特許第6403344号(P6403344)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシーの特許一覧

特許6403344熱動後退式アクチュエータを備えたポンプシール
<>
  • 特許6403344-熱動後退式アクチュエータを備えたポンプシール 図000002
  • 特許6403344-熱動後退式アクチュエータを備えたポンプシール 図000003
  • 特許6403344-熱動後退式アクチュエータを備えたポンプシール 図000004
  • 特許6403344-熱動後退式アクチュエータを備えたポンプシール 図000005
  • 特許6403344-熱動後退式アクチュエータを備えたポンプシール 図000006
  • 特許6403344-熱動後退式アクチュエータを備えたポンプシール 図000007
  • 特許6403344-熱動後退式アクチュエータを備えたポンプシール 図000008
  • 特許6403344-熱動後退式アクチュエータを備えたポンプシール 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6403344
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】熱動後退式アクチュエータを備えたポンプシール
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/14 20060101AFI20181001BHJP
   F04D 29/08 20060101ALI20181001BHJP
   F04D 29/10 20060101ALI20181001BHJP
   F16J 15/324 20160101ALI20181001BHJP
   F16J 15/3272 20160101ALI20181001BHJP
【FI】
   F04D29/14
   F04D29/08 C
   F04D29/10 B
   F16J15/324
   F16J15/3272
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-526028(P2016-526028)
(86)(22)【出願日】2014年6月6日
(65)【公表番号】特表2016-538453(P2016-538453A)
(43)【公表日】2016年12月8日
(86)【国際出願番号】US2014041214
(87)【国際公開番号】WO2015069324
(87)【国際公開日】20150514
【審査請求日】2017年5月29日
(31)【優先権主張番号】14/072,891
(32)【優先日】2013年11月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】コンラッド、ジョン、ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】ペトロスキー、ライマン、ジェイ
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−511680(JP,A)
【文献】 特開平08−233139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/14
F04D 29/08
F04D 29/10
F16J 15/324
F16J 15/3272
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インペラがモータに、当該モータと当該インペラとの間に回転自在に支持された回転軸(34)を介して連結されたポンプ(14)であって、
当該モータと当該インペラとの間の当該回転軸の周りにはシールハウジング(32)が介在し、当該シールハウジング(32)は当該回転軸を取り囲む運転停止シール(170)を有し、当該運転停止シール(170)は当該回転軸の回転が減速するか停止した後、当該回転軸を取り囲む環状部(174)の流体が当該運転停止シールを介して漏洩するのを防止し、当該運転停止シールは、
対向端部を有し、内径が当該環状部(174)の一部を画定し、当該回転軸の回転中は当該内径が当該回転軸から離隔するように当該回転軸(34)を取り囲む拘束自在の割りリング(172)と、
当該回転軸の通常動作時は当該割りリング(172)の当該対向端部間に位置して、当該対向端部間に環状空間を維持し、当該流体の温度が所定温度を超えて上昇すると当該対向端部間から離脱して、当該割りリングが当該環状部(174)の一部を狭窄または実質的に封止する拘束状態になるように動作可能なスペーサ(176)と、
当該流体の温度が当該所定温度を超えて上昇すると当該スペーサ(176)を当該割りリング(172)の当該対向端部間から離脱させ、当該割りリングを拘束状態にして当該環状部(174)の一部を狭窄または実質的に封止できるアクチュエータ(184)とより成り、当該アクチュエータ(184)は、
軸方向部分を有するシリンダ(190)と、
当該シリンダ内で軸方向に移動可能なピストン(186とを有し、当該ピストンの周りで当該シリンダの上端部(192)と下端部(196)とが密封されており
当該アクチュエータ(184)はさらに、
当該ピストン(186)の下端部から延びて当該シリンダの下部開口部を貫通し、一方の端部が当該スペーサ(176)に結合されたピストン棒(194)と、
当該スペーサ(176)が当該割りリング(172)の当該対向端部間に位置するとき、当該ピストン(186)と当該シリンダの上端部(192)との間の当該シリンダ(190)の上部内の空間を占めるキャビティと、
