(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
PPP(Point to Point Protocol)サーバとの間でPPPセッションを確立し、自装置に接続されるユーザ端末と前記PPPサーバの先に設けられるサービスサーバとの間の通信を前記PPPセッションにより行う通信制御装置であって、
前記ユーザ端末と前記サービスサーバとの間の通信状態を監視して、前記ユーザ端末から前記サービスサーバへの通信が不調となったことを検出してデータ通信不可信号を出力する通信監視部と、
予め設定された周期で前記PPPサーバにキープアライブメッセージを発行し、前記キープアライブメッセージに対する前記PPPサーバからの応答が得られないことに応じて前記PPPセッションの再確立処理を実施するPPPキープアライブ処理部と、を有し、
前記PPPキープアライブ処理部は、前記データ通信不可信号を受信した場合、予め定められた前記周期よりも短い周期で前記キープアライブメッセージを送信する通信制御装置。
前記PPPキープアライブ処理部は、前記データ通信不可信号を受信した場合、予め定められた前記周期に関わらず受信したデータ通信不可信号に応じて前記キープアライブメッセージを送信する請求項1に記載の通信制御装置。
前記PPPキープアライブ処理部は、前記キープアライブメッセージに対する応答があった場合、前記周期を予め設定された長さに戻す請求項1又は2に記載の通信制御装置。
前記PPPキープアライブ処理部は、前記キープアライブメッセージに対する前記PPPサーバからの応答が得られない場合に前記キープアライブメッセージを再送信するリトライ処理を行い、前記リトライ処理の連続数回がリトライ回数閾値以上となった場合に前記PPPセッションの再確立処理を実施すると共に、前記データ通信不可信号を受信した場合には前記リトライ回数閾値を小さな値にする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の通信制御装置。
前記PPPキープアライブ処理部は、前記キープアライブメッセージに対する応答があった場合、前記リトライ回数閾値を予め設定された値に戻す請求項4に記載の通信制御装置。
前記通信監視部は、前記ユーザ端末から発行されるTCP(Transmission Control Protocol)に関するパケット及びDNS(Domain Name System)クエリーパケットの少なくとも1つを監視する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の通信制御装置。
第1の通信ポートの先に接続されるPPP(Point to Point Protocol)サーバとの間でPPPセッションを確立し、第2の通信ポートに接続されるユーザ端末と前記PPPサーバの先に設けられるサービスサーバとの間の通信を前記PPPセッションにより行う通信制御装置において前記通信制御装置内の演算部にて実行される通信制御プログラムであって、
第1の通信ポートを介して予め設定された周期で前記PPPサーバにキープアライブメッセージを発行し、前記キープアライブメッセージに対する前記PPPサーバからの応答が得られないことに応じて前記PPPセッションの再確立処理を実施し、
前記第2の通信ポートと前記第1の通信ポートとの間で送受信される情報を参照することで前記ユーザ端末から前記サービスサーバとの間の通信状態を監視し、
前記ユーザ端末から前記サービスサーバへの通信が不調となったことを前記監視に基づき検出したことに応じて、予め定められた前記周期よりも短い周期で前記キープアライブメッセージを送信する通信制御プログラム。
第1の通信ポートの先に接続されるPPP(Point to Point Protocol)サーバとの間でPPPセッションを確立し、第2の通信ポートに接続されるユーザ端末と前記PPPサーバの先に設けられるサービスサーバとの間の通信を前記PPPセッションにより行う通信制御装置のPPPセッション復旧方法であって、
前記第2の通信ポートと前記第1の通信ポートとの間で送受信される情報を参照することで前記ユーザ端末から前記サービスサーバとの間の通信状態を監視し、
前記ユーザ端末から前記サービスサーバへの通信が不調となったことを前記監視に基づき検出したことに応じてデータ通信不可信号を生成し、
前記データ通信不可信号が生成された場合には、予め設定された長さよりも短い周期で前記PPPサーバにキープアライブメッセージを発行して前記PPPセッションが遮断していると判定したことに応じて再確立処理を実施するPPPセッションの復旧方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0013】
