(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のステアリング装置では、長期間の使用による劣化または二次衝突時の衝撃等によって上板に対する側板の固定が外れ、側板によって挟持されたアウターコラムを含むコラムジャケット全体が所定の取付け位置から大きくずれる虞がある。
この発明は、かかる背景のもとでなされたものであり、ブラケットの固定剥離によるコラムジャケットの位置ずれを抑制できるステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、ステアリングシャフト(3)を回転可能に支持するコラムジャケット(4)と、前記コラムジャケットを支持し、第1方向(A1)および第2方向(A2)を有し、前記第1方向を車体前方に向け、前記第2方向を車体後方に向けて車体(22)に固定されるブラケット(6)と、を備え、前記ブラケットは、第1上板(28)を含み車体に固定される第1部材(26)と、前記第1部材に固定されて前記コラムジャケットを支持する第2部材(27)と、を含み、前記第2部材は、前記第1上板に固定される第1被固定部(50)を前記第1方向側の縁部(30a)に有する第2上板(30)と、前記第2上板から下方に延び前記コラムジャケットの両側に配置される一対の側板(31)と、前記一対の側板からそれぞれ側方に延設された一対の被規制部(51)と、を含み、前記第1部材は、前記第1上板から下方に延び、対応する前記被規制部の前記第1方向側の面(51a)にそれぞれ固定される第2被固定部(53)を有する一対の規制部(52)を含む、ステアリング装置(1)である。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記第1被固定部は、溶接によって前記第1上板に固定されており、前記各第2被固定部は、溶接によって対応する前記被規制部に固定されており、前記第2被固定部の溶接長(L2)が、前記第1被固定部の溶接長(L1)よりも短い、ステアリング装置である。
なお、上記において、括弧内の数字等は、後述する実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、第2部材の一対の被規制部の第1方向側の面に対する第1部材の一対の規制部の第2被固定部の固定が外れても、一対の被規制部の移動は、一対の規制部によって規制される。そのため、コラムジャケットを支持する第2部材は、車体に固定される第1部材に対して第1被固定部を中心に下方へ僅かに回転した状態で保持される。したがって、第2被固定部の固定が外れたとしても、すなわちブラケットの固定剥離が発生したとしても、コラムジャケット全体が大きく傾くようなコラムジャケットの過度な位置ずれを抑制できる。
【0008】
また、可及的に請求項2記載の発明のように、第2被固定部の溶接長を第1被固定部の溶接長よりも短くできる。これにより、溶接に要する時間を短縮し、コストダウンを図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るステアリング装置1の概略側面図である。
図1を参照して、ステアリング装置1は、ステアリングシャフト3と、コラムジャケット4と、ロアーブラケット5と、アッパーブラケット(ブラケット)6と、締付機構7とを含んでいる。
【0011】
ステアリングシャフト3では、軸方向Xの一端にステアリングホイール等の操舵部材2が連結されている。軸方向Xにおけるステアリングシャフト3の他端は、自在継手9、インターミディエイトシャフト10および自在継手11を順に介して、転舵機構12のピニオン軸13に連結されている。
転舵機構12は、操舵部材2の操舵に連動して転舵輪(図示せず)を転舵する例えばラックアンドピニオン機構である。操舵部材2の回転は、ステアリングシャフト3およびインターミディエイトシャフト10等を介して転舵機構12に伝達される。また、転舵機構12に伝達された回転は、図示しないラック軸の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪が転舵される。
【0012】
ステアリングシャフト3は、例えばスプライン嵌合やセレーション嵌合によって相対摺動可能に嵌合された筒状のアッパーシャフト15およびロアーシャフト16を有している。ステアリングシャフト3は、軸方向Xに伸縮可能である。
コラムジャケット4は、車体後方のアッパージャケット20と、アッパージャケット20よりも車体前方に配置されたロアージャケット21とを含む。アッパージャケット20とロアージャケット21とは、軸方向Xに相対摺動可能である。
【0013】
アッパージャケット20は、軸受17を介してアッパーシャフト15を回転可能に支持している。ロアージャケット21は、軸受18を介してロアーシャフト16を回転可能に支持している。コラムジャケット4は、軸受17,18を介してステアリングシャフト3を回転可能に支持している。コラムジャケット4は、ステアリングシャフト3とともに軸方向Xに伸縮可能である。