当該ピストン(186)と当該キャビティ(192)の当該上端部との間の当該キャビティ内の空間の少なくとも一部を占める可融性リンク(188)であって、所定温度において変形または状態変化することにより当該キャビティ内への当該ピストンの移動を可能にする可融性リンクと、
当該ピストン(186)の下端部と当該シリンダ(196)の当該下端部との間に位置して、当該ピストンを当該可融性リンク(188)に対して付勢するばね(202)とを具備し、当該可融性リンクが状態変化または変形すると当該ピストンは当該シリンダ(192)の当該上端部の方へ移動して、当該スペーサ(176)を当該割りリング(172)の当該対向端部間から離脱させることを特徴とするポンプ(14)。
【請求項2】
前記ばね(202)が波形ばねである、請求項1のポンプ(14)。
【請求項3】
前記波形ばね(202)が縦列配置された多数のリーフ(200)を有する、請求項2のポンプ(14)。
【請求項4】
前記スペーサ(176)が実質的に前記割りリング(172)の前記対向端部間にある時に、前記ばね(202)は実質的に完全圧縮状態にある、請求項1のポンプ(14)。
【請求項5】
前記シリンダ(190)の前記下方開口部付近であって、前記ピストンが前記キャビティ内へ移動し始める直前の時点で前記ピストン棒が前記シリンダ(190)の前記下部開口部に対向する位置において、前記ピストン棒(194)の直径(198)が細くなっている、請求項1のポンプ(14)。
【請求項6】
前記可融性リンク(188)が実質的におおよそ華氏280度(138℃)と華氏390度(198℃)の間の融点を有する材料から作られている、請求項1のポンプ(14)。
【請求項7】
前記ピストン(186)を貫通する流路(210)が設けられている請求項1のポンプ(14)であって、当該流路は、状態変化または変形する前の前記可融性リンクは通過させないが、前記可融性リンク(188)が状態変化または変形して流体になると、前記キャビティから前記ピストンの反対側への当該流体の通過を許容して、前記ピストンが前記キャビティ内へ移動できる空間を提供する大きさであることを特徴とするポンプ(14)。
【請求項8】
インペラがモータに、当該モータと当該インペラとの間に回転自在に支持された回転軸(34)を介して連結され、当該モータと当該インペラとの間の当該回転軸の周りに介在するシールハウジング(32)が当該回転軸の軸方向部分を取り囲むポンプ(14)の運転停止シール(170)であって、当該運転停止シールは当該回転軸の回転が減速するか停止した後、当該回転軸を取り囲む環状部(174)の流体が当該運転停止シールを介して漏洩するのを防止し、当該運転停止シールは、
対向端部を有し、内径が当該環状部(174)の一部を画定し、当該回転軸が当該ポンプに取り付けられて回転中は当該内径が当該回転軸から離隔するように当該回転軸(34)を取り囲む拘束自在の割りリング(172)と、
当該回転軸の通常動作時は当該割りリング(172)の当該対向端部間に位置して、当該対向端部間に環状空間を維持し、当該流体の温度が所定温度を超えて上昇すると当該対向端部間から離脱して、当該割りリングが当該環状部(174)の一部を狭窄または実質的に封止する拘束状態になるように動作可能なスペーサ(176)と、
当該流体の温度が当該所定温度を超えて上昇すると当該スペーサ(176)を当該割りリング(172)の当該対向端部間から離脱させ、当該割りリングを拘束状態にして当該環状部(174)の一部を狭窄または実質的に封止できるアクチュエータ(184)とから成り、当該アクチュエータ(184)は、
軸方向部分を有するシリンダ(190)と、
当該シリンダ(190)内で軸方向に移動可能なピストン(186)とを有し、当該ピストンの周りで当該シリンダの上端部(192)と下端部(196)とが密封されており
当該アクチュエータ(184)はさらに、
当該ピストン(186)の下端部から延びて当該シリンダの下部開口部を貫通し、一方の端部が当該スペーサ(176)に結合されたピストン棒(194)と、
当該スペーサ(176)が当該割りリング(172)の当該対向端部間に位置するとき、当該ピストン(186)と当該シリンダの上端部(192)との間の当該シリンダ(190)の上部内の空間を占めるキャビティと、
当該ピストン(186)と当該キャビティ(192)の当該上端部との間の当該キャビティ内の空間の少なくとも一部を占める可融性リンク(188)であって、所定温度において変形または状態変化することにより当該キャビティ内への当該ピストンの移動を可能にする可融性リンクと、
当該ピストン(186)の下端部と当該シリンダ(196)の当該下端部との間に位置して、当該ピストンを当該可融性リンク(188)に対して付勢するばね(202)とを具備し、当該可融性リンクが状態変化または変形すると当該ピストンは当該シリンダ(192)の当該上端部の方へ移動して、当該スペーサ(176)を当該割りリング(172)の当該対向端部間から離脱させることを特徴とする運転停止シール(170)。
【請求項9】
前記シリンダ(190)の前記下部開口部付近であって、前記ピストンが前記キャビティ内へ移動し始める直前の時点で前記ピストン棒が前記シリンダ(190)の前記下部開口部に対向する位置において、前記ピストン棒(194)の直径(198)が細くなっている、請求項8の運転停止シール(170)。
【請求項10】