まず、実施の形態1にかかる通信制御装置が用いられる通信システム1のブロック図を
図1に示す。そして、
図1を参照して通信システム1における通信制御装置の役割について説明する。
図1に示すように、実施の形態1にかかる通信システム1は、ユーザ端末10、ルータ装置11、PPPサーバ12、公衆ネットワーク13、Webサーバ14を有する。ルータ装置11は、実施の形態1にかかる通信制御装置の一例である。通信制御装置は、例えば、ユーザ端末10に組み込まれていても良い。
【0014】
実施の形態1にかかる通信システム1では、ユーザ端末10とルータ装置11とがLAN(Local Area Network)により通信を行う。ルータ装置11は、PPPサーバ12とPPPセッションにより通信を行う。PPPサーバ12は、認証処理に基づき接続を許可するルータ装置11を制限する。また、PPPサーバ12は、PPP(Point to Point Protocol)に基づき、ルータ装置11との間でPPPセッションを確立する。そして、実施の形態1にかかる通信システム1では、ユーザ端末10がルータ装置11とPPPサーバ12との間で確立されているPPPセッションを用いて、公衆ネットワーク13の先に設置されているWebサーバ14との通信を行う。なお、Webサーバ14は、サービスサーバの一例であり、サービスサーバとしてはDNS(Domain Name System)サーバ、FTP(File Transfer Protocol)サーバ、動画配信サーバ等が考えられる。
【0015】
実施の形態1にかかる通信システム1では、ルータ装置11とPPPサーバ12との間でPPPセッションが確立される。このとき、ルータ装置11は、PPPセッションの維持を目的としたキープアライブ機能を有する。そこで、
図2に実施の形態1にかかるルータ装置11のブロック図を示し、
図2を参照してルータ装置11について詳細に説明する。
【0016】
図2に示すように、実施の形態1にかかるルータ装置11は、第1の通信ポート(例えば、WANインタフェース20)、データ通信監視部21、PPPキープアライブ処理部22、第2の通信ポート(例えば、LANインタフェース23)を有する。なお、ルータ装置11は、WANインタフェース20、データ通信監視部21、PPPキープアライブ処理部22、LANインタフェース23以外の処理部も有しているが、本発明にかかるルータ装置11の動作とは直接関連しないため、ここでは説明を省略する。
【0017】
ルータ装置11は、WANインタフェース20をPPPサーバ12との通信に利用し、LANインタフェース23をユーザ端末10との通信に用いる。WANインタフェース20は、例えば、PPPサーバ12とルータ装置11との間の物理的な信号の送受信及び送受信するパケットの形式変換等を行う。LANインタフェース23は、例えばルータ装置11とユーザ端末10との間の物理的な信号の送受信及び送受信するパケットの形式変換等を行う。
【0018】
また、ルータ装置11は、WANインタフェース20とデータ通信監視部21との間に、ルータ装置11と公衆ネットワーク13との間で送受信されるデータの制御及びルータ装置11とPPPサーバ12の間の通信制御を行う通信処理部を有する。この通信処理部の一部がデータ通信監視部21及びPPPキープアライブ処理部22である。
【0019】
データ通信監視部21及びPPPキープアライブ処理部22は、個別の処理部として実装することができる。また、別の形態では、データ通信監視部21及びPPPキープアライブ処理部22を含む通信処理部は、例えば通信制御プログラムを実行する演算部により実現できる。
【0020】
ここで、上述した通信制御プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0021】
データ通信監視部21は、ユーザ端末10とWebサーバ14との間の通信状態を監視して、ユーザ端末10からWebサーバ14への通信が不調となったことを検出してデータ通信不可信号を出力する。実施の形態1にかかる通信システム1では、データ通信監視部21は、ユーザ端末10からWebサーバ14に送信されるTCP(Transmission Control Protocol)に基づく通信で用いられるTCP SYNパケットを監視する。TCP SYNパケットは、TCPパケットのうちSYNフラグがセットされているパケットであって、Webサーバ14に送信したパケットに対して応答を要求するものである。データ通信監視部21は、TCP SYNパケットの送信を検出すると、当該TCP SYNパケットに対する応答を確認し、一定時間の間に応答が確認できなければデータ通信不可信号をPPPキープアライブ処理部22に出力する。
