(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記木質系バイオマスは、オイルパームの幹あるいは/及び前記オイルパームからパーム油の製油工場で発生するパームオイル廃液である請求項1〜6のいずれか一項に記載の木質系バイオマスを用いた固体燃料製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1〜
図4に示すように、本実施形態に係る木質系バイオマスを用いた燃料製造方法は、オイルパームの幹(パーム幹X1)を原料とし、燃料ペレットを製品として製造する。すなわち、本実施形態に係る木質系バイオマスを用いた燃料製造方法は、パーム幹X1から固体燃料の一種である燃料ペレットを製造する固体燃料製造方法である。
【0016】
〔第1実施形態〕
最初に、
図1を参照して本発明の第1実施形態について説明する。
第1実施形態の第1工程である熟成処理S1では、原料であるパーム幹X1を一定時間(熟成期間)に亘って保存することにより熟成させる。パーム幹X1は、周知のように樹液が高濃度の糖液を含むが、伐採後に保存することによって糖液の濃度が徐々に上昇し、ある期間後に糖液の濃度が最大化することが知られている。すなわち、伐採直後のパーム幹X1は、一定の熟成期間を経ることにより糖液濃度が最も高くなる。この熟成処理S1では、糖液濃度が最も高くなるようにパーム幹X1を熟成させ、熟成パーム幹X2を得る。
【0017】
第2工程であるチップ化処理S2(チップ化工程)では、例えば直径30〜60cm、かつ、高さ10m程度の丸太状の熟成パーム幹X2を板状に裁断し、さらに板状の熟成パーム幹X2を例えば最大寸法2.0〜3.0mm程度の原料チップ(パームチップX3)に破砕する。熟成パーム幹X2つまりパーム幹X1は、水分を80%近く含む高含水率の木質系バイオマスであり、よってチップ化処理S2によって得られるパームチップX3も高含水率のチップ材である。なお、チップ化処理S2では、熟成パーム幹X2を板状に裁断するのではなく、直接チップ状に破砕してもよい。
【0018】
第3工程である湿式ミル処理S3(破砕工程)では、上記パームチップX3に所定量の温水X14を添加し、さらに磨り潰すことにより摩砕する。この湿式ミル処理S3に用いる湿式ミル(摩砕機)は、例えば増幸産業(株)製スーパーマスコロイダー(型番:MKZB−100J)であり、円環状の上部グラインダに一定間隔(クリアランス)を隔てて対向すると共に回転自在な下部グラインダを備えている。また、この湿式ミルでは、上記クリアランスが所定範囲かつ所定ピッチで変更自在になっている。
【0019】
この湿式ミル処理S3では、湿式ミルの上方から上部グラインダの中心近傍部位にパームチップX3を導入すると、上部グラインダと下部グラインダとの間でパームチップX3が摩砕されて下部グラインダの外周方向に摩砕物(摩砕済みパームX4)として排出される。摩砕済みパームX4は、スラリー状かつ水切れが良好な固液混合物であるが、パームチップX3の繊維質が十分に残存する状態である。
【0020】
この湿式ミル処理S3において、パームチップX3に対する温水X14の加水量は、例えば重量比で1対2である。また、温水X14の温度は、沸騰温度以下の温度であれば如何なる温度でもよいが、エネルギー効率を考慮するとあまり高い温度は好ましくない。なお、この湿式ミル処理S3では、温水X14に代えて常温水をパームチップX3に添加してもよい。
【0021】
また、湿式ミル処理S3は、連続式バイブロミル(ユーラステクノ株式会社)で行ってもよい。連続式バイブロミルは、粉粒体を滞留させることなく、連続投入及び排出が可能である。
【0022】
第4工程である粗分離処理S4では、例えばロータリースクリーンを分離装置として用いることにより、上記摩砕済みパームX4から比較的小径の固形分を含む液体成分(搾汁液X5)と比較的大径の固形分(搾り滓X6)とが分離される。上記搾汁液X5は、パーム幹X1に含まれる樹液(五炭糖や六炭糖の単糖を主成分とする糖液)と水分とを主成分とする混合液であり、発酵原料として後段のメタン発酵処理S8に供給される。一方、搾り滓X6は、上記樹液を含むと共にパーム幹X1を構成する木質成分(主にセルロース、ヘミセルロース及びリグニン)を主成分とする比較的含水率の高い固形物である。