前記ピストン(186)を貫通する流路(210)が設けられている請求項8の運転停止シールであって、当該流路は、状態変化または変形する前の前記可融性リンクは通過させないが、前記可融性リンク(188)が状態変化または変形して流体になると、前記キャビティから前記ピストンの反対側への当該流体の通過を許容して、前記ピストンが前記キャビティ内へ移動できる空間を提供する大きさであることを特徴とする運転停止シール。
【請求項11】
アクチュエータ(184)であって、
軸方向部分を有するシリンダ(190)と、
当該シリンダ(190)内で軸方向に移動可能なピストン(186)とを有し、当該ピストンの周りで当該シリンダの上端部(192)と下端部(196)とが密封されており
当該アクチュエータ(184)はさらに、
当該ピストン(186)の下端部から延びて当該シリンダの下部開口部を貫通し、一方の端部が作動される機構(176)に結合されたピストン棒(194)と、
作動される当該機構(176)が非作動状態の時、当該ピストン(186)と当該シリンダの上端部(192)との間の当該シリンダ(190)の上部内の空間を占めるキャビティと、
当該ピストン(186)と当該キャビティ(192)の当該上端部との間の当該キャビティ内の空間の少なくとも一部を占める可融性リンク(188)であって、所定温度において変形または状態変化することにより当該キャビティ内への当該ピストンの移動を可能にする可融性リンクと、
当該ピストン(186)の下端部と当該シリンダ(196)の当該下端部との間に位置して、当該ピストンを当該可融性リンク(188)に対して付勢するばね(202)とを具備し、当該可融性リンクが状態変化または変形すると当該ピストンは当該シリンダ(192)の当該上端部の方へ移動して当該機構(176)を作動させることを特徴とするアクチュエータ(184)。
【請求項12】
前記ばね(202)が波形ばねである、請求項11のアクチュエータ(184)。
【請求項13】
前記波形ばね(202)が縦列配置された多数のリーフ(200)を有する、請求項12のアクチュエータ(184)。
【請求項14】
前記機構(176)が非作動状態の時、前記ばね(202)が実質的に完全圧縮状態にある、請求項11のアクチュエータ(184)。
【請求項15】
前記シリンダ(190)の前記下部開口部付近であって、前記ピストンが前記キャビティ内へ移動し始める直前の時点で前記ピストン棒が前記シリンダ(190)の前記下部開口部に対向する位置において、前記ピストン棒(194)の直径(198)が細くなっている、請求項11のアクチュエータ(184)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2013年8月20日に出願された「Pump Seal With Thermal Retracting Actuator」と題する特許出願第13/970,899号に関連する。
本発明は概して回転軸のシールに関し、詳細には遠心ポンプの熱動シール、さらに詳細には、かかるシールの新型熱動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
加圧水型原子力発電所では、原子炉冷却系により原子炉炉心から蒸気発生器へ熱を移送して蒸気を発生させる。蒸気はその後、有用な仕事を発生させるためのタービン発電機の駆動に使用される。原子炉冷却系は、各々が原子炉炉心に接続された、蒸気発生器と原子炉冷却材ポンプとを有する複数の冷却ループより成る。
【0003】
原子炉冷却材ポンプは通常、例えば華氏550度(280℃)、約2,250psia(155バール)の高温高圧下で、多量の原子炉冷却材を移動させるように設計された垂直単段遠心ポンプである。このポンプの基本構造は大まかに、下から上へ向かって、液圧部、軸シール部およびモータ部の3つの部分より成る。下方の液圧部には、インペラがポンプ軸の下方端部に装着され、このインペラはポンプケーシング内で動作して原子炉冷却材をそれぞれのループに圧送し循環させる。上方のモータ部は、ポンプ軸を駆動するよう結合されたモータを有する。中間の軸シール部は、下方の一次シール組立体(ナンバーワン・シール)、中間の二次シール組立体および上方の三次シール組立体という3つの縦続シール組立体より成る。これらのシール組立体は、ポンプ軸の上端部近くで当該軸と同心的に配置され、通常の運転時にポンプ軸に沿って格納空間へ漏洩する原子炉冷却材の量を最小限に抑えるように協働する。先行技術として公知のポンプ軸シール組立体の代表例は、米国特許第3,522,948号、3,529,838号、3,632,117号、3,720,222号および4,275,891号に記載されている。
【0004】
定常ポンプ圧力境界と回転軸との界面を機械的に密封するポンプ軸シール組立体は、過大な漏洩なしに高いシステム圧力(約2,250psi(155バール))を閉じ込める能力を備える必要がある。3つのシール組立体は、その縦続構成により圧力を段階的に分圧する。これら3つの機械式ポンプシール組立体は、漏洩制御式シールであり、各段階の制御漏洩量を最小限に抑えると共に、一次冷却系からそれぞれのシールリークオフポートへの原子炉冷却材の漏洩が過大にならないようにする。
【0005】
ポンプシール組立体は通常、当該シール組立体のところに冷流体を注入するか、一次流体をシール組立体へ到達する前に冷却する熱交換器を使用することにより、一次冷却系温度より十分に低い温度に維持される。これらのシステムに理論上想定される故障が発生すると、当該シール組立体が高温に晒され、シール組立体の制御漏洩量が劇的に増加する可能性が高くなる。原子炉炉心内の原子燃料冷却能力が全て喪われる原因が全交流電源喪失にある場合、補給用ポンプの駆動電力がないためシールからの漏洩液は冷却系に復帰できない。漏洩を制御しても補給手段がなければ、原子炉炉心が原子炉冷却材から露出して炉心損傷に至るという仮説的事態が発生する可能性がある。