【0014】
ロアーブラケット5は、車体22に固定される固定ブラケット23と、固定ブラケット23によって支持されたチルト支軸24と、ロアージャケット21の外周に固定され、チルト支軸24によって回転可能に支持されたコラムブラケット25とを備える。コラムジャケット4およびステアリングシャフト3は、チルト支軸24の中心軸線であるチルト中心CCを支点にして、チルト方向Zに回動可能(チルト可能)となっている。
【0015】
チルト中心CC回りにステアリングシャフト3およびコラムジャケット4が、回動(チルト)されることで、操舵部材2の位置が、チルト方向Zに調整(いわゆるチルト調整)される。また、ステアリングシャフト3およびコラムジャケット4が、軸方向Xに伸縮されることで、操舵部材2の位置が、テレスコ方向(軸方向X)に調整(いわゆるテレスコ調整)される。
【0016】
図2は、
図1のII−II線に沿う断面図である。
図3は、アッパーブラケット6の斜視図である。
図2を参照して、アッパーブラケット6は、車体22に固定される第1部材26と、第1部材26に固定されてコラムジャケット4(特に、ロアージャケット21)を支持する第2部材27とを含む。
【0017】
図3を参照して、第1部材26は、略長方形状の第1上板28を含む。第1上板28の短手方向の一方をアッパーブラケット6の第1方向A1とし、第1上板28の短手方向の他方をアッパーブラケット6の第2方向A2とする。
図2を参照して、第1上板28の長手方向両端に設けられた挿通孔60には、一対のボルト29が挿通されている。第1上板28は、一対のボルト29が車体22に捻じ込まれることによって車体22に固定されている。この状態で、アッパーブラケット6は、第1方向A1を車体前方へ向け、第2方向A2を車体後方へ向けている(
図1参照)。
【0018】
第2部材27は、車体下方から第1上板28に沿う第2上板30と、第2上板30から車体下方へ延び、コラムジャケット4を挟んで両側に配置される一対の側板31とを含む。
一対の側板31は、互いに対向している。一対の側板31のそれぞれには、チルト方向Zに延びるチルト用の長溝32が形成されている。
【0019】
ロアージャケット21は、チルト方向Zの下方部分において軸方向Xの上端から軸方向Xに延びるスリット33と、スリット33の両側に配置された一対の被締付部34とを含む。スリット33は、ロアージャケット21の外部へ向けて、軸方向Xの前方および後方と、チルト方向Zの下方とに露出されている。
一対の被締付部34は、ロアージャケット21と一体に設けられている。一対の被締付部34のそれぞれには、被締付部34を貫通する締付軸挿通孔35が形成されている。
【0020】
締付機構7は、運転者等が手動で回転操作する操作部材40と、一端に操作部材40が取り付けられた締付軸41と、操作部材40と一体回転するカム部材42と、カム部材42に対してカム係合する非回転カムである第1締付部材43とを備える。
締付軸41は、アッパーブラケット6の一対の長溝32と、一対の被締付部34の締付軸挿通孔35とに挿通されている。締付軸41は、一対の被締付部34を介してロアージャケット21によって回転可能に支持されている。
【0021】
操作部材40の長手方向一端の基端部40aと、カム部材42と、第1締付部材43とは、締付軸41の頭部41aと一方の側板31との間で、締付軸41の軸部41bによって支持されている。カム部材42は、締付軸41に対する軸方向Jの移動が規制されている。第1締付部材43は、締付軸41の軸方向Jに移動可能である。
また、ステアリング装置1は、締付軸41のねじ部41cにねじ係合したナット44と、他方の側板31とナット44との間に介在する第2締付部材45と、第2締付部材45とナット44との間に介在する介在部材46とを含む。
【0022】
第2締付部材45と介在部材46とは、ナット44の近傍において、締付軸41の軸部41bによって、締付軸41の軸方向Jに移動可能に支持されている。介在部材46は、ナット44と第2締付部材45との間に介在するワッシャ47と、ワッシャ47と第2締付部材45との間に介在する針状ころ軸受48とを含む。
操作部材40のロック方向への回転操作(ロック操作)に伴って、カム部材42が非回転カム(第1締付部材43)に対して回転することにより、第1締付部材43が締付軸41の軸方向Jに移動されて、第1締付部材43と第2締付部材45との間で、アッパーブラケット6の両側板31が挟持される。一対の被締付部34は、一対の側板31によって締め付けられる。
【0023】
これにより、ロアージャケット21を縮径させるように一対の被締付部34の間のスリット33が狭まり、ロアージャケット21がアッパージャケット20に圧接されて、アッパージャケット20がロアージャケット21に保持される。
このように、締付機構7が締付軸41を介して一対の被締付部34を締め付けることによりロアージャケット21にアッパージャケット20を保持させることによって、チルトロックおよびテレスコロックが達成される。