【0023】
第5工程である脱水処理S5では、所定の脱水機として用いることにより、上記搾り滓X6から液体成分(分離液X7)を脱水して脱水ケーキX8を生成する。上記脱水機は、例えば遠心分離機、スクリュープレスあるいはフィルタープレスである。分離液X7は、上述した樹液(糖液)を含む液体であり、発酵原料として後段のメタン発酵処理S8に供給される。一方、脱水ケーキX8は、上述したようにセルロース、ヘミセルロース及びリグニンを主成分とする木質成分である。
なお、上述した湿式ミル処理S3、粗分離処理S4及び脱水処理S5は、第1実施形態における搾汁工程に相当する。また、上記粗分離処理S4及び脱水処理S5は、第1実施形態における分離工程に相当する。
【0024】
第6工程である乾燥処理S6では、所定の汚泥乾燥機を用いることにより、脱水ケーキX8を乾燥させる。上記脱水ケーキX8は例えば90%程度の含水率であり、乾燥処理S6では、脱水ケーキX8の含水率を例えば50%程度まで低下させた乾燥ケーキX9を生成する。なお、この乾燥処理S6では、乾燥ケーキX9を生成するために必要な熱源として後段の蒸気発生処理S11によって得られた水蒸気X15を用いる。
【0025】
第7工程である成形処理S7では、所定の成形装置を用いることにより、乾燥ケーキX9を所定サイズのペレット状に成型する。すなわち、この成形処理S7では、乾燥ケーキX9に加圧成型処理が施されることによって、乾燥ケーキX9がペレット状に成形されたペレットが生成される。このペレットは、パーム幹X1の木質成分を主成分とするものであり、よって燃料として利用可能な燃料ペレットX10である。
【0026】
第8工程であるメタン発酵処理S8では、上記搾汁液X5及び分離液X7を発酵原料とするメタン発酵によって、メタンガス及び二酸化炭素を主成分とするバイオガスX11を発生する。メタン発酵は、周知のように嫌気性の有機物分解処理、つまり嫌気性微生物であるメタン菌の作用によって有機物を分解することにより、メタンガス及び二酸化炭素を主成分とする消化ガスを発生させる反応系である。
【0027】
なお、このメタン発酵処理S8では、消化液が排液として発生する。この消化液は、メタン発酵処理S8の原料つまり搾汁液X5及び分離液X7の性状によって成分が決まるが、活性汚泥処理によって処理することができる。周知のように、活性汚泥処理は、好気性微生物を用いて排水を処理する手法であり、外部からのエネルギー投入を最小限に抑えることができる排水処理手法である。
【0028】
第9工程である発電処理S9では、上記メタン発酵処理S8によって得られたバイオガスX11を燃料として発電する。すなわち、この発電処理S9では、バイオガスX11を燃料としてガスエンジンまたはガスタービンを作動させることによって発電機を駆動し、電力X12を得る。この電力X12は、加熱処理S10に電源として供給されると共に、加熱処理S10を行う設備以外の設備、例えば湿式ミル処理S3における湿式ミル、粗分離処理S4における分離装置及び/あるいは脱水処理S5における脱水機にも設備電力として供給される。
【0029】
第10工程である加熱処理S10では、上記発電処理S9によって発生した排熱X13との熱交換によって温水X14を生成する。すなわち、発電処理S9では発電機の作動によって排ガスや冷却水が排熱X13として発生するが、この加熱処理S10では、このような排熱X13を熱源として利用することにより、常温の水(例えば水道水)を加熱して温水X14を生成する。この温水X14は、上述したように湿式ミル処理S3に供される。
【0030】
第11工程である蒸気発生処理S11では、上記メタン発酵処理S8によって得られたバイオガスX11を燃料として水蒸気X15を発生させる。すなわち、この蒸気発生処理S11では、バイオガスX11を燃料として例えば貫流ボイラを作動させることにより水蒸気X15を発生させて上記乾燥処理S6に供給する。
【0031】
このような第1実施形態によれば、搾汁液X5及び分離液X7を発酵原料とするメタン発酵で得られたバイオガスX11から水蒸気X15を生成し、水蒸気X15を用いて脱水ケーキX8を固体燃料化するので、外部から投入するエネルギー量をバイオエタノールを製造する従来技術よりも低減することが可能である。
