図である。
図2】この発明による電子ペンの第1の実施形態を構成する電子ペン本体部の構成例を説明するための分解斜視図である。
図3】この発明による電子ペンの第1の実施形態を構成する電子ペン本体部の要部の構成例を説明するための図である。
図4】この発明による電子ペンの第1の実施形態の電子回路構成例及び位置検出装置の回路構成例を示す図である。
図5】この発明による電子ペンの第2の実施形態の構成例を説明するための図である。
図6】この発明による電子ペンの第3の実施形態の構成例の要部を説明するための図である。
図7】この発明による電子ペンの第3の実施形態の電子回路構成例を示す図である。
図8】この発明による電子ペンの第3の実施形態と共に使用する位置検出装置の回路構成例を示す図である。
図9】この発明による電子ペンの他の実施形態の電子ペン本体部の製法を説明するための図である。
図10】この発明による電子ペンの他の実施形態の電子ペン本体部の要部を説明するための図である。
図11図10の例を用いた場合の電子ペン本体部の電子回路構成例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明による電子ペンの実施形態を、図を参照しながら説明する。まず、この発明を電磁誘導方式の電子ペンに適用した場合の実施の形態について説明する。
【0018】
[電子ペンの構成]
図1は、この発明による実施の形態の電子ペン10の構成例を説明するための図であり、この実施形態の電子ペン10の全体の概要を説明するためのものである。この実施の形態の電子ペン10は、当該電子ペン10の筒状の外部筐体101の中空部内に電子ペン本体部20を収納し、外部筐体101のペン先側とは反対側の後端側を筐体蓋102により閉じて構成される。
【0019】
この実施形態では、電子ペン本体部20は、筒状の電子ペン本体部筐体(内部筐体)201の中空部内に、後述するように、芯体の先端部を除いて、電子ペンの各種部品の全てを収納する構成とされる。図1においては、この実施形態の電子ペン10の筒状の外部筐体(ケース)101及び電子ペン本体部20の筒状の電子ペン本体部筐体201を切断して、それぞれの中空部内を示している。。
【0020】
電子ペン本体部20は、図1に示すように、電子ペン本体部筐体201の中空部内に、この例では芯体を兼用する磁性体コア、例えばフェライトコア11にコイル12が巻回されて構成されたコイル部1と、接続部材3と、回路基板4と、圧力検出部としての筆圧検知部5を収納し、後述するように、その中空部内を樹脂で充填するようにしたものである。ここで、コイル部1や筆圧検知部5などは、電子ペンの機能を実現するための構成部品の一部を構成する。
【0021】
芯体を兼用するフェライトコア11は、この例では、断面が円形で、軸心方向の貫通孔は有しない中実の棒状体形状に構成されており、コイル12は、芯体の先端側となる部分とは反対側に巻回される。そして、フェライトコア11の芯体の先端側となる部分の端面には、例えばPOM(Polyoxymethylene)などの樹脂からなり、例えば円錐形状の芯体先端部材2が結合されて取り付けられている。この例の場合、フェライトコア11の芯体の先端側となる部分の端面の中央には凹穴11aが設けられていると共に、芯体先端部材2の円錐形状の底面には、凹穴11aに嵌合する突起2aが設けられており、芯体先端部材2の突起2aが、フェライトコア11の凹穴11aに圧入されることにより、芯体先端部材2がフェライトコア11に固定される。なお、芯体先端部材2がフェライトコア11から外れてしまうのを防止するために、両者をさらに接着材で結合するようにしてもよい。
【0022】
この実施形態では、コイル部1は、フェライトコア11の、コイル12が巻回されていない部分及び芯体先端部材2が、図1に示すように、電子ペン本体部筐体201の開口部201a及び外部筐体101の開口部101aから、外部に突出することができるように、電子ペン本体部筐体201内に収納されている。ただし、この場合において、コイル部1は、少なくともコイル12が巻回されている部分及びコイル12と回路基板との接続部分が、電子ペン本体部筐体201の中空部内となるようにされている。
【0023】
回路基板4は、硬質管状部材で構成された基板保護パイプ6内に固定保持されている。接続部材3は、コイル部1を基板保護パイプ6に対して係止させるようにするためのものである。筆圧検知部5は、この実施形態では、回路基板4との接続端子部51と、基板保護パイプ6との嵌合部52と、感圧部53とを備え、嵌合部52において基板保護パイプ6に対して嵌合されて結合される。
【0024】
図2は、電子ペン本体部20の構成を説明するための分解斜視図である。コイル12は、フェライトコア11の周囲に絶縁した電線(被覆導線)を巻回させて形成したもので、芯体先端部材2側とは反対側に、コイル12の一端(巻き始め端)の延長線12a及びコイルの他端(巻き終わり端)の延長線12bが導出されている。
【0025】
接続部材3のフェライトコア11との対抗面には、フェライトコア11の径よりやや大きい嵌合凹穴31が形成されており、この嵌合凹穴31内にフェライトコア11が挿入されて両者が結合するように構成されている。そして、接続部材3には、コイル12の延長線12a及び12bが収納されて接続部材3の外径から突出しないようにするための凹溝32が形成されている。さらに、接続部材3の回路基板4側には、基板保護パイプ6の内径とほぼ等しい径の径小部からなる嵌合部33が形成されている。この嵌合部33の回路基板4側の端面には、回路基板4の長手方向の端部に形成されている突部4aが嵌合する嵌合凹穴34(図1参照)が形成されている。
【0026】
そして、フェライトコア11の軸心方向の芯体先端部材2側とは反対側の端部を接続部材3の嵌合凹穴31内に嵌合すると共に、接続部材3の嵌合凹穴34内に、回路基板4の突部4aを嵌合し、かつ、基板保護パイプ6を接続部材3の嵌合部33と嵌合させるようにする。これにより、コイル部1は、接続部材3を介して、基板保護パイプ6と結合する状態になる。そして、コイル部1を接続部材3を介して基板保護パイプ6と結合させた場合には、基板保護パイプ6の外周が、接続部材3の外周と一致するようになっている。
【0027】
このとき、コイル12の延長線12a及び12bを、接続部材3の凹溝32を通して回路基板4上にまで延長する。そして、コイル12の延長線12a及び12bを、回路基板4に設けられているキャパシタ42の両端に接続されている導体パッド41a及び41bに半田付けする。これにより、コイル12とキャパシタ42との並列共振回路が構成される。この実施形態の電子ペン10は、この並列共振回路を通じて位置検出装置の位置検出センサとの間で信号を送受することで、位置検出装置に対して位置指示することができるようにしている。
【0028】