【0022】
PPPキープアライブ処理部22は、予め設定された周期でPPPサーバ12にキープアライブメッセージを発行し、キープアライブメッセージに対するPPPサーバ12からの応答が得られないことに応じてPPPセッションの再確立処理を実施する。ここで、本実施の形態では、キープアライブメッセージとしてLCP(Link Control Protocol)エコー要求を用いる。LCPエコー要求は、PPPサーバ12に対して応答を要求するものである。
【0023】
また、PPPキープアライブ処理部22は、データ通信監視部21からデータ通信不可信号を受信した場合、予め定められた周期よりも短い周期でキープアライブメッセージを送信する。特に、実施の形態1にかかるPPPキープアライブ処理部22は、データ通信不可信号を受信した際に、LCPエコー要求の再送を行うリトライ処理を実施していなかった場合には、予め定められた周期に関わらず受信したデータ通信不可信号に応じてキープアライブメッセージを送信する。また、PPPキープアライブ処理部22は、キープアライブメッセージに対する応答がPPPサーバ12からあった場合、キープアライブメッセージの送信周期を予め設定された長さに戻す。
【0024】
また、PPPキープアライブ処理部22は、PPPセッションの再確立処理を行うための判断として、PPPサーバ12から応答の得られないキープアライブメッセージの送信処理の連続回数がリトライ回数閾値に達したか否かに基づき行う。また、PPPキープアライブ処理部22は、データ通信不可信号を受信した場合、当該リトライ回数閾値を小さな値に変更する。なお、PPPキープアライブ処理部22は、キープアライブメッセージに対する応答がPPPサーバ12からあった場合、リトライ回数閾値を予め設定された値に戻す。
【0025】
続いて、実施の形態1にかかるルータ装置11の動作について詳細に説明する。実施の形態1にかかるルータ装置11では、データ通信監視部21とPPPキープアライブ処理部22とがそれぞれ並列して動作するため、以下の説明では、データ通信監視部21の動作とPPPキープアライブ処理部22の動作をそれぞれ個別に説明する。
【0026】
まず、
図3に実施の形態1にかかるデータ通信監視部21の動作を説明するフローチャートを示す。
図3に示すように、データ通信監視部21は、PPPセッションが開始されたことに応じて処理を開始する。そして、PPPセッションが開始されると、データ通信監視部21は、データ通信を監視しながらユーザ端末10から送信されるTCP SYNパケットを待つ(ステップS1)。そして、データ通信監視部21は、TCP SYNパケットの送信を検出すると(ステップS2)、TCP YSNパケットの送信履歴をデータ通信監視部21内の記憶部に保存する(ステップS3)。その後、データ通信監視部21は、Webサーバ14からTCP SYNに対応する応答の有無を確認する(ステップS4)。このステップS4において、TCP SYNパケットに対する応答が確認された場合、データ通信監視部21は、次のTCP SYNパケットを検知するために、TCPに基づく通信を監視する(ステップS1)。一方、ステップS4において、TCP SYNパケットに対する応答が確認出来なかった場合、データ通信監視部21は、PPPキープアライブ処理部にデータ通信不可信号を出力する(ステップS5)。データ通信不可信号を出力した後、データ通信監視部21は、次のTCP SYNパケットを検知するために、TCPに基づく通信を監視する(ステップS1)。
【0027】
続いて、
図4に実施の形態1にかかるPPPキープアライブ処理部22の動作を説明するフローチャートを示す。
図4に示すように、PPPキープアライブ処理部22は、PPPセッションが開始されたことに応じて処理を開始する。PPPキープアライブ処理部22は、処理を開始すると、ステップS10〜S20のキープアライブ処理とステップS21〜S24の条件変更処理とを並列的に実施する。なお、キープアライブ処理と条件変更処理とは、それぞれに含まれる各処理を時分割で実施しても良い。
【0028】
まず、ステップS10〜S20のキープアライブ処理について説明する。ステップS10では、LCPエコー要求を送信する間隔が経過するまで待機し(ステップS10)、送信間隔が経過した後にPPPサーバ12にLCPエコー要求を送信する(ステップS11)。そして、送信したLCPエコー要求に対応する応答がPPPサーバ12から得られた場合、次のLCPエコー要求の送信間隔が経過するまで待機する(ステップS12、S10)。ここで、