【0006】
したがって、燃料を冷却する能力が全て喪われ、それと同時に補給用ポンプの能力が喪われた場合に標準的なシール組立体をバックアップする効果的な方法が必要である。さらに、かかるバックアップシールは、電源喪失または他の原因による補給用ポンプ能力の喪失が発生した際に、軸を実質的に密封して漏れが生じないように動作できるのが好ましい。
【発明の概要】
【0007】
上記目的は、ポンプ、コンプレッサなどの回転機器が減速するか停止するとき軸シール部を介する冷却材の通常の漏洩量を制限するように設計された、本発明による熱動式運転停止シールにより達成される。本発明の運転停止シールは、回転軸とハウジングとの間に狭い流れ環状部を有する任意の装置の封止に有用である。
【0008】
運転停止シールは、割りリングが、(i)通常運転時に軸との間に環状部を残して当該軸を取り囲み、(ii)当該軸の回転が所定の速度以下に減速するか停止すると当該軸に対して拘束状態になるように設計されている点に特徴がある。この割りリングの対向端部は、通常のオンライン運転時、軸の回転中、スペーサにより離隔関係に維持される。軸が減速するか回転を停止し、ハウジング内の温度が上昇すると、スペーサが割りリングの対向端部から離脱するため、割りリングの対向端部が互いに接近して軸を拘束する状態となり、環状部を介する冷却材の漏洩が実質的に遮断される。
【0009】
運転停止シールはまた、柔軟なポリマーシールリングを具備するのが好ましい。このポリマーシールリングは、割りリングが環状部を介する冷却材の漏洩を遮断すると、ハウジング内の圧力が上昇するため回転軸に押し付けられる。
本発明は特に、環状部の流体温度が所定値を超えると、スペーサを割りリングの対向端部間から離脱させて、当該割りリングを拘束状態にし、環状部の割りリングに覆われた部分が狭窄または実質的に封止されるようにする改良型アクチュエータを備えたシールを提供する。アクチュエータは、内部をピストンが軸方向に移動可能な軸方向部分、上端部およびピストンの周りを封止する下端部を有するシリンダを備えている。ピストン棒が当該ピストンの下端部から延びて当該シリンダの下部開口部を貫通し、当該ピストン棒の一方の端部が当該スペーサに結合している。当該スペーサが当該割りリングの対向端部間に位置するとき、キャビティが当該ピストンと当該シリンダの上端部との間の当該シリンダの上部内の空間を占める。可融性リンクが当該ピストンと当該キャビティの上端部との間の当該キャビティ内の空間の少なくとも一部を占める。当該可融性リンクは、所定の温度で変形または状態変化して、当該キャビティ内への当該ピストンの移動を可能にするように選択される。 当該ピストンの下端部と当該シリンダの下端部との間には、当該ピストンを当該可融性リンクに対して付勢するばねが配置されている。当該アクチュエータ組立体は、当該可融性リンクが状態変化または変形すると当該ピストンが当該シリンダの上端部の方へ移動し、当該スペーサを当該割りリングの対向端部間から離脱させる構造である。
【0010】
一実施態様において、当該ばねは波形ばねである。当該波形ばねは、高位置と低位置がそれぞれ整列するように縦列配置された多数のリーフから成るのが好ましい。スペーサが実質的に割りリングの対向端部間にある時に、ばねは実質的に圧縮状態にある。
【0011】
別の実施態様において、ピストン棒の直径は、シリンダの開口部付近であって、ピストンがキャビティ内へ移動し始める直前の時点でピストン棒がシリンダの開口部に対向する位置のところで細くなっている。可融性リンクは、実質的に、おおよそ華氏280度(138℃)と華氏390度(198℃)の間の融点を有する材料から作られているのが好ましい。
【0012】
本発明はまた、上述の思想を内包する運転停止シールおよびアクチュエータも企図している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の詳細を、好ましい実施態様を例にとり、添付の図面を参照して以下に説明する。
【0014】
図1】蒸気発生器と原子炉冷却材ポンプが原子炉に直列接続されて閉ループ系を形成する従来の原子炉冷却系の1つの冷却ループを示す概略図である。
【0015】
図2】原子炉冷却材ポンプの軸シール部の切欠き斜視図であり、シールハウジングと、シールハウジング内でポンプ軸を取り囲むように配置された下方の一次シール組立体、中間の二次シール組立体および上方の三次シール組立体とを断面図で示す。
【0016】
図3図2の原子炉冷却材ポンプのシールハウジングおよびシール組立体の一部を示す拡大断面図である。
【0017】
図4】本発明を利用可能な軸シール装置の断面図であり、図2および図3に示す下方の一次シールを拡大して示す。
【0018】
図5図4に示す一次シール挿入材の拡大部分であり、ポンプ軸の一部と、熱動機械式ピストンによりスペーサを割りリングから離脱させる運転停止シールとを斜線で示す。
【0019】
図6図5に示すアクチュエータの代替となる、本発明の原理を使用したアクチュエータの一実施態様の拡大側面断面図である。
【0020】
図7図6に示す実施態様の縦断面図であり、シールハウジング内に支持された状態を示す。
【0021】
図8】本発明に基づく熱動機械式ピストンの第2の実施態様の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の説明において、同一参照記号はいくつかの図面を通して同一のまたは対応する部品を指すものである。また、以下の説明において、前方、後方、左、右、上方へ、下方へなどの方向を示す用語は便宜的に使用する用語であって、限定的に解釈すべきでないことを理解されたい。