なお、図では、回路基板4上には、1個のキャパシタ42が設けられている状態を示しているが、実際的には、キャパシタ42は、容量の調整用をも含めた複数個のキャパシタで構成されるものである。なお、キャパシタ42は、電子ペンの機能を実現するための構成部品の一部を構成する。
【0029】
筆圧検知部5は、回路基板4の長手方向(軸心方向)の、接続部材3側とは反対側に設けられる。この筆圧検知部5は、例えば樹脂からなるパッケージ部材内に感圧素子が配設されたもので、前述したように、当該感圧素子を含む感圧部53と、接続端子部51と、嵌合部52とが、樹脂により一体的に形成されているものである。
【0030】
筆圧検知部5の接続端子部51は、図2に示すように、嵌合部52に連結する上下に2枚の板部を備える。この板部が回路基板4を挟み込むようになっている。この場合、上下に2枚の板部の間隔は、回路基板4の厚みよりもやや狭くなっており、回路基板4を挟持できるようになっている。そして、これら2枚の板部の一方、この実施の形態では上側の板部には、図1及び図2に示すように、後述する感圧部53の端子部材からのリード線が接続される端子51a,51bが設けられている。当該端子51a,51bは、接続端子部51の上側の板部の上面から側面を通り下面に至るようにコの字型に設けられている。これにより、接続端子部51に回路基板4が挟持(接続)されると、接続端子部51の端子51a,51bと、回路基板4の端子41c,41dとが自動的に接続されるようになっている。回路基板4においては、端子41c及び41dは、キャパシタ42の一端及び他端に接続されており(図1参照)、前述した並列共振回路において、コイル12及びキャパシタ42に対して更に並列に接続されて、共振回路の一部を構成するようにされている。
【0031】
嵌合部52は、基板保護パイプ6と嵌合する部分である。嵌合部52は、例えば略円筒状に形成されている。嵌合部52の内側には、図示しないが、回路基板4の突部4bが嵌合する凹部が設けられている。なお、嵌合部52の外径は、基板保護パイプ6の内径よりやや大きく選定されており、基板保護パイプ6と強固に嵌合できるようになっている。そして、嵌合部52に基板保護パイプ6を嵌合させた場合には、基板保護パイプ6の外周が、感圧部53の外周と一致するようになっている。なお、基板保護パイプ6を差し込み易くするために、嵌合部52は、回路基板4側の端部部分に向かって徐々に、基板保護パイプ6の内周の径よりも小さくなる傾斜部分を有する形状とされている。
【0032】
感圧部53は樹脂等により円柱状に構成されたパッケージ内に感圧用部品を搭載して構成したものであり、パッケージ部分の外周及び形状は、基板保護パイプ6の外周及び形状とほぼ一致する。
【0033】
図3は、この例の筆圧検知部5の主として感圧部53の構成を説明するための図である。この例では、感圧部53は、いわゆるMEMS(Micro Electro Mechanical System)と呼ばれる半導体デバイスにより、感圧用部品が構成される場合である。この実施形態では、このMEMSを用いた感圧用の容量可変デバイスを、静電容量方式圧力センシング半導体デバイス(以下、圧力センシングデバイスという)と呼ぶ。
【0034】
この例の圧力センシングデバイスは、例えば、MEMS技術により製作されている半導体デバイスとして構成される圧力感知チップ500を、例えば円柱形状のパッケージ510内に封止したものである。
【0035】
圧力感知チップ500は、印加される圧力を、静電容量の変化として検出するものである。この例の圧力感知チップ500は、縦×横×高さ=L×L×Hの直方体形状とされており、例えば、L=1.5mm、H=0.5mmとされている。
【0036】
この例の圧力感知チップ500は、第1の電極501と、第2の電極502と、第1の電極501及び第2の電極502の間の絶縁層(誘電体層)503とからなる。第1の電極501および第2の電極502は、この例では、単結晶シリコン(Si)からなる導体で構成される。絶縁層503は、この例では酸化膜(SiO)からなる。
【0037】
そして、この絶縁層503の第1の電極501と対向する面側には、この例では、当該面の中央位置を中心とする円形の凹部504が形成されている。この凹部504により、絶縁層503と、第1の電極501との間に空間505が形成される。この例では、凹部504の底面は平坦な面とされ、その半径Rは、例えばR=1mmとされている。また、凹部504の深さは、この例では、数十ミクロン〜百ミクロン程度とされている。
【0038】
この空間505の存在により、第1の電極501は、第2の電極502と対向する面とは反対側の面501a側から押圧されると、当該空間505の方向に撓む変位をすることが可能となる。第1の電極501の例としての単結晶シリコンの厚さは、印加される圧力によって撓むことが可能な厚さとされ、第2の電極502よりも薄くされている。
【0039】
以上のような構成の圧力感知チップ500においては、第1の電極501と第2の電極502との間にキャパシタ53Cが形成される。そして、第1の電極501の第2の電極502と対向する面とは反対側の面501a側から第1の電極501に対して圧力が印加されると、第1の電極501は撓み、第1の電極501と、第2の電極502との間の距離が短くなり、キャパシタ53Cの静電容量の値が大きくなるように変化する。第1の電極501の撓み量は、印加される圧力の大きさに応じて変化する。したがって、キャパシタ53Cは、圧力感知チップ500に印加される圧力の大きさに応じた容量可変キャパシタとなる。
【0040】
この実施形態においては、以上のような構成を備える圧力感知チップ500は、圧力を受ける第1の電極501の面501aが、図3において、パッケージ510の上面510aに平行で、かつ、上面510aに対向する状態でパッケージ510内に収納されている。
【0041】
パッケージ510は、この例では、セラミック材料や樹脂材料等の電気絶縁性材料からなるパッケージ部材511と、このパッケージ部材511内の、圧力感知チップ500の圧力を受ける面501a側に設けられる弾性部材512とからなる。
【0042】
そして、この例では、パッケージ部材511の圧力感知チップ500の圧力を受ける第1の電極501の面501a側の上部には、圧力感知チップ500の圧力を受ける部分の面積をカバーするような凹部511aが設けられており、この凹部511a内に、例えばシリコンゴムで構成され弾性部材512が充填される。
【0043】
そして、パッケージ510には、上面510aから弾性部材512の一部にまで連通する連通穴513が形成されている。そして、連通穴513には、外部筐体101の筐体蓋102に設けられる突部102aが挿入されるように構成されている。すなわち、この実施形態では、電子ペン本体部20が外部筐体101内に収納されて、筐体蓋102により外部筐体101が閉塞された状態においては、筐体蓋102により、電子ペン本体部20の軸心方向の移動が規制される状態となるが、筐体蓋102の突部102aは、電子ペン本体部20の筆圧検知部5の感圧部53においては、弾性部材512を介して結合する状態である。このため、電子ペン本体部20の電子ペン本体部筐体201から突出すると共に、外部筐体101からも突出する芯体先端部材2に筆圧が印加されると、電子ペン本体部20の全体が、弾性部材512の弾性力に抗して、筐体蓋102側に変位することが可能である。