【0032】
〔第2実施形態〕
次に、
図2を参照して本発明の第2実施形態について説明する。
この第2実施形態は、
図2を
図1と比較すると分かるように、第1実施形態における湿式ミル処理S3を2回の湿式ミル処理つまり1次湿式ミル処理S31と2次湿式ミル処理S32とすると共に、脱水処理S5を2回の脱水処理つまり1次脱水処理S51と2次脱水処理S52とし、さらに糖化処理S12を追加した。以下では、重複する説明を避けるために第1実施形態と異なる工程についてのみ説明する。
【0033】
1次湿式ミル処理S31では、第1実施形態の湿式ミル処理S3と同様にパームチップX3の繊維質が十分に残存する状態となるようにパームチップX3を摩砕する。したがって、1次湿式ミル処理S31では、第1実施形態の湿式ミル処理S3と同様な摩砕済みパームX4が得られる。そして、このような摩砕済みパームX4は、次工程である粗分離処理S4によって搾汁液X5と搾り滓X6とに分離される。
【0034】
2次湿式ミル処理S32では、上記1次湿式ミル処理S31とは異なり、搾り滓X6に含まれる繊維質が完全に破壊される程度に搾り滓X6を摩砕する。この2次湿式ミル処理S32によって得られる摩砕済みパームX41は、摩砕済みパームX4よりも粒径の細かい固形分を含むスラリー(固液混合物)である。
【0035】
1次脱水処理S51では、第1実施形態の脱水処理S5と同様に脱水機を用いることにより、上記2次湿式ミル処理S32によって得られた摩砕済みパームX41から分離液X71を脱水して脱水ケーキX81を得る。分離液X71は、第1実施形態の分離液X7と同様にパーム幹X1の樹液(糖液)を含む液体であり、発酵原料としてメタン発酵処理S8に供給される。一方、脱水ケーキX81は、第1実施形態の脱水ケーキX8と同様に木質成分であるが、2次湿式ミル処理S32に起因して粒径が第1実施形態の脱水ケーキX8よりも小さい。
なお、上述した1次湿式ミル処理S31、粗分離処理S4、2次湿式ミル処理S32及び1次脱水処理S51は、第2実施形態における搾汁工程に相当する。また、上記粗分離処理S4及び1次脱水処理S51は、第2実施形態における分離工程に相当する。
【0036】
糖化処理S12では、このような脱水ケーキX81を加水分解することにより可溶化(単糖化)する。すなわち、この糖化処理S12では、例えば酵素糖化法や微生物糖化法に基づいて脱水ケーキX81を加水分解することにより、五炭糖や六炭糖の単糖を生成する。脱水ケーキX81は、木質成分つまりセルロース、ヘミセルロース及びリグニンを主成分とする。この糖化処理S12では、これら主成分のうちセルロース及びヘミセルロースを主に加水分解することにより糖化済み液X16を得る。この糖化済み液X16は、上記単糖が水に溶け込んだ糖化液X17とリグニンを主成分とする固形物とからなる固液混合水である。
【0037】
また、糖化処理S12は、Clostridium thermocellumを用いた微生物糖化法でもよい。特に、本願発明者らは、Clostridium thermocellumとThermoanaerobacter brockiiの共培養系により、グルカン62.5%、キシラン39%の分解が得られることを見出した。そのため、Clostridium thermocellumとThermoanaerobacter brockiiの共培養系により、高い効率で糖化処理を行うことができる。
【0038】
2次脱水処理S52では、第1実施形態の脱水処理S5と同様に脱水機を用いることにより、上記糖化処理S12によって得られた糖化済み液X16から糖化液X17を脱水して脱水ケーキX82を得る。糖化液X17は、上述したように五炭糖や六炭糖の単糖を含む糖液であり、発酵原料としてメタン発酵処理S8に供給される。一方、脱水ケーキX82は、上述した1次脱水処理S51の脱水ケーキX81と同様に木質成分であり、乾燥処理S6に供給される。
【0039】
このような第2実施形態によれば、搾汁液X5、分離液X71及び糖化液X17を発酵原料としてメタン発酵で得られたバイオガスX11から水蒸気X15を生成し、水蒸気X15を用いて搾り滓を固体燃料化するので、上述した第1実施形態と同様にバイオエタノールを製造する従来技術よりも外部から投入するエネルギー量を低減することが可能である。