先行技術の原子炉冷却ポンプ
【0023】
本発明を理解する上で、本発明が適用される1つの環境について理解することが有用である。ただし、当然のことながら、本発明は他にも多くの用途がある。図1は、従来の原子炉冷却系の複数の原子炉冷却材ループ10のうちの1つを示す概略図である。冷却材ループ10は、原子炉炉心16と直列に接続されて閉ループ冷却系を形成する蒸気発生器12および原子炉冷却材ポンプ14を含む。蒸気発生器12は、その入口プレナム20および出口プレナム22と連通する一次伝熱管18を含む。蒸気発生器12の入口プレナム20は原子炉炉心16の出口と流れ連通関係を形成するように接続されており、閉ループ系の流路24(通称はホットレグ)に沿って当該炉心から高温の冷却材を受け取る。蒸気発生器12の出口プレナム22は、閉ループ系の流路26に沿って原子炉冷却材ポンプ14の入口部側と流れ連通関係に接続されている。原子炉冷却材ポンプ14の出口圧力側は、原子炉炉心16の入口と流れ連通関係を形成するよう接続され、比較的低温の冷却材を閉ループ系のコールドレグの流路28に沿って原子炉炉心へ送り込む。
【0024】
冷却材ポンプ14は、冷却材を高圧で圧送して閉ループ系中を循環させる。詳細には、原子炉炉心16から出た高温冷却材が、蒸気発生器12の入口プレナム20へ流入し、入口プレナムと連通関係の伝熱管18を通される。高温の冷却材は、伝熱管18を流れる間、従来型手段(図示せず)を介して蒸気発生器12へ供給される低温の給水と熱交換関係にある。給水は加熱され、その一部が蒸気に変換されてタービン発電機(図示せず)の駆動に使用される。熱交換により温度が低下した冷却材はその後、冷却材ポンプ14を介して原子炉炉心16へ再循環される。
【0025】
原子炉冷却材ポンプ14は、多量の原子炉冷却材を高温高圧で移動させて閉ループ系中を循環させる能力を持つ必要がある。蒸気発生器12からポンプ14へ流れる冷却材は、熱交換による冷却のため、温度が原子炉16から蒸気発生器12へ流れる熱交換前の温度より実質的に低くなっているが、それでも通常は華氏約550度(288℃)と、比較的高い。液状の冷却材をこのような比較的高温に維持するために、当該系統は注入ポンプ(図示せず)により加圧されており、その動作圧力は約2,250psia(155バール)である。
【0026】
図2、3からわかるように、先行技術の原子炉冷却材ポンプ14は一般的に、ポンプハウジング30の一端がシールハウジング32で終端する構造である。このポンプのポンプ軸34はポンプハウジング30の中心を延びて、シールハウジング32内に封止され、回転自在に装着されている。図示しないが、ポンプ軸34の底部はインペラに連結される一方、その頂部は高馬力の誘導型電気モータに連結されている。モータが軸34を回転させると、ポンプハウジング30の内部36にあるインペラにより加圧状態の原子炉冷却材が原子炉冷却材系を流れる。この加圧状態の冷却材は軸34に上向きの静水圧負荷を印加するが、それはシールハウジング32の外側部分が周囲大気に取り囲まれているからである。
【0027】
ポンプハウジングの内部36とシールハウジング32の外側との間に2,250psia(155バール)の圧力バウンダリを維持しながらポンプ軸34をシールハウジング32内で自由に回転させるために、シールハウジング32内のポンプ軸34の周りの図2および図3に示す位置に、下方の一次シール組立体38、中間の二次シール組立体40および上方の三次シール組立体42が縦続配置されている。圧力封止(約2,200psi(152バール))の大部分を担う下方の一次シール組立体38は非接触式静水圧タイプであるが、中間の二次シール組立体40および上方の三次シール組立体42は接触式または擦過式の機械タイプである。
【0028】
ポンプ14のシール組立体38、40、42はそれぞれ、通常は、ポンプ軸34と共に回転するように当該軸に装着された環状ランナー44、46、48と、シールハウジング32内に固定的に装着された環状シールリング50、52、54とを含む。各ランナー44、46、48およびシールリング50、52、54はそれぞれ、対向する上方端面56、58、60および下方端面62、64、66を有する。下方の一次シール組立体38のランナー44およびシールリング50の対向端面56、62は常態では互いに接触せず、フィルム状の流体がそれらの間を流れる。他方では、中間の二次シール組立体40のランナー46およびシールリング52の対向端面58、64、ならびに上方の三次シール組立体42のランナー48およびシールリング54の対向端面60、66は、常態では互いに接触するかまたは擦れ合う。
【0029】
一次シール組立体38は常態ではフィルムに載るモードで動作するため、シールハウジング32とそれに回転自在に装着された軸34との間の環状空間においてリークオフ(漏洩)する冷却用流体を取り扱うための何らかの構成を設ける必要がある。したがって、シールハウジング32には一次リークオフポート69があり、一方、リークオフポート71は、二次シール組立体40および三次シール組立体42からの冷却材流体のリークオフを受け入れる。
【0030】