【0044】
この実施形態では、電子ペン本体部20の全体が、弾性部材512の弾性力に抗して、筐体蓋102側に変位することができるように、筐体蓋102は、外部筐体101とは衝合するが、電子ペン本体部20の電子ペン本体部筐体201とは、図1に示すように、印加された筆圧に応じた変位分だけ、隙間δが空くように構成されている。
【0045】
そして、この実施形態では、図1及び図3に示すように、電子ペン本体部筐体201の中空部内に樹脂が充填されたときに、感圧部53のパッケージ510の上面510aは、外部に露出する状態とされると共に、この上面510aが、電子ペン本体部筐体201の筐体蓋102側の端面よりも内側となるようにされる。このため、電子ペン本体部20の筐体蓋102側には、凹部20aが形成される。
【0046】
なお、感圧部53のパッケージ510の上面510aが外部に露出する状態とされるので、連通穴513のパッケージ部材511の部分及び弾性部材512も外部に露出する状態となるが、この例においては、この感圧部53のパッケージ510の全体は防水仕様とされている。このために、これら露出されている部分から、水分等が内部に入り込むことはない。
【0047】
この実施形態では、筐体蓋102には、図1に示すように、この凹部20aに嵌合し、感圧部53のパッケージ510の上面510aとは隙間δだけ離れて対向するように形成された径小部102bが設けられている。
【0048】
なお、この例では、筆圧検知部5の感圧部53の連通穴513の径は、外部筐体101の筐体蓋102に設けられる突部102aの径より若干小さくされている。したがって、外部筐体101の筐体蓋102に設けられる突部102aは、連通穴513の端部の弾性部材512内まで押し込まれる。こうして、外部筐体101の筐体蓋102に設けられる突部102aは、筆圧検知部5の感圧部53の連通穴513に挿入されるだけで、圧力感知チップ500の圧力を受ける面側に対して、軸芯方向の圧力を印加する状態に位置決めされる。
【0049】
この場合、外部筐体101の筐体蓋102に設けられる突部102aの径よりも連通穴513の径が若干小さいので、外部筐体101の筐体蓋102に設けられる突部102aは、弾性部材512により弾性的に保持される状態となる。つまり、外部筐体101の筐体蓋102に設けられる突部102aは、感圧部53の連通穴513に挿着されると、感圧部53に保持される。しかし、外部筐体101の筐体蓋102に設けられる突部102aは、所定の力で引き抜くことにより、感圧部53による保持状態を容易に解除させることができる。
【0050】
そして、図3に示すように、筆圧検知部5のパッケージ部材511からは、圧力感知チップ500の第1の電極501と接続される第1のリード端子521が導出されると共に、圧力感知チップ500の第2の電極502と接続される第2のリード端子522が導出される。第1のリード端子521は、接続端子部51の端子51aと電気的に接続される。また、第2のリード端子522は、接続端子部51の端子51bと電気的に接続される。
【0051】
基板保護パイプ6は、例えばSUS(Steel Special Use Stainless)からなる金属、カーボン素材、合成樹脂などが用いられて形成され、折れたり曲がったりしにくい硬質管状部材である。基板保護パイプ6は、その両端は開口部になっている。これら基板保護パイプ6の両端の開口部は、軸心方向と交差する方向の開口部である。そして、基板保護パイプ6の接続部材3側の開口部部分が、接続部材3との嵌合部となる。また、基板保護パイプ6の筆圧検知部5側の開口部部分が、筆圧検知部5の嵌合部52との嵌合部となる。
【0052】
さらに、基板保護パイプ6は、軸心方向の一端から他端に亘って、軸心方向に沿う方向の側面開口部61を有する。この開口部61は、コイル12の延長線12a,12bを回路基板4の導体パッド41a,41bと半田付け等のために設けられいる。また、開口部61は、キャパシタ42の容量を調整するために、共振回路として用いないキャパシタの接続を切断するためのレーザカット作業を可能にする。
【0053】
そして、回路基板4の端部(端子41c,41dが設けられている側)を、筆圧検知部5の接続端子部51に挟持させ、かつ、回路基板4の突部4bを嵌合部52の内側の凹部に嵌合させると共に、基板保護パイプ6の接続部材3とは反対側の端部部分を、筆圧検知部5の嵌合部52に嵌合させる。
【0054】
このようにして、コイル部1、接続部材3、回路基板4及び基板保護パイプ6及び筆圧検知部5を軸心方向に並べて結合して一体化したモジュール部品が構成できる。この実施形態では、このモジュール部品を、電子ペン本体部筐体201の中空部内に収納する。このとき、図1に示すように、コイル部1のフェライトコア11の一部と芯体先端部材2とが、電子ペン本体部筐体201のペン先側の開口部201aから外部に突出するようになる。また、前述したように、筆圧検知部5の感圧部53のパッケージ510の上面510aが、図1及び図3に示したように、電子ペン本体部筐体201の筐体蓋102の端面よりも内側となって、凹部20aが形成される状態となる。
【0055】
図2に示すように、電子ペン本体部筐体201の側面には、溶融した樹脂をその中空部内に流し込んで、当該中空部内に樹脂を充填するための樹脂投入孔201bが形成されている。溶融した樹脂を電子ペン本体部筐体201に流し込むに先立ち、電子ペン本体部20の電子ペン本体部筐体201の筐体蓋102側は、筐体蓋102と同一形状の樹脂充填用治具により閉塞される。なお、この樹脂充填用治具の、筐体蓋102の径小部102bに対応する径小部の軸心方向の高さは、前述した隙間δの分だけ、筐体蓋102の径小部102bの軸心方向の高さよりも大きいものとされている。また、電子ペン本体部筐体201の開口部201aと芯体を構成するフェライトコア11との隙間も、例えば後に容易に除去できるパテなどにより閉塞される。
【0056】
そして、この状態で、電子ペン本体部筐体201の側面の樹脂投入孔201bから、溶融している樹脂を、電子ペン本体部筐体201の中空部内に流し込んで、当該中空部内を樹脂で充填する。図1及び図3において、網点で示した部分は、充填された樹脂7を示している。そして、この樹脂7が固化した後、筐体蓋102と同一形状の治具を外すと共に、開口部201a側に設けられたパテを除去し、樹脂投入孔201bを蓋体201cで塞いで、電子ペン本体部20が完成となる。
【0057】