【0040】
また、第2実施形態によれば、糖化処理S12を行うので、燃料ペレットX10におけるリグニンの含有率が第1実施形態よりも上昇する。この結果、燃料ペレットX10の低位発熱量が第1実施形態よりも上昇するので、燃料ペレットX10の固体燃料としての価値(品質)が向上する。
【0041】
さらに、第2実施形態によれば、搾汁液X5及び分離液X71に加えて糖化液X17をも発酵原料とするので、メタン発酵におけるバイオガスX11の発生量を第1実施形態よりも増大させることができる。
【0042】
〔第3実施形態〕
次に、
図3を参照して本発明の第3実施形態について説明する。
この第3実施形態は、
図3を
図1と比較すると分かるように、第1実施形態における湿式ミル処理S3に代えて浸漬処理S13を行った後に1次粗分離処理S41を行い、また湿式ミル処理S3を1次粗分離処理S41の後で行うと共に湿式ミル処理S3の後で2次粗分離処理S42を行う。以下では、重複する説明を避けるために第1実施形態と異なる工程についてのみ説明する。
【0043】
浸漬処理S13では、チップ化処理S2によって得られたパームチップX3に所定量の温水X14を添加した状態で一定時間に亘って放置する。すなわち、この浸漬処理S13では、パームチップX3を温水X14に浸漬させた状態を一定時間(浸漬時間)に亘って維持する。温水X14を添加した直後のパームチップX3の樹液濃度は、温水X14中における樹液濃度(添加直後は0%)よりも当然に低いので、この樹液の濃度勾配に起因する浸透圧によってパームチップX3中の樹液が希釈水として機能する温水X14中に溶出する。
【0044】
このような浸漬処理S13を経ることによって、温水X14(希釈水)中の樹液濃度が時間の経過と共に徐々に上昇し、つまりパームチップX3中の樹液が時間の経過と共に徐々に分離される。なお、パームチップX3に対する温水X14の加水量は、例えば重量比で1対2程度であるが、パームチップX3の樹液濃度が高い程、加水量を増大させることが好ましい。このように加水量を調節することによってより多くの樹液を温水X14(希釈水)中に溶出させることができる。また、この浸漬処理S13では、温水X14に代えて常温水を希釈水として用いてもよい。
【0045】
例えば、希釈水として常温水を用いた場合の希釈水に対する樹液の溶出状態を実験した結果、12時間に亘ってパームチップX3を希釈水に浸漬させると、80%近い樹液の溶出率が得られ、その後溶出率は時間の経過と共に若干上昇して低下傾向に移行することが確認された。なお、この実験では、希釈水のCOD
Cr濃度〔mg/l〕を計測することにより、樹液の溶出率(COD溶出率〔%〕)を求めた。
【0046】
1次粗分離処理S41では、このような浸漬処理S13によって得られた浸漬後パームチップX18を所定の分離装置を用いることにより搾汁液X51と搾り滓X61とに分離する。上記搾汁液X51は、パーム幹X1の樹液(糖液)と水分とを主成分とする混合液であり、発酵原料としてメタン発酵処理S8に供給される。一方、搾り滓X61は、上記樹液とパーム幹X1の木質成分(主にセルロース、ヘミセルロース及びリグニン)を主成分とすると共に比較的含水率の高い固形物である。なお、上記分離装置は、第1実施形態の粗分離処理S4と同様に例えばロータリースクリーンである。
【0047】
上記搾り滓X61は、湿式ミル処理S3によって木質成分中の繊維質が残存する程度に摩砕された後、摩砕済みパームX42として2次粗分離処理S42に供給される。この搾り滓X61は、1次粗分離処理S41によって搾汁液X51が浸漬後パームチップX18から分離されるが、未だ無視できない程の樹液を含んでいる。なお、湿式ミル処理S3における温水X14の加水量は、第1実施形態と同様である。
【0048】
この2次粗分離処理S42では、分離装置を用いることにより、上記摩砕済みパームX42を搾汁液X52と搾り滓X62とに分離する。上記搾汁液X52は、1次粗分離処理S41の搾汁液X51と同様にパーム幹X1の樹液(糖液)と水分とを主成分とする混合液であり、発酵原料としてメタン発酵処理S8に供給される。一方、搾り滓X62は、1次粗分離処理S41の搾り滓X61と同様にパーム幹X1の樹液と木質成分を主成分とすると共に未だ比較的含水率の高い固形物であり、脱水処理S5に提供される。