図4では、送信したLCPエコー要求に対応する応答がPPPサーバ12から得られなかった場合、にLCPエコー要求のリトライ送信間隔及びリトライ回数閾値を規定値に戻す処理(ステップS19、S20)があるが、ステップS22、S23による条件変更が行われなければステップS19、S20の処理は行われない。
【0029】
一方、ステップS12で、送信したLCPエコー要求に対応する応答がPPPサーバ12から得られた場合、ステップS13〜S18のリトライ処理を行う。まず、ステップS13では、リトライ処理が連続した回数を示すリトライカウント値をゼロにリセットする。次いで、PPPキープアライブ処理部22は、LCPエコー要求の送信をリトライする間隔が経過するまで待機し(ステップS14)、リトライ送信間隔が経過した後にPPPサーバ12にLCPエコー要求を送信する(ステップS15)。そして、送信したLCPエコー要求に対応する応答がPPPサーバ12から得られた場合、次のLCPエコー要求の送信間隔が経過するまで待機する(ステップS16、S10)。一方、ステップS16で、送信したLCPエコー要求に対応する応答がPPPサーバ12から得られなかった場合、PPPキープアライブ処理部22は、リトライカウント値を1つ増加させる(ステップS17)。次いで、PPPキープアライブ処理部22は、リトライカウント値が予め設定したリトライ回数閾値以上であるか否かを判断する(ステップS18)。このステップS18でリトライカウント値がリトライ回数閾値よりも小さい場合、PPPキープアライブ処理部22は、次のLCPエコー要求のリトライ送信間隔が経過するまで待機する(ステップS18、S14)。一方、ステップS18においてリトライカウント値がリトライ回数閾値以上であると判断した場合PPPキープアライブ処理部22は、PPPセッションの切断と再確立処理を行う。
【0030】
次いで、ステップS21〜S24の条件変更処理について説明する。ステップS21では、データ通信監視部21が出力したデータ通信不可信号の受信を待機する。そして、データ通信不可信号を受信したことに応じて、PPPキープアライブ処理部22は、リトライ送信間隔の短縮(ステップS22)と、リトライ回数閾値の削減(ステップS23)とを実施する。そして、PPPキープアライブ処理部22は、現在の処理状態がステップS13以降のLCPエコー要求送信のリトライ処理状態であるか否かを確認する(ステップS24)。ステップS24においてリトライ処理状態であると判断された場合、次のデータ通信不可信号の受信を待機する。一方、ステップS24においてリトライ処理状態ではないと判断された場合、PPPキープアライブ処理部22は、エコー送信間隔の経過を待つことなくLCPエコー要求をPPPサーバ12に送信する。ステップS24の判断に基づきLCPエコー要求を送信したPPPキープアライブ処理部22は、ステップS14以降の処理を実施する。なお、このステップS22〜S24の処理は、割込処理により実施するものとする。
【0031】
続いて、実施の形態1にかかる通信システム1の動作について説明する。そこで、
図5に実施の形態1にかかる通信システム1の動作を説明するシーケンス図を示す。なお、
図5で示したシーケンス図は、LCPエコー送信間隔を60秒、リトライ送信間隔を10秒、リトライ回数閾値を10回、データ通信不可信号を受信後のリトライ送信間隔を5秒、データ通信不可信号を受信後のリトライ回数閾値を5回、としたものである。
【0032】
図5に示すように、実施の形態1にかかる通信システム1では、まず、ルータ装置11とPPPサーバ12との間でPPPセッションが開始される。その後、ユーザ端末10とWebサーバ14との間で通信が行われる。そして、ユーザ端末10とWebサーバ14との間の通信が正常に行われている間は、TCP SYNパケットに対する応答がユーザ端末10に届くためルータ装置11のデータ通信監視部21は、データ通信不可信号を出力しない。その後PPPサーバ12においてPPPセッションの切断が発生すると、ユーザ端末10からWebサーバ14へのアクセスが失敗し、TCP SYNパケットに対する応答が途絶える。これにより、ルータ装置11のデータ通信監視部21がデータ通信不可信号を出力する。
【0033】