【0024】
操作部材40を先程とは逆に回転操作(ロック解除操作)することによって、カム部材42が非回転カム(第1締付部材43)に対して回転することにより、第1締付部材43が締付軸41の軸方向Jに移動される。これにより、第1締付部材43と第2締付部材45とによる一対の側板31に対する締め付けが解除され、アッパーブラケット6の両側板31の挟持が解除される。これにより、テレスコ調整およびチルト調整が再び可能となる。
【0025】
図4は、アッパーブラケット6の分解斜視図である。
図4を参照して、第2部材27の第2上板30は、第1部材26の第1上板28に固定される第1被固定部50を第1方向A1側の縁部30aに有する。第1被固定部50は、溶接長L1の溶接によって第1上板28の第1方向A1側の縁部28aに固定されている(
図3のハッチング部分参照)。第2部材27の脱落防止のため、溶接長L1は、第1部材26と第2部材27との固定強度を満たす寸法に設定される。
【0026】
第2部材27は、一対の側板31の第2方向A2側の縁部31aから、一対の側板31から側方にそれぞれ延設された一対の被規制部51を含む。具体的には、一対の被規制部51は、一対の側板31の外側へ向けて互いに離れるように延びている。
第1部材26は、第1上板28の第2方向A2側の縁部28bにおいて対応する側板31の外側の部分からそれぞれ車体下方に延びる一対の規制部52を含む。一対の規制部52の第2方向A2側の面52aと一対の被規制部51の第1方向A1側の面51aとは、互いに対向している(
図3参照)。
【0027】
一対の規制部52は、対応する被規制部51の第1方向A1側の面51aにそれぞれ固定される第2被固定部53を有する。
図3を参照して、第2被固定部53は、溶接長L2の溶接によって被規制部51の第1方向A1側の面51aに固定されている(ハッチング部分参照)。第2被固定部53の溶接長L2は、第1被固定部50の溶接長L1よりも短い。
【0028】
図5は、アッパーブラケット6周辺の側面図である。(a)は、規制部52に対して第2被固定部53が固定されている状態を示した図であり、(b)は、規制部52に対する第2被固定部53の固定が外れた状態を示した図である。
図5では、説明の便宜上、ボルト29および締付機構7の図示を省略している。
図5(a)に示すように、通常、第1上板28に対する第1被固定部50の固定や一対の被規制部51の第1方向A1側の面51aに対する一対の規制部52の第2被固定部53の固定が外れることはない。しかし、二次衝突時の衝撃等によっては、第2被固定部53の固定が外れることが想定し得る。
【0029】
本実施形態によれば、万一、第2被固定部53の固定が外れたとしても、
図5(b)に示すように、第2部材27の一対の被規制部51の移動は、第1部材26の一対の規制部52によって規制される。そのため、コラムジャケット4を支持する第2部材27は、車体22に固定される第1部材26に対して第1被固定部50を中心に車体下方へ僅かに回転した状態で保持される。したがって、第2被固定部53の固定が外れたとしても、すなわちアッパーブラケット6の固定剥離が発生したとしても、コラムジャケット4全体が大きく傾くようなコラムジャケット4の過度な位置ずれを抑制できる。
【0030】
また、第2被固定部53の固定が外れた場合にコラムジャケット4の過度な位置ずれを抑制できるので、可及的に第2被固定部53の溶接長L2を第1被固定部50の溶接長L1よりも短くできる。これにより、溶接に要する時間を短縮し、コストダウンを図ることができる。
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0031】
例えば、第1被固定部50は、第1上板28において第1方向A1側の縁部28aよりも第2方向A2側の部分に対して固定されていてもよい。
また、一対の被規制部51は、対応する側板31において第2方向A2側の縁部31aよりも第1方向A1側の部分(例えば側板31の第1方向A1側の縁部)から側方に延設されていてもよい。また、一対の被規制部51は、側板31の内側へ(互いに近づくように)延びていてもよい。
【0032】
また、各規制部52は、対応する被規制部51の第1方向A1側であれば、第1上板28の第2方向A2側の縁部28bよりも第1方向A1側の部分(例えば第1方向A1側の縁部28a)から車体下方に延びていてもよい。
また、ステアリング装置1は、歯同士の噛み合いによってロアージャケット21に対するアッパージャケット20の位置をロックするツースロック機構が設けられていてもよい。
【0033】
また、第1上板28には、二次衝突時の衝撃によってアッパーブラケット6を車体22から離脱させるカプセルが設けられていてもよい。
また、ステアリング装置1は、操舵部材2の操舵が補助されないマニュアルタイプのステアリング装置に限らず、電動モータによって操舵部材2の操舵が補助されるコラムアシストタイプの電動パワーステアリング装置(C−EPS)でもよい。