なお、上述した浸漬処理S13、1次粗分離処理S41、湿式ミル処理S3、2次粗分離処理S42及び脱水処理S5は、第3実施形態における搾汁工程に相当する。また、上記1次粗分離処理S41、2次粗分離処理S42及び脱水処理S5は、第3実施形態における分離工程に相当する。
【0049】
このような第3実施形態によれば、搾汁液X51、搾汁液X52及び分離液X7を発酵原料としてメタン発酵で得られたバイオガスX11から水蒸気X15を生成し、水蒸気X15を用いて搾り滓を固体燃料化するので、バイオエタノールを製造する従来技術よりも外部から投入するエネルギー量を削減することが可能である。
【0050】
また、第3実施形態における浸漬処理S13は、温水X14を添加して放置するだけの簡便な処理であり、設備が簡便であると共に特に動力を必要としない。したがって、第2実施形態のように湿式ミル処理を2回行う場合に比較して設備費用を抑制することができると共に動力消費を抑制することができる。
【0051】
〔第4実施形態〕
最後に、
図4を参照して本発明の第4実施形態について説明する。
この第4実施形態は、
図3を
図1及び
図2と比較すると分かるように、第3実施形態における湿式ミル処理S3を第2実施形態と同様に2回の湿式ミル処理つまり1次湿式ミル処理S31と2次湿式ミル処理S32とすると共に、脱水処理S5を第2実施形態と同様に2回の脱水処理つまり1次脱水処理S51と2次脱水処理S52とし、さらに糖化処理S12を追加した。
【0052】
すなわち、この第4実施形態では、1次粗分離処理S41によって得られた搾り滓X61を1次湿式ミル処理S31によって搾り滓X61に含まれる繊維質が十分に残存する状態に摩砕することによって摩砕済みパームX43を得た後、摩砕済みパームX43に2次粗分離処理S42を施すことにより搾汁液X52と搾り滓X62とに分離する。そして、この搾り滓X62に2次湿式ミル処理S32を施すことにより、搾り滓X62に含まれる繊維質が完全に破壊される程度に摩砕する。
【0053】
そして、2次湿式ミル処理S32によって得られた摩砕済みパームX44に1次脱水処理S51を施すことにより、摩砕済みパームX44から分離液X71を脱水して脱水ケーキX81を得て糖化処理S12を施す。そして、糖化処理S12では、脱水ケーキX81を加水分解することにより、脱水ケーキX81に含まれる木質成分(セルロース、ヘミセルロース及びリグニン)のうち、セルロース及びヘミセルロースを単糖(五炭糖及び六炭糖)に分解する。そして、2次脱水処理S52では、上記糖化処理S12によって得られた糖化済み液X16から糖化液X17を脱水して脱水ケーキX82を得る。
【0054】
ここで、上述した浸漬処理S13、1次粗分離処理S41、1次湿式ミル処理S31、2次粗分離処理S42、2次湿式ミル処理S32及び1次脱水処理S51は、第4実施形態における搾汁工程に相当する。また、上記1次粗分離処理S41、2次粗分離処理S42及び1次脱水処理S51は、第4実施形態における分離工程に相当する。
【0055】
このような第4実施形態によれば、搾汁液X51、搾汁液X52、分離液71及び糖化液X17を発酵原料としてメタン発酵で得られたバイオガスX11から水蒸気X15を生成し、水蒸気X15を用いて搾り滓を固体燃料化するので、上述した第1実施形態と同様にバイオエタノールを製造する従来技術よりも外部から投入するエネルギー量を削減することが可能である。
【0056】
また、第4実施形態によれば、搾汁液X51、搾汁液X52及び分離液71に加えて、糖化液X17をも発酵原料とするので、メタン発酵におけるバイオガスX11の発生量を第3実施形態よりも増大させることができる。
さらに、第4実施形態によれば、浸漬処理S13が温水X14を添加して放置するだけの簡便な処理であり、設備が簡便であると共に特に動力を必要としないので、第2実施形態のように湿式ミル処理を2回行う場合に比較して設備費用及び動力消費を抑制することができる。
【0057】
次に、生チップ浸漬によるCOD成分の溶出試験について説明する。