そして、この電子ペン本体部20を、外部筐体101の中空部内に差し込み、フェライトコア11のコイル12が巻回されていない一部と芯体先端部材2とを、外部筐体101の開口部101aから突出させるようにする。このとき、前述したように、外部筐体101の中空部内において、電子ペン本体部20の芯体先端部材2側とは反対側の端部には凹部20aが形成されてると共に、筆圧検知部5の感圧部53のパッケージ510の上端面が露出して、感圧部53の連通穴513が開口を露出している状態となっている。
【0058】
そして、筐体蓋102の径小部102bを凹部20aに挿入しつつ、突部102aを、筆圧検知部5の感圧部53の連通穴513に挿し入れて弾性部材512にまで押し込む。そして、筐体蓋102を外部筐体101に対して接合固定するようにする。以上により、電子ペン10が完成する。
【0059】
[電子ペン10及び位置検出装置の回路構成の概要]
次に、この実施形態の電子ペン10と共に使用されて電子ペンにより指示された位置を検出すると共に、電子ペン10の芯体先端部材2に印加された筆圧を検出(検知)する電磁誘導方式の位置検出装置300の実施形態の回路構成例について、図4を参照して説明する。図4には、電子ペン10の回路構成も示されていると共に、位置検出装置200の回路構成例を示すブロック図が示されている。
【0060】
電子ペン10は、前述したように、コイル部1、接続部材3、回路基板4及び基板保護パイプ6及び筆圧検知部5を軸心方向に並べて結合して一体化したモジュール部品として構成することで、図4に示すように、コイル12と、回路基板4のキャパシタ42と、筆圧検知部5の感圧部53の感圧用部品としての圧力感知チップ500からなる容量可変キャパシタ53Cとの並列共振回路が形成されている。
【0061】
筆圧検知部5の感圧部53の圧力感知チップ500は、芯体先端部材2に筆圧が印加されたときに、電子ペン本体部20の全体が、弾性部材512を介して、筐体蓋102側に変位することで、印加された筆圧に応じた圧力を受けて、静電容量を可変にする。
【0062】
位置検出装置300には、X軸方向ループコイル群302と、Y軸方向ループコイル群303とを積層させて設けることにより、電磁誘導方式の座標検出センサ301が形成されている。各ループコイル群302,303は、例えば、それぞれ40本の矩形のループコイルからなっている。各ループコイル群302,303を構成する各ループコイルは、等間隔に並んで順次重なり合うように配置されている。
【0063】
また、位置検出装置300には、X軸方向ループコイル群302及びY軸方向ループコイル群303が接続される選択回路306が設けられている。この選択回路306は、2つのループコイル群302,303のうちの一のループコイルを順次選択する。
【0064】
さらに、位置検出装置300には、発振器304と、電流ドライバ305と、切り替え接続回路307と、受信アンプ308と、検波器309と、低域フィルタ310と、サンプルホールド回路312と、A/D変換回路313と、同期検波器316と、低域フィルタ317と、サンプルホールド回路318と、A/D変換回路319と、処理部314とが設けられている。
【0065】
発振器304は、周波数f0の交流信号を発生し、電流ドライバ305と同期検波器316に供給する発振器304である。電流ドライバ305は、発振器304から供給された交流信号を電流に変換して切り替え接続回路307へ送出する。切り替え接続回路307は、後述する処理部314からの制御により、選択回路306によって選択されたループコイルが接続される接続先(送信側端子T、受信側端子R)を切り替える。この接続先のうち、送信側端子Tには電流ドライバ305が、受信側端子Rには受信アンプ308が、それぞれ接続されている。
【0066】
選択回路306に選択されたループコイルに発生する誘導電圧は、選択回路306及び切り替え接続回路307を介して受信アンプ308に送られる。受信アンプ308は、ループコイルから供給された誘導電圧を増幅し、検波器309及び同期検波器316へ送出する。
【0067】
検波器309は、ループコイルに発生した誘導電圧、すなわち受信信号を検波し、低域フィルタ310へ送出する。低域フィルタ310は、前述した周波数f0より充分低い遮断周波数を有しており、検波器309の出力信号を直流信号に変換してサンプルホールド回路312へ送出する。サンプルホールド回路312は、低域フィルタ310の出力信号の所定のタイミング、具体的には受信期間中の所定のタイミングにおける電圧値を保持し、A/D(Analog to Digital)変換回路313へ送出する。A/D変換回路313は、サンプルホールド回路312のアナログ出力をデジタル信号に変換し、処理部314に出力する。
【0068】
一方、同期検波器316は、受信アンプ308の出力信号を発振器304からの交流信号で同期検波し、それらの間の位相差に応じたレベルの信号を低域フィルタ317に送出する。この低域フィルタ317は、周波数f0より充分低い遮断周波数を有しており、同期検波器316の出力信号を直流信号に変換してサンプルホールド回路318に送出する。このサンプルホールド回路318は、低域フィルタ317の出力信号の所定のタイミングにおける電圧値を保持し、A/D(Analog to Digital)変換回路319へ送出する。A/D変換回路319は、サンプルホールド回路318のアナログ出力をデジタル信号に変換し、処理部314に出力する。
【0069】
処理部314は、位置検出装置300の各部を制御する。すなわち、処理部314は、選択回路306におけるループコイルの選択、切り替え接続回路307の切り替え、サンプルホールド回路312、318のタイミングを制御する。処理部314は、A/D変換回路313、319からの入力信号に基づき、X軸方向ループコイル群302及びY軸方向ループコイル群303から一定の送信継続時間をもって電波を送信させる。
【0070】
X軸方向ループコイル群302及びY軸方向ループコイル群303の各ループコイルには、電子ペン10から送信される電波によって誘導電圧が発生する。処理部314は、この各ループコイルに発生した誘導電圧の電圧値のレベルに基づいて電子ペン10のX軸方向及びY軸方向の指示位置の座標値を算出する。また、処理部314は、送信した電波と受信した電波との位相差に基づいて筆圧を検出する。このように、この実施の形態の電磁誘導方式の電子ペン10と図4に示した電磁誘導方式の位置検出装置300とにより、入力装置が構成できる。
【0071】
[第1の実施形態の効果]
この実施形態の電子ペン10においては、電子ペン10を構成する部品の内の、フェライトコア11の一部及び芯体先端部材2を除く全てが、電子ペン本体部筐体201の中空部内に収納され、その中空部内が樹脂で充填されることで、防塵及び防水がなされる。すなわち、電子ペン10を構成する電子部品及び電気的な接続部分は、樹脂により覆われてモールドされることになり、確実に防塵及び防水がなされる。
【0072】