そして、PPPキープアライブ処理部22は、当該データ通信不可信号に応じて、リトライ送信間隔の短縮とリトライ回数閾値の削減とを実施する。また、PPPキープアライブ処理部22は、データ通信不可信号を受信したため、エコー送信間隔に関わらず即座にLCPエコー要求をルータ装置11に送信する。ここで、PPPセッションが切断されている場合、このLCPエコー要求は失敗する。そのため、PPPキープアライブ処理部22は、LCPエコー要求のリトライ処理が行われる。このとき、PPPキープアライブ処理部22では、リトライ送信間隔の短縮及びリトライ回数閾値の削減が行われているため、セッション再確立までの時間が短縮される。
【0034】
このように、ルータ装置11では、
図3、
図4で説明した処理を実施することで、PPPセッションが不調となったときの復旧時間を短縮することができる。以下では、実施の形態1にかかるPPPセッション復旧方法に対する比較例を挙げ、当該比較例との比較により、このPPPセッションの復旧時間の短縮の効果をより詳細に説明する。
【0035】
以下で説明する比較例にかかるPPPセッションの復旧方法は、データ通信監視部の処理を行わずに、PPPキープアライブ処理部のみでPPPセッションの復旧を行うものである。つまり、比較例にかかるPPPセッションの復旧方法は、LCPエコー要求の送信間隔を通常時とリトライ処理時との間で切り替えずに、LCPエコー要求のリトライ処理の失敗に基づきPPPセッションの復旧を行う。
【0036】
そこで、比較例にかかるPPPキープアライブ処理部の動作を説明するフローチャートを
図6に示す。
図6に示すように、比較例にかかるPPPキープアライブ処理部では、LCPエコー要求を送信間隔が経過する毎にPPPサーバ12に送信する(ステップS100、S101)。そして、LCPエコー要求に対するPPPサーバ12からの応答があれば、リトライ処理を行うことなく周期的にLCPエコー要求を送信する処理を継続する(ステップS100、S101、S102)。
【0037】
一方、LCPエコー要求に対するPPPサーバ12からの応答がない場合、比較例にかかるPPPキープアライブ処理部においてもLCPエコー要求をPPPサーバ12に周期的に送信し、連続してPPPサーバ12からの応答がなければ、PPPセッションの切断及び再確立処理を行う(ステップS103〜S108)。ここで、
図6に示すように、比較例にかかるPPPキープアライブ処理部では、リトライ処理時のリトライ送信間隔は、通常時のLCPエコー要求送信間隔から変更を行う処理は含まれない。
【0038】
上記比較例にかかるPPPキープアライブ処理部を含むを有する通信システムの動作を説明するシーケンス図を
図7に示す。
図7に示す例は、
図5に示した実施の形態1にかかる通信システム1の動作と同じ条件で比較例にかかるPPPキープアライブ処理部を動作させた場合のものである。なお、
図7に示す例では、サーバアクセスの失敗がLCPエコー要求を出力した時点より20秒後にサーバアクセスの失敗が判明した場合のものである。
【0039】
図7に示すように、比較例にかかる通信システムでは、LCPエコー要求の送信間隔は、通常とリトライ時で同じである。そのため、比較例にかかる通信システムでは、LCPエコー要求のリトライ送信処理に移行するまでの時間及びリトライ送信処理からセッション再確立を行うまでの時間がいずれも
図5に示した実施の形態1にかかる通信システム1よりも多くかかっていることが分かる。
【0040】
上記説明より、実施の形態1にかかる通信システム1は、データ通信監視部21を有することでユーザ端末10とWebサーバ14との間の通信の不具合を検出することができる。そして、データ通信監視部21が検出したデータ通信の不具合を検出したことに応じて、PPPキープアライブ処理部22がLCPエコー要求のリトライ送信間隔の短縮とリトライ回数閾値の削減との少なくとも一方を実施する。これにより、実施の形態1にかかる通信システム1では、PPPセッションの切断を復旧するために要する時間を短縮することができる。
【0041】
また、実施の形態1にかかる通信システム1では、PPPキープアライブ処理部22がデータ通信監視部21からデータ通信不可信号を受信したことに応じて、エコー要求送信周期に関わらず、即座にLCPエコー要求を出力する。これによっても、実施の形態1にかかる通信システム1では、PPPセッションの切断を復旧するために要する時間を短縮することができる。
【0042】
また、実施の形態1にかかる通信システム1では、PPPセッションがユーザ端末10とWebサーバ14との間の通信に利用されている期間のPPPセッションの不調をデータ通信監視部21において検出し、当該検出結果に応じてLCPエコー要求の出力を行うことができる。これにより、実施の形態1にかかる通信システム1では、PPPセッションが確立していても、データ通信には利用されていない期間のルータ装置11とPPPサーバ12との間のキープアライブ処理の頻度を下げても通信品質を維持できる。つまり、実施の形態1にかかる通信システム1では、キープアライブ処理に要するパケット通信の通信量を低減して、他の通信に用いられる通信帯域を拡大することができる。