図4は、図2および3に示すタイプのナンバーワン・シール(下方の一次シール)領域のシールハウジングの断面図であり、ナンバーワン・シールの動作および本発明との関連性のさらなる理解に資するものである。図示の構造物は、内部に圧力チェンバ35を形成する環状壁33を備えたハウジング32と、ハウジング32内に回転自在に装着された軸34と、シールランナー組立体44と、ハウジング32内に位置するシールリング組立体50とより成る。前述したように、軸34は適当なモータ(図示せず)により駆動され、加圧系内で冷却材を循環させる遠心ポンプ(図示せず)のインペラの駆動に使用される。注入水は、ポンプが発生するよりも高い圧力でチェンバ35へ供給される。ランナー組立体44は、環状ホルダー70および環状シールプレート72より成る。同様に、シールリング組立体50は、ホルダー74および環状フェイスプレート76より成る。
【0031】
ホルダー70は軸34と共に回転するが、それはホルダーが、軸34上の肩部80と係合し、スリーブ82により当該軸に固定された環状支持体78上に装着されているからである。スリーブ82は、軸34と、ほぼL字形断面の支持体78の上方に延びる脚部84との間で当該軸34上に組み込まれている。本発明の本実施態様を、ポンプ軸上にスリーブを使用するポンプに利用されるものとして説明するが、本発明はスリーブを使用しないポンプ軸にも等しく利用可能であることを理解されたい。ホルダー70上の肩部86は脚部84の上端部に載っており、スリーブ82上の肩部88はホルダー70を支持体84上に保持する。ピン90はスリーブ82の凹部92に押し込まれてホルダー70の軸方向スロット94と係合する。スリーブ82および支持体78を軸34と共に回転させるナット(図示せず)により、軸方向のクランプ力がスリーブ82および支持体78にかかる。このピン90により、軸34と共に回転するスリーブ82と共に、ホルダー70が回転する。支持体78と軸34との間および支持体78とホルダー70との間に、それぞれOリングシール96、98が設けられる。ホルダー70とフェイスプレート72との界面102にもOリングシール100が設けられる。
【0032】
フェイスプレート72は、ホルダー70が作られる材料と実質的に同じ熱膨張係数を有する耐腐食性および耐侵食性材料で構成され、ホルダー70は大きい弾性係数を有する。同様に、フェイスプレート76は、弾性係数が大きいホルダー74の材料と実質的に同じ熱膨張係数を有する耐腐食性および耐侵食性材料で構成される。適当な材料の例として炭化物類およびセラミック類がある。ホルダー74とフェイスプレート76との界面106にはOリングシール104が設けられる。
【0033】
ホルダー74は、ほぼL字形断面の環状シールリング挿入材110の下方に延びる脚部108に移動自在に装着されている。挿入材110は、ハウジング32内に押えねじ112により保持される。挿入材110とハウジング32との界面にはOリングシール114が設けられている。同様に、ホルダー74と挿入材110の脚部108との界面120にはOリングシール118が設けられている。挿入材110に押入されるピン122は、ホルダー74の回転を阻止する。ピン122はホルダー74のウエル124内に延びるが、ウエル126の壁とピン122との間には、ホルダー74の軸方向移動を可能にしつつ回転を制限するのに十分な間隙が存在する。
【0034】
フェイスプレート76は、保持リング130、クランプリング132、ロックリング134、複数の押えねじ136、およびロックリング134とクランプリング132との間の押えねじ136上に装着された皿ばね138を含むクランプ手段128により、ホルダー74に固着される。押えねじ136は、保持リング130、クランプリング132、皿ばね138を貫通し、ロックリング134に螺着される。ホルダー74の界面106には凹部140が設けられ、その界面上に、フェイスプレート76の界面の外径より小さい外径で環状の支点142が提供される。保持リング130はリッジ144を有する内向きに延びるフランジを備えており、このリッジ144は、支点142を越えて延びるフェイスプレート76の部分146と係合する。クランプリング132は、ホルダー74のフェイスプレート150と係合するリッジ148を備えた内向きに延びるフランジを有する。したがって、押えねじ136を締めてクランプリング132および保持リング130を互いに近付けようとすると、フェイスプレート76上に支点142を中心とする片持ちばり効果を及ぼす力が発生する。クランプ時、皿ばね138が部分的に圧縮され、フェイスプレート76がこのクランプ力により変形する。
【0035】
フェイスプレート72は、フェイスプレート76につき説明したのと同様な態様でクランプ手段151によりホルダー70に固着される。ただし、ホルダー70の界面102上の支点152は、ホルダー74上の支点142よりもフェイスプレート72の外径に近い所に位置する。したがって、フェイスプレート72にかかるクランプ力は、フェイスプレート76上に発生するような支点152を中心とするフェイスプレートの大きな変形を発生させない。所望であれば、支点142および152を、それぞれに対応するフェイスプレートに対して同じ場所に配置することが可能である。
【0036】
前述したように、シールリング組立体50は、軸34およびシールランナー組立体44に関して軸方向に限られた運動が可能なように装着される。また、シールリング組立体50の相対的な運動は、シールリングホルダー74のウエル124に緩く嵌合する回転阻止用ピン122により制限される。フェイスプレート76上のシール表面154は、重力により、フェイスプレート72の対向するシール表面156の方に付勢される。
【0037】
軸34により駆動されるポンプの動作について、シールリングホルダー74の表面158、160は、高圧の圧力チェンバ35の全圧力に晒される。高圧チェンバ35と、スリーブ82に隣接する環状低圧領域162との間に圧力障壁を設けるのが望ましい。シールリング組立体はこの圧力障壁手段として利用されるが、圧力チェンバ35から、シールプレート76、72上のそれぞれの対向シール表面154、156の間に設けられたシールギャップ164を介して、領域162へ制御量の流体が漏洩できるようにする。