そして、この実施形態の電子ペン10によれば、筆圧検知部5が、電子ペン本体部20の電子ペン本体部筐体(内部筐体)の芯体先端部材2とは反対側の端部に設けられいて、弾性部材512を介して筐体蓋102と係合している。そして、筆圧検知部5は、芯体先端部材2に筆圧が印加されたときに、電子ペン本体部20の全体が、弾性部材512を介して筐体蓋102側に変位することに基づく圧力を、圧力感知チップ500で検出して、電気的な量である静電容量の変化として検出することができるように構成されている。
【0073】
すなわち、筆圧検知部5を、電子ペン本体部20の電子ペン本体部筐体(内部筐体)内に収納して樹脂によりモールドしたとしても、芯体先端部材2に印加される筆圧を検出することができる。
【0074】
この実施形態の電子ペン10においては、冒頭で説明した特許文献1や特許文献2のように、ゴム製のパッキンやOリングを用いないので、これらの防塵用及び防水用の部品の劣化を考慮する必要がなく、経年変化にも耐え得るとともに、筆圧検出のためにそれらの防塵用及び防水用の部品が変位部に対する負荷となることもなく、筆圧を正確に検出することができる。
【0075】
また、この実施形態においては、半導体デバイスからなる圧力感知チップ500を用いて、感圧部53のパッケージ510を防水仕様としているので、感圧部53の連通穴513と、当該連通穴513に嵌合する筐体蓋102の突部102aとの間に水分が入り込んだとしても、パッケージ510の内部の圧力感知チップ500の機能が損なわれることはない。
【0076】
[第1の実施形態の変形例]
上述の第1の実施形態では、コイル部1と、回路基板4と、筆圧検知部5とを結合するために、接続部材3、基板保護パイプ6を用いると共に、筆圧検知部5の筐体の構成を工夫するようにした。しかし、これらコイル部1と、回路基板4と、筆圧検知部5とは、電気的に接続された状態で、電子ペン本体部筐体201の中空部内に収納されていれば、樹脂で充填することができるので、接続部材3や基板保護パイプ6を用いなくてもよく、また、筆圧検知部5の筐体の構成は、上述のような特殊なものとしなくてもよい。
【0077】
また、上述の第1の実施形態では、フェライトコア11はコイル12が巻回されていない部分を長くして、当該コイル12が巻回されていない部分を電子ペン本体部筐体201及び外部筐体101の中空部内よりも外部に突出するようにした。しかし、このような構成に限らず、例えば芯体先端部材2の長さを長くして、フェライトコア11と芯体先端部材2との結合部を、電子ペン本体部筐体201の中空部内とするようにしてもよい。ただし、第1の実施形態のように、フェライトコア11のコイル12が巻回されていない部分を電子ペン本体部筐体201及び外部筐体101の中空部内よりも外部に突出するようにした場合には、位置検出センサとの電磁誘導結合が、より強くなるというメリットがある。
【0078】
[第2の実施形態]
上述した第1の実施形態の電子ペン10は、外部筐体101の中空部内に、電子ペン本体部20を備える構成であって、電子ペン本体部20は、いわゆるカートリッジとして、筆記具のボールペンなどの交換用芯とすることができる。第2の実施形態は、電子ペン本体部20の、カートリッジとして用いることができる特徴を用いた電子ペンの例である。
【0079】
そして、電子ペン本体部20は、カートリッジとして用いることができるだけでなく、ノック式ボールペン用の交換芯と同様に取り扱うことができる。すなわち、電子ペン本体部20を、ノック機構の交換芯との結合部に結合することが可能である。ただし、この場合には、電子ペン本体部20が結合されるノック機構の結合部には、上述の第1の実施形態における筐体蓋102の径小部102b及び突部102aが設けられる。
【0080】
第2の実施形態は、以上の点を考慮して、いわゆる多色ボールペンの交換芯の一つあるいは複数個として、電子ペン本体部20と同様の構成の電子ペン本体部を用いた電子ペンの例である。
【0081】
図5は、この例の電子ペン10Mの外観を示す構成図である。この図5の例も、電子ペン10Mの外部筐体101Mが透明の合成樹脂で構成されていて、その内部が透けて見える状態として示している。
【0082】
電子ペン10Mの外部筐体101Mは、ノック式の多色ボールペンの筐体及びノックカム機構と同様の構成を備えている。そして、交換芯の一つとして、上述の電子ペン本体部20と同様の構成の電子ペン本体部を用いるようにする。電子ペン本体部の長さ及び径などの寸法、更にペン先側の構成及び寸法が、市販のボールペンの替え芯と同様に構成される場合には、市販のノック式の多色ボールペンの筐体及びノックカム機構を用いることもできる。この外部筐体101M内には、この例では、3本のカートリッジ9B,9R,9Eが収納されている。
【0083】
そして、この例では、3本のカートリッジ9B,9R,9Eの内、カートリッジ9B,9Rは、ボールペンの替え芯であって、カートリッジ9Bは黒色インクのボールペン替え芯、カートリッジ9Rは赤色インクのボールペン替え芯とされる。そして、カートリッジ9Eは、電子ペン用のカートリッジの構成とされている。この電子ペン用のカートリッジ9Eは、多色ボールペンの替え芯と同寸法に構成されている点を除けば、外形的には、上述した第1の実施形態における電子ペン本体部20と同様に構成される。
【0084】
外部筐体101Mの軸心方向の一端側には開口部101Maが形成されており、カートリッジ9B,9R,9Eのいずれかがノック機構により軸心方向にスライド移動されられたときに、そのペン先となる芯体の先端部が、この開口部101Maを通じて外部に突出するようにされる。カートリッジ9B,9R,9Eは、ノック機構により軸心方向にスライド移動されられてはいない状態では、図5に示すように、それぞれのペン先の先端を含め全体が外部筐体101Mの中空部内に収納されており、保護されている状態となる。
【0085】
電子ペン10Mのノック機構は、カートリッジ9B,9R,9Eのそれぞれが嵌合される嵌合部19Ba,19Ra,19Eaを備えるノック棒19B,19R,19Eと、ばね受け部材17と、カートリッジ9B,9R,9Eのそれぞれの嵌合部19Ba,19Ra,19Eaとばね受け部材17との間に配設されるコイルばね18B,18R,18Eとからなる。なお、電子ペン用のカートリッジ9E用の嵌合部19Eaには、前述したように、上述の第1の実施形態における筐体蓋102の径小部102b及び突部102aが設けられている。
【0086】
ばね受け部材17は、外部筐体101Mの中空部内の軸心方向の所定位置に固定されて取り付けられている。このばね受け部材17には、カートリッジ9B,9R,9Eのカートリッジ筐体91B,91R,91Eが挿通される貫通孔17B,17R,17Eが形成されている。カートリッジ9B,9R,9Eのそれぞれは、このばね受け部材17の貫通孔17B,17R,17Eのそれぞれ、及びコイルばね18B,18R,18Eのそれぞれを挿通して、ノック棒19B,19R,19Eの嵌合部19Ba,19Ra,19Eaに嵌合されることにより、電子ペン10Mのノック機構に取り付けられる。