【0043】
また、実施の形態1にかかる通信システム1では、データ通信監視部21においてデータ通信に不具合が発生したと判断された場合にはリトライ回数閾値を減少させる。これにより、実施の形態1にかかる通信システム1では、PPPサーバ12がLCPエコー要求に応答するための処理を削減することができる。
【0044】
実施の形態2
実施の形態2では、データ通信監視部21が通信の不具合を検出するために監視する対象の別の例について説明する。実施の形態2では、データ通信監視部21がPPPセッション上に設けられるTCPセッションにおけるWebサーバ14からの応答の有無に基づきデータ通信の可能性を判断する。
【0045】
そこで、実施の形態2にかかるデータ通信監視部21の動作を説明するフローチャートを
図8に示す。
図8に示すように、実施の形態2においても、データ通信監視部21は、PPPセッションが開始されたことに応じて処理を開始する。そして、PPPセッションが開始されると、データ通信監視部21は、TCP通信を監視した状態で待機する(ステップS31)。そして、データ通信監視部21は、TCPコネクションの確立を検知すると(ステップS32)、TCPコネクションの確立履歴をデータ通信監視部21内の記憶部に保存する(ステップS33)。その後、データ通信監視部21は、Webサーバ14からユーザ端末10への応答が一定時間内にあれば、次のTCPコネクションの確立を検知するために、TCPに基づく通信を監視する(ステップS34、S31)。一方、ステップS34において、TCPコネクションにおいてユーザ端末10に対する応答が一定時間内に確認出来なかった場合、データ通信監視部21は、PPPキープアライブ処理部にデータ通信不可信号を出力する(ステップS5)。データ通信不可信号を出力した後、データ通信監視部21は、次のTCPコネクションの確立を検知するために、TCPに基づく通信を監視する(ステップS31)。
【0046】
上記説明より、実施の形態2では、TCPコネクションにおけるWebサーバ14からユーザ端末10への応答の有無に基づきデータ通信の可否を判定する。つまり、ユーザ端末10とWebサーバ14との間のデータ通信の可否は、実施の形態1のTCP SYNパケットのみならず、Webサーバ14からの応答を求めるものであれば様々な情報を利用できる。
【0047】
実施の形態3
実施の形態3では、データ通信監視部21が通信の不具合を検出するために監視する対象の別の例について説明する。実施の形態3では、データ通信監視部21がPPPセッション上でDNSサーバに送信されるDNSクエリーに対する応答の有無に基づきデータ通信の可能性を判断する。
【0048】
そこで、実施の形態3にかかるデータ通信監視部21の動作を説明するフローチャートを
図9に示す。
図9に示すように、実施の形態3においても、データ通信監視部21は、PPPセッションが開始されたことに応じて処理を開始する。そして、PPPセッションが開始されると、データ通信監視部21は、DNS通信を監視した状態で待機する(ステップS41)。そして、データ通信監視部21は、DNSクエリーの送信を検知すると(ステップS42)、DNSクエリーンの送信履歴をデータ通信監視部21内の記憶部に保存する(ステップS43)。その後、データ通信監視部21は、Webサーバ14からユーザ端末10にDNSクエリーに対する応答が一定時間内にあれば、次のDNSクエリーの送信を検知するために、DNSに基づく通信を監視する(ステップS44、S41)。一方、ステップS44において、DNSクエリーに対する応答が一定時間内に確認出来なかった場合、データ通信監視部21は、PPPキープアライブ処理部にデータ通信不可信号を出力する(ステップS5)。データ通信不可信号を出力した後、データ通信監視部21は、次のDNSクエリーの送信を検知するために、DNSに基づく通信を監視する(ステップS41)。
【0049】
上記説明より、実施の形態3では、DNSクエリーに対する応答がWebサーバ14からユーザ端末10にあったか否かに基づきデータ通信の可否を判定する。つまり、ユーザ端末10とWebサーバ14との間のデータ通信の可否は、実施の形態1、2のTCPに関するもののみならず、Webサーバ14からの応答を求めるものであれば様々な情報を利用できる。
【0050】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。