【0038】
動作時に、軸方向に移動可能なシールリング組立体50の対向する表面にかかる圧力に応じて、当該シールリング組立体の平衡位置が維持される。ギャップ164内の流体の厚み、すなわちギャップ164を介する漏洩量は、ギャップ164の形状により決まる。
【0039】
シールギャップ164が変化してもシールリング組立体50とランナー組立体44の相対的位置を自己復元させるために、高圧の端縁部166からシールの対向末端間の位置まで厚さが減少する流体流路が設けられている。さらに詳細には、図示の構造において、厚さが減少する流体流路は、外方端縁部166とシール面154上の168に位置する中間同心円との間を延びる。
【0040】
この構造に示されるように、厚みが減少する流路は、同心円168とフェイスプレート76の外方端縁部166との間において、表面154をフェイスプレート72の対向表面156からわずかに離れるようにテイパーさせることにより形成する。図示の表面154と表面156との間の角度は誇張されている。この構成または構造は、テイパー付き面シールとして知られている。このタイプのシールの動作は、1967年10月17日にErling Frischへ付与された米国特許第3,347,552号に完全に記載されている。
【0041】
この運転停止シールは、本発明の譲受人に譲渡され、2013年1月22日に発行された米国特許第8,356,972号に完全に説明されている。同特許に記載の運転停止シールは、図5〜7に示すように、シール冷却能力を喪失した場合に、ポンプの軸34とシール組立体38、40、42との間の当該軸34に沿う過大な漏洩を阻止するように作動可能なバックアップ安全装置または運転停止装置として、別のシール170をポンプ14に設けている。図5に示すように、この運転停止シール170は、一次シール(ナンバーワン・シール)38の挿入材110の環状開口に切削した溝に配置する。この運転停止シールは、(i)割りリング172が通常運転時に軸34との間に環状部174を残して当該軸34を取り囲み、(ii)シール冷却能力喪失後に当該軸が有意に減速するか回転を停止すると当該割りリングが当該軸34に対して拘束状態になるように設計された点に特徴がある。割りリング172は軸方向に割れた不連続単片リング部材であり、その対向端部はポンプの通常運転時、スペーサ176により離隔関係に維持される。図5において、割りリング172の対向端部は“さねはぎ”に切削され、割りリングの端部が重なり合うと舌部が溝内に収まる構造である。別の実施態様では、対向端部は突合せまたは半重ね斜め継ぎによって重なり合う。スペーサ176は、図示のようにギャップ内にあり、運転時に割りリング172の対向端部が軸34上で閉じないようにして、環状部174を開いた状態に保ち制御量の漏洩が生じるようにする。図5に示す実施態様に従って、運転停止シールは、シールの温度がシール冷却能力喪失の結果として上昇し、さらに好ましくはポンプ軸の回転が減速または停止すると、作動する。スペーサは、温度の上昇(回転軸の有意な減速もしくは回転停止、または他の任意の理由による)に応答して割りリング172の対向端部から離脱する。このため、割りリングの対向端部が互いに接近して、対向端部が軸34に対し拘束状態となり、流れ環状部174を介する冷却材の漏洩が封じられる。割りリングおよび軸(または軸上にスリーブを使用する場合は軸スリーブ)をかじり傷に強い材料で形成するのが好ましく、そうすると、回転中の軸上で作動しても、封止表面間に漏洩流路を開く楔として働くことがあるかじり傷の玉が形成されない。割りリングおよび軸の両方に17−4ステンレス鋼のような材料を用いると、首尾よく動作することが判明している。割りリング172と中実な保持シールリング180との間に、当該割りリングに当てて柔軟なポリマー製シールリング178を軸34の周りに配置するのが好ましい。柔軟なポリマー製シールリング178は、割りリングが環状部174を介する冷却材の漏洩を制限する時にハウジングの圧力上昇により軸に押し付けられるため、封止能力の高いシールが形成される。
【0042】
図5は、図4の原子炉冷却材ポンプに取り付けられた前述したタイプの運転停止シール170を示す概略図である。図5の運転停止シールは、シール冷却能力喪失後、ポンプ軸34の減速時または回転停止時に作動するよう設計されている。この運転停止シールは、ポンプハウジング内に位置して軸34を取り囲む。図2〜4に示すタイプの原子炉冷却材ポンプの場合、運転停止シールを収容できるように、ナンバーワン・シールの挿入材を、頂部フランジの内径部分を一部切削することにより改造することが可能である。この運転停止シール170は、作動されるまでは、改造前にナンバーワン・シールの挿入材が占めていた空間内に実質的に完全に収まるため、当該シールと軸34との間の環状部174には実質的な変化がない。このようにして、環状部174を軸34に沿って流れる冷却材の流れは、回転機器の通常運転時に実質的に遮られることはない。
【0043】