【0087】
外部筐体101Mの、ノック棒19B,19R,19Eが収納される部分には、ノック棒19B,19R,19Eの一部が外部に露出されると共に、ノック棒19B,19R,19Eのそれぞれが、軸心方向に移動することが可能なようにされた透孔スリット(図5では図示を省略)が設けられている。
【0088】
電子ペン10Mは、周知の多色ボールペンと同様に、ノック棒19B,19R,19Eのいずれかが開口部101Ma側にスライドさせられて、そのノック棒に嵌合しているカートリッジ9B,9R,9Eのいずれかの芯体の先端が開口部101Maから外部に突出する状態になったときに、ノック棒19B,19R,19Eの係止部(図示は省略)が、外部筐体101Mの中空部内に形成されている係合部に係合して、その状態で係止するロック状態となる。
【0089】
そして、そのロック状態で、他のノック棒が、開口部101Ma側にスライド移動させられると、ロック状態にあるノック棒のロックが解除されて、コイルばね18B,18R,18Eのいずれかにより、そのノック棒が図5に示す元の状態に戻る。そして、後からスライド移動させられたノック棒は、そのノック棒に嵌合しているカートリッジ9B,9R,9Eのいずれかの芯体の先端が開口部101Maから外部に突出する状態で、ロック状態となることができる。
【0090】
以下、同様に、ノック棒をスライド移動させることにより、開口部101Maから先端を突出させるカートリッジを変えることができる。ノック棒19B,19R,19Eのいずれかのスライド移動を、ロック状態になる途中で停止したときには、ロック中の他のノック棒のロック解除を行うと共に、そのノック棒は、コイルばね18B,18R,18Eのいずれかにより、図5の保護状態に復帰する。
【0091】
この第2の実施形態の電子ペン10Mによれば、筆記具としてのボールペンと、電子ペンとの機能を備えたものとすることができる。そして、替え芯として電子ペン用のカートリッジを備える場合においても、防水能力が高く、例えば当該電子ペン10Mを水中に落下させてしまっても、電子ペンとしての機能を損なうことなく使用できるという利点がある。
【0092】
[第3の実施形態:静電容量結合方式の電子ペン]
上述した実施形態の電子ペンは、電磁誘導方式のものであったが、この発明は、静電容量結合方式の電子ペンを構成する場合にも適用できる。図6は、この発明を静電容量結合方式の電子ペンに適用した第3の実施形態における電子ペン本体部20Cの例の要部を説明するための断面図であり、電子ペン本体部の芯体部側の構成例を示したものである。なお、この図6の例の電子ペン本体部20Cにおいて、前述した第1の実施形態の電子ペン10の電子ペン本体部20と同様の構成部分には、同一番号にサフィックスCを付加した参照記号を用いるものとする。
【0093】
この第3の実施形態の電子ペンにおける電子ペン本体部20Cにおいては、回路基板4Cに信号発信回路43が設けられると共に、図6では図示を省略した充電式の電源回路が設けられる。そして、電子ペン本体部20Cは、導電性の芯体2Cを備え、信号発信回路43からの信号を、この芯体2Cを通じて、静電容量結合方式の位置検出装置に供給するものである。
【0094】
このため、この第3の実施形態の電子ペンにおける電子ペン本体部20Cにおいては、コイル部1C及び接続部材3Cの部分と、基板保護パイプ6Cにより保持されて保護されている回路基板4Cと、接続部材3Cとの接続部分の構成が、第1の実施形態の電子ペン本体部20とは異なる。その他の部分の構成、すなわち、基板保護パイプ6Cにより保持されて保護されている回路基板4Cと、筆圧検知部5との電気的接続及び機械的な結合関係及び電子ペン本体部筐体201C内の中空部内に樹脂7Cが充填される構成は、第1の実施形態と同様とされている。
【0095】
図6に示すように、この第3の実施形態においては、コイル部1Cは、貫通孔11Caが形成されているフェライトコア11Cに、コイル12Cが巻回されて構成されている。そして、第1の実施形態の電子ペン本体部20と同様に、フェライトコア11Cの軸心方向の端部が接続部材3Cの嵌合凹穴31Cに収納されることにより、コイル部1Cが接続部材3Cと結合される。
【0096】
そして、芯体2Cは、金属や、導電性の金属粉が樹脂に混入された材料などからなる導電性の棒状体の構成とされ、この芯体2Cが、フェライトコア11Cの貫通孔11Caを通じて、接続部材3Cの嵌合凹穴31Cの底面に設けられている芯体嵌合部35Cに嵌合される。
【0097】
この第3の実施形態においては、接続部材3Cの回路基板4Cとの嵌合部33Cは、第1の実施形態における筆圧検知部5の接続端子部51と同様に、回路基板4Cを挟持するように構成されている。そして、接続部材3Cには、回路基板4C上に配設されている信号発信回路43の信号出力端と接続されている導電パターン45と電気的に接続されるように、嵌合部33Cの回路基板4Cを挟持する板部にまで導電部材36Cが形成されている。この導電部材36Cは、図6において太線で示すように、接続部材3Cの嵌合凹穴31Cの底面に設けられている芯体嵌合部35Cまで延長されていて、当該芯体嵌合部35Cに嵌合される芯体2Cと電気的に接続される。すなわち、芯体2Cは、芯体嵌合部35Cに嵌合されると、信号発信回路43の信号出力端と電気的に接続される状態とされる。
【0098】
また、コイル12Cは、この第3の実施形態においても、第1の実施形態の場合と同様にして、延長線12Ca及び12Cbにより回路基板4Cと電気的に接続される。
【0099】
そして、この第3の実施形態における電子ペン本体部20Cにおいては、図6に示すように、フェライトコア11Cは電子ペン本体部筐体201C内に全てが収納されて、芯体2Cとフェライトコア11Cの貫通孔11Caとの間に隙間があっても樹脂7Cが充填されるように構成されている。
【0100】
[電子ペン本体部20Cの回路構成]
図7は、この第3の実施形態の電子ペンの電子ペン本体部20Cの電子回路の一例を示す図である。この第3の実施形態の電子ペンの電子ペン本体部20Cは、信号発信回路43を備えていて、この信号発信回路43から位置検出用の信号を、当該第3の実施形態の電子ペン本体部20Cの芯体2Cから、当該電子ペン本体部20Cを外部筐体内に収納している電子ペンに対応する静電容量方式の位置検出装置の位置検出センサに対して送出する。位置検出センサでは、この電子ペンからの位置検出用の信号を検出することで、当該電子ペンにより指示された位置を検出するようにする。
【0101】
この場合に、信号発信回路43は、この例では発振回路で構成されており、この発振回路は、例えば図示を省略したコイルとキャパシタによる共振を利用したLC発振回路により構成される。そして、筆圧検知部5の感圧部53により構成される容量可変キャパシタ53Cの両端が、図7に示すように、回路基板4Cに形成されている信号発信回路43に共振回路の一部を構成するように電気的に接続されている。信号発信回路43を構成する発振回路は、筆圧検知部5の感圧部53により構成される容量可変キャパシタ53Cの容量に応じて周波数が変化する信号を発生し、その発生した信号を芯体2Cに供給する。