〔試験方法〕
生チップ200gに水を400g加水し、室温で浸漬放置させた。浸漬後、12時間、24時間、48時間、72時間後の浸漬水中のCOD濃度を測定した。この結果を表1に示す。
〔試験結果〕
ここで、含水率79.97%、COD濃度67000ppmとすると、生チップ200g中のCODの理論値は、200g×79.86÷100×67000÷1000÷1000=10.7gとなる。
表1に示されるように、12時間の浸漬により浸漬水中のCOD濃度は、78.7%となった。24時間の浸漬により浸漬水中のCOD濃度は、83.7%となった。また、24時間以降の浸漬においては、COD濃度は上昇しなかった。
【0059】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記各実施形態では、木質系バイオマスの一種であるパーム幹X1を原料としたが、本発明はこれに限定されない。糖分を含む樹液を有する木質系バイオマスには、パーム幹X1の他にパーム葉柄、バナナ、サトウキビ、トウモロコシ、キャッサバ、サゴ椰子、ニッパ椰子、ヤムイモ、ソルガム、馬鈴薯、バナナ幹や葉、セルロースと樹液(またはジュース)、セルロース・でん粉・樹液(またはジュース)からなる作物等、種々の植物があるので、本発明は、糖液を含む木質系バイオマスであれば、如何なる木質系バイオマスにも適用可能である。
【0060】
また、パーム油の生産過程では、パーム幹X1の他にバイオマスとして利用可能なパームオイル廃液が発生される。このパームオイル廃液は、オイルパームの果実から阻パームオイル(CPO:Crude Palm Oil)を搾った残渣を主成分(糖分等)とする排水(POME:Palm Oil Mill Effluent)である。したがって、パーム幹X1に加えてパームオイル廃液を原料としてもよい。
【0061】
(2)上記各実施形態では、チップ化処理S2(チップ化工程)の前工程として熟成処理S1を行ったが、本発明はこれに限定されない。必要に応じて熟成処理S1を割愛してもよい。パーム幹X1については熟成処理S1を行うことにより糖液の濃度が上昇するが、このような現象は、全ての木質系バイオマスに共通なものではない。したがって、糖液濃度の上昇が期待できる木質系バイオマス(原料)についてのみ熟成処理S1を行うことが好ましい。
【0062】
(3)上記実施形態では、上記第1、第2実施形態では、破砕工程を湿式ミルを用いた摩砕工程としたが、本発明はこれに限定されない。湿式ミル以外の摩砕機を用いてパームチップX3を破砕してもよい。また、摩砕機の仕様によっては、パームチップX3に温水X14を加水することなく摩砕することが可能である。また、本発明における破砕工程は、摩砕機を用いた摩砕工程に限定されない。
【0063】
(4)上記各実施形態では、粗分離処理S4、1次粗分離処理S41及び2次粗分離処理S42にロータリースクリーンを用いたが、本発明はこれに限定されない。ロータリースクリーン以外の分離装置を用いてもよい。
【0064】
(5)上記各実施形態における乾燥処理S6では、水蒸気X15を熱源とする間接加熱タイプのパドル式等乾燥機を用いたが、本発明はこれに限定されない。バイオガスX11を燃焼させて発生する熱風で脱水ケーキX8を乾燥させる直接加熱タイプの気流乾燥機を用いてもよい。また、必要に応じて自然乾燥、天日乾燥、日陰乾燥等の自然乾燥手法を利用してもよい。
【0065】
(6)さらに、上記第1実施形態では粗分離処理S4に続いて脱水処理S5を連続して行い、また第3実施形態では2次粗分離処理S42に続いて脱水処理S5を連続して行うが、本発明はこれに限定されない。例えば、粗分離処理S4と脱水処理S5とを、または/及び2次粗分離処理S42と脱水処理S5とを1つの機械を用いることにより同時に行う、つまり単一の工程として行ってもよい。
【0066】
(7)上記第4実施形態では、搾り滓X62に2次湿式ミル処理S32を施し、さらに2次湿式ミル処理S32によって得られた摩砕済みパームX44に1次脱水処理S51を施して得られた脱水ケーキX81を糖化処理S12したが、本発明はこれに限定されない。例えば、2次湿式ミル処理S32及び1次脱水処理S51を省略し、搾り滓X62を糖化処理S12してもよい。