図5に示す運転停止シール170は、割りリング172の対向端部を開いた状態に保つ後退自在のスペーサ176により構成される。後退自在のスペーサ172は、図6に関して後述するピストン186のような熱応答機械式装置184により作動される。スペーサ176が割りリング172の端部から後退させられると、割りリング172はぱちんと閉じて軸34の周りで拘束状態となり、改造されたナンバーワン・シール挿入材110内に保持されたままである。割りリング172は波形ばね182上にあり、当該ばねは割りリング172をシールリング178に対して押し上げ、当該シールリングは保持リング180に押圧される。環状部174を介する流れが遮られることにより生じる圧力降下もまた、割りリング172およびシールリング178を押し上げるため、全ての封止表面間で緊密な封止が得られる。割りリング172は波形ばね182上にあり、当該ばねは割りリング172を一次シールリング178に対して押し上げて、初期の封止接触を生じさせるため、割りリング172全体にかかる圧力降下が一次シールリング178にも作用する。
【0044】
図6および図7に示す本発明のアクチュエータの一実施態様は、構造が単純で、長期的な(例えば9年にわたる)信頼性を付与するものである。図6はアクチュエータの断面図で、図7図6の実施態様をシールハウジングの一部の断面内で支持された状態で示す。特許出願第13/970,899号に記載された以前のアクチュエータと同様に、本実施態様も、一方の端部192が封止され、反対側の端部にピストン棒194が貫通する開口部のある円筒形ハウジング190を使用している。ピストン棒194の一方の端部はスペーサ176に結合されており、ピストン棒がハウジング190内を後退すると、スペーサを割りリングの対向端部の間から離脱させる。ピストン棒194の反対側の端部はピストンヘッド186に結合されており、ピストンヘッド186とハウジング192の封止端部との間には可融性リンク188が介在している。本実施態様において、可融性リンクは、所定の温度(例えば融点がおおよそ華氏280度(138℃)と華氏390度(198℃)の間)で溶融する性質を持つものとして選択される材料(例えばBi/Sn合金またはSn/Zn合金)から作られている。ばね202は例えば波形ばね、より好ましくは、ハウジング190の下部とピストンヘッド186との間に縦列で垂直に積層した複数の波形ばね板200であり、スペーサ176が割りリングの対向端部間にある時に圧縮状態である。その状態で、このばねは、ピストンヘッド186を固体状態の可融性リンク188に対して付勢するため、スペーサは割りリングの対向端部の間に維持される。
【0045】
所定温度に達すると、可融性リンク188の材料が溶融してピストンヘッドの側面を流れ落ちることにより、ピストンヘッド186はばね202の力を受けて上昇し、スペーサ176を割りリング(図6には示さない)の対向端部の間から離脱させることができる。ばね202は、保持クリップ206とシール196によって定位置に保持される座金204の上に着座している。シール196は、RTVシリコーンゴム製とすることができ、水がハウジング190内のピストンチェンバに入らないように封止する。ピストン棒194は、ピストンが移動し始める時点でハウジングの開口部に隣接するピストン棒の遷移部198のところで細くなっており、ピストン棒194の並進時に好ましくない異物を取り込まないための間隙が提供される。本実施態様は所定温度で溶融する可融性リンクを使用しているが、本実施態様で例示する可融性リンクの代わりに、別の態様で状態が変化するか変形可能となる別の材料を使用してもよい。ただし、所定温度における材料の状態変化によって、ピストンヘッド186がスペーサ176を割りリングから離脱させるに十分な距離上昇できるものでなければならない。また、本願の特許請求の範囲から逸脱することなく、他のタイプのばねを使用することもできる。
【0046】
図8に示すのは、本発明の熱動アクチュエータ184の第2の実施態様である。いくつかの図面の中で使用している同じ参照符号は、対応する構成要素を指している。図6および図7に示すアクチュエータ184では、ピストンヘッド186がシリンダ190の内壁から離隔しているため、溶融した可融性リンクがピストン186を伝って反対側へ移動できる空間が存在し、これにより、ピストンがシリンダ内を上昇できる空間が提供されるが、図8に示すピストンヘッド186は、シリンダの内壁の全幅にわたって広がっている。図8のピストンヘッドは、溶解または状態変化した可融性リンクの少なくとも一部をピストンの反対側へ移動可能にする流路210を備えている。ここで言う状態変化とは、所定温度に達した結果、可融性リンクの構成材料が溶融して、液化または気化若しくは当該材料がピストンヘッド上方の上部キャビティからばね202を収容する反対側の下部チェンバへ移動できる順応性を獲得することを意味する。
【0047】
図8に示す実施態様のハウジング190の円筒壁は、最上部を一体的な上端部192によって閉め切られ、また、最下部をねじ溝付きキャップ205によって閉め切られており、キャップ205はOリング207によってシリンダの壁に封止される。キャップ205のピストン棒194が通過できる中央開口部212は、冷却材がばねチェンバへ流入しないようにOリング196により封止されている。他のすべての点において、図8に示す実施態様は、図6および図7に示す実施態様と同様に機能する。
【0048】
本発明の特定の実施態様について詳しく説明してきたが、当業者は、本開示書全体の教示するところに照らして、これら詳述した実施態様に対する種々の変更および代替への展開が可能である。したがって、ここに開示した特定の実施態様は説明目的だけのものであり、本発明の範囲を何らも制約せず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲に記載の全範囲およびその全ての均等物である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8