【0102】
また、上述したように、この第3の実施形態における電子ペン本体部20Cにおいては、フェライトコア11Cに巻回されたコイル12Cは、信号発信回路43の電源を充電する充電回路の一部とされる。すなわち、この例では、回路基板4C上に形成されている電子回路は、図7に示すように、信号発信回路43の他に、この信号発信回路43を駆動するための駆動電圧(電源電圧)を発生する駆動電圧発生回路110(電源回路)を備える。この駆動電圧発生回路110は、蓄電素子の例としての電気二重層キャパシタ111と、整流用ダイオード112と、電圧変換回路113と、キャパシタ114とを含む回路構成を有する。
【0103】
この第3の実施形態の電子ペン本体部20Cを備える電子ペンは、図示しない充電器に装着したときに、充電器が発生する交番磁界によりコイル12Cには誘導起電力が発生して、ダイオード112を介して電気二重層キャパシタ111を充電する。電圧変換回路113は、電気二重層キャパシタ111に蓄えられた電圧を受けて、一定の電圧に変換して信号発信回路43の電源として供給する。
【0104】
なお、この第3の実施形態の電子ペンが位置検出装置の位置検出センサに対して信号を送出する通常動作をするときは、図7に示すように、コイル12Cは固定電位(この例では接地電位(GND))となるようにさせており、コイル12Cは、芯体2Cの周囲に設けたシールド電極として作用する。なお、この第3の実施形態の電子ペンが通常動作するときのコイル12Cの固定電位は、接地電位に限らず、電源(駆動電圧)のプラス側電位であっても良いし、電源(駆動電圧)のプラス側電位と接地電位との中間の電位であっても良い。
【0105】
[静電容量結合方式の位置検出装置の概要]
図8は、図7に示した電子ペン本体部20Cが用いられて構成される電子ペン10Cからの信号を受け、センサ上の位置を検出すると共に、筆圧を検出するようにする静電容量結合方式の座標検出センサが用いられた位置検出装置400を説明するためのブロック図である。
【0106】
この例の位置検出装置400は、図8に示すように、静電容量結合方式の座標検出センサ(以下、センサと略称する)410と、このセンサ410に接続されるペン検出回路420とからなる。センサ410は、この例では、断面図は省略するが、下層側から順に、第1の導体群411、絶縁層(図示は省略)、第2の導体群412を積層して形成されたものである。第1の導体群411は、例えば、横方向(X軸方向)に延在した複数の第1の導体411Y1、411Y2、…、411Ym(mは正の整数)を互いに所定間隔離して並列に、Y軸方向に配置したものである。また、第2の導体群412は、第1の導体群411と直交する縦方向(Y軸方向)に延在し互いに所定間隔離して並列に、X軸方向に配置したものである。
【0107】
このように、位置検出装置400のセンサ410では、第1の導体群411と第2の導体群412を交差させて形成したセンサパターンを用いて、電子ペン10Cが指示する位置を検出する構成を備えている。なお、以下の説明において、第1の導体411Y1、411Y2、…、411Ymについて、それぞれの導体を区別する必要がないときには、その導体を、第1の導体411Yと称する。同様に、第2の導体412X1、412X2、…、412Xnについて、それぞれの導体を区別する必要がないときには、その導体を、第2の導体412Xと称することとする。
【0108】
ペン検出回路420は、センサ410との入出力インターフェースとされる選択回路421と、増幅回路422と、バンドパスフィルタ423と、検波回路424と、サンプルホールド回路425と、AD(Analog to Digital)変換回路426と、制御回路427とからなる。
【0109】
選択回路421は、制御回路427からの制御信号に基づいて、第1の導体群411および第2の導体群412の中から1本の導体411Yまたは412Xを選択する。選択回路421により選択された導体は増幅回路422に接続され、電子ペン10Cからの信号が、選択された導体により検出されて増幅回路422により増幅される。この増幅回路422の出力はバンドパスフィルタ423に供給されて、電子ペン10Cから送信される信号の周波数の成分のみが抽出される。
【0110】
バンドパスフィルタ423の出力信号は検波回路424によって検波される。この検波回路424の出力信号はサンプルホールド回路425に供給されて、制御回路427からのサンプリング信号により、所定のタイミングでサンプルホールドされた後、AD変換回路426によってデジタル値に変換される。AD変換回路426からのデジタルデータは制御回路427によって読み取られ、処理される。
【0111】
制御回路427は、内部のROMに格納されたプログラムによって、サンプルホールド回路425、AD変換回路426、および選択回路421に、それぞれ制御信号を送出するように動作する。そして、制御回路427は、AD変換回路426からのデジタルデータから、電子ペン10Cによって指示されたセンサ410上の位置座標を算出する。さらに、制御回路427は、電子ペン10Cの筆圧検知部5で検出された筆圧を検出する。
【0112】
なお、この例の電子ペン10Cにおいては、回路基板4Cの信号発信回路43は、発振回路のみの構成とし、筆圧をその発振周波数の変化として位置検出装置に伝送する。しかし、これに限るものではない。信号発生回路を、発振回路と、その発振信号に対して所定の変調を行う回路とで構成し、筆圧情報を、例えばASK信号などとして位置検出装置に伝送するようにしてもよい。
【0113】
以上説明したようにして、第3の実施形態によれば、防塵及び防水の能力が高く、筆圧検出機能も備える静電結合方式の電子ペンを実現することができる。
【0114】
なお、この第3の実施形態の静電容量結合方式の電子ペンの場合に、信号発信回路の駆動電源の発生回路としては、磁性体コアにコイルを巻回することで、電磁誘導により内部の蓄電素子の例としての電気二重層キャパシタを充電するようにしたが、これに限られるものではない。例えば、電界結合や電波により電源を伝達して、電子ペンの電子ペン本体部に収納されている蓄電素子に蓄電する構成を用いてもよいことは言うまでもない。
【0115】
[他の実施形態及びその他の変形例]
上述の実施形態では、外部筐体の中空部内に、電子ペン本体部筐体(内部筐体)を備える電子ペン本体部を収納するようにし、電子ペン本体部筐体(内部筐体)の中空部内に電子ペン用の部品を収納して、当該電子ペン本体部筐体(内部筐体)の中空部内を樹脂で充填するようにした。
【0116】
しかし、この発明による電子ペンにおける電子ペン本体部は、電子ペン本体部筐体(内部筐体)を備えずに、樹脂により電子ペン用の部品をモールドした構成とすることもできる。
【0117】
図9は、電子ペン本体部筐体(内部筐体)を備えずに、樹脂により電子ペン用の部品をモールドした構成とした電子ペン本体部の製法を説明するための図である。この図9の例は、電子ペンとしての部品構成要素は、第1の実施形態の電子ペン10と同様の場合としており、電子ペン10と同一の構成部品については同一参照記号を付してある。
【0118】
この例においては、図9(A)に示すようなモールド用型部材210を用意する。このモールド用型部材210は、この例では、電子ペン本体部20の電子ペン本体部筐体(内部筐体)201を、その軸心方向に沿う方向の切断面により2分したハーフパイプ状のハーフ部材211及び212とからなる。一方のハーフ部材、この例では、ハーフ部材211には、溶融した樹脂を流し込むための樹脂投入孔211aが形成されている。
【0119】
そして、この例においては、モールド用型部材210の一方のハーフ部材212内に、コイル部1、接続部材3、回路基板4及び基板保護パイプ6及び筆圧検知部5を軸心方向に並べて結合して一体化したモジュール部品を収納させる。そして、ハーフ部材212に対してハーフ部材211を結合させて、モールド用型部材210の中空部内に、前記モジュール部品を収納させる状態とする(図9(B)参照)。
【0120】
さらに、モールド用型部材210の芯体先端部材2とは反対側の開口部を、筐体蓋102と同様の構成の樹脂充填用治具220により閉塞する。なお、この樹脂充填用治具220の、筐体蓋102の径小部102bに対応する径小部220bの軸心方向の高さを筐体蓋102の径小部102bと同一とすると、前述した隙間δの分が、筐体蓋102の径小部102bとの間に形成されなくなるので、樹脂充填用治具220の径小部220bの軸心方向の高さは、筐体蓋102の径小部102bに対応する径小部220bの軸心方向の高さよりも隙間δの分だけ、大きいものとされている。
【0121】
そして、モールド用型部材210の開口部と芯体を構成するフェライトコア11との隙間はパテなどにより閉塞する。
【0122】
そして、モールド用型部材210のハーフ部材211に形成されている樹脂投入孔211aから、溶融している樹脂を、モールド用型部材210の中空部内に流し込んで、図9(B)において網点を付して示すように、モールド用型部材210の中空部内を樹脂7で充填するようにする。
【0123】
そして、樹脂7が固化したら、モールド用型部材210のハーフ部材211及びハーフ部材212を外す。これにより、図9(C)に示すように、コイル部1、接続部材3、回路基板4及び基板保護パイプ6及び筆圧検知部5を軸心方向に並べて結合して一体化したモジュール部品を樹脂7により覆ってモールドした電子ペン本体部20Xを形成する。
【0124】
以上のようにして形成された電子ペン本体部20Xを、図1に示した外部筐体101の中空部内に収納し、筐体蓋102で外部筐体101を閉塞することで、この例の電子ペンが構成できる。
【0125】
[筆圧検知部の他の例]
上述の実施形態では、圧力検出部を構成する筆圧検知部は、印加された筆圧を静電容量の変化として検出する圧力感知チップを用いた。しかし、筆圧検知部は、印加された筆圧を静電容量の変化として検出する構成に限られるものではない。図10の例は、印加された筆圧をインダクタンスの変化として検出する構成の一例である。この図10の例において、前述した第1の実施形態と同一の構成部分には、同一の参照記号を付してある。
【0126】
この例においても、図10に示すように、筆圧検知部5Lは、回路基板4と結合する接続端子部51Lと、基板保護パイプ6と嵌合する嵌合部52Lと、感圧部53Lとを備えるが、感圧部53Lのパッケージ510L内には、磁性体コア、例えばフェライトコア54にコイル55が巻回されたコイル部材56が収納されている。
【0127】
図10に示すように、この例では、フェライトコア54にコイル55が巻回されたコイル部材56は、フェライトコア54の軸心方向が電子ペン本体部筐体201の軸心方向となるように、感圧部53Lのパッケージ510L内に収納されている。そして、パッケージ510Lの上端面510Laよりも、フェライトコア54の軸心方向の端面がパッケージ510Lの内側となるように、コイル部材56が設けられている。
【0128】
一方、この例においては、筐体蓋102Lの径小部102Lbの筆圧検知部5Lの感圧部53Lのパッケージ510Lの上端面510Laと衝合する面には、例えば弾性ゴムからなる弾性部材57が貼付されて設けられている。そして、筐体蓋102Lの径小部102Lbには、フェライトコア54と磁気的に結合される磁性体、例えば永久磁石58が設けられる。したがって、筐体蓋102Lの径小部102Lbに設けられている永久磁石58は、弾性部材57を介して、筆圧検知部5Lのコイル部材56と対向する。
【0129】
そして、この場合には、芯体先端部材2に筆圧が印加されること基づいて、電子ペン本体部の全体が、弾性部材57を介して筐体蓋102L側に変位する。これにより、コイル部材56のフェライトコア54及びコイル55と永久磁石58との間の距離が変化し、両者からなるインダクタンス値が筆圧に応じて変化する。
【0130】
この例では、図11(A)に示すように、コイル部材56のコイル55は、コイル12及びキャパシタ42に対して並列に接続されて、並列共振回路が構成される。したがって、この例の場合には、筆圧に応じたコイル部材56と永久磁石58との間の距離の変化に基づくインダクタンス値の変化により、共振回路の共振周波数が変化し、この共振周波数の変化として、第1の実施形態の場合と同様にして、位置検出装置300において筆圧を検出することができる。
【0131】
なお、この図10の例は、第3の実施形態の静電容量結合方式の電子ペン10Cの電子ペン本体部20Cにも適用することができる。その場合には、図11(B)に示すように、コイル55は、信号発信回路43の発振周波数を決定するための共振回路の一部となるように接続される。したがって、位置検出装置400は、第3の実施形態の静電容量結合方式の電子ペン10Cと同様にして、電子ペンに印加されている筆圧を検出することができる。
【0132】
なお、筐体蓋102Lの径小部102Lbに設けられる、フェライトコア54と磁気的に結合される磁性体は、上述の例の永久磁石58に限られるものではなく、例えばフェライト片などの磁性体片であってもよい。
【符号の説明】
【0133】
1…コイル部、2…芯体先端部材2C…芯体、3…接続部材、4…回路基板、5…筆圧検知部、6…基板保護パイプ、7…充填された樹脂、10…電子ペン、11…フェライトコア、12…コイル、20…電子ペン本体部、101…外部筐体、102…筐体蓋、201…電子ペン本体部筐体(内部筐体)、210…モールド用